ネットワーク管理には,ネットワーク・インタフェース,ソフトウェア,およびデーモンの設定と構成のための作業と,設定および構成されたインタフェース,ソフトウェア,デーモンの日常的な管理が含まれます。 また,発生する問題の解決も,ネットワーク管理作業に含まれます。
この章では,次のトピックについて説明します。
本書では,次の各項目の管理について説明します。
ネットワーク・サービスとネットワーク・アプリケーションに関する情報は,別冊の『ネットワーク管理ガイド:サービス編』にまとめられています。
それぞれのネットワーク接続が備えている機能が異なるため,日常的な管理作業は,ネットワーク接続ごとに異なります。
一般に,管理作業には,/etc/hosts
ファイルへのホストの追加,新しい LAT デバイスの構成,状態情報の入手といった小規模な変更や調整が含まれます。
本書の第 2 章〜第 9 章では,これらの個々の作業を実施するための一般的な手順を,例や補足情報を交えて説明します。
本書には,ネットワークの接続とトランスポートの日常的な管理作業に関する情報に加え,発生する可能性がある問題の解決に役立つ情報も記載しています。 問題の解決は毎日行わなければならない作業ではないため,管理作業とは分けて説明します。
管理の章とは異なり,問題解決の章は,問題別に構成されています。 各問題の節には,その問題を解決するための手順を示します。
問題解決に成功する秘訣は,問題の原因を特定することです。 複雑なネットワークや,ネットワーク・サービス間の相互作用によって,原因の特定が困難になることがよくあります。 エラー・メッセージまたはイベント (たとえば遅いレスポンスなど) によって問題を検出した場合は,次の手順を実行してください。
使用しているシステム,ネットワーク・インタフェース,およびネットワークへの接続部を調べます。
ネットワークを調べて,使用しているシステムがリモート・システムに接続できるかどうかを確かめます。
ほとんどの問題は,上記の 2 つの手順を実行すれば解決できます。
それでも問題が解決できない場合は,該当する問題解決の節に進んで,その手順に従ってください。
1.2 管理手法
以下の各項では,オペレーティング・システムに含まれるネットワーク構成要素を管理するための手法を要約します。
1.2.4 項で説明するように,ネットワーク構成作業に伴う構成ファイルの編集は,手作業で行うべきではありません。
できる限り,SysMan Menu ユーティリティを使用してください。
1.2.1 SysMan Menu
SysMan Menu ユーティリティを使用すると,グラフィカル・ユーザ・インタフェース (GUI) またはコマンド行インタフェースを使用して,ローカルにシステムを管理することができます。 さらに,World Wide Web を経由してシステムをリモート管理することも可能です。 SysMan Menu ユーティリティでは,単独の階層型メニュー・インタフェースで Suitlet (統合ユーティリティ) を速やかに見つけて起動し,最も一般的な管理作業を実行することができます。
構成作業との関連で SysMan Menu ユーティリティについて言及している部分は,このユーティリティの起動方法をすでに理解していることを前提としています。 CDE から SysMan Menu ユーティリティを起動するには,次の手順に従ってください。
CDE フロント・パネルの「アプリケーション・マネージャ」アイコンを選択します。
「システム管理」アプリケーション・グループ・アイコンを選択します。
SysMan Menu を選択します。 SysMan Menu が表示され,各種のシステム管理作業が一覧されます。
CDE を使用していない場合には,次のいずれかの方法で SysMan Menu を起動することができます。
# /usr/bin/sysman
キャラクタセル端末または端末ウィンドウから curses モードで起動するには,次のように入力します。
# sysman -ui cui
SysMan Menu の起動後,メニュー項目を選択するには,その項目をダブルクリックします。 グラフィック機能のないシステムで項目を選択するには,矢印キーと [Enter] キーを使用します。 多くのメニュー項目では,さらに下位の選択項目が展開されます。 適切な Suitlet が見つかるまで,メニュー操作を続けます。
図 1-1では,[基本ネットワーク・サービス] メニュー項目が選択されています。
このメニュー項目を展開すると,ネットワーク・アダプタや,その他の基本的なネットワーク構成要素を構成する Suitlet 群が表示されます。
図 1-1: SysMan Menu
SysMan Menu を終了するには,[終了] を選択します。 グラフィック機能がないシステムでは,[Tab] キーを使用してカーソルを [終了] に移動し,[Enter] キーを押します。
SysMan Menu についての詳細は,『システム管理ガイド
』,
sysman
(8)1.2.1.1 クイック・セットアップ
SysMan Menu には,クライアント・システムの基本的な構成要素とサービスを構成するために使用できるクイック・セットアップ・ユーティリティが含まれています。 クイック・セットアップ・ユーティリティは,オペレーティング・システムのフル・インストレーション後にシステムをブートした場合に,自動的に起動されます。 ただし,それ以外の場合にこのユーティリティを使用するには,SysMan Menu を起動して [一般的なタスク] --> [クイック・セットアップ] を選択するか,次のコマンドをコマンド行に入力します。
