クラスタを作成する場合は,クラスタ・メンバになるすべてのシステムに Tru64 UNIX オペレーティング・システムをインストールする必要はありません。第 1 クラスタ・メンバになるシステムにだけ Tru64 UNIX オペレーティング・システムをインストールします。そのシステムを基にして第 1 クラスタ・メンバが作成されます。
clu_create
コマンドを実行してシステムを第 1 クラスタ・メンバにするとき,必要となる Tru64 UNIX システムは 1 台のみです。その第 1 クラスタ・メンバをブートした後,clu_add_member
を実行して追加メンバ用のブート・ディスクを作成します。それらの追加メンバには,ベース・オペレーティング・システムの個別コピーは必要ありません。ただし,Tru64 UNIX のライセンスは個別に必要です。
クラスタに各種のシステムが含まれる場合は,各種のハードウェア構成をサポートするために必要な,オプションの Tru64 UNIX サブセットをロードします。たとえば,キーボードとグラフィック・カードを正しく機能させるには特定のサブセットが必要になるため,キーボードとフォントのサブセットをすべてロードします。それらのサブセットは後からでもインストールできますが,Tru64 UNIX システムに十分なディスク・スペースが存在し,サイトのポリシに違反しないのであれば,Tru64 UNIX オペレーティング・システムのインストール時にすべてのサブセットをロードしてください。
クラスタの作成は,Tru64 UNIX システムを完全に構成してから行うことにより,クラスタを作成する前に構成を確認できます。
ベース・オペレーティング・システムを構成するだけでなく,クラスタで使用する各種のレイヤード・プロダクトおよびアプリケーションも,ロードして構成しておきます。
ベース・オペレーティング・システム用に Fibre Channel ストレージセットを使用する場合は,TruCluster Server 『クラスタ・ハードウェア構成ガイド』の Fibre Channel に関する章をお読みください。
表 3-1 に,インストレーション作業を順序どおりに示すとともに,必要な情報の参照先も示しています。
注意
クラスタのローリング・アップグレードを実行する場合は,第 7 章 へ進み,その章の指示に従ってください。
TruCluster Production Server Software または Available Server Software のバージョン 1.5 あるいはバージョン 1.6 から TruCluster Server バージョン 5.1B にアップグレードする場合は,第 8 章へ進み,その章の指示に従ってください。
TruCluster Memory Channel Software から TruCluster Server バージョン 5.1B にアップグレードする場合は,8.9 節へ進み,その節の指示に従ってください。
作業 | 参照先 |
すべてのストレージが正しくインストールされ,構成されていることを確認する。たとえば,HS コントローラを使用している場合,RAID セットおよびユニットが構成されていることを確認する。 | 『クラスタ・ハードウェア構成ガイド』 |
コンソール変数を確認する。 | 2.7 節 |
SRM ファームウェアを更新する。 | 3.1 節 |
Tru64 UNIX オペレーティング・システムをインストールする。 | 3.2 節および Tru64 UNIX 『インストレーション・ガイド』 |
基本的なサービスを構成する。 | 3.3 節および Tru64 UNIX 『ネットワーク管理ガイド:サービス編』 |
Secure Shell ソフトウェアを構成する。 | 3.4 節 および Tru64 UNIX 『セキュリティ管理ガイド』 |
エンハンスト・セキュリティを構成する (オプション)。 | 3.5 節および Tru64 UNIX 『セキュリティ管理ガイド』 |
冗長ネットワーク・インタフェース用に NetRAIN を構成する (オプション)。 | 3.6 節 および 『クラスタ管理ガイド』 |
クラスタのインストールに必要なディスクを構成する。 | 2.5 節,3.7 節,および Tru64 UNIX 『システム管理ガイド』 |
LAN インターコネクトを使用するクラスタについて,ネットワーク・アダプタのデバイス名を取得する。 | 3.8 節 |
Tru64 UNIX および TruCluster Server の新しいバージョンでは,通常,AlphaServer SRM ファームウェアの新しいバージョンを必要とします。ファームウェアのアップデートは,ベース・オペレーティング・システムの Software Distribution Kit に含まれている Alpha Systems Firmware CD-ROM にあります。ファームウェアをアップデートする必要があるかどうかを判断するには,クラスタ内の各システムのタイプについて,TruCluster Server 『QuickSpecs』 およびファームウェアのリリース・ノートを参照してください。TruCluster Server『QuickSpecs』の最新版は,次の URL から入手できます。
