この章では,フル・インストレーションの起動手順と,フル・インストレーション・セットアップ処理に必要なすべての情報の指定方法を,順を追って説明します。
フル・インストレーション手順の要約
必要な準備作業をすべて実行し,開始できる状態であることを確認してから,この手順を開始してください。
プロセッサに固有のコンソール環境変数を設定します (6.2 節)。
すべてのプロセッサに共通の標準コンソール環境変数を設定します (6.3 節)。
配布メディアからシステムをブートします (6.4 節)。
フル・インストレーション・インタフェースが要求する情報を設定します (6.7 節)。
選択内容が希望どおりになっているか確認します。 必要であれば,前に戻って選択内容を変更します (6.15 節)。
適用するインストレーションの最終確認を行い,ソフトウェアのインストレーションを開始します (6.16 節)。
WLS (Worldwide Support Software) ソフトウェアを CD-ROM からインストールする場合は,CD-ROM を交換します (6.17.3 項)。
カーネルに組み込むカーネル構成要素を選択します (省略可能) (6.18 節)。
新しくインストールされたシステムにログインします (6.19 節)。
インストレーション・ログ・ファイルを調べます (6.20 節)。
使用できるようにシステムをセットアップして構成します。 これでフル・インストレーションは完了です (第 7 章)。
フル・インストレーションを開始する前に,第 5 章で説明したすべての準備作業を行ってください。
最後の準備作業はシステム・ファームウェアの更新なので,システムはコンソール・モード
(>>>
プロンプト) になっているはずです。
システムがコンソール・モードになっていない場合は,shutdown -h now
コマンドを実行してください。
注意
フル・インストレーションでは,インストール先のディスク上のユーザ・ファイルやデータ・ファイルは保存されないため,インストレーションを開始する前に現在のオペレーティング・システムのバックアップを取っていることを確認してください。 エラーが発生してオペレーティング・システムを正常にインストールできない場合は,以前のバージョンのオペレーティング・システムをリストアしなければならないことがあります。
6.2 [ステップ 1]: プロセッサに固有のコンソール環境変数の設定
システムのタイプによっては,すべてのプロセッサで設定する標準のコンソール変数 (6.3 節を参照) の他に,いくつかの特殊なコンソール環境変数の設定が必要になります。
次の手順に従って,プロセッサに固有のコンソール環境変数の設定が必要かどうかを判断してください。
ハードウェアのフロント・パネルの社名ロゴを探して,使用しているプロセッサの種類を調べてください。
そのプロセッサが 表 6-1 にあるか探してください。 そのプロセッサが見つかった場合は,ステップ 3 に進みます。 そのプロセッサが 表 6-1 になかった場合は,コマンドを実行せず,6.3 節に進みます。
使用しているプロセッサに対応する,表 6-1 内のコマンドを実行します。
注意
表 6-1 の情報は,完全で正確であるように注意を払っていますが,ハードウェアのドキュメントもあわせて確認し,ご使用のシステム・タイプに他の変数が必要でないか確認してから,フル・インストレーションを開始してください。 ハードウェアのドキュメントはシステム・タイプごとにカスタマイズされており,サポートされているコンソール環境変数の最終的な情報源になっています。
プロセッサ | コンソール変数を設定するコマンド |
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6.3 [ステップ 2]: すべてのプロセッサに共通の標準コンソール環境変数の設定
次のコンソール環境変数を,すべてのプロセッサで設定します。
boot_osflags
変数をクリアします。
>>> set boot_osflags ""
次のコマンドを入力して,インストレーション時にシステムがクラッシュしたり,電源障害が発生した場合に,システムが必ずコンソール・プロンプト (>>>
) に戻るように設定します。
>>> set auto_action halt [脚注 10]
注意
大部分のプロセッサは,ソフトウェアがロードされた後,自動的にリブートします。 他のユーザや顧客に代ってオペレーティング・システムをインストールしている場合には,この機能を使用しないようにすることもできます。 自動リブートを使用不可にすると,インストレーション・インタフェースを実行し,ソフトウェアをロードしてから,実際のユーザにシステムを渡し,ユーザがシステムをブートしたり,ホストおよびサイトに固有の情報を入力したりできます。
自動リブートを使用不可にするには,次のコマンドを入力します。
>>> set boot_osflags h
AlphaServer 8400 プロセッサは,自動リブートをサポートしていません。
ここでは CD-ROM からのブート方法を説明します。
この手順は,サポートされるすべてのシステムに当てはまります。
ネットワーク上でリモート・インストレーション・サービス (RIS) サーバからインストレーションを実行する場合は,ネットワーク・ブート手順について『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
システムのブートで障害が発生した場合は,使用しているプロセッサのハードウェア・ドキュメントを参照してください。
ハードウェア関連の障害ではない場合は,『システム管理ガイド』を参照してください。
『システム管理ガイド』には,汎用カーネル
(/genvmunix
) のブートや,代替のカスタム・カーネルのブートについての説明があります。
オペレーティング・システム CD-ROM からシステムをブートするには,以下の手順を実行します。
「Operating System, Volume 1」というラベルの CD-ROM を CD-ROM ドライブに挿入します。
init
コマンドをまだ入力していない場合は入力します。
>>> init
次のコマンドを入力して,CD-ROM ドライブのコンソール・デバイス名を確認します。
>>> show device
システム・タイプに応じて,次のようなデバイス情報の一覧表が表示されます。
dka0.0.0.0.0 DKA0 RZ28 dkb0.0.0.1.0 DKB0 RZ28 dkc0.0.0.2.0 DKC0 RZ26 dkc100.1.0.2.0 DKC100 RZ26 dkc200.2.0.2.0 DKC200 RZ26 dkc300.3.0.2.0 DKC300 RZ26 dke100.1.0.4.0 DKE100 RRD43 <== mka500.0.0.0.0 MKA500 TLZ04 mke0.0.0.4.0 MKE0 TZ85 ewa0.0.0.6.0 EWA0 08-00-2B-2C-CE-DE p_d0.7.0.3.0 Bus ID 7 pka0.7.0.0.0 PKA0 SCSI Bus ID 7 pkb0.7.0.1.0 PKB0 SCSI Bus ID 7 pkc0.7.0.2.0 PKC0 SCSI Bus ID 7 pke0.7.0.4.0 PKE0 SCSI Bus ID 7
左から 3 番目の欄に
RRD
または
CD-ROM
という文字列がある行を探してください。
これらの文字列は,CD-ROM デバイスを意味します。
また,この表の 2 番目の欄は,システム上の各デバイスに割り当てられているコンソール・デバイス名を示します。
この例では,RRD43
CD-ROM のコンソール・デバイス名は
DKE100
です。
次のステップの
boot
コマンドで,このデバイス名を指定します。
次の構文で boot コマンドを入力します。
boot
console_cdrom_device_name
コンソール cdrom_device_name は,3 で取得した名前です。 この例では,次のコマンドを入力してシステムを CD-ROM デバイスからブートします。
>>> boot dke100
次のような出力が表示されます。
(boot dke100.1.0.4.0) block 0 of dke100.1.0.4.0 is a valid boot block reading 16 blocks from dke100.1.0.4.0 bootstrap code read in base = 1ee000, image_start = 0, image_bytes = 2000 initializing HWRPB at 2000 initializing page table at 1e0000 initializing machine state setting affinity to the primary CPU jumping to bootstrap code UNIX boot - Fri Aug 23 15:49:49 EDT 2002
.
.
.
