7    構成のクローニング

この章では,次の項目について説明します。

7.1    概要

新しくインストールしたシステムを業務に使用し,他のシステムおよびユーザと通信できるようにするには,ネットワーク・サービス,ネーム・サービス,プリンタ,インターネット・サービス,電子メールの配信を構成する必要があります。 新しくインストールしたシステムでは,システム構成作業はクイック・セットアップ・アプリケーション,カスタム・セットアップ・チェックリスト,SysMan Menu のいずれかを用いて行います。 構成のクローニングが使用できるようになる前は,各システムで個別に構成作業を実行する必要がありました。

構成のクローニングを使用すると,すでに構成されたシステムから 1 つまたは複数のターゲット・システムに構成を複製できるため,個別の構成作業を実行しなくてすみます。

構成のクローニングは,ハードウェアや機能が類似したシステムに対して使用することをお勧めします。 構成のクローニングは,クラスやタイプが同じマシンのクローニングに適しています。 クローニングに適した状況であるかどうかの判断基準は,システムが同じタイプで,同じタイプのネットワーク・アダプタを同じ数だけ備えているかどうかです。 各システムを個別に構成する代わりに,1 つのシステムを構成し,クラスまたはタイプが同じ他のシステムにその構成を複製します。

また,現在の構成が壊れた場合や,以前の構成に戻したい場合など,システムの構成を復元するときにも,構成のクローニングが利用できます。

他のシステムのインストレーションおよび構成を完全に自動化するために,構成のクローニングをインストレーションのクローニングと併用して,ターゲット・システム自身でこれらの作業を実行しなくてもすむようにすることもできます。 インストレーションのクローニングには,システムをインストールしたときに自動的に作成される,別のファイル install.cdf が必要です。 インストレーションのクローニングについての詳細は,第 6 章 を参照してください。

7.2    実行方法

モデル・システムとして使用するシステムの構成が完了したら,sysman -clone -save コマンドを使用して,システム構成データのスナップショットを構成記述ファイル (CDF) に保存します。 特に指定しなければ,このファイルは config.cdf という名前で /var/adm/smlogs ディレクトリに保存されます。 config.cdf ファイルに保存された情報は,類似したシステムに同じ構成を複製するために使用されます。 config.cdf ファイルを編集して任意の値 (チェックサム以外) を変更することができますが,ホスト固有の属性 (ホスト名や IP アドレス) の中には,複製したシステムがネットワーク上で一意に認識されるようにするために必ず編集しなければならないものもあります。

config.cdf ファイルは,フル・インストレーション処理の際に自動的に他のシステムに適用することも,複製するシステムをインストールしてから構成するまでの間に手動で適用することもできます。 以下のリストにオプションを要約します。

注意

構成のクローニングは,インストレーション時にのみ有効というわけではありません。 すでに稼働しているシステムに構成を適用する方法を,7.11.2 項 で説明しています。

詳細については,フル・インストレーション中にどのユーザ提供ファイルと CDF を呼び出すかについて示した,第 5 章図 5-2 を参照してください。

7.3    構成 CDF のフォーマットと内容

config.cdf は,各構成コンポーネントの情報から構成されています。 各コンポーネントには,いくつかのグループがあり,その中の 1 つ以上の属性と値のペアで構成データが定義されます。 属性とそれに対応する値は,等号 ( = ) で区切られています。

表 7-2 に,config.cdf ファイルのコンポーネントを示します。

表 7-2:  config.cdf ファイルのコンポーネント

コンポーネント名 説明
bindconfig

ドメイン・ネーム・サービス (DNS) の構成データが含まれています。 DNS クライアントのクローニングのみがサポートされます。 DNS サーバは複製できません。