http://www.tru64unix.compaq.com/docs/pub_page/spds.html
3.2 Tru64 UNIX オペレーティング・システムのインストール
注意
クラスタのインストレーションでは,Tru64 UNIX のルート (
/
),/usr
,/var
の各ファイル・システムがコピーされて,クラスタ単位のルート (/
),/usr
,/var
の各ファイル・システムが作成されます。したがって,クラスタを作成する前に Tru64 UNIX システムを完全に構成しておくことをお勧めします。
Tru64 UNIX 『インストレーション・ガイド』で説明しているインストレーション・プロシージャを実行する前に,次のリストを参照し,これらの作業もインストール時に行ってください。
すべてのストレージ・デバイスに電源が入っていることを確認します。
クラスタ・インターコネクトに使用するすべてのハブまたはスイッチに電源が入っていることを確認します。
1 つ以上のディスクに Tru64 UNIX オペレーティング・システムをインストールします。ディスクは,第 1 クラスタ・メンバにするシステムのプライベート・ディスクまたはそのシステムがアクセスできる共用バス上のディスクのいずれかです。
注意
Tru64 UNIX オペレーティング・システムをインストールするときは,すべてのサブセットをロードしてください。
AdvFS (Advanced File System) ファイル・システムを使用します。
各国語サポート (WLS) を独立したファイル・システムにインストールする場合,そのファイル・システムが存在するディスクは,すべてのクラスタ・メンバで共用するバス上に設置することをお勧めします。WLS のインストールについては,Tru64 UNIX 『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
LSM (Logical Storage Manager) を使用してクラスタ上のシステムをミラー化しようと計画している場合,LSM は Tru64 UNIX システム上に構成します。ルート・ディスク・グループ (rootdg
) は,共用バス上にあるディスクに配置します。本書の
2.5.2 項と,TruCluster Server 『クラスタ管理ガイド』のクラスタに LSM を構成する方法についての章も参照してください。
ベース・オペレーティング・システムのインストール中にパッチ・キットを同時にインストールする場合は,パッチ・キットをインストールする前に TruCluster Server のサブセットをロードします。パッチの操作前に TruCluster Server キットがロードされていない場合は,TruCluster Server ソフトウェアのパッチがロードされません。Tru64 UNIX を初めてインストールする場合のパッチのインストール手順は,次のとおりです。
Tru64 UNIX オペレーティング・システムをインストールして構成します。
setld
コマンドを実行して,TruCluster Server キットをインストールします。
システムにパッチをインストールします。
clu_create
コマンドを実行してシングル・メンバ・クラスタを作成します。
Tru64 UNIX オペレーティング・システムをインストールまたはアップデートした後に,新しいハードウェア,たとえば新しいネットワーク・アダプタなどを追加する場合は,必ず
/genvmunix
をブートして,カスタマイズしたカーネルを構築してください。そうしない場合,システムのカーネル構成ファイルにそれらのハードウェア・オプションが組み込まれないため,TruCluster Server のインストール時に構築したカーネルで新しいハードウェアが認識されません。カーネルの構成については,Tru64 UNIX 『システム管理ガイド』で説明しています。
この手順は,非同期転送モード (ATM) ネットワークに接続したシステムにのみ適用します。ATM LAN エミュレーション (LANE) のサポートを構成するには,doconfig
で表示されるリストから必要なオプションを選択します。次に示す
doconfig
オプションのリスト (一部) では,LANE のサポートに必要なオプションにアスタリスク (*) が付加されています。
IP Switching over ATM (ATMIFMP) * LAN Emulation over ATM (LANE) Classical IP over ATM (ATMIP) * ATM UNI 3.0/3.1 Signalling for SVCs
Tru64 UNIX 『ネットワーク管理ガイド:接続編』の説明に従って
netconfig
ユーティリティまたは SysMan Menu を実行し,システムの標準ネットワーク・インタフェース (1 つまたは複数) を構成します。ifconfig
,
ping
,
ftp
, および
