オペレーティング・システムの機能の概要 (1.1 節)
工場でオペレーティング・システムがプリインストールされている場合の操作 (1.2 節)
実行するインストレーションのタイプを決定する際のガイドライン (1.3 節)
クラスタ・システムのインストレーション手順の概要 (1.4 節)
2 種類のソフトウェア配布メディア,すなわち CD-ROM とリモート・インストレーション・サービス (RIS) サーバについて (1.5 節)
2 種類のインストレーション・ユーザ・インタフェース,すなわちグラフィカル・ユーザ・インタフェースとテキスト・ベース・ユーザ・インタフェースについて (1.6 節)
本書で必要な情報を見つける方法 (1.7 節)
Tru64 UNIX は,マルチユーザ,マルチタスク,64 ビットの高度なカーネル・アーキテクチャを採用しています。 このアーキテクチャは,BSD (Berkeley Software Distribution) バージョン 4.3,4.4,UNIX System Laboratories System V Release 4.0,その他のソフトウェア・ソース,およびパブリック・ドメインのソフトウェアから構成された,カーネギー・メロン大学の Mach バージョン 2.5 カーネル設計をベースにしています。 このオペレーティング・システムは,The Open Group の OSF/1 R1.0,R1.1,および R1.2 と,Motif グラフィカル・ユーザ・インタフェースおよびプログラミング環境を,Hewlett-Packard Company が実装したものです。
高度な管理ソリューションがオペレーティング・システムに組み込まれているため,新しいソフトウェアのインストールから,システムを動的にチューニングして最大の可用性を得るための性能モニタリングまで,各レベルでの生産性や能率が向上します。 本バージョンのオペレーティング・システムには,簡単なインストレーションや,システム構成,システム管理を可能にするユーティリティに加えて,高速で簡単な障害診断,Web ベース管理などの,より高度な管理機能も提供されています。
このオペレーティング・システムには,固定メモリ,仮想メモリ,バッファ・キャッシュの統合,NFS での書き込みキャッシュ,IP のマルチキャスト,パス MTU 検出,最適化 TCP/IP,およびシェアード・ライブラリの高速起動など,HP が開発または拡張した性能向上のためのさまざまな機能が含まれています。
このオペレーティング・システムは,ロード可能ドライバやその他のカーネル・サブシステムをサポートしており,他社製ディスクおよびグラフィック・カードのロード可能ブート・パスもサポートしています。 また,ディスクおよびテープの動的システム構成や動的システム再構成もサポートしています。
Tru64 UNIX では,デスクトップ・ユーザ・インタフェースとして共通デスクトップ環境 (CDE: Common Desktop Environment) をサポートしています。 CDE は,一般のエンド・ユーザやシステム管理者の作業に役立つ,統一されたグラフィカル・ユーザ・インタフェースを提供し,多くのプラットフォーム間で互換性があります。 CDE のサポートにより,オペレーティング・システムの操作をパーソナル・コンピュータと同じように簡単に行うことができます。
Tru64 UNIX では,リアルタイム・サポートやシンメトリック・マルチプロセシング (SMP),データレス・サーバおよびデータレス・クライアントを利用できます。 また,シェアード・ライブラリやスレッド,メモリ・マップ・ファイルを利用したアプリケーションを開発するアプリケーション・プログラマのために,さまざまな機能を提供しています。
Tru64 UNIX は,他の標準や業界仕様 (The Open Group,POSIX,FIPS,および System V Interface Definition (SVID) による主要な標準を含む) に準拠しています。
このオペレーティング・システムは,SVID をサポートすることで System V アプリケーションをサポートしています。
このオペレーティング・システムは,Berkeley 4.3 プログラミング・インタフェースと互換性があります。
1.2 オペレーティング・システムがプリインストールされている場合の操作
新しいシステムの場合,工場から出荷される前にオペレーティング・システムがプリインストールされていることがあります。 このようなシステムを FIS (factory installed systems) といいます。 通常,FIS システムには,すべてのベース・オペレーティング・システム・サブセットと,いくつかの関連製品がインストールされています。
出荷されるハードウェアには,『Factory Installed Software Information Sheet』が同梱されています。 この書類には,プリインストールされているソフトウェアと,ファイル・システム・レイアウトに使用されているディスクおよびディスク・パーティションについて記載されています。
システムとモニタの電源を初めて入れたときに,FIS Startup Procedure (スタートアップ処理) が開始されます。 この際,次の 2 つの選択肢の中から,その後の処理方法を選択できます。
プリインストールされているソフトウェアとファイル・システム・レイアウトを使用しない場合は,FIS Startup Procedure をキャンセルし,フル・インストレーションを実行します。 このようにすると,独自のソフトウェアおよびファイル・システム・レイアウトを選択できます。 フル・インストレーション処理については,第 4 章 および 第 6 章 を参照してください。
プリインストールされているソフトウェアとファイル・システム・レイアウトをそのまま使用する場合は,次の情報を入力するよう求められます。
システム固有の情報を入力してカーネル構築処理が完了したら,第 7 章で,プリンタ,メール,およびネットワーク・サービスが利用できる一般運用のためのシステムの設定方法を参照してください。
オペレーティング・システムをインストールする方法には,次の 3 つのタイプがあります。
アップデート・インストレーション
