2    CDE の開始

CDE (Common Desktop Environment)では,オペレーティング・システムとの対話に使用するビジュアルなデスクトップが提供されます。この章では,デスクトップ環境で処理を行うための,基本的な操作方法について説明します。また,デスクトップ・セッションの開始,一時停止,および終了の方法についても説明します。

この章では,次の事項について説明します。

2.1    CDE デスクトップでのナビゲート

CDE デスクトップ内のナビゲートは,マウスまたはキーボードを使用して行います。どちらを使用しても,デスクトップおよびアプリケーションへのアクセスおよび対話が可能です。次の各項では,マウスおよびキーボードによる制御について説明します。

この節では,次の事項について説明します。

2.1.1    マウスの使用方法

マウスは,ワークステーションに接続されている,3 つのボタンを備えた制御装置です。平らな面の上でマウスを動かすと,それに伴ってデスクトップに表示されるポインタが動きます。ポインタは,省略時の設定では矢印のような形をしていますが,実行されるアクションに応じて変化します。マウス・ポインタを使用してタスクを実行する場合には,実行する対象の上にポインタを合わせてアクションを指定します。

3 つのマウス・ボタンは,実行されるアクションのタイプを決定します。省略時の設定では,左側のボタンがマウス・ボタン 1,中央のボタンがマウス・ボタン 2,右側のボタンがマウス・ボタン 3 です。マウス・ボタンを押して離すと,アクションが実行されます。

図 2-1:  マウスのボタン

マウス・ボタン 1 は,通常,次の処理を行うために使用されます。

マウス・ボタン 2 は,コピー・アンド・ペーストの操作やオブジェクトの移動に使用できます。マウス・ボタン 2 は,CDE Window List の表示にも使用することができます (3.2.2.2 項で説明)。

マウス・ボタン 3 は,ポップアップ・メニューの表示および操作に使用されます (2.2.2.2 項で説明)。

マウスを使用してデスクトップおよびアプリケーションと対話する場合には,通常はクリック,ダブルクリック,またはドラッグ・アンド・ドロップの操作の指示があります。

マウスの使用方法についての詳しい説明は,『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

2.1.2    キーボードの使用方法

マウスの代わりに,キーボードを使用してデスクトップと対話することもできます。キーボードをナビゲータとして使用するには,アクションを完成させるためにキーを組み合わせます。キーボードを使用して実行できるアクションは,次のとおりです。

この章で説明しているタスクのほとんどは,マウスまたはキーボードを使用して実行できますが,マウスの使用例しか記述していないことがあります。タスクを完了するためのキーボードの使用についての指示は,『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』 を参照してください。

注意

本書では,[Delete] キーや [Alt/F11] などの特定のキーやキーの組み合せを使用するように指示している場合があります。使用しているキーボードに指定のキーがない場合は,キーボードのハードウェア・マニュアルを参照するか,または第 8 章を読んで,キーボードの設定をカスタマイズしてください。

2.2    ウィンドウの使用方法

ほとんどのアプリケーションは,起動するとフレームのついた長方形のウィンドウがデスクトップ上に表示されます。アプリケーションによっては,2 つ以上のウィンドウが表示されることもあります。

ウィンドウは,それ自体が作業領域で,アプリケーションと対話する場所です。ウィンドウ・フレームにはさまざまなコントロールがついており,ウィンドウの管理に使用します。ウィンドウ・コントロールは,タイトル・バー,サイズ変更枠,ボタン,およびスクロール・バーから構成されます。ウィンドウによっては,メニュー・バーを持つものもあります。

メニュー・バーでは,ウィンドウやアプリケーションのより詳細な操作のための,メニューおよびメニュー項目を選択できます。メニュー項目を選択すると,ダイアログ・ボックスがオープンされることもあります。ダイアログ・ボックスは,ウィンドウに似ており,システムまたはアプリケーションと対話するための手段として提供されます。

次の各項では,ウィンドウ・コントロールについて説明し,さらにウィンドウ,メニュー,およびダイアログ・ボックスの管理について説明します。アクションを完成させるには,マウスまたはキーボードを使用するテクニックについてよく知っておく必要があります。この章の残りの節では,マウスによる使用方法について示します。

