7    新しいセッション・マネージャの使用方法

CDE (Common Desktop Environment) におけるセッションの管理と,DECwindows Motif におけるセッションの管理には違いがあります。この章では,環境の管理およびアプリケーションへのアクセスの方法について紹介し,CDE と DECwindows Motif の相違点について説明します。

CDE を使用することによって,DECwindows Motif で提供されるのと同等の機能に加えて,拡張された機能を利用することができます。以降の各節では,CDE セッションを開始および終了するための主要な機能について説明し,DECwindows Motif セッション・マネージャを使用して実行していた環境の管理を CDE で行うための情報を提供します。

この章では,次の事項について説明します。

7.1    セッションの開始および終了

CDE ログイン画面は,DECwindows Motif ログイン画面では使用できなかったオプション群を提供します。CDE ログイン画面からは,セッション・タイプと使用言語を選択できます。

CDE では次の 3 つのタイプのセッションが選択できます。

省略時の言語はシステム管理者が設定しますが,ログイン画面から「オプション」メニューを使用して,システムにインストールされている他の言語にもアクセスすることができます。セッションを終了すると,省略時の言語設定がリストアされます。

注意

CDE では,.Xdefaults フィルでの xnlLanguage の設定はすべて無視されます。この変数は,一般的には,初めの方の DECwindows セッションで設定します。そのとき,セッション・マネージャの言語メニューから選択して,その設定を設定しておきます。CDE がこの設定が無視するのは,ユーザがログイン画面の「オプション」メニューで選択した言語が変更されないようにするためです。

CDE の場合,省略時の設定で,セッションの自動セーブおよび自動リストア機能を提供します。セッション終了時にオープンされていたアプリケーションは,セーブおよびリストア機能をサポートするものであれば,再ログイン時にすべてオープンされます。アプリケーションによって,前のセッションのすべての作業がリストアされるものと,アプリケーションのメイン・スクリーンだけがリストアされるものがあります。

DECwindows Motif セッション・マネージャで行っていたセッション開始および終了に関するカスタマイズを CDE で行う方法については,8.1 節を参照してください。

注意

このマニュアルの以降の章では,通常のデスクトップ・セッションについてのみ説明します。フェイルセーフ・セッションまたはコマンド行ログイン・セッションの起動についての詳しい説明は,『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

7.2    アプリケーションへのアクセス

CDE フロント・パネルから,いくつかのアプリケーションが起動できます。これらのアプリケーションのほとんどは,DECwindows Motif セッション・マネージャ・アプリケーション・メニュー (表 7-2 を参照) で提供されていたものであり,フロント・パネル,アプリケーション・マネージャ,ファイル・マネージャ,および端末エミュレータ・ウィンドウから起動できます。

フロント・パネルは,スクリーンの下部にある細長いウィンドウです。このウィンドウはいくつかのアプリケーションおよびコントロールを含んでおり,同様のサービス群を提供する DECwindows Motif セッション・マネージャ・メニューに相当します。フロント・パネル上のアイコンをクリックすることによりアプリケーションを起動できます。ロック・アイコンをクリックするとセッションが一時停止し,Exit アイコンをクリックするとセッションを終了します。7.2.1 項に,フロント・パネルにあるアプリケーションおよびコントロールに関する説明があります。

図 7-1:  CDE フロント・パネルのコントロール

アイコン・ベースのファイル・マネージャ はフロント・パネルから使用でき,ディレクトリ階層の表示および簡単なナビゲートができます。ドラッグ・アンド・ドロップのアクションを使用して,ディレクトリおよびファイルを操作し,他のアプリケーションと対話することができます。ファイル・マネージャを使用して,アプリケーションを起動することもできます。

アプリケーション・マネージャ はフロント・パネルから使用でき,システム上のアプリケーションおよびその他のツール用の特別なディレクトリです。アプリケーション・マネージャを使用して,アプリケーションを起動したり,他のアプリケーションをアプリケーション・マネージャに追加したり,アプリケーションにより簡単にアクセスできるように背景またはフロント・パネルに置くこともできます。

この章では,次の事項について説明します。

7.2.1    フロント・パネルからのアプリケーションの管理

アプリケーション・マネージャおよびファイル・マネージャの他に,フロント・パネルには,DECwindows Motif 環境では使用できない概念をいくつか採り入れています。その例として,サブパネルおよびワークスペースがあります。

上に矢印のあるフロント・パネル・アイコンでは,サブパネルが使用できます。サブパネルは,デスクトップ・セッションをより詳細に管理するためのアプリケーションおよびコントロールのメニューを提供します。矢印をクリックすることにより,サブパネルのメニューが表示されます。

