Compaq OpenVMS
OpenVMS Cluster システム


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2.5.1 クラスタ・グループ番号

クラスタ・グループ番号は,LAN で各 OpenVMS Cluster システムを一意に識別します。この番号は 1〜4095 または 61440〜65535 の範囲でなければなりません。

規則: 1 つの LAN で複数の OpenVMS Cluster システムを稼動する計画がある場合は,システム管理者間でクラスタ・グループ番号の割り当てを調整する必要があります。

注意: CI および DSSI 上で動作する OpenVMS Cluster システムでは,クラスタ・グループ番号とパスワードは使用されません。

2.5.2 クラスタ・パスワード

クラスタ・パスワード は,登録されていないコンピュータがクラスタ・グループ番号を使用してクラスタに参加するのを防止します。パスワードは 1〜31 文字の英数字でなければならず,ドル記号 ($) とアンダスコア (_) も使用できます。

2.5.3 場所

クラスタ・グループ番号とクラスタ・パスワードは,クラスタ登録ファイル, SYS$COMMON:[SYSEXE]CLUSTER_AUTHORIZE.DAT に格納され,管理されます。オペレーティング・システムのインストール時に,LAN を利用してクラスタを設定することを指定すると,このファイルが作成されます。その場合,インストール・プロシージャからクラスタ・グループ番号とパスワードの入力が求められます。

注意: CI または DSSI インターコネクトだけを使用する OpenVMS Cluster を,LAN インターコネクトを含むクラスタに変換する場合は, 第 8 章 で説明しているように, CLUSTER_CONFIG.COM コマンド・プロシージャの実行時に, SYS$COMMON:[SYSEXE]CLUSTER_AUTHORIZE.DAT ファイルが作成されます。

関連項目: CLUSTER_AUTHORIZE.DAT ファイルに格納される OpenVMS Cluster グループ・データの詳細については, 第 8.4 節第 10.9 節 を参照してください。

2.5.4 例

OpenVMS Cluster 内のすべてのノードが同じクラスタ・パスワードを使用していない場合,以下のようなエラー・レポートがエラー・ログ・ファイルに記録されます。


 V A X / V M S        SYSTEM ERROR REPORT         COMPILED 30-JAN-1994 15:38:03 
                                                                      PAGE  19. 
 
 ******************************* ENTRY     161. ******************************* 
 ERROR SEQUENCE 24.                              LOGGED ON:        SID 12000003 
 DATE/TIME 30-JAN-1994 15:35:47.94                            SYS_TYPE 04010002 
 SYSTEM UPTIME: 5 DAYS 03:46:21 
 SCS NODE: DAISIE                                              VAX/VMS V6.0 
 
 DEVICE ATTENTION  KA46  CPU FW REV# 3.  CONSOLE FW REV# 0.1 
 
 NI-SCS SUB-SYSTEM, DAISIE$PEA0: 
 
       INVALID CLUSTER PASSWORD RECEIVED 
 
       STATUS          00000000 
                       00000000 
       DATALINK UNIT       0001 
       DATALINK NAME   41534503 
                       00000000 
                       00000000 
                       00000000 
                                       DATALINK NAME = ESA1: 
       REMOTE NODE     554C4306 
                       00203132 
                       00000000 
                       00000000 
                                       REMOTE NODE = CLU21 
       REMOTE ADDR     000400AA 
                           FC15 
                                       ETHERNET ADDR = AA-00-04-00-15-FC 
       LOCAL ADDR      000400AA 
                           4D34 
                                       ETHERNET ADDR = AA-00-04-00-34-4D 
       ERROR CNT           0001 
                                       1. ERROR OCCURRENCES THIS ENTRY 
       UCB$W_ERRCNT        0003 
                                       3. ERRORS THIS UNIT 

2.6 分散ロック・マネージャによるクラスタ機能の同期化

分散ロック・マネージャ は,分散ファイル・システム,分散ジョブ・コントローラ,デバイスの割り当て,ユーザ作成 OpenVMS Cluster アプリケーション,その他の OpenVMS 製品やソフトウェア・コンポーネントで必要とされる機能の同期をとるための OpenVMS 機能です。

