オペレーティング・システムには,さまざまなメソッドおよびユーティリティがあります。 これらを使用して,初期設定 (セットアップ) からシステム環境の保守とカスタマイズまでを行うことができます。 この章では,以下の説明を行います。
管理メソッドおよびユーティリティの概要について説明します (1.1 節)。
オンライン・ヘルプや Web ベース・ヘルプなど,管理ユーティリティに関連するドキュメントの参照先について説明します (1.2 節)。
フル・インストレーションを行った後,最初にシステムに root でログインしたときに自動的に表示される,システム・セットアップ・ユーティリティについて説明します (1.3 節)。
さまざまな管理メソッドおよびユーティリティについて説明します (1.4 節)。
CDE (共通デスクトップ環境) から実行する管理ツールについて説明します (1.5 節)。
SysMan Menu の使用方法について説明します (1.6 節)。
SysMan Menu のコマンド行インタフェースの使用方法について説明します (1.7 節)。
SysMan Station の使用方法について説明します (1.8 節)。
システム状態の表示や,Web ブラウザから SysMan Menu および SysMan Station を起動するのに使用できる,HP Insight Manager について紹介します (1.9 節)。
SysMan Menu および SysMan Station クライアントを設定して,PC 上のウィンドウからそれらを直接起動できるようにする方法について説明します (1.10 節)。
シリアル回線コンソールをセットアップして,モデム回線を使用してリモート・システムにアクセスする方法について説明します (1.11 節)。
1.1 SysMan Menu およびその他のユーティリティの概要
SysMan Menu ユーティリティは,ユーザ環境に関係なく使用できます。 ユーザ環境には次のようなものがあります。
CDE などの,X 準拠のユーザ環境
Windows 98 や Windows NT® などの,PC で実行される Microsoft® Windows® のユーザ環境
Internet Explorer などの Web ブラウザおよび HP Insight Manager を使用する Web ベース管理
端末,または以前のユーザ環境で実行される端末ウィンドウ。 この場合は,SysMan ユーティリティを端末 curses モードで使用して表示します。
たとえば,Microsoft Windows NT を実行している PC から,リモート UNIX® システム上で管理タスクを実行できます。 この管理タスクの実行には,Java アプリケーションとして実行されている SysMan Menu および SysMan Station クライアントを使用します。 これらのユーティリティは,どのようなユーザ環境を使用しても外観が一貫しています。
さまざまなメソッドを使用して,同じタスクを実行することができます。 ただし,使用する管理ユーティリティおよびその起動方法によって,使用できるオプションが多少異なることがあるので注意してください。 たとえば,種々のユーザ環境で実行できるように設計されているため,多くの SysMan Menu ユーティリティには,アイコンなどのグラフィカル要素がありません。 また,CDE などのウィンドウ環境で実行するように設計されているため,X11 ベースのユーティリティにはグラフィカル要素を含むものが多く,ドラッグ&ドロップなどのウィンドウ機能がサポートされています。 次にメソッドの例を示します。
ユーザ・アカウントおよびグループを管理するためのアカウント・マネージャ (dxaccounts
)
UNIX カーネルをカスタマイズするのためのカーネル・チューナ (dxkerneltuner
)
ローカル・ディレクトリを共有してリモート・シェアをマウントするためのファイル共有 (dxfileshare
)
従来のユーティリティは,下位互換性のために残されていますが,文字セル端末でのみ使用するように設計されています。
ただし,これらのユーティリティを SysMan Menu から起動する場合は,サポートされている他のユーザ環境でも動作します。
例としては,SysMan Menu に「NIS (Network Information Service) の設定」として表示される,NIS の設定ユーティリティ
nissetup
があります。
X11 準拠のユーティリティと比べてSysMan Menu ユーティリティは,それほど機能的ではなく,グラフィカルでもありませんが,ユーザ環境に依存することなく基本的な管理タスクを実行することができます。 またさらに,多岐にわたる管理機能を備えています。 SysMan Menu ユーティリティには,次のような制約があります。
SysMan Menu ユーティリティの表示とレイアウトは,使用しているユーザ環境によって多少異なる場合があります。
たとえば,X11 CDE のユーザ環境でシステムのシャットダウン
を実行すると,シャットダウンの遅延の選択がスライダ・バーとして表示されます。
マウス・ボタンを使ってこのバーを選択してドラッグすることで,遅延時間を長くすることができます。
同じユーティリティが文字セル端末で起動された場合は,スライダ・バーの代わりにフィールドが表示され,シャットダウンの遅延時間は数値で入力します。
さらに,管理ユーティリティは,機能的に違いがあります。
SysMan Menu ユーティリティでは,対応するコマンド行 (または X11 準拠) ユーティリティのオプションで使用できないものがある場合があります。
たとえば,ユーザ・アカウントを管理する場合,useradd
コマンドを使用すると,新たに作成されるすべてのアカウントが継承する,省略時設定の属性を設定できます。
SysMan Menu の「アカウント」ユーティリティでは,これらの属性は設定できません。
一般に,SysMan Menu ユーティリティでは最も頻繁に使用されるオプションが提供され,コマンド行インタフェース (CLI) ではすべてのオプションが提供されています。