telnet
などのネットワーク・ユーティリティを使用してネットワークが正しく構成されていることを確認します。
注意
この時点では,クラスタ・インターコネクトのインタフェースを構成しないでください。それらのインタフェースは,クラスタを作成するときに構成します。
ルーティング・デーモン。
クラスタ別名のために
gated
は必須 (3.3.1 項)。
タイム・サービス。 ネットワーク・タイム・プロトコル (NTP) を推奨 (3.3.2 項)。
ネーム・サーバ。 たとえば,BIND (Berkeley Internet Name Domain) サーバなど (3.3.3 項)。
クラスタがファイル・サーバになる場合は,NFS (ネットワーク・ファイル・システム) を構成 (3.3.4 項)。
クラスタが NIS (ネットワーク情報サービス) のマスタ,スレーブ,クライアントのいずれかになる場合は,NIS を構成 (3.3.5 項)。
クラスタが DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol) サーバになる場合は,DHCP を構成 (3.3.6 項)。
クラスタがメール・サーバになる場合は,メールを構成 (3.3.7 項)。
クラスタがプリント・サーバになる場合は,印刷を構成 (3.3.8 項)。
各サービスを構成する場合は,以降の各項に目を通し,それらの情報も参考にして構成してください。
注意
クラスタを作成する前にこれらのサービスのいくつかを構成しなかった場合は,稼働中のクラスタにそれらのサービスを構成する方法を説明している『クラスタ管理ガイド』を参照してください。ただし,クラスタを作成する前に各サービスを構成したほうが簡単です。
3.3.9 項に Tru64 UNIX システムで推奨されるネットワーク構成が要約されているので,TruCluster Server のインストールを開始する前に参照してください。
クラスタ別名ソフトウェアは,以下とともに動作するように設計されています。
gated
(省略時の設定)
routed
スタティック・ルーティング
ogated
ルーティング・デーモンはサポートしていません。
gated
ルーティング・デーモンの使用を推奨します。gated
を使用すると,各クラスタ・メンバの別名デーモン
aliasd
は,そのメンバ固有の
/etc/gated.conf.membern
ファイルを作成します。
クラスタにおけるルーティング・デーモンの役割および
gated
以外のルーティング機構に関する説明については 『クラスタ管理ガイド』および 『クラスタ概要』 を参照してください。
3.3.2 タイム・サーバ
分散タイム・サービスを実行すると,各ファイル・システムとアプリケーションで使用されるタイム・スタンプをクラスタ全体で一貫させることができます。NTP (Network Time Protocol) デーモン (
xntpd
) などの分散タイム・サービスを構成することをお奨めします。NTP を使用すると,きわめて正確に同期をとることができるとともに,時刻ソースの信頼性を追跡することができます。NTP については,Tru64 UNIX 『ネットワーク管理ガイド:サービス編』 および
ntp_intro
(7)
システム時刻の同期がとれていない場合,正確なタイム・スタンプを必要とするチェックはすべて失敗します。サイトで NTP を使用していない場合は,使用するタイム・サービスが,RFC 1035 『Network Time Protocol (Version 3) Specification, Implementation and Analysis』で定義されている細分性の仕様を満たしているかどうかを必ず確認してください。
各クラスタ・メンバのシステム時刻は数秒以上ずれていてはならないため,時刻の設定に
timed
デーモンは使用しないでください。
使用しているネットワーク上にタイム・サーバが存在せず,クラスタをタイム・サーバとして使用したい場合は,Tru64 UNIX 『ネットワーク管理ガイド:サービス編』 および
ntp_manual_setup
(7)
クラスタを信頼できる時刻ソースとして機能させるには,クラスタを作成した後,時刻サービスを高可用性サービスにします。高可用性サービスのセットアップ方法については,『クラスタ高可用性アプリケーション・ガイド』を参照してください。
Tru64 UNIX システムで NTP を使用している場合,クラスタの作成時に Tru64 UNIX システムの NTP 設定が第 1 クラスタ・メンバに継承されます。メンバを追加すると,各メンバはそれぞれ他のメンバのピアになります。
3.3.3 ネーム・サーバ
クラスタは,ネーム・サーバまたはクライアント,あるいはその両方として機能することができます。ベース・オペレーティング・システムを BIND サーバとして構成すると,そのクラスタの中では,BIND デーモン
named
が自動的にシングル・インスタンスの高可用性サービスとして構成されます。
ネーム・サーバ (たとえば BIND) を Tru64 UNIX システム上に構成する場合は,/etc/svc.conf
