Tru64 UNIX は,日本語を含む世界各国の言語に対応した国際化オペレーティング・システムです。Tru64 UNIX における日本語処理機能のほとんどは,国際標準の仕様に従って実装された国際化機能を使用して提供されています。Tru64 UNIX では,以下の日本語処理機能を提供します。
国際化機能および国際化コマンド/ユーティリティ
アジア言語処理用ttyサブシステム
Wnnかな漢字変換システム
Mule エディタ
FDアクセス・ユーティリティ(FDIO)
かな漢字変換システムとライブラリ
日本語プリンタ用フィルタ
日本語 Advanced Printing Software
漢字コード変換ユーティリティ(iconv)
変換キー定義ライブラリ(IMLIB)
ユーザ定義文字作成ツール
dxjim 日本語入力システム
VJE-Delta 日本語入力システム
WX3 日本語入力システム
日本語リファレンス・ページ
日本語メッセージ・カタログ
日本語ドキュメント全文検索 (miman および midoc)
System V MNLS から Tru64 UNIX への国際化機能移行支援ツール
日本語 TrueType フォント
また,Tru64 UNIX では,ほとんどのユーザ・インタフェースが日本語で表示されます。
以降の節で,これらの日本語処理機能について概要を説明します。
1.1 国際化機能および国際化コマンド/ユーティリティ
Tru64 UNIXでは XPG4 (X/Open CAE Specification System Interfaces and Headers, Issue 4)に定められたインタフェースを使用して国際化されたユーティリティを提供します。これはロケール (言語や文化/慣習に依存したユーザ環境を定義したもの) の設定を変更することにより,複数の言語およびコードセットの中から,使用する言語とコードセットを選択する機能を提供します。
1.1.2 コードセット
Tru64 UNIX の日本語環境では次の 5 種類のコードセットをサポートします。
日本語 EUC
シフトJIS
DEC 漢字
Super DEC 漢字
UTF-8
個々のコードセットについての詳細は,付録 Aを参照してください。
ユーザは日本語ロケールを指定するときに,5 種類のコードセットから任意のものを指定することができます。Super DEC 漢字は DEC 漢字と日本語 EUC のスーパセットになるように設計されています。DEC 漢字文字セットの詳細は,『漢字コード表』に記述されています。
1.1.3 日本語ロケールと国際化コマンド/ユーティリティ
Tru64 UNIX では以下の日本語ロケールをサポートします。
ja_JP.eucJP または ja_JP (日本語 EUC)
ja_JP.SJIS (シフト JIS)
ja_JP.deckanji (DEC 漢字)
ja_JP.sdeckanji (Super DEC 漢字)
ja_JP.UTF-8 (UTF-8)
これらを動的に切り替えることにより,各国際化コマンドおよびユーティリティで日本語を処理することができます。
1.2 アジア言語処理用 tty サブシステム
アジア言語処理用 tty サブシステムは,非同期通信方式でシステムに接続されている端末装置をサポートします。
Tru64 UNIXでは,日本語端末をサポートするためアジア言語処理用 tty サブシステムを提供し,以下の日本語機能をサポートしています (以下,説明では日本語 tty と呼びます)。なお,日本語 tty を使用するためには,stty
コマンドで日本語ラインディシプリン (jdec) を選択しておく必要があります。
1.2.1 STREAMS tty によるかな漢字変換入力
ユーザは stty コマンドでセットアップを行うことによって,日本語 tty による,かな漢字変換入力機能を使用することができます。この機能により,アプリケーションは標準の入力ルーチンを呼び出すだけで日本語を入力することができます。
詳細は『STREAMS tty によるかな漢字変換』を参照してください。
1.2.2 オンデマンド・フォント・ローディング(ODL)
ユーザは,sttyコマンドで
ODL (On-Demand font Loading) ファイルをセットアップすることによって,日本語 tty による ODL 機能を使用できます。この機能により,ユーザ定義文字フォントを必要なときに動的に端末やプリンタにローディングできます。
1.2.3 コード変換
日本語 tty では端末コードとアプリケーション・コードとの間でのコード変換を行うことができます。
端末コードとして下記のコードをサポートします。
7 ビット JIS
8 ビット JIS
DEC 漢字
日本語 EUC
シフト JIS
UTF-8
アプリケーション・コードとして下記のコードをサポートします。
日本語 EUC
シフト JIS
DEC 漢字
Super DEC 漢字
UTF-8
フリー・ソフトウェアである Wnn 4.109 を日本語 Tru64 UNIX に移植したもので,かな漢字変換のフロント・エンドとして使用することができます。また,HP が提供するかな漢字変換辞書へのアクセスを可能にするための拡張が行われています。
1.4 Mule エディタ
Tru64 UNIX ではフリー・ソフトウェアである多言語対応エディタ Mule 2.3 をサポートしており,かな漢字変換入力その他の日本語処理機能を提供します。
1.5 FD アクセス・ユーティリティ (FDIO)
FDIO はAlpha システムに内蔵/接続されるフロッピィ・ドライブに対するアクセス・ユーティリティです。このユーティリティは MS-DOS でフォーマットされたフロッピィ・ディスクへの read/write 機能を提供します。テキスト・モードでは,ファイルの転送や表示の際に漢字コードや改行コードの変換を自動的に行います。
1.6 かな漢字変換
1.6.1 かな漢字変換用辞書とデータ・ファイル
かな漢字変換を行うための辞書は,一般的な国語辞書に加えて人名・地名などの固有名詞を含み,全体で約 10 万語のものを提供しています。システム全体で 1 つ用意されているシステム辞書に加えて,ユーザごとに頻度情報などを保持するための個人辞書 (学習用辞書) があります。
