これまでの章では,すべてのデバイスを対象にさまざまな管理を行うための汎用ハードウェア管理ツール (第 3 章
で説明した
hwmgr
コマンドなど) について説明しました。以降の節では,特定の種類のデバイスを対象に特定の作業を行うためのハードウェア管理ツールについて説明します。
デバイス・ユーティリティに関する情報 (5.1 節)
SCSI ユーティリティの使用 (5.2 節)
diskconfig
GUI を使用したディスクのパーティショニング (5.3 節)
disklabel
コマンドを使用したディスクのパーティショニング (5.4 節)
ディスクのコピー (5.5 節)
ディスクのモニタリング (5.6 節)
デバイス・ユーティリティの多くについては,このマニュアルだけでなく,他のドキュメントでも説明しています。たとえば,ネットワーク・デバイスを構成するユーティリティについては,『ネットワーク管理ガイド:サービス編』 で詳細に説明しています。表 5-1
に,この章で説明するものも含めて,本書で説明しているユーティリティを示します。その他のユーティリティについては,リファレンス・ページを参照してください。表 5-2
に,リファレンス・ページで説明されているユーティリティのほかに,インタフェースを説明するリファレンス・ページの第 7 節など,リファレンス・データの参照先も示します。
表 5-1: 本書で説明されているデバイス・ユーティリティ
デバイス | タスク | 場所 |
プロセッサ | 起動または停止 | 『システム管理ガイド』 |
リソースの共用 | 『システムの構成とチューニング』 | |
モニタリング | 『システム管理ガイド』 | |
電力管理 | 『システム管理ガイド』,dxpower |
|
メモリのテスト | 『システム管理ガイド』 | |
エラーおよびイベント処理 | 『システム管理ガイド』 | |
SCSI バス | 高度な構成と管理 | 5.2.1 項,scu |
ディスク | パーティションの作成 | diskconfig ,disklabel |
コピー | 5.5 節,dd |
|
利用状況のモニタリング | 5.6 節,df
と
du |
|
電力管理 | 『システム管理ガイド』 | |
ファイル・システムの状態 | 『システム管理ガイド』 | |
テストと動作確認 | 『システム管理ガイド』 | |
テープ (およびディスク) | アーカイブ | 『システム管理ガイド』 |
テストと動作確認 | 『システム管理ガイド』 | |
クロック | 設定 | 『システム管理ガイド』 |
モデム | 構成 | 『システム管理ガイド』 |
表 5-2: リファレンス・ページで説明されているデバイス・ユーティリティ
デバイス | タスク | 場所 |
デバイス (汎用) | 構成 |
hwmgr (8)devswmgr (8)dsfmgr (8) |
デバイス特殊ファイル |
kmknod (8)mknod (8)MAKEDEV (8)dsfmgr (8) |
|
インタフェース |
atapi_ide (7)devio (7)emx (7) |
|
プロセッサ | 起動と停止 |
halt (8)psradm (8)reboot (2) |
CPU リソースの割り当て |
class_scheduling (4)processor_sets (4)runon (1) |
|
モニタリング |
dxsysinfo (8)psrinfo (1) |
|
SCSI バス | 管理 |
sys_attrs_cam (5)ddr.dbase (4)ddr_config (8) |
ディスク | パーティションの作成 |
diskconfig (8)disklabel (4)disklabel (8)disktab (4) |
モニタリング |
dxsysinfo (8)diskusg (8)acctdisk (8)df (1)du (1)quota (1) |
|
テストと保守 |
diskx (8)zeero (8) |
|
インタフェース |
ra (7)radisk (8)ri (7)rz (7) |
|
スワップ領域 |
swapon (8) |
|
テープ (およびディスク) | アーカイブ |
bttape (8)dxarchiver (8)rmt (8) |
テストと保守 |
tapex (8) |
|
インタフェース |
tz (7)mtio (7)tms (7) |
|
フロッピィ | ツール |
dxmtools (1)mtools (1) |
テストと保守 |
fddisk (8) |
|
インタフェース |
fd (7) |
|
端末,ポート | インタフェース |
ports (7) |
モデム | 構成 |
chat (8) |
インタフェース |
modem (7) |
|
キーボード,マウス | インタフェース |
dc (7)scc (7) |
SysMan グラフィカル・ユーザ・インタフェースが提供するユーティリティのリストについては,『システム管理ガイド』を参照してください。
5.2 SCSI デバイスおよびデバイス・ドライバのユーティリティ
この項では,SCSI デバイスとデバイス・ドライバの管理に使用するユーティリティについて説明します。