この節では,次の事項について説明します。

2.2.1    ウィンドウ・コントロールの管理

通常,ウィンドウ・フレームは,タイトル・バー,サイズ変更枠,ボタン,およびスクロール・バーから構成されます。表 2-1 に,これらの機能を示します。

図 2-2:  ウィンドウのコンポーネント

表 2-1:  ウィンドウ・コントロール

ウィンドウ・コントロール 説明
タイトル・バー アプリケーションの名前を表示し,ウィンドウ・メニュー・ボタン,最小化ボタン,および最大化ボタンを含みます。
  ウィンドウ・メニュー・ボタンをクリックしてウィンドウ・メニューを表示した後,メニュー項目をクリックしてウィンドウの特性を変更します。ウィンドウ・メニュー・ボタンをダブルクリックすると,アプリケーションがクローズされます (終了します)。
  最小化ボタンをクリックすると,ウィンドウがアイコン化されます。アイコンは,オブジェクトをグラフィックで表示したものです。アイコンをリストアするには,それをダブルクリックします。
  最大化ボタンをクリックすると,ウィンドウが最大サイズで表示されます。ウィンドウを元のサイズにリストアするには,最大化ボタンを再びクリックします。
サイズ変更枠およびコーナー ウィンドウのサイズを大きく,あるいは小さくします。枠あるいはコーナーのいずれかをドラッグして,ウィンドウのサイズを変更します。
スクロール・バー 現在の作業領域に表示されていない (隠れている) テキストまたはグラフィックなどの情報を見ることができます。水平スクロール・バーまたは垂直スクロール・バー,あるいはその両方を自由に使用できます。スクロール用の矢印をクリックするか,またはスクロール・バーにポインタを合わせて必要な方向にマウスを動かすことによって,スクロール・バーをスライドします。

2.2.2    複数のウィンドウ,メニュー,およびダイアログ・ボックスの管理

アプリケーションを実行すると,ウィンドウがオープンします。たいていの場合,複数のアプリケーションを同時に実行するので,2 つ以上のウィンドウがデスクトップ上で同時にオープンされます。さらに,ほとんどのアプリケーション・ウィンドウにはメニュー・バーがあり,アプリケーションによっては,2 つのウィンドウをオープンするもの,またはダイアログ・ボックスを提供するものがあります。

次の各項では,ウィンドウ,メニュー,およびダイアログ・ボックスの管理の概要について説明します。

2.2.2.1    複数ウィンドウの操作

ウィンドウ・コントロールの使用は,ウィンドウの管理のための 1 つの方法です。マウスおよびキーボードを使用して,複数のウィンドウを管理することもできます。以下に,マウスを使用して実行できるいくつかのアクションをリストします。

詳細については,『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』 を参照してください。

2.2.2.2    メニューの操作

メニューには,ウィンドウ,アプリケーション,およびデスクトップとの対話に使用できる項目のリストが提供されます。また,メニュー項目により,選択したオブジェクトに対して実行されるアクションを指定する場合もあります。メニュー項目が薄く表示されている場合は,その項目が現在は使用できず,別の条件の場合に使用できることを示します。

表 2-2 に,3 つのタイプのメニューをリストします。

表 2-2:  メニュー・タイプ

メニュー・タイプ 説明
プルダウン タイトル・バーのすぐ下にあるアプリケーション・メニュー・バーに配置されます。1 つのメニュー・バーに,1 つまたは複数のプルダウン・メニューが入っていることがあります。
  メニューをプルダウンするには,メニュー名をクリックします。
  メニュー項目を選択するには,メニュー名をクリックしてから,そのメニュー項目をクリックします。
ポップアップ 一部のアプリケーション,デスクトップ・オブジェクト,およびワークスペース自体の中で表示されます。アプリケーションでは,このメニューにある項目とプルダウン・メニューにある項目が重複していることがあります。ポップアップ・メニューにプルダウン・メニューの項目をまとめると,アプリケーションで作業する際の使い勝手がさらによくなります。
  メニューをポップアップするには,アプリケーション・ウィンドウ内,デスクトップ・オブジェクト上,またはデスクトップ上でマウス・ボタン 3 をクリックします。
オプション ダイアログ・ボックス内に表示されます。オプション・メニューは,ボタンで表示され,2 つ以上の項目が入っていても,アクティブ・オプションしか表示されません。
  すべてのメニュー項目を見るには,オプション・メニュー (ボタン) をクリックします。
  オプション・メニューからメニュー項目を選択するには,オプション・メニュー (ボタン) をクリックしてから,該当する項目をクリックします。

後ろに矢印がついているメニュー項目を選択すると,サブメニューがオープンされます。サブメニューにある項目をクリックして,その項目を選択します。後ろに 3 つのドット (...) がついているメニュー項目を選択すると,選択を限定する追加情報のダイアログ・ボックスがオープンされます。

詳細については,『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』 を参照してください。

2.2.2.3    ダイアログ・ボックスの操作

アプリケーションによっては,ダイアログ・ボックスを持つものがあります。通常,ダイアログ・ボックスには,アクションを実行する前に追加的な情報の入力を行います。ダイアログ・ボックスには,いくつかの種類のコントロールが表示されます。ダイアログ・ボックスによっては,いくつかのコントロールを使用できるものと,1 つのコントロールしか使用できないものがあります。