Starting installation from CD-ROM. Please wait
注意
ブート処理には数分かかります。 ハードウェアによって異なるメッセージがいくつか表示されます。 複雑なシステム (周辺デバイスが多いなど) ほど,ブート処理に時間がかかります。
これで,システムのブートが完了します。
インストレーション・プロセスは,6.5 節に続きます。
6.5 システム・ブート完了 -- ユーザ・インタフェース言語の選択
グラフィカル・ディスプレイを備えたシステムでシステム・ブートが完了すると,インストレーション画面の表示に使用する言語を次の中から選択できます。
アメリカ英語
中国語
日本語
この選択を行うと,インストレーション・ウィンドウとダイアログ・ボックスは選択した言語で表示されます。
インストレーション・プロセスは
6.6 節
で説明するように続行されます。
6.6 Welcome 画面
インストレーションのユーザ・インタフェースを表示する言語を選択すると,Welcome メッセージが表示されます。
グラフィカル表示が可能なシステムでは,「Installation Welcome」ダイアログ・ボックス (図 6-1
を参照) が表示されます。
グラフィカル・ユーザ・インタフェースは,インストレーション・セットアップ処理の各フェーズを順に表示します。
このユーザ・インタフェースは作業指向で設計されているため,いつでも後に戻ったり先に進んだりすることができます。
システムの日付と時刻は入力後すぐに設定されますが,これ以外は,インストレーションの開始を確認する最後のダイアログ・ボックスに到達するまで,システムは何も変更されません (ディスク・パーティションを再設定した場合を除く)。
オンライン・ヘルプは,[Help] メニューから利用できます。
図 6-1: 「Installation Welcome」ダイアログ・ボックス
グラフィカル・ユーザ・インタフェースで表示されているにもかかわらず,テキスト・ベース・インタフェースを使用したい場合は,[ファイル] メニューから [中止] オプションを選択して,インストレーション・ユーザ・インタフェースを終了します。 そして,次のコマンドを入力します。
# restart nogui
グラフィック機能を備えていないシステムでは,次のようなメッセージが表示されます。
Welcome to the Tru64 UNIX Installation Procedure This procedure installs Tru64 UNIX onto your system. You will be asked a series of system configuration questions. Until you answer all questions, your system is not changed in any way. During the question and answer session, you can go back to any previous question and change your answer by entering: "history" You can get more information about a question by entering: "help" Refer to the "Installation Guide" and "Installation Guide -- Advanced Topics" for more detailed information about installing Tru64 UNIX. ** This system is currently running firmware revision: n.n See the "Tru64 UNIX Release Notes" for information regarding the required firmware revision. The following options are available: o The "U.S. English Installation" installs only the Tru64 UNIX base software onto your system. o The "Installation with Worldwide Language Support" (WLS) allows you to internationalize your system. This option will allow you to install the Tru64 UNIX base software as well as WLS software. The additional software subsets provide support for various countries and their native languages. o The "Exit Installation" option stops the installation, and puts your system in single-user mode with superuser privileges. This option is intended for experienced UNIX system administrators who want to perform file system or disk maintenance tasks prior to the installation. This option may also be used for disaster recovery on a previously installed system. Remember, you can always get extra information by typing help. 1) U.S. English Installation 2) Installation with Worldwide Language Support 3) Exit Installation Enter your choice:
これを翻訳すると,以下のようになります。
Welcome to the Tru64 UNIX Installation Procedure このプロシージャは,Tru64 UNIX をシステムにインストールします。 ユーザはシステム構成に関する一連の質問を受けることになります。 ユーザがすべての質問に答えるまでは,システムはいかなる変更も行われません。 質問応答セッション時に,"history" と入力することによって,ユーザは以前の 任意の質問まで戻って,それに対する回答を変更することができます。 また,"help" と入力することによって,個々の質問についての詳細を 知ることができます。 Tru64 UNIX のインストール方法の詳細については,『インストレーション・ガイド』と 『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。 ** 本システムは,現在ファームウェア・リビジョン番号 6.5 で動作中です。 必要なファームウェア更新番号については,『Tru64 UNIX リリース・ノート』を 参照してください。 以下のオプションを選ぶことができます。 o 「U.S. English Installation」 (U.S. 英語版インストレーション) は, Tru64 UNIX のベース・ソフトウェアだけをシステムにインストールします。 o 「Installation with Worldwide Language Support」 (ワールドワイド言語 サポート付きインストレーション) オプションによって,システムを国際化することが できます。 このオプションを使えば,WLS ソフトウェアだけでなく,Tru64 UNIX の ベース・ソフトウェアもインストールすることができます。 この追加ソフトウェア・ サブセットは,さまざまな国別設定とネイティブ言語に対する サポートを提供します。 o 「Exit Installation」 (インストレーションの終了) オプションを選べば, インストレーションは停止し,システムは,スーパユーザ特権を持った シングルユーザ・モードに切り換わります。 このオプションは経験のある UNIX システム管理者向けのもので,インストレーションの前にファイル・システムや ディスクの保守作業を実行したい場合に利用できます。 また,このオプションは, 以前インストールされたシステム上での障害復旧に使われる場合もあります。 help と入力することによって,いつでも詳しい情報を得ることができることを 憶えておいてください。 1) U.S. English Installation 2) Installation with Worldwide Language Support 3) Exit Installation Enter your choice:
オンライン・ヘルプは,任意のプロンプトで
help
という単語を入力すると表示されます。
任意のプロンプトで
history
という単語を入力すると,いつでも選択内容を変更したり参照することができます。
以前の選択内容の一覧が,次のように表示されます。
Enter your choice: history Select the question you want to revisit. 1) Installation type ( 1 ) 2) Set root password ( LSWNUMtIomZVg ) 3) Confirm root password ( LSWNUMtIomZVg ) 4) Software selection type ( custom ) 5) Select software subsets ( 34 items: OSFADVFSBIN540 OSFBASE540 OSFBIN540 OSFBINCOM540 OSFCDEDT540 OSFCDEMAIL540...) 6) Confirm chosen subsets ( 1 ) 7) Select locales ( ) 8) DISMISS history menu Enter your choice:
インストレーションのクローニング処理でシステムをインストールすることを指示する
install.cdf
ファイルをフル・インストレーション・プロセスが検出した場合,次のような画面が (どちらのユーザ・インタフェースでも) 表示されます。
Found file install.cdf on <location> A Configuration Description File was specified for use during the installation of this system. The Configuration Description File can be used by the installation to provide the information related to file system layout and software selection. If you choose to use the Configuration Description File, the installation will proceed and you will not have to answer any questions. If you decide not to use the Configuration Description File, the installation will continue interactively. Would you like to use the Configuration Description File? (y/n) [y]: y In a few moments, the installation will begin. However, the Configuration Description File will first be validated for use on this system. After the validation completes, you no longer need to be present.
CDF
のチェックが正常に終了した場合,インストレーション・プロシージャは,6.17.1 項に示すように続行されます。
ファイル・システムとスワップ領域は CDF で指定されたとおりに作成され,ファイル・システムの作成後,CDF で定義されたソフトウェア・サブセットのロードが開始されます。
RIS
インストレーションを行っている場合,ホスト名,ロケーションや地域,日付や時刻などのサイト固有の情報は,RIS サーバから取得されます。
CD-ROM インストレーションを行っている場合,ホスト名,ロケーション,地域は,すべて CDF のフィールドから取得されます。
CDF 変数
timeset
が空白か,no
に設定されている場合,システムは日付と時刻を要求します。
timeset
が
yes
に設定されている場合,システム時刻は,最初のユーザ・ログイン時に
date
コマンドを使用して設定されます。
インストレーション処理の後半で,新しくインストールしたディスクからのブートが要求されます (6.17.2 項を参照)。
そして,root
パスワードが CDF 内に指定されていない場合は,root パスワードの入力が要求されます (6.11 節を参照)。
CDF のチェックでエラーが見つかった場合のように,インストレーションのクローニングについての詳しい情報が必要な場合は,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
6.7 [ステップ 4]: フル・インストレーションに必要なセットアップ情報の指定
フル・インストレーション時に指定する必要のある情報を 表 6-2 に示します。
指定する情報は,ユーザ・インタフェースに関係なく同じです。
ただし,情報が要求される順序が異なることがあります。
たとえば,グラフィカル・インタフェースでは,最初に,ホスト固有情報の入力が求められます。
テキスト・ベース・インタフェースでは,最初に,ワールドワイド言語サポート・ソフトウェアをインストールするかどうかが質問されます。
表 6-2: フル・インストレーションで指定する情報
フル・インストレーションで要求される情報 | ユーザの動作 |
ホスト情報 (Host Information) | CD-ROM からインストールしている場合は,次の情報を指定します。 インストレーションのセットアップ中にこの情報を入力しなかった場合,後で構成フェーズになってから,この情報の入力が要求されます。 6.8 節,6.9 節,および 6.10 節で,ホスト固有情報とサイト固有情報を入力するためのガイドラインを示します。 RIS サーバからオペレーティング・システムをインストールしている場合,ホスト情報とサイト情報は,サーバから自動的に取得されます。 |
root パスワード (root Password) | root
ユーザのパスワードを設定します。
インストレーションのセットアップ中にパスワードを入力しなかった場合,システム構成に入る前 (リブート後) に,パスワードの設定と確認が要求されます。
効果的なパスワードを選択するためのガイドラインを,6.11 節に示します。 |
ソフトウェアの選択 (Software Selection) | インストールするソフトウェア・サブセットのタイプを選択します。 省略時は必須ソフトウェア・サブセットのみがインストールされますが,インストールしたいオプション・ソフトウェアを選択することも,すべての必須ソフトウェア・サブセットとすべてのオプションのソフトウェア・サブセットをインストールするように指定することもできます。 サブセットの選択オプションについては,6.12 節で説明します。 |
ワールドワイド言語サポート (Worldwide Language Support) | 追加の言語ソフトウェアをインストールするかどうかを指定します。 テキスト・ベース・インタフェースでは,処理の最初にこの判断を求められます。 グラフィカル・ユーザ・インタフェースでは,ソフトウェア選択ステップ中に,使用する言語を選択するように求められます。 |
ファイル・システム・レイアウト (File System Layout) | 省略時のファイル・システム・レイアウトを使用するか,それとも
/
(ルート),/usr ,/var ,および
i18n
のファイル・システムと
swap
領域に関して,ファイル・システム・レイアウトをカスタマイズするかを決定します。
シングルディスクにオペレーティング・システムをインストールし,省略時のファイル・システム・レイアウトを使用したい場合は,省略時設定を受けいれることができます。
ファイル・システム・レイアウトのオプションについては,6.14 節で説明します。
インストールに使用する各ディスク上の
LSM
(Logical Storage Manager) ボリュームにインストールするためのオプションについては,6.14.4 項で説明します。 |
カーネル・オプション (Kernel Component Options) | カーネルに組み込むカーネル構成要素のタイプを選択します。 必須のカーネル構成要素のみ,必須構成要素と選択したオプションの構成要素,またはすべての必須構成要素とすべてのオプション構成要素のいずれかを選択できます。 カーネル・オプションについては,6.18 節で説明します。 カーネル構成要素の選択をカスタマイズするオプションを選択すると,最初のシステム・リブート後に,この作業を実行することになります。 |
フル・インストレーション・プロシージャは,6.8 節で始まり,6.16 節で終わります。 これらの節では,グラフィカル・インタフェースでの手順を中心に説明していますが,テキスト・ベース・インタフェースでも同じガイドラインを使用する必要があります。 ただし,情報を指定する方法が異なる場合は明記しています。
注意
他のユーザや顧客に代ってオペレーティング・システムをインストールする場合には,ホスト固有情報やサイト固有情報の入力を避けなければならないこともあります。 このような場合には,次のようにして対処できます。
コンソール環境変数
boot_osflags
にhalt
を設定します (6.3 節を参照)。ホスト名,日付や時刻,ロケーションや地域,
root
パスワードを入力しないでください。 フル・インストレーション・プロシージャはソフトウェア・サブセットのロード後,この情報を要求するために停止します。 これにより,このシステムのエンド・ユーザは,システムをブートして自分のホスト固有情報とサイト固有情報を指定することができます。
ホスト名は,ネットワーク上でシステムを識別するために使用されます。
グラフィカル・インタフェースでは,さまざまなホスト固有情報とサイト固有情報が,図 6-2
に示す「Host Information」ダイアログ・ボックスに表示されます。
このダイアログ・ボックスの残りのフィールドの情報を指定する方法については,6.9 節
と
6.10 節を参照してください。
図 6-2: 「Host Information」ダイアログ・ボックス
ホスト名を指定しなかった場合,システムのリブート後,最適化カーネルの構築前にフル・インストレーションが停止し,ホスト名の入力をユーザに求めます。
6.8.1 ホスト名選択のガイドライン
ホスト名には,2 〜 63 文字の大文字または小文字の英数字 ( a-z,A-Z,0-9
) が使用できます。
完全修飾ホスト名 (たとえば,mysystem.boston.bigcorp.com
) には,最大 254 文字を使用できます。
ドメイン名の各構成要素には最大 63 文字を使用でき,各構成要素はピリオドで区切ります。
ホスト名は,英字で始めなければなりません。
ハイフン ( -
) とピリオド ( .