5.2.1 SCSI 構成ユーティリティ scu の使用
SCSI/CAM ユーティリティ・プログラム
scu
には,SCSI 周辺機器と CAM I/O サブシステムに対して行う,高度な保守と診断に必要なコマンドがあります。日常的操作のほとんどには,hwmgr
コマンドを使用します。また,scu
プログラムには,利用できるオプションとその規則を詳細に説明するヘルプ機能もあります。このコマンドの使い方についての詳細は,
scu
(8)
scu
は,次の作業に使用できます。
ディスクのフォーマット
不良ディスク・ブロックの再割り当て
デバイスの予約と解放
デバイスおよびプログラム・パラメータの表示と設定
デバイスを使用可能/不可能にする
注意
DSA (Digital Storage Architecture) ディスクには,
radisk
プログラムを使用してください。詳細は,を参照してください。 radisk
(8)
scu
の使用例を次に示します。
# scu scu> set nexus bus 0 target 0 LUN 0 Device:RZ1CB-CA, Bus:0, Target:0, LUN:0, Type:Direct Access scu> show capacity Disk Capacity Information: Maximum Capacity: 8380080 (4091.836 megabytes) Block Length: 512 scu> show scsi status 0 SCSI Status = 0 = SCSI_STAT_GOOD = Command successfully completed
5.2.2 デバイス・スイッチ・マネージャ devswmgr の使用
devswmgr
コマンドを使って,デバイス・スイッチ・テーブル内のデバイス・ドライバについての情報を表示し,このテーブルを管理することができます。また,このコマンドでデバイス・スイッチ・テーブルからエントリを解放することもできます。一般に,ドライバのエントリを解放するのは,ドライバをアンロードした後,再ロードする予定がない場合です。エントリを解放すると,そのエントリは他のデバイス・ドライバに使用できるようになります。
devswmgr
を使ってデバイス・データを取得する例を次に示します。
# devswmgr -display device switch database read from primary file device switch table has 200 entries # devswmgr -getnum
Device switch reservation list (*=entry in use) driver name instance major ----------------------- -------- ----- pfm 1 71* fdi 2 58* xcr 2 57 kevm 1 56* cam_disk 2 55* emx 1 54 TMSCP 2 53 MSCP 2 52 xcr 1 44 LSM 4 43 LSM 3 42 LSM 2 41* LSM 1 40* ace 1 35* parallel_port 1 34* cam_uagt 1 30 MSCP 1 28 TMSCP 1 27 scc 1 24 presto 1 22 cluster 2 21* cluster 1 19* fdi 1 14* cam_tape 1 9 cam_disk 1 8* pty 2 7 pty 1 6 tty 1 1 console 1 0
5.3 diskconfig を使ったディスクのパーティショニング
Disk Configuration グラフィカル・インタフェース (diskconfig
) で,次の作業を行うことができます。
Disk Configuration GUI (diskconfig
)
の起動についての詳細は,
diskconfig
(8)disklabel
(8)
Disk Configuration GUI のグラフィカル・インタフェースを使って行うディスク保守作業のいくつかは,次のコマンドを用いて手作業で行うこともできます。
disklabel
-
ディスク・ドライブやディスク・パックのラベルをインストール,検査,および変更するコマンド。ディスク・ラベルには,ディスクの種類,物理パラメータ,パーティション情報など,ディスクに関する情報が入っています。
disklabel
(4)/etc/disktab
ファイルも参照してください。
newfs
- 指定したデバイスに新しく UFS ファイル・システムを作成するコマンド。newfs
コマンドは Advanced File System (AdvFS) の作成には使用できません。AdvFS
の作成には,
mkfdmn
(8)mkfdmn
コマンドを使用してください。
mkfdmn
と
mkfset
- AdvFS (Advanced File System) ドメインとファイルセットを作成するコマンド。
Disk Configuration インタフェースは,次のどちらかの手順で起動します。
システム・プロンプトに対して
diskconfig
と入力する。
