5    UUCP

UNIX 間コピー・プログラム (UUCP) は,2 つの UNIX システム間でバッチ方式によるエラーのないファイル転送とリモート・システムでのコマンド実行を可能にするプログラムの集合です。 UUCP は電子メール,ネットワーク・ネット,および低速度/低コストの通信リンクを使用するパブリック・ドメイン・ソフトウェアの転送に通常使用されます。 Tru64 UNIX は,HoneyDanBer バージョンの UUCP をインプリメントしています。

この章では,次の項目について説明します。

UUCP の概要については, uucp_intro(7) を参照してください。 UUCP の使用方法の詳細については,『Tru64 UNIX ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

トラブルシューティング情報については 9.10 節を参照してください。

5.1    UUCP 環境

UUCP 環境では,次のような方法で各システムが接続されます。

図 5-1 に単純な UUCP 構成を示します。 図 5-2 に示すのは,ホスト A と C が LAN 上で TCP/IP 接続されている単純な UUCP 構成の例です。

図 5-1:  単純な UUCP 構成の例

図 5-2:  TCP/IP による UUCP 構成の例

5.2    UUCP の準備

この節では,UUCP を構成するための準備作業について説明します。

5.2.1    ハードウェアの確認

ハードウェアを確認する際には,ケーブルとモデムの両方をチェックする必要があります。

正しいケーブルを使用してシステムのシリアル・ポートに接続していることを確認してください。 正しいケーブルを使用していないと,信号が失われたりソフトウェアが正しく動作しない場合があります。

使用可能なモデム・ケーブルについては,『ネットワーク管理ガイド:接続編』の「ポイント・ツー・ポイント接続」に記載されている一覧を参照してください。 2 つのシステムが隣接している場合は,いずれかのヌル・モデム・ケーブルを使用してください。 2 つのシステムがモデムと電話回線で接続されている場合は,標準的なモデム・ケーブルを使用します。 モデムで UUCP を使用する場合は,ローカルおよびリモート・モデムの両方が正しく構成されていることを確認してください。

また,UUCP は,TCP/IP ローカル・エリア・ネットワーク (LAN) で実行するように構成することもできます。 LAN で UUCP を実行する方法については, uucp_manual_setup(7) を参照してください。

5.2.2    構成の準備

UUCP の構成では,次の定義を行います。

必要な情報のタイプは,設定あるいは使用する接続のタイプによって決まります。 この後の項に UUCP の構成に必要な情報を記録することのできるワークシートがあります。

5.2.2.1    接続のための情報

図 5-3 は UUCP 設定ワークシートを示します。 本書をオンラインで参照している場合は,プリント機能を使用してワークシートをプリントできます。 この後の項で,ワークシートに記録するのに必要な情報を説明します。

図 5-3:  UUCP 設定ワークシート

接続のタイプ

構成する接続のタイプです。 次に示すいずれか 1 つまたはすべての接続を構成できます。

モデム接続に関して,次の情報を指定します。

モデムのタイプ

使用するモデムのタイプです。 サポートされているデバイスは,/usr/lib/uucp/Devices ファイルにリストされています。 詳細については, uucp_manual_setup(7) を参照してください。

ボー・レート

モデムが動作する速度です。 たとえば,1200,2400,9600 など。

デバイス名

/dev ディレクトリにリストされている,モデムに使用する tty デバイス名です。 ターミナル・デバイスについては, port(7) を参照してください。

/etc/inittab のエントリ ID

/etc/inittab ファイルの uugetty プロセス・エントリのプロセス ID です。 uugetty 処理によって,速度,端末フラグ,および端末を管理する回線規約が設定されます。 詳細については, uugetty(8) を参照してください。

注意

uugetty コマンドは,RS-232 ラインに対してだけ実行し,プリンタ・ラインやコンソール・ラインには実行しないでください。

直接リンク接続に関して,次の情報を指定します。

リモート・システム名

直接リンクのタイプです。 特定のリモート・システムに接続する場合は,そのリモート・システム名を入力します。 これによって,接続がそのシステムだけに制限されます。

直接ハードワイヤ接続ができるシステムに接続する場合は,「直接」をチェックします。

ボー・レート

直接リンクが動作する速度です。 たとえば,1200,2400,9600など。

デバイス名

/dev ディレクトリにリストされている,直接リンクに使用する tty デバイス名です。 ターミナル・デバイスについては, port(7) を参照してください。

/etc/inittab のエントリ ID

/etc/inittab ファイルにリストされている uugetty プロセス・エントリのプロセス ID。 uugetty 処理によって,速度,ターミナル・フラグ,および端末を管理する回線規約が設定されます。 詳細については, uugetty(8) を参照してください。