) は,ホスト名に使用できます。
ホスト名を決定する前に,サイトの管理者に問い合わせて,選択した名前が他の名前と重複していないことを確認してください。 また,サイト固有の制限 (最大長など) や命名規則が定義されていないか確認してください。
システムが以前のバージョンのオペレーティング・システムで動作していて,すでにネットワークに接続されている場合は,同じホスト名を使用する必要があります。 これは,ホスト名を変更すると,ネットワーク上の他のシステムから認識できなくなるためです。
表 6-3
に,正しいホスト名と正しくないホスト名の例を示します。
表 6-3: 正しいホスト名と正しくないホスト名の例
正しいホスト名 | 正しくないホスト名 |
mysystem |
generic
または
binary
[脚注 11]
|
y2k1-system.com |
2001-system.com |
system1 |
1.system |
xyz-college.edu |
xyz_college.edu |
システムの日付を,次の順で入力します。
mm
- 現在の月
dd
- 現在の日
[cc]yy
- 2 桁表記 (yy
) または 4 桁表記 (ccyy
) の現在の年。
たとえば,01
と
2001
は,2001 年として正しい入力です。
07 06 2001
と
07 06 01
というフォーマットと順序で入力された数字は,どちらも 2001 年 7 月 6 日を表します。
テキスト・ベース・インタフェースでは,これらの数字をハイフン ( -
) で区切る必要があります。
たとえば,07-06-01
のように入力します。
システム時刻は,次の順で,2 組の 2 桁の数字 (24 時間表記を使用) を入力して設定します。
hh
- 2 桁の現在の時間
mm
- 2 桁の現在の分
たとえば,hh
フィールドに入力された
14
という数値は,午後 2 時を表します。
また,mm
フィールドに入力された
06
という数値は,6 分を表します。
日付と時刻のどちらかを入力すると,もう一方も入力する必要があります。 日付と時刻を入力すると,システムの日付とクロックがすぐに設定されます。
日付と時刻を指定せず,リブートの前にシステムが停止するように設定していない場合は,フル・インストレーション・プロシージャは,システムのリブート後,最適化カーネルの構築前に停止し,現在の日付と時刻の入力をユーザに求めます。
6.10 ロケーションと地域 (以前のタイム・ゾーン) の設定
Version 5.0 のオペレーティング・システムから,タイム・ゾーンの命名規則が,地域/ロケーション
という形式 (たとえば,Asia/Tokyo
や
Pacific/Honolulu
) になりました。
地域
は大陸または海洋の名前で,ロケーション
は,その地域内の主な都市またはロケールの名前です。
以前のバージョンのオペレーティング・システムでは,国/タイム・ゾーン
というスタイル (たとえば,US/Eastern
) が使用されていました。
すべての
/etc/zoneinfo
ディレクトリとタイム・ゾーン・ファイルは互換性を維持するために今でも利用できますが,多くのファイルはリネーム後の対応ファイルにハード・リンクされています。
指定したロケーションと地域は,タイム・ゾーンの設定に使用されます。
自分のサイトの地理上の位置を最も正確に表すロケーションと地域を選択する必要があります。
日本語ロケールの場合,省略時のロケーションは,アジア/東京 (Asia/Tokyo)
です。
他のユーザの代りにインストレーションを行っている場合は,ロケーションと地域に
none
を設定することもできます。
ロケーションと地域を指定せず,リブートの前にシステムが停止するように設定 (6.6 節を参照) していない場合は,フル・インストレーション・プロシージャはシステムのリブート後に停止し,ロケーションと地域の情報の入力をユーザに求めます。
6.11 root パスワードの設定
UNIX オペレーティング・システムでは,スーパユーザは,一般ユーザより高い権限を持つことができます。
スーパユーザは,root
ユーザとも呼ばれます。
スーパユーザは通常,システム管理作業の責任者です。
このユーザはすべてのファイルとすべてのデバイスにアクセスでき,オペレーティング・システムにどのような変更でも加えることができます。
このため,root
ユーザ (root
アカウント) には,特別なパスワードが必要になります。
6.11.1 項で,効果的な
root
パスワードを選択するためのガイドラインを説明します。
図 6-3
に,「Set Root Password」ダイアログ・ボックスを示します。
図 6-3: 「Set Root Password」ダイアログ・ボックス
次の規則に従うパスワードを選択してください。
文字数は,6 〜 16 文字でなければなりません。
大文字と小文字の英字が混在していなければなりません。
最初の 6 文字のうち,少なくとも 1 文字を数字,特殊文字,または英大文字にしなければなりません。
必須ではありませんが,数字や,ドル記号 ( $
),パーセント記号 ( %
),シャープ記号 ( #
),ピリオド ( .