CDE フロント・パネルの SysMan アプリケーション・ポップアップ・メニューから,[Configuration] を選択する。続いて,SysMan [Configuration] フォルダから [ディスク] アイコンを選択する。
注意
パーティションのサイズを変更しようとすると,Disk Configuration から警告が表示されます。必要なデータを上書きしてしまわないように,変更内容を前もって計画しておきます。パーティションのサイズを変更する前に,データ・パーティションをすべてバックアップしておいてください。
[Disk Configuration : hostname] というタイトルのウィンドウが表示されます。DiskConfig ユーティリティ用のメイン・ウィンドウに,各ディスクについて次の情報がリストされます。
ディスクのベース名。たとえば
dsk10
。ディスク名についての詳細は,1.5 節を参照してください。
デバイスのモデル。たとえば
RZ1CB-CA
。
バス,ターゲット,および LUN (論理ユニット番号) によって表される物理位置。デバイスの位置についての詳細は,第 3 章を参照してください。
リスト項目をダブルクリック (またはディスクが強調表示されている時に [設定] ボタンをクリック) すると,2 つのウィンドウが同時に表示されます。ウィンドウは重なって表示されます。適切なウィンドウにカーソルを移動して,次のようにしてパーティションを構成するか,ディスクのパーティション・テーブルを編集します。
このウィンドウには,次の情報とオプションが表示されます。
ディスク・パーティションを表す横棒グラフ。別の色で現在強調表示されているパーティションについては,その詳細が「該当パーティション」ボックスに表示されます。この棒グラフのハンドル (またはフラグ) を用いてパーティションのサイズを変更できます。次の位置にカーソルを置いてください。
隣接する 2 つのパーティションを変更する場合は,区切りの中央にあるハンドル。
区切りの右側にあるパーティションの開始位置を右に移動する場合は,上のフラグ。
区切りの左側にあるパーティションの終了位置を左に移動する場合は,下のフラグ。
カーソルの位置で MB1 を押してマウスをドラッグすることで,ハンドルを移動します。
プルダウンメニュー。ユーティリティにディスク・サイズ情報を表示させる方法を選択できます。メガバイト単位 (Megabytes),バイト単位 (Bytes),ブロック単位 (Blocks) から選択できます。
統計情報ボックス。デバイス名,ディスクの総容量,使用量などディスクに関する情報が表示されます。このボックスを使用して,ディスク・ラベルの割り当てや編集,また,デバイスの別名 (エイリアス) の作成を行います。
「該当パーティション」ボックス。選択したパーティションのサイズが動的に表示されます。このサイズは,棒グラフを用いたパーティションの変更に合わせて更新されます。このウィンドウにパーティション・サイズを直接入力して,現在の設定を変更することもできます。また,パーティションのファイル・システムを選択したり,AdvFS を使用している場合はドメイン名やファイルセット名を選択したりすることもできます。
[ディスクの属性... ] オプション
このボタンを押すと,デバイスの物理属性の一部が表示されます。
[パーティション・テーブル...] オプション。[Disk Configuration: Partition Table] というタイトルのウィンドウがポップアップします。
このウィンドウには現在使用しているパーティションの棒グラフ,サイズ,および使われているファイル・システムが表示されます。次から選択できます。
現在表示されているパーティション。
ディスク・デバイスの標準のテーブル。
このセッションが開始されたときの元の設定 (ディスク上のパーティション・テーブル) にパーティションを戻す。
手作業によるパーティション変更で間違えたときは,このウィンドウを用いてパーティション・テーブルを元に戻せます。
これらのウィンドウについての詳細は,オンライン・ヘルプを参照してください。
パーティションを調整した後,次のように SysMan Menu のオプションを使用して,新しく作成したファイル・システムをマウントします。
SysMan Menu を起動します。
[ストレージ] オプションを展開して,[ファイルシステム管理ユーティリティ] - [一般的なファイルシステム・ユーティリティ] - [ファイルシステムのマウント] を選択します。
「マウント操作」ウィンドウで,特定のファイル・システムをマウントするオプションを選択し,[次へ] ボタンをクリックします。
「ファイル・システム名とマウント・ポイント」ウィンドウで,以下を行います。
/usr/newusers
などのマウント・ポイントを入力します。
/dev/disk/dsk0g
のようなパーティション名,または
newusr_domain#usr
のようなドメイン名を入力します。
[了解] ボタンをクリックしてパーティンションの調整を適用します。
これで新しいファイル・システムへのアクセスが可能になります。
5.4 手作業によるディスク・パーティションの作成
