1    CDE の紹介

CDE (Common Desktop Environment) は,オペレーティング・システムとの対話を簡単に行うための手段を提供します。CDE は,X Consortium の X Window System,Open Software Foundation の Motif ユーザ・インタフェースなどの業界標準をベースとして共同開発されたグラフィカル・ユーザ・インタフェースです。CDE インタフェースの使用により,マウスまたはキーボードによるアプリケーションのナビゲート,およびアプリケーションとの対話が実行できます。

CDE は,カスタマイズ可能なビジュアルなデスクトップ環境を提供します。このデスクトップを使用すると,アプリケーションへのアクセスやアプリケーションの管理が簡単になります。CDE のスクリーン上には,フロント・パネル領域が表示されます (図 1-1 を参照してください)。フロント・パネルは,スクリーン領域の一番下にグラフィック表示され,そこからアプリケーション,プリンタ,オンライン・ヘルプなどの,使用頻度の高いオブジェクトにアクセスできます。また,フロント・パネルは,別々のワークスペースで作業を行うためのオプションも提供します。ワークスペースとは,フロント・パネルを含むスクリーン自体のことです。フロント・パネル上のコントロール・ボタンを使用することにより,ワークスペースを切り替えることができます。

図 1-1:  CDE 環境

この章では,次の項目についての概要を説明します。

1.1    ログインおよびアプリケーションへのアクセス

ログイン・マネージャによって表示されるログイン画面 (図 1-2) にユーザ・ログイン名およびパスワードを入力することにより,デスクトップにアクセスすることができます。さらに,開始したいセッションのタイプやセッション中に使用する言語を選択するためのオプション・メニューも提供されます。

図 1-2:  ログイン画面

ユーザには,次のセッションを開始するための次のようなオプションが提供されています。

この節では,次の事項について説明します。

システムのデフォルトの言語はシステム管理者が設定します。ログイン画面でユーザが選択することにより,システムに組み込まれている他の言語にアクセスすることもできます。オプション・メニューから言語を選択すると,ユーザ・セッションの間だけ LANG 環境変数が設定されます。セッションを終了すると,デフォルトの言語がリストアされます。国際化機能の使用方法については,第 9 章を参照してください。

1.1.1    フロント・パネル

CDE のフロント・パネルはデスクトップの一番下に表示されます。フロント・パネルには,アプリケーションを起動するためのコントロール (アイコンで表示),および日常の作業に使用するサブパネルがあります。また,ワークスペース・スイッチも提供され,これを使用して異なる作業領域間を移動できます。フロント・パネルから使用できるデフォルトのアプリケーション,およびサブパネルとワークスペースの使用方法についての詳細は,第 3 章に説明しています。

図 1-3 に,省略時の CDE フロント・パネルを示します。

図 1-3:  CDE フロント・パネル

フロント・パネルやサブパネルでのコントロールの追加と削除,ワークスペースの追加と削除,およびワークスペースの名前変更によって,フロント・パネルをカスタマイズできます。デスクトップの使用について熟知しているユーザーであれば,フロント・パネルをカスタマイズするための構成ファイルを作成することもできます。フロント・パネルのカスタマイズについての説明は,『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』を参照してください。また,構成ファイルの作成についての説明は,『Common Desktop Environment: 上級ユーザ及びシステム管理者ガイド』を参照してください。

1.1.2    ワークスペース

ワークスペースとは,スクリーンの表示領域です。CDE では,フロント・パネルにある「ワークスペース 1」〜「ワークスペース 4」のついたワークスペース・スイッチを使用して,異なるワークスペース間を移動できます。あるワークスペースから別のワークスペースに切り替えることにより,複数の作業領域を使用することができます。たとえば,1 つのワークスペースをメール管理用に,別のワークスペースをプロジェクト管理用にといった具合に使用できます。フロント・パネルは,各ワークスペースで使用できます。

図 1-4:  ワークスペース・スイッチ

省略時の設定では,ワークスペースが 4 つありますが,新しいワークスペースの追加,元のワークスペースの削除,またはワークスペースの名前の変更が可能です。詳細については,第 3 章を参照してください。

