この章では,標準の UNIX ファイル・システムについて説明し,手作業でディスク・スペースの計画を行う際に必要となるディスク・スペース計画のガイドラインを示します。 フル・インストレーションを行う場合は,自動ディスク・スペース計画機能が組み込まれているため,手作業でディスク・スペースを計画する必要はまずありません。
この章では,次の項目について説明します。
ファイル・システムとディスク・スペースの概要 (4.1 節)
サポートされている 2 つのファイル・システム・タイプ (AdvFS と UFS) についての説明 (4.3 節)
クラスタのディスク・スペース計画に関する情報の参照先 (4.2 節)
フル・インストレーション処理で自動的に行われるディスク・スペース計画 (4.4 節)
手作業でディスク・スペースを計画しなければならない状況について (4.5 節)
ディスク・パーティションやファイル・システム・レイアウトをカスタマイズする場合の考慮事項 (4.6 節)
既存のディスクおよびパーティションのサイズの確認方法 (4.7 節)
オペレーティング・システムをインストールするために必要なディスク・スペースの確認方法 (4.8 節)
標準の UNIX ファイル・システムの内容 (4.9 節)
スワップ領域割り当てのガイドライン (4.12 節)
注意
この章で使用する用語の定義については,『インストレーション・ガイド』の用語集を参照してください。
オペレーティング・システムのフル・インストレーションでは,基本的な UNIX ファイル・システム (/
,/usr
,および 1 つのスワップ領域) が作成されます。
var
領域は,/usr
ファイル・システム下のディレクトリとすることも,独立したファイル・システムとして作成することもできます。
フル・インストレーション処理は,これらのファイル・システムをディスク上のどこに置き,オペレーティング・システムをインストールするためにどの程度の大きさにしなければならないかという判断をユーザが簡単にできるようにします。
この章では,フル・インストレーションの組み込みディスク計画機能について説明してから,ユーザのコンピュータ環境でカスタマイズが必要かどうかを判断するための情報について説明します。
4.2 クラスタ環境におけるディスク計画上の考慮事項
この章の情報は,シングル・システム・インストレーションのディスク計画に適用されます。
クラスタ・ファイル・システムのディスク・スペース計画,クォーラム・ディスク,システムをクラスタ・メンバとして構成するための一般的な情報については,TruCluster Server の『クラスタ・インストレーション・ガイド』および『クラスタ管理ガイド』を参照してください。
4.3 ファイル・システム・タイプの概要
このオペレーティング・システムは,AdvFS (Advanced File System) と,UFS (UNIX ファイル・システム) の,2 種類のファイル・システムをサポートしています。
/
,/usr
,/var
,および
/usr/i18n
ファイル・システムには,ファイル・システム・タイプとして AdvFS または UFS を選択できます。
ファイル・システム・レイアウトをカスタマイズする場合は,必ずしもすべてのファイル・システムに同じファイル・システム・タイプを使用する必要はありません。
省略時のファイル・システム・レイアウトを使用する場合は,すべてのファイル・システムに対してファイル・システム・タイプを 1 つだけ選択できます。
どちらのファイル・システム・タイプも,LSM (Logical Storage Manager) をインストールして構成することができます。
この節では,ファイル・システム・タイプを選択する上で役立つ情報を説明します。
4.3.1 AdvFS (Advanced File System)
AdvFS は,省略時のファイル・システム・タイプです。 クラスタ構成で稼働させる場合は,AdvFS ファイル・システムを選択する必要があります。
AdvFS は,ログ・ベースのファイル・システムであり,柔軟で,互換性があり,データの可用性が高く,高性能で,システム管理が簡単です。 AdvFS は 64 ビットのコンピュータ環境を利用し,16 テラバイト (TB) 程度の大きさのファイルやファイルセットを扱えるように設計されています。
AdvFS の構成は,従来の UNIX ファイル・システムの構成とは異なります。 AdvFS では,物理記憶レイヤが,ディレクトリ・レイヤとは独立して管理されます。 システム管理者は,ファイル・システムをアンマウントしたり,オペレーティング・システムを停止することなく,ストレージを追加したり削除したりできます。 このため,構成の計画はそれほど複雑ではなく,柔軟性もあります。
ユーザから見ると,AdvFS は他の UNIX ファイル・システムと同様に動作します。
mkdir
コマンドを使用して新しいディレクトリを作成したり,cd
コマンドを使用してディレクトリ間を移動したり,ls
コマンドを使用してディレクトリの内容をリストしたりできます。
AdvFS の論理構造,クォータ制御,およびバックアップ機能は,従来のファイル・システム設計を基にしています。
