10    LPD インバウンド・ゲートウェイ

インバウンド・ゲートウェイ・クライアント・デーモンでは,ユーザは lp コマンドや lpr コマンドを使用して,プリント・システムのプリンタに対してプリント要求を実行することができます。また,LPD インバウンド・ゲートウェイでは,Berkeley Software Distribution (BSD) ベースのプリント・システムに印刷する機能だけを持つアプリケーションや PC 統合ソフトウェアからでも,プリント・システム・サービスにアクセスできます。

この章では,LPD インバウンド・ゲートウェイ・クライアント・デーモンのインストールと構成の方法,および,lp コマンドと lpr コマンドおよびメッセージをプリント・システムにマップする方法を説明します。

10.1    LPD インバウンド・ゲートウェイの構成

Advanced Printing Software の LPD インバウンド・ゲートウェイは,LPD プリント・システムのライン・プリンタ・デーモン (lpd) を置き換える,または共存させるために設計されました。lpd プリント・システムを Advanced Printing Software に置き換えることは,すべての印刷が,置き換えられたプリント・システムで行われることを意味します。プリント・システムと lpd が共存するようにシステムを構成した場合は,lpr コマンドを使用してローカルに印刷したり,lpr コマンドを使用してリモート・プリント・システムのプリンタに印刷したりできます。

インバウンド・ゲートウェイを構成するには,次の手順を実行します。

LPD インバウンド・ゲートウェイはシステムのブート時に自動的に起動されます。

10.1.1    /etc/printcap ファイルへの変更

インバウンド・ゲートウェイを構成する際には,ライン・プリンタ・デーモン (lpd) と Advanced Printing インバウンド・ゲートウェイをプリント・サーバ・ホスト上で同時に実行することを選択できます。これは,lpr/lpd クライアントまたは Advanced Printing の CLI と GUI を使用してユーザがプリント・ジョブを実行できるので,最も柔軟な設定です。

着信 lpd プリント・ジョブを Advanced Printing のプリンタ宛に送るには,BSD プリンタ (lpr 要求で指定) に Advanced Printing の論理プリンタを関連付けるプリント・サーバ・ホスト上に printcap エントリを作成する必要があります。そのような printcap エントリは,プリンタを「ゲートウェイ・プリンタ」として宣言します。ゲートウェイ・プリンタに対して実行されたすべてのジョブは,Advanced Printing ジョブに変換され,Advanced Printing スプーラ内の関連付けられている論理プリンタに送信されます。

プリント・サーバ・ホストの printcap エントリに "rm=@dpa" および "rp=<logical printer>" という式を含めておくことにより,BSD プリンタをゲートウェイ・プリンタとして識別します。また,1) プリンタがローカル・ポート上にないこと,2) スプーラ・ディレクトリ,および 3) 最大ジョブ・サイズを指定するには,それぞれ lp,sd,および mx オプションも含める必要があります。そのようなエントリにある他の printcap フラグはすべて無視されます。

次の例は,"archie" という名前の Advanced Printing 論理プリンタに関連付けられているゲートウェイ・プリンタとして BSD プリンタ "bunker" を指定する /etc/printcap エントリを示しています。

 lp1|bunker|archie|Digital LN17ps:\
            :lp=:\
            :rm=@dpa:\
            :rp=archie:\
            :sd=/var/spool/printer/archie:\
            :mx#0:

別のホスト上のライン・プリンタ・デーモンまたは lpr クライアントがプリント・ジョブをプリンタ bunker に渡すとき,lpd はそのジョブをインバウンド・ゲートウェイを介して Advanced Printing 論理プリンタ archie に渡します。

10.2    ジョブ取り消しメッセージの説明

ゲートウェイ・プリンタのジョブを表示するために lpq(1) コマンドを使用すると,ゲートウェイを介して送信される場合も含めて,プリンタのキューに登録されたすべてのジョブを表示します。lpq コマンドの出力で,000 のジョブ・エントリ番号は pdpr コマンドまたは pdprint の GUI を使用して送信されたネイティブな Advanced Printing ジョブであり,BSD ジョブではないことを示しています。ネイティブな Advanced Printing ジョブは,lprm コマンドでは取り消すことができません。Advanced Printing ジョブを削除するには,pdrm(1) コマンドを使う必要があります。

lprm コマンドによる lpd インバウンド・ゲートウェイからのジョブ取り消しメッセージは,次のように表示されます。

#lprm -P gwp 73
fafner_spl:1652 (73) cancelled

このメッセージは,Advanced Printing Software ジョブ ID が fafner_spl:1652 の LPD ジョブ 73 が削除されたことを示しています。