注意

uugetty コマンドは,RS-232 ラインの構成のみに使用します。 プリンタ・ラインやコンソール・ラインには使用しません。

TCP/IP 接続に関して,次の情報を指定します。

発信接続

TCP/IP 上で発信呼び出しを受け付けるように UUCP を構成する場合は,Yes をチェックします。 UUCP が TCP/IP 上で発信呼び出しを受け付けるようにすると,TCP/IP のエントリが /usr/lib/uucp/Devices ファイルに追加されます。

それ以外の場合は,No をチェックします。

着信接続

TCP/IP 上の着信呼び出しを受け付けるように UUCP を構成する場合は,Yes をチェックします。 UUCP が TCP/IP 上で着信呼び出しを受け付けるようにすると,/etc/inetd.conf ファイルが変更されます。 加えて,TCP/IP 上の UUCP 呼び出しが受け付けられるように,inetd デーモンを停止して再起動させる必要があります。

それ以外の場合は,No をチェックします。

5.2.2.2    発信システムの情報

図 5-4 は UUCP 発信システム・ワークシートを示しています。 オンラインで本書を参照している場合は,プリント機能を使用して,ワークシートをプリントできます。 以降の各項目では,ワークシートに記録する際に必要な情報について説明します。

図 5-4:  UUCP 発信システム・ワークシート

リモート・システム名

接続するリモート・システム名です。

接続のタイプ

接続のタイプです。 モデム,直接リンク,または TCP/IP のいずれかをチェックします。 5.2.2.1 項の情報を使用して,接続タイプを構成してください。

TCP/IP 会話型プロトコル

TCP/IP 接続では,次のいずれかの TCP/IP 会話型プロトコルを選択します。

呼び出し時間

システムがリモート・ホストに接続できる時間です。 次の時間を選択できます。

ボー・レート

/usr/lib/uucp/Devices ファイルで構成したデバイスに対応するボー・レートです。 またはデバイスが任意の速度で使用できる場合は,any を指定します。

電話番号

モデム接続でのリモート・システムの電話番号です。 完全な電話番号,つまりダイアル接頭辞を含む電話番号を入力します。

ダイアル接頭辞は,/usr/lib/uucp/Dialcodes ファイルに定義されています。 /usr/lib/uucp/Dialcodes ファイルには,/usr/lib/uucp/Systems ファイルの電話エントリを完全な形にするダイヤル・コードの短縮形と部分的な電話番号とが含まれています。 /usr/lib/uucp/Dialcodes ファイルのエントリには,アクセス・コード,市外局番,交換番号などを取り込むことができる部分的な電話番号に付けられる英字の接頭辞が含まれています。

ダイアル接頭辞が分かっている場合は,それをワークシートに書き込んでください。 何も定義しない場合は,そのことと,ダイアル接頭辞に続ける一連の番号を書き込んでください。

ログイン ID

リモート・システムでのシステムのログイン名です。 これは,リモート・システムの /etc/passwd ファイルの内容と一致する必要があります。 リモート・システムで使用しているシステムに割り当てられているログイン名およびパスワードについては,リモート・システムのシステム管理者に尋ねてください。 リモート・システムの管理者は,このシステムのログイン名およびパスワードをリモート・システムの/etc/passwd ファイルに記述しておく必要があります。

注意

リモート・システムでのログイン ID のパスワードが UUCP の構成に必要ですが,システム・セキュリティを保護するために,このワークシートにはパスワードを書き込まないでください。

モデム/直接リンク用 expect-send 文字列

リモート・システムにログインする直前に使用する expect-send 文字列です。 次のうちいずれか 1 つを選択できます。

モデムは通常,一連のキャリッジ・リターンを expect-send 文字列として使用します。

expect-send 文字列の詳細については, Systems(4) を参照してください。

5.2.2.3    着信システムの情報

図 5-5 は UUCP 着信システム・ワークシートを示しています。 本書をオンラインで参照している場合には,プリント機能を使用してワークシートをプリントできます。 以降の各項目では,ワークシートに記録する際に必要な情報について説明します。

