中国語または韓国語のテキストを入力する場合,文字や単語を個別に入力することも,語句を構成する文字列を入力することもできます。 Tru64 UNIX では,次の方法で語句入力をサポートしています。
dxim
入力サーバは,複数の言語に対応している,メニュー・インタフェースの入力サーバです。
このサーバにより,簡体字中国語,繁体字中国語,韓国語,および Phrase の入力システムを起動して使用することができます。
dxim
が備えている Phrase 入力サーバは,この付録で説明するオペレーティング・システムの Phrase ユーティリティとは異なります。
dxim
の Phrase 入力サーバは,別のデータベースを使用しユーザ・インタフェースが異なります。
dxim
の Phrase
入力サーバについては,
dxim
(5)dxim
入力サーバのオンライン・ヘルプを参照してください。
dxhanyuim
,dxhanziim
,および
dxhangulim
の入力サーバ (それぞれ,繁体字中国語,簡体字中国語,韓国語) には,オペレーティング・システムの Phrase ユーティリティが作成したデータベースを使う Phrase 入力システムが用意されています。
これらの入力サーバと,サーバによる Phrase
ユーティリティの使用については,
dxhanziim
(5)dxhanyuim
(5)dxhangulim
(5)
この付録では,dxhanyuim
,dxhanziim
,および
dxhangulim
が使う,オペレーティング・システムの Phrase ユーティリティについて説明します。
また,語句データベースの作成方法および使用方法についても示します。
dxim
の Phrase 入力システムでの語句データベースの作成方法および使用方法については,dxim
入力サーバのオンライン・ヘルプを参照してください。
中国語と韓国語の入力サーバは,語句データベースと次のいずれかを使うことにより,語句入力をサポートします。
SIM (Software Phrase Input Method) サービス
SIM サービスは
stty
コマンドの
-adec
オプションによって使用可能になり,語句入力のサポートを,繁体字中国語端末と簡体字中国語端末に拡張します。
SIM サービスは,語句を端末に動的にロードします。
このため,語句データベースのサイズは,端末ハードウェアのメモリによって制限されることはありません。
SIM サービスでサポートされている端末を使用するときは,ユーザ定義のキー・シーケンスを押して,語句入力モードのオン/オフを切り替えます。
語句入力モードに入ると,ユーザ入力の位置は端末画面の 26 行目に移り,語句コードの入力を求めるプロンプトが表示されます。
デスクトップ環境における語句入力メカニズム
端末エミュレーション・ウィンドウでは端末画面の 26 行目が存在しないため,SIM サービスは,ワークステーション上では正しく動作しません。 語句入力は,他の入力システムと同様に,中国語と韓国語の入力サーバによってサポートされます。 そのため,ワークステーションにおける語句の入力は,入力システム・ウィンドウを呼び出して,語句項目を選択することにより行います。
中国語および韓国語の入力システム・サーバを使用すると,これらの言語のテクニカル・リファレンスで説明されているように,変換用に個々の語句とそのコードを入力し,再使用することができます。 また,この付録で説明するように,Phrase ユーティリティを使って語句データベースを作成して維持することもできます。
表 B-1 に,語句入力に関する基本的な用語と,その説明を示します。
用語 | 説明 |
語句 | ユーザが抽出したい語句の文字列。 個々の語句は,現ロケールのコードセット中の任意の文字の文字列で,長さは最大で 80 文字です。 |
語句コード | ユーザが語句を抽出するために入力するキーワード。 個々の語句コードは,最大 8 文字までの ASCII 英数字の文字列です。 |
クラス | 論理的に関連のある語句のグループ。 各クラスは,最大 8 文字までの ASCII 文字の文字列である識別子を持ちます。 |
データベース | 2 つのファイル,語句データ・ファイル
語句データベースには,システムとユーザの 2 つのタイプがあります。 システム・データベースはシステム上の全ユーザが共有し,システム管理者が管理します。 ユーザ・データベースは個々のユーザが定義して,管理します。 システム語句データベースとユーザ語句データベースのディレクトリのパス名は, 語句データベース・ファイルはロケール固有のファイルで,省略時のパスの下にあるロケール・ディレクトリに置かれています。 たとえば,個々のユーザは,次のようなファイル・セットを作成し保守することにより,2 種類のロケールを利用できます。 $HOME/.sim/zh_TW.big5/phrase.dat $HOME/.sim/zh_TW.big5/class.dat $HOME/.sim/zh_TW.dechanyu/phrase.dat $HOME/.sim/zh_TW.dechanyu/class.dat
|
表 B-2
に,繁体字中国語および簡体字中国語用の端末で,中国語の語句入力を有効にし,その特性を設定するための
stty
コマンド行オプションについて説明します。
これらのオプションは,SIM 以外のメカニズムを使い中国語および韓国語の入力サーバの語句入力をサポートする端末エミュレーション・ウィンドウには適用できません。
表 B-2: SIM サービスで使用される stty オプション
stty オプション | 説明 |
sim |