システム管理者は,システム管理者がいる場所や使用可能なユーザ環境に関係なく,SysMan Menu および SysMan Station で一貫したプレゼンテーション形式の管理ユーティリティを使用することができます。
たとえば,ローカル PC からリモートの UNIX システムにログオンして,使い慣れた同じユーティリティを使用して管理タスクを行うことができます。
また,HP Insight Manager を使用すると,Web インタフェースですべてのシステムに接続することができ,そのシステムの状態を表示することができます。
また,SysMan Menu および SysMan Station を起動して,リモート・システムでタスクを実行することができます。
1.2 関連ドキュメント
本書では,管理タスクを実行するために管理ユーティリティを使用する方法について説明していますが,管理ユーティリティの起動方法とその全フィールドについては説明していません。
その説明には使用例がありますが,すべてのユーザ環境やオプションについては示していません。
以降の項では,管理ユーティリティおよびメソッドの起動と使用についてのさらに詳しい説明の参照先を示します。
ドキュメントの提供形態は,リファレンス・ページ,オンライン・ヘルプ,および Web ベースのヘルプです。
1.2.1 リファレンス・ページ
各ユーティリティには,その起動方法とオプションを説明しているリファレンス・ページがあります。
たとえば,
sysman_cli
(8)
また,リファレンス・ページでは,特定のユーティリティのユーザ環境オプションについても説明します。
管理ユーティリティには,さまざまなユーザ環境で起動できるものと,1 つのユーザ環境でのみ起動できるものがあります。
1.2.2 オンライン・ヘルプ
各ユーティリティには,その使用方法とオプションを詳しく説明しているオンライン・ヘルプがあります。 また,オンライン・ヘルプは,有効な必須データ,参照情報,および用語の定義について説明します。 オンライン・ヘルプへのアクセスは,ユーティリティの最初のウィンドウでボタンをクリックするか,あるいは CDE フロント・パネルのライブラリ・アイコンを起動して CDE ヘルプ・ライブラリから行います。 最初に表示されるヘルプ・ボリュームは,システム管理のオンライン・ヘルプです。
グラフィカル・ユーザ環境の中には,オプションとフィールドのコンテキスト依存ヘルプを提供するものがあります。
画面上でポインタを移動すると,そのフィールドやオプション・ボタンの簡単な説明がメッセージ・フィールドに表示されます。
curses
ユーザ環境では,矢印キーや Tab キーでフィールドおよびオプションに移動すると,ヘルプ・メッセージが表示されます。
詳細は,
curses
(3)
コマンド行ユーティリティには,そのコマンドの構文を説明するヘルプがあります。
コマンドの構文のヘルプは,-h
または
-help
フラグを指定するか,引数やパラメータを省略してコマンドを入力して Return キーを押したときに表示されます。
1.2.3 Web ベースのヘルプ
Netscape ビューアを『インストレーション・ガイド』に説明されているように設定して起動した場合,ホームページの省略時設定は,次のとおりです。
file:/user/doc/netscape/Tru64_UNIX.html
このページからリンクされている情報は,次のとおりです。
オペレーティング・システムのオンライン・ドキュメント
HP Insight Manager の Web ベース管理 (WBEM) ページである
file:/user/doc/netscape/SYSMAN/index.html
へのリンク。
オペレーティング・システムの管理に関するこのページの情報は,次のとおりです。
SysMan Menu と SysMan Station の使用
CDE などの,X 機能のユーザ環境の使用
Microsoft Windows を実行している PC の使用。 このセクションには,使用している PC にダウンロードしなければならないクライアント・ソフトウェアへのリンクがあります。
SysMan Menu は,Web ブラウザまたは SysMan Station から起動された場合,Web/Java モードで実行されます。 SysMan タスクは,Web ブラウザまたは SysMan Station から起動されたか,Web/Java モードで実行されている SysMan Menu から起動された場合,Web/Java モードで実行されます。
Web/Java モードで実行しているとき (PC からなど) に SysMan Menu またはメニュー・タスクのオンライン・ヘルプを参照するには,接続先のサーバ上で HP Insight Manager デーモンが稼働していなければなりません。 このデーモンを起動するには,サーバ上で次のコマンドを root として実行します。
# /sbin/init.d/insightd start
どのシステムがサーバになっているかは,help
コマンドを起動したウィンドウのタイトル・バーを見ると分かります。
World Wide Web 上の製品情報へのリンク
HP Insight Manager が設定されている場合は,ローカル・ネットワーク・ドメイン内の,HP Insight Manager エージェントを実行しているすべてのシステムの Insight Manager Web エージェントにも接続できます。 たとえば,UNIX システムのローカル・ホストに接続するには,Netscape を起動して,その「場所」フィールドに次の URL を入力します。
http://<host>:2301
ここで,<host>
は,bender.fut.ram.ma
などのネットワーク上の完全修飾名か,111.22.255.11
などの TCP/IP アドレスです。
ポートは常に
:2301
です。
HP Insight Manager の設定についての詳細は,1.9 節
を参照してください。
「HP Insight Manager Agents」を選択した後に「Summary?