internetServices

インターネットへの接続を管理するプロセスの開始と停止を行います。

mail

メール・サーバの構成に関する情報が含まれています。 メール・クライアントのクローニングのみがサポートされます。

networkAdapters

構成されているネットワーク・アダプタのタイプを定義します。

networkServices

システムがクラスタのメンバかどうかを指定します。

networkedSystems

主に /etc/hosts データベースのホストを定義します。

networks

DARPA を含む既知のネットワークに関する情報からなる /etc/networks ファイルのデータを定義します。

nfs_export

システムがネットワークを介してローカル・ファイル・システムをエクスポートするように構成されているかどうかを定義します。

nfsconfig

NFS (Networked File Systems) のクライアントおよびサーバの設定を定義します。

nisconfig

NIS (Network Information Services) の構成情報が含まれます。

ntpconfig

NTP (Network Time Protocol) のサーバ情報が含まれます。

printcap

/etc/printcap ファイルの情報と類似した,定義済みプリンタに関する情報が含まれます。

remoteWhoServices

rwhod デーモン (rwho および ruptime デーモンが使用するデータベースを保守するサーバ) を管理します。

routing

ルーティングの構成を定義します。

7.3.1    構成 CDF の例

例 7-1に,config.cdf ファイルの bindconfig コンポーネントを示します。 シャープ記号 ( # ) で始まる行はコメント行です。 config.cdf ファイルのコンポーネントの最後にある情報は Group: componentid です。 ここには,検証のためにクローニング・プロセスが必要とする内部情報が含まれています。

注意

紙面の都合上,例には config.cdf ファイルの一部しか記載していません。 config.cdf ファイルの全体を参照するには,構成済みのシステムで sysman -clone -save コマンドを用いて,構成情報を省略時の位置 /var/adm/smlogs/config.cdf に保存し,次にテキスト・エディタなどの使い慣れたツールでファイルを表示してください。

例 7-1:  config.cdf ファイルの一部

CHECKSUM=56823
 
#
# CDF Created: Fri Aug 23 11:34:30 EST 2002
#
#
# Component: bindconfig
#
#
# Group: bind
#
/bindconfig/bind:
        configured=YES
        bindtype=CLIENT
#
# Group: resolver
#
/bindconfig/resolver:
        change_hostname=NO
        domain=mydomain.com
        precedence=first
#
# Group: ns
#
/bindconfig/ns:
        cdf_record=00000001
        ipaddress=16.29.221.1
        hostname=libra.mydomain.com
#
# Group: search
#
/bindconfig/search:
#
# Group: componentid
#
/bindconfig/componentid:
        manufacturer=Hewlett-Packard Company
        product=Domain Name Service Configuration
        version=DNS-1.1.4.17
        serialnumber=1.1.4.17
        installation=19990203184929.000000-300
        verify=7
#
# CDF Created: Fri Aug 23 11:34:47 EST 2002
#
 

7.4    構成のクローニングに関する制限事項

他のシステムへ複製するために,config.cdf ファイルを生成したり選択する際には,以下の制限に従うことをお勧めします。

7.5    構成のクローニング手順の要約

以下のリストは,モデル・システムから 1 つまたは複数のターゲット・システムに構成を複製する際に必要な手順を要約したものです。

  1. sysman -clone -save コマンドを使用して,構成済みのモデル・システムから config.cdf ファイルにシステム構成情報を保存します (7.6 節)。

  2. config.cdf ファイルを変更して,ホスト固有属性を設定し,必要な場合はサイト固有属性も設定します (7.7 節)。

  3. CDFを使って構成のクローニングを行う前に,CDF を検証します (7.8 節)。

  4. フル・インストレーション時に複数システムの構成のクローニングをセットアップするには,オプションの postload スクリプトを作成し,ホスト固有情報を動的に設定します (7.9 節)。

  5. ターゲット・システムへの適用方法または配布メディアの要件に応じて,config.cdf ファイルを正しい位置にコピーします (7.10 節)。

  6. フル・インストレーション・プロセスまたは sysman -clone -apply コマンドを使用して,ターゲット・システムに config.cdf ファイルを適用します (7.11 節)。

7.6    [ステップ 1]: 構成情報を構成 CDF に保存する

インストレーションのクローニングでは install.cdf ファイルは自動的に作成されますが,構成のクローニングでは,意識的に構成データを config.cdf ファイルに保存する必要があります。 この処理が自動化されていない理由は,人が介在しなければ,いつシステム構成が完了したか分からないためです。 構成データは,システムがインストールされた後ならいつでも,何度でも CDF ファイルに保存できます。 構成データを保存する場合,値が設定されていない属性は config.cdf ファイル内に定義されません。

1 つの config.cdf ファイルを使用して多数のシステムに構成を複製する場合は,1 つのシステムに対してインストレーションと構成を行ってモデル・システムとして使用します。 このようにすると,ホスト固有属性以外は,CDF に必要な編集はほとんどなくなります。

必要な構成を行ったシステム上で,次のようにフラグを指定した sysman コマンドを用いて,構成データを CDF に保存します。

sysman -clone -save [filename]