分散ロック・マネージャでは,接続マネージャと SCS を使用して, OpenVMS Cluster コンピュータ間で情報がやり取りされます。

2.6.1 分散ロック・マネージャの機能

分散ロック・マネージャには,以下の機能があります。

2.6.2 ロック・マネージャのシステム管理

ロック・マネージャは完全に自動化されており,通常,特別なシステム管理は必要ありません。しかし, LOCKDIRWT システム・パラメータを使用すれば,ロック・リソース階層構造の制御をクラスタ全体でどのように分散するかを調整することができます。

ロック・リソース階層構造を制御するノードをリソース・マスタと呼びます。各リソース階層構造で異なるノードをマスタとして設定できます。

ほとんどの構成では,大型コンピュータとブート・ノードの LOCKDIRWT が 1 に設定されていて,サテライト・ノードの LOCKDIRWT が 0 に設定されている場合,これらの大型コンピュータやブート・ノードは最適な状態で動作します。これらの値は CLUSTER_CONFIG.COM プロシージャによって自動的に設定されます。

場合によっては,リソース階層構造のマスタ・ノードを制御するために,クラスタ全体で LOCKDIRWT の値を変更しなければならないことがあります。以下のリストは, LOCKDIRWT システム・パラメータの値がリソース階層構造のマスタの設定にどのように影響するかを示しています。

このように,LOCKDIRWT システム・パラメータの値を適切に設定すれば,優先順位をもとに,リソース階層構造のマスタに関するポリシーを設定できます。また, LOCKDIRWT システム・パラメータに対して等しい値を使用すれば,動作をもとにリソース階層構造のマスタに関するポリシーを設定できます。必要に応じて,優先順位ベースのマスタ設定と動作ベースのマスタ設定の組み合わせを使用することもできます。

2.6.3 大規模ロック・アプリケーション

Enqueue プロセス上限 (ENQLM) は SYSUAF.DAT ファイルに設定される値であり,プロセスが所有できるロックの数を制御します。この値は,大規模データベースやその他のサーバ・アプリケーションの要件に応じて調整することができます。

OpenVMS バージョン 7.1 以前では,上限は 32767 でした。その後,大規模データベースや他のサーバ・アプリケーションの効率的な操作を可能にするために,この上限は削除されました。したがって,プロセスはアーキテクチャ上の最大値である 16,776,959 まで,ロックを保有できるようになりました。SYSUAF.DAT で ENQLM の値を 32767 に設定すれば (Authorize ユーティリティを使用),ロックの上限は自動的に最大値の 16,776,959 ロックに拡張されます。 SYSUAF Enqlm クォータが 32767 に設定されたプロセスから初期化された場合,$CREPRC は大きなクォータをターゲット・プロセスに渡すことができます。

関連項目: 分散ロック・マネージャとリソース階層構造の詳細については,『OpenVMS Programming Concepts Manual』を参照してください。Enqueue Quota の詳細については,『Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。

2.7 リソースの共用

OpenVMS Cluster システムでは,リソースの共用は分散ファイル・システム,RMS,分散ロック・マネージャによって有効になります。

2.7.1 分散ファイル・システム

OpenVMS Cluster の 分散ファイル・システム は,すべてのコンピュータがマス・ストレージとファイルを共用できるようにします。分散ファイル・システムは,スタンドアロン・コンピュータで提供されているものと同じディスク,テープ,ファイルへのアクセス機能を OpenVMS Cluster 全体にわたって提供します。

2.7.2 RMS と分散ロック・マネージャ

分散ファイル・システムと OpenVMS レコード管理サービス (RMS) は,分散ロック・マネージャを使用して,クラスタ単位のファイル・アクセスを調整します。RMS ファイルはレコード・レベルまで共用できます。

ディスクやテープはどれでも, OpenVMS Cluster システム全体から利用できるように設定できます。ストレージ・デバイスは以下のいずれでもかまいません。

クラスタ・アクセス可能デバイスはすべて,各コンピュータに接続されているかのように見えます。

2.8 ディスクの可用性

ローカルに接続されているディスクは,MSCP サーバによって OpenVMS Cluster 全体でサービスすることができます。

2.8.1 MSCP サーバ

MSCP サーバは,以下のディスクも含めて,ローカルに接続されているディスクをクラスタ全体で使用できるようにします。

ディスク・クラス・ドライバ (DUDRIVER) と組み合わせて, MSCP サーバはコンピュータで MSCP プロトコルのストレージ・サーバの部分を実装します。これにより,コンピュータはストレージ・コントローラとして機能できるようになります。MSCP プロトコルは,コンパックが設計した特定のマス・ストレージ・コントローラ/デバイス・ファミリに対して,送受信されるメッセージの形式とタイミングの規則を定義しています。 MSCP サーバは,リモート・クラスタ・ノードから送信された MSCP I/O 要求をデコードし,サービスします。

