ローカル・ファイルおよび NIS ネーミング・サービスでは,ONC バインディング・エントリ形式のエントリを使用して,プリント・オブジェクトを識別します。プリント・システムは,このようなエントリを /etc/printers.conf ファイルに格納したり,このファイルから検索したりします。
ONC バインディング・エントリ形式の構文は,/etc/printcap や /etc/remote ファイルで使用される構文と似ていますが,ONC バインディング・エントリ形式では異なったキー名を使用する点が異なっています。
printer-configuration の構文は,次のとおりです。
ONCEntry::=NameList{: KeyValuePair}+
NameList::=PrimaryName{`|' Alias}+
KeyValuePair::=Name={ValueDP | ...}
ValueDP::=Hostname, ProgramNumber, ProgramVersion,
Authentication, SubType, ServerName[, Protoserver], spooling-type
この構文の記号の意味は,次のとおりです。
{...}+ = 1 つ以上
| = または
| = シンボル |
[...] = オプション
パラメータ | 説明 |
ONCEntry | 1 つの PrimaryName,オプションの Aliases,および 1 つまたは複数の KeyValuePair からなる,プリンタ・テーブル・エントリ。 |
PrimaryName of Object | オブジェクトを識別するためのプライマリ名。 |
Aliases | オブジェクトの別名で,ゼロでも複数あってもよい (オプション)。 |
KeyValuePair | 属性名およびその値からなる属性。ここでは,タイプ ValueDP の値だけが表示される。 |
ValueDP | プリンタ・アドレス・バインディング (paddr),サーバ・アドレス・バインディング (saddr),キュー・アドレス・バインディング (qaddr) に対応するサーバ・バインディング。 |
Hostname | オブジェクトおよびそれが関連付けられているサーバを持つホスト・コンピュータの名前。 |
ProgramNumber | サーバまたは ProtoServer の RPC プログラム番号。サーバ・プログラム番号は,サーバが動的に作成する場合も,スプーラに対して特別に作成される場合もある。 |
ProgramVersion | Protoserver の RPC バージョン番号。 |
Authentication | 使用される RPC 認証方式。プリント・システムでは,sys だけがサポートされている。 |
SubType | オブジェクトについての説明。lp は論理プリンタ・オブジェクト,pp は物理プリンタ・オブジェクト,qu はキュー・オブジェクト,sl はスプーラ・サーバ・オブジェクト,sv はスーパバイザ・サーバ・オブジェクト。 |
ServerName | オブジェクトに関連付けられているサーバの名前。 |
ProtoServer | オプション。 パラメータの値が 1 の場合は,ProtoServer が使用される。パラメータの値が 0 の場合は,ProtoServer は使用されない。ローカル・ファイルおよび NIS ネーミング・サービスの場合,このフィールドの値は 1 でなければならない。 |
Spooling-type | インバウンド・ゲートウェイ翻訳が行われるプリント・パラダイムの名前。プリント・システムでは,dpa だけがサポートされている。 |
プリンタの構成例
elmtree:paddr=papers,105004,1,sys,lp,wooden,1,dpa
この例のそれぞれのフィールドの意味は,次のとおりです。
elmtree はオブジェクトの名前で,プリンタ・アドレス・バインディング情報が含まれています。
プリンタ・アドレス・バインディング情報には,RPC バインディング情報の他に,papers の RPC ホスト名,プログラム番号 105004 (Protoserver RPC 番号),およびプログラムのバージョン番号 1 が含まれます。
elmtree オブジェクトは,sys の認証方式を持ちます。
elmtree は,wooden という名前の関連付けられたサーバ・オブジェクトを持つ,論理プリンタ・オブジェクトです。
Protoserver デーモン (UNIX ホスト・コンピュータ 'papers' 上にある) により,スプーラ・サーバ (wooden) に接続するために使用される適切な RPC 動的プログラム番号 (Dynamic Program Number) が決定されます。
dpa は,LPD インバウンド・ゲートウェイ・ジョブのプリント・パラダイムです。
2 つの論理プリンタおよび 1 つのキューを hostC 上に持つスプーラと,2 つの物理プリンタを hostD 上に持つスーパバイザからなる構成の場合,完全な構成ファイルは,次のようになります。
spooler1:saddr=hostC,105004,1,sys,sl,spooler1,1,dpa
superv1:saddr=hostD,105004,1,sys,sv,superv1,1,dpa
lp1:paddr=hostC,105004,1,sys,lp,spooler1,1,dpa
lp2:paddr=hostC,105004,1,sys,lp,spooler1,1,dpa
q1:qaddr=hostC,105004,1,sys,qu,spooler1,1,dpa
pp1:paddr=hostD,105004,1,sys,pp,superv1,1,dpa
pp2:paddr=hostD,105004,1,sys,pp,superv1,1,dpa
この構成ファイルは,ローカル・ファイル・ネーミング環境にあるすべてのホストに存在し,NIS 環境の NIS データベースを更新するために使用する必要があります。ネーミング・サービスの構成については,第 3 章を参照してください。
ただし,ローカル・ファイル環境では,プリント・システムは ONC のネーミング・コンポーネントを使用せず,ONC RPC に依存していることに注意してください。