図 5-5:  UUCP 着信システム・ワークシート

リモート・システム名

着信 UUCP 接続を設定するリモート・システム名です。

ローカル・システム名

使用しているシステム名です。 省略時の設定は,インストレーション時にシステムに割り当てた名前です。

ログイン ID

リモート・システムのログイン ID です。 ログイン ID は,使用しているシステムの /etc/passwd ファイルに自動的に追加されます。

慣例として,着信接続を設定しているリモート・システムに割り当てるログイン ID は,システム名に接頭辞として大文字のUを追加したものです。 たとえば,着信接続に machine1 を指定する場合は,慣例として,ログイン ID は Umachine1 です。 しかし,ログイン ID は自由に選択できます。

また,このログイン ID のコメントを /etc/passwd ファイルへ追加するためのオプションがあります。

代替ログイン ID

着信システムごとに 2 つ以上のログインIDを割り当てるオプションがあります。 複数のログインをリモート・システムに割り当てることによって,リモート・システムのユーザのアクセス制御をよりよく維持できます。 複数のログインを使用すると,リモート・システムの特権ユーザに,システムのアクセス権を非特権ユーザよりも多く付与できます。 複数のログインにより,複数の許可セットを割り当てることができます。

この情報は,着信システムとしてシステムに接続するリモート・システムの管理者に提供する必要があります。

REQUEST オプション

ローカル・システムでキュー登録されたリモート・システムが行う作業をリモート・システムが要求するよう設定する場合は,Yes をチェックします。 それ以外の場合は,No をチェックします。

Yes を選択した場合,リモート・システム・ユーザは,ファイル転送およびローカル・システムでのコマンドを簡単に実行できます。 セキュリティ上問題がある場合は,このアクセスを制限して,リモート・システムによって開始されたファイル転送およびコマンド実行に対する制御をローカル・システムに残します。

SENDFILES オプション

リモート・コンピュータがローカル・システムへのファイル転送やローカル・システムでのコマンドの実行を終了した後に,キュー登録された作業をローカル・システムから呼び出してリモート・システムへ送信したい場合は,Yes をチェックします。

サイトでのセキュリティ確保のために,ローカル・システムに対するリモート・システムからのアクセスを制限する必要があることもあります。 その場合には Call をチェックして,ローカル・システムからリモート・システムへのアクセス時のみ,キューに登録された作業を送信するようにします。

READ/WRITE 追加ロケーション

READ および WRITE オプションでパス名を指定しない場合には,uucp は,/usr/spool/uucppublic ディレクトリに対してのみファイルの転送を許可します。 しかし,これらのオプションにパス名を指定する場合は,すべてのソースとデスティネーションにそのパス名を追加しなければなりません。 いずれかのオプションでパス名を指定する場合,uucico デーモンが公用ディレクトリにファイルを置くことを認めるには,公用ディレクトリも明示的に指定する必要があります。

NOREAD/NOWRITE 追加ロケーション

これらのオプションによって,リモート・システムがデータを転送できないローカル・システムのディレクトリおよびファイルを明示的に指定できます。 これらは,オプション READ および WRITE の例外です。

コマンド

リモート・システムからローカル・システムで実行できるコマンドのリストです。 コマンド・セットをリストすると,そのリストが,/usr/lib/uucp/Permissions ファイルの MACHINE エントリにリストされるシステムの新しい省略時のコマンドになります。 省略時の設定は,rmail コマンドだけです。

VALIDATE オプション

呼び出しリモート・システムに特定の ID およびパスワードを使用させる場合は, Yes をチェックします。 それ以外の場合は,No をチェックします。

このオプションを使用する場合,他の ID のリモート・システムは着信できません。 ただし,複数のシステムで同じ ID を使用することはできます。 ログイン ID およびパスワードが保護されている場合に限り,VALIDATE オプションは意味があります。

CALLBACK オプション

リモート・システムがローカル・システムにファイルを転送できるようにする前に,ローカル・システム側からリモート・システムへの通信を行いたい場合は,Yes をチェックします。 それ以外の場合は,No をチェックします。

両方のシステムがそれぞれ Permissions ファイルで CALLBACK オプションを使用すると,お互いに通信できなくなります。

モデムの電話番号

モデム接続の場合は,ローカル・システムに接続したモデムの電話番号と速度。 この情報は,着信システムとしてシステムに接続する各リモート・システムの管理者に知らせてください。