),ハイフン ( -
),下線 ( _
),アットマーク記号 ( @
) などの特殊文字を,パスワードに含めることをお勧めします。
特殊文字や数字をパスワード内で使用しない場合は,最初の 6 文字のうち少なくとも 1 文字を英大文字または数字としなければなりません。
パスワードを入力する際,セキュリティ上の理由で,パスワードは画面には表示されません。
確認のために,新しいパスワードを再入力する必要があります。
インストール後,最初に
root
としてシステムにログインする際に必要ですので,このパスワードを憶えておいてください。
システムのインストール後,root
のパスワードはいつでも変更できます (passwd
コマンドを使用)。
root パスワードを指定せず,リブートの前にシステムが停止するように設定していない場合は,フル・インストレーション・プロシージャは,システムのリブート後,最適化カーネルの構築前に停止し,root
のパスワードの入力をユーザに求めます。
6.11.1 効果的なパスワード選択のガイドライン
root パスワードを選択する際には,以下の単語や情報は避けてください。
言語を問わず,辞書に載っている単語
名前,姓,住所,誕生日,電話番号,ペットの名前など,自分自身や家族に関する個人情報
辞書に載っている単語と個人情報の組み合わせ
知人が推測できるパスワードは選択しないでください。
root
ユーザはオペレーティング・システムに対する絶対的な権限を持っているため,root
パスワードは特に慎重に保護しなければなりません。
基本的なガイドラインは,自分は憶えられるが,他人が推測しづらいパスワードにすることです。
6.11.2 root パスワードの例
表 6-4
に,推奨ガイドラインを守っているパスワードと,守っていないパスワードの例を示します。
これらのパスワードは,あくまでも例として示しています。
実際のパスワードとしては使用しないでください。
表 6-4: root パスワードの例
正しい root パスワード | お勧めできないパスワード | ガイドラインに反している理由 |
OhU8one2too |
johnsmith
|
本当の名前をそのまま小文字で使用しているため |
UrGr8t!! |
123MainStreet
|
住所であるため |
parTe2nite |
MyDogLassie
|
ペットの名前であるため |
99Pnt.99% |
6July58
|
家族の誕生日であるため |
フル・インストレーションで,ホスト情報の指定,日付と時刻の設定,root パスワードの指定に続くステップは,インストールするソフトウェアのタイプの選択です。
グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合は,図 6-4
に示す「Software Selection」ダイアログ・ボックスが表示されます。
テキスト・ベース・インタフェースでも,同じ情報が表示されます。
図 6-4: 「Software Selection」ダイアログ・ボックス
表 6-5
に,4 種類のソフトウェア・サブセットを示します。
各ソフトウェア・サブセットについては,付録 C
で説明します。
表 6-5: ソフトウェア選択オプションの説明
オプション | 説明 |
最小構成 (Mandatory Only) | このオプションは,ベース・オペレーティング・システムの実行に最低限必要なソフトウェア・サブセットをインストールするためのものです。 必須ソフトウェア・サブセットは必ずインストールされます。 このオプションは,グラフィカル・ユーザ・インタフェースでの省略時のオプションです。 |
すべてのソフトウェア (All Software) | このオプションは,ベース・オペレーティング・システムのすべての必須ソフトウェア・サブセットと,ワールドワイド言語サポート (追加の国別サポートを選択しない場合) と別キットの TCR (TruCluster Server) ソフトウェアを除くすべてのオプション・ソフトウェア・サブセットをインストールするためのものです。 |
カスタマイズ (Customize) | このオプションでは,必須ソフトウェアの他に,どのオプション・ソフトウェア・サブセットをインストールするかを選択することができます。 6.12.1 項で,ソフトウェア選択処理のカスタマイズについてのヒントを説明します。 |
国別サポート (Country Support) | このオプションは,グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用しているときに,1 つ以上の追加の言語サポートを選択するためのものです。 各国には,オペレーティング・システムの地域化を可能とするソフトウェア・サブセット群があります。 省略時の設定は,米国の英語です。 すべてのベース・オペレーティング・システム・サブセットと,1 つ以上の追加の言語をインストールした場合,選択された各国の WLS サブセットがすべてインストールされます。 |
必須ソフトウェア・サブセット,オプション・ソフトウェア・サブセット,WLS ソフトウェア・サブセットについては,付録 Cを参照してください。
6.12.1 オプションのソフトウェア選択に関するヒント
「カスタマイズ」オプションを選択し,[リストの編集...] ボタンをクリックすると,図 6-5 に示す「Software Section: Edit List」ダイアログ・ボックスが表示されます。 このダイアログ・ボックスでは,インストールするオプションのソフトウェアを選択します。
注意
ダイアログ・ボックスの下部の説明は,各ソフトウェア・サブセットの現在の状態を示しています。 ソフトウェア・カテゴリ内に含まれている各ソフトウェア・サブセットを表示するには,プラス記号 (+) をクリックします。 カテゴリをクローズするには,マイナス記号 (-) をクリックします。
図 6-5: 「Software Subsets: Edit List」ダイアログ・ボックス
ソフトウェア・サブセットを選択するときには,ソフトウェア・サブセット・カテゴリ (「General Applications」など) または,カテゴリ内の個々のソフトウェア・サブセット (「DOS Tools」など) を選択することができます。 別の,まだ選択されていないソフトウェア・サブセットに依存するソフトウェア・サブセットを選択すると,この依存対象のサブセットも自動的に選択されます。 依存対象のあるサブセットを選択すると,次のようなメッセージのダイアログ・ボックスが表示されます。
The chosen subset(s) require one or more additional subset(s) which will be loaded automatically: * Doc. Preparation Tools (OSFDCMT540)
このように 1 つずつソフトウェア・サブセット (またはカテゴリ) を選択する方法以外に,まず一番上のカテゴリ (「Tru64 UNIX V5.1B Operating System」) を選択してから,必要としないカテゴリまたはサブセットをクリックして選択項目から外す方法があります。 その際,すべてのサブセットを追加するとシステムに不必要なソフトウェアまで含まれることになるため,キーボード・タイプ,X サーバ,フォントに関連するハードウェア固有サブセットはすべて削除してください。 なお,このユーザ・インタフェースでは,システムのハードウェア構成上必須のソフトウェア・サブセットを削除することはできません。
次の手順で,インストールするオプション・ソフトウェアを選択してください。
付録 Cで,すべてのソフトウェア・サブセットの説明を参照してください。
「Software Selection」ダイアログ・ボックスで,「カスタマイズ」を選択してから,[リストの編集...] ボタンをクリックします。
オプションのソフトウェア・サブセットを選択します。
サブセットの選択が完了したら,ダイアログ・ボックスの下部に表示される,/
,/usr
,/var
ファイル・システムに必要なディスク・スペース (「必要なディスク容量」) の情報に注意してください。
この情報を使用して,インストールするソフトウェアを十分格納できる大きさのディスクおよびパーティションを選択してください。
注意
フル・インストレーション処理が提示する推奨パーティションを使用したくない場合は,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』のディスク・パーティションの設定についての情報を参照してください。 そして,「必要なディスク容量」の値を使用して,この後フル・インストレーション処理中に選択するディスクをどれにするかを決めます。
フル・インストレーションの次のステップでは,インストレーション処理の終盤の構成フェーズでカーネルに組み込むカーネル構成要素のタイプを選択します。
インタフェースに関係なく,カーネル構成要素の組み込みに関するオプションは 3 つあります。
グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合,図 6-6
のダイアログ・ボックスが表示されます。
図 6-6: 「Kernel Options」ダイアログ・ボックス
表 6-6 に,カーネル構成要素オプションを示します。
オプション | 説明 |
最小構成 (Mandatory Only) | このオプションは,インストールするソフトウェア・サブセットを正常に動作させる上で最低限の必須カーネル構成要素をカーネルに組み込むためのものです。 グラフィカル・ユーザ・インタフェースの場合,これが省略時のオプションです。 |
すべてのオプション (All Options) | このオプションは,カーネルにすべてのカーネル構成要素を組み込むためのものです。 各カーネル構成要素は,追加のコードをカーネルにロードします。 このため,すべてのオプションを選択すると,カーネルのサイズが著しく,不必要に増加し,性能に影響を与える可能性があります。 |
カスタマイズ (Customize) | このオプションを選択すると,システムのリブート後 (6.17.2 項を参照) に表示される「Kernel Options Selection」メニューから,特定のカーネル構成要素を選択できます。 メニューに表示されるカーネル構成要素は,インストールされているソフトウェア・サブセットによって異なります。 カーネル構成要素の選択については,6.18 節 を参照してください。 |
インストールするソフトウェア・サブセットを選択した後,そのソフトウェア・サブセットをどこにインストールするかを決定する必要があります。
ファイル・システム・レイアウトの選択には,標準の UNIX ファイル・システム (/
,/usr
,/var
,1 つ以上の追加言語を選択した場合
/usr/i18n
) とスワップ領域をインストールするディスクおよびディスク・パーティションの選択が含まれます。
そして,各ファイル・システムのファイル・システム・タイプとして
AdvFS
(Advanced File System) を割り当てる (省略時の設定) か,UFS
(UNIX ファイル・システム) を割り当てるかを決定します。
フル・インストレーションでは,省略時のファイル・システム・レイアウトを使用するか,ファイル・システム・レイアウトを完全にカスタマイズするかを選択できます。
図 6-7
のダイアログ・ボックスに,ファイル・システム・レイアウトの選択肢を示します。
図 6-7: 「Select File System Layout」ダイアログ・ボックス
6.14.1 項に,省略時のファイル・システム・レイアウトを選択すべき状況について説明します。
また,6.14.2 項に,ファイル・システム・レイアウトのカスタマイズを選択すべき状況について説明します。
6.14.1 省略時のファイル・システム・レイアウトを使用するケース
次の条件に当てはまる場合は,省略時のファイル・システム・レイアウトを使用できます。
保存したいデータがディスク上にない。
注意
省略時のファイル・システム・レイアウトを選択するか,ディスクにディスク・ラベルがない場合,インストレーション処理は省略時のディスク・ラベルを再度書き込みます。 既存のデータは,ディスク・パーティション・テーブルを上書きする時に消えてしまいます。
システムが備えているディスクが 1 台だけである (容量が 1 GB 以上)。
システムは複数のディスクを備えているが,オペレーティング・システムは 1 台のディスクにインストールしたい。
注意
