10    外部終端を使用するシステムの構成

この章では,旧式の外部終端を使用している共用 SCSI ストレージにアクセスする必要がある場合に TruCluster Server クラスタの各システムを準備する方法について説明します。

この章で説明するのは,デバイスのインストール方法の詳細ではなく,TruCluster Server 製品としてのハードウェアのセットアップ方法だけです。したがって,個々のハードウェアの具体的なインストール方法を説明したマニュアルが別途必要です。通常,このようなマニュアルはそれぞれのハードウェアに付属しています。

クラスタ内のすべてのシステムは,クラスタ・インターコネクト (Memory Channel またはプライベート LAN) 経由で接続する必要があります。すべてのメンバを共用バスに接続する必要はありませんが,クラスタ単位のルート (/),/usr,および /var の各ファイル・システム,すべてのメンバ・ブート・ディスク,およびクォーラム・ディスク (使用する場合) は,共用バス上に配置することをお勧めします。本書で説明する構成はすべて,共用バスの使用を前提にしています。

ここから先に進む前に,4.1 節4.2 節,および 4.3 節の最初の 2 つの段落を復習してください。

10.1    PCI SCSI アダプタを使用する TruCluster Server ハードウェアのインストール

以降の各項では,KZPSA-BB または KZPBA ホスト・バス・アダプタをインストールし,旧方式の外部終端を使用して,TruCluster Server クラスタに構成する方法について説明します。

ここでの説明は,ホスト・バス・アダプタ,クラスタ・インターコネクト,ネットワーク・アダプタをインストールした後,第 11 章の説明に従って,使用するストレージ・サブシステムを構成し,ケーブルを接続することを前提としています。システム・ハードウェア,つまり KZPSA-BB または KZPBA ホスト・バス・アダプタ,Memory Channel ハブ,またはイーサネットのハブやスイッチを含むクラスタ・インターコネクト,ケーブル,およびネットワーク・アダプタのインストールが完了していれば,ホスト・バス・アダプタをストレージ・サブシステムに接続できます。

表 10-1 に示す手順に従って,TruCluster Server ハードウェアのインストレーション・プロシージャを開始してください。クラスタ・インターコネクト・ハードウェア,冗長ネットワーク・アダプタ (使用できる場合),および KZPSA-BB または KZPBA SCSI アダプタをすべて同時にインストールすると,作業時間を短縮できます。

特定の SCSI ホスト・バス・アダプタに関する参照先のマニュアルの指示や,参照先の表の手順に従い,参照先の表での手順が完了したら,適切な表に戻って作業を続行してください。

ホスト・バス・アダプタ,クラスタ・インターコネクト・ハードウェア,ネットワーク・アダプタのインストールが終了したら,第 11 章を参照して,クラスタ・メンバ・システムを共用ストレージに接続してください。

警告

静電気により,モジュールや電子部品が損傷することがあります。モジュールを取り扱う際は,接地された静電気防止用リスト・ストラップを使用し,接地された床面で作業することをお勧めします。

表 10-1:  PCI SCSI アダプタを使用する場合の TruCluster Server ハードウェアの構成

手順 作業 参照先
1 次のクラスタ・インターコネクト・ハードウェアをインストールします。 --
  Memory Channel モジュール,ケーブル,およびハブ (ハブが必要な場合) をインストールします。 第 5 章 [脚注 63]
  プライベート LAN のイーサネットのアダプタ,ハブまたはスイッチをインストールします。 第 6 章
2 イーサネットまたは FDDI のネットワーク・アダプタをインストールします。 該当するイーサネットまたは FDDI アダプタのユーザ・ガイド,および該当するシステムのユーザ・ガイド
  ATM を使用する場合は,ATM アダプタをインストールします。 ATM アダプタに付属するマニュアルを参照
3 各メンバ・システムの共用 SCSI バスごとに,KZPSA-BB PCI SCSI アダプタまたは KZPBA UltraSCSI アダプタをインストールします。 10.1.1 項および表 10-2

10.1.1    旧式の外部終端を使用する KZPSA-BB または KZPBA のインストール

表 10-2 の手順を実行して,旧方式の外部終端と Y ケーブルを使う TruCluster Server クラスタ用に,KZPSA-BB または KZPBA をセットアップします。