AdvFS システムをオフラインにすることなく,システム管理者はバックアップを実行したり,ファイル・システムを再構成したり,ファイル・システムのチューニングを行ったりできます。 エンド・ユーザは,システム管理者の助けを借りることなく,誤って削除してしまった自分のファイルを,事前に定義されたごみ箱ディレクトリやクローン・ファイルセットから取り出すことができます。
AdvFS は,マルチボリューム・ファイル・システムをサポートしています。 これにより,ファイル・レベルのストライピング (複数のボリュームへデータを分散する) が可能となり,I/O を多用するアプリケーションのファイル転送速度を改善できます。 ボリューム・レベルのストライピングが可能な LSM (Logical Storage Manager) を,AdvFS 構成に組み込むこともできます。
オペレーティング・システムとは別のライセンスを必要する AdvFS Utilities を使用すると,追加のファイル管理機能や,システム管理を簡単にするためのグラフィカル・ユーザ・インタフェース (GUI) を提供します。 AdvFS の GUI は,共通デスクトップ環境 (CDE) 下で動作し,AdvFS の操作を簡単に実行できる,メニュー,グラフィカル表示,わかりやすいオンライン・ヘルプを備えています。
/
ファイル・システムを除き,AdvFS ファイル・システムのサイズは,いつでも変更することができます (addvol
コマンドを使用)。
ファイル・システム・サイズの増加または減少は,ユーザからは見えません。
AdvFS をファイル・システム・タイプとして使用し,オプションの AdvFS Utilities (OS とは別のライセンスが必要) をインストールすると,ファイル・システム・スペースの変更が簡単になります。 インストレーション後,AdvFS Utilities を使用すると,ディレクトリ構造を変更したり,ユーザの作業を中断することなく,AdvFS ファイル・システムでのボリュームの追加や削除が可能です。 AdvFS ファイル・システムに対し,ファイル・システム・スペースを余分に割り当てる必要はありません。
AdvFS についての詳細は,『AdvFS 管理ガイド』を参照してください。
4.3.2 UNIX ファイル・システム (UFS)
UFS は,UNIX オペレーティング・システム用の,古くからある従来のファイル・システム・タイプです。 AdvFS はログ・ベースのファイル・システムで,UFS よりも強力で安定しており,万一の場合でもデータ破壊が発生しにくくなっています。 AdvFS では,1 つのファイル・システムのファイルを,複数のディスクまたはパーティション上に持つことができますが,UFS の階層構造はもっと厳格です。 UFS ファイル・システムでは,各ディスクや各パーティションには,独立したファイル・システムが格納されます。 つまり,ファイル・システム内のすべてのファイルは,単一のディスク上の,割り当てられたディスク・パーティション内に存在します。 UFS ファイル・システムの特長には,階層構造,ファイルの作成および削除機能,ファイルの動的拡張,ファイル・データの保護があります。
UFS は,Berkeley 4.3 Tahoe リリースと互換性があります。 UFS では 255 バイトまでのパス名構成要素が許されており,完全修飾パス名の長さは,1023 バイトまで許されています。 この実装の UFS では,最大のファイル・システム (128 GB) と同じ大きさの最大ファイル・サイズがサポートされています。
注意
LSM (Logical Storage Manager) は,UFS ファイル・システム・タイプでも使用することができます。 クラスタでは,UFS ファイル・システム・タイプは使用できません。
UFS についての詳細は,『システム管理ガイド』を参照してください。
4.4 フル・インストレーションの自動ディスク・スペース計画機能
フル・インストレーション・プロセスでは,次のような,事前定義の省略時ファイル・システム・レイアウトを使用できます。
基本的な UNIX ファイル・システムとスワップ領域は,選択した 1 台のディスクにインストールされます。 このディスクのサイズは,1 ギガバイト (GB) 以上でなければなりません。
ファイル・システムは,次のとおりにインストールされます。
/
(ルート) ファイル・システムは,a
パーティションにインストールされます。
/usr
ファイル・システムは
g
パーティションにインストールされます。
var
は,/usr
内のディレクトリになります。
ファイル・システム・タイプとして AdvFS を選択した場合は,var
は
usr_domain
に置かれます。
swap
領域が 1 つ,b
パーティションに置かれます。
すべてのファイル・システムに対するファイル・システム・タイプとして,AdvFS または UFS のどちらか 1 つが選択されます。 省略時のファイル・システム・タイプは,AdvFS です。
推奨パーティション・テーブルでは,すべてのファイル・システムおよびベース・オペレーティング・システム・ソフトウェア・サブセットに十分な大きさのディスク・パーティションが作成されます。
パーティション・サイズは,ディスク・サイズに基づいて