このコマンドでは,別のパスおよびファイル名を指定しない限り,現在のシステム構成が /var/adm/smlogs/config.cdf ファイルに保存されます。 フル・インストレーション処理の際にシステム構成を複製する場合,インストレーション・プロセスは config.cdf という名前のファイルを検索することに注意してください。 他の名前の構成 CDF は認識されません。

また,sysman -clone -save コマンドは,CDF を有効な状態で作成します。 CDF が有効かどうかは,config.cdf ファイルの先頭にあるチェックサムによって確認されます。 CDF をターゲット・システムの複製に適用する際,不正な変更によってシステムが使用できない状態になるのを防ぐために,チェックサムによって config.cdf ファイルの正当性が判断されます。 このチェックサムは変更しないでください。

構成されているコンポーネントをすべてリストするには,次のようにsysman コマンドを使用します。

sysman -clone -list

7.7    [ステップ 2]: 構成 CDF 内のホストおよびサイトに固有の属性を変更する

config.cdf ファイルには,ホストおよびサイトに固有の属性が含まれています。 この属性は,各クローン・システムがネットワーク上で一意に識別されるようにするために,編集が必要です。 /var/adm/smlogs ディレクトリにあるオリジナルの config.cdf ファイルは変更しないでください。 代わりに,このファイルをコピーして,コピーの方を変更してください。 オリジナルの CDF にはモデル・システムの構成に関する情報が含まれており,これが将来のトラブルシューティングやオリジナルの構成の復元に役立つことがあるので,オリジナルの CDF は /var/adm/smlogs ディレクトリに残しておいてください。 変更した config.cdf ファイルは,変更の記録としてバックアップを保存してください。

注意

ファイルの先頭にはチェックサムがあり,チェックのために使用されます。 この番号は変更しないでください。 変更すると,クローニング・プロセスが CDF の正当性を確認できなくなり,その後他のシステムのクローニングに使用できなくなる恐れがあるためです。

このファイルを編集する場合は,意味がわからない属性や値は変更しないでください。 ホストまたはサイトに固有の情報があり,それがターゲット・システムと互換性のないことがわかっている場合 (たとえばモデル・システムのホスト名など) は,変更を加えてください。 この章で説明している属性と値だけを変更することをお勧めします。

表 7-3には,クローン・システムがネットワーク上で一意に識別されるようにするために,構成を適用する前に変更する必要のある,ホスト固有の情報をリストしています。 複製されるシステムのハードウェアまたはプロセッサのタイプが,config.cdf ファイルが生成されたシステムと正確に一致しない場合には,3 番目の属性を考慮してください。

表 7-3:  config.cdf ファイル内のホスト固有の属性

ホスト固有の属性 説明
systemName= ネットワーク上で認識されるシステム名を設定します。 システムにはそれぞれ一意の名前を付けなければならないので,この属性は変更が必要です。 この属性は interface グループの networkAdapters コンポーネントにあり,他にどのようなコンポーネントが構成されているかに応じて,名前が他の属性にも指定されることがあります。 システム名は必ず検索してすべて変更するようにしてください。
networkAddress= ネットワーク上での認識に利用されるクライアント・システムに対する一意のインターネット・プロトコル (IP) アドレスを設定します。 この属性は interface グループの networkAdapters コンポーネントおよび hostMappings グループの networkedSystems コンポーネントにあります。
devName=type= システムに実装されているネットワーク・アダプタを定義します。 この値は,複製されるシステム上のネットワーク・アダプタが config.cdf ファイル内に定義されているものと異なっている場合のみ変更します。 この属性に対して有効な値には,Tulip デバイスの tu0,Lance デバイスの ln0,FDDI デバイスの fddi0,および ee0 があります。 システムがまだオペレーティング・システムを実行していない場合に,複製されるシステムで使用できるネットワーク・アダプタを調べるには,コンソール・モードのプロンプト (>>>) で show dev および show config コマンドを実行します。 複製されるシステムでオペレーティング・システムが実行されている場合は,rcmgr mget | grep NET コマンドを使用して,ネットワーク・アダプタ・デバイス (NETDEV_0) を調べます。

7.7.1 項 では,変更が必要なサイト固有の属性について説明します。 7.7.2 項 では,複数のレコードを持つコンポーネント・グループを変更するための CDFMODE 属性の使い方について説明します。