表 10-2:  外部終端を使用する KZPSA-BB または KZPBA のインストール

手順 作業 参照先
1 KZPSA-BB の内部終端抵抗,Z1,Z2,Z3,Z4,および Z5 を取り外します。 10.1.3.4 項図 10-1,および『KZPSA PCI-to-SCSI Storage Adapter Installation and User's Guide
  KZPBA の 8 個の内部終端抵抗 SIP,RM1〜RM8 を取り外します。 4.3.3.3 項図 4-1,および『KZPBA-CB PCI-to-Ultra SCSI Differential Host Adapter User's Guide
2 メンバ・システムの電源を切断します。共用バスとして使用される論理バスに対応する PCI スロットに,KZPSA-BB PCI-to-SCSI バス・アダプタまたは KZPBA UltraSCSI ホスト・アダプタをインストールします。アダプタの数がシステムの制限内で,インストール場所が適切であることを確認します。 KZPSA PCI-to-SCSI Storage Adapter Installation and User's Guide』,および『KZPBA-CB PCI-to-Ultra SCSI Differential Host Adapter User's Guide
3 各 KZPSA-BB または KZPBA ホスト・アダプタに BN21W-0B Y ケーブルを接続します。 --
4 共用バスの端に配置するメンバ・システムの BN21W-0B Y ケーブルの一方の脚に H879-AA ターミネータをインストールします。 --
5 システムの電源を投入し,システムの SRM コンソール・ファームウェアおよび KZPSA-BB ホスト・バス・アダプタのファームウェアをアップデートします。アップデートには,最新の「Alpha Systems Firmware Update」CD-ROM を使用します。 システムのファームウェア・リリース・ノート (4.2 節),および10.1.3.5 項

注意

SRM コンソール・ファームウェアには,ISP1020/1040 ベースの PCI オプション・ファームウェアが含まれており,このオプション・ファームウェアに KZPBA が含まれています。SRM コンソール・ファームウェアをアップデートすると,KZPBA ファームウェアのアップデートが可能になります。電源をリセットすると,SRM コンソールが,KZPBA アダプタ・ファームウェアをコンソールのシステム・フラッシュ ROM から NVRAM にロードし,KZPBA PCI-to-Ultra SCSI アダプタを含むすべての Qlogic ISP1020/1040 ベースの PCI オプションが設定されます。

6 show config および show device コンソール・コマンドを使用して,インストール済みのデバイス,および AlphaServer システム上の KZPSA-BB または KZPBA についての情報を表示します。表示内容から「 KZPSA」または「 pk*」を探し,どのデバイスが KZPSA-BB かを調べます。show config の出力から「 QLogic ISP10x0」を,show device の出力から「pk」または「isp」を探し,どのデバイスが KZPBA かを調べます。 10.1.2 項,および例 10-1例 10-4
7 show pk* または show isp* コンソール・コマンドを使用して KZPSA-BB または KZPBA のコンソール環境変数の状態を調べてから,set コンソール・コマンドを使って KZPSA-BB のバス速度を Fast に,終端電源をオンに設定し,KZPSA または KZPBA の SCSI バス ID を指定します。 10.1.3.1 項10.1.3.3 項,および例 10-6例 10-9

注意

使用する SCSI ID が,同じ共用バス上のほかのすべての SCSI ID と異なっていることを確認してください。他の SCSI ID を覚えていない,あるいは記録していない場合は,それらの SCSI ID を調べる必要があります。

1 つの SCSI バス上に同じ SCSI ID を持つ複数の SCSI アダプタがあると,デバイスにアクセスできないなどの問題が発生します。

8 他のメンバ・システム上にあって,同じ共用バスにインストールされる残りのすべての KZPSA-BB または KZPBA について,手順 1〜7 を繰り返します。 --
9 次のストレージに必要な残りの SCSI バス・ハードウェア (DWZZA (B),RAID アレイ 3000,ストレージ・シェルフ,ケーブル,およびターミネータ) をインストールします。 11.4 節
  BA350 ストレージ・シェルフ 11.3.1 項11.4.1.1 項,および 11.4.3.1 項
  非 UltraSCSI BA356 ストレージ・シェルフ 11.3.2.1 項11.4.1.2 項,および 11.4.3.2 項
  UltraSCSI BA356 ストレージ・シェルフ 11.3.2.2 項11.4.1.3 項,および11.4.3.3 項
  RAID アレイ 3000 11.4.4 項
10 共用バスにテープ・デバイスのハードウェアとケーブルを次のようにインストールします。 第 9 章
  TL891 ミニライブラリ 9.1 節
  TL890 と TL891 ミニライブラリの組み合わせ 9.2 節
  TL894 9.3 節
  TL895 9.4 節
  TL893/TL896 9.5 節
  TL881/TL891 DLT ミニライブラリ 9.6 節
  Compaq ESL9326D エンタープライズ・ライブラリ 9.7 節