表 4-1
のように算出されます。
表 4-1: ディスク容量ごとの推奨パーティション・テーブル
ディスク容量ごとのファイル・システム・サイズ | |||
ファイル・システムの名前と位置 | 1 GB ディスク | 2 GB ディスク | 3 GB 以上のディスク |
/
(ルート) パーティション
a
|
128 MB | 256 MB | 384 MB |
/usr
パーティション
g
|
745 MB | 1490 MB | 2235 MB |
スワップ領域パーティション
b |
128 MB | 256 MB [脚注 4] | 384 MB [脚注 4] |
推奨ディスク・パーティション・テーブルを使用する省略時ファイル・システム・レイアウトの設計では,オペレーティング・システム全体が,1 GB 以上のサイズの 1 つのディスクに収まるようになっています。
注意
1 台のディスクにインストールすることは可能ですが,ディスクが複数ある場合は,1 台の 1 GB ディスクへのフル・インストレーションはお勧めできません。 このようにすると,性能が低下するだけでなく,クラッシュ・ダンプを保存できず,ディスクがクラッシュした際のルート・ディスクの回復が難しくなります。
/
(ルート) ファイル・システムを 1 台のディスクに置き,/usr
ファイル・システムとスワップ領域を別のディスクに置くことをお勧めします。 ユーザ・データはこれ以外のディスクに置くようにしてください。
この省略時のレイアウトで満足でき,システムの構成に特別な考慮が必要でない場合は,これ以上ディスク計画を行う必要はありません。
省略時のファイル・システム・レイアウトについての詳細は,図 4-1
を参照してください。
この例では,オペレーティング・システムをインストールする単一のディスクとして,dsk1
を使用しています。
図 4-1: 省略時の「File System Layout : Defaults」ウィンドウ
4.5 節
では,ファイル・システム・レイアウトとディスク・パーティション・サイズを手作業で計画しなければならない場合について説明します。
4.5 手作業でディスク・スペースを計画しなければならない場合
省略時の設定や推奨設定を受け入れるのではなく,ディスク・スペースを手作業で計画しなければならない場合もあります。
ディスク・スペースを計画しなければならないのは,次のいずれかの条件に該当する場合です。
システムをリモート・インストレーション・サービス (RIS) サーバまたはデータレス管理サービス (DMS) サーバとして使用する場合。
これらの 2 つのユーティリティは重要なデータを
/var
ファイル・システムに置くため,/var
を独立したパーティション (可能であれば独立したディスク) とすることをお勧めします。
RIS ユーティリティと DMS ユーティリティについては,『Sharing Software on a Local Area Network』を参照してください。
4.5.1 項と
4.5.2 項では,これらの 2 つのユーティリティでのディスク計画の考慮事項を,簡単に説明します。
/
(ルート) ファイル・システム・スペースを大量に必要とする関連プロダクトやレイヤード・プロダクトをインストールしたい場合。
『リリース・ノート』に,すべての関連プロダクトおよびレイヤード・プロダクトのソフトウェア・サブセット・サイズの情報があります。
『リリース・ノート』を読んで,追加ソフトウェア・プロダクトが大量のディスク・スペースを必要としないことを確認してください。
フル・インストレーション後に,別のインストレーション作業として,WLS (ワールドワイド言語サポート) ソフトウェア・サブセットをインストールする場合。
/
,/usr
,/var
ファイル・システムのサイズをそれぞれ指定し,/usr/i18n
ディレクトリのサイズを考慮しなければならないことがあります。
ソフトウェア・サブセット名,サイズ,および各言語グループについての説明は,『インストレーション・ガイド』および『リリース・ノート』を参照してください。
本書の第 2 章では,WLS インストレーション手順について説明しています。
ファイル・システムを複数のディスクにインストールする場合。
スワップ領域を 2 つ作成したい場合 (省略時は 1 つ)。 または,省略時のサイズよりも大きなスワップ領域を作成したい場合。
4.5.1 リモート・インストレーション・サービス (RIS) に関する考慮事項
RIS は,登録されたクライアント・システムに対して,ネットワーク経由でソフトウェアを提供するサーバをセットアップするために使用されるユーティリティです。
システムを RIS サーバとしてセットアップする場合は,ローカルにマウントされたメディアを RIS 領域のソースとして使用する代りに,ソフトウェア・サブセットを配布メディアから
var
領域の
/var/adm/ris
ディレクトリに展開することができます。
ソフトウェアを展開すると,オペレーティング・システム CD-ROM の内容がディスクにコピーされるため,大量のディスク・スペースが専有されます。
複数のバージョンのオペレーティング・システムを提供しなければならない場合は,さらに多くのソフトウェア・サブセットを展開して格納するためのストレージが必要になります。