# /usr/bin/sysman quicksetup
クイック・セットアップ・ユーティリティが表示されます (図 1-2
参照)。
図 1-2: Quick Setup
クイック・セットアップ・ユーティリティを使用すると,一連の構成手順が順を追って表示されます。 これらの手順の多くは,システムをネットワーク上で稼働させる準備を行います。 1 つの手順から次の手順に進むには,情報を入力して [次へ] を選択します。 入力していない情報があることに気付いた場合には,前の手順に戻ることができます。 入力した情報は,最後の手順で [完了] を選択して構成を確定するまで保存されません。
クイック・セットアップ・ユーティリティの使用後には,必要に応じて他のコンポーネントを追加して構成したり,構成を変更することができます。
クイック・セットアップ・ユーティリティについての詳細は,オンライン・ヘルプを参照してください。
1.2.1.2 ネットワーク・セットアップ・ウィザード
SysMan Menu には,システムのネットワーク構成要素の構成に使用できる ネットワーク・セットアップ・ウィザード・ユーティリティもあります。 SysMan Menu で構成 Suitlet を起動すれば,基本的なネットワーク・サービスを個別に構成できます。 また,ネットワーク・セットアップ・ウィザードを使用すれば,基本的なネットワーク・サービスすべての設定処理を順を追って実行することができます。
ネットワーク・セットアップ・ウィザードを使用するには,SysMan Menu を起動して [ネットワーク --> ネットワーク・セットアップ・ウィザード] を選択するか,またはコマンド行で次のコマンドを実行します。
# /usr/bin/sysman net_wizard
ネットワーク・セットアップ・ウィザード・ユーティリティが表示されます (図 1-3
を参照)。
図 1-3: ネットワーク・セットアップ・ウィザード
ネットワーク・セットアップ・ウィザード・ユーティリティを使用すると,一連の構成手順が順を追って表示されます。 1 つの手順から次の手順に進むには,情報を入力して [次へ] を選択します。 入力していない情報があることに気付いた場合には,前の手順に戻ることができます。 入力した情報は,最後の手順で [完了] を選択して構成を確定するまで保存されません。
さらに,ネットワーク・セットアップ・ウィザード・ユーティリティの使用後には,必要に応じて他の構成要素を追加して構成したり,構成を変更することができます。
ネットワーク・セットアップ・ウィザード・ユーティリティについての詳細は,オンライン・ヘルプを参照してください。
1.2.1.3 コマンド行の統合
SysMan Menu では,さまざまな構成オプションにコマンド行から直接アクセスし,操作することができます。 この機能は,管理者がサイト固有のシェル・スクリプトを作成して構成作業を実行する手段として,特に効果的です。
コマンド行インタフェースを使用するには,sysman
-cli
コマンドを実行します。
このコマンドには引数として,処理対象の構成要素とグループ,および実行する処理を指定します。
たとえば,/etc/hosts
ファイル内の全エントリを表示するとします。
この処理は,次のコマンドで実行できます。
# sysman -cli -list values -comp networkedSystems \ -group hostMappings
/etc/hosts
ファイルにホストを追加するには,次のコマンドを実行します。
# sysman -cli -add row -comp networkedSystems \ -group hostMappings -data "{queen} \ {DNS server} {18.240.32.40} {queen.abc.xyz.com}"
さらに,IP アドレスなど,/etc/hosts
ファイル内の既存の値を変更することも可能です。
変更を行うコマンドの例を,次に示します。
# sysman -cli -set val -comp networkedSystems \ -group hostMappings -attr networkAddress="18.240.32.45" \ -key1 queen.abc.xyz.com -key2 18.240.32.40
SysMan Menu のコマンド行インタフェースについての詳細は,『システム管理ガイド』および
sysman_cli
(8)1.2.2 Compaq Insight Manager
Compaq Insight Manager は,Web ベースのシステム管理ユーティリティです。 このユーティリティは Management Agents と Management Console という異なる 2 つの構成要素で構成されています。 Management Agents は,Tru64 UNIX を含む多彩なオペレーティング・システム上で動作します。 Management Console は,Microsoft Windows NT 専用です。