の
hosts
エントリで,local
サービスを
bind
サービスと
yp
サービスの前に指定してください。次に例を示します。
hosts=local,bind,yp
TruCluster Server クラスタは非常に信頼できる NFS (ネットワーク・ファイル・システム) サービスをクライアントに提供できるので,クラスタを作成する前に,ベース・オペレーティング・システムを NFS サーバとして構成することをお勧めします。システムを NFS クライアントとして構成することもできます。
ベース・オペレーティング・システムを NFS サーバとして構成した場合,NFS
lockd
および
statd
デーモンは,クラスタ内のシングル・インスタンス高可用性サービスとして構成されます。したがって,クラスタは可用性の高い NFS サーバとなります。
3.3.5 NIS
クラスタが NIS (ネットワーク情報サービス) のマスタ,スレーブ,クライアントのいずれかになる場合は,クラスタを作成する前に NIS を構成します。NIS の構成方法については,Tru64 UNIX 『ネットワーク管理ガイド:サービス編』 を参照してください。
クラスタ・メンバは,すべて同じ NIS ドメインに入っていなければなりません。Tru64 UNIX オペレーティング・システムがマスタ・サーバとして構成されている場合は,すべてのクラスタ・メンバが NIS マスタとして構成されます。Tru64 UNIX オペレーティング・システムがスレーブ・サーバまたはクライアントとして構成されている場合は,すべてのクラスタ・メンバがスレーブまたはクライアントとして構成されます。
3.3.6 DHCP
ベース・オペレーティング・システムを DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol) サーバとして構成した場合,DHCP デーモン
joind
は,クラスタ内のシングル・インスタンスの高可用性サービスとして構成されます。
警告
システムを DHCP クライアントとして構成しないでください。クラスタのメンバを DHCP クライアントとすることはできません。これは,各メンバのクラスタ・インターコネクトに関連付けられた IP 名および IP アドレスは,クラスタを形成するためには絶対的に不変でなければならないためです。
クラスタがメール・サーバになる場合は,クラスタを作成する前にメールの構成を行います。メールの構成方法については,Tru64 UNIX 『システム管理ガイド』および TruCluster Server 『クラスタ管理ガイド』を参照してください。
3.3.8 プリント・サーバ
クラスタがプリント・サーバになる場合は,クラスタを作成する前に印刷関連の構成を行います。プリンタの構成方法については,Tru64 UNIX 『システム管理ガイド』および TruCluster Server 『クラスタ管理ガイド』を参照してください。
3.3.9 ネットワーク・サービスの概要
TruCluster Server のインストレーションを開始する前に,Tru64 UNIX システムの推奨するネットワーク構成について,表 3-2
に要約を示します。また,この表では
clu_create
によって第 1 クラスタ・メンバに渡される構成情報と,clu_add_member
によって追加のクラスタ・メンバに渡される構成情報も示しています。
表 3-2: ネットワーク・サービスの要約
サービス/デーモン | 推奨事項 | コメント |
ルーティング・デーモン | gated |
ogated
と
routed
は使用しない。 |
タイム・サーバ | NTP | 第 1 クラスタ・メンバは,ベース・オペレーティング・システムの構成を継承する。追加のメンバは自動的にピアとして構成される。 |
ネーム・サーバ | オプション (BIND または NIS,あるいはその両方) | すべてのクラスタ・メンバは,同じドメイン (DNS および NIS) 内になければならない。svc.conf
で,hosts=local,bind,yp
と設定する。ベース・オペレーティング・システムがネーム・サーバとして構成されている場合,そのネーム・サーバはクラスタ内の高可用性サービスとして構成される。クラスタが BIND サーバである場合,クラスタ別名がクラスタ単位の
/etc/resolv.conf
ファイル内で BIND サーバの名前になる。 |
NFS | オプション (ベース・オペレーティング・システム上にサーバとして設定することも,クライアントとして構成することもできる) | すべてのクラスタ・メンバは,lockd
デーモンおよび
statd
デーモンのクライアント・バージョンを実行する。サーバ・バージョンの
lockd
デーモンおよび
statd
デーモンは一度に 1 つのクラスタ・メンバで実行され,それらは高可用性サービスとして構成される。 |