ベース・オペレーティング・システムを展開する RIS 領域は,1 つあたり約 600 MB のディスク・スペースが必要です。
各レイヤード・プロダクトに必要なディスク・スペースは,『リリース・ノート』に記載されています。
RIS を使用する際のオプションとして,シンボリック・リンクされた RIS 領域を作成する方法もあります。 このタイプの領域には,CD-ROM の内容は全くコピーされず,RIS 領域にリンクされます。 シンボリック・リンクされた領域の唯一の欠点は,配布メディアをセットしたデバイスが,この目的のために占有されてしまうことです。 ガイドラインとして,シンボリック・リンクされた RIS 領域はネットワーク・ブート可能なカーネルとその他のサポート・ファイル用に 10 MB 程度のスペースを専有すると想定してください。
各 RIS 領域に格納するソフトウェア用に十分なスペースを,var
ファイル・システム内の
/var/adm/ris
ディレクトリに確保しなければなりません。
確保するスペースの量は,作成する RIS 環境の数により異なります。
各ソフトウェア・サブセットの説明や他のサブセットの名前,または RIS 操作に関連するカーネル構成ファイル・オプションについては,『インストレーション・ガイド』を参照してください。
4.5.2 データレス管理サービス (DMS) に関する考慮事項
データレス管理サービス (DMS) 環境では,サーバ・システムは,すべてのクライアント・システムの
/
ファイル・システムおよび
/usr
ファイル・システムを管理します。
サーバは,クライアントごとに
/
ファイル・システムを 1 コピー管理します。
/usr
ファイル・システムは読み取り専用でエクスポートされ,その環境に登録されているすべてのクライアントで共有されます。
各クライアント・システムは,自分専用の
/var
ファイル・システムを持ちます。
各 DMS 環境は,/var/adm/dms/dmsn.alpha
ディレクトリに置かれます。
サイトのサーバとクライアントの関係に応じて,n.alpha
領域をいくつか持つことができます。
各領域には,オプション・ソフトウェア・サブセットの他,インストールされるベース・オペレーティング・システムの必須サブセットが少なくとも必要です。
関連プロダクトまたはレイヤード・プロダクト用のスペースと,システム管理作業およびシステム・ファイル情報用に 10 % の追加スペースを確保しなければなりません。
データレス環境のサイズ要件についての詳細は,『Sharing Software on a Local Area Network』を参照してください。
データレス環境を提供するシステムにする場合は,/var
を独立したファイル・システムにするかどうか,/var/adm/dms
ディレクトリ下にマウントするパーティションを確保するかどうかを決定しなければなりません。
また,各データレス・クライアントの
/
ファイル・システムを格納する
/clients
ディレクトリのスペース要件も考慮しなければなりません。
/clients
ディレクトリは,独立したファイル・システムにすることも,サーバの
/
ファイル・システム内に保持することもできます。
この場合は,1 クライアントにつき 64 MB のスペースを割り当てなければなりません。
4.6 ディスク・パーティションおよびファイル・システム・レイアウトのカスタマイズに関する考慮事項
以降の節では,自分でディスク・パーティション・サイズを決めたい場合や,独自のファイル・システム・レイアウトを定義したい場合に必要になる情報について説明します。 次のトピックについて説明します。
ファイル・システム・タイプとして AdvFS と UFS のどちらを選択すべきか (4.3 節)
既存のディスクのサイズおよびパーティションを確認する方法 (4.7 節)
ソフトウェア自身に必要なディスク容量を確認する方法 (4.8 節)
計画する上で考慮すべき,各ファイル・システムの基本的な内容 (4.9 節)
以前のバージョンのオペレーティング・システムがすでに稼働しているシステムには,カスタマイズされたディスク・パーティション・テーブルがすでに存在する可能性があります。 ディスク・レイアウトおよびパーティション・サイズをチェックするには,既存のディスク・ラベルを調べます。 ディスク・ラベルには,ディスク・タイプ,物理パラメータ,パーティション・サイズなどの,ディスクに関する情報が含まれています。 ディスク・ラベルなしでは,ディスクはブートできません。
テキスト・ベースのフル・インストレーション・インタフェースからディスク・ラベルを参照するには,disklabel
コマンドを使用します (第 3 章を参照)。
詳細については,
disklabel
(8)
フル・インストレーションをグラフィカル・インタフェースで開始した場合は,「Custom File System Layout」ダイアログ・ボックスの [パーティションの編集...] ボタンをクリックし 「Disk Configuration」アプリケーションをオープンして,現在のディスク・パーティション情報を参照します。
図 4-2