複数のディスクがある場合,1 GB のディスク 1 台にフル・インストレーションを行うことは可能ですがお勧めできません。 性能が低下するだけでなく,追加のソフトウェアやパッチをインストールすることができません。 また,クラッシュ・ダンプが保存できないため,ディスク・クラッシュが発生した場合のルート・ディスクの回復が非常に難しくなります。
/
(ルート) ファイル・システムを 1 台のディスクに置き,/usr
ファイル・システムとスワップ領域 を他のディスクに置く方法をお勧めします。 ユーザのアカウントとファイルはこれらとは別のディスクに置き,/usr
の下にマウントしてください。インストールしているシステムがクラスタのリード・メンバになる場合,1 GB のディスクでは小さすぎます。 クラスタでのディスク・スペースの推奨事項は,『クラスタ・インストレーション・ガイド』に記載されています。
カスタム・ディスク・パーティションを作成する必要がない。
スワップ領域は 1 つだけでよい。
すべてのファイル・システムに対して,ファイル・システム・タイプは 1 種類でよい。
省略時のファイル・システム・レイアウトを使用したい場合は,使用しているインタフェースにかかわらず,次の事項について選択を行う必要があります。
オペレーティング・システムをインストールするディスクを 1 つ選択する。
選択するディスクには,1 GB 以上の容量が必要です (1 GB のディスクにインストールする場合の制限については,直前の「注意」を参照してください)。 推奨するパーティション・テーブルが,選択したディスクに適用されます。 表 6-7 に示すように,パーティションのサイズはディスクの容量に応じて異なります。
表 6-7: ディスク容量ごとの推奨パーティション・テーブル
ディスク容量ごとのファイル・システム・サイズ | |||
ファイル・システムの名前と位置 | 1 GB ディスク | 2 GB ディスク | 3 GB 以上のディスク |
/
(ルート) パーティション
a
|
128 MB | 256 MB | 384 MB |
/usr
パーティション
g |
745 MB | 1490 MB | 2235 MB |
スワップ領域パーティション
b |
128 MB | 256 MB [脚注 12] | 384 MB [脚注 12] |
すべてのファイル・システム用にファイル・システム・タイプを 1 つだけ選択する。
省略時設定の AdvFS (Advanced File System) か,UFS (UNIX ファイル・システム) が選択できます。 UFS と AdvFS の説明および比較については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
注意
システムをクラスタのメンバとして使用する場合は,ファイル・システム・タイプには AdvFS を選択しなければなりません。
LSM ボリュームにインストールするかどうかを決定する。
LSM ボリュームにインストールするかどうかを決定する際の参考になる LSM (Logical Storage Manager) の情報については,6.14.4 項を参照してください。
注意
LSM ボリュームはクラスタでは使われないため,システムがクラスタのメンバになる場合は,LSM ボリュームへインストールするオプションは選択しないでください。
省略時のファイル・システム・レイアウトを選択した場合の表示は,使用しているインタフェースによって異なります。
グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合,[省略時のファイルシステム構成] オプションを選択すると,図 6-8
に示すダイアログ・ボックスが表示されます。
図 6-8: 「Default File System Layout」ダイアログ・ボックス
dsk0 と表示されたディスク・ボタンの上でマウスの左ボタンを押して,システム上で利用可能なディスクの一覧を表示します。 そのディスク一覧から,使用したいディスクを強調表示してマウス・ボタンを離します。
グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合は,[詳細...] ボタンを押して図 6-9
に示すディスクの詳細を表示し,正しいディスクを選択したか確認できます。
この図に表示されているパーティション・サイズは,架空のものです。
/usr/i18n
ファイル・システムには,国際化
(i18n
) に必要なサブセットがインストールされます。
このファイル・システムは,1 つ以上の追加言語のサポートを選択した場合だけ表示されます。
図 6-9: 「Default File System Layout: Details」ダイアログ・ボックス
ディスクの詳細を見直した結果,選択したディスクやファイル・システム・タイプを変更したい場合は,「Details」ダイアログ・ボックスをクローズし,別のディスクやファイル・システム・タイプを選択します。 それでも満足できるレイアウトが得られない場合は,「File System Layout」ダイアログ・ボックスに戻ってファイル・システム・レイアウトをカスタマイズするオプションを選択し,適切な構成にします。
物理ディスクと
dsk*
デバイス名の対応が分からない場合は,[ディスクの確認...] ボタンをクリックして,図 6-10
に示すダイアログ・ボックスを表示してください。
このダイアログ・ボックスの指示に従って,ディスクの入出力 LED を点滅させてください。
図 6-10: 「Identify Disk」ダイアログ・ボックス
例 6-1
に,テキスト・ベース・インタフェースを使用した場合の,省略時のファイル・システム・レイアウトのディスク選択ダイアログ・ボックスを示します。
例 6-1: テキスト・ベース・インタフェース: 省略時のファイル・システム・レイアウト
Select a disk for the root file system. The root file system will be placed on the "a" partition of the disk you choose. To visually locate a disk, enter "ping <disk>", where <disk> is the device name (e.g., dsk0) of the disk you want to locate. If that disk has a visible indicator light, it will blink until you are ready to continue. Device Size Controller Disk Name in GB Type Model Location 1) dsk0 8.5 SCSI RZ1DF-BF bus-0-targ-0-lun-0 2) dsk1 8.5 SCSI HSZ70 bus-4-targ-0-lun-0 3) dsk2 8.5 SCSI HSZ70 bus-4-targ-0-lun-1 Select the file system type. All of the file systems will be created with this type. 1) UFS -- UNIX File System 2) AdvFS -- Advanced File System Enter your choice: 1 You have requested this file system layout: * root file system on dsk0a, type UFS * /usr file system on dsk0g, type UFS * var will be a directory in the /usr file system * i18n will be a directory in the /usr file system * first swapping area (swap1) will be on dsk0b * no second swapping area (swap2) Is this the correct file system layout (y/n)
例 6-2
に,システムがディスクを 1 台しか備えていない場合の,省略時のファイル・システム・レイアウト画面を示します。
例 6-2: テキスト・ベース・インタフェース: 1 ディスクの場合の省略時のファイル・システム・レイアウト
Only one disk detected in this system (/dev/dsk0, SCSI RZ1DF-BF type). All file systems will be on that disk. Select the file system type. All of the file systems will be created with this type. 1) UFS -- UNIX File System 2) AdvFS -- Advanced File System Enter your choice:
テキスト・ベース・インタフェースを使用していて,物理ディスクと
dsk*
名の対応がはっきりしない場合は,ping
disk_name
と入力することによって識別できます (例 6-3
を参照)。
ディスクに入出力 LED がある場合,その LED が点滅します。
すべてのディスクに入出力 LED がある訳ではないので,この方法では識別できないディスクもあります。
例 6-3: テキスト・ベース・インタフェースでのディスクの識別
To visually locate a disk, enter "ping <disk>", where <disk> is the device name (e.g., dsk0) of the disk you want to locate. If that disk has a visible indicator light, it will blink until you are ready to continue. Device Size Controller Disk Name in GB Type Model Location 1) dsk0 8.5 SCSI RZ1DF-BF bus-0-targ-0-lun-0 2) dsk1 8.5 SCSI HSZ70 bus-4-targ-0-lun-0 3) dsk2 8.5 SCSI HSZ70 bus-4-targ-0-lun-1 Enter your choice: ping dsk0 ** Identifying device dsk0
省略時のファイル・システム・レイアウトでの指定が完了したら,6.15 節に進みます。
6.14.2 ファイル・システム・レイアウトのカスタマイズが必要になるケース
次のいずれかの条件に当てはまる場合は,ファイル・システム・レイアウトをカスタマイズする必要があります。
標準の UNIX ファイル・システムを,複数のディスクに分散させてインストールしたい場合。 ディスクを 6 台まで指定できます。 各ファイル・システムとスワップ領域は,個別のディスクに置くことができます。
/
(ルート) ファイル・システムを 1 つのディスクに置き,/usr
ファイル・システムと
スワップ領域
を別のディスクに置く方法をお勧めします。
ユーザ・データは,これらとは別のディスクに置くようにしてください。 ユーザ・アカウント用には,独立したファイル・システムをマウントし,後でフル・インストレーションを実行してもユーザの情報が上書きされないようにすることをお勧めします。 このようにすると,ユーザ・アカウントを保持したままオペレーティング・システムの再インストールが行えるため,障害からの回復も簡単になります。
システムをクラスタ・メンバとして使う場合。 クラスタには,特別なディスク・スペース要件があります。 このため,『クラスタ・インストレーション・ガイド』を参照してから,クラスタ・メンバのフル・インストレーションの際のディスク選択およびパーティション選択を行ってください。
AdvFS ファイル・システム・タイプと UFS ファイル・システム・タイプの両方を使用したい場合。
ディスク・パーティション・サイズをカスタマイズしたい場合。
スワップ領域が 2 つ必要な場合。
6.14.5 項で説明しているように,インストール先のディスク上にある既存のデータを消したくない場合。
システムをデータレス・サーバまたは RIS サーバとして使用する予定の場合。
このようなタイプのサーバの
/var
ファイル・システムに追加する必要のあるスペースの詳細については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