1.2    デスクトップおよびアプリケーションの管理

デスクトップには,ファイル・マネージャ,アプリケーション・マネージャ,およびスタイル・マネージャがあります。各マネージャにはそれぞれ,デスクトップ環境に固有のコントロールが提供されています。これらのコントロールについて,次に説明します。

これらのアプリケーションおよびツールの管理に関する補足情報は,第 4 章を参照してください。デスクトップおよびシステム管理アプリケーションを使用する方法については,第 5 章を参照してください。

1.3    詳しい情報の入手

ドキュメントは,オンライン (CD-ROM) およびハードコピーで提供されています。CDE についての情報は,オンライン・ヘルプ,およびリファレンス・ページからも入手できます。

1.3.1    マニュアルとガイド

ドキュメント・セットは,一般ユーザプログラマ,および ToolTalk プログラマを対象にしています。表 1-1表 1-3 で,対象読者別にこれらのマニュアルをグループ分けし,それぞれのドキュメント・セットについて説明しています。なお,以下の表でタイトルが日本語のドキュメントについては,日本語版が提供されています。

表 1-1 に,一般ユーザを対象としたドキュメントを示します。

表 1-1:  ユーザ・ドキュメント

マニュアル 説明
Common Desktop Environment: 上級ユーザ及びシステム管理者ガイド CDE 環境における高度なカスタマイズの実行方法について説明します。
Common Desktop Environment: Dtksh ユーザーズ・ガイド Korn シェル (kshell) スクリプトで Motif アプリケーションを作成する場合に必要な情報を提供します。
Common Desktop Environment: Product Glossary CDE で使用される用語が包括的にリストされており,すべてのデスクトップ・ユーザのための情報源および参照情報として役立ちます。
Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド CDE の基本的な機能を説明し,デスクトップの使用方法およびファイル・マネージャやアプリケーション・マネージャなどのデスクトップ・アプリケーションの使用方法について説明します。

表 1-2 に,おもにプログラマを対象としたドキュメントを示します。

表 1-2:  プログラミング・ドキュメント

マニュアル 説明
Common Desktop Environment: アプリケーション・ビルダ・ユーザーズ・ガイド CDE アプリケーションを開発するための対話ツールである,アプリケーション・ビルダについて説明します。
Common Desktop Environment: プログラマーズ・ガイド(ヘルプ・システム編) アプリケーション・ソフトウェアのオンライン・ヘルプを開発する方法,オンライン・ヘルプをアプリケーションに組み込む方法について説明します。
Common Desktop Environment: プログラマーズ・ガイド(国際化対応編) アプリケーションをローカライズして,一定のユーザ・インタフェースで,さまざまな言語,さまざまな文化に基づいた表記法をサポートできるように,アプリケーションを国際化する方法について説明します。
Common Desktop Environment: プログラマーズ・ガイド アプリケーション開発のための情報として,CDE を構成する要素とその使用方法について説明します。
Common Desktop Environment: プログラマ概要 新しい CDE アプリケーションの構築,アプリケーションのデスクトップへの組み込み,アプリケーション設計上の問題について概要を説明します。
Common Desktop Environment: スタイル・ガイド アプリケーション設計スタイルのガイドラインを提供し,CDE レベルの認証における必要要件を説明します。

表 1-3 に,ToolTalk プログラマを対象としたドキュメントを示します。

表 1-3:  ToolTalk ドキュメント

マニュアル 説明
Common Desktop Environment: ToolTalk メッセージの概要 ToolTalk のコンポーネント,コマンド,およびエラー・メッセージについて説明します。
Common Desktop Environment: ToolTalk Reference Manual ToolTalk サービスにおけるアプリケーション・インタフェース (API) のコンポーネント,コマンド,およびエラー・メッセージについて説明します。
Common Desktop Environment: ToolTalk User's Guide ToolTalk サービスおよび ToolTalk メッセージを送受信するためのアプリケーションの変更方法について説明します。