注意

テープ・デバイスを共用バスにインストールする場合は,個々のテープ・デバイスが共用バスに対してどのように作用するかを理解しておくことが必要です。

TL893,TL894,TL895,TL896,および ESL9326D には長い内部 SCSI ケーブルがあるため,トライリンク/ターミネータの組み合わせによる外部終端を設定することができません。

これらのテープ・ライブラリは,共用バスの端に接続する必要があります。

テープ・デバイスは,別個の共用バスにまとめて配置するようにお勧めします。

10.1.2    show コンソール・コマンドによる KZPSA-BB および KZPBA アダプタの表示

show config および show device コンソール・コマンドを使用してシステム構成を表示します。これらのコマンドの出力から,KZPSA-BB または KZPBA デバイスとその SCSI バス ID を識別できます。

例 10-1 に,AlphaServer 4100 システムの show config コンソール・コマンドの出力例を示します。

例 10-1:  AlphaServer 4100 の構成表示

P00>>> show config
                      Compaq Computer Corporation
                           AlphaServer 4x00
 
Console V5.1-3  OpenVMS PALcode V1.19-14, Tru64 UNIX PALcode V1.21-22
 
Module                          Type     Rev    Name  
System Motherboard              0        0000   mthrbrd0
Memory   64 MB SYNC             0        0000   mem0     
Memory   64 MB SYNC             0        0000   mem1     
Memory   64 MB SYNC             0        0000   mem2     
Memory   64 MB SYNC             0        0000   mem3     
CPU (4MB Cache)                 3        0000   cpu0     
CPU (4MB Cache)                 3        0000   cpu1     
Bridge (IOD0/IOD1)              600      0021   iod0/iod1
PCI Motherboard                 8        0000   saddle0  
 
Bus 0  iod0 (PCI0)
Slot   Option Name              Type     Rev    Name
1      PCEB                     4828086  0005   pceb0    
2      S3 Trio64/Trio32         88115333 0000   vga0     
3      DECchip 21040-AA         21011    0024   tulip0   
4      DEC KZPSA                81011    0000   pks1     
5      DEC PCI MC               181011   000B   mc0      
 
Bus 1  pceb0 (EISA Bridge connected to iod0, slot 1)
Slot   Option Name              Type     Rev    Name
 
Bus 0  iod1 (PCI1)
Slot   Option Name              Type     Rev    Name
1      NCR 53C810               11000    0002   ncr0     
2      NCR 53C810               11000    0002   ncr1     
3      QLogic ISP1020           10201077 0005   isp0     
4      QLogic ISP1020           10201077 0005   isp1     
5      DEC KZPSA                81011    0000   pks0     
 