」をクリックして,HP Insight Manager の Web ベースのユーザ・ガイドにアクセスします。
使用しているユーザ環境によって,HP Insight Manager の使用に制限があります。
詳細については,1.9 節
を参照してください。
1.3 システムのセットアップ
システムの初期設定 (セットアップ) は通常,インストールの後処理として実行されます。 「システム・セットアップ」は,インストール後に初めてスーパユーザ (root) でログインしたときに自動的に起動されます。 インストール時には,この章で説明したユーティリティを使用しているはずです。 システムのメンテナンスおよびカスタム設定で使用するユーティリティと同じユーティリティを初期設定で使用します。
システムにグラフィック・ボードが搭載され,省略時設定の CDE などの X11 ユーザ環境で実行している場合は,「システム・セットアップ」ユーティリティ (クリップボードとも呼ばれます) はグラフィカル・ユーザ・インタフェースで動作します。 初めてのログインが文字セル端末で行われた場合は,「システム・セットアップ」はテキスト・インタフェースで動作します。
図 1-1
では,グラフィック形式の「システム・セットアップ」を示します。
図 1-1: 「システム・セットアップ」のグラフィカル・ユーザ・インタフェース
コマンド行で単に
setup
と入力するか,CDE の「アプリケーション・マネージャ - システム管理」フォルダで「システム・セットアップ」アイコンをクリックすると,いつでも「システム・セットアップ」を起動して既存のシステム構成を変更することができます。
オプションは,次のとおりです。
ネットワーク,メールおよびプリンタなどの,システム・サービスの基本構成を設定することができます。 このオプションは,拡張設定オプションを後回しにして,システムをすばやく設定して稼働させたいときに便利です。 図 1-2 では,「クイック・セットアップ」の初期ウィンドウを示します。
さまざまなシステム設定ユーティリティを実行して,「クイック・セットアップ」のタスクをすべて実行することができます。 また,ディスクのカスタム設定または二地点間 (point-to-point) プロトコルの設定などの追加のセットアップ・オプションを実行します。
図 1-3 では,「カスタム・セットアップ」のグラフィカル・インタフェースの一部を示します。
このオプションは,システム設定のクローニングを行う SysMan Menu オプションについての情報へのリンクを提供します。
これにより,システム設定を他のシステムに適用することができます。
詳しい説明は,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』 および
sysman_clone
(8)
詳細については,1.5.2 項
を参照してください。
1.4 管理メソッド
本書で説明しているタスクのほとんどは,以下の 1 つまたは複数のメソッドを使用して行います。 種々のユーザ環境で利用できるため,SysMan はシステム管理タスクの推奨メソッドになっています。
SysMan Menu
SysMan Menu は,利用できるシステム管理ユーティリティの大半を 1 つのメニューにまとめたものです。 SysMan Menu を使用すると,次のような環境からユーティリティを実行できます。
ローカルまたはリモートの文字セル端末
CDE などの,X11 準拠ウィンドウ環境
PC 上の Microsoft Windows
Web ブラウザと HP Insight Manager
詳細は 1.6 節を参照してください。
SysMan Station
SysMan Station は,システムまたはクラスタのグラフィック表示で,CPU ダウンからディスクなどのシステムの個々の構成要素までを監視することができます。
さらに,ファイル・システムや AdvFS ドメインなどの論理的なグループを表示または監視したり,表示内容をカスタマイズすることができます。
システムの構成要素を表示する場合は,その構成要素のプロパティについての詳細情報を取得したり,その構成要素に対して管理タスクを行うユーティリティを起動したりできます。
SysMan Menu とは異なり,SysMan Station にはグラフィック機能が必須で,文字セル端末や
curses
ユーザ環境では実行できません。
詳細は,1.8 節を参照してください。
CDE の「アプリケーション・マネージャ - システム管理」のグラフィカル・ユーザ・インタフェース
X11 準拠のグラフィカル・ユーザ・インタフェース (GUI) のセットであり,CDE または他の X11 準拠のウィンドウ環境で実行されます。
GUI を使用するには,グラフィックス (ウィンドウ機能) を備えた端末またはワークステーションに,ウィンドウ機能ソフトウェア・サブセットがインストールされている必要があります。
これらのグラフィカル・ユーティリティでは,ウィンドウ環境の機能がサポートされています。
たとえば,dxaccounts
でユーザ・アカウントの複製バージョンを作成するのにカット・アンド・ペースト機能を使用できます。
詳細は,1.5 節を参照してください。
コマンド行スクリプト
古い管理ユーティリティはほとんどの場合,互換性維持のために残されています。
いくつかのコマンド行ユーティリティは,新しいコマンド行オプションに移行されています。
たとえば,adduser
スクリプトはまだ使用できますが,次のユーティリティがこのスクリプトに取って代わります。
SysMan Menu の「アカウント」ユーティリティ。 このユーティリティを使用すると,ローカル環境および NIS 環境でユーザとグループを管理できます。
useradd
コマンド行ユーティリティ。
このユーティリティは,文字セル端末から実行します。
「アカウント・マネージャ」グラフィカル・ユーザ・インタフェース。
CDE 環境の「アプリケーション・マネージャ - 日常管理」から利用可能です。
または端末ウィンドウから
dxaccounts
を起動します。
このインタフェースは,他の X 準拠のウィンドウ環境で実行します。
SysMan Menu の「アカウント」オプション。
CDE 環境の「アプリケーション・マネージャ - システム管理」から利用可能です。
または端末ウィンドウから
sysman
を起動します。
システム管理プロセスを,古いコマンド行スクリプトから適切な SysMan Menu メソッドに移行する必要があります。
これらのコマンド行ユーティリティは,OSFRETIREDxxx
サブセット (オプション) に移行されています。
使用されなくなったコマンド・サブセットのインストールについての詳しい説明は,『インストレーション・ガイド』を参照してください。
シリアル回線コンソール
ネットワークを利用した管理メソッドに加えて,シリアル回線コンソールにはダイアルアップ機能があります。 これにより,モデム経由でのリモート・システムとの接続が可能です。 詳細は,1.11 節を参照してください。
システム・ファイルの編集によるファイルの手動変更 (推奨していません)
従来,経験を積んだ UNIX のシステム管理者は,個々のシェル・コマンド,スクリプト,およびユーティリティの組合わせを使用したり,簡単にシステム・ファイルを編集していました。