注意: ローカルに接続されているディスク上のファイルにコンピュータがアクセスする場合,MSCP サーバは使用されません。

2.8.2 デバイスのサービス

サービスされるようにデバイスを設定しておけば,以下のことが可能になります。

2.8.3 MSCP サーバの有効化

MSCP サーバは,MSCP_LOAD および MSCP_SERVE_ALL システム・パラメータによって制御されます。これらのパラメータの初期値は,OpenVMS インストール・プロシージャ ( 第 8.4 節 を参照) または CLUSTER_CONFIG.COM プロシージャ ( 第 8 章 を参照) で出力される質問への応答によって設定されます。

これらのパラメータのデフォルト値は以下のとおりです。

関連項目: MSCP サーバに対するシステム・パラメータの設定の詳細については, 第 6.3 節 を参照してください。

2.9 テープの可用性

ローカルに接続されているテープは,TMSCP サーバによって OpenVMS Cluster 全体で利用できるようになります。

2.9.1 TMSCP サーバ

TMSCP サーバは,以下のテープも含めて,ローカルに接続されているテープをクラスタ全体で使用できるようにします。

TMSCP サーバは TMSCP プロトコルを実装します。このプロトコルは,TMSCP テープ用のコントローラと通信するときに使用されます。テープ・クラス・ドライバ (TUDRIVER) と組み合わせて, TMSCP プロトコルはプロセッサで実装され,これにより,プロセッサはストレージ・コントローラとして機能できるようになります。

プロセッサは,ローカルに接続されているテープへの I/O 要求を出し,クラスタ内の他のノードから I/O 要求を受け付けます。このようにして,TMSCP サーバはローカルに接続されているテープをクラスタ内のすべてのノードから利用できるようにします。また,TMSCP サーバは HSC テープと DSSI ISE テープを OpenVMS Cluster サテライトからアクセスできるようにもします。

2.9.2 TMSCP サーバの有効化

TMSCP サーバは TMSCP_LOAD システム・パラメータによって制御されます。このパラメータの初期値は, OpenVMS インストール・プロシージャ ( 第 4.2.3 項 を参照) または CLUSTER_CONFIG.COM プロシージャ ( 第 8.4 節 を参照) で出力される質問への応答によって設定されます。 TMSCP_LOAD パラメータのデフォルト設定では, TMSCP サーバはロードされず,テープに対するサービスは提供されません。

2.10 キューの可用性

分散ジョブ・コントローラは,以下の機能を提供するために,クラスタ全体でキューを利用できるようにします。

機能 説明
OpenVMS Cluster のコンピュータのユーザは, OpenVMS Cluster 内の任意のコンピュータで実行されているキューにバッチ・ジョブとプリント・ジョブを登録できる。 ジョブが実行されているコンピュータから,必要なマス・ストレージ・ボリュームと周辺デバイスにアクセス可能であれば,ユーザはクラスタ内のどのキューにもジョブを登録できる。
バッチ処理とプリント処理の作業負荷を OpenVMS Cluster ノードに分散する。 システム管理者は,コンピュータ間で処理の負荷を分散する汎用バッチ・キューと汎用プリント・キューを設定できる。分散ジョブ・コントローラは,キューに対するジョブの数 (jobs-to-queue) の上限が最低の実行キュー,または使用可能な次のプリンタにバッチ・ジョブとプリント・ジョブを渡す。

ジョブ・コントローラは分散ロック・マネージャを使用して, OpenVMS Cluster 内の他のコンピュータに,処理するバッチ・キュー・ジョブとプリント・キュー・ジョブを確認するように通知します。

2.10.1 キューの制御

キューを制御するには,1 つまたは複数のキュー・マネージャを使用して,キューとジョブに関する情報が格納されているクラスタ単位のキュー・データベースを管理します。

関連項目: OpenVMS Cluster キューの設定の詳細については, 第 7 章 を参照してください。


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