E    アップデート・インストレーションによる既存のファイルへの影響

ここでは,アップデート・インストレーション・プロセスが,既存のユーザ・カスタマイズ・ファイルをどのように新しいアップデートされたファイルにマージするかを説明しています。 以下のファイルおよび項目について説明します。

E.1    アップデート・インストレーションの際のファイル保管処理の概要

アップデート・インストレーションではすべてのユーザ作成ファイルおよびアカウントが保管されます。 また,ベース・オペレーティング・システムシステム・ファイルに対して行われたカスタマイズ内容も保管されます。 カスタマイズの内容が失われないように,アップデート・インストレーション・プロセスは,アップデート処理の前にカスタマイズされたファイルのバックアップ・コピーを作成します。 ここでは,アップデート・プロセスがカスタマイズ内容を保管するために使用するファイルについて説明します。

E.2    保護されるシステム・ファイルについて

保護されるシステム・ファイルは,ユーザがカスタマイズできるオペレーティング・システム・ファイルです。 保護される各システム・ファイルは,実際にはシステム上の 3 つのファイルです。 つまり,そのファイル自体,.new.. ファイル,および.proto.. ファイルです。 表 E-1 に示すように,保護されるシステム・ファイルのうち,頻繁にカスタマイズされるシステム・ファイルとしては,/etc/hosts があります。

表 E-1:  保護されるシステム・ファイル /etc/hosts

ファイル名 説明
/etc/hosts

現在の Version 5.1 または Version 5.1A ファイル (カスタマイズ済み) -- 構成されているファイル

/etc/.new..hosts

現在の Version 5.1 または Version 5.1A ファイル (出荷時の状態)

/etc/.proto..hosts

フル・インストレーションまたはアップデート・インストレーション中に /etc/.new..hosts ファイルから作成されたファイル

E.2.1    .new.. ファイル

アップデート・インストレーションでは,システム・ファイルにプレフィックスとして .new.. を付けて,構成されているシステム・ファイルが上書きされないようにします。 アップデート・インストレーションでは,また,構成されているファイルをプレフィックス .new.. の付いたファイルと比較して,構成されているファイルをユーザがカスタマイズしているかどうかを判断します。

注意

.new.. ファイルは,アップデート・インストレーション・プロセスで重要な役割を果たします。 これらのファイルを変更したり削除しないでください。

E.2.2    .proto.. ファイル

プレフィックスとして .proto.. の付いているファイルは,.new.. ファイルのコピーであり,変更することができます。 このファイルは,サイト単位でカスタマイズを行っていて,DMS (Dataless Management Services) を使用している場合に限り変更します。 そうでない場合は,.proto.. ではなく,このファイルの構成済みのバージョンを変更してください。

注意

.proto.. ファイルは,アップデート・インストレーション・プロセスで重要な役割を果たします。 これらのファイルを削除しないでください。

これらのファイルが変更されるのは,DMS を使用している場合だけです。 このとき,データレス領域内の .proto.. ファイルが変更され,サーバのオペレーティング・システム用の .proto.. ファイルは変更されません。 DMS についての詳細は,『Sharing Software on a Local Area Network』 を参照してください。

E.2.3    .PreMRG ファイル

アップデート・インストレーション・プロセスでは,アップデートを行う前に,保護されているすべてのシステム・ファイルのコピーを作成します。 これらのコピーにはすべて,.PreMRG というサフィックスが付いています。 これにより,自動マージ処理が失敗しても,ユーザがカスタマイズしたファイルはすべてリストアできることが保証されます。 表 E-1/etc/hosts ファイルを例として説明します。

E.2.4    .mrg.. ファイル

プレフィックスとして .mrg.. の付いているファイルは,スクリプト・ファイルです。 このスクリプトは,新しいバージョンのオペレーティング・システム・ファイルに追加された新機能を,既存の構成されたファイルにマージします。

E.2.5    構成されたファイル

/etc/hosts ファイルは構成されたファイル,すなわちシステムが実際に使用し読み取るファイルです。 このファイルには,通常のシステム管理操作で変更された内容が書き込まれます。

E.3    保護されるシステム・ファイルのマージ

オペレーティング・システムをアップデートすると,既存のファイルおよびカスタマイズはすべて保存されます。 カスタマイズの保存は,新しいファイルの変更を,既存のカスタム変更へマージする処理が含まれます。

次の両方の条件が真の場合。 マージ・スクリプトが実行されます。

E.3.1    マージの成功

/etc/hosts のファイル例では,マージが正常に終了すると, 表 E-2 に示すファイルがシステムに残されます。 ファイルのマージに成功すると,アップデート・インストレーション・プロセスは, .PreMRG ファイルを削除します。 ファイル /var/adm/smlogs/it.log に, マージ処理のログが記録されます。

表 E-2:  マージの正常終了後にシステムに残されるファイル: /etc/hosts

ファイル名 説明
/etc/#.mrg..hosts

Version 5.1B マージ・スクリプト

/etc/.new..hosts

Version 5.1B 出荷時のファイル

/etc/.proto..hosts

マージ・スクリプトによって Version 5.1B の新機能が追加された, カスタマイズ済みの Version 5.1 または Version 5.1A の /etc/.proto..hosts ファイル。 DMS を使用している場合だけ,このファイルを変更する。

/etc/hosts

マージ・スクリプトによって新機能が追加された, カスタマイズ済みの Version 5.1 または Version 5.1A のファイル

E.3.2    マージの失敗

アップデート・インストレーションで, カスタマイズ済みの Version 5.1 または Version 5.1A のファイルに Version 5.1B の新しいファイルがマージできなかった場合には, .FailMRG ファイルが作成されて,.PreMRG ファイルが残されます。 システムが正しく動作することを確実にするため, アップデート・インストレーションでは, Version 5.1B のファイルを構成済みのファイルにもコピーして, システム上に動作するバージョンのファイルが存在するようにします。

動作している構成済みのバージョンのファイルは, Version 5.1B ファイルのコピーであるため, ユーザによるカスタマイズが含まれていません。 ユーザは,アップデートの終了後に, 手動でカスタマイズをファイルに追加する必要があります。

構成されているファイルのバックアップ (.PreMRG) にあって, Version 5.1 または Version 5.1A の出荷時のファイルのバックアップ (.new..file.PreMRG) に存在しない行は, ユーザによるカスタマイズの部分です。 マージが失敗した場合には,/etc/hosts の例を使用してください。 表 E-3 で示すファイルがシステムにあります。 ファイル /var/adm/smlogs/upd_mergefail_files には,失敗したマージ・ファイルのリストが入っています。 マージが失敗した理由を知りたい場合は,/var/adm/smlogs/it.log および /var/adm/smlogs/update.log ファイルで,マージ処理のログを調べることができます。

表 E-3:  マージの失敗後にシステムに残されるファイル: /etc/hosts

ファイル名 説明
/etc/#.mrg..hosts

Version 5.1B マージ・スクリプト

/etc/.new..hosts

Version 5.1B ファイル (出荷時の状態)

/etc/.new..hosts.PreMRG

Version 5.1 または Version 5.1A ファイルのバックアップ・コピー (出荷時の状態)

/etc/.proto..hosts

Version 5.1B の /etc/.new..hosts のコピー (出荷時の状態)

/etc/.proto..hosts.PreMRG

Version 5.1 または Version 5.1A ファイルのバックアップ・コピー (カスタマイズ内容を含む)

/etc/hosts

Version 5.1B ファイルのコピー (出荷時の状態)

/etc/hosts.PreMRG

Version 5.1 または Version 5.1A ファイルのバックアップ・コピー (カスタマイズ内容を含む)