この章では,フル・インストレーションの後にシステムにサービスを構成し設定するためのシステム管理アプリケーションについて説明します。 項目は次のとおりです。
グラフィカルなシステム・セットアップ・アプリケーションによる,システムの初回の構成およびセットアップについて (7.1 節)
構成後のシステム・セットアップについて (7.2 節)
システムにグラフィック機能がない場合の,システム・セットアップ・アプリケーションのテキスト・ベース・インタフェースによる,システムの初回の構成およびセットアップについて (7.3 節)
その他のシステム管理および監視ツールの概要 (7.4 節)
システム管理および構成に関するドキュメントについて (7.5 節)
前のバージョンのオペレーティング・システムでファイル・システム・タイプとして
AdvFS
が使用されていた場合の
/etc/fdmns
ディレクトリの再構築について (7.6 節)
インストレーション後にリアルタイム・プリエンプティブ処理を使用可能にする方法について (7.7 節)
マルチ・プロセッサ・システム上で自動リブートを使用可能にする方法について (7.8 節)
シングル・システムで自動システム・リブートを使用可能にする方法について (7.9 節)
7.1 グラフィカル・ユーザ・インタフェース: システム・セットアップ・アプリケーション
新しくインストールしたシステムを他のシステムやユーザと通信できるようにするには,ソフトウェア・ラインセンス,ネットワーク・サービス,プリンタ,およびメール配信を構成する必要があります。 最初のシステム構成作業は,「クイック・セットアップ」アプリケーションまたは「カスタム・セットアップ」アプリケーション (以前のリリースでは,このアプリケーションは Checklist と呼ばれていました) から実行します。
注意
クラスタの構成については 『クラスタ管理ガイド』 で説明しています。
新しくインストールしたシステムに
root
ユーザとして初めてログインすると,システムがグラフィック機能を備えている場合,図 7-1
に示す「システム・セットアップ」ウィンドウが表示されます。
図 7-1: Tru64 UNIX の「システム・セットアップ」ウィンドウ
「システム・セットアップ」ウィンドウでは,次の構成ツールを起動することができます。
システムを素早く構成する「クイック・セットアップ」
説明は,7.1.1 項を参照してください。
より高度な構成作業を起動できる「カスタム・セットアップ」
説明は,7.1.2 項を参照してください。
クローン情報は,構成のクローニングについての基本的な情報を提供します。 構成のクローニングにより,すでに構成済みのシステムから 1 つ以上のシステムに構成を複製できます。 構成のクローニング手順については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
ネットワーク接続に非同期転送モード (ATM) アダプタを使用しない場合は,「クイック・セットアップ」アプリケーションを使用して,システムを一般ユーザ向けに簡単にセットアップすることができます。
図 7-2
に示すように,「クイック・セットアップ」では,基本的なシステム構成項目についての簡単な質問に答える必要があります。
「クイック・セットアップ」は作業指向のアプリケーションなので,ユーザは基本的なシステム構成作業を指示に従って順を追って行うことができます。
システム構成の要件が複雑でない場合は,「クイック・セットアップ」を使用すると,ネットワーク上でシステムを簡単に動作させることができます。
「クイック・セットアップ」にはオンライン・ヘルプが用意されているので,必要に応じて参照できます。
追加の項目も構成する必要がある場合には,「カスタム・セットアップ」アプリケーションを後で使用することもできます。
図 7-2: クイック・セットアップ・アプリケーション
図 7-3
に示す「カスタム・セットアップ」アプリケーションは,さらに SysMan 構成アプリケーションを起動できます。
「カスタム・セットアップ」は,追加の構成が必要な場合や,ユーザやグループの追加などのその他のシステム管理作業を行う必要がある場合に使用します。
オペレーティング・システムの以前のリリースでは,「カスタム・セットアップ」アプリケーションは Checklist と呼ばれていました。
図 7-3: カスタム・セットアップ・アプリケーション
「カスタム・セットアップ」アプリケーション上の各アプリケーションは,推奨される実行順序で一覧表示されています。 たとえば,システムをネットワークに接続あるいは追加する場合は,まず最初に「ネットワーク・セットアップ・ウィザード」を実行し,次に「DNS (BIND) の設定」アプリケーション,「NIS の設定」,「NFS の設定」アプリケーションの順に実行し,ネットワークのセットアップを行います。 ネットワーク機能のセットアップを行わない場合,まず最初に行う作業は,「ライセンス管理」アプリケーションで PAK (Product Authorization Key) をロードして登録することです。