5.3    UUCP の構成

必要な UUCP の準備が完了したら,uucpsetup スクリプトを使用して UUCP を構成します。 uucpsetup スクリプトを呼び出すには,次のコマンドを入力します。

# /usr/sbin/uucpsetup

特に指定しなければ,uucpsetup スクリプトは,接続,着信システム,および発信システムを構成するために必要な情報を入力するように促します。 表 5-1 に示すオプションのいずれかを使用すると,特定の構成要素のみを構成することができます。

表 5-1:  uucpsetup コマンドのオプション

コマンド 使用目的
uucpsetup 接続,着信システム,および発信システムを構成する場合
uucpsetup -i 着信システムだけを構成する場合
uucpsetup -o 発信システムだけを構成する場合
uucpsetup -p Poll ファイルを構成する場合

次の項では,接続,着信システム,発信システム,および Poll ファイルを構成する方法について説明します。

5.3.1    接続の構成

uucpsetup を呼び出した後に,5.2.2.1 項 で収集した情報を使用して UUCP 接続を構成します。 次のガイドラインでは,いくつかのスクリプトの質問に答える方法について説明します。

5.3.2    発信システムの構成

uucpsetup を呼び出した後に,5.2.2.2 項で収集した情報を使用して,発信システムのUUCPを構成します。 これによって,UUCP を使用して他のリモート・システムに接続できます。

完全な UUCP 設定を行う場合は,接続の構成が終了した時に,uucpsetup スクリプトが発信システムについての情報の入力を促します。 次のガイドラインでは,いくつかのスクリプトの質問に答える方法について説明します。

発信 TCP システムを定義する場合は,/etc/uucp/Systems ファイルを編集して,リモート・システムのエントリを追加します。 リモート・システム名は,完全な修飾名である必要があります。

発信システムの構成後には,/usr/lib/uucp/Poll ファイルを構成する必要があります。 詳細は,5.3.4 項を参照してください。

5.3.3    着信システムの構成

uucpsetup を呼び出し後に,5.2.2.3 項 で収集した情報を使用して,着信システムの UUCP を構成します。 これによって,指定のリモート・システムは,UUCP を使用して,あなたのシステムに接続できます。

完全な UUCP 設定を行う場合は,発信システムの構成が終了した後に,uucpsetup スクリプトが着信システムについての情報の入力を促します。

初めて着信システムを追加する場合,Incoming Systems Configuration メニューは,追加するシステム名の入力を促します。 着信システムを追加すると,このメニューは次の各項目を表示します。

次のガイドラインでは,いくつかのスクリプトの質問に答える方法について説明します。

着信 UUCP システムを定義する場合,システムが NIS を使用しているときは,/etc/passwd ファイルを編集して,最後の行としてワイルドカード (+:) を追加します (未追加の場合のみ)。

5.3.4    Poll ファイルの構成

発信システムの構成後には,/usr/lib/uucp/Poll ファイルを構成し,ローカル・システムがリモート・システムをポーリングする間隔を設定する必要があります。 Poll ファイルを構成するには,uucpsetup スクリプトを -p オプション付きで起動し,次の手順を実行します。

  1. Poll File Configuration メニューから,1 (Poll ファイルの構成) を入力します。

  2. 発信システムとして /usr/lib/uucp/Systems ファイルに構成されているリモート・システム名を入力します。

  3. 時間で表した間隔の並びを入力します。 たとえば,システムが 4 時間ごとにポールする場合は,0 4 8 12 16 20 と入力します。

    [Return] キーを押して Poll ファイルを更新します。

  4. Poll ファイルに別のシステムを追加する場合は,y を入力します。 それ以外の場合は,[Return] キーを押して uucpsetup を終了します。

Poll ファイルについての詳細は, Poll(4) を参照してください。

5.3.5    uucico デーモンの構成

uucico デーモンは,UUCP コマンド,データ,および実行ファイルをリモート・システムに転送します。 ローカル・システムおよびリモート・システムはともに uucico デーモンを実行し,これら 2 つのデーモンは相互に通信して,転送要求を処理します。