例 10-2 に,AlphaServer 4100 システムの show device コンソール・コマンドの出力例を示します。

例 10-2:  AlphaServer 4100 のデバイス表示

P00>>> show device
polling ncr0 (NCR 53C810) slot 1, bus0 PCI, hose 1 SCSI Bus ID 7
dka500.5.0.1.1    Dka500             RRD45    1645
polling ncr1 (NCR 53C810) slot 2, bus0 PCI, hose 1 SCSI Bus ID 7
dkb0.0.0.2.1      DKb0               RZ29B    0007
dkb100.1.0.2.1    DKb100             RZ29B    0007
polling isp0 (QLogic ISP1020) slot 3, bus 0 PCI, hose 1  SCSI Bus ID 7
dkc0.0.0.3.1      DKc0               HSZ80    V83Z
dkc1.0.0.3.1      DKc1               HSZ80    V83Z
dkc2.0.0.3.1      DKc2               HSZ80    V83Z
dkc3.0.0.3.1      DKc3               HSZ80    V83Z
dkc4.4.0.3.1      DKc4               HSZ80    V83Z
dkc5.0.0.3.1      DKc5               HSZ80    V83Z
dkc6.0.0.3.1      DKc6               HSZ80    V83Z
dkc100.1.0.3.1    DKc100             RZ28M    0568
dkc200.2.0.3.1    DKc200             RZ28M    0568
dkc300.3.0.3.1    DKc300             RZ28     442D
polling isp1 (QLogic ISP1020) slot 4, bus 0 PCI, hose 1  SCSI Bus ID 7
dkd0.0.0.4.1      DKd0               HSZ80    V83Z
dkd1.0.0.4.1      DKd1               HSZ80    V83Z
dkd2.0.0.4.1      DKd2               HSZ80    V83Z
dkd100.1.0.4.1    DKd100             RZ26N    0568
dkd200.1.0.4.1    DKd200             RZ26     392A
dkd300.1.0.4.1    DKd300             RZ26N    0568
polling kzpsa0 (DEC KZPSA) slot 5, bus 0 PCI, hose 1  TPwr 1 Fast 1 Bus ID 7
kzpsa0.7.0.5.1    dke TPwr 1 Fast 1 Bus ID 7 L01 A11
dke100.1.0.5.1    DKe100             RZ28     442D
dke200.2.0.5.1    DKe200             RZ26     392A
dke300.3.0.5.1    DKe300            RZ26L     442D
polling floppy0 (FLOPPY) pceb IBUS hose 0
dva0.0.0.1000.0   DVA0               RX23
polling kzpsa1 (DEC KZPSA) slot 4, bus 0 PCI, hose 0  TPwr 1 Fast 1 Bus ID 7
kzpsa1.7.0.4.1    dkf TPwr 1 Fast 1 Bus ID 7 E01 A11
dkf100.1.0.5.1    DKf100             RZ26     392A
dkf200.2.0.5.1    DKf200             RZ28     442D
dkf300.3.0.5.1    DKf300             RZ26     392A
polling tulip0    (DECchip 21040-AA) slot 3, bus 0 PCI, hose 0
ewa0.0.0.3.0      00-00-F8-21-0B-56  Twisted-Pair
 

例 10-3 に,AlphaServer 8200 システムの show config コンソール・コマンドの出力例を示します。

例 10-3:  AlphaServer 8200 の構成表示

>>> show config
        Name            Type    Rev    Mnemonic
TLSB
 4++    KN7CC-AB        8014    0000    kn7cc-ab0
 5+     MS7CC           5000    0000    ms7cc0
 8+     KFTIA           2020    0000    kftia0
 
 C0  Internal PCI connected to kftia0   pci0
 0+  QLogic ISP1020 10201077    0001    isp0
 1+  QLogic ISP1020 10201077    0001    isp1
 2+  DECchip 21040-AA  21011    0023  tulip0
 4+  QLogic ISP1020 10201077    0001    isp2
 5+  QLogic ISP1020 10201077    0001    isp3
 6+  DECchip 21040-AA  21011    0023  tulip1
 
 C1  PCI connected to kftia0
 0+  KZPAA             11000    0001  kzpaa0
 1+  QLogic ISP1020 10201077    0005    isp4
 2+  KZPSA             81011    0000  kzpsa0
 3+  KZPSA             81011    0000  kzpsa1
 4+  KZPSA             81011    0000  kzpsa2
 7+  DEC PCI MC       181011    000B     mc0
 

例 10-4 に,AlphaServer 8200 システムの show device コンソール・コマンドの出力例を示します。

例 10-4:  AlphaServer 8200 のデバイス表示

>>> show device
polling for units on isp0, slot0, bus0, hose0...
polling for units on isp1, slot1, bus0, hose0...
polling for units on isp2, slot4, bus0, hose0...
polling for units on isp3, slot5, bus0, hose0...
polling for units kzpaa0, slot0, bus0, hose1...
pke0.7.0.0.1      kzpaa4        SCSI Bus ID 7
dke0.0.0.0.1      DKE0                RZ28    442D
dke200.2.0.0.1    DKE200              RZ28    442D
dke400.4.0.0.1    DKE400              RRD43   0064
 