SIM サービスを有効にします。 |
-sim |
SIM サービスを無効にします。 |
simall |
現在の SIM サービスの設定を表示します。 |
simclass
class |
語句データベース内の適切な語句を検索するために,現在のクラス名を設定します。
クラスは,語句データベース内の情報のサブセットを識別するもので,Phrase
ユーティリティを使用して定義されます。 |
simdb
path |
語句データベースのパスを設定します。 |
simkey
key |
語句入力モードに入るための切り替えキーを設定します。 |
simmode
dmode |
語句の表示位置を設定します。
サポートされている設定は,offspot
(省略値) と
onspot
の 2 つです。
xterm
や
dxterm
のような,26 行目の表示行をサポートしない端末エミュレータでは
onspot
を使用します。 |
語句データベースを作成したり管理するには,Phrase ユーティリティを使用します。 ワークステーションでは,次のように入力します。
% phrase
非特権ユーザの場合,phrase
コマンドは個人用の語句データベースを使用することを前提とします。
スーパユーザの場合,phrase
コマンドはシステム・レベルの語句データベースを使用することを前提とします。
この省略時の動作は,Phrase ユーティリティのメニュー・インタフェースで変更できます。
Phrase ユーティリティは起動時に,メニュー方式のインタフェースをフルスクリーンで表示します。
(アジア系言語システムでの表示例を,図 B-1
に示します。)
図 B-1: Phrase ユーティリティのユーザ・インタフェース画面
Phrase ユーティリティは
curses
を使ったアプリケーションです。
Phrase ユーティリティのユーザ・インタフェースで操作を行うときは,次のガイドラインに従ってください。
メニューやメニュー項目を選択するには,矢印キーを使用する。
選択したメニューやメニュー項目を起動するには,Return キーまたはスペース・バーを押す。
1 回の操作で選択と起動を行うには,メニュー階層での現在のレベルに応じて,メニューまたはメニュー項目の名前の下線の付いた文字のキーを押す。
選択項目を起動せずにメニュー階層の 1 つ上のレベルに戻るには,Ctrl/X
を押す。
メニューが起動されていないときに
Ctrl/X
を押すと,Phrase ユーティリティが終了します。
Phrase ユーティリティの画面には,次のものが表示されます。
メニュー・バー (画面の左上)
現在の語句データベースとクラスを表示する領域 (メニュー・バーの右側)
警告と情報メッセージが表示される 2 つの行 (画面の下部)
メニューの展開とユーザ・ダイアログのための大きな領域 (画面の中央)
次のリストに,Phrase ユーティリティのメニューと,実行される操作を示します。 リストの後に,メニューの使用上のガイドラインと制限事項も示します。
File メニュー
作業を行う語句データベースの省略時パスを変更する。
Phrase ユーティリティを終了し,データベースに加えた変更をすべて保存する。
Class メニュー
クラスを作成する。
選択したクラス内の語句を表示する。
クラス名を変更する。
クラスを削除する。
現在のクラスを選択 (変更) する。
Phrase メニュー
選択したクラス内に語句を作成する。 クラスを明示的に選択しない場合は,Default クラスが使用されます。
語句を変更する。
語句を削除する。
Language メニュー
画面上のテキストとメッセージに使用する言語を選択する。
Phrase ユーティリティの使用に関するガイドラインと制約事項を以下に示します。
語句は,語句クラスごとに管理されます。 クラスを選択していない場合,語句はクラス Default に含まれるものと見なされます。 それ以外の場合,語句はユーザが選択した最後のクラス名に適用されます。
語句定義を操作するオプションを選択したときは,2 つの部分からなるウィンドウが表示されます。 ウィンドウの左側には語句コードが表示され,右側には語句が表示されます。
語句名と定義は,2 つの部分からなる表示ウィンドウの下の領域に入力します。
語句名は慎重に選択してください。 語句名は,語句を呼び出すときにシステムが使うコードです。 語句名を定義した後には,語句名を変更することはできません。 語句名を定義しなおすには,語句定義全体を削除してから再入力しなければなりません。 語句名は,1 つのクラス内で一意でなければなりませんが,異なる語句クラスでは同じ語句名を使用できます。
語句そのものは,最大で 80 バイトのデータを含むことができ,これはほぼ,画面上の 80 カラムに相当します。
80 バイトのデータはすべてユーザ入力領域に表示されますが,表示ウィンドウには 80 カラム分の語句を表示する領域はありません。
そのため,長い語句定義は,表示ウィンドウの右端で切り捨てられます。
その場合,語句定義にさらにデータが含まれていることを示すために,右端に右山カッコ (>
) が表示されます。
この切り捨て処理は表示ウィンドウの制限であり,語句を呼び出すときには適用されません。
クラスは,データベースごとに作成され,管理されます。 データベースを明示的に指定しなかった場合,クラス操作は省略時のデータベースに適用されます。
クラス名は,データベース内で一意でなければなりません。
新しいクラスを作成すると,そのクラスは選択したクラスとなり,そのクラスの新しい語句を作成するための機能が自動的に呼び出されます。