通常,uucico デーモンは,着信接続のときに UUCP ユーザのログイン・シェルとして設定されるか,発信接続のときにさまざまな UUCP コマンドによって自動的に呼び出されるため,特に構成する必要はありません。 ただし,uucico デーモンが特定の UUCP 転送のときに使用するフロー制御のタイプについては,指定する必要があります。 たとえば,モデムを経由してターミナル・サーバへの接続を確立し,telnet を使用して UUCP アカウントに接続する場合には,シリアル・ポート接続を経由して UUCP 転送を実行するユーザとは異なるタイプのフロー制御が必要になります。

uucico デーモンが使用するフロー制御のタイプを指定するには,UUCP 接続を使用するシステムのアカウントに対して,FLWCTL 環境変数を設定します。 FLWCTL に使用できる値は,HW (ハードウェア),SW (ソフトウェア),HSW (ハードウェアおよびソフトウェア),および NONE です。 ローカル・システムとリモート・システムで,同じタイプのフロー制御を使用しなければなりません。 リモート・サイトが 異なるプラットフォームで UUCP を実行している場合には,Tru64 UNIX システム上で FLWCTL に NONE を設定します。

たとえば,telnet のセッションで UUCP 接続を確立するには,次のように,フロー制御を NONE に設定します。

$ export FLWCTL=NONE
$ /usr/lib/uucp/uutry remote_site

他のサイトからダイアル・インできるように構成されているシステムでは,次の手順を使用して,FLWCTL 変数を自動的に設定するカスタマイズ・スクリプトを作成することができます。

  1. 次のコマンドが含まれるファイルを作成します。 オプションで, uu_start という名前を付けることもできます。

    #! /bin/ksh
    export FLWCTL=NONE
    exec /usr/lib/uucp/uucico $*
    

  2. ファイルに設定された許可を変更して,実行可能にします。

    # chmod +x /usr/local/bin/uu_start
     
     
    

  3. UUCP アカウントのログイン・シェルを, /usr/lib/uucp/uucico から,新しく作成した実行可能ファイルに変更します。

    # chsh uucp
    Old shell: /usr/lib/uucp/uucico
    New shell: /usr/local/bin/uu_start
    

5.4    UUCP の管理

この節では,次に挙げる UUCP 関連のタスクの実施方法を説明します。

5.4.1    ファイル転送キューのモニタ

ファイル転送キューをモニタすると,リモート・システムに転送するためにローカル・システムのキューに登録されているジョブなどを含めて,いくつかのタイプのネットワーク動作の状態を調べることができます。 一般ユーザおよびシステム管理者は,このファイル転送キューをモニタできます。

5.4.1.1    手動によるキュー状態の取得

キュー状態を手動で取得するには,uustat -q コマンドを使用します。

このコマンドによって,すべてのシステムのキューに登録されたジョブがリストされます。 このリストには,実行待ちのジョブのほか,現在実行中のジョブも含まれます。 システムの状態ファイルが存在する場合は,その日付,時刻,および状態の各情報が報告されます。

また,uustat コマンドによって次の処理も実行できます。

uustat のオプションについての詳細は, uustat(1) を参照してください。

次の例に,現在キューにあるすべてのジョブを示します。 システム host4 には 1 つのコマンド・ファイル,システム host6 には 3 つのコマンド・ファイル,およびシステム host8 には 2 つのコマンド・ファイルがあります。 システム host6 のコマンド・ファイルは,2 日間キューに登録されています。

# uustat -q
host4 1C Sat May 9 11:12:30 1992 SUCCESSFUL
host6 3C(2) Sat May 9 11:02:35 1992 CAN'T ACCESS DEVICE
host8 2C Sat May 9 10:54:02 1992 NO DEVICES AVAILABLE

5.4.1.2    キュー状態の自動取得

uucp ファイル転送キューについての状態情報を自動的に取得できます。 この機能を使用できるようにするには,/usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルを編集して,次の行の先頭にあるコメント文字 (#) を削除してください。

# 48 8,12,16 * * * /usr/lib/uucp/uudemon.admin > /dev/null
 

この例の各要素の意味は,次のとおりです。

48 分を表します。
8,12,16 24 時間表記に基づいて時間を表します。
* * * 3 つのアスタリスクは日,月,および曜日を表すプレースホルダを表します。

cron デーモンは,毎日,8 時,12 時,および 16 時から 48 分経った時間 (つまり,午後 8 時 48 分,午後 12 時 48 分,午後 4 時 48 分) にシェル・スクリプト uudemon.admin を実行します。 uudemon.admin スクリプトは,キュー状態の情報を含む uucp ログイン ID にメールを送信します。