polling for units isp4, slot1, bus0, hose1...
dkf0.0.0.1.1      DKF0               HSZ80    V83Z
dkf1.0.0.1.1      DKF1               HSZ80    V83Z
dkf2.0.0.1.1      DKF2               HSZ80    V83Z
dkf3.0.0.1.1      DKF3               HSZ80    V83Z
dkf4.0.0.1.1      DKF4               HSZ80    V83Z
dkf5.0.0.1.1      DKF5               HSZ80    V83Z
dkf6.0.0.1.1      DKF6               HSZ80    V83Z
dkf100.1.0.1.1    DKF100             RZ28M    0568
dkf200.2.0.1.1    DKF200             RZ28M    0568
dkf300.3.0.1.1    DKF300             RZ28     442D
 
polling for units on kzpsa0, slot 2, bus 0, hose1...
kzpsa0.4.0.2.1    dkg     TPwr 1 Fast 1 Bus ID 7   L01 A11
dkg0.0.0.2.1      DKG0               HSZ80    V83Z
dkg1.0.0.2.1      DKG1               HSZ80    V83Z
dkg2.0.0.2.1      DKG2               HSZ80    V83Z
dkg100.1.0.2.1    DKG100             RZ26N    0568
dkg200.2.0.2.1    DKG200             RZ28     392A
dkg300.3.0.2.1    DKG300             RZ26N    0568
 
polling for units on kzpsa1, slot 3, bus 0, hose1...
kzpsa1.4.0.3.1    dkh     TPwr 1 Fast 1 Bus ID 7   L01 A11
dkh100.1.0.3.1    DKH100             RZ28     442D
dkh200.2.0.3.1    DKH200             RZ26     392A
dkh300.3.0.3.1    DKH300            RZ26L     442D
 
polling for units on kzpsa2, slot 4, bus 0, hose1...
kzpsa2.4.0.4.1    dki     TPwr 1 Fast 1 Bus ID 7   L01 A10
dki100.1.0.3.1    DKI100             RZ26     392A
dki200.2.0.3.1    DKI200             RZ28     442C
dki300.3.0.3.1    DKI300             RZ26     392A
 

10.1.3    コンソール環境変数の表示および KZPSA-BB および KZPBA の SCSI ID の設定

ここでは,show コンソール・コマンドを使って pk* および isp* コンソール環境変数を表示し,各 AlphaServer システムで KZPSA-BB および KZPBA の SCSI ID を設定する方法について説明します。以下の例は,実際のシステムのガイダンスとして利用してください。

SCSI オプションとして使用されるコンソール環境変数は,システムによってさまざまに異なります。また,環境変数のクラス ( pk*isp* など) には,内部オプションと外部オプションの両方が表示される場合があります。

以下の例を,show config および show dev の例に示されたデバイス群と比較して,共用バス上の KZPSA-BB デバイスまたは KZPBA デバイスを識別してください。

10.1.3.1    KZPSA-BB および KZPBA の pk* と isp* コンソール環境変数の表示

使用するコンソール環境変数を調べるには,show pk* および show isp* コンソール・コマンドを実行します。

例 10-5 に,AlphaServer 4100 の pk コンソール環境変数を示します。

例 10-5:  AlphaServer 4100 システムの pk* コンソール環境変数の表示

P00>>>show pk*
pka0_disconnect         1
pka0_fast               1
pka0_host_id            7
 
pkb0_disconnect         1
pkb0_fast               1
pkb0_host_id            7
 
 
pkc0_host_id            7
pkc0_soft_term          diff
 
 
pkd0_host_id            7
pkd0_soft_term          on
 
 
pke0_fast               1
pke0_host_id            7
pke0_termpwr            1
 
pkf0_fast               1
pkf0_host_id            7
pkf0_termpwr            1
 

例 10-5show pk* コマンドの出力を,例 10-1show config コマンドおよび例 10-2show dev コマンドの出力と比較してください。

例 10-1 は KZPSA-BB pks0 (PCI1 スロット 5) と pks1 (PCI0 スロット 4) を示しています。

例 10-2 は以下を示しています。

例 10-5 には,2 つの pk*0_soft_term 環境変数が示されています。 pkc0_soft_term は「on」, pkd0_soft_term は「diff」です。

pk*0_soft_term 環境変数は,16 ビット Wide SCSI バスを実装し,動的終端を使用する QLogic ISP1020 SCSI コントローラを使用しているシステムに適用されます。

QLogic ISP1020 モジュールには 2 つのターミネータがあり,1 つは下位 8 ビット用,もう 1 つは上位 8 ビット用です。 pk*0_soft_term は次の 5 つの値をとります。