この項では,ディスクのパーティション・サイズの変更に必要な情報を示します。一般に,ディスク領域は,初期インストレーション時またはディスクをシステム構成に追加するときに割り当てます。通常は,パーティションを変更する必要はありません。しかし,環境の変化に対応したりシステムの性能を向上させたりするために,ディスクのパーティション・サイズの変更が必要な場合もあります。
ディスク・ラベルには,ディスクのジオメトリおよびディスクを分割するパーティションに関する詳細な情報が入っています。ラベルは
disklabel
コマンドで変更することができます。disklabel
コマンドを使用する場合は,root ユーザにならなければなりません。
ディスク・ラベルには 2 つのコピーがあり,1 つはディスクに,もう 1 つはシステム・メモリに置かれます。I/O を実行するよりはシステム・メモリにアクセスする方が速いため,システムのブート時に,ディスク・ラベルがメモリにコピーされます。メモリ内のラベルではなく,ディスク上のラベルに直接アクセスするには,disklabel
-r
コマンドを使用します。
注意
ディスクにデータがある場合は,ディスク・パーティションを変更する前に,すべてのファイル・システムをバックアップしてください。パーティションを変更すると古いファイル・システムのデータは上書きされ,壊れてしまいます。
パーティションの変更に対しては,次の規則が適用されます。
開始セクタを示すオフセットを変更したり,マウントされているファイル・システムのパーティションやファイル記述子がオープンされているファイル・システムのパーティションを縮小したりすることはできない。
ディスク全体でパーティションが 1 つだけ必要な場合は,パーティション
c
を使用する。
ラベルを変更する際は,ディスクの先頭 (セクタ 0) から始まるパーティション
a
がマウントされていない場合に限り,a
の raw デバイスを指定する。パーティション
a
がすでにマウントされている場合には,パーティション
c
を使用してラベルを変更する。パーティション
c
もセクタ 0 から始まっている必要がある。
注意
パーティション
a
がすでにマウントされている場合は,デバイス・パーティションa
を用いてディスク・ラベルを編集しようとしても,変更できません。またそうした場合に,ラベルを書き込めなかったというエラー・メッセージも表示されません。
ディスク・パーティションのサイズを変更する前に,ディスク・ラベルを表示して現在のパーティションの設定を調べてください。disklabel
コマンドを使用してパーティション・サイズを表示できます。パーティションのボトム,トップ,およびサイズは,512 バイト・セクタを 1 単位として表示されます。
現在のディスク・パーティション設定を調べるためには,次の
disklabel
コマンドを実行します。
/sbin/disklabel -r device
ディレクトリ名
/dev
の後に raw デバイス名,ドライブ番号,およびパーティション
a
または
c
を続けて入力し,デバイスを指定してください。dsk1
のように,ディスク・ユニットと番号を指定することもできます。
disklabel
コマンドでディスク・ラベルを表示させる例を示します。
# disklabel -r /dev/rdisk/dsk3a type: SCSI disk: rz26 label: flags: bytes/sector: 512 sectors/track: 57 tracks/cylinder: 14 sectors/cylinder: 798 cylinders: 2570 rpm: 3600 interleave: 1 trackskew: 0 cylinderskew: 0 headswitch: 0 # milliseconds track-to-track seek: 0 # milliseconds drivedata: 0
8 partitions: # size offset fstype [fsize bsize cpg] a: 131072 0 4.2BSD 1024 8192 16 # (Cyl. 0 - 164*) b: 262144 131072 unused 1024 8192 # (Cyl. 164*- 492*) c: 2050860 0 unused 1024 8192 # (Cyl. 0 - 2569) d: 552548 393216 unused 1024 8192 # (Cyl. 492*- 1185*) e: 552548 945764 unused 1024 8192 # (Cyl. 1185*- 1877*) f: 552548 1498312 unused 1024 8192 # (Cyl. 1877*- 2569*) g: 819200 393216 unused 1024 8192 # (Cyl. 492*- 1519*) h: 838444 1212416 4.2BSD 1024 8192 16 # (Cyl. 1519*- 2569*)
パーティションの変更は,ファイル・システムのデータを上書きしたり,システムの効率を悪くしたりする可能性があるため,慎重に行う必要があります。パーティション・サイズの変更の際にパーティション・ラベルが壊れた場合は,次のように
