8    環境のカスタマイズ

新しいユーザ・インタフェースに移行する際には,常に変更を想定しなければなりません。CDE (Common Desktop Environment) は,環境をカスタマイズするためのツールと方法を提供します。これらのツールとメソッドは,DECwindows Motif 環境で使用されるツールとメソッドとは異なるものです。この章では,セッションをカスタマイズする方法について簡単に説明します。

この章では,次の事項について説明します。

8.1    スタートアップ環境のカスタマイズ

CDE では,よく使用するアプリケーションをフロント・パネルとサブパネルに追加できます。フロント・パネルとサブパネルへのアプリケーションの追加については,7.2.1 項を参照してください。スタートアップ時に自動的に開始するアプリケーションは,スタイル・マネージャの「起動」コントロールの使用時に設定したオプションによって決定されます。

スタイル・マネージャ の「起動」コントロールをクリックすると,ダイアログ・ボックスが表示されます。ログインする時に,現在のセッションを再開するか,ホーム・セッションに戻るか,または,ログアウト時に決定するかを,オプションで指定できます。

図 8-1:  「起動」コントロール

アプリケーションの追加およびログイン・セッションの設定についての説明は,『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』を参照してください。ディスプレイ固有のセッションの設定についての説明は,『Common Desktop Environment: 上級ユーザ及びシステム管理者ガイド』を参照してください。

8.2    セッション・マネージャの設定変更

CDE では,フェイルセーフ・セッション,またはコマンド行ログイン・セッションを起動しない限り,フロント・パネルは必ず表示されます。システムへのログイン後にフロント・パネルをアイコンに変えるには,ウィンドウまたはメニュー・コントロールを使用します。

ログアウト時の確認メッセージのオン/オフの切り替えには,スタイル・マネージャの「起動」コントロール を使用します。

DECwindows Motif で可能だったロック (一時停止) スクリーン・メッセージの変更はできません。

8.3    ウィンドウのパターンとカラーのカスタマイズ

この節では,次の操作を行う方法について説明します。

CDE を使用している場合には,これらのオプションの変更操作が異なります。以降の各項では,ウィンドウ・マネージャの変更方法,スクリーン・セーバとロック・バックグラウンドの指定方法,バックグラウンド・パターンの選択方法,およびカラーの変更方法について説明します。

8.3.1    ウィンドウ・マネージャの変更

CDE セッションを開始すると,省略時のウィンドウ・マネージャである /usr/dt/bin/dtwm が開始されます。DECwindows Motif 環境の場合とは違って,代替ウィンドウ・マネージャの指定は高度な機能です。CDE のウィンドウ・マネージャを変更するには,リソース・ファイルを編集します。詳細については,『Common Desktop Environment: 上級ユーザ及びシステム管理者ガイド』 を参照してください。

8.3.2    スクリーン・セーバおよびロック・スクリーン・バックグラウンドの指定

スクリーン・セーバを使用すれば,指定した経過時間後にスクリーンをブランクにするので,モニタの寿命を延ばすことができます。省略時の設定では,モニタは 10 分後に表示をブランクにします。マウスを動かすと,表示は再開します。CDE のフロント・パネルからセッションを休止させると,スクリーン・ロック・バックグラウンドが表示されます。

スタイル・マネージャの「画面」コントロール を使用して,表示するものをカスタマイズできます。4.3.2 項 を参照してください。

8.3.3    バックグラウンド・パターンの選択

CDE では,スタイル・マネージャの「背景」コントロール を使用して,ワークスペースのそれぞれにバックグラウンド・パターンを指定できます。スタイル・マネージャ の「背景」コントロールはダイアログ・ボックスをオープンし,使用するバックグラウンドの選択リストを示します。オプションのリストから「NoBackdrop」を選択して,ルート・ウィンドウを表示することもできます。

図 8-2:  「背景」コントロール

8.3.4    スクリーンおよびウィンドウのカラーの変更

CDE スタイル・マネージャ使用時には,スタイル・マネージャの「カラー」コントロール を使用してカラーが設定されます。

図 8-3:  カラー・コントロール

「カラー」コントロールは,ディスプレイのタイプに従って,スクリーン,ウィンドウ,ワークスペース,およびフロント・パネルのカラーを設定します。ディスプレイのタイプによって,2,4,または 8 個のカラー・ボタンを使用して,ウィンドウ,ウィンドウ枠,ワークスペース,テキスト領域,リスト領域,およびフロント・パネルのバックグラウンドのカラーを制御できます。カラーの制御とカラー・パレットの選択については,『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