NIS | オプション | すべてのクラスタ・メンバは,同じドメイン内になければならない。ベース・オペレーティング・システムがマスタ・サーバとして構成されている場合,NIS はクラスタ内の高可用性サービスとして構成される。ベース・オペレーティング・システムがスレーブ・サーバまたはクライアントとして構成されている場合は,すべてのクラスタ・メンバがスレーブまたはクライアントとして構成される。 |
DHCP | オプション (サーバのみ) | ベース・オペレーティング・システム上に構成された場合,DHCP はクラスタ内の高可用性サービスとして構成される。 |
メール | オプション | クラスタを作成する前に構成すること。 |
プリント・サーバ | オプション | クラスタを作成する前に構成すること。 |
Secure Shell ソフトウェアは,接続先より送信されたデータを暗号化するだけでなく,ホストとユーザを認証するための機構も提供します。Secure Shell ソフトウェアを構成して,rsh
などのコマンドが自動的に Secure Shell 接続を使用するようにできます。クラスタ・ソフトウェアは
rsh
を使用してクラスタ・メンバにコマンドを送信するため,Secure Shell ソフトウェアを有効にすることを推奨します。
クラスタ作成後に Secure Shell ソフトウェアを構成することもできますが,クラスタ作成前に行うほうが簡単です。
Secure Shell ソフトウェアについては Tru64 UNIX 『セキュリティ管理ガイド』を参照してください。
3.5 エンハンスト・セキュリティの構成 (オプション)
クラスタ内にエンハンスト・セキュリティを構成するには,次の手順に従います。
Tru64 UNIX バージョン 5.1B をインストールするときに,エンハンスト・セキュリティ・サブセット (名前が
OSFC2SEC
xxx
および
OSFXC2SEC
xxx
の形式であるもの) を選択します。
TruCluster Server のライセンスとサブセットをロードしてクラスタを作成する前に,Tru64 UNIX システムでエンハンスト・セキュリティを完全に構成しておいてください。クラスタを作成する前にエンハンスト・セキュリティを構成するほうが,クラスタを作成した後にクラスタ・メンバを個別に構成するよりも簡単です。また,Enhanced (C2) Security など一部の構成要素は,カーネルの再構築またはシェアード・ライブラリ置換に依存しているため,それらの構成要素をクラスタの作成後に構成した場合は,クラスタ全体をリブートする必要があります。
セキュリティ・オプションの選択と構成の方法については,Tru64 UNIX 『セキュリティ管理ガイド』を参照してください。
3.6 冗長ネットワーク・インタフェース用の NetRAIN の構成 (オプション)
システムに 2 つのネットワーク・インタフェースが存在する場合,NetRAIN により 2 つのインタフェースを用いた完全に冗長性のある構成を設定することができます。
詳細については 『クラスタ管理ガイド』を参照してください。
3.7 クラスタのインストールに必要なディスクの構成
Tru64 UNIX オペレーティング・システムをインストールしてブートした後,クラスタのインストール時に使用するディスクのサイズと位置を確認します。各メンバをそのブート・ディスクからブートしなければならないので,メンバ・ブート・ディスクの位置は特に重要です。メンバを間違ったブート・ディスクからブートすると,通常はブート中にパニックが発生します。パニックの種類によっては,他のクラスタ・メンバに影響を与えることがあります。
3.7.1 パーティション・サイズ
クラスタ・ファイル・システムおよびメンバ・ブート・ディスクとして使用するディスクのパーティションが,表 2-2 に示した最小サイズに関する必要条件を満たしていることを確認します。また2.5.5 項の情報を使用して,将来のローリング・アップグレードに必要な容量を確保します。
クラスタ単位のルート (/
),/usr
,/var
の各ファイル・システム用に使用するディスク (1 つまたは複数) には,clu_create
コマンドを実行する前にディスク・ラベルを付けておく必要があります。これは,clu_create
コマンドを実行すると,パーティション情報を入力するプロンプトが表示されるので,それらのパーティションが存在していなければならないためです。
ディスクのラベル付けおよび構成を行うには,disklabel
コマンドおよび
diskconfig
コマンドを使用します。また,SysMan Station を使用してストレージ構成の表示および変更を行うこともできます。
注意
メンバ・ブート・ディスクとして使用するディスクおよびクォーラム・ディスクには,使用前にラベルを付ける必要はありません。
次の例は,あるディスクに対して
disklabel
コマンドを実行したときの出力を示しています。このディスクの
b
,g
,h
の各パーティションに,2 つのノードで構成されるクラスタのクラスタ単位のルート (/
),/usr
,/var
の各ファイル・システムが保持されます。シリンダ情報は示されていません。