に,「Disk Configuration」アプリケーションのディスク・パーティション画面の例を示します。
図 4-2: 「Disk Configuration」アプリケーション: ディスク・パーティション情報
図 4-3
に,「Disk Configuration」アプリケーションのディスク・テーブル画面の例を示します。
図 4-3: 「Disk Configuration」アプリケーション: ディスク・パーティション・テーブル
ソフトウェアがどれくらいのディスク・スペースを専有するかは,知っていなければならない重要な事項です。
フル・インストレーション中は,次のいずれかの方法で,/
,/usr
,および
/var
ファイル・システムに必要なディスク容量を知ることができます。
グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合は,「Software Selection」ウィンドウで,インストールするソフトウェアのタイプ (必須,オプション,またはすべて) を決定し,対応する [サブセット一覧...] または [リストの編集...] ボタンをクリックします。 画面の下部に,選択したソフトウェアに基づいて,必要なディスク容量が表示されます。 この数値を参照して,ファイル・システムに必要な大きさを判断してください。 WLS ソフトウェアをインストールする場合は,インストールする言語をこの時点で選択してください。 これは,言語ソフトウェア・サブセットのサイズも,ディスク・スペースの必要量として計算されるためです。
テキスト・ベース・インタフェースを使用している場合は,オプションのソフトウェア・サブセットを選択すると,フル・インストレーション処理が,使用されるディスク・スペースを計算します。 アメリカ合衆国の英語以外の言語を選択した場合は,ディスク・スペースの計算に,言語ソフトウェア・サブセットも含められます。 この数値を参照して,ファイル・システムに必要な大きさを判断してください。
この情報は,選択したディスク・パーティションが,インストールするソフトウェア・サブセットを十分格納できる大きさかどうかを判断するのに役立ちます。 パーティションのスペースが不足している場合,いつでもディスクおよびパーティションの選択を変更することができます。 4.8.1 項で説明するように,ファイル・システムのオーバヘッドは,ファイル・システム・スペースの計算に含められます。
注意
フル・インストレーションの際に,
/
ファイル・システムに選択されたディスク上のパーティション・テーブルが推奨テーブルと異なる場合は,推奨ディスク・パーティションを使用するか,カスタマイズされたパーティションを使用するかを選択できます。
この他,ソフトウェア・サブセットのサイズを手作業で調べる方法には,『リリース・ノート』に記載されているソフトウェア・サブセット・サイズの表を参照する方法があります。
4.8.1 ファイル・システムのオーバヘッド
/
,/usr
,および
/var
ファイル・システムで利用可能なディスク・スペースを計算する際に,フル・インストレーション・プロシージャは,各ファイル・システムに対して選択されたファイル・システム・タイプに基づき,ファイル・システム・オーバヘッドの概算値を使用します。
フル・インストレーション中,ソフトウェア・サブセットを選択した際に計算されるディスク・スペースの量には,これらのオーバヘッドに必要な容量が含まれています。
4.9 ファイル・システムの内容
以降の節では,基本的な UNIX ファイル・システムの内容と,そのファイル・システムのスペースに関する特記事項について説明します。
4.10 節では,/usr
ファイル・システムの内容と,フル・インストレーション後にオプション・ソフトウェアをインストールするために必要なスペース,およびユーザ・アカウントやユーザ作成ファイルに十分なスペースを割り当てるために必要なスペースについて説明します。
4.11 節では,/var
ファイル・システムの内容と,クラッシュ・ダンプを格納するためのスペースや,エラー・ロガーや syslog ファイルのスペースについて説明します。
4.12 節では,オペレーティング・システムでのスワップ領域の実装方法と,スワップ領域に十分なスペースを割り当てるためのガイドラインについて説明します。
/usr
ディレクトリには,ライブラリ,実行可能プログラム,およびドキュメントなど,オペレーティング・システムのファイルのほとんどが格納されます。
このディレクトリ構造には,/usr/sys
,/usr/adm
,/usr/bin
などのディレクトリが含まれます。
これらのディレクトリには,/usr
ファイル・システム中でかなりのスペースを占めるシステム・ファイルや UNIX コマンドのバイナリ・ファイルが置かれています。
一般的には,専用のディスク上に可能な限り大きな
/usr
ファイル・システムを作成します。
/usr
ファイル・システムの大きさを決定する際には,次の点を考慮します。
インストールするソフトウェア・サブセットの数。
大半のソフトウェア・サブセットは,/usr
ファイル・システムに多数のシステム・ファイルやコマンドをロードします。
各ソフトウェア・サブセットが各ファイル・システム内で消費する容量については,『リリース・ノート』を参照してください。