1.3.2    ネットスケープ・ナビゲータによるオンライン・ドキュメントの表示

オンライン・ドキュメント・セットは,HTML (Hypertext Markup Language) 形式のバージョンを利用することができます。

ネットスケープ・ナビゲータ・アプリケーションを使用して,HTML 形式のドキュメントを表示することができます。オペレーティング・システムの本バージョンでは,Netscape Communicator 4.5 が一緒に出荷されますが,ネットスケープ・ナビゲータはこれに含まれています。詳細については,『インストレーション・ガイド』を参照してください。

ドキュメントをオンラインで参照するには,次の手順でネットスケープ・ナビゲータを使用します。

  1. root としてログインするか,または su コマンドを使用して root 特権を取得します。

  2. CD-ROM をシステムの CD-ROM ドライブに挿入します。

  3. システムに接続されている CD-ROM デバイスが 1 台だけの場合は,次のコマンドを使用して,/usr/share/doclib/online の下に,CD-ROM をマウントします。

    # mount -r -t cdfs -o rrip /dev/disk/cdrom0c /usr/share/doclib/online

    CD-ROM デバイスが複数ある場合は,次のようなコマンドを入力して,システムに接続されている CD-ROM デバイスを判断したのち,使用する CD-ROM デバイスを決定します。

    #ls /dev/disk/cdrom*c

    /dev/disk/cdrom0c

    /dev/disk/cdrom1c

    注意

    日本語ドキュメントと英文ドキュメントはそれぞれ別の CD-ROM で提供されています。

  4. 次のいずれかの方法で,CDE デスクトップからネットスケープ・ナビゲータを起動します。

    1. CDE フロント・パネルで「テキスト・エディタ」アイコン の上の矢印をクリックして,「個人アプリケーション」サブパネルを表示します。

    2. ネットスケープ・アイコン をクリックします。

    3. 端末エミュレータ・ウィンドウから,次のコマンドを入力し,バックグラウンドでネットスケープ・ナビゲータを実行します。

      /usr/bin/X11/netscape &

      オプションについての情報は, netscape(1) リファレンス・ページを参照してください。

  5. 「ナビゲータ」ウィンドウで /usr/doc/netscape/Digital_UNIX.html ファイルをオープンして,ホーム・ページをロードします。

    注意

    このホームページからアクセスできるのは,英文ドキュメントだけです。日本語ドキュメント CD-ROM に含まれている日本語 CDE ドキュメントを参照する場合は,/DOCS/HTML/LIBRARY.HTM にアクセスしてください (『リリース・ノート』を参照)。

  6. Tru64 UNIX Documentation を選択します。

  7. 「ブックマーク」メニューから「ブックマークを追加」メニュー項目を選択して,このページを将来の使用のために保管します。

1.3.3    オンライン・ヘルプ

オンライン・ヘルプでは,CDE インタフェースおよびアプリケーションに関する詳しい説明が提供されます。

1.3.3.1    ヘルプ・マネージャの使用方法

ヘルプ・マネージャは,特殊なヘルプ・ボリュームであり,フロント・パネルから利用できます。これは,システムに登録されているすべてのオンライン・ヘルプをリストします。登録されているオンライン・ヘルプを参照するには,ヘルプ・マネージャ・アイコンをクリックします。ヘルプ・マネージャのオンライン・ヘルプ・ボリューム内をナビゲートするには,任意の下線つきトピックをクリックし,ヘルプ・メニューとボタンを使用します。

図 1-8:  オンライン・ヘルプ

ヘルプ・マネージャ・アイコンの上には矢印がついていて,サブパネルが使用できることを示しています。デスクトップおよびフロント・パネルに関する特定のヘルプ・トピックを見るには,その矢印をクリックします。サブパネルには,フロント・パネルに関するアイテム・ヘルプも提供されています。 アイテム・ヘルプは,対話形式になっています。このオプションをクリックすると,ポインタが疑問符 (?) に変わり,ポインタをフロント・パネルまたはサブパネルの項目に合わせて離すと,その項目に関するヘルプを表示することができます。