Version 5.1 または Version 5.1A を実行しているシステムのオペレーティング・システムを,Version 5.1B にアップデートします。 アップデート・インストレーションでは,ディスク・パーティション,ファイル・システム,ファイルのカスタマイズ,ネットワーク環境,プリント環境,ユーザ・アカウント,ユーザが作成したファイル,およびシステムに対するその他の設定が保持されます。
フル・インストレーション
新しいオペレーティング・システム (現在は Version 5.1B) を新規にインストールします。 フル・インストレーションでは,ファイル・システムとスワップ領域が新たに作成され,既存のシステムおよび,ファイル・システムやスワップ領域がインストールされるディスク・パーティション上のユーザ作成ファイルは上書きされます。 インストール後,使用を開始する前にシステムを構成する必要があります。
クローン・インストレーション
これは,フル・インストレーションに対する一種の拡張機能です。 このインストレーション・タイプを使用すると,Version 5.1B がインストールされているモデル・システムから,同様のハードウェア構成を持つ 1 つ以上のシステムに,フル・インストレーションを複製することができます。 クローン・インストレーションは,同じタイプのシステムがたくさんある環境でインストールを行う場合に便利です。 クローン・インストレーションを使用すると,同じ構成のシステムがインストールされるので,各システムにフル・インストレーションの作業を行うのに比べ手間が省けます。 クローン・インストレーションの手順については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
インストレーション・タイプ間の相違点
アップデート・インストレーションとフル・インストレーションの主な違いは,アップデート・インストレーションでは,既存のシステム構成を変更しないか,変更する場合も変更内容を最小限に抑えて,システムを新しいバージョンにアップデートできるという点です。
一方,フル・インストレーションを実行すると,既存の構成データ,レイヤード・プロダクト,および他社のソフトウェアはすべて失われます。
また,ユーザ・データが UNIX の標準のファイル・システム上 (たとえば,/usr/users
) に存在する場合,フル・インストレーション完了後に復元できるように,そのデータをバックアップしておく必要があります。
表 1-1
の状況分析をガイドラインとして利用して,どのタイプのインストレーションを行うかを決定してください。
表 1-1
に,インストレーション状況の一覧と,どのタイプのインストレーションを実行するのが適切かを示します。
表 1-1: 状況の分析 - 最適なインストレーション・タイプ
状況 | 最適なインストレーション・タイプ | 参照先 |
現在 Version 5.1 または Version 5.1A を実行しているシステムに Version 5.1B をインストールする (ディスク・パーティション,ファイル・システム・レイアウト,システム構成は保持する)。 | アップデート・インストレーション | 第 2 章 |
現在 Version 5.1 または Version 5.1A 以外を実行しているシステムに Version 5.1B をインストールする (ディスク・パーティション,ファイル・システム・レイアウト,システム構成は保持する)。 | Version 5.1B になるまでアップデート・インストレーションを繰り返す | 第 2 章 |
現在 Version 5.1 または Version 5.1A を実行しているシステムに Version 5.1B をインストールする (ディスク・パーティション・サイズ,ファイル・システム・レイアウト,ファイル・システム・タイプを変更する。あるいは,ソフトウェアやハードウェアを追加する必要がある)。 | フル・インストレーション | 第 4 章 |
新しいハードウェアに Version 5.1B をインストールする。 | フル・インストレーション | 第 4 章 |
類似した構成の複数のシステムに Version 5.1B をインストールする必要がある。 | 1 つのシステムにフル・インストレーションを行ってから,残りのターゲット・システムに対してクローン・インストレーションを行う | 『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照。 その後,本書の第 5 章を参照 |
クラスタ環境でインストールを行う。 | 1 つのメンバに対してフル・インストレーションを行う | 1.4 節 |
インストレーション特性を,1 つのシステムから他の類似システムに複製する。 | クローン・インストレーション | 『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照。 その後,本書の第 5 章を参照 |
スクリプトや実行可能プログラムを実行して,インストレーションをカスタマイズする必要がある。 | すべて [脚注 1] | 『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照。 その後,本書の第 5 章を参照 |
Version 5.1B がインストールされているシステムに,ソフトウェア・サブセットを追加インストールする必要がある。 | setld
コマンド |
第 9 章 |
ネットワーク経由で Version 5.1B を配布するリモート・インストレーション・サーバ (RIS) をセットアップする。 | すべて [脚注 1] | 『Sharing Software on a Local Area Network』 |
配布メディアとして,CD-ROM ではなくネットワークを使用する。 | すべて [脚注 1] | ネットワーク経由でのブートについては,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照。 その後の手順については,本書の第 5 章を参照。 |