ユーザ・アカウント数および,ユーザのホーム・ディレクトリが
/usr
にある場合には,各ユーザが必要とするディスク容量
注意
将来,フル・インストレーションを行う際にユーザ情報が上書きされないように,ユーザ・アカウント用に独立したファイル・システムをマウントすることをお勧めします。 独立したファイル・システムをマウントすると,ユーザ・アカウントを失うことなくオペレーティング・システムを再インストールできるため,障害回復も簡単になります。
/var
領域のサイズ (/usr
と同じパーティション上にある場合)
/usr/i18n
のサイズ (/usr
ファイル・システム内にある場合)
/usr
ファイル・システムには,いくつものファイルが追加され,オペレーティング・システムの将来のリリースでは必要なスペースが増加することがあるため,このファイル・システムのスペースは不足しがちです。
将来に備えて,/usr
ファイル・システムには十分な空き容量を確保してください。
一般的には,/usr
ファイル・システムはできるだけ大きくします。
ファイル・システム・タイプとして AdvFS (Advanced File System) を使用し,AdvFS Utilities (オペレーティング・システムとは別のライセンスが必要) をインストールする場合は,/usr
ファイル・システムのスペースを過度に多く割り当てる必要はありません。
AdvFS ファイル・システムでは,ディレクトリ構造の変更やシステムの中断を行うことなく,動的にスペースを増やすことができます。
AdvFS ファイル・システムについての詳細は,『AdvFS 管理ガイド』を参照してください。
4.10.1 項と
4.10.2 項では,さまざまな事項が
/usr
ファイル・システムのサイズに及ぼす影響,およびディスク・スペースの計画時に考慮する必要がある事項について説明します。
4.10.1 オプションのソフトウェア・サブセットおよび関連プロダクトのためのスペース
/usr
ファイル・システムには,インストール予定のソフトウェア・サブセットを格納するのに十分な大きさが必要です。
ソフトウェア・サブセットは,特定の機能を実行したり,特定クラスのサービスを提供するために必要な実行可能ファイルとデータ・ファイルの集合です。
たとえば,システム課金を実行するには,System Accounting Utilities ソフトウェア・サブセットが必要です。
『インストレーション・ガイド』では,各ソフトウェア・サブセットとともに,依存ソフトウェア・サブセットとソフトウェア・サブセットに関連するカーネル構成ファイル・オプションについて説明しています。 ソフトウェア・サブセットのサイズの一覧表については,『リリース・ノート』を参照してください。
必須ソフトウェア・サブセットは必ずインストールされます。 オプション・ソフトウェア・サブセットはオペレーティング・システムが機能するために必須のサブセットではありません。 このため,ユーザの必要性とディスク・スペースに応じて,オプションのソフトウェア・サブセットを全く選択しないことも,一部だけを選択することも,すべてを選択することもできます。
WLS インストレーションでは,/usr/i18n
が独立したファイル・システムとして作成されていない場合,/usr/i18n
ディレクトリのサイズについて考慮しなければなりません。
また,このバージョンのオペレーティング・システムと互換性のある関連プロダクトやレイヤード・プロダクトを将来インストールするためのスペースを割り当てておくこともできます。
将来プロダクトを追加する場合は,/usr
のディスク・スペースの必要容量の計画時に,余分なスペースを確保してください。
ソフトウェアの正確なサイズについては,それぞれのプロダクトの『リリース・ノート』を参照してください。
4.10.2 ユーザ・アカウントおよびユーザ・ファイルのためのスペース
フル・インストレーションでは,ユーザ・アカウントおよびユーザ・ファイルのための領域は用意されません。
このため,インストレーション後にこの領域をセットアップしなければなりません。
ただし,システムの計画時にユーザ・ファイル用に必要となるスペースを考慮にいれなければなりません。
ユーザのホーム・ディレクトリを
/usr
に置く場合は,システムの各ユーザに対して,最低でも 10 〜 20 MB のディスク・スペースを確保しなければなりません。
ユーザのホーム・ディレクトリ用に必要なサイズを概算するには,この値にユーザ数を掛けてください。
注意
ユーザのホーム・ディレクトリを別のファイル・システム (可能であれば別のディスク) に作成し,
/usr
ファイル・システムの下にマウントすることをお勧めします。 ユーザのホーム・ディレクトリを別のファイル・システムに置くことにより,将来,フル・インストレーションを実行する場合に,そのディレクトリが上書きされるのを防ぐことができます。 別のファイル・システムにすると,ユーザ・アカウントを失うことなくオペレーティング・システムを再インストールできるため,障害回復も簡単になります。
ユーザ領域にクォータを設定する場合は,ユーザのクォータにユーザ数を掛けて,ユーザ・スペースの容量を決定してください。