カスタム・ファイル・システム・レイアウトを使用する場合は,次の事項について選択する必要があります。
LSM ボリュームにインストールするかどうかを決定する。
LSM を使用するかどうかを決定する際の参考になる LSM の詳細については,6.14.4 項を参照してください。
注意
LSM ボリュームはクラスタでは使われないため,システムがクラスタのメンバになる場合は,LSM ボリュームへインストールするオプションは選択しないでください。
各ファイル・システム用のディスクおよびディスク・パーティションを選択する。
/
(ルート),/usr
,/var
,および
(/usr/i18n
/usr/i18n
をディレクトリではなくファイル・システムにする場合) の各ファイル・システムを格納するディスクおよびディスク・パーティションを選択しなければなりません。
/usr/i18n
ファイル・システムには,追加の言語サポートを選択した場合に,国際化に必要なサブセットがインストールされます。
/
(ルート) ファイル・システムは,選択した格納先ディスクの
a
パーティションに置かなければなりません。
これを変更することはできません。
/var
ファイル・システムと
/usr/i18n
ファイル・システムは,独立したディスク・パーティションにしないで,/usr
ファイル・システムに含めることもできます。
物理ディスクと
dsk*
デバイス名の対応が分からないときは,[ディスクの確認...] ボタンをクリックして,「identify disk」ダイアログ・ボックス (図 6-10
を参照) を表示します。
テキスト・ベース・インタフェースを使用している場合は,ping
disk_name
コマンドを使用します。
システム上ですでに以前のバージョンのオペレーティング・システムが稼働している場合は,フル・インストレーションの際に既存のデバイス名データベースをそのまま残す方法について,A.4 節を参照してください。
1 つまたは 2 つのスワップ領域用にディスクおよびディスク・パーティションを選択する。
スワップ領域は 2 つまで割り当てることができます。 各スワップ領域は,異なるディスクに置くことをお勧めします。 また,スワップ領域用には最も高速のディスクを選択することをお勧めします。 必要なスワップ領域の計算方法や,スワップ領域を配置する位置については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
参考までに,推奨ファイル・システム・レイアウトでは,省略時のスワップ・パーティション・サイズとして,1 GB ディスクでは 128 MB,2 GB ディスクでは 256 MB,3 GB 以上のディスクでは 384 MB を使用します。
各ファイル・システムのファイル・システム・タイプを選択する。
各ファイル・システムに対して,省略時設定である AdvFS (Advanced File System),または UFS (UNIX ファイル・システム) を選択できます。 UFS と AdvFS の説明および比較については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
注意
このシステムをクラスタのメンバとして組み込む場合は,すべてのファイル・システムのファイル・システム・タイプとして AdvFS を使用しなければなりません。
ファイル・システム・レイアウトのカスタマイズ時の表示は,使用しているユーザ・インタフェースによって異なります。
グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合,[ファイルシステム構成のカスタマイズ] オプションを選択すると,図 6-11
に示すダイアログ・ボックスが表示されます。
図 6-11: 「Custom File System Layout」ダイアログ・ボックス
Custom オプションでは,ディスクとファイル・システムを,自由に構成することができます。
/
(ルート) ファイル・システムを格納するディスクの
a
パーティションは,少なくとも 128 MB のサイズが必要です。
このサイズに満たない場合は,インストレーションを続行できません。
シングル・ディスクのインストレーションで推奨されるディスク・パーティションのサイズについては,表 6-7 を参照してください。 ここには,推奨されるパーティション・テーブルの省略時のファイル・システム・レイアウトがディスク容量別に示されています。
テキスト・ベース・インタフェースのディスク選択画面は,例 6-4のように表示されます。
このインタフェースでは,各ファイル・システムを十分格納できる大きさのパーティションを選択するためのガイドラインが表示されます。
この例では,ユーザが
LSM
ボリュームへのインストレーションを選択したため,LSM プライベート・リージョンを格納するために,2 MB の
d
パーティションが必要です。
例 6-4: テキスト・ベース・インタフェースを使用した,ディスク選択のカスタマイズ
Select the dsk0 partition where the LSM private region will reside. This partition must be larger than 2 MB in order to accommodate the LSM configuration for this disk. Start End Partition Size Block Block Overlaps 1) b 128MB 262144 524287 c 2) d 2.0MB 524288 528383 c 3) e 372MB 528384 1289621 c g 4) f 372MB 1289622 2050859 c g 5) g 743MB 528384 2050859 c e f Enter your choice: 2 Select the dsk0 partition where the /usr file system will reside. This partition must be larger than 269 MB in order to fit the software that you have selected. However, a size of 700 MB or greater is recommended to allow for additional layered software and future upgrade considerations. Start End Partition Size Block Block Overlaps 1) b 128MB 262144 524287 c 2) e 372MB 528384 1289621 c g 3) f 372MB 1289622 2050859 c g 4) g 743MB 528384 2050859 c e f Enter your choice: g Select the file system type for the /usr file system. 1) UFS -- UNIX File System 2) AdvFS -- Advanced File System Enter your choice: 2
ディスクとディスク・パーティションの選択を,すべてのファイル・システムとスワップ領域を割り当て終るまで続けます。
カスタム・ファイル・システム・レイアウトの指定が終わったら,6.15 節に進みます。
6.14.3 カスタム・ファイル・システム・レイアウト用のディスク・パーティションの設定
カスタム・ファイル・システム・レイアウトに対応するためにディスク・パーティションの再設定が必要な場合,どちらのユーザ・インタフェースからも,ディスク構成ツールへアクセスできます。
「Custom File System Layout」ダイアログ・ボックスの [パーティションの編集...] ボタンをクリックすると,グラフィカル・ユーザ・インタフェースから直接,ディスク構成アプリケーション
diskconfig
を起動できます。
ディスク構成アプリケーションではファイル・システム・タイプは変更できません。
この機能は,通常はインストレーションとは独立にアプリケーションを起動したときに有効になります。
既存のディスク・ラベルを変更しても,その変更は実際にインストレーション・プロセスが開始されるまで有効になりません。
変更を行った後,ディスク構成アプリケーションを終了すると,フル・インストレーション作業が再開されます (それまでに行った選択はすべてそのままです)。
任意のプロンプトで Ctrl/c を入力してシステムを
UNIX シェルに戻すと,テキスト・ベース・インタフェースから
disklabel
コマンドにアクセスできます。
ディスクの変更を行った後に,フル・インストレーションを再スタートします。
ここまでに行ったインストレーション上の選択は失われます。
ディスク・パーティションの変更はすぐに実行されるため,インストレーションの取り消しでは取り消すことはできません。
これらの変更でディスク上のデータが破損することがあります。
ディスク・パーティションの設定は,経験のあるユーザだけが行う作業なので,ディスク構成アプリケーション (UNIX シェルから実行する作業) と,disklabel
コマンドの使用方法については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』で説明しています。
6.14.4 LSM ボリュームへのインストレーションが必要になるケース
ディスク 1 台で省略時のファイル・システム・レイアウトを選択したか,2 台以上のディスクでファイル・システム・レイアウトをカスタマイズするかにかかわらず,システムを LSM ボリュームにインストールするかどうかを決める必要があります。
LSM オプションを選択すると,LSM が自動的に構成され,/
,/usr
,および
/var
ファイル・システムおよびスワップ領域が,ディスク・パーティションではなく LSM ボリューム内に直接構成されます。
LSM は,統合化されたホスト・ベースのディスク・ストレージ管理ツールで,データの消失を防ぎ,ディスクの入出力性能を向上させ,ディスク構成をカスタマイズします。
LSM は,ボリュームと呼ばれる仮想ディスクを,UNIX
システム・ディスク上に作成します。
ボリュームは,ファイル・システム,データベース,あるいは他のアプリケーションが使用するデータが格納された特殊デバイスです。
LSM は,物理ディスクとアプリケーションの間にボリュームを透過的に配置します。
これによりアプリケーションは,物理ディスクではなく,ボリュームに対して操作を行うことになります。
フル・インストレーション・プロシージャは,LSM に必要なソフトウェア・サブセットを自動的にインストールします。
LSM を使用するかどうかを判断するための情報が必要な場合は,4.1.3 項の LSM の機能の概要を参照してください。
LSM のミラーリングおよびストライピング機能を使用するには,個別のライセンスが必要です。
LSM プライベート・リージョン用に使用するパーティションの選択については,6.14.4.1 項を参照してください。
LSM ボリュームはクラスタでは使われないため,システムがクラスタのメンバになる場合は,LSM ボリュームへインストールするオプションは選択しないでください。
フル・インストレーションでの LSM ボリュームへのインストレーションは,一般的でも必須でもありません。 ただし,以前にこの機能を使用しており,LSM をインストールするために別の作業をする手間を省くために,インストレーション・オプションとして提供されるようになりました。
注意
6.14.4.2 項 では,LSM を使用するように構成されていたシステムに対して,フル・インストレーション・プロシージャが行う特殊な処理について説明します。
6.14.4.1 LSM プライベート・リージョン用のパーティションの選択
LSM
を選択した場合,インストールする各ディスクに対して,プライベート・リージョン・パーティションを選択する必要があります。
LSM はこれらのプライベート・リージョンを使用して,システム全体の構成情報を保持します。
複数のディスク上に複数のプライベート・リージョンを保持することにより,ディスクの故障のようなめったに発生しない障害に対するバックアップ機能が確保されます。
LSM プライベート・リージョンには,2 MB のディスク・スペースが必要です。
このため,LSM プライベート・リージョン用のパーティションは,少なくとも 2 MB のサイズが必要です。