図 7-2:  サブパネルの矢印

ワークスペースは,フロント・パネルを含む,スクリーン上の表示領域です。フロント・パネルのワークスペース・スイッチ (「ワークスペース 1」〜「ワークスペース 4」のついたボタン) を使用して,同じセッション内で複数のワークスペースを設定し,ワークスペース間を移動することができます。それぞれのワークスペースに,フロント・パネルが表示されます。ワークスペースは 最高 64 まで設定することができます。作業するワークスペースを変更するには,任意のワークスペース・ボタンをクリックします (図 7-3 を参照)。

図 7-3:  ワークスペース・ボタン

フロント・パネルからアプリケーションを起動するには,アプリケーション・アイコンをクリックします。サブパネルからアプリケーションを起動するには,次の手順に従ってください。

7.2.1.1    サブパネルへのアプリケーションの追加

ファイル・マネージャまたはアプリケーション・マネージャ上に存在する任意のアプリケーション・アイコンを使用して,アプリケーションをサブパネルに追加できます。アプリケーションをサブパネルに追加するには,次の手順に従ってください。

  1. ファイル・マネージャまたはアプリケーション・マネージャをオープンし,追加したいアプリケーション・アイコンを表示します。

  2. アプリケーション・アイコンを追加したいサブパネルをオープンします。

  3. ファイル・マネージャまたはアプリケーション・マネージャからアイコンをドラッグし,サブパネルの「アイコンのインストール」までドロップします。

サブパネルに追加されたアプリケーション・アイコンは,ファイル・マネージャまたはアプリケーション・マネージャにある場合と同じように動作します。

7.2.1.2    フロント・パネルへのサブパネル・コントロールの追加

サブパネルのコントロールのコピーを,より簡単にアクセスするためにフロント・パネルに追加できます。フロント・パネルにサブパネルのコントロールをコピーするには,次の手順に従ってください。

  1. コピーしたいアプリケーション・アイコンを含むサブパネルをオープンします。

  2. 追加したいアプリケーション・アイコンをポイントしてマウス・ボタン 3 をクリックし,ポップアップ・メニューを表示させます。

  3. ポップアップ・メニューから,「メインパネルへ表示」を選択します。

7.2.1.3    フロント・パネル上のコントロールの置換

フロント・パネルのコントロールを簡単に置換するには,サブパネルのコントロールと交換します。

  1. 置換したいコントロールのサブパネルをオープンします。そのコントロールにサブパネル・コントロールがない場合には,次の手順に従って作成できます。

    1. フロント・パネルのコントロールをポイントして,マウス・ボタン 3 をクリックします。

    2. ポップアップ・メニューから,「サブパネルの追加」を選択します。

    3. 新しいサブパネルが表示されます。

    4. 7.2.1.2 項の説明に従って,フロント・パネルに配置したいコントロールをサブパネルに追加します。

  2. サブパネルのコントロールをポイントしてマウス・ボタン 3 をクリックし,ポップアップ・メニューを表示します。

  3. ポップアップ・メニューから,「メインパネルへ表示」を選択します。

サブパネルを作成したけれども保持したくない場合には,フロント・パネル・コントロールのアイコンをポイントして,マウス・ボタン 3 をクリックします。その後,「サブパネルの削除」オプションを選択します。

ユーザが操作に習熟している場合には,フロント・パネルの特性を変更するフロント・パネル構成ファイルを作成または編集できます。詳細については,『Common Desktop Environment: 上級ユーザ及びシステム管理者ガイド』 を参照してください。

7.2.1.4    フロント・パネルに対するカスタマイズ内容の削除

「アイコンのインストール」コントロールまたはフロント・パネルのポップアップ・メニューを使用して行われたフロント・パネルに対するカスタマイズは,次の手順に従って取り除くことができます。

  1. アプリケーション・マネージャをオープンします。

  2. 「デスクトップツール」をダブルクリックします。

  3. 「フロント・パネルの復元」をダブルクリックします。

この手順は,フロント・パネル構成ファイルを使用して行われたカスタマイズには影響しません。

7.2.2    アプリケーション・マネージャからのアプリケーションの起動

アプリケーション・マネージャには,組み込みのアプリケーション・グループが含まれています。各アプリケーション・グループは,アプリケーションをオープンするための 1 つまたは複数のアイコンを含むディレクトリです。アイコン・グループには,データ・ファイル,テンプレート,"read me" ファイルなど,他のアプリケーション・ファイルが含まれます。表 7-1 に,アプリケーション・マネージャ内の省略時の組み込みアプリケーション・グループを示します。