図 1-9:  ヘルプ・マネージャのサブパネル

1.3.3.2    アプリケーションのヘルプ・メニューの使用

ヘルプ・ボリュームの中からヘルプにアクセスするには,「ヘルプ」メニューをクリックします。オンライン・ヘルプ・ボリュームは,いくつかの節に分割されています。表 1-4 に,オンライン・ヘルプ・ボリュームの内容について説明します。

表 1-4:  オンライン・ヘルプ・ボリュームの内容

メニュー項目 説明
概要 アプリケーションの目的,起動方法,終了方法について説明します。
使い方 アプリケーションの一般的な使用方法について,例を示しながら手順に従って説明します。
リファレンス アプリケーション内の各ウィンドウ,ダイアログ・ボックス,メニューについて説明するとともに,トラブルシューティング情報も示します。
アイテムヘルプ 疑問符に変わったポインタを,ウィンドウやダイアログ・ボックスの任意の箇所でクリックすることにより,特定のフィールドまたはウィンドウ領域に関するヘルプ情報を取得することができます。
ヘルプの使い方 オンライン・ヘルプの編成方法と使用方法について説明します。
アプリケーションについて アプリケーションのバージョンや著作権に関する情報を表示します。

1.3.4    リファレンス・ページ

リファレンス・ページは,マンページ (manpage) とも呼ばれ,システム上の各コマンドやアプリケーションのコマンド形式や機能の説明を提供するためのオンライン・ヘルプです。リファレンス・ページのサブセットがシステムにインストールされている場合には,次のいずれかのツールを使用してリファレンス・ページにアクセスできます。

1.3.4.1    コマンドおよびアプリケーションのリファレンス・ページの検索

コマンドまたはアプリケーションに関連するリファレンス・ページがわからない場合には,-k フラグを指定した man コマンド,または apropos コマンドのいずれかと一緒にキーワードを使用することにより,目的のリファレンス・ページを検索することができます。

たとえば,GIF グラフィック形式に関連するリファレンス・ページを検索するには,次のように入力します。


man -k gif 
gif2tiff (1) - create a .SM TIFF file from a GIF87 format image file
giftoppm (1) - convert a GIF file into a portable pixmap
ppmtogif (1) - convert a portable pixmap into a GIF file

出力として,名称の行のタイトルまたは説明のいずれかに,gif または GIF という文字列のあるリファレンス・ページが表示されます。検索では,大文字/小文字は区別されません。apropos コマンドと man -k コマンドは同等の処理をし,出力も同じになります。

CDE セッション・マネージャを起動するコマンド行に関するリファレンス・ページを検索するには,次のように入力します。


apropos session

出力を見ると,次の行が含まれているのがわかります。


dtsession (1)- the CDE Session Manager

したがって, dtsession(1) のリファレンス・ページにアクセスすることができます。

1.3.4.2    man コマンドの使用方法

端末エミュレータ・ウィンドウ上でリファレンス・ページを参照するには,man コマンドに続けて,参照したいコマンドやアプリケーションの名前を入力します。たとえば,CDE セッション・マネージャのリファレンス・ページを参照するには,次のように入力します。

$ man dtsession

詳細については, man(1) リファレンス・ページを参照してください。キーワードを使用してコマンド名およびアプリケーション名を調べる方法については,1.3.4.1 項を参照してください。

1.3.4.3    マニュアル・ページ・ビューアの使用方法

マニュアル・ページ・ビューアでは,リファレンス・ページの表示や印刷ができるグラフィカル・ユーザ・インタフェース (GUI) を提供します。

マニュアル・ページ・ビューアを使用してリファレンス・ページを参照する方法は,次のとおりです。

  1. アプリケーション・マネージャ をクリックします。

  2. デスクトップアプリケーション・アイコン をダブル・クリックします。

  3. 次のいずれかの方法で,リファレンス・ページを表示することができます。

キーワードを使用してコマンドおよびアプリケーションの名前を調べる方法についての説明は,1.3.4.1 項を参照してください。