8.4    セキュリティ設定の変更

セキュリティの設定を変更するには,ホスト・マネージャ・アプリケーションまたは xhost コマンドを使用します。ホスト・マネージャにより,ローカル・システムが認識するすべてのホストのアイコン,または指定したホストのアイコンが表示されます。ホスト・マネージャを使用すれば,DISPLAY 環境変数を設定し,リモート・システムからアプリケーションを実行できます。

アプリケーション・マネージャから Host Manager を開始するには,次の手順に従います。

  1. システム管理 をダブルクリックします。

  2. 日常管理 をダブルクリックします。

  3. ホスト・マネージャ アプリケーションをダブルクリックします。

詳細については,Host Manager のオンライン・ヘルプを参照してください。オンライン・ヘルプを見るには,アプリケーションの中から 「Help」メニューをクリックします。

xhost コマンドについては,xhost(1X) リファレンス・ページを参照してください。

8.5    キーボード設定のカスタマイズ

CDE を使用している場合には,スタイル・マネージャ・コントロールおよび「キーボード設定」アプリケーションを使用して,キーボード設定を変更できます。以降の項では,これらの方法について説明します。

注意

省略時のキーボード設定については,『リリース・ノート』および 『インストレーション・ガイド』 を参照してください。

この節では,次の事項について説明します。

8.5.1    スタイル・マネージャによるキーボード設定の調整

スタイル・マネージャのコントロールを使用すれば,次のキーボード設定が調整可能です。

注意

すべてのキーボードで,キーのクリック音やビープ (ベル) 音の音量,音程,音長を変更できるわけではありません。

8.5.2    「キーボード設定」によるキーボード設定の調整

「キーボード設定」アプリケーション は,CDE インタフェースに移行されて,組み込まれています。「キーボード設定」は,キーボード設定を制御するための多くのオプションを提供します。このアプリケーションを使用して,次の値を設定できます。

「キーボード設定」アプリケーションを使用すれば,キーキャップ編集アプリケーションを開始し,それ以降のセッションの設定をセーブしてロードすることもできます。キーボード設定およびキーキャップ編集アプリケーションについての詳しい説明は,第 5 章を参照してください。

8.5.3    PC スタイル・キーボードの変更

ワークステーションの中には,PC (パーソナル・コンピュータ) スタイルのキーボードが付いているものがあります。現時点では,この種のキーボードには次のモデル番号のうちのいずれか 1 つが付いています。今後,モデルの種類は増える可能性があります。

その他のワークステーションには,LK201 や LK401 などのキーボードが付いています。

これら 2 つのスタイルのキーボードでは,キーに割り当てられた機能もファンクション・キーの数も異なります。たとえば,PC スタイルのキーボードには,ファンクション・キーが 12 個 ([F1][F12]) しかありませんが,LK201/LK401 キーボードには 20 個 ([F1][F14][Help][Do],および [F17][F20]) があります。

このオペレーティング・システムでは,キーボードのスタイルを切り替えるためのマッピングを自動的に実行するスクリプトを提供しています。/usr/examples/pc_to_lk_keys.sh スクリプトは,xmodmap ユーティリティを使用して,キーボード修飾キーマップと keysym テーブルを編集します。このユーティリティについての詳細は,リファレンス・ページ xmodmap(1X) を参照してください。

PC スタイルのキーボードを使用する場合には,スクリプトの実行によって,キーボードの一番上にあるファンクション・キー列のいくつかのキーと同じように,メイン・キーボードの右側にある 2 つのキーパッドのキーのほとんどを LK201/LK401 キーボードの対応するキーへマップできます。たとえば,LK201/LK401 キーボードからキーパッドの [Find] 機能を実行するために,スクリプトを実行して,PC スタイル・キーボードのキーパッドの [Insert] キーの機能を変更できます。

同様に,LK201/LK401 スタイルのキーボードを使用する場合には,同じスクリプトを -u フラグを指定して実行し,キーパッドのキーを対応する PC スタイルのキーへマップできます。

スクリプトのコピーは,システムの次のファイルにあります。

/usr/examples/pc_to_lk_keys.sh

スクリプトを実行するには,システム・プロンプトで,コマンドを入力する場合と同じように,入力ファイル名を入力します。次に示す例の最初のコマンド行は,PC スタイルのキーを LK201/LK401 のキーに変更します。2 番目のコマンド行は,LK201/LK401 のキーを PC スタイルのキーに変更します。

% /usr/examples/pc_to_lk_keys.sh
% /usr/examples/pc_to_lk_keys.sh -u

ワークステーションにログインするたびに自動的にスクリプトを実行させるには,エディタを使用して,ホーム・ディレクトリに次の内容の .xsession ファイルを作成または変更します。