リスト上のアプリケーションをオープンして終了すると,アイコンの左側のボックスにチェック・マークが表示されます。 アプリケーションを最後にオープンした日時が,アプリケーション名の下に表示されます。 このタイム・スタンプは,それぞれのアプリケーションが実行されたことを意味するわけではありません。 このタイム・スタンプは,それぞれのアプリケーションがオープンされたことだけを示します。 アプリケーションが薄く表示されている場合は,オープンできません。
アプリケーションの [ヘルプ] ボタンまたは [ヘルプ] メニューをクリックすると,各アプリケーションのオンライン・ヘルプを表示できます。
オンライン・ヘルプには,そのアプリケーションから実行できる作業や,各ウィンドウまたはダイアログ・ボックス内のすべてのフィールド,ボタン,およびメニューについての説明が表示されます。
7.2 初期システム構成後のシステム・セットアップ・アプリケーションの起動
次のいずれかの方法を使用して,最初のシステム構成を行った後にシステム・セットアップ・アプリケーションを起動します。
コマンド行から「Tru64 UNIX: システム・セットアップ」アプリケーションを起動するには,スーパユーザあるいは
root
ユーザとして,次のコマンドを入力します。
# /usr/sbin/checklist
ハードウェアのタイプに応じて,グラフィカル・インタフェースまたはテキスト・ベースインタフェースが表示されます。
共通デスクトップ環境 (CDE) のフロント・パネルから「Tru64 UNIX: システム・セットアップ」アプリケーションを起動するには,次の手順を実行します。
CDE のフロント・パネルで,アプリケーション・マネージャのアイコンをクリックする。 アプリケーション・マネージャのアイコンは,ファイリング・キャビネットの引き出しを開けたような形です。
[システム管理] アプリケーション・グループのアイコンをダブル・クリックする。
[システム・セットアップ・チェック] アプリケーションのアイコンをダブル・クリックする。
7.3 テキスト・ベースのシステム・セットアップ・アプリケーション
新しくインストールしたシステムに
root
ユーザとして初めてログインすると,システムがグラフィック機能を備えていない場合,例 7-1
に示す「System Setup」ウィンドウが表示されます。
例 7-1: テキスト・ベースのシステム・セットアップ・アプリケーション
Tru64 UNIX: System Setup Tru64 UNIX System Setup helps you set up your system. To run Quick Setup, press return, or enter one of the numbered choices and press return. Quick Setup leads you through a set of steps to set up a typical UNIX system. This includes networking, user services, time services, printers, and other basics. Custom Setup examines your system and lists the relevant tasks for configuring your computer. These tasks are listed in the order most frequently performed. You can run Quick Setup to get a basic configuration and then use Custom Setup for any custom configuration settings. Click on Cloning Information to read how to clone an existing system setup onto other systems or save a setup for cloning. 1) Quick Setup 2) Custom Setup 3) Cloning Information 4) Exit Please enter your selection [1]:
このメニューの選択肢についての説明は,7.1 節
を参照してください。
7.4 システムの管理と監視
この節では,システムをインストールして構成した後の監視および管理のための SysMan (System Management) ツールの概要を説明します。
SysMan Menu
SysMan Menu は,一般カテゴリから実際のタスクまでが木の形に連結された階層構造のシステム管理メニューとして表されます。 作業カテゴリの表示は展開/縮小することができ,メインブランチの中のサブブランチやタスクを表示することができます。 タスクを選択すると,作業実行のためのダイアログ・ボックスが表示されます。 アカウント,メール,監視およびチューニング,ネットワーク,プリント,セキュリティ,ハードウェア,ソフトウェア,ファイル・システム,ストレージ,サポートおよびサービス,一般作業などのメイン・ブランチが用意されています。 コマンド行から SysMan Menu を起動する場合は,次のコマンドを入力します。