7.7.1    [オプション]: 構成 CDF 内のサイト固有情報を変更する

config.cdf ファイルには多くのネットワーク関連の属性が含まれています。 この属性は,複製するシステムごとに要件が異なる場合に,編集が必要になります。 たとえば,特殊なネットワーク構成が必要な特定の部署またはサイトのシステムをすべて複製することがあります。 このような場合,変更の検討が必要になる属性は,DNS サーバ,ネットマスク,ドメイン名,ネットワーク・ルーティングのタイプ,ネットワーク・タイム・プロトコル (NTP) のサーバ名,省略時のプリンタ,プリンタおよびメール・クライアント構成などです。

7.7.2    複数のレコードを持つコンポーネント・グループに対して CDFMODE 属性を使用する

CDFMODE 属性は,複数のレコードを持つコンポーネント・グループのみに適用されます。 CDFMODE は,CDF 全体のコンポーネント・グループ内にあるすべての cdf_record ラベルに適用されるグローバルな属性です。 複数のレコードを含むコンポーネント・グループの例には,networkedSystems コンポーネント内の hostMappings グループがあります。 このグループは,/etc/hosts ファイル内のデータを表します。

構成 CDF では複数レコード・グループ内の各レコードを cdf_record= というラベルで開始し,グループ内に複数のレコードがあることを示します。 例 7-2 は,複数のレコードがあるホスト・グループの例です。

例 7-2:  複数のレコードがあるコンポーネント・グループの例

# Component: networkedSystems
#
# Group: hostEquivalencies
#
/networkedSystems/hostEquivalencies:
#
# Group: hostMappings
#
/networkedSystems/hostMappings:
        cdf_record=00000001
        networkAddress=127.0.0.1
        systemName=localhost
        cdf_record=00000002
        aliases=aries
        networkAddress=16.29.221.1
        systemName=aries.mydomain.com
        cdf_record=00000003
        networkAddress=16.29.221.15
        systemName=pluto
        cdf_record=00000004
        aliases=virgo
        networkAddress=16.29.221.27
        systemName=virgo.mydomain.com
#
#

表 7-4 に,CDFMODE 属性の有効な値を示します。

表 7-4:  CDFMODE 属性の値

説明
MERGE コンポーネント/グループのデータを,ターゲット・システム上の既存のデータとマージします。 重複するデータは無視されます。 CDFMODE が指定されていない場合,これが構成 CDF 全体に対する省略時の動作になります。
APPEND コンポーネントおよびグループのデータを,ターゲット・システム上の既存の構成データに追加します。 重複するデータは無視されません。
REPLACE ターゲット・システム上のコンポーネントおよびグループのデータを,構成 CDF 内のデータで置き換えます。 ターゲット・システムには存在するが CDF には存在しないデータは削除されます。 構成 CDF には存在するがターゲット・システムには存在しないデータは適用されます。 CDF とターゲット・システムの両方に存在するデータは,適切に変更されます。

CDFMODE 属性は,config.cdf ファイル内のコンポーネントの外にも置くことができます。

注意

例 7-3 に示すように,CDFMODE= 属性は行の最初のカラムから始まっていなければなりません。 スペースやタブを挿入してインデントしないでください。

CDFMODE の値は,別の CDFMODE= 文に到達するまで有効です。 例 7-3に,CDFMODE 属性の使い方を示します。 この例では,CDFMODE=REPLACE が見つかるまでは,省略時の MERGE モードが有効です。 この指定により,/etc/hosts ファイル全体が CDF の内容で置き換えられます。 その後,CDFMODE=MERGE (省略時のモード) に到達し,残りの属性は複製されるシステムにマージされます。

例 7-3:  CDF への CDFMODE 属性の挿入

CDFMODE=REPLACE
#
# Component: networkedSystems
#
# Group: hostEquivalencies
#
/networkedSystems/hostEquivalencies:
#
# Group: hostMappings
#
/networkedSystems/hostMappings:
        cdf_record=00000001
        networkAddress=127.0.0.1
        systemName=localhost
        cdf_record=00000002
        aliases=host1
        networkAddress=16.29.221.2
        systemName=host1.mydomain.com
        cdf_record=00000003
        networkAddress=16.29.221.16
        systemName=host2
        cdf_record=00000004
        aliases=host3
        networkAddress=16.29.221.28
        systemName=host3.mydomain.com
#
CDFMODE=MERGE

7.8    [ステップ 3]: 変更した CDF の検証

config.cdf ファイルを変更したら,次のコマンドで内容を検証してください。

sysman -clone -validate [filename]