本書のほとんどの節では,管理タスクを実行するときに更新または変更するさまざまなシステム・ファイルについて説明します。
このような場合に,編集によってシステム・ファイルを変更したいかもしれませんが,システム・ユーティリティを使用することで,/etc/sysconfigtab
などのシステム・ファイルの完全性と整合性を維持します。
システム・ファイルの変更には,適切なユーティリティを使用することをお勧めします。
適切なユーティリティを使用することで,システム・ファイルの構造を保護します。
重要な考慮事項は,次のとおりです。
多くのシステム・ファイルが,特別なシンボリック・リンクになっています。
これはクラスタ処理を容易にするために作成されたものです。
これらのリンクが破壊された場合は,そのリンクを再度作成しない限り,システムはクラスタに結合できません。
詳細は,第 6 章および
hier
(5)
多くのシステム・コンポーネントは,データをテキスト・ファイルとバイナリ・ファイルの両方に書き込み,その管理ユーティリティが,バイナリを再作成することがよくあります。 他のシステム情報は,多くの場合保存され,システムを更新するときに,保存されたシステム情報を復元して再使用することで,システム管理の時間と労力を節約します。
個々のシステムはクラスタとして結合することが可能です。
多くの UNIX システム・ファイルが最近変更され,クラスタの内部サポートが提供されています。
たとえば,rc.config
ファイルには,実行時構成変数を格納する 2 つのファイル,rc.config.common
と
rc.config.site
が関連しています。
rcmgr
ユーティリティを使用することで,これらのファイルの完全性と整合性が確保できます。
アップデート・インストレーション中,インストレーション処理は変更された情報を既存のシステム・ファイルにマージします。
.new..*
および
.proto..*
ファイルは,この処理において重要になります。
詳しい説明は,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』 を参照してください。
CDE (共通デスクトップ環境) は,省略時設定の X11 ウィンドウのユーザ環境です。 ただし,以降の項で説明しているユーティリティは,他の X11 準拠ユーザ環境でも実行できます。 フル・インストレーションが完了すると,「システム・セットアップ」のグラフィカル・ユーザ・インタフェースが表示され,初めて使用する場合のシステムの設定手順を示します。 システムの管理およびカスタマイズで今後使用するグラフィカル・ユーザ・インタフェース (GUI) と同じインタフェースを「システム・セットアップ」から起動します。 「システム・セットアップ」の詳細は,1.5.2 項 で説明しています。
CDE から起動する管理ユーティリティの多くが,SysMan Menu のタスク・オプションを開始します。 ただし,ユーティリティの中には,SysMan Menu に類似したオプションを持たないものや,CDE でのみ使用できる機能を備えたグラフィカル・ユーティリティがあります。 これらのユーティリティの例を次に示します。
CDE Setup は,CDE 環境の設定に使用します。
Disk Configuration (diskconfig
) は,ディスク・パーティションの構成に使用するアプリケーションです。
アーカイバ (dxarchiver
) は,tar
,pax
,またはcpio
アーカイブの作成に使用するアプリケーションです。
ドラッグ・アンド・ドロップ操作を使用して,フォルダを簡単にアーカイブ・ファイルに追加できます。
CDE では,これらの GUI は「アプリケーション・マネージャ」の中に置かれています。
アプリケーション・マネージャは,図 1-4
に示したような,CDE フロント・パネルのツール・ドロワのオプションです。
ツール・ドロワの隣のアイコンは,root でログインした場合にのみ CDE フロント・パネルに表示され,SysMan Station を起動するために使用します。
このアイコンについては,1.8 節
で説明しています。
図 1-4: CDE のツール・ドロワおよび SysMan Station アイコン
CDE 以外の,X11 準拠のユーザ環境を使用する場合は,次の例に示すようにコマンド行で個々に GUI を起動してください。
# /usr/sbin/X11/dxaccounts # /usr/sbin/X11/dxarchiver
CDE では,SysMan Menu のユーティリティが「アプリケーション・マネージャ」フォルダ内で使用できます。 このフォルダには,次のようにアクセスします。
CDE フロント・パネルで,「SysMan Applications」パネルの矢印を選択します。
この矢印は,図 1-4
で示した SysMan Station のアイコンの上に表示されています。
この矢印を選択すると,図 1-5
のようなパネルが表示されます。
図 1-5: 「SysMan Applications」パネル
このパネルから次のアイコンのいずれかを選択して,ユーティリティを起動するか,または複数の管理ユーティリティが収められているフォルダをオープンします。
「SysMan Station」を起動します。 これについては 1.8 節 に説明されています。 root で CDE にログインすると,このアイコンはフロント・パネル上に 図 1-4 のように表示されます。
「Configuration」などのフォルダ・アイコンを選択して,アプリケーション・フォルダをオープンします。 このフォルダには,付録 A で説明するユーティリティが入っています。
「SysMan Menu」を起動します。
CDE フロント・パネルから,図 1-4 で示したツール・ドロワのアイコンを選択します。 オープンされたトップレベルのフォルダで,「システム管理」グループをダブルクリックすることにより,「システム・セットアップ」,「SysMan の紹介」のオンライン・ヘルプ・ボリューム,および 5 つのユーティリティ・グループにアクセスすることができます。 詳細は,1.5.2 項を参照してください。
ユーティリティを実行せずに,SysMan Menu ユーティリティのオンライン・ヘルプへアクセスできます。 CDE フロント・パネルから「ヘルプ・マネージャ」アイコンを選択して,オンライン・ヘルプのブラウザを表示します。 このブラウザには,CDE,CDE デスクトップ,システム管理のヘルプ・ボリュームが含まれています。 「デスクトップアプリケーション」フォルダにある「アクション作成」ユーティリティで,CDE ワークスペースをカスタマイズすることもできます。 カスタマイズされたアイコンを使用して,ワークスペースから直接 SysMan アプリケーションを起動することもできます。 詳細については,『CDE ガイドブック』 を参照してください。
別の X-Window 環境では,コマンド行から SysMan ユーティリティを起動できます。
SysMan
ユーティリティの一覧については,
sysman_intro
(8)
詳細は,以下のリファレンス・ページを参照してください。
sysman
(8)SysMan Menu についてと,さまざまな環境でそれを起動する方法について説明します。 1.6 節を参照してください。
sysman_station