クラスタ環境でインストレーションおよび構成を行うには,クラスタ・メンバ・システムのいずれか 1 台にオペレーティング・システムのフル・インストレーションを実行します。 その他のクラスタ・メンバへの,Tru64 UNIX オペレーティング・システムのインストレーションを行う必要はありません。
クラスタをインストールするには,次の一般的な手順に従います。
まず,TruCluster Server 『クラスタ・インストレーション・ガイド』 マニュアルを読みます。 このマニュアルには,クラスタのインストレーションに必要な背景情報が記載されているためです。 本書,『インストレーション・ガイド』 は,単独のシステムへのインストレーションについて説明しています。
TruCluster Server のドキュメント・セットは,次の Web サイトで入手できます。
http://h50146.www5.hp.com/products/software/oe/tru64unix/manual/
TruCluster Server 『クラスタ・ハードウェア構成ガイド』 マニュアルの情報に沿って,ストレージのハードウェアおよびファームウェアを構成します。
本書の第 5 章 および 第 6 章 に記載しているフル・インストレーション手順の説明に従って,最初のクラスタ・メンバとなるシステムのプライベート・ディスクまたは共用ディスクにオペレーティング・システムをインストールします。 ファイル・システムのタイプには AdvFS を選択してください。 Logical Storage Manager (LSM) ボリュームへのインストールは選択しないでください。
第 7 章 および TruCluster Server 『クラスタ・インストレーション・ガイド』 の説明に従って,ネットワーク・サービスとタイム・サービスを構成します。 クラスタで使用するアプリケーションをロードして構成します。
TruCluster Server 『クラスタ・インストレーション・ガイド』 マニュアルの説明に従ってライセンスをロードし,TruCluster Server ソフトウェア・サブセットをインストールし,クラスタに固有の構成コマンドを実行してクラスタを作成します。
1.5 インストレーション・メディア: CD-ROM またはネットワーク・サーバ
オペレーティング・システムのインストレーションに使用できる配布メディアには,次の 2 種類があります。
Version 5.1B 「Operating System, Volume 1」 CD-ROM
この CD-ROM には,付録 Cで説明しているオペレーティング・システムのソフトウェア・サブセットが収められています。 CD-ROM は最も一般的に使用されるインストレーション・メディアなので,本書のブート手順の説明も CD-ROM を対象としています。
Version 5.1B のオペレーティング・システムを配布するリモート・インストレーション・サービス (RIS) サーバ
インストレーション手順は本書に記載されていますが,ネットワーク・ブート・コマンドについては『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』に記載されています。
どちらの配布メディアを使用してインストールするかは,次の点によって決まります。
Version 5.1B オペレーティング・システムの CD-ROM を所有しており,システムに CD-ROM ドライブが装備されている場合は,CD-ROM からのインストレーションを実行することができます。
自分のサイトに Version 5.1B のオペレーティング・システムを配布できる RIS サーバがある場合は,RIS サーバ管理者に依頼して,ユーザ・システムを RIS サーバのクライアントとして登録してください。
自分自身が RIS サーバ管理者で,ネットワーク経由でのインストレーションを使用可能にしたい場合は,『Sharing Software on a Local Area Network』に記載されている手順に従って RIS サーバのセットアップとクライアント・システムの登録を行ってください。
1.6 ユーザ・インタフェース: GUI またはテキスト・ベース
フル・インストレーションおよびアップデート・インストレーションでは,グラフィカル・ユーザ・インタフェースとテキスト・ベース・メニュー選択方式の 2 種類のユーザ・インタフェースを提供しています。 グラフィカル・ユーザ・インタフェースの表示言語は,日本語,アメリカ英語,中国語のいずれかを選択できます (本リリースでは,アップデート・インストレーションの日本語および中国語 GUI はサポートしていません)。
フル・インストレーションまたはアップデート・インストレーション時に使用されるユーザ・インタフェースのタイプは,ハードウェア構成に基づいて決まります。 グラフィカル・コンソールのあるシステムでは,インストレーションにはグラフィカル・インタフェースが使用されます。 コンソールがグラフィックス機能を備えていないシステムでは,テキスト・ベース・インタフェースが使用されます。
どちらのインタフェースもタスク指向の設計になっており,作業内容に従って実行すべきメニューがユーザに対して表示されます。 また,必要に応じて前に戻って入力した内容を変更できるようになっています。
どちらのインストレーション・インタフェースにも,オンライン・ヘルプ・システムが用意されています。
グラフィカル・インタフェースのオンライン・ヘルプは
CDE
オンライン・ヘルプ・システムをベースにしており,高度な判断に役立つ情報が提供されます。
テキスト・ベース・インタフェースのオンライン・ヘルプは,任意のプロンプトから
help
という単語を入力することで利用できます。
1.7 本書の使用方法
実行するインストレーションのタイプを決めたら,以下のような順序で必要な情報を参照してください。
表 1-2: インストレーション・タイプ別の参照箇所
インストレーション・タイプ | お勧めする参照箇所 |
アップデート・インストレーション | |
フル・インストレーション | |
クローン・インストレーション | 『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』の「インストレーションのクローニング」の章 と,本書の第 6 章 必要に応じて次の章も参照してください: 付録 F |