10.3    LPD インバウンド・ゲートウェイ・マッピング

LPD プリント・ジョブが LPD インバウンド・ゲートウェイに到着すると,ジョブ・オプションが,等価なプリント・システムのジョブ属性とドキュメント属性に変換されます。次の表は,プリント・システムと,LPD インバウンド・ゲートウェイ経由で実行された LPD コマンドとのマッピングを示しています。

いくつかの Xerox プロトコル拡張オプションについて,Advanced Printing Software では同等の属性を提供していません。これらの拡張機能は,「プリント・システムの属性」欄に「(マッピングなし)」として記述されています。これらのサポートされていない属性のいずれかを指定してジョブを実行すると,ジョブの印刷は失敗し,ユーザは,選択されたオプションは Advanced Printing Software でサポートされていないという旨の電子メール・メッセージを受けとります。

表 10-1:  ジョブおよびファイル・メッセージ

用途 説明 lpr オプション lp オプション プリント・システムの属性
C(ClassName) クラス名: (バナー) (ジョブ) -C (なし) job-comment
H(Hostname) ジョブの実行元ホスト: 1(ジョブ) (なし) (なし) job-originating-host
J(Jobname) ジョブ名: (バナー) (ジョブ) -J -t job-name
M(user) 完了時にメールの送信先ユーザ: (ジョブ) -m -m notification-profile
N(name) データ・ファイルのソース: (ファイル) (なし) (なし) document-name
P(name) 要求元ユーザ: (ジョブ) (なし) (なし) job-originator, job-owner
S(dev) (inode) ファイル情報: (ファイル) -s (省略時設定) (マッピングなし)
U(file) ファイルのリンク解除: (ファイル) -r (なし) (なし) (マッピングなし)
1(file) Times Roman フォント・ファイル: (roff)(ジョブ) -1 (なし) (マッピングなし)
2(file) Times Italic フォント・ファイル: (roff)(ジョブ) -2 (なし) (マッピングなし)
3(file) Times Bold フォント・ファイル: (roff)(ジョブ) -3 (なし) (マッピングなし)
4(file) Times Special フォント・ファイル: (roff)(ジョブ) -4 (なし) (マッピングなし)

表 10-2:  プリント・メッセージ

用途 説明 lpr オプション lp オプション プリント・システムの属性
c(file) CIF データとして印刷/プロット -c -T cif document-format
d(file) DVI データとして印刷 -d -T dvi document-format
f(file) ASCII として印刷 (なし) -T ascii document-format
g(file) プロット・データとして印刷 -g -T plot document-format
l(file) 印刷不能ファイル変換印刷 -l -y catv_filter -o nofilebreak document-format
n(file) ditroff 出力として印刷 -n -T ditroff document-format
o(file) PostScript として印刷 -o -T ps -T PostScript document-format
p(file) "pr" による印刷 -p -T pr document-format
r(file) fortran として印刷 -f -T fortran document-format
t(file) troff 出力として印刷 -t -T troff document-format
v(file) ラスタ・イメージとして印刷 -v -T raster document-format

表 10-3:  Sun プロトコル拡張

用途 説明 lpr オプション lp オプション プリント・システムの属性
O(option_list) SVR4 LP -o オプション用 (なし) -o option_list (無視される)
5(opt)(value) SVR4 LP 機能用 (なし) (オプションでない)  
5f(form) SVR4 Forms 用 (なし) -f form_name (無視される)
5H(handling) SVR4 Handling 用 (なし) -H-f form_name (無視される)
5p(method:end) SVR4 Notification 用 (なし) -p (無視される)
5P(pagelist) SVR4 Pages 用 (なし) -P page_list page-select
5q(priority) SVR4 Priority 用 (なし) -q priority job-priority
5S(char set) SVR4 Charset 用 (なし) -S char_set (無視される)
5T(type) SVR4 Type 用 (なし) -T input_type document-format
5y(mode) SVR4 Mode 用 (なし) -y filter_mode (無視される)