ディスク・クォータについては,『システム管理ガイド』を参照してください。
4.11 var ファイル・システムの内容
/var
領域には,一時的なマシン固有のディレクトリ,および
tmp
や
adm
などのディレクトリが置かれます。
/var
領域は,独立したパーティションのファイル・システムとして割り当てることも,/usr
ファイル・システム下のディレクトリとして割り当てることもできます。
/var
が頻繁に使用されるシステムの場合は,独立した
/var
ファイル・システムを作成することをお勧めします。
/var
領域のサイズを決定するときには,次の容量上の要件を考慮してください。
クラッシュ・ダンプ (4.11.1 項)
エラー・ロガー・ファイル (4.11.2 項)
システム課金ファイル (4.11.3 項)
システムをリモート・インストレーション・サービス (RIS) サーバとして使用する場合,/var/adm/ris
ディレクトリのサイズ (4.5.1 項)
システムをデータレス管理サービス (DMS) サーバとして使用する場合,/var/adm/dms
ディレクトリのサイズ (4.5.2 項)
メール,印刷,および
uucp
のスプーリング
/var
のファイル・システム・タイプとして AdvFS を使用し,AdvFS Utilities (別のライセンスが必要) を使用する場合は,/var
ファイル・システムのスペースを過度に多く割り当てる必要はありません。
AdvFS ファイル・システムでは,ディレクトリ構造の変更やシステムの中断を行うことなく,動的にスペースを増やすことができます。
AdvFS についての詳細は,『AdvFS 管理ガイド』を参照してください。
4.11.1 var ファイル・システム内のクラッシュ・ダンプ領域
システムがクラッシュ・ダンプを生成するときに,2 つのディスク領域が使用されます。
4.12 節で説明するように,1 番目の領域は
swap
パーティションに置かれ,システムがリブートされるまでの間,クラッシュ・ダンプの保管に使用されます。
この領域は,クラッシュ・ダンプを 1 つ格納するのに十分な大きさでなければなりません。
2 番目の領域は,システムがリブートされたときに,savecore
ユーティリティがクラッシュ・ダンプとカーネル
/vmunix
をコピーする場所です。
この領域は,/var/adm/crash
ディレクトリに置かれます。
/var/adm/crash
が置かれるディスク・パーティションは,少なくとも 1 つのクラッシュ・ダンプと 1 つの
/vmunix
のコピーを格納できる十分な大きさ (10 〜 13 MB) でなければなりません。
クラッシュ・ダンプを複数保管したい場合は,ディスク・リソースが許す範囲で,このパーティションを大きくすることができます。
クラッシュ・ダンプ・パーティションのサイズは,フル・ダンプとして構成されたシステムでは物理メモリのサイズと同じで,部分ダンプとして構成されたシステムでは少し小さくなります。
複数のクラッシュ・ダンプを保管したい場合は,1 つのクラッシュ・ダンプと 1 つの
/vmunix
のコピーに必要な合計サイズに
n
(n
は保管しておくクラッシュ・ダンプの数) を掛けて,このパーティションに必要なサイズを見積もります。
『システム管理ガイド』には,クラッシュ・ダンプおよびクラッシュ・ダンプ・ファイルの管理について説明している章があります。 この章では,クラッシュ・ダンプがどのように書き込まれるか,部分ダンプあるいはフル・ダンプの選択,クラッシュ・ダンプおよびクラッシュ・ダンプ・ファイルの両方を保管するのに必要な容量の決定などについて説明しています。
クラッシュ・ダンプ領域のサイズを決定し,位置を記録するには,次の情報が必要です。
システムのメモリ容量 (MB 単位) は _________です。
システムのメモリ容量は,次の方法で調べます。
スーパユーザ (root
) として,次のコマンドを入力します。
# uerf | grep -i memory
注意
uerf
コマンドは,新しい EV6 プロセッサではサポートされません。 代わりに,Compaq Analyze または DECevent を使用してください。 これらのユーティリティは,Associated Products CD-ROM からインストールできます。 詳細は,を参照してください。 dia
(8)
コンソール・モード・プロンプト ( >>>
) が表示されている場合は,次のコマンドを入力します。
>>> show mem
クラッシュ・ダンプ・パーティションのために ________ メモリが必要です。
4.11.2 エラー・ロガーおよび syslog ファイルのスペース
/var
領域には
syslog
およびバイナリ・エラー・ロガーの両方で作成されるログ・ファイルを格納できるだけのスペースが必要です。
これらのログ・ファイルには,システム・イベントとエラーが ASCII テキスト (syslog
) とバイナリ・フォーマットで記録されます。
syslog
ユーティリティは,次のようなシステム・アクティビティに関する情報を収集します。
メール
システム・スタートアップ
システム・シャットダウン
リブート
ルート・アカウントでのログイン
タイム・デーモン