# /usr/sbin/sysman &
SysMan Station
SysMan Station は,システムを構成する物理的および論理的オブジェクトのプロファイルを表示し,状態を報告します。 SysMan Station は,すべてのシステム管理作業の開始ポイントとなります。 SysMan Station から他の SysMan ツールを起動してシステム管理作業を実行することができます。 また,SysMan Station を使用して,システム,システム・グループ,クラスタ全体,あるいは管理者システム・リソースを監視することができます。 標準の Java 表示上で実行したり (UNIX ワークステーションなど),PC のブラウザ内で実行したり,あるいは PC 上にダウンロードして直接実行することもできます。 コマンド・プロンプトから SysMan Station を起動する場合は,次のコマンドを実行します。
# /usr/sbin/sysman -station &
イベント・マネージャ
イベント・マネージャは,すべてのシステム・コンポーネントからのイベントを単一のイベント・ストリームに組み合わせることにより,イベントおよび状態情報を報告しているすべてのシステム・コンポーネントからの情報を単一ポイントにまとめて表示します。 イベント情報は,リアルタイムで表示することも,ストレージから過去のイベントを検索して表示することも可能です。 EVM の表示機能には,SysMan アプリケーション・スイートに統合されたグラフィカル・イベント・ビューア,さまざまな方法でイベントのフィルタリング/ソート/フォーマットを可能にするコマンド・ライン・ユーティリティ・セットが含まれています。 コマンド・ラインからイベント・マネージャを起動する場合は,次のコマンドを入力します。
# /usr/sbin/sysman event_viewer &
HP Insight Manager
Insight Manager は,さまざまなシステムで構成されるコンピューティング環境を見渡し,ネットワークに接続されたエンティティについての情報を参照するための,Web ベースの管理ユーティリティです。 エンティティとはデバイスであり,コンピュータ・システム,ネットワーク・プリンタ,ルータなどのネットワーク・コンポーネントでもあります。 システムおよびそれらのコンポーネントあるいは周辺機器の構成についての情報を入手し,場合によっては管理作業を行うこともできます。 たとえば,リモート・ブートが可能となるようにシステムを構成しておき,Insight Manager を使用してローカル・システムからリモート・システムをブートすることが可能です。 また,Insight Manager により,資産の管理,資産の保護,負荷の管理,およびイベント管理などの管理作業を行うことも可能です。
専用の HTTP ポートから,あるいは NT サーバ上で実行している HP Insight Manager CIM32 あるいは CIMXE 管理コンソールから,これらの Web 参照機能を使うことも可能です。 HP Manager Agents for Tru64 UNIX には,SNMP データを Web ブラウザで表示可能なフォーマットで表現するための SNMP べースのサブエージェントおよび WBEM 機能が含まれています。 この機能は,Web ページ形式の HTML 2.0 および JavaScript を使用して高品位なデータ表示を提供します。
Tru64 UNIX およびその他のシステム対応の HP Management Agents も,申し込みによって入手可能な HP Management CD に含まれています。 詳細は次の Web サイトを参照してください。
http://www.compaq.com/products/servers/SmartStart/ss_subscription.html
7.5 節
に,システムの管理および構成について記述しているドキュメントを示します。
7.5 システム管理および構成に関するドキュメント
システムの構成や,管理,監視についての詳細情報が必要な場合は,ドキュメント・セット中の以下のマニュアルの,関連部分を参照してください。
『ネットワーク管理ガイド:接続編』および『ネットワーク管理ガイド:サービス編』では,ネットワークの構成,管理,およびトラブルシューティングに関する情報を説明しています。
『システム管理ガイド』では,プリンタの構成,ファイル・システム管理,ユーザ・アカウントの追加,ファイルのバックアップとリストア,システムのシャットダウン,イベント管理,Insight Manager の使用,SysMan の起動などの,システム管理作業全般について説明しています。
TruCluster Server 『クラスタ・インストレーション・ガイド』 では,クラスタ特有のインストレーション作業について説明しています。
TruCluster Server 『クラスタ管理ガイド』 では,クラスタの管理方法について説明しています。