# disklabel -r dsk6 # /dev/rdisk/dsk6c: type: SCSI disk: RZ1DF-CB label: flags: dynamic_geometry bytes/sector: 512 sectors/track: 168 tracks/cylinder: 20 sectors/cylinder: 3360 cylinders: 5273 sectors/unit: 17773524 rpm: 7200 interleave: 1 trackskew: 28 cylinderskew: 72 headswitch: 0 # milliseconds track-to-track seek: 0 # milliseconds drivedata: 0 8 partitions: # size offset fstype fsize bsize a: 786432 0 unused 0 0 b: 1552131 786432 unused 0 0 c: 17773524 0 unused 0 0 d: 5400220 1572864 unused 0 0 e: 5400220 6973084 unused 0 0 f: 5400220 12373304 unused 0 0 g: 7595651 2338563 unused 0 0 h: 7839310 9934214 unused 0 0
SysMan Station と
hwmgr
コマンドを使用すると,デバイス・スペシャル・ファイル名を物理的な位置にマップできます。誤ったクラスタ・メンバ・ディスクをブートしないためには,ディスクをブートするコンソールで,正しいデバイスにデバイス・スペシャル・ファイルをマップすることが重要になります。
注意
クラスタに必要な任意のディスクに対して Fibre Channel ストレージセットを使用する場合は,『クラスタ・ハードウェア構成ガイド』の Fibre Channel に関する章をお読みください。
次の汎用
hwmgr
コマンドを実行すると,Tru64 UNIX で認識されている各ディスクのデバイス名,物理位置,およびワールドワイド ID (WWID) が表示されます。
# hwmgr -get attr -a dev_base_name \ -a phys_location -a name -category disk|more
第 1 メンバのクラスタ・ブート・ディスクを見つけるには,第 1 クラスタ・メンバとして構成するシステムで
clu_create
コマンドを実行すればよいため,問題にはなりません。clu_create
コマンドにより,コンソール変数
bootdef_dev
が正しいブート・ディスクに設定されます。ただし,別のシステム用のブート・ディスクを構成するには,システムで
clu_add_member
を実行します。別のシステムには,オペレーティング・システムがありません。そのシステムのストレージ構成について得られる情報は,そのコンソールからの情報のみです。clu_add_member
に指定する
dsk
名は,新しいメンバのコンソールからそのディスクをブートするときに使用する
DK
名にマップする必要があります。
clu_add_member
コマンドを使ってメンバを追加するとき,そのメンバのブート・ディスクに関する情報が表示されます。そこには,ディスクの製造元,モデル番号,物理的な位置 (バス/ターゲット/論理ユニット番号 (LUN)),およびシリアル番号 (WWID) が分かっている範囲で表示されます。clu_add_member
コマンドは,次の
hwmgr
コマンドを使用して情報を収集します。
# hwmgr -get attr -a dev_base_name=new_member_boot_disk \ -a serial_number -a manufacturer -a model -a phys_location
clu_add_member
コマンドは,hwmgr
コマンドの出力を再フォーマットし,次のフォーマットでディスクの位置情報を表示します。
Manufacturer: Model: Target: Lun: Serial Number:
Fibre Channel ストレージセットを使用している場合は,wwidmgr -show wwid
コマンドを使用して,新しいメンバのコンソールからディスクの位置を特定できます (『クラスタ・ハードウェア構成ガイド』 に,wwidmgr
コマンドの使い方を示す例がいくつか記載されています)。
メンバ・ブート・ディスクのシリアル番号が取得できない場合,デバイス・スペシャル・ファイルをコンソール・デバイス名に確実にマップできるかどうかは,次に述べるように,ストレージ構成がシンメトリックであるかどうかに依存します。
シンメトリックである場合 : クラスタ内の各システムは物理的に同一で,構成もまったく同一である。バス 1,バス 2,バス 3,...バス
n
がすべてのシステム上で同じものであることが分かっている。コンソールから見ると,それぞれの
DKB
バスは,クラスタ全体にわたって物理的に同じバスを参照している。DKC
,DKD
,...