プリンタ・サブシステム
syslog
自身
ハードウェア・エラーに関する要約情報も記録されます。 記録されるデータ量は,システム・アクティビティとユーザ数に関係します。
バイナリ・エラー・ロガーは,ハードウェア・エラーおよびシステム・スタートアップに関する情報を記録します。
新しいシステムを作成する場合には,1 週間につき約 500 KB を見積もっておいてください。
/var/adm/binary.errlog
ファイルおよび
/var/adm/syslog
ファイルの大きさには制限がないため,これらのファイルが大きくなって,パーティションの空きスペースを使い果たしてしまうことがあります。
4.11.3 システム課金ファイルのスペース
/var/adm
ディレクトリには,acct
や
wtmp
などの管理プログラムで生成されるデータ・ファイルが格納されます。
これらのプログラムが生成するデータは,システムによっても,時期によっても大きく異なります。
たとえば,/var/adm/acct
ファイルを作成する場合,大規模なシステムではこのファイルのサイズは 1 日に 50 KB 増加することがありますが,ワークステーションでは 5 KB 程度です。
システム課金の一般的なガイドラインとして,ワークステーションでは 1 日に 10 KB を割り当て,大規模なシステムでは 1 日に 100 KB を割り当てるようにします。
システム課金に必要なスペースについての詳細は,『システム管理ガイド』を参照してください。
4.12 スワップ領域の概要
オペレーティング・システムの仮想メモリは,物理メモリとスワップ領域の間でメモリ・ページを透過的に移動させることにより実現されます。 作成可能な仮想アドレス空間の大きさは,スワップ領域の容量によってのみ制限されます。 この節では,システムにスワップ領域を構成する際に考慮しなければならない要因について説明します。 スワップ領域使用の最適化についての詳細は,『システムの構成とチューニング』を参照してください。
フル・インストレーションの際には,swap1
という名前の一次スワップ・パーティションと,swap2
という名前のオプション・スワップ・パーティションを構成することができます。
インストレーションの終了後に『システム管理ガイド』で説明されている手順に従って,追加のスワップ・パーティションを構成することができます。
フル・インストレーションでは,swap1
に使用するディスク・パーティションの選択についての問い合わせがあります。
省略時の選択は,システム・ディスクのパーティション
b
です。
注意
スワップ領域は,物理メモリの 2 倍のサイズで作成することをお勧めします。
スワップ領域の使用を最適化するには,スワップ領域を複数のデバイスに分散するとともに,高速のディスクをスワップ・デバイスに使用します。 最大限の性能を得るには,同じディスク上に複数のスワップ領域を置くのではなく,異なるディスクにスワップ領域を置きます。 スワップ領域として割り当てる容量は,インストールするアプリケーションに必要な仮想メモリによっても異なります。
インストレーション中にはスワップ・ストラテジ・モードを選択できませんが,スワップ割り当てには immediate と over-commitment の 2 つのストラテジがあります。 省略時の設定では,オペレーティング・システムのスワップ・ストラテジ・モードは,変更可能な仮想アドレス空間が作成されたときにスワップ領域を割り当てる immediate モードです。 このモードでは,変更可能なすべての仮想ページが変更されたとしても十分なスワップ領域があることを保証するため,over-commitment モードよりも多くのスワップ領域を必要とします。 スワップ割り当てストラテジや,インストレーション後にスワップ割り当てモードを切り替える方法についての詳細は,『システム管理ガイド』を参照してください。
省略時の設定では,クラッシュ・ダンプは一時的にスワップ・パーティションに保存されます。 この領域は,クラッシュ・ダンプをシステム・リブート時まで保存しておくために使用され,クラッシュ・ダンプを 1 つ保持するのに十分なサイズが必要です。 この領域は,クラッシュ・ダンプ・パーティションと呼ばれます。 システム・クラッシュが発生すると,カーネルは物理メモリの内容を,スワップ・パーティションに書き込みます。 書き込まれる情報の量とクラッシュ・ダンプのサイズは,いくつかの要因に依存します。
『システム管理ガイド』で説明しているように,フル・ダンプを生成するようにシステムが構成されている場合は,クラッシュ・ダンプのサイズはシステムの物理メモリのサイズと同じです。
部分ダンプを生成するようにシステムが構成されている場合は,クラッシュ・ダンプのサイズはフル・ダンプよりも小さくなります。
部分クラッシュ・ダンプのサイズを決定する要因は,クラッシュ発生時に,システムの状態を定義するいくつかのカーネル・データ構造体で使用されていた物理メモリの容量です。 アクティブなタスクやスレッドが多いほど使用中のカーネルデータ構造体が多くなり,生成される部分クラッシュ・ダンプが大きくなります。
スワップ領域が残り少ないことを示す警告メッセージが表示された場合は,後でスワップ領域を追加してください。