表 7-1:  組み込みのアプリケーション・グループ

グループ 説明
Conversion_Tools DECwindows カレンダから CDE カレンダへ移行し,メール・フォルダを dxmail フォーマットから CDE の dtmail フォーマットへ変換するアプリケーションを提供します。
デスクトップアプリケーション ファイル・マネージャ,アプリケーション・マネージャ,カレンダ・アプリケーションなどのデスクトップ・アプリケーションを提供します。
デスクトップツール vi テキスト・エディタ,スペル・チェック,アプリケーションの再ロードなど,デスクトップを管理するために一般に使用するツールを提供します。
インフォメーション よく使用するヘルプ・ボリュームを提供します。
システム管理 システムを管理するためにシステム管理者が使用するツールを提供します。

この他にもアプリケーション・グループを追加できます。上記の表で示すのは,省略時のグループです。

アプリケーション・マネージャからアプリケーションを起動するには,次の手順に従ってください。

  1. アプリケーションが配置されているアプリケーション・グループをダブルクリックします。

  2. アプリケーションをダブルクリックします。

Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』の説明に従って,ユーザ自身のアプリケーション・グループを作成することもできます。

7.2.3    ファイル・マネージャによるアプリケーションの実行

ファイル・マネージャは,ファイル,フォルダ,アプリケーションなどのデスクトップ・オブジェクトの作成,検索,および管理を行う場合に主に使用されます。アプリケーションがデータ・ファイルを使用する場合,そのアプリケーションのデータ・ファイルを使用して,ファイル・マネージャからアプリケーションを起動できます。

データ・ファイルを使用してアプリケーションを起動する場合には,次のいずれかの方法を使用します。

図 7-5:  ファイル・マネージャのポップアップ・メニュー

ファイル・マネージャでドラッグ・アンド・ドロップ機能を使用して,アプリケーションと対話させることができます。たとえば,ファイル・マネージャからファイルをドラッグし,印刷マネージャにドロップすることによりファイルをプリントできます。また,拡張子 .sdl が付くヘルプ・ボリュームをドラッグしてヘルプ・マネージャにドロップすると,このヘルプ・ボリュームをオープンすることができます。

7.2.4    DECwindows Motif アプリケーションの使用方法

DECwindows Motif の前バージョンで利用できたアプリケーションのほとんどは,CDE でもそれに相当するものを提供しています。相当するものが CDE には提供されていないアプリケーションについてはデスクトップに組み込まれており,アプリケーション・マネージャを介して使用できます。

表 7-2 に,DECwindows Motif アプリケーションをリストします。アプリケーション名の後に,使用を推奨するアプリケーション,実行可能プログラム名,およびそのロケーションを示します。CDE に組み込まれていない DECwindows Motif アプリケーションを使用したい場合には,/usr/bin/X11 にあるものを使用できます。

表 7-2:  CDE での使用を推奨するアプリケーション

DECwindows アプリケーション名 推奨アプリケーション名 実行プログラム ロケーション
ブックリーダ ネットスケープ [脚注 2] netscape フロント・パネル (「個人アプリケーション」サブパネル)
  CDE ヘルプ・ビューア [脚注 2] dthelpview フロント・パネル (ヘルプ・マネージャ)
電卓 CDE 電卓 dtcalc フロント・パネル
カレンダ CDE カレンダ [脚注 3] dtcm フロント・パネル
カードファイラ クリップボードの内容 xclipboard アプリケーション・マネージャ
イメージビューア イメージビューア [脚注 4] dximageview アプリケーション・マネージャ
時計 CDE 時計 [脚注 5]   フロント・パネル
漢字端末エミュレータ CDE 端末エミュレータ dtterm フロント・パネル [脚注 6]
テキスト比較 テキスト比較 [脚注 7] dxdiff アプリケーション・マネージャ
電子メール CDE メール [脚注 3] dtmail フロント・パネル
ノートパッド CDE テキスト・エディタ dtpad フロント・パネル
ペイント CDE アイコン・エディタ dticon フロント・パネル (「個人アプリケーション」サブパネル)

次の DECwindows アプリケーションは,本バージョンのオペレーティング・システムからサポートされなくなりました。表 7-3 に代替アプリケーションを示します。

表 7-3:  サポートされなくなった DECwindows アプリケーション

リタイアした DECWindows アプリケーション 代替アプリケーション
dxprint dtlp
dxcalendar dtcm
dxcalc dtcalc, xcalc
dxclock フロント・パネル,xclock
dxpaint dticon/dtstyle, bitmap
dxnotepad dtpad
dxbook dthelpview, Netscape
dxcardfiler N/A
dxsession xdm, dtsession
dxvdoc ghostview
dxmail dtmail, xmh, exmh, Netscape メール