#!/bin/sh
/usr/examples/pc_to_lk_keys.sh
dxsession

この内容は,PC スタイルのキーを LK201/LK401 のキーに変更します。同じ .xsession ファイルで,-u フラグを 2 番目の行の終わりに付加すると,LK201/LK401 のキーを PC スタイルのキーに変更します。

これで,ログインするたびにキーボードは異なるキーボード・スタイルに自動的に設定されます。

表 8-1 は,LK201/LK401 キーボードのキーと,それに対応する PC スタイル・キーボードを示します。

表 8-1:  LK201/LK401 キーの機能および対応する PC スタイル・キー

LK201/LK401 キーボードのキー 対応する PC スタイル・キーボードのキーまたは機能
Help Print Screen
Do/Menu Scroll Lock
Insert Home
Find Insert
Remove Page Up
Next Page Down
Select Delete
Prev End
キーパッド 0 Ins, キーパッド 0
キーパッド 1 End, キーパッド 1
キーパッド 2 ↓, キーパッド 2
キーパッド 3 PgDn, キーパッド 3
キーパッド 4 ←, キーパッド 4
キーパッド 5 キーパッド 5
キーパッド 6 →, キーパッド 6
キーパッド 7 Home, キーパッド 7
キーパッド 8 ↑, キーパッド 8
キーパッド 9 PgUp, キーパッド 9
キーパッド . (ピリオド) キーパッド Del
キーパッド - キーパッド + (加算記号)
キーパッド , 対応する PC スタイル・キーパッドのキーはありません。
キーパッド Enter キーパッド Enter
PF1 Num Lock
PF2 キーパッド / (除算記号)
PF3 キーパッド * (乗算記号)
PF4 キーパッド - (減算記号)

注意

PC スタイル・キーボードには,LK201/LK401 キーボードの とマークされたキーに対応する位置に,← のラベルをもつキーがあります。どちらのスタイルのキーボードでも,このキーを押すと,カーソルの左側の文字が削除されます。PC スタイルのキーボードでは,近くのキーパッドにある [Delete] キーを使用して,ブロック・カーソルがある文字または行カーソルの左側の文字を削除できます。キーボード・マッピングでは,← と キーでバックスペース機能になります。PC スタイル・キーボードの [Delete] キーで削除機能になります。

8.6    セッション言語の指定

CDE を使用すれば,システムにログインするたびに言語タイプを指定できます。セッション中は言語を変更できません。

デフォルトの言語は,システム管理者が設定します。ログイン画面からセッション言語を設定するには,「オプション」メニューをクリックしてから,「言語」メニュー項目をクリックして言語グループを選択します。システムにインストールされている言語のリストから選択できます。セッションを終了すると,デフォルトの言語がリストアされます。

注意

CDE では,.Xdefaults ファイルでの xnlLanguage の設定はすべて無視されます。CDE がこの設定を無視するるのは,ユーザがログイン画面の「オプション」メニューで選択した言語が変更されないようにするためです。

図 8-6:  ログイン画面

8.7    マウスおよびポインタの動作内容のカスタマイズ

CDE では,スタイル・マネージャの「マウス」コントロール を使用して,マウスとポインタの動作内容を調整できます。CDE には,DECwindows Motif 環境では利用できない調整機能がいくつか用意されています。ただし,CDE の使用時にはポインタの色または形の調整はできません。

図 8-7:  「マウス」コントロール

「マウス」コントロールを使用して,次の設定を調整できます。

8.8    設定のセーブおよびリストア

セッション中に行った変更はセーブできます。スタイル・マネージャを使用してオプションまたは設定を変更する場合には,各コントロールによって提供されるダイアログ・ボックスで「了解」または「適用」を選択します。CDE スタイル・マネージャの「起動」コントロールを使用すれば,変更した設定を次のセッションでも使用するかどうかを指定できます (図 8-1を参照)。

CDEスタイル・マネージャの「起動」コントロール は,現在のセッション,ホーム・セッション,またはディスプレイ固有のセッションのどれに戻るのかを指定します。

8.9    リソース・ファイルの変更

Common Desktop Environment: 上級ユーザ及びシステム管理者ガイド』は,環境を変更するために変更できるリソース・ファイルについて記述しています。この節では,以前 DECwindows Motif で編集されていたリソース・ファイルについて簡単に説明し,それらのファイルが現在でも有効であるかどうかを示します。

DECwindows Motif では,システム管理者はしばしば /usr/lib/X11/xdm のファイルを編集していました。CDE にも同等のファイルが /usr/dt/config にあります。 これらのファイルには,XaccessXserversXsession および Xsetup/Xsetup -0 が含まれます。