B    Phrase ユーティリティ

中国語または韓国語のテキストを入力する場合,文字や単語を個別に入力することも,語句を構成する文字列を入力することもできます。 Tru64 UNIX では,次の方法で語句入力をサポートしています。

この付録では,dxhanyuimdxhanziim,および dxhangulim が使う,オペレーティング・システムの Phrase ユーティリティについて説明します。 また,語句データベースの作成方法および使用方法についても示します。 dxim の Phrase 入力システムでの語句データベースの作成方法および使用方法については,dxim 入力サーバのオンライン・ヘルプを参照してください。

中国語と韓国語の入力サーバは,語句データベースと次のいずれかを使うことにより,語句入力をサポートします。

中国語および韓国語の入力システム・サーバを使用すると,これらの言語のテクニカル・リファレンスで説明されているように,変換用に個々の語句とそのコードを入力し,再使用することができます。 また,この付録で説明するように,Phrase ユーティリティを使って語句データベースを作成して維持することもできます。

表 B-1 に,語句入力に関する基本的な用語と,その説明を示します。

表 B-1:  語句入力の定義

用語 説明
語句 ユーザが抽出したい語句の文字列。 個々の語句は,現ロケールのコードセット中の任意の文字の文字列で,長さは最大で 80 文字です。
語句コード ユーザが語句を抽出するために入力するキーワード。 個々の語句コードは,最大 8 文字までの ASCII 英数字の文字列です。
クラス 論理的に関連のある語句のグループ。 各クラスは,最大 8 文字までの ASCII 文字の文字列である識別子を持ちます。
データベース

2 つのファイル,語句データ・ファイル phrase.dat とクラス・データ・ファイル class.dat のセット。 語句データベースを別のディレクトリに移動するときは,2 つのデータ・ファイルを一緒に移動しなければなりません。

語句データベースには,システムとユーザの 2 つのタイプがあります。 システム・データベースはシステム上の全ユーザが共有し,システム管理者が管理します。 ユーザ・データベースは個々のユーザが定義して,管理します。

システム語句データベースとユーザ語句データベースのディレクトリのパス名は,/var/i18n/conf/cp_dirs ファイルに設定されています。 省略時には,このファイル内のシステム語句データベース・ディレクトリは /var/i18n/sim に,ユーザ語句データベースのディレクトリは $HOME/.sim に設定されています。 cp_dirs ファイルについての詳細は,『国際化ソフトウェア・プログラミング・ガイド』を参照してください。

語句データベース・ファイルはロケール固有のファイルで,省略時のパスの下にあるロケール・ディレクトリに置かれています。 たとえば,個々のユーザは,次のようなファイル・セットを作成し保守することにより,2 種類のロケールを利用できます。

$HOME/.sim/zh_TW.big5/phrase.dat
$HOME/.sim/zh_TW.big5/class.dat
$HOME/.sim/zh_TW.dechanyu/phrase.dat
$HOME/.sim/zh_TW.dechanyu/class.dat

B.1    SIM サービスの有効化

表 B-2 に,繁体字中国語および簡体字中国語用の端末で,中国語の語句入力を有効にし,その特性を設定するための stty コマンド行オプションについて説明します。 これらのオプションは,SIM 以外のメカニズムを使い中国語および韓国語の入力サーバの語句入力をサポートする端末エミュレーション・ウィンドウには適用できません。

表 B-2:  SIM サービスで使用される stty オプション

stty オプション 説明
sim SIM サービスを有効にします。
-sim SIM サービスを無効にします。
simall 現在の SIM サービスの設定を表示します。
simclass class 語句データベース内の適切な語句を検索するために,現在のクラス名を設定します。 クラスは,語句データベース内の情報のサブセットを識別するもので,Phrase ユーティリティを使用して定義されます。
simdb path 語句データベースのパスを設定します。
simkey key 語句入力モードに入るための切り替えキーを設定します。
simmode dmode 語句の表示位置を設定します。 サポートされている設定は,offspot (省略値) と onspot の 2 つです。 xtermdxterm のような,26 行目の表示行をサポートしない端末エミュレータでは onspot を使用します。

B.2    語句データベースの作成と管理

語句データベースを作成したり管理するには,Phrase ユーティリティを使用します。 ワークステーションでは,次のように入力します。

% phrase

非特権ユーザの場合,phrase コマンドは個人用の語句データベースを使用することを前提とします。 スーパユーザの場合,phrase コマンドはシステム・レベルの語句データベースを使用することを前提とします。 この省略時の動作は,Phrase ユーティリティのメニュー・インタフェースで変更できます。

Phrase ユーティリティは起動時に,メニュー方式のインタフェースをフルスクリーンで表示します。 (アジア系言語システムでの表示例を,図 B-1 に示します。)

図 B-1:  Phrase ユーティリティのユーザ・インタフェース画面

Phrase ユーティリティは curses を使ったアプリケーションです。 Phrase ユーティリティのユーザ・インタフェースで操作を行うときは,次のガイドラインに従ってください。

Phrase ユーティリティの画面には,次のものが表示されます。

次のリストに,Phrase ユーティリティのメニューと,実行される操作を示します。 リストの後に,メニューの使用上のガイドラインと制限事項も示します。

Phrase ユーティリティの使用に関するガイドラインと制約事項を以下に示します。

B.3    語句データベースの使用方法

語句データベースの使用方法は,ハードウェア入力システムと SIM サービスのいずれを使用しているかによって異なります。

B.3.1    SIM サービスによりサポートされる語句入力

SIM サービスは,繁体字中国語や簡体字中国語の端末,またはワークステーション上の端末エミュレーション・ウィンドウ上で使用します。

SIM サービスを介して語句データベースを使用する前に,stty コマンドを使って,次の作業を実行しなければなりません。

クラス Default の語句や,省略時の語句データベースの語句を使用しないときは,stty コマンドにより次の作業を行います。

端末のセットアップが完了したら,次の操作を行って語句を抽出できます。

  1. stty コマンドの simkey オプションで指定したキー・シーケンス,たとえば Ctrl/B を押します。

    画面の下部に,語句コードの入力を求めるプロンプトが表示されます。

  2. 語句コードを入力し,Return キーまたはスペース・バーを押します。

    語句が画面に表示されます。 語句コードが見つからないときは,エラー・メッセージが表示されます。

語句入力モードを終了するときは,simkey キー・シーケンスをもう一度押します。

語句入力モードで入力する文字には,次の規則が適用されます。

B.3.2    Input Options アプリケーションにおける語句入力

言語設定で語句入力がサポートされており,対応する入力サーバが動作しているときは,デスクトップ環境で「Input Options」ウィンドウが利用できます。 このウィンドウの [Options] ボタンをクリックすると,次の作業が行えます。