(8)SysMan Station についてと,その起動方法について説明します。 1.8 節を参照してください。
sysman_cli
(8)SysMan Menu のコマンド行オプションについて説明し,そのコマンド・オプションを定義します。 1.7 節を参照してください。
「システム・セットアップ」は,初めて使用する場合のシステムの設定の手順を案内します。
「システム・セットアップ」は,各構成アプリケーションのアイコンを含むクリップボードのグラフィカル表示です。
フル・インストレーションを行った後,root ユーザで最初にログインしたときに「システム・セットアップ」が自動的に起動され,システム設定タスクの実行を促します。
初期ウィンドウには,クイック・セットアップとカスタム・セットアップの 2 つのオプションがあります。
1.5.2.1 クイック・セットアップ
このオプションは,一般的なシステム設定の手順ガイド (ウィザード) を提供します。 「クイック・セットアップ」を使用して,基本設定を行います。 システムによっては,この基本設定だけの場合もあります。 「カスタム・セットアップ」を使用して,拡張設定またはシステム固有の設定を後で行うことができます。
「クイック・セットアップ」のウィザードでは,次のようなタスクの手順を案内します。
ソフトウェア・ライセンス (PAK) の入力
ネットワーク・インタフェース・カード (NIC) の設定
静的ネットワーク・ルーティングの設定
次のようなネットワーク・サービスおよびネーム・サーバの指定
ドメイン・ネーム・サービス (DNS,以前は BIND)
ネットワーク・タイム・プロトコル (NTP)
ネットワーク情報サービス (NIS,以前は YP すなわちイエローページ)
ネットワーク・ファイル・システム (NFS)
省略時設定のローカルまたはリモートの,プリンタとサーバの設定
必要としないオプションはスキップできます。
詳細は,この節の後半で説明しています。
1.5.2.2 カスタム・セットアップ
このオプションは,個々の構成アプリケーションのアイコンを含む,「システム・セットアップ」の 1 つのバージョンを起動します。
システムをサーバとして設定するなど,システム固有の設定またはカスタム設定に必要なオプションだけを選択できます。
すべての構成アプリケーションがすべてのシステムで利用できるわけではありません。
/etc/checklist.desc
ファイルには,構成アプリケーションの一覧が含まれています。
アイコンを選択すると,適切な SysMan Menu ユーティリティ,X11 ベースの GUI,または文字セル・スクリプトが起動されます。 使用可能なユーティリティは,以下のとおりです。
License Manager (dxlicenses
) を起動します。
License Manager を使用すると,オペレーティング・システムやレイヤード・ソフトウェア・アプリケーションの製品登録キー (PAK またはライセンス) を登録できます。
ソフトウェア・ライセンスのハードコピーは,製品の配布メディアに添付されています。
詳細は,
dxlicenses
(8)lmf
(8)
Disk Configuration (diskconfig
) を起動します。
Disk Configuration を使用すると,システム上のディスク・デバイスの設定と管理ができます。
詳細は,
diskconfig
(8)disklabel
(8)
SysMan Menu Network Setup ウィザードを起動します。
このウィザードを使用すると,システムのネットワーク・コンポーネントを設定し管理する処理を,手順を追って実行することができます。
詳細は,
sysman
(8)network_manual_setup
(7)
ネットワーク・インタフェース・カード (NIC) の設定
静的ルートの設定と
/etc/routes
ファイルの設定
ルーティング・サービス (gated
,routed
,あるいは IP ルータ) の設定
リモート who サービス (rwhod
) のセットアップ
DHCP サーバ (joind
) のセットアップ
/etc/hosts.equiv
ファイルの内容の指定
/etc/networks
ファイルの内容の指定
Network Setup ウィザードで表示されるオプションの他に,サイト固有のネットワーク要件に応じて,NTP のようなその他のオプションをセットアップする必要があります。 詳細は,『ネットワーク管理ガイド:接続編』と『ネットワーク管理ガイド:サービス編』を参照してください。
「Configure system as a DNS client」を選択すると,ドメイン・ネーム・サーバ (DNS) を設定する DNS Client Configuration ユーティリティを起動できます。
詳細は,
bindconfig
(8)network_manual_setup
(7)
ネットワーク情報サービス NIS を設定する
nissetup
スクリプトを起動できます。
これは,ypsetup
とも呼ばれます。
詳細は,
nissetup
(8)network_manual_setup
(7)
SysMan Menu が起動され,システムの NFS コンポーネントの設定と管理を行う
Network File Systems (NFS)
ユーティリティが表示されます。
詳細は,
sysman
(8)nfs_intro
(4)
ファイル・システムへのアクセスと共用を可能にする
dxfileshare
オプションを起動します。
詳細は,
dxfileshare
(8)
ネットワーク時刻を設定する,SysMan Menu の
Network Time Protocol Configuration
オプションを起動できます。
詳細は,
sysman
(8)ntp
(1)ntp_intro
(7)
SysMan Menu が起動され,PPP (ポイント・ツー・ポイント・プロトコル) のオプションとシークレット・ファイルの設定を行う
Serial Line Networking
オプションが表示されます。
詳細は,
sysman
(8)ppp_manual_setup
(7)pppd
(8)
詳細は,PPP のエントリと
startslip
(8)
クライアント PC の UNIX および Windows NT ドメインのユーザ・アカウントの作成と,ユーザ・グループの管理を行う,Account Manager (dxaccounts
) の GUI を起動できます。
詳細は,
dxaccounts
(8)adduser
(8)
電子メールを送受信するシステムを設定する Mail Configuration ユーティリティを起動できます。
詳細は,
sysman
(8)mail_intro
(7)mailconfig
(8)
LAT (ローカル・エリア・トランスポート) サービスを設定する
latsetup
スクリプトを起動できます。
詳細は,
latsetup
(8)lat_intro
(7)
UNIX 間接続とモデムを設定する接続設定スクリプト
uucpsetup
を起動できます。
詳細は,
uucpsetup
(8)uucp_intro
(7)
ローカル・プリンタとリモート・プリンタを設定する SysMan Menu の Configure line printers オプションを起動できます。
詳細は,
sysman
(8)printconfig
(8)lprsetup
(8)