disklabel
コマンドに
-w
オプションを指定して,省略時のパーティション・ラベルを復元することができます。
# disklabel -r -w /dev/rdisk/dsk1a rz26
disklabel
コマンドを使えば,カーネルの再構築およびシステムのリブートを伴わずに,各ディスクのパーティション・ラベルを変更できます。次の手順に従ってください。
df
コマンドを使用して,ファイル・システムのディスク領域の情報を表示させます。
/etc/fstab
ファイルを表示して,スワップ領域として指定されているファイル・システムがないか確認します。
disklabel
コマンドに
-r
オプションを指定してディスクのラベルを調べます
(省略時のディスク・パーティションについては
rz
(7)ra
(7)disktab
(4)
ファイル・システムをバックアップします。
ラベルを変更する対象となるディスクのファイル・システムをアンマウントします。
新しいパーティションのパラメータを計算します。パーティション・サイズは,増減させることができます。また,パーティションどうしを重ねることもできます。
次のように
disklabel
コマンドに
-e
オプションを指定して実行することにより,ディスク・ラベルを編集してパーティション・パラメータを変更します。
# /sbin/disklabel -e disk
vi
エディタ,または EDITOR 環境変数で指定されたエディタが起動され,ディスク・ラベルを編集できるようになります。このとき,ディスク・ラベルは,disklabel
-r
コマンドの場合と同じ形式で表示されます。
-r
オプションを指定すると,ラベルはディスクに直接書き込まれ,可能ならメモリ内のコピーが更新されます。disk
パラメータには,アンマウントされているディスク (たとえば
dsk0
または
/dev/rdisk/dsk0a
など) を指定します。
エディタを終了して変更内容を保存すると,次のプロンプトが表示されます。
write new label?[?]:
新しいラベルを書き込む場合は,y
を入力し,変更内容を廃棄する場合は,n
を入力します。
disklabel
コマンドに
-r
オプションを指定して実行し,新しいディスク・ラベルを表示させます。
ファイル・システムのマウントや作成を行うコマンド,新しいスワップ・デバイスを追加するコマンド,および Logical Storage Manager へディスクを追加するコマンドは,まず,コマンドに指定されたディスク・パーティションにすでに有効なデータが含まれていないかどうか,また,そのパーティションが使用中の他のパーティションと重なっていないかどうかについてチェックします。その際,指定されたパーティションまたは重なっているパーティションが使用中であるかどうかは,ディスク・ラベルの「fstype
」フィールドで判断できます。
パーティションが使用されていなければ,コマンドは実行を継続します。ファイル・システムのマウントや作成だけでなく,mount
,newfs
,fsck
,voldisk
,mkfdmn
,rmfdmn
,および
swapon
のようなコマンドも,ディスク・ラベルを変更して,「fstype
」フィールドにパーティションの使用方法を設定します。たとえば,AdvFS ドメインにディスク・パーティションを追加すると,「fstype
」フィールドは
AdvFS
に設定されます。
パーティションが利用できない場合,これらのコマンドは次のようなエラー・メッセージを返して,処理を継続するか中断するかどうかを問い合わせてきます。
# newfs /dev/disk/dsk8c WARNING: disklabel reports that basename,partition currently is being used as "4.2BSD" data. Do you want to continue with the operation and possibly destroy existing data? (y/n) [n]
オペレーティング・システムのコマンド同様,アプリケーションもディスク・ラベルの
fstype
を変更して,パーティションが使用中であることを示すことができます。詳細については,
check_usage
(3)set_usage
(3)5.5 ディスクのコピー
ディスクまたはディスク・パーティション全体のコピーには
dd
コマンドを使用します。このコマンドを実行すると,ディスクまたはディスク・パーティションの物理的なコピーが作成されます。
注意
dd
コマンドは複数のファイルをコピーするためのコマンドではないので,ディスクまたはパーティションをコピーするときは,データ・ディスクとして使用しているディスク,または,ファイル・システムを含まないディスクをコピー先にします。UFS ファイル・システムを含むディスクまたはパーティションをコピーする場合は,『システム管理ガイド』で説明するdump
およびrestore
コマンドを使用してください。また,AdvFS ファイルセットを含むディスクまたはパーティションをコピーする場合は,『AdvFS 管理ガイド』 で説明されているvdump
およびvrestore