表 10-4:  DEC プロトコル拡張

用途 説明 lpr オプション lp オプション プリント・システムの属性
<(tray) 給紙トレイ選択 -< (upper|lower|manual|...) (なし) default-input-tray
>(bin) 排出トレイ選択 -> (bin) (なし) output-bin
G(nup) N アップ -G (nup) (なし) number-up
K(sides/plex) 片面/両面 -K (sides/plex) (なし) sides, plex
O(orientation) ページの印刷向き -O (orientation) (なし) content-orientation

注意

Advanced Printing Software がサポートしていない Xerox プロトコル拡張は,次の表の「プリント・システムの属性」欄に (マッピングなし) として記述されています。これらのサポートされていない拡張を指定して実行したジョブは,印刷されません。サポートされていない拡張を使用してジョブを実行したユーザは,選択されたオプションはサポートされていないというメール・メッセージを受けとります。

表 10-5:  Xerox プロトコル拡張 - DocuSP および DocuPrint

用途 説明 lpr オプション lp オプション プリント・システムの属性
C" (doc-format)

ドキュメント・フォーマット, doc-format= ps postscriptascii tiff pcl interpress ip lcds (サポートされていない)

-C -o5 document-format= PostScript PostScript simple-text TIFF PCL Interpress Interpress LCDS
C" (orientation) " ドキュメントの向き, orientation= portrait inverseportrait iportrait landscape inverselandscape ilandscape -C -o content-orientation= portrait reverse-portrait landscape reverse-landscape
C" (staple) " ドキュメントのホッチキスどめ, staple= staple nostaple -C -o finishing= staple-top-left
C" (order)" ページ順, order= 1ton nto1 -C -o page-order-received= first-to-last last-to-first
C" (simplex)" 片面印刷 -C -o sides=1
C" (duplex)" 両面印刷 -C - sides=2
C" (tumble)" 短辺とじ -C -o sides=2, plex=tumble
C" (mediumsize)" 用紙サイズ, mediumsize= usletter uslegal a4 USLetter USLegal usledger a0 a1 a2 a3 a4 a5 a6 a7 a8 a9 a10 isob0 isob1 isob2 isob3 isob4 isob5 isob6 isob7 isob8 isob9 isob10 jisb0 jisb1 jisb2 jisb3 jisb4 jisb5 jisb6 -C -o default-medium= na-letter-white na-legal-white iso-a4-white iso-a4-white na-letter-white na-legal-white ledger-white iso-a0-white iso-a1-white iso-a2-white iso-a3-white iso-a4-white iso-a5-white iso-a6-white iso-a7-white iso-a8-white iso-a9-white iso-a10-white iso-b0-white iso-b1-white iso-b2-white iso-b3-white iso-b4-white iso-b5-white iso-b6-white iso-b7-white iso-b8-white iso-b9-white iso-b10-white jis-b0-white jis-b1-white jis-b2-white jis-b3-white jis-b4-white jis-b5-white
C" (xshift=x)" x 方向へのページのシフト -C -o x-image-shift=x
C" (yshift=x)" y 方向へのページのシフト -C -o y-image-shift=y
C" (font)" フォント名 -C -o (マッピングなし)

注意

Advanced Printing Software がサポートしていない Xerox プロトコル拡張は,次の表の「プリント・システムの属性」欄に (マッピングなし) として記述されています。これらのサポートされていない拡張を指定して実行したジョブは,印刷されません。サポートされていない拡張を使用してジョブを実行したユーザは,選択されたオプションはサポートされていないというメール・メッセージを受けとります。