パーティションは大きくても構いませんが,余ったスペースは他の用途には利用できません。
フル・インストレーション・インタフェースでの推奨ディスク・パーティション・レイアウトでは,すべてのディスクに 2 MB の
d
パーティションを用意します。
必要な場合は,このパーティションを LSM プライベート・リージョンとして使用します。
6.14.4.2 LSM で構成されていたシステムでの特殊な処理
LSM がすでに構成されているシステムに対してフル・インストレーションで LSM をインストールおよび構成する場合は,新しく LSM を選択できるように,クリーンアップ・プロシージャがシステムの準備を行います。 このプロシージャは,次のパーティションから LSM を削除して,フル・インストレーションでの選択内容が適用されるようにします。
新しいファイル・システム (/
,usr
,var
,/usr/i18n
,またはスワップ領域) 用に選択された,スライス・ディスク・パーティションまたはシンプル・ディスク・パーティション。
新しいファイル・システム用に選択されたパーティションとオーバラップする,スライス・ディスク・パーティションまたはシンプル・ディスク・パーティション。
フル・インストレーション・プロシージャが新しい LSM 構成の作成に使用する標準名を 1 つ以上含む LSM 情報が格納された,スライス・ディスク・パーティションまたはシンプル・ディスク・パーティション。
表 6-8
に,標準の LSM 名の一覧を示します。
表 6-8: LSM の標準名
LSM の構成要素 | 標準名 |
ディスク | root01,usr01,var01,swap01,sswap01,i18n01 |
ボリューム | rootvol,usrvol,varvol,swapvol,sswapvol,i18nvol |
プレックス | rootvol-01,usrvol-01,varvol-01,swapvol-01,sswapvol-01,i18nvol-01 |
サブディスク | root01-01,usr01-01,var01-01,swap01-01,sswap01-01,i18n01-01 |
このクリーンアップ・プロシージャは,フル・インストレーションでの選択内容で上書きされない既存の LSM 構成については,すべての情報 (ボリューム,プライベート・リージョン,ディスクなど) を保護します。 表 6-8に示す 4 つのLSM 構成要素として認識されない既存の LSM 情報は,すべて保護されます。 このクリーンアップ・プロシージャは,現在のブート・ディスクとは異なるディスクにインストールしている場合でも,すべての LSM パーティションに適用されます。
何らかの理由で構成要素が削除できなかった場合,フル・インストレーション・プロシージャは終了してシングルユーザ・モードになり,エラー・メッセージを表示します。
この時点で各種のコマンドが使用できるようになるので,既存の LSM 構成を調べて,手作業で障害の原因を取り除き,インストレーションを再スタートできるようにします。
既存の LSM 構成を調べるコマンドや,手作業で障害の原因を取り除く方法については,G.1.1.1 項を参照してください。
6.14.5 以前に使用されていたディスク上のデータの保護
単一のディスクへのオペレーティング・システムのインストール時に,既存のパーティション上のデータを保護したい場合は,既存のパーティションのサイズやオフセットが変更されないように,「ファイルシステム構成のカスタマイズ」オプションを選択します。
カスタム・オプションを選択すると,/
,/usr
,/var
ファイル・システムと,swap
領域をインストールするディスク・パーティションを選択できます。
選択したパーティションにデータ・ファイルやユーザ・ファイルが含まれている場合,そのデータは,新しいファイル・システムの作成時に失われます (重ね書きされます)。
保護したいデータを含むパーティションとオーバラップするパーティションを選択してこれらのファイル・システムを作成しても,同じ結果になります。
また,ディスク・ラベル内のパーティション情報を変更して,データが収められているパーティションのサイズとオフセットを変更しても,そのパーティション内のデータは失われます。
ただし,データが収められているパーティションに手を加えなければ,そのパーティション内のデータは保護されます。
インストレーション時に手が加えられなかったパーティション内のデータは,新しくインストールされたシステムでも使用できます。
このパーティションにファイル・システムが存在する場合は,そのパーティションをマウントして再びアクセスすることができます。
ファイル・システムのマウントについての詳細は,
mount
(8)
注意
フル・インストレーション・プロシージャは,ユーザ・データやユーザ・ファイル・システムが収められているパーティションで
/etc/fstab
ファイルを更新することはありません。 これらのパーティションをマウントしてユーザからデータを利用できるようにするには,フル・インストレーションの完了後,データが収められているパーティションのエントリを新しい/etc/fstab
ファイルに手作業で追加します。
Disk Configuration アプリケーションや
disklabel
コマンドでディスク・パーティションを再構成していない限り,システムの日付と時刻以外は何も変更されていません。
このステップは,ディスクとソフトウェアに関する選択内容を確認する最後のチャンスとなります。
グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合は,ディスクとファイル・システム・レイアウトの選択後,図 6-12
に示す「Installation Summary」ダイアログ・ボックスが表示されます。
図の要約データは,カスタム・ファイル・システム・レイアウト選択時のものです。
どの情報も,このダイアログ・ボックスから直接変更できます。
すべての選択内容が正しければ,[完了] をクリックします。
もう一度,インストレーションの開始の確認が行われます。
テキスト・ベース・インタフェースを使用している場合は,ファイル・システム・レイアウトの確認が求められます。
入力した内容を再表示して,必要に応じて変更するには,history
という単語を入力します。
図 6-12: 「Installation Summary」ダイアログ・ボックス
すべての選択内容を確認した後,インストレーションの開始の確認がもう一度行われます。
グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合は,「Summary」ダイアログ・ボックスで [完了] をクリックした後,図 6-13
に示す確認ダイアログ・ボックスが表示されます。
インストレーションを開始するには,ここで [了解] をクリックします。
図 6-13: 「Ready to Begin Installation」ダイアログ・ボックス
テキスト・ベース・インタフェースを使用している場合は,次のプロンプトで Return キーを押して,インストレーションを開始します。
You have now answered all questions needed to install Tru64 UNIX on this system. Press Ctrl/c to cancel the installation; or type "history" to modify your earlier answers; or press RETURN to proceed with installation:
インストレーションを取り消す方法については,6.16.1 項
を参照してください。
6.16.1 フル・インストレーションの取り消しと再スタート
この時点で,何らかの理由でインストレーションを開始したくない場合は,インストレーションを取り消すことができます。
グラフィカル・インタフェースを使用している場合は,「Ready to Begin Installation」ダイアログ・ボックスの [取消] をクリックして,「Installation Summary」ダイアログ・ボックスに戻ります。 それから「Summary」ダイアログ・ボックスの [中止] をクリックして,システムをシングルユーザ・モードにします。
テキスト・ベース・インタフェースを使用している場合は,Ctrl/c を押して,システムをシングルユーザ・モードにします。
フル・インストレーション・セットアップ処理をシングルユーザ・モードから再スタートするには,使用しているインタフェースにかかわらず,次のコマンドを入力します。
# cd / # restart
システムがグラフィックス機能を備えているにもかかわらず,インストレーション・セットアップ処理をテキスト・ベース・インタフェースで再スタートしたい場合は,次のコマンドを入力します。
# cd / # restart nogui
「Ready to Begin Installation」ダイアログ・ボックスの [了解] をクリックするか,テキスト・ベース・インタフェースで Return キーを押すと,フル・インストレーション処理でシステムの変更が開始されます。 最初に ファイル・システムが作成されてソフトウェアがロードされてから,システムのリブートとソフトウェアの構成フェーズが実行されます。
インストレーション処理のこの段階で求められるユーザ操作は,次のとおりです。
ホスト固有情報,サイト固有情報,または root パスワードを指定していない場合,ソフトウェア・サブセットがロードされシステムがリブートされた後に,これらのデータを入力します。 この情報の入力については,6.7 節 を参照してください。
英語以外の言語サポートの追加を選択した場合,ソフトウェア構成フェーズで WLS ソフトウェアがロードされる直前に,「Associated Products, Volume 1」というラベルの CD-ROM を挿入します。
6.17.1 ファイル・システムの作成とソフトウェア・サブセットのロードのフェーズ
実際にインストレーションが開始されると,/
,/usr
,/var
,/usr/i18n
の各ファイル・システムと
swap
領域が,選択したディスクおよびパーティション上に作成されます。
ファイル・システムの作成が終ると,ソフトウェア・サブセットのロード・フェーズになります。
進行状況のインジケータには各フェーズの処理の完了した割合が表示され,処理の進行度が知らされます。
テキスト・ベース・インタフェースを使用している場合は,次のようなメッセージが表示されます。
Continuing installation... Applying the selected disklabel on device dsk0 Creating the root file system on device dsk0a Creating the usr file system on device dsk0g Creating the var area in the usr file system Creating the swap1 file system on device dsk0b The installation procedure will now load a total of 31 software subsets on your disk partitions. This total includes the following products: * 31 Base Operating System subsets This process will take from 45 to 120 minutes to complete depending on your distribution media and processor type. LOADING THE BASE OPERATING SYSTEM SOFTWARE SUBSETS
注意
フル・インストレーション処理は,
/
,/usr
,/var
の各ファイル・システム用の UFS ファイル・システムを作成する際には,省略時の i ノード密度は使用しません。 ファイル・システムの利用可能なスペースを最大限にするために,低い密度が使用されます。
新しく作成されたシステム・ディスクからブートするために必要なブート・コマンドが,画面上に表示されます。
コンソール・モード・プロンプト (>>>
) に対して,画面上に表示されたブート・コマンドを入力してください (例 6-5