また,ユーザごとに文節学習・文節切り学習の結果を保存するための文節学習用データ・ファイルがあります。
1.6.2 変換キー定義機能(kkseq)
ユーザごとにかな漢字変換キー・シーケンスを定義するための機能を提供します。
1.7 日本語プリンタ用フィルタ
日本語 レーザ・プリンタなどを通信回線経由でハードコピー端末として利用できます。Tru64 UNIX のプリンタ・スプーラを用いて,日本語文書の印刷が可能です。また,本システムでサポートしているプリンタを使用して日本語文書の印刷を行うための出力フィルタ・プログラムが用意されています。
1.8 日本語 Advanced Printing Software
Advanced Printing Software のキットをインストールした後に Advanced Printing Software の日本語キットをインストールすることにより,日本語プリンタに日本語テキスト・ファイルおよび日本語 PostScript ファイル (プリンタが PostScript をサポートする場合) を出力できるようになります。詳細については
第 4 章
を参照してください。
1.9 漢字コード変換ユーティリティ
iconvユーティリティは,日本語 EUC,シフト JIS,DEC 漢字,Super DEC 漢字,7 ビット JIS,Unicode の各コードセット間でのコード変換を行います。
また,IBM 漢字システム文字,富士通 JEF コード,日立 KEIS のそれぞれのコードセットからのファイル・コード変換をサポートしています。
詳細については
2.6 節を参照してください。
1.10 変換キー定義ライブラリ(IMLIB)
日本語入力のためのキー定義処理用のプログラミング・ライブラリです。アプリケーションで IMLIB を使用することにより,ユーザの日本語入力キー定義に基づいた処理を行うことができます。IMLIB 用のキー定義では,kkseq より複雑な入力インタフェースの記述が可能です。また,kkseq のキー定義ファイルから IMLIB 用のキー定義ファイルに変換するツールが提供されています。キー定義をカスタマイズするときには『ユーザ・キー定義 利用者の手引』を,IMLIB を使用してアプリケーションを開発するときには『IMLIB Tru64 UNIX ライブラリ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。
1.11 ユーザ定義文字作成ツール
ユーザ定義文字を作成する cedit ユーティリティと,作成したフォントをフォント・ロード用のファイルに変換する cgen ユーティリティの 2 つのツールによって,ユーザ定義文字の作成,登録,表示を行うことができます。
詳細については『ユーザ定義文字』を参照してください。
1.12 System V MNLS から Tru64 UNIX への 国際化機能移行支援ツール
System V MNLS の国際化機能を使用して作成されたアプリケーションの Tru64 UNIX への移行を支援するツールです。プログラム中で使用されている System V MNLS の機能の移行に関する情報の出力,メッセージ・ソース・ファイルの変換などを行います。
詳細については『System V MNLS から Tru64 UNIX への国際化機能移行ガイド』を参照してください。
1.13 日本語入力システム
Tru64 UNIX では,ウィンドウ環境の標準の日本語入力サーバとして dxjim を提供しています。さらに,PC 上の FEP として実績のある VJE-Delta [脚注 1] と WX3 [脚注 2] をサポートしています。
これらの入力システムの詳細については,第 3 章を参照してください。
1.14 日本語リファレンス・ページ
Tru64 UNIXの日本語リファレンス・ページをオンラインで参照することが
できます。
1.15 日本語メッセージ・カタログ
主要なコマンドおよびユーティリティが発行するメッセージを
日本語で表示することができます。
1.16 日本語ドキュメント全文検索機能
MitakeSearch
[脚注 3]
を利用した,日本語オンライン・ドキュメントおよびリファレンス・ぺージの日本語全文検索ツール (midoc および miman) を提供します。これらの機能のインストレーションおよび設定方法については
第 6 章
を参照してください。
1.17 日本語 TrueType フォント・キット
本リリースでは,日本語 Tru64 UNIX システムに日本語 TrueType フォントを追加するための日本語 TrueType フォント・キットを提供しています。このキットをインストールすることによって,Netscape Communicator をはじめとするデスクトップ・アプリケーションで日本語テキストが TrueType フォントで表示できるようになります。
本リリースで提供する日本語 TrueType フォントは以下のとおりです。
表 1-1: 提供する日本語 TrueType フォントの種類
フォント名 | 書体 |
G2 サンセリフ-U | 極太ゴシック体 |
ゴシック-B | 角ゴシック体 |
羽衣-M | 筆文字書体 |
本明朝-L | 明朝体 |
シリウス-L II | 細めの丸ゴシック体 |
平成明朝 | 明朝体 |
日本語 TrueType フォント・キットのインストレーション・キットおよびドキュメントは「日本語追加機能」CD-ROM の Japanese_TrueType_Fonts/ ディレクトリに含まれています。
提供する TrueType フォントについての詳細,フォント・キットのインストーレション方法,使用方法,および使用上の注意事項については,日本語 TrueType フォント・キットのインストレーション・ガイドおよびリリース・ノートを参照してください。 これらのドキュメントは「日本語追加機能」CD-ROM の下記のディレクトリに含まれています。
インストレーション・ガイド:
Japanese_TrueType_Fonts/doc/install_guide_eucjp.txt
リリース・ノート:
Japanese_TrueType_Fonts/doc/release_notes_eucjp.txt