コマンドを使用してください。
UNIX では,有効なディスク・ラベルを持つディスクの先頭のブロックが保護されます。そこにディスク・ラベルが保管されているからです。したがって,有効なディスク・ラベルが存在するターゲット・ディスクにパーティションをコピーするときは,そのターゲット・ディスク上のディスク・ラベルを維持するかどうかを決めなければなりません。
ターゲット・ディスク上のディスク・ラベルをそのままに維持する場合には,dd
コマンドに
skip
または
seek
オプションを指定して実行し,ターゲット・ディスク上の保護されているディスク・ラベル領域をスキップします。ターゲット・ディスクの容量は,オリジナルのディスクと同じかそれ以上でなければなりません。
ターゲット・ディスクにラベルがあるかどうかを確認するには,次の
disklabel
コマンドを使用します。
# /sbin/disklabel -r target_disk
ターゲット・デバイスのディレクトリ名
(/dev)
の後に raw デバイス名,ドライブ番号,およびパーティション
c
を続けて指定します。ディスクにラベルがない場合は,次のメッセージが表示されます。
Bad pack magic number (label is damaged, or pack is unlabeled)
ディスクにすでにラベルが付いている場合の例は次のようになります。
# disklabel -r /dev/rdisk/dsk1c type: SCSI disk: rz26 label: flags: bytes/sector: 512 sectors/track: 57 tracks/cylinder: 14 sectors/cylinder: 798 cylinders: 2570 rpm: 3600 interleave: 1 trackskew: 0 cylinderskew: 0 headswitch: 0 # milliseconds track-to-track seek: 0 # milliseconds drivedata: 0
8 partitions: # size offset fstype [fsize bsize cpg] a: 131072 0 unused 1024 8192 # (Cyl. 0 - 164*) b: 262144 131072 unused 1024 8192 # (Cyl. 164*- 492*) c: 2050860 0 unused 1024 8192 # (Cyl. 0 - 2569) d: 552548 393216 unused 1024 8192 # (Cyl. 492*- 1185*) e: 552548 945764 unused 1024 8192 # (Cyl. 1185*- 1877*) f: 552548 1498312 unused 1024 8192 # (Cyl. 1877*- 2569*) g: 819200 393216 unused 1024 8192 # (Cyl. 492*- 1519*) h: 838444 1212416 unused 1024 8192 # (Cyl. 1519*- 2569*)
ターゲット・ディスクにすでにラベルが付いており,そのラベルが維持したくない場合は,disklabel
-z
コマンドを使用してラベルをクリアしなければなりません。たとえば次のようにします。
# disklabel -z /dev/rdisk/dsk1c
オリジナル・ディスクをターゲット・ディスクにコピーし,ターゲット・ディスクのラベルをそのまま維持する場合は,dd
コマンドを使用します。このコマンドに,デバイス・ディレクトリ名
(/dev)
の後に raw デバイス名,ドライブ番号,オリジナルおよびターゲットのディスク・パーティションを続けて指定します。たとえば次のようにします。
# dd if=/dev/rdisk/dsk0c of=/dev/rdisk/dsk1c \ skip=16 seek=16 bs=512k
適切な量のディスクの空き領域を確保するには,次のいずれかの方法で,構成済みのファイル・システムのディスク使用量を定期的に監視します。
df
コマンドを使用して利用可能な空き領域を確認する (5.6.1 項)
du
コマンドおよび
quot
コマンドを使用してディスクの使用量を確認する (5.6.2 項)
ディスク・クォータを設定している場合は,quota
コマンドを使用してディスク・クォータを確認する (5.6.3 項)
quota
コマンドは,root ユーザのみが使用できます。
5.6.1 利用可能な空き領域の確認
ファイル・システムに十分な領域を確保するには,df
コマンドを定期的に使用して,マウントしたファイル・システム全体のディスクの空き領域の容量を確認します。df
コマンドは,指定されたファイル・システムの空き領域,または指定されたファイルを含むファイル・システムの空き領域についての統計値を表示します。
df
コマンドの引数やオプションを省略すると,次が表示されます。
マウントされているすべてのファイル・システムの空きディスク領域。
各ファイル・システムの構成サイズ。512 バイト・ブロック単位。-k
オプションを指定すると,サイズ情報は K バイト・ブロック単位になります。