注意

これらの時間は省略時の値です。 /usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルの行を編集して,サイトの必要性に応じた時間に変更できます。

uudemon.admin スクリプトは,次のコマンドを入力して手動で実行することも可能です。

# /usr/lib/uucp/uudemon.admin

5.4.1.3    キュー状態の確認のガイドライン

キュー状態を確かめる場合は,/usr/spool/uucp/system_name ディレクトリのキューに登録されたファイル転送とコマンド実行要求の数と経過日数を調べます。 キューに登録されたジョブが実際に実行されずにしばらくキューに残ってしまう場合があります。 確かめる必要のある状態の情報は,次のとおりです。

必要に応じて,キューのファイルを手動または自動で削除してください。 削除するファイルについての詳細は, 5.4.2 項 を参照してください。

5.4.2    スプール・ディレクトリの整理

uucp によって接続された各システムには,次のスプール・ディレクトリがあります。

インストレーションのサイズと,リモート・システムのユーザによってローカルの /usr/spool/uucppublic ディレクトリに送信されたファイルの数に左右されますが,公用ディレクトリは非常に大きくなることがあります。 同様に,要求が何らかの理由でリモート・システムに転送されない場合でも,スプール・ディレクトリが非常に大きくなることがあります。 したがって,UUCP 管理には,スプール・ディレクトリを整理して, ディスク・リソースを大事に使用できるようにする役目があります。

5.4.2.1    手動によるディレクトリの整理

スプール・ディレクトリを手動で整理するには,ルートとしてログインし,uucleanup コマンドでファイルを削除します。

uucleanup プログラムによって,次のタスクが実行されます。

uucleanup コマンドのオプションについての詳細は, uucleanup(8) を参照してください。

次の例では,ローカル・システムで,システム host2 の UUCP スプール・ディレクトリおよび公用ディレクトリに入っている古いファイルをすべて削除します。

# uucleanup -shost2

5.4.2.2    ディレクトリの自動整理

UUCP がインストールされるときには,自動整理は使用可能になっていませんが,次の手順を実行すれば使用可能にできます。

  1. root としてログインします。

  2. /usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルを編集して,次の行の先頭のコメント文字 (#) を削除します。

    # 45 23 * * * ulimit 5000; /usr/lib/uucp/uudemon.cleanu > /dev/null
     
    

    この例の各要素の意味は,次のとおりです。

    45 分を表します。
    23 24 時間表記に基づいて時間を表します。
    * * * 3 つのアスタリスクは日,月,および曜日を表すプレースホルダを表します。

    cron デーモンは,毎日 23 時から 45 分後 (つまり午後 11 時 45 分) にシェル・スクリプト uudemon.cleanu を起動します。 このシェル・スクリプトにより,uucleanup プログラムが次にスタートします。 この時間は省略時の値です。 /usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルの行を編集して,サイトの必要性に応じた時間に変更できます。

ローカル・システムで発生する uucicouuxqt のトランザクション数に左右されますが,毎日,毎週,またはそれより長い間隔で cron デーモンがシェル・スクリプト uudemon.cleanu を実行するように指示できます。

uudemon.cleanu スクリプトは,uucleanup プログラムの処理を取り入れて,次の追加タスクを実行します。

オペレーティング・システムは,UUCP に,1 つのログ・ファイルあたり指定された量の記憶領域を割り当てます。 ブロック数は,省略時の ulimit 値によって決まります。 ローカル・システムの必要量に対して ulimit 値がかなり低めに設定されているために,uudemon.cleanu スクリプトを実行すると失敗する場合は,省略時の ulimit の値を増加してください。

コマンドのオプションについての詳細は, uudemon(8) を参照してください。

5.4.2.3    ファイルの削除のガイドライン

キューからファイルを削除する場合は,次のファイルのガイドラインに従ってください。

5.4.3    ログ・ファイルの表示

uucp プログラムによって,ローカル・システムが通信するリモート・システムごとにログ・ファイルが作成されます。 ネットワークのユーティリティ機能を使用するたびに,uucp は,トランザクションについての状態情報を対応するログ・ファイルに格納します。 ログ・ファイル名は,次のフォームのいずれかです。

/usr/spool/uucp/.Log/daemon_name/system_name

/usr/spool/uucp/.Log/command_name/system_name

この例の各要素の意味は,次のとおりです。

daemon_name uucico (uucp および uuto コマンドによって呼び出される) または uuxqt (uux コマンドによって呼び出される) を表します。
command_name uucp または uux を表します。
system_name ローカル・システムが通信するシステムの名前を表します。