表 10-6:  Xerox プロトコル拡張 - DocuSP のみ

用途 説明 lp オプション lpr オプション プリント・システムの属性
C" (bind=edge) " バインディング, edge= top bottom left right -C -o バインディング, edge= top bottom left right
C" (stitch=how)"   -C -o finishing= staple-top-left staple-bottom-left edge-stitch
C" (uncollate) " 照合 -C   output=no-page-collate
C" (booklet) " フィニッシング -C   finishing=saddle-stitch
C" (signature)" 記号オプション -C -o number-up=simple-2-up
C" (slipsheet)" 合紙オプション -C -o job-sheets=job-copy-wrap
C" (prefinish= <option>) " 用紙プレフィニッシュ・オプション -C -o (マッピングなし)
C" (pagestoprint =<CARDINAL> <CARDINAL>)" ページ・オプション -C -o (マッピングなし)
C" (media=<size>: <type>: < color>: <weight>)" 用紙カスタム・オプション -C -o (マッピングなし)
C" (mediaType= <type>) " 用紙カスタム・オプション -C -o (マッピングなし)
C" (mediatSize= <size>) " 用紙カスタム・オプション -C -o (マッピングなし)
C" (mediaColor= <color>) " 用紙カスタム・オプション -C -o (マッピングなし)
C" (mediaWeight =<weight>) " 用紙カスタム・オプション -C -o (マッピングなし)
C" (opacity= transparency| opaque)" その他のオプション -C -o (マッピングなし)
C" (xshift2=x)" ページの裏面を x 方向にシフト -C -o (マッピングなし)
C" (yshift2=x)" ページの裏面を y 方向にシフト -C -o (マッピングなし)
C" (account= <text>)" 課金オプション -C -o (マッピングなし)
C" (hipentry= <CARDINAL>)" LCDS インデックス・オプション -C -o (マッピングなし)
C" (recipient= <name>)" 受取人オプション -C -o (マッピングなし)
C" (res= <CARDINAL>)" 解像度オプション -C -o (マッピングなし)
C" (outputbin)" その他のオプション -C -o (マッピングなし)
C" (inputbin)" その他のオプション -C -o (マッピングなし)
C" (thicken)" その他のオプション -C -o (マッピングなし)
C" (offenhance)" その他のオプション -C -o (マッピングなし)
C" (onenhance)" その他のオプション -C -o (マッピングなし)
C" (bp)" その他のオプション -C -o (マッピングなし)
C" (ep)" その他のオプション -C -o (マッピングなし)
C" (diagnostic)" その他のオプション -C -o (マッピングなし)

注意

Advanced Printing Software がサポートしていない Xerox プロトコル拡張は,次の表の「プリント・システムの属性」欄に (マッピングなし) として記述されています。これらのサポートされていない拡張を指定して実行したジョブは,印刷されません。サポートされていない拡張を使用してジョブを実行したユーザは,選択されたオプションはサポートされていないというメール・メッセージを受けとります。

表 10-7:  Xerox プロトコル拡張 - DocuPrint のみ

用途 説明 lpr オプション lp オプション プリント・システムの属性
C" (hc=color) " 強調色,color= red blue green cyan magenta yellow cardinal royalblue ruby violet customName customName -C --- 強調色,color= red blue green cyan magenta yellow cardinal royalblue ruby violet customName customName
C" (mc=color)" 強調マッピング色, 色の値は強調色と同じ, color -C --- highlight-mapping-colour, 値は highlight-colour と同じ
C" (hcr=rendering)" 強調色レンダリング・アルゴリズム, rendering= automatic colortohighlight colortables presentation pictorial -C --- 強調色レンダリング・アルゴリズム, rendering= automatic colortohighlight colortables presentation pictorial
C" (hcm=action)" 強調色不一致動作, action= abort ignore operator -C --- 強調色不一致動作, action= abort ignore operator
C" (stitch)" ドキュメントのホッチキスどめ, stitch= stitch nostitch -C --- finishing= staple-top-left ---
C" (thick=x))" 濃度, x= 01 10 -C -o thickening-specification= thickening-entire-documents thickening-bit-map-images
C" (drilled) " 用紙プレフィニッシュ・オプション -C --- (マッピングなし)
C" (media=<size>: <type>: <paper color>: <weight>)" 用紙カスタム・オプション -C -o (マッピングなし)
C" (<n>x<m>) " 用紙カスタム・オプション -C --- (マッピングなし)
C" (size)" フォント・サイズ -C --- (マッピングなし)
C" (fontsize)" フォント・サイズ -C --- (マッピングなし)
C" (disposition=<>)" 分解サービス・オプション -C --- (マッピングなし)
C" (background=<>)" 分解サービス・オプション -C --- (マッピングなし)
C" (bf=<>)" 分解サービス・オプション -C --- (マッピングなし)