4    高可用性アプリケーション

クラスタ上のアプリケーションは,次の 3 つの基本タイプに分類できます。

シングル・インスタンス・アプリケーション

シングル・インスタンス・アプリケーションは,ある時点では 1 つのクラスタ・メンバだけで動作します。このタイプのアプリケーションの可用性を高めるには,現在のクラスタ・メンバでアプリケーションが実行できなくなった場合に他のメンバでそのアプリケーションの実行を開始するというメカニズムがクラスタになければなりません。シングル・インスタンス・アプリケーション用の TruCluster Server 高可用性メカニズムは,CAA (Cluster Application Availability) サブシステムで実現しています。CAA についての詳細は,第 5 章 を参照してください。

クラスタ高可用性アプリケーション・ガイド』には,TruCluster Software バージョン 1.x シリーズの製品から TruCluster Server バージョン 5.1B にアプリケーションを移行するための詳しい説明があります。

マルチ・インスタンス・アプリケーション

マルチ・インスタンス・アプリケーションは,同時に複数のクラスタ・メンバで実行できます。マルチ・インスタンス・アプリケーションは,その定義上,高可用性アプリケーションです。これは,1 つのクラスタ・メンバに障害が発生しても,他のメンバで実行されているアプリケーションのインスタンスには影響しないためです。クラスタ別名を使ってクラスタがアプリケーションに透過的にアクセスする方法については,第 6 章を参照してください。

分散型アプリケーション

分散型アプリケーションは,クラスタ上で実行するように設計されたアプリケーションで,目的によって異なるメンバ上で動作します。これらのアプリケーションは,Memory Channel分散ロック・マネージャ (DLM),クラスタ別名のアプリケーション・プログラミング・インタフェース (API) を使用して,アプリケーションとクラスタ・リソースを統合します。

TruCluster Server を使用すると,分散型アプリケーションの構成要素を並列に実行し,可用性を高めると同時にクラスタ特有の同期メカニズムと性能の最適化という利点を得ることができます。

分散型アプリケーションの作成に使用できるサブシステムおよびインタフェースについての詳細は,第 6 章7.6 節第 8 章,および『クラスタ高可用性アプリケーション・ガイド』を参照してください。

注意

6.7 節in_single および in_multi サービス属性の説明があります。この属性によって,クラスタ別名サブシステムが,ある別名を通して到着するサービス関連パケットを,その別名に結びつけられているメンバの 1 つにすべて受けさせるか,または,その別名に対応するすべてのメンバに分散させるかが決まります。これらの用語はシングル・インスタンスとマルチ・インスタンスに似ていますが,in_singlein_multi 属性の方は,クラスタ別名サブシステムがサービス・ポートに到着する接続要求とパケットをどのように振り分けるかに影響します。これらの用語を一般用語 (シングル・インスタンスとマルチ・インスタンス) と混同しないでください。一般用語の方は,1 つのクラスタでインスタンスを何個動作させられるかを表す場合に使います。『クラスタ管理ガイド』 にあるクラスタ別名サブシステムを説明した章に,クラスタ別名サブシステムと CAA (Cluster Application Availability) サブシステムの違いが説明されています。