個々のログ・ファイルを表示するには,uulog コマンドを使用します。

uulog コマンドを使用して,ユーザまたはシステムごとに uucp および uux 要求の要約を表示できます。 uulog コマンドとそのオプションについての詳細は, uulog(1) を参照してください。

ログ・ファイルをひとつひとつ表示する代わりに,uudemon.cleanu スクリプトを実行してこれらのログ・ファイルを 1 つの主要ログ・ファイルに自動的に追加して,そのログ・ファイルだけを見ることができます。

uudemon.cleanu スクリプトは,1 つのシステムのログ・ファイル uucicouuxqtuux,および uucp をマージして,/usr/spool/uucp/.Old という名前のディレクトリに格納します。 省略時の設定では,uudemon.cleanu スクリプトは,最高 2 日間ログ・ファイルを保存しておきます。

uudemon.cleanu スクリプトの次の行の -o2 オプションを変更して,省略時の設定を変更できます。

uucleanup -D7 -C7 -X2 -o2 -W1

記憶領域がある特定のシステムで問題となる場合は,個々のログ・ファイルにファイルを保管しておく日数を減らしてください。 uudemon.cleanu スクリプトの設定についての詳細は,5.4.2.2 項 を参照してください。

次のコマンドにより,システム host2 の uucico 要求に対するログ・ファイルが表示されます。

# uulog -s host2

次のコマンドによって,システム host1 の uuxqt 要求に対するログ・ファイルが表示されます。

# uulog -x host1

次のコマンドは,システム host6 のファイル転送ログの最後の 40 行を表示し,tail -f コマンドを実行します。 コマンドを終了するには,[Ctrl/C] を押してください。

# uulog -f host6 -40

5.4.4    sulog ファイルおよび cron/log ファイルの整理

次の 2 つのシステム・ログ・ファイルは uucp プログラムの影響を受けます。

両方のファイルとも,一定期間を超えると非常に大きくなる場合があります。 これらのファイルは定期的にパージして,適正なサイズに保つようにしてください。 これらのファイルについての詳細は,『システム管理ガイド』を参照してください。

5.4.5    リモート実行数の制限

/usr/lib/uucp ディレクトリの Maxuuxqts ファイルは,ローカル・システムで同時に実行する uuxqt プロセスの数を制限します。 通常,リモート・システムのユーザがローカル・システムを頻繁に集中して使用しない限り,Maxuuxqts ファイルを構成したり維持したりする必要はありません。

ローカル・システムの uuxqt プロセス数を変更するには,Maxuuxqts ファイルを編集して,インストレーションの必要性に合せて ASCII 数字を変更してください。 省略時の値は 2 です。 通常,この値が大きくなると,ローカル・システムの潜在負荷も大きくなります。

5.4.6    スプール・ディレクトリでの作業のスケジューリング

ユーザが uucp コマンドを実行してファイルのコピーやリモート・コマンドの実行を行う場合は,これらの作業要求を含むファイルが,転送のためにローカルの /usr/spool/uucp/system_name ディレクトリにキュー登録されます。 UUCP の uusched デーモンによって,これらのファイル転送がスケジューリングされます。

5.4.6.1    手動による uusched の起動

uusched コマンドを実行すれば,uusched デーモンを手動で起動して,ジョブをスケジューリングできます。 利用できるオプションのリストについては, uusched(8) を参照してください。

5.4.6.2    uusched の自動起動

uusched デーモンは手動で起動できますが,/usr/lib/uucp ディレクトリに格納されているシェル・スクリプト uudemon.hour を実行して,指定した間隔でデーモンを自動的に起動させるのが望ましい方法です。 一方,このシェル・スクリプトは,/usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルの指示に基づいて,cron デーモンによって定期的に起動されます。

/usr/lib/uucp/Maxuuscheds ファイルによって,uucico プログラムがいつでも同時に通信できるリモート・システム数が制限されます。 このファイルは,uusched デーモンと /usr/spool/locks ディレクトリのロック・ファイルとともに使用して,現在ポールされているシステムの数を調べます。

リモート・システムのユーザがローカル・システムを頻繁に集中して使用しない限り,Maxuuscheds ファイルを構成したり維持したりする必要はありません。 このファイルは,システム・リソースと負荷水準を管理するのに便利です。