Tru64 UNIX システム上で Compaq Management Agents を有効にすると,システムと Web との間に通信経路が確立されます。 一旦有効にすると,この経路により,任意のシステム上の Web ブラウザからシステムおよび周辺機器の構成に関する情報にアクセスできます。 さらに,Java 対応の一部の Web ブラウザでは,このインタフェースを通して SysMan Menu を起動し,システムを管理することも可能です。
図 1-4
は,Management Agents を使用して,イーサネット・ネットワーク・アダプタの統計情報を入手する例です。
図 1-4: Compaq Management Agents
Compaq Insight Manager XE Management Console を使用すれば,システムだけでなく,プリンタやルータといった,ネットワーク上のさまざまなスタンドアロン・デバイスの情報を参照したり管理することができます。 Management Console は,サポートされているすべてのオペレーティング・システムや環境用の Management Agents と通信できるため,異種の環境を管理する手段として特に効果的です。
Compaq Insight Manager
についての詳細は,
insight_manager
(5)1.2.3 その他のインタフェース
Tru64 UNIX オペレーティング・システムには,その他にも複数のシステム管理アプリケーションが含まれています。 一部のアプリケーションはグラフィック機能を必要としますが,コマンド行からシステムを構成できるアプリケーションもあります。 本書では,特定の構成作業で利用可能な場合,これらのユーティリティについて説明します。
利用可能なユーティリティの一覧は,『システム管理ガイド』の第 2 章を参照してください。
各ユーティリティについての詳細は,リファレンス・ページとオンライン・ヘルプを参照してください。
1.2.4 構成ファイルの手動による編集
本書のいくつかの節では,管理作業を実行した場合に更新または修正されるシステム・ファイルについて説明しています。 十分な経験のある UNIX 管理者の場合には,本書で説明しているユーティリティを起動するよりも,これらのファイルを手動で編集することによって,システムを管理する方法が好ましいかもしれません。 ただし,システム・ファイルを更新する場合は,これらのファイルの構造が保持されるように,適切なユーティリティを使用することを推奨します。
重要な注意事項は,次のとおりです。
コンテキスト依存のシンボリック・リンク (CDSL)
多くのシステム・ファイルは,TruCluster Server クラスタを使いやすくするために作成された,特別なシンボリック・リンクとして存在しています。
このようなシンボリック・リンクは,ほとんどのユーザには透過的ですが,これらのリンクが壊れた場合は,再作成しない限り,システムがクラスタを結合することができなくなります。
本書では,特に手動で作成しなければならない,ごく一部の CDSL について説明しています。
ファイル・システムにある CDSL の完全なリストについては,リファレンス・ページの
hier
(5)
バイナリ・データベースおよび構成定義
多くのシステム構成要素は,テキスト・ファイルおよびバイナリ・ファイルの両方にデータを書き込みますが,そのような構成要素の管理ユーティリティは,バイナリ・ファイルの方をたびたび再作成します。 その他のシステム情報はたびたび保存され,システムを更新した場合に復元して再使用することにより,時間および労力を節約できるようにします。
クラスタの内部的なサポート
個々のシステムは,TruCluster Server クラスタを結合することができ,多くのシステム・ファイルは,クラスタを内部的にサポートするように修正されました。
たとえば,rc.config
ファイルには,2 つの関連付けられたファイル,rc.config.common
および
rc.config.site
ができたため,実行時構成変数を格納することができるようになりました。
rcmgr
ユーティリティを使用してこれらのファイルを変更することにより,これらのファイルの完全性および一貫性を保証します。
アップデート・インストレーション
アップデート・インストレーションの実行時に,変更された情報は既存のシステム・ファイル内にマージされます。
この処理では,.new..*
および
.proto..*
ファイルが重要です。
詳細については,『インストレーション・ガイド』を参照してください。
多くの場合,システム・ファイルを手動で編集するよりも,SysMan Menu ユーティリティを使用する方が最善の方法です。
このため,本書ではこのユーティリティについて多くのことを説明しています。
1.2.5 インストレーションと構成のクローニング
Tru64 UNIX オペレーティング・システムには,インストレーション・クローニングと構成クローニングという 2 つのクローニング機能があります。 これらのクローニング機能を使用すれば,システムのインストールと構成に伴う手間を最小限に抑えることができます。 これらの機能は,同一構成のシステムを同じ方法でいくつもセットアップする場合に,特に効果的です。 これは,すでに稼働しているシステムの構成を構成記述ファイル (CDF ファイル) に取り込み,このファイルを使用して残りのシステムのインストールと構成を行うことができるためです。
詳細については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。