KZPBA は Qlogic ISP1040 モジュールであり,その終端設定は内部終端抵抗 SIP の RM1〜RM8 があるかどうかによって決まります。この場合, pkc0_soft_termpkd0_soft_term 環境変数は無意味であり,無視してかまいません。

例 10-6 に,show isp コンソール・コマンドで表示した,AlphaServer 8x00 上の KZPBA に適用されるコンソール環境変数を示します。

例 10-6:  AlphaServer 8x00 システムの KZPBA に適用されるコンソール変数の表示

P00>>> show isp*
isp0_host_id      7
isp0_soft_term    on
 
isp1_host_id      7
isp1_soft_term    on
 
isp2_host_id      7
isp2_soft_term    on
 
isp3_host_id      7
isp3_soft_term    on
 
isp5_host_id      7
isp5_soft_term    diff
 

例 10-3 および例 10-4 には,5 つの isp デバイス, isp0isp1isp2isp3isp4 が示されています。例 10-6 では,show isp* コンソール・コマンドにより, isp0isp1isp2isp3isp5 が表示されています。

コンソール環境変数を割り当てるコンソール・コードは,KZPAA を含むすべての I/O アダプタをカウントします。KZPAA は isp3 より後のデバイスなので,論理上 isp4 がナンバリングに組み込まれます。これに対し,show isp コンソール・コマンドは,KZPAA が QLogic 1020/1040 クラスのモジュールではないので, isp4 をスキップします。

例 10-3 および例 10-4 は, isp0isp1isp2,および isp3 が内部 KFTIA PCI バス上のデバイスで,共用バス上にはないことを示しています。ここでは isp5 だけが KZPBA で,共用バス上にあります。その他の 3 つの共用バスでは,KZPSA-BB を使用しています。

例 10-7 に,show pk コンソール・コマンドで表示した,AlphaServer 8x00 上の KZPSA-BB に適用されるコンソール環境変数を示します。

例 10-7:  AlphaServer 8x00 システムの KZPSA-BB に適用されるコンソール変数の表示

P00>>> show pk*
pka0_fast         1
pka0_host_id      7
pka0_termpwr      on
 
pkb0_fast         1
pkb0_host_id      7
pkb0_termpwr      on
 
pkc0_fast         1
pkc0_host_id      7
pkc0_termpwr      on
 

10.1.3.2    KZPBA の SCSI ID の設定

共用バス上の KZPBA のコンソール環境変数がわかったら,set コンソール・コマンドを使用して SCSI ID を設定します。TruCluster Server クラスタでは,通常,1 つを除くすべての KZPBA UltraSCSI アダプタに SCSI ID を設定することが必要です。フェア・アービトレーションを有効に設定した DS-DWZZH-05 を使用する場合は,すべての KZPBA UltraSCSI アダプタに SCSI ID を設定することが必要です。

注意

1 つの SCSI バス上に同じ SCSI ID を持つ複数の SCSI アダプタがあると,問題が発生します。

DS-DWZZH-05 を使用する場合,KZPBA UltraSCSI アダプタに SCSI ID 7 を割り当てることはできません。SCSI ID 7 は DS-DWZZH-05 で使用するために予約されているからです。

DS-DWZZH-05 のフェア・アービトレーションを有効にする場合は,ホスト・アダプタの SCSI ID とハブ・ポートに割り当てられた SCSI ID が一致する必要があります。SCSI ID の不一致または重複は,ハブがハングする原因になります。

例 10-8 に示すように,set コンソール・コマンドを使って KZPBA の SCSI ID を設定します。この例では,例 10-5 に示されている AlphaServer 4100 上の KZPBA pkd の SCSI ID を設定しています。

例 10-8:  KZPBA SCSI バス ID の設定

P00>>> show pkd0_host_id
7
P00>>> set pkd0_host_id 6
P00>>> show pkd0_host_id
6
 

10.1.3.3    KZPSA-BB の SCSI バス ID,バス速度,および終端電源の設定

KZPSA-BB の SCSI ID が正しくない,またはファームウェア・アップデート・ユーティリティによって 7 にリセットされた場合,あるいは,KZPSA-BB の速度を変更したり,終端電源を有効にする必要がある場合には,set コンソール・コマンドを使用します。