ベース・セキュリティと拡張セキュリティを設定する,SysMan Menu の
Security
ユーティリティを起動できます。
詳細は,
secconfig
(8)
監査サブシステムを設定する,SysMan Menu の
Security
ユーティリティを起動できます。
詳細は,
auditconfig
(8)
通常は root ユーザだけが実行できるユーティリティを,特権のないユーザに特権を割り当てて実行できるようにさせるための,SysMan Menu のオプション
DOP (Division of Privileges)
を起動できます。
詳細は,
dop
(8)sysman
(8)
Prestoserve を設定する
prestosetup
スクリプトを起動できます。
詳細は,
presto
(8)presto_setup
(8)
「システム・セットアップ」が提供しているオプションをすべて使用する必要はありません。 オプションを後で指定することができます。 オプションの設定の延期を選択して「システム・セットアップ」を終了した場合は,「システム・セットアップ」を「アプリケーション・マネージャ - システム管理」フォルダから,または SysMan Menu から,あるいは次のコマンド行で,手動で起動する必要があります。
# /usr/sbin/sysman # /usr/sbin/checklist # /usr/sbin/setup
SysMan では,ほとんどのすべてのシステム管理ユーティリティを統合し,それらを種々のユーザ環境で実行できるようにしています。 これらのユーティリティには,SysMan Menu という,階層構造のタスク指向型メニュー・インタフェースでアクセスできます。
SysMan Menu のすべてのタスクは,X11 機能を持つ画面,Windows NT Version 4.0 などの Microsoft Windows を実行している PC,または文字セル端末から実行できます。 SysMan Menu を開始する方法には,次のようないくつかの方法があります。
CDE デスクトップから SysMan Menu を開始する場合
root でログインし,CDE フロント・パネルの「SysMan Applications」パネルで SysMan Menu アイコンを選択します。
「アプリケーション・マネージャ」の「システム管理」グループから SysMan Menu アイコンを選択します。
端末ウィンドウのコマンド・プロンプトから SysMan Menu を開始するには,次のコマンドを入力します。
# /usr/sbin/sysman
SysMan Station から SysMan Menu を開始するには,ビュー・ウィンドウでシステム・アイコンを選択した後,SysMan Station の [Tools] メニューで [SysMan_Menu
] を選択します。
メニューでの名前またはそのアクセラレータの名前を使用して,コマンド行から直接特定のタスクを実行することができます。
アクセラレータは,SysMan Menu の各オプションに対する一意のキーワードです。
たとえば,[Configure Division of Privileges (DOP)
] メニュー・オプションを起動するタスクを実行するには,そのアクセラレータである
dopconfig
を使用して,システム・プロンプトで次のようにコマンドを入力します。
# /usr/sbin/sysman dopconfig
次のコマンドを使用すると,使用可能なタスクとそのアクセラレータの完全な一覧が表示されます。
# /usr/sbin/sysman -list
SysMan Menu では,オプションの一覧が階層構造 (ツリー) で表示されます。
各オプションは,ツリーのブランチとして表示され,さらにブランチ,またはタスクで終了するサブオプションが続きます。
サブオプションがある場合,各オプションを縮小したり展開したりできます。
サブオプションがあるかどうかは,各メニュー項目の前に表示される文字で識別できます。
+
記号は,さらにメニュー項目があることを示し,-
記号は,ブランチが完全に展開されていることを示します。
ブランチの終点のタスクの前には縦線 (|
) が表示されます。
この記号は,そのブランチがそれ以上展開できないことを示しています。
この場合,そのタスクを選択するだけで,管理ユーティリティを起動することができます。
図 1-6
は,CDE ユーザ環境で起動された SysMan Menu を示しています。
ただし,このメニューの内容は,使用するシステムによって異なります。
図 1-6: SysMan Menu
図 1-6 では,「ソフトウェア」ブランチ (ラベル 1) が完全に展開され,「インストレーション」ブランチと「ライセンス・データの登録」タスクが表示されています。 「インストレーション」ブランチ (ラベル 2) には,「ソフトウェアのインストール」や「インストールされているソフトウェアの一覧」など,いくつかのタスクが含まれます。 タスクを選択すると,関連するユーティリティが起動されます。
メニュー項目への移動方法や選択方法,あるいはタスクの起動方法は,curses
端末とウィンドウ環境のどちらかなど,使用しているユーザ環境によって異なります。
端末を使用している場合は,矢印キーまたは Tab キーを使ってメニュー項目の中を移動します。
移動した場所のオプションやボタンは強調表示されます。
Enter キーを使用して項目を選択し,ブランチを拡張したり,関連するユーティリティを起動するタスクを選択します。
ウィンドウ環境でマウスを使用している場合は,ブランチまたはタスクにポインタを移動して MB1 をダブルクリックすることで,ブランチを拡張したり,タスクを選択して関連するユーティリティを起動します。
ユーティリティのナビゲーションの手順についての詳細は,オンライン・ヘルプを参照してください。
SysMan Menu に表示されるオプションは,次のとおりです。
強調表示されている項目を選択します。 ブランチを選択すると,そのブランチが展開または縮小されます。 タスクを選択すると,関連するユーティリティが起動されます。
検索ウィンドウを起動します。 このウィンドウを使用して,キーワードを検索して関連するタスクを見つけることができます。
ブランチまたはタスクにコンテキスト依存ヘルプを表示します。
SysMan Menu ウィンドウをクローズします。
アクセラレータの表示など,SysMan Menu の画面構成のためのオプションを示します。
SysMan Menu の一般的なヘルプを表示します。
コンテキスト依存ヘルプは,2 行あるボタンの行間にあるペインにも表示されます。
このオンライン・ヘルプでは,マウス・ポインタまたは Tab キーを使用してウィンドウ内の項目に移動したときに,その項目の説明が表示されます。
タスクを選択すると,現在のユーザ環境に最も適したフォーマットで,関連するユーティリティが起動されます。
たとえば,X11 準拠ウィンドウ環境,または文字セル端末の
curses
フォーマットなどです。
詳細については,
sysman
(8)1.7 SysMan コマンド行の使用
sysman -cli
ユーティリティは,SysMan Menu のコマンド行インタフェース版であり,SysMan Menu タスクの実行,SysMan データの表示,あるいはスクリプトの作成による設定タスクのカスタマイズを行うことができます。