ファイル名を省略すると,ファイル名は /var/adm/smlogs/config.cdf と見なされます。 このコマンドは,ファイルの先頭にあるチェックサムを用いて,変更によってファイルが他のシステムの複製に使用できなくなっていないか調べます。 検証処理では,エラーが発生したコンポーネント・グループの切り分けが行われ,メッセージが表示されます。 検証エラーが発生した場合は,未変更のオリジナルの config.cdf を使ってやり直してください。

7.9    [ステップ 4]: フル・インストレーションの際に複数のシステムを複製するスクリプトを作成する (オプション)

フル・インストレーションの際に config.cdf ファイルを用いて多数のシステムを一度に複製するには,ホスト固有の値に変数を設定した config.cdf ファイルを代表で 1 つ作成してください。 システムに適用する前に変数に値を手動で入力するか,スクリプトを作成してフル・インストレーションの際に呼び出し,config.cdf ファイルがターゲット・システムに適用される前にそのファイル内の変数を動的に変更するようにします。

フル・インストレーション・プロセスは,フル・インストレーションの途中で,config.cdf ファイルが置かれている場所で特定のスクリプトを検索します。 インストレーション・プロセスが適切なディレクトリ位置で postload という名前のスクリプトを見つけると,ソフトウェア・サブセットがロードされてからカーネルの構築が行われるまでの間に postload スクリプトが実行されます。 これは,config.cdf ファイルが適用されるフェーズでもあります。 付録 B にはこのような postload スクリプトの例を記載し,ホスト固有の値に対する変数の作り方を示します。 postload ファイルと config.cdf ファイルは同じ場所になければなりません。

7.10.3 項では,インストレーション・プロセスが postload ファイルと config.cdf ファイルを検索する 4 つの場所を説明します。

7.10    [ステップ 5]: 構成 CDF を正しい位置にコピーする

config.cdf ファイルの位置は,フル・インストレーションでシステム構成を複製する場合と,すでにインストールしてまだ構成していないシステムの構成を複製する場合で異なります。

7.10.1    構成 CDF をディスケットにコピーする

以下の手順で,config.cdf ファイルをディスケットにコピーします。

  1. ディスケットをフォーマットし,新しいディスク・ラベルを書き込み,新しいファイル・システムを作成します。

    # fddisk -fmt /dev/rdisk/floppy0a
    # disklabel -wr floppy0 rx23
    # newfs /dev/rdisk/floppy0c
    

  2. マウント・ポイント /mnt にディスケットをマウントします。

    # mount /dev/disk/floppy0 /mnt
    

  3. 構成データを config.cdf という名前でディスケットに保存します。

    # sysman -clone -save /mnt/config.cdf
    

config.cdf ファイルをディスケットにコピーしたら,複製するシステムのディスケット・ドライブにディスケットを挿入してマウントします。 config.cdf ファイルを手動で適用してシステムを自動的に構成する方法については,7.11.2 項を参照してください。

7.10.2    構成 CDF をネットワークに接続されていないシステムにコピーする

構成を複製するシステムがインストールされていてまだ構成されておらずディスケット・ドライブがない場合,一時的にネットワークに接続する以外に,config.cdf ファイルをコピーする方法はありません。 以下の手順で一時的なネットワークをセットアップし,次にファイル転送プロトコル (FTP) を用いて,複製するシステムに config.cdf ファイルをコピーします。 CDF をコピーする元のシステムの IP (Internet Protocol) アドレスを知っている必要があります。

すでにインストールされていてまだ構成されていないシステムで,次の手順を実行します。 両方のマシンで root の権限を持っているものとします。

  1. クローニングを行うシステムで,次のコマンドを実行してネットワーク・アダプタと IP アドレスを調べます。

    # ifconfig -a
    

    マシンの IP アドレスを含む行を探して,どのネットワーク・インタフェースを構成すればよいか調べます。

  2. 一時的にネットワーク・アダプタをネットワークに接続します。

    # ifconfig adapter_name IP_address
    

  3. セットアップしたネットワーク接続をチェックして,システムが CDF の置かれているモデル・システムを認識することを確認します。

    # /usr/sbin/ping -c2 model_system_name
    

  4. config.cdf ファイルの省略時の位置である次のディレクトリに移動します。

    # cd /var/adm/smlogs
    

  5. ファイル転送プロトコル (FTP) を用いて,config.cdf ファイルが生成されたモデル・システムに接続します。 ドメイン・ネーム・サービス (DNS) は実行されていないので,モデル・システムのシステム名ではなく IP アドレスを指定してください。