注意

終端電源を発生させるためには,すべての KZPSA-BB ホスト・バス・アダプタを有効にしてください。

次の例のように,set コマンドを使って SCSI バス ID を設定します。

>>> set pkn0_host_id #
 

n には,環境変数を適用する KZPSA-BB を指定します。n の値は,show device および show pk* コンソール・コマンドから取得します。シャープ記号 (#) にはその KZPSA に割り当てる SCSI バス ID を指定します。

次の例のように,set コマンドを使ってバス速度を設定します。

>>> set pkn0_fast #
 

シャープ記号 (#) にはバス速度を指定します。低速は 0,高速は 1 を指定します。

次の例のように,set コマンドを使って SCSI バス終端電源を有効にします。

>>> set pkn0_termpwr on
 

例 10-9 に,現在の SCSI ID,バス速度,および終端電源の状態を調べたのち,pkb0 で表される KZPSA-BB の SCSI ID を 6 に,バス速度を高速に設定する方法を示します。

例 10-9:  KZPSA-BB の SCSI バス ID と速度の設定

P00>>> show pkb*
pkb0_fast 0
pkb0_host_id 7
pkb0_termpwr on
P00>>> set pkb0_host_id 6
P00>>> set pkb0_fast 1
P00>>> show pkb0_host_id
6
P00>>> show pkb0_fast
1
 

10.1.3.4    KZPSA-BB および KZPBA の終端抵抗

KZPSA-BB の内部終端は,図 10-1 に示す終端抵抗 Z1〜Z5 を取り外すと無効になります。

図 10-1:  KZPSA-BB の終端抵抗

KZPBA の内部終端は,図 4-1 に示す終端抵抗 RM1〜RM8 を取り外すと無効になります。

10.1.3.5    KZPSA-BB アダプタ・ファームウェアのアップデート

システムおよびホスト・バス・アダプタのファームウェアが,最新のものになっていることを確認する必要があります。ファームウェアは古くなっていることがあります。「AlphaSystems Firmware Update」CD-ROM から,該当するシステム/SCSI アダプタのリリース・ノートを参照してください。

SRM (System Reference Manual) コンソールまたは KZPSA-BB ファームウェアがカレントでない場合は,「Alpha Systems Firmware Update」CD-ROM から LFU (Loadable Firmware Update) ユーティリティをブートしてください。LFU コマンドの一覧から update エントリを選択します。LFU から,すべてのデバイスまたは選択した任意のデバイスをアップデートできます。

「Systems Firmware Update」CD-ROM からブートすると,ファームウェアのリリース・ノートを読むことができます。ブート処理の完了後,UPD> プロンプトで read_rel_notes と入力します。4.2 節で説明したように,リリース・ノートをコピーして印刷することもできます。

ファームウェアをアップデートするには,LFU ユーティリティを「Alpha Systems Firmware Update」CD-ROM から起動します。

boot コマンドに -flag オプションを使用する必要はありません。「Alpha Systems Firmware Update」CD-ROM を挿入して,ブートしてください。たとえば,dka600 からブートするには,次のように入力します。

P00>>> boot dka600
 

ブート・シーケンスで,ファームウェアのアップデート処理の概要が表示されます。テキストをスクロールするには Return キーを,テキストをスキップするには Ctrl/C キーを押します。

アップデート処理の概要の表示後,省略時のブート・ファイル名が表示されます。ブート・ファイル名が正しければ,Bootfile: プロンプトで Return キーを押します。そうでない場合は,正しいブート・ファイル名を入力します。

ファームウェア・イメージが CD-ROM からコピーされ,次の例に示すような LFU のヘルプ・メッセージが表示されます。

	 *****Loadable Firmware Update Utility*****
 
-------------------------------------------------------------
Function       Description
-------------------------------------------------------------
Display        Displays the system's configuration table.
Exit	       Done exit LFU (reset).
List	       Lists the device, revision, firmware name and
	       update revision
Readme	       Lists important release information.
Update	       Replaces current firmware with loadable data
	       image.
Verify	       Compares loadable and hardware images.
? or Help      Scrolls this function table.
 

list コマンドを実行すると,その device 列にアップデート可能なデバイスが示されます。

update コマンドを使用して,すべてのファームウェアまたは,次の例のように指定したデバイス (KZPSA-BB pkb0) をアップデートすることができます。

UPD> update pkb0
 

ファームウェアをアップデートし,verify コマンドを使ってアップデート結果を確認した後,電源の切断・再投入を行ってシステムをリセットしてください。