SysMan Menu タスクを使用してネットワークを設定する場合など,システムの別の部分をセットアップするときには,/etc/rc.config.common
や
/etc/hosts
などのシステム構成ファイルを操作します。
sysman -cli
ユーティリティを使用すると,コマンド行またはシェル・スクリプトで直接これらのファイルのエントリを表示し操作することができます。
sysman -cli
オプションを使用するには,root の特権が必要です。
たたし,特権を持たないユーザでも,このオプションを使用してシステムのセットアップ・データを表示することはできます。
特権を持たないユーザに SysMan タスク実行の権限を与えることができる「DOP (division of
privileges)」ユーティリティの使用についての詳しい説明は,
dop
(8)
この節では,sysman -cli
ユーティリティの多様な機能について簡単に説明します。
オプションとフラグの完全なリストについては,
sysman_cli
(8)/usr/examples/systems_management/sysman_cli
にあります。
コマンド行のいくつかの例を次に示します。
sysman -cli
コマンドを使用して,SysMan Menu で管理可能なコンポーネントをすべて表示できます。
たとえば,次のコマンドを使用すると,SysMan Menu の階層のメインのコンポーネントの一覧を表示できます。
# sysman -cli -list components Component(s): account_management atm auditconfig bindconfig bttape ciconfig clsschl doprc . . . networkedSystems . . .
次のコマンドは,networkedSystems
コンポーネントに含まれるグループを表示します。
# sysman -cli -list group -comp networkedSystems Component: networkedSystems Group(s): hostEquivalencies hostEquivFileText hostFileText hostMappings joinMappingService componentid digitalmanagementmodes
次のコマンドは,networkedSystems
コンポーネントの
hostMappings
グループ内のデータの現在の値を表示します。
このデータは,/etc/hosts
ファイルの内容です。
# sysman -cli -list values -group hostMappings / -comp networkedSystems Component: networkedSystems Group: hostMappings {} {} 127.0.0.1 localhost argnot {local host} 16.140.112.139 argnot.xxx.yyy.com jason server 16.140.112.3 jason.xxx.yyy.com fleece {backup server} 16.140.112.28 fleece.xxx.yyy.com {} {} 150.2.3.4 newshst.pubs.com
SysMan Menu のすべてのオプションに対して,sysman -cli
コマンドは,ユーティリティを起動することなく,システム・データを表示したり,操作することができます。
たとえば,次のコマンドは
/etc/hosts
ファイルからホストのエントリを削除する方法を示しています。
# sysman -cli -delete row -group hostMappings / -comp networkedSystems Please enter key 1 [systemName]: newshst.pubs.com Please enter key 2 [networkAddress]: 150.2.3.4
キー・データの入力を促すプロンプトが表示されています。
これによってユーティリティは
/etc/hosts
ファイル内のエントリを正確に識別します。
SysMan Menu オプションはテーブルに格納されているデータを扱うこともあるので,テーブル内の削除または変更する行を正しく識別する必要があります。
各行には,一意の識別子があります。
この識別子はキーと呼ばれ,sysman -cli
のコマンド・オプションで指定する必要があります。
キーを指定しなかった場合,キーの入力を促すプロンプトが表示されます。
次のコマンドは,特定のテーブルのキーを調べる方法を示しています。
# sysman -cli -list keys -group hostMappings -comp / networkedSystems Component: networkedSystems Group: hostMappings Keys: systemName,networkAddress
sysman -cli
コマンドを使用して,SysMan Menu で更新されるシステム・データ・ファイルのユーザ・データ・エントリを,追加したり削除することもできます。
たとえば,次のコマンドでは,対話式にメール・ユーザを追加します。
# sysman -cli -add row -comp mailusradm -group mailusers Attribute Name: user_name (key attribute) Attribute Description: user name Attribute Type: STRING(8), Default Value: Enter Attribute Value: davisB Attribute Name: nis Attribute Description: NIS User Attribute Type: INTEGER, Default Value: 0 Enter Attribute Value ( to use default): 1 Attribute Name: mail_type (key attribute) Attribute Description: mail user type Attribute Type: INTEGER ENUM / { 0=Local/pop, 1=Secure Pop, 2=IMAP, 3=Secure IMAP }, / Default Value: 0 Enter Attribute Value ( to use default): 2 Attribute Name: acl Attribute Description: acl list Attribute Type: INTEGER ENUM / { 0=all, 1=read, 2=post, 3=append }, Default Value: 0 Enter Attribute Value ( to use default): 0 Attribute Name: quota Attribute Description: user name Attribute Type: STRING(8), Default Value: Enter Attribute Value: Attribute Name: passwd Attribute Description: password Attribute Type: STRING(20), Default Value: Enter Attribute Value: change_me Attribute Name: orig_mailtype Attribute Description: original mail user type Attribute Type: INTEGER ENUM / { 0=Local/pop, 1=Secure Pop, 2=IMAP, 3=Secure IMAP }, / Default Value: 0 Enter Attribute Value ( to use default): #:
次のようにすべての属性値を指定して,1 行のコマンドとして入力することもできます。