アジア系言語端末または CDE 環境の入力システム・ウィンドウを介して語句を取り出す場合,1 つのクラス内の語句の数に制限はありません。
語句データベースは,ロケール固有のデータベースです。
LANG
環境変数をロケールに設定しなければ,Phrase ユーティリティを呼び出すことはできません。
ただし,語句データベースは任意のロケールで作成できます。
Phrase ユーティリティを呼び出す前に,LANG
環境変数が,作成する語句のロケールに設定されていることを確認してください。
LANG
環境変数が設定されていない場合には,目的のロケールとは違うロケールで語句データベースを操作 (または作成) することになります。
システム・レベルのデータベースや他のユーザのデータベース (読み取り許可が与えられているものとする) から,自分のデータベースに語句定義をコピーできます。 他のユーザのデータベースから語句をコピーする場合,コピー元のデータベースの絶対パスを入力するように求められます。 指定したデータベースがアクセス可能であれば,データベース内のすべての語句定義が表示されるので,コピーしたい定義を選択します。
データベースでクラスの作成,削除,または変更を行うには,そのデータベースの所有者でなければなりません。
通常ユーザは,自分のデータベースにのみ書き込み操作を実行できます。 スーパユーザだけが,システム・レベルのデータベースに書き込み操作を実行できます。
語句データベースの使用方法は,ハードウェア入力システムと SIM サービスのいずれを使用しているかによって異なります。
B.3.1 SIM サービスによりサポートされる語句入力
SIM サービスは,繁体字中国語や簡体字中国語の端末,またはワークステーション上の端末エミュレーション・ウィンドウ上で使用します。
SIM サービスを介して語句データベースを使用する前に,stty
コマンドを使って,次の作業を実行しなければなりません。
適切なアジア系言語コードセットをサポートするロケールが設定されており,端末回線規則が
adec
になっていることを確認する。
SIM サービスを次のコマンドで起動する。
% stty sim
語句入力モードのオン/オフを切り替えるキー・シーケンスを定義する。
次の例では,このキー・シーケンスを
Ctrl/B
に設定しています。
% stty simkey [Ctrl/B]
コマンド行やアプリケーションでまだ使用されていないキー・シーケンスを選択します。
たとえば,キー・シーケンスを
Ctrl/C
(打ち切り操作) や
Ctrl/Z
(中断操作) に設定しないようにします。
クラス Default の語句や,省略時の語句データベースの語句を使用しないときは,stty
コマンドにより次の作業を行います。
SIM サービスまたは専用の端末ソフトウェアが語句コードの解釈に使用する語句クラスを指定する。 例を次に示します。
% stty simclass CORP
専用の端末ソフトウェアがアクセスするデータベースを指定する。
SIM サービスは,常に個人用の語句データベースで語句名を探し,その語句名が見つからないときは,システム・レベルの語句データベースを検索します。 ハードウェア語句入力システムをサポートする端末は,データベースから一度に 1 つの語句しかロードできません。 そのため,端末ハードウェア入力システムを使用している通常ユーザは,次のコマンドを入力しなければならないことがあります。
% stty simdb /var/i18n/sim
端末のセットアップが完了したら,次の操作を行って語句を抽出できます。
stty
コマンドの
simkey
オプションで指定したキー・シーケンス,たとえば Ctrl/B を押します。
画面の下部に,語句コードの入力を求めるプロンプトが表示されます。
語句コードを入力し,Return キーまたはスペース・バーを押します。
語句が画面に表示されます。 語句コードが見つからないときは,エラー・メッセージが表示されます。
語句入力モードを終了するときは,simkey
キー・シーケンスをもう一度押します。
語句コードは,英大文字または数字でなければならない。 小文字を入力した場合は,大文字に変換されます。
語句コード・バッファが空のときに入力されたスペースまたは Return 文字は,語句入力モードに入る前のアプリケーションに直接送られる。
つまり,語句の間にスペースまたは改行を入力するときに,語句モードを終了する必要はありません。
英数字以外の印字可能な文字を入力すると,語句コードとして無効な文字であることを知らせる警告音が鳴る。
語句モードのオン/オフを切り替えるもの以外の制御キー・シーケンスは,語句入力モードに入る前のアプリケーションに直接送られる。
つまり,Ctrl/Z
や
Ctrl/C
などの制御シーケンスは,語句を入力しているシステム・コマンド行や,エディタ,他のアプリケーションから入力するのと同じように扱われます。
ファンクション・キーや矢印キーを押したときの結果は未定義。
B.3.2 Input Options アプリケーションにおける語句入力
言語設定で語句入力がサポートされており,対応する入力サーバが動作しているときは,デスクトップ環境で「Input Options」ウィンドウが利用できます。 このウィンドウの [Options] ボタンをクリックすると,次の作業が行えます。
語句データベース (ユーザまたはシステム) を選択する。
データベース内の語句クラスを選択する。
語句入力を開始する。
語句入力を開始するには,[Input Options] メニューから [Input Method Customization] を選択し,ポップアップ・ダイアログ・ボックスで [Phrase] を選択します。