に示されているブート変数は例ですので,実際のシステムにこの変数をそのまま入力しないよう注意してください)。
例 6-5: ブート・コマンドの例
Issue the following console commands to set your default bootpath variable and to boot your system disk to multiuser: >>> set boot_osflags A >>> set bootdef_dev DKA0 >>> boot syncing disks... done CPU 0: Halting... (transferring to monitor) ?05 HLT INSTR PC= FFFFFC00.0044CA90 PSL= 00000000.00000005
今後のために,このブート・コマンドをここに書き留めておいてください。
>>>
>>>
>>>
ソフトウェアの構成処理は,システムのブート後に開始されます。
また,カーネル構築プロシージャは,ソフトウェアの構成後に開始されます。
6.17.3 ソフトウェア構成フェーズ
ソフトウェアの構成処理は,システム・ディスクからのリブート後に自動的に行われます。 この処理では,ソフトウェア・サブセットの調整や,ホスト名,root パスワード,およびタイム・ゾーンの設定,システムのチューニング,そしてオペレーティング・システムとハードウェアで使用するための最適化カーネルの構築が行われます。
インストレーション・プロシージャの早い段階で,必須のホスト固有情報やサイト固有情報 (root パスワード,システムのホスト名,日付と時刻,ロケーションとタイム・ゾーンなど) を指定しなかった場合,このフェーズでこれらの情報を入力するように求められます。
CD-ROM からインストレーションでワールドワイド言語サポート (WLS) ソフトウェアのインストールを選択している場合は,図 6-14 に示すダイアログ・ボックスが表示されます。 ドライブから「Operating System, Volume 1」というラベルの CD-ROM を取り出し,「Associated Products, Volume 1」というラベルの CD-ROM を挿入します。 この CD-ROM には,WLS ソフトウェアが収められています。
何らかの理由でこの CD-ROM が使用できない場合は,この時点では WLS のインストレーションを省略し,後で
wwinstall
スクリプトを使用して WLS をインストールすることもできます。
wwinstall
スクリプトの実行方法については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
注意
RIS サーバから WLS をインストールしている場合は,インストール先のシステムが登録されている RIS 領域ですでに WLS ソフトウェア・サブセットが利用できるため,入力は求められません。 また,WLS サブセットはシステムがリブートされる前にインストールされています。
図 6-14: 「Software Installation」ダイアログ・ボックス
フル・インストレーションのセットアップ時にオプションのカーネル構成要素を選択するオプションを選択した場合は,6.18 節に進んで,カーネル・オプションを選択します。
6.18 [ステップ 7]: カーネル構成要素の選択 (オプション)
フル・インストレーション・セットアップ時に,必須のカーネル構成要素またはすべてのカーネル構成要素をインストールするオプションを選択した場合は,システム構成に必要なカーネル構成要素を使用して,カーネルの構築が自動的に行われます。
カーネルの構築後は,6.19 節に進んで,初めてシステムにログインする方法を参照してください。
オプションのカーネル構成要素を使用して後でカーネルを構築したい場合は,詳細について
doconfig
(8)
フル・インストレーション・セットアップ時に,カーネル構成要素の選択をカスタマイズするオプションを選択した場合は,システムのリブート後に,「Kernel Option Selection」メニューが表示されます。
「Kernel Option Selection」メニューにリストされるカーネル構成要素は,インストールされているソフトウェア・サブセットにより異なります。
インストレーション・プロシージャでは,カーネルに組み込む構成要素と,除外する構成要素を指定することができます。
フル・インストレーションの完了後にカーネル構成要素をインストールする必要がある場合は,
doconfig
(8)
各カーネル構成要素についての説明が必要な場合は,「Help
」オプションを使用して,オンライン・ヘルプを表示できます。
「Kernel Option Selection」メニューは,次のように表示されます。
Kernel Option Selection -------------------------------------------------------------- 1 System V Devices 2 NTP V3 Kernel Phase Lock Loop (NTP_TIME) 3 Kernel Breakpoint Debugger (KDEBUG) 4 Packetfilter driver (PACKETFILTER) 5 Point-to-Point Protocol (PPP) 6 STREAMS pckt module (PCKT) 7 Data Link Bridge (DLPI V2.0 Service Class 1) 8 X/Open Transport Interface (XTISO, TIMOD, TIRDWR) 9 ISO 9660 Compact Disc File System (CDFS) 10 Audit Subsystem 11 Alpha CPU performance/profiler (/dev/pfcntr) 12 ACL Subsystem 13 All of the above 14 None of the above 15 Help 16 Display all options again -------------------------------------------------------------- Enter your choices. Choices (for example, 1 2 4-6) [14]: 5 9
注意
ISO 9660 Compact Disc File System (CDFS)
は,動的ローディングが可能なカーネル・モジュールです。 ここで選択すると,このモジュールをカーネルに組み込むことができます。 組み込まなかった場合,このモジュールは必要に応じてロードされます。
カーネル構成要素の選択を入力し終わると,選択したオプションのリストが表示され,選択内容の確認を求められます。 たとえば,次のように表示されます。
You selected the following kernel options: Point-to-Point Protocol (PPP) ISO 9660 Compact Disc File System (CDFS) Is that correct? (y/n) [y]:
表示されたカーネル構成要素が希望どおりのものであれば,y
を入力するか,Return キーを押して省略時の応答を採用します。
表示されたカーネル構成要素が希望するものでない場合は,プロンプトに対して
n
を入力します。
その結果,「Kernel Option Selection」メニューが表示されますので,カーネル構成要素を再度選択します。
6.18.1 必要に応じてカーネル・ファイルを編集する (オプション)
カーネル・オプションを選択して確認した後で,カーネル・ファイルを編集することができます。
カーネル構成ファイルは,カーネルに組み込まれる構成要素を定義するためのテキスト・ファイルであり,/usr/sys/conf/
SYSTEM_NAME
というファイル名になります。
注意
このファイルの編集は可能ですが,編集はお勧めしません。
ed
テキスト・エディタ
(および
vi
テキスト・エディタ) の使用方法については,『Tru64 UNIX ユーザーズ・ガイド』を参照してください。
次のようなプロンプトが表示されます。
Do you want to edit the configuration file? (y/n) [n]:
ここで
n
を入力するか,Return キーを押して (省略時の応答を採用),構成ファイルの編集を省略すると,6.18.2 項に示すように,カーネルの構築処理が始まります。
y
を入力してファイルを編集する場合は,次のメッセージが表示されます。
Using 'ed' to edit the configuration file. Press return when ready, or type 'quit' to skip the editing session:
ここで,編集セッションを省略してカーネル構築処理を開始したい場合は
quit
と入力し,ファイルを編集したい場合は Return キーを押します。
編集結果を保存して編集セッションを終了すると,カーネルの構築が始まります。
6.18.2 カーネル構築フェーズ
サブセットの構成が終ると,インストレーション・プロシージャは
doconfig
ユーティリティを呼び出して,ハードウェアに必要なデバイス特殊ファイルを自動的に作成し,カーネルを構築します。
次のようなメッセージが表示されます。
The system will now automatically build a kernel and then reboot. This will take approximately 15 minutes, depending on the processor type. When the login prompt appears after the system has rebooted, use 'root' as the login name and the SUPERUSER password that was entered during this procedure, to log into the system. *** PERFORMING KERNEL BUILD *** Working....Fri Aug 23 15:45:24 EST 2002 Working....Fri Aug 23 15:47:24 EST 2002 Working....Fri Aug 23 15:49:25 EST 2002 Working....Fri Aug 23 15:51:26 EST 2002
6.18.3 システムがシングルユーザ・モードでブートされた場合の操作
boot_osflags
変数が
6.17.2 項で説明したとおりに正しく設定されていない場合,システムがシングルユーザ・モードでブートされることがあります。
この場合,システムをマルチユーザ・モードに切り換えるには,ルート・プロンプト ( # ) に対して Ctrl/d を入力します。
この結果,実行レベルを入力するように求められます。
次の 4 つの実行レベルが利用できます。
0
は,停止状態を指定します。
S
または
s
は,シングルユーザ・モードを指定します。
2
は,ネットワーク・サービスなしのマルチユーザ・モードを指定します。
3
は,ネットワーク・サービスありのマルチユーザ・モードを指定します。
init
コマンドを使用して,システムをマルチユーザ・モードに切り換えます。
# init 3
6.19 [ステップ 8]: root ユーザとしてシステムへログイン
最終のシステム・リブート後の次のステップは,新しくインストールされたシステムへ
root
ユーザとしてログインすることです。
新しくインストールされたシステムでは,root
というユーザ名だけが認識されます。
プロンプトが表示されたら,前のステップで設定した root パスワードを入力します。
6.20 [ステップ 9]: インストレーション・ログ・ファイルの調査
システムを一般向けに構成する前に,ソフトウェアが正しくインストールされて構成されたことを確認するために,インストレーション・ログ・ファイルを調査することをお勧めします。
インストレーション・エラーが発生した場合は,ログ・ファイルにリストされます。
付録 F
を参照してください。
6.21 フル・インストレーションの完了
インストレーション・ログ・ファイルの調査が終わったら,フル・インストレーションは完了です。 第 7 章に進んで,通常運用できるようにシステムを構成するための SysMan (システム管理) ツールの説明を参照してください。