『Software License Management』では,ライセンス PAK のロードと登録について説明しています。
『AdvFS 管理ガイド』では,AdvFS (Advanced File System) の管理について説明しています。
『Logical Storage Manager』では,LSM (Logical Storage Manager) の管理について説明しています。
『システムの構成とチューニング』では,システム性能を最適化するための,カーネルのチューニングについて説明しています。
グラフィカル表示機能があるシステムでドキュメント・セットをオンライン表示するには,ドキュメント CD-ROM を第 8 章の説明どおりにマウントします。
その後,Netscape か Acrobat Reader を使用して,ドキュメントを表示します。
システムにオンライン表示機能がない場合は,ハードコピー・ドキュメントを購入してください。
7.6 /etc/fdmns ディレクトリの再構築
それまで前のバージョンのオペレーティング・システムを使用しており,Advanced File System (AdvFS) を使用していたシステムでは,フル・インストレーションによって,重要な AdvFS 構成データが含まれている
/etc/fdmns
ディレクトリが上書きされてしまいます。
このディレクトリを再構築するためには,システム上の各ディスクに対して,-r
フラグを指定して
advscan
コマンドを実行しなければなりません。
Version 5.0 で新しいデバイス命名規則が導入されているため,単純にバックアップ・コピーからディレクトリをリストアするだけでは十分ではありません。
advscan
ユーティリティの使用方法の詳細については,
『AdvFS 管理ガイド』を参照してください。
7.7 リアルタイム・プリエンプティブ処理を使用可能にする
本オペレーティング・システムのカーネルは,POSIX 1003.1b-1993 (以前の 1003.4 Draft 14) に準拠するリアルタイム・アプリケーションの性能を高めるためのオプションを提供します。 リアルタイム・カーネルによって,オペレーティング・システムは,アプリケーションがタイムリーかつ予測可能な方法でリソースにアクセスできることを保証します。
カーネル・プリエンプティブ処理をサポートするリアルタイム・カーネルは,以前はインストレーション時のオプションでした。 現在では POSIX 1003.1b の機能はカーネルに自動的に組み込まれるため,別のカーネルは必要ありません。 プリエンプティブ処理機能は省略時の設定では無効になっていますが,カーネルの構成および構築時に選択することにより,使用可能にすることができます。
リアルタイム・プリエンプティブ処理機能を使用可能にするには,次の手順に従って,/etc/sysconfigtab
ファイルを変更します。
テキスト・エディタを使用して,次の行を一時ファイル (/tmp/stanza
など) に追加します。
generic: rt_preempt_opt=1
sysconfigdb
コマンドを使用して,この一時ファイルを既存の
/etc/sysconfigtab
ファイルにマージします。
# sysconfigdb -m -t /etc/sysconfigtab -f /tmp/stanza generic
注意
テキスト・エディタで直接
/etc/sysconfigtab
ファイルを変更しないでください。
7.8 マルチプロセッサ・システムでの自動リブートを使用可能にする
マルチプロセッサ・システムでプロセッサに障害が発生した場合のシステム・ダウン時間を短縮するために,マルチプロセッサ・プラットフォームでは自動リブート機能が利用できます。
自動リブート機能を使用可能にするには,root
ユーザとしてログインして,次のコンソール変数を設定します。
# consvar -s boot_osflags a
# consvar -s boot_reset off
# consvar -s auto_action restart
# consvar -a
マルチプロセッサ・プラットフォーム上でプロセッサ障害が発生すると,システムは障害が発生したプロセッサを検出し,オペレータの介入なしにシステム全体をリブートします。
この際,障害が発生したプロセッサは再スタートされません。
障害が発生したプロセッサを再スタートさせるためには,障害の原因を突き止め修復する必要があります。
障害が発生したプロセッサの再スタートは,システムの電源を入れ直すか,コンソールプロンプト ( >>>
) に対してコンソール・コマンド
init
を入力することによって行います。
7.9 シングル・システムで自動リブートを使用可能にする
プロセッサまたは電源の障害後にシステムを自動的にリブートするには,システムをシャットダウンしてコンソール・モードにしてから,次のようにコンソール変数を設定します。
# set auto_action restart
このコンソール変数は,ほとんどのシステム・タイプで有効です。 お使いのシステム・タイプでこのコンソール変数が有効でない場合は,ハードウェアのオーナーズ・ガイドを参照して,サポートされているコンソール環境変数を調べてください。