領域の総容量,使用中の容量,利用可能な (未使用の) 容量,使用率,およびファイル・システムがマウントされているディレクトリ。
AdvFS ファイル・ドメインについては,df
コマンドは各ファイルセットのディスク使用量を表示する。
ファイル・システムがまったくマウントされていないデバイスを指定した場合,df
はルート・ファイル・システムの情報を表示します。ファイル・パス名を指定すれば,そのファイルを含んでいるファイル・システムで利用可能なディスク容量を表示させることができます。詳細については,
df
(1)
注意
df
コマンドにブロック型特殊デバイス名または文字型特殊デバイス名を指定して,アンマウントされているファイル・システムの空き容量を知ることはできません。この場合には,dumpfs
コマンドを使用してください。
次の例では,マウントされているすべてのファイル・システムのディスク領域に関する情報を表示しています。
# /sbin/df Filesystem 512-blks used avail capacity Mounted on /dev/disk/dsk2a 30686 21438 6178 77% / /dev/disk/dsk0g 549328 378778 115616 76% /usr /dev/disk/dsk2g 101372 5376 85858 5% /var /dev/disk/dsk3c 394796 12 355304 0% /usr/users /usr/share/mn@tsts 557614 449234 52620 89% /usr/share/mn domain#usr 838432 680320 158112 81% /usr
注意
newfs
コマンドは,割り当ておよびブロック・レイアウトのために一定の割合のファイル・システム・ディスク領域を確保します。これにより,ファイル・システムがその容量の 100 パーセントを超えて使用していることをdf
コマンドが報告するという現象が発生します。tunefs
コマンドに-minfree
フラグを指定することにより,この割合を変更することができます。
ファイル・システムの容量が不足していると判断した場合は,du
コマンドまたは
quot
コマンドを使用して,誰が領域を使用しているかを知ることができます。
du
コマンドは,ディレクトリごとに,ディスク領域の割り当てを表示します。この情報によって,ディスク領域を最も多く使用しているユーザやディスク領域を解放すべきユーザを判断することができます。
du
コマンドは,指定されたディレクトリやファイル名,または (それらが指定されていない場合は) 現在の作業ディレクトリ内の全ディレクトリに含まれるブロックの数を (再帰的に) 表示します。システムが使用するクラスタ・サイズにかかわらず,ブロック・カウントには,各ファイルの間接ブロックが,1K バイト単位で含まれます。
オプションを省略すると,各ディレクトリに対するエントリが生成されます。コマンド・オプションについての詳細は,
du
(1)
次の例では,/usr/users
ディレクトリの各サブディレクトリが使用するブロック数を表示しています。
# /usr/bin/du -s /usr/users/* 440 /usr/users/barnam 43 /usr/users/broland 747 /usr/users/frome 6804 /usr/users/morse 11183 /usr/users/rubin 2274 /usr/users/somer
この情報から,ユーザ Rubin が最も多くのディスク領域を使用していることがわかります。
次の例では,/usr/users/rubin/online
ディレクトリ内の各ファイルおよびサブディレクトリが使用する容量を表示しています。
# /usr/bin/du -a /usr/users/rubin/online 1 /usr/users/rubin/online/inof/license 2 /usr/users/rubin/online/inof 7 /usr/users/rubin/online/TOC_ft1 16 /usr/users/rubin/online/build . . . 251 /usr/users/rubin/online
注意
du
コマンドの代わりに,ls -s
コマンドを使用してファイルのサイズと使用量を取得することもできます。使用量を取得するためにls -l
コマンドは使用しないでください。ls -l
コマンドでは,ファイル・サイズだけが表示されます。
quot
コマンドを使用して,指定したファイル・システム内で現在各ユーザが所有しているブロック数をリストすることができます。
quot
コマンドの実行には,root ユーザ特権が必要です。
次のコマンドは,/dev/disk/dsk0h
ファイル・システムの中で各ユーザが所有しているブロックの数とファイルの数を表示します。
# /usr/sbin/quot -f /dev/disk/dsk0h
注意
デバイスがマウントされているとブロック型特殊ファイルはビジーになるため,情報を表示するためには文字型特殊ファイルを指定しなければなりません。
詳細については,
quot
(8)