Maxuuscheds ファイルには,インストレーションの要求に合わせて変更できる数字 (省略時の値は 2) が保存されています。 通常,数値が大きくなると,ローカル・システムの潜在負荷も大きくなります。

uusched コマンドとそのオプションについての詳細は, uusched(8) を参照してください。

次のコマンドは,uusched デーモンをバックグラウンド・プロセスとして手動で起動します。

# /usr/lib/uucp/uusched &

5.4.7    ファイル転送プログラムの呼び出し (uudemon.hour)

シェル・スクリプト uudemon.hour は,Poll ファイル,シェル・スクリプト uudemon.poll,および /usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルとともに使用して,リモート・システムへの呼び出しを開始します。 特に,uudemon.hour は,指定された時間単位の間隔で,システム間のファイル転送に関係するプログラムを呼び出します。

cron デーモンに,指定した時間単位の間隔でシェル・スクリプト uudemon.hour を実行するように指示できます。 スクリプトを実行する頻度は,ローカル・コンピュータからのファイル転送処理量によって決まります。

UUCP がインストールされるときは,シェル・スクリプト uudemon.hour は使用可能にはなっていませんが,次の手順を実行して使用可能にできます。

  1. root としてログインします。

  2. /usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルを編集して,次の行の先頭のコメント文字 (#) を削除します。

    # 25,55 * * * * /usr/lib/uucp/uudemon.hour > /dev/null
     
    

    この例の各要素の意味は,次のとおりです。

    25,55 正時からの経過分数を表します。
    * * * * 4 つのアスタリスクは正時の間隔,日,月,曜日を表すプレースホルダを表します。

    cron デーモンは,毎正時から 25 分過ぎと 55 分過ぎ (つまり午前 8 時 25 分,午前 8 時 55 分,午前 9 時 25 分,午前 9 時 55 分など) に uudemon.hour スクリプトを実行します。

    これらの時間は省略時の値です。 /usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルの行を編集して,サイトの必要性に合せた時間に変更できます。

ローカル・システムのユーザが多数のファイル転送を開始する場合は,cron デーモンが uudemon.hour スクリプトを 1 時間に数回も実行するように指定する必要があります。 ローカル・システムからのファイル転送数が少ない場合は,起動時間をたとえば 4 時間に 1 回にすることもできます。

5.4.8    リモート・システムのポーリング (uudemon.poll)

uudemon.poll シェル・スクリプトは,Poll ファイル,uudemon.hour シェル・スクリプト,および /usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルとともに使用して,リモート・システムの呼び出しを開始します。 uudemon.poll シェル・スクリプトは,/usr/lib/uucp/Poll にリストされたシステムをポールします。 さらに,この Poll ファイルにリストされたシステムのコマンド・ファイルも作成します。

uudemon.poll スクリプトを実行する時間は,uudemon.hour スクリプトを実行する時間によって決まります。 通常,毎時のスクリプトを実行する前に実行するポーリング・シェル・スクリプトをスケジューリングします。 このスケジューリングによって,cron デーモンが uudemon.hour スクリプトを実行する前に,uudemon.poll スクリプトは必要なコマンド・ファイルを作成できます。

uucp がインストールされるときは,uudemon.poll は使用可能になっていませんが,次の手順を実行して使用可能にできます。

  1. root としてログインします。

  2. /usr/spool/cron/crontabs/uucp ファイルを編集して,次の行の先頭のコメント文字 (#) を削除します。

    # 20,50 * * * * /usr/lib/uucp/uudemon.poll > /dev/null
     
    

    この例の各要素の意味は,次のとおりです。

    20,50 正時からの経過分数を表します。
    * * * * 4 つのアスタリスクは正時の間隔,日,月,曜日を表すプレースホルダを表します。

    cron デーモンは,正時から 20 分過ぎと 50 分過ぎ (たとえば午前 8 時 20 分,午前 8 時 50 分,午前 9 時 20 分,午前 9 時 50 分など) に uudemon.poll スクリプトを実行します。

    これらの時間は省略時の値です。 cron デーモンが uudemon.poll スクリプトを実行する時間は,uudemon.hour に設定した時間に合わせて変更できます。 cron デーモンに,uudemon.hour スクリプトを実行する約 5〜10 分前に uudemon.poll スクリプトを実行するように設定します。