DKZ
についても同様である。そのような場合には,hwmgr
コマンドまたは
sysman hw_devices
コマンドを使用して
dsk
スペシャル・ファイルに関連付けられたバス,ターゲット,論理ユニット番号 (LUN) を表示できる。その後,そのバス,ターゲット,および LUN を使用し,3.7.2.1 項の手順に従ってディスクのコンソール・デバイス名を生成できる。
シンメトリックでない場合 : あるシステム上のバス名 (たとえば
DKB
) は,別のシステムの
DKB
と物理的に同じバスではない。そのバスをベース・オペレーティング・システムがバス 1 とみなしても,そのバスがすべてのコンソールから
DKB
として参照される保証はない。こうしたことは,クラスタ内に,SCSI アダプタの搭載数が異なる各種のシステムが存在する場合,または,メンバ・ブート・ディスク用のバスに対してアダプタの挿入やバスのケーブル接続を不用意に行ってシンメトリックなストレージを構成した場合などに起こる。
3.7.2.2 項の手順を参照。
次の手順は,新しいメンバのコンソールで
show device
コマンドを使用して表示したディスクの名前に,/dev/disk/dsk*
スペシャル・ファイル名をマップする方法を説明しています。この手順は,hwmgr
コマンドを実行するシステムが,実行後にディスクのブートを試みるシステムと同じタイプである場合にのみ採用できます。つまり,モデル・システム,種類,および数も同じストレージ・アダプタが両方のマシンの同じスロットに装着されており,同じ共用ストレージに接続されている場合です。後ほどクラスタ・メンバ・ブート・ディスクとして構成するディスクを含んでいるバスは,どちらのコンソールでも同じように表示されます。2 つのシステムがこうした必要条件を満たしているかどうかがよくわからない場合は,3.7.2.2 項に示すシンメトリックでない場合の手順を参照してください。
Tru64 UNIX システムで
hwmgr
コマンドまたは SysMan Station を使用して,dsk
ファイル名を物理デバイスのバス,ターゲット,および LUN にマップします。共用ストレージのデバイス・スペシャル・ファイル名は,Tru64 UNIX システムおよびクラスタのものと同一になります。たとえば,dsk13
のバス,ターゲット,および LUN を取得するには次のように入力します。
# hwmgr -view devices | grep dsk13 56: /dev/disk/dsk10c DEC RZ1CF-CF (C) DEC bus-1-targ-11-lun-0c
このディスクは,バス 1,ターゲット 11,LUN 0 にあります。
そのディスクをブートするシステムのコンソールで,次のように
show device
コマンドを入力します。
>>> show device
.
.
.
dkb100.1.0.12.0 DKB100 RZ28M 1104
.
.
.