    # ftp model_system_IP_address
    

  6. ユーザ root として FTP にログインし,root のパスワードを入力します。

  7. config.cdf ファイルのあるディレクトリに移動します。 この例では,ファイルは省略時の位置にあるものと仮定しています。

    ftp> cd /var/adm/smlogs
    

  8. config.cdf ファイルをコピー (get) して,クローニングを行うシステムに転送します。

    ftp> get config.cdf
    

  9. 接続をクローズして FTP を終了します。

    ftp> bye
    

これで,config.cdf ファイルは,クローニングを行うシステムの /var/adm/smlogs ディレクトリに置かれました。 7.11.2 項に進んで,config.cdf ファイルを手動で適用してシステムを構成する方法を参照してください。

7.10.3    構成 CDF を配布メディアにコピーする

フル・インストレーションの際に構成を複製するには,オリジナルのモデル・システムの config.cdf ファイルを 表 7-5 に示す 4 箇所のいずれかにコピーします。 クローニングを行うシステム上でフル・インストレーションを開始すると,インストレーション・プロセスはこの表に示した順番で config.cdf ファイルを検索します。

config.cdf ファイルはインストレーションのクローニングで使用されるユーザ提供ファイルおよび install.cdf ファイルと同じ場所に配置され検索されるので,コピー処理の実際のステップは,ここでは繰り返しません。 メディアの要件に基づいて,config.cdf ファイルをどこに移動するかを決定し,下記のテーブルの 3 番目の欄に示す項に進んで,ファイルをコピーする手順を参照してください。

表 7-5:  config.cdf ファイルを置く位置

検索順序 位置 コピー手順の参照先
1 ディスケット・ドライブ floppy0 または floppy1 のディスケット 5.8.1 項
2 RIS サーバ上の /var/adm/ris/clients/sets ディレクトリ内にある profile_set サブディレクトリ 5.8.2 項
3 クローンを作成するシステムの /var/tmp メモリ・ファイル・システム (MFS) 5.8.3 項
4 配布メディア (ローカル CD-ROM または展開された RIS 領域) の /isl ディレクトリ 5.8.4 項

config.cdf ファイルを正しい位置にコピーしたら,7.11.1 項 に進んで CDF をターゲット・システムに適用してください。

7.11    [ステップ 6]: 構成 CDF をターゲット・システムに適用する

config.cdf ファイルをターゲット・システムに適用する際,CDF に定義されていない属性はすべて,ターゲット・システムでは変更されないか未構成になります。

必要に応じて,config.cdf ファイルを次のようにシステムに適用します。

7.11.1    フル・インストレーションの際に構成 CDF を適用する

フル・インストレーション・プロセスが 7.10.3 項 に示した場所のいずれかで config.cdf ファイルを見つけると,ファイル・システムが作成され,ソフトウェアがロードされ,新しくインストールされたシステム・ディスクからシステムがリブートされた後に,CDF が適用されます。 新しくインストールされたシステムは CDF に定義されたとおりに正確に構成されます。

7.11.2    稼働中のシステムに構成 CDF を適用する

ディスケット・ドライブに挿入されマウントされたディスケットに config.cdf ファイルをコピーするか,またはクローニングを行うシステムの /var/adm/smlogs ディレクトリにコピーした後,次の構文で sysman コマンドを使用して構成をシステムに適用します。

sysman -clone -apply [filename]

フル・パスおよびファイル名を指定しない場合,sysman コマンドは省略時の位置およびファイル名 /var/adm/smlogs/config.cdf が指定されたものと見なします。 config.cdf ファイルを /var/adm/smlogs 以外に置くか,またはファイル名を config.cdf 以外にした場合は,コマンド行でパスと正確なファイル名を指定する必要があります。

7.11.3    構成 CDF を使用してシステム構成を復元する

壊れたシステム構成を復元したり,単に config.cdf ファイルに保存された以前の構成に戻したい場合は,正しい config.cdf ファイルが /var/adm/smlogs ディレクトリにあることを確認して,次のコマンドを実行してください。

sysman -clone -apply [filename]

構成 CDF が /var/adm/smlogs/config.cdf とは異なる位置に保存されている場合は,コマンド行でフル・パスを指定する必要があります。