表 2-3 に,ダイアログ・ボックスで使用できるコントロールをリストします。

表 2-3:  ダイアログ・ボックスのコントロール

コントロール 用途
テキスト入力ボックス 要求された情報を入力するためのフィールドを提供します。挿入カーソルは,テキストを入力する位置を示します。カーソルがフィールド内で点滅していると,テキスト入力ボックスは入力可能になっています。カーソルが点滅していない場合は,テキスト入力ボックスをクリックして,アクティブ化します。削除キーを使用して,フィールド内の文字を削除できます。
ラジオ・ボタン 使用できるオプションのリストを提供します。ラジオ・ボタンをクリックして,オプションのリストを見ることができます。
チェック・ボタン 有効と無効の設定を制御します。チェック・ボタンをクリックして,有効と無効の設定を切り替えます。
スライダおよびスケール 数値を選択します。スライダまたはスケールをドラッグして,値を選択します。
リスト・ボックス オプションのメニューを提供します。リスト・ボックスに多くのオプションが入っている場合には,スクロール・バーが表示されます。オプションを選択するには,それをクリックします。
プッシュ・ボタン 質問に対する答え,入力した情報をアプリケーションが処理する方法の指示,またはオプション・セットの提供に使用されます。プッシュ・ボタンの操作を実行するには,それをクリックします。

ダイアログ・ボックスについての詳しい説明は,『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』 を参照してください。

2.3    セッションの開始

ログイン・マネージャは,図 2-3 に示すログイン画面を表示します。 ログイン画面には,ユーザ名およびパスワードを入力するためのフィールドがあります。また,スクリーンの下部のいくつかのプッシュ・ボタンを使用して,ログイン・セッションを管理します。

図 2-3:  ログイン画面

この節では,次の事項について説明します。

ボタン [脚注 1] 説明
了解 (OK) 入力した情報が正しいことを示します。
やり直し (Start Over) 不正な情報を入力した場合,または位置がわからなくなった場合に,ログイン画面をリセットします。
オプション (Options) オプション・メニューを表示します。オプション・メニューを使用して,開始したいセッション・タイプの選択および言語の指定を行います。
ヘルプ (Help) ログイン画面の使用方法についての詳しい情報を提供します。

セッションを開始するには,次のいずれかの操作を行います。

  1. ユーザ名をタイプしたら,リターン・キーを押すか,または OK をクリックします。

  2. 「オプション」メニューがある場合は,メニューから必要なオプションを選択できます。

  3. パスワードをタイプしたら,リターン・キーを押すか,または OK をクリックします。

2.3.1    言語の選択

システムの省略時設定の言語は,システム管理者により設定されます。ただし,次の手順に従って,オプション・メニューを使用することにより,システムに組み込まれているその他の言語にアクセスできます。

  1. 「オプション」メニューをクリックします。

  2. 「言語 (Languages)」メニュー項目をクリックして,言語グループを選択します。

  3. 言語を選択します。

「オプション」メニューから言語を選択すると,LANG 環境変数が設定されます。セッション終了時に,省略時設定の言語がリストアされます。

2.3.2    セッションの選択

セッションを選択すると,ログイン・セッション中の作業環境の設定が決定されます。通常のデスクトップ・セッション,フェイルセーフ・セッション,あるいはコマンド行セッションを開始するためのオプションが提供されます。

次の手順に従って,「オプション(Options)」メニューからセッションを選択します。

  1. 「オプション(Options)」メニューをクリックします。

  2. 「セッション (Session)」メニュー項目をクリックします。

  3. 開始したいセッションのタイプを選択します。

通常のデスクトップ (Regular Desktop) セッションは,CDE セッション・マネージャを起動します。 CDE デスクトップ・セッションを開始すると,コンソール・ウィンドウおよびフロント・パネルが表示されます。コンソールには,セッション時に受信したすべてのシステム・メッセージが表示されます。フロント・パネルからは,アプリケーションおよびワークスペースにアクセスできます。フロント・パネルについての説明は,第 3 章を参照してください。

フェイルセーフ (Failsafe) セッションは,ターミナル・ウィンドウをオープンして,ウィンドウ・マネージャを開始します。 フェイルセーフ・セッションへのログインは,デスクトップ・セッションを開始する前にコマンドを実行したい場合に有効です。たとえば,セッションを開始する前に解決しておきたい問題がある場合です。

コマンド行ログイン・セッションは,デスクトップを中断して,ベース・オペレーティング・システム環境,つまりウィンドウを持たない環境で作業する手段を提供します。ログイン・マネージャがアクティブではなく,X サーバが実行されないので,ログイン画面は表示されません。

2.3.3    ログイン画面・オプションのリセット

選択したオプションが必要なオプションではない場合には,ログイン画面をリセットできます。ログイン画面をリセットすると,選択したすべてのオプションは,省略時の値に戻されます。

2.4    セッションの一時停止

現在のセッションをしばらくの間離れたい場合には,セッションを無期限に一時停止できます。セッションを一時停止するとワークステーションがロックされますが,すでに開始されていたアプリケーションは,継続して実行されます。次のように,作業する環境によって,セッションの一時停止の方法は異なります。

セッションを一時停止すると,空白のスクリーンがワークステーションのスクリーン上に配置され,ディスプレイがロックされたことを示すダイアログ・ボックスが表示されます。スタイル・マネージャを使用して,別のスクリーン・セーバを表示するよう設定することもできます。テキスト入力ボックスにパスワードを入力すると,セッションが再開されます。

2.5    セッションの終了

次のように,作業する環境によって,セッションの終了方法は異なります。