このコンソールから見た場合,SCSI ディスクのクラス・ドライバ指定子は,DK
です。バスの番号は,ファームウェアでバスが検出された順序になります。最初に検出されたバスは A,次に検出されたバスは B で,以下同様に続きます。同じように,最初のターゲットは 0,第 2 のターゲットは 100,第 3 のターゲットは 200 となります。hwmgr
の
bus-1-targ-1-lun-0
という出力は,通常,DKB100
に変換されます。
注意
Fibre Channel ストレージセットを使用している場合は,コンソール・コマンド
wwidmgr -show wwid
を使用することで,ユーザ定義 ID (UDID) とそれに対応するワールドワイド ID (WWID) をリストにして表示させることができます。
dsk
名,DK
名,および WWID を
表 A-3
の「メンバ属性」の表に記入してください。
ストレージ構成がシンメトリックでない場合は,あるシステムのオペレーティング・システムから見たストレージ (dsk
) を別のシステムのコンソールから見たストレージ (DK
) に確実にマップできるコマンドはありません。
ディスクへのマップを,コンソールまたはオペレーティング・システムのどちらから行うかは,ユーザの判断によります。次の手順では,オペレーティング・システムから作業を開始し,他のシステムのコンソールに移動しています。
hwmgr
コマンドを使用して,ブート・ディスクとして使用するディスクのアクティビティ・ライトを点滅させます。たとえば,スペシャル・ファイル
/dev/disk/dsk13
を介してアクセスするディスクのライトを点滅させるには,次のように入力します。
# hwmgr -flash light -dsf dsk13
ライトが点滅しているディスクを見つけ,ストレージ・キャビネット内での位置を把握します。
そのキャビネットから,そのディスクをブート・ディスクとして使用するシステムへのケーブルをたどります。
この時点で,ディスクの SCSI バス上の位置およびシステム内の SCSI アダプタの位置が判明します。システムによるアダプタの番号付け方法が分かっていれば,そのアダプタの SCSI バス番号も推定できます。クラスタを構成したときにストレージ・マップを描いていれば,その情報が役立ちます。さまざまなディスクがある場合は,ディスクのモデル番号と WWID も参考になります。
次の例では,追跡したディスクが,システムの 2 番目の SCSI アダプタの 2 番目のデバイスであると想定しています。
そのディスクをブートするシステムのコンソールで,次のように
show device
コマンドを入力します。
>>> show device
.
.
.
dkb100.1.0.12.0 DKB100 RZ28M 1104
.
.
.
このコンソールから見た場合,SCSI ディスクのクラス・ドライバ指定子は,DK
です。バスの番号は,ファームウェアでバスが検出された順序になります。最初に検出されたバスは A,次に検出されたバスは B で,以下同様に続きます。同じように,最初のターゲットは 0,第 2 のターゲットは 100,第 3 のターゲットは 200 となります。2 番目の SCSI アダプタ上の第 2 ターゲットは,DKB100
となります。そのディスクが RZ28M であると分かっている場合は,その情報も選択項目を絞り込むのに役立ちます。ただし,当然ながら,そのバス上のディスクがすべて RZ28M である場合は除きます。
注意
Fibre Channel ストレージセットを使用している場合は,コンソール・コマンド
wwidmgr -show wwid
を使用することで,ユーザ定義 ID (UDID) とそれに対応するワールドワイド ID (WWID) をリストにして表示させることができます。
dsk
名,DK
名,および WWID を表 A-3
の「メンバ属性」の表に記入しておいてください。
3.8 LAN インターコネクトを使用する際のネットワーク・アダプタのデバイス名の取得
clu_create
コマンドまたは
clu_add_member
コマンドを実行する前に,構成するメンバに存在する適切なイーサネット・ネットワーク・アダプタの名前を調べます。以下の条件に合えば,アダプタとして適切です。
インストールされていること
構成されていないこと
100 Mb/秒または 1000 Mb/秒の全二重オペレーション用のスイッチ・ポートおよび他のメンバの LAN インターコネクト・ネットワーク・アダプタと互換性があるように設定されていること
クラスタ・インストール・コマンドでは,物理的なイーサネット・ネットワーク・アダプタの名前または NetRain 仮想インタフェースの名前のいずれかを使用できます。
警告
クラスタ・インストール・コマンドは,LAN インターコネクトに対して自動的に NetRAIN 仮想インタフェースを構成します。したがって,
clu_create
スクリプトを実行する前に手動で NetRAIN デバイスを作成しないでください。手動で作成した場合の結果については,『クラスタ管理ガイド』を参照してください。
候補となるネットワーク・アダプタのデバイス名を調べる場合は,クラスタの最初のメンバになるシステムで,ifconfig -a
コマンドを実行します。また,速度と転送モードを調べる場合は,hwmgr -get attr -cat network
コマンドを使用します。
クラスタに追加するシステムのデバイス名を調べる場合は,まずシステムを『Tru64 UNIX Operating System Volume 1』 CD-ROM からブートしてください。ブート中に,イーサネット・アダプタの UNIX デバイス名がスクロールされながらコンソール画面に表示されます。システムのブート後の UNIX シェルで,ifconfig -a
コマンドでネットワーク・アダプタのデバイス名を表示させたり,hwmgr -get attr -cat network
コマンドでそれらのプロパティを表示させたりすることができます。