# sysman -cli -add row -comp mailusradm -group mailusers / -data "{davisB} {1} {2} {0} {0} {pls_chg} {1}"
SysMan Station を使用すると,システム,システムのグループ,またはクラスタ全体を監視し,システム・リソースを管理することができます。 また,SysMan Menu を起動したり,[Tools] メニューからユーティリティを直接起動したりすることもできます。 さらに,システム・コンポーネントを示すアイコンを選択した後に MB3 を押して,選択したデバイスに適用するオプションのメニューを表示できます。 SysMan Menu とは異なり,SysMan Station は高度なグラフィカル・インタフェースであり,CDE または Microsoft Windows などのウィンドウ・ユーザ環境でだけ実行できます。
注意
SysMan Station のサーバとクライアントの互換性のあるバージョン間でのみ接続できます。 互換性のないサーバに接続しようとすると,次のようなエラー・メッセージまたはダイアログが表示されます。
System Management Server on host host name running version N, This client running incompatible version N
サーバからクライアントのソフトウェアをダウンロードして,適切なバージョンにアップグレードしてください。
この節では,カスタマイズされたビューを含む,SysMan Station の主要な機能について簡単に説明します。 詳細については,SysMan Station のオンライン・ヘルプを参照してください。
CDE で SysMan Station を開始するには,次の手順に従ってください。
root でログインし,CDE フロント・パネルまたは「SysMan Applications」サブパネルで SysMan Station アイコンを選択します。 ただしこれは,SysMan Station アイコンが「SysMan Applications」サブパネルの下のフロント・パネルに表示される,省略時設定の CDE 設定を想定しています。
「アプリケーション・マネージャ」の「システム管理」グループから SysMan Station アイコンを選択します。
コマンド・プロンプトで SysMan Station を開始するには,次のように入力します。
#sysman -station
SysMan Station を起動すると,ローカル・ホストに接続されます。
図 1-7
と同じような SysMan Station のメイン・ウィンドウが表示されます。
ただし,省略時設定の表示では,監視することが可能なものとして「Filesystems...」,「Network...」,「Storage」,および「System...」オプションが表示されます。
これらのオプションは,対象グループと呼ばれます。
図 1-7: SysMan Station のメイン・ウィンドウ
ポインタを対象グループに移動して MB1 をダブルクリックすることで,グループのイベント・データを取得できます。 イベントの一覧を表示したウィンドウが表示されます。
SysMan Station は,階層 (ツリー) 構造をした,システムのグラフィカル表示です。 たとえば,「Storage」オプションを使用すると,システムの全プロセッサ用の,すべてのバスのディスクをすべて表示できます。 監視対象の特定のデバイスを選択したり,そのデバイスを管理するユーティリティを起動することができます。 また,個々のデバイスの詳細 (プロパティ) を表示することもできます。 SysMan Station を使用して,システム,またはストレージ・デバイスなどの対象グループの表示 (ビュー) をカスタマイズすることもできます。 カスタム・ビューを素早く表示して,デバイス状態を確認することができます。
SysMan Station のメイン・ウィンドウで使用できる機能は,次のとおりです。
「Status」ペインでは,対象グループを監視します。 「Status」オプションについての詳細は 1.8.1 項 で説明しています。
「Views」ペインでは,システムコンポーネントの特定のビューを選択します。 「views」オプションについての詳細は,1.8.2 項 で説明しています。 このペインでは,SysMan Station で作成するカスタマイズ・ビューも表示します。
メニュー・オプションでは,ビューを変更したり,タスクを選択します。 これらのオプションについての詳細は,1.8.3 項 で説明しています。 その節では,カスタマイズ・ビューの保存方法についても簡単に説明しています。
1.8.1 SysMan Station の「Status」オプションの使用
SysMan Station を起動したとき,対象グループの状態が正常の場合には,「Status」ペインに大きなチェックマークのアイコンが表示されます。 状態が悪くなると,アイコンの色が変化し,背景色が赤のバツ記号 (X) になります。 これは,重大な問題が発生したことを示しています。 これらのアイコンを使用して,対象グループのコンポーネントが通知したシステム・イベントを即座に表示することもできます。
監視することが可能な省略時設定の対象グループは,次のとおりです。
UFS ファイル・システムまたは AdvFS ドメイン。
tu0
など,ローカル・ホストに接続されたネットワークおよびデバイス。
floppy
など,バスやデバイス・インタフェースに接続されたストレージ・デバイス。
floppy は,fdi0
などの
fdi
インタフェースに接続されたフロッピィ・ドライブ・ユニットです。
システム・コンポーネントに対応するイベントです。
1.8.2 SysMan Station の「views」の使用
「views」オプション・メニューには,対象グループの一覧が表示されます。 そのメニュー・オプションを選択して,ステータス・モニタ,または「views」ペインのグループの階層構造を示すウィンドウを表示することができます。 グループは,次のとおりです。
すべての AdvFS ドメインのビュー。
図 1-8 では,小規模の単一ディスク・システムにおける一般的な AdvFS ドメインのビューを示しています。
CPU から個々のディスクまで,すべてのデバイスを表示します。
図 1-9 では,小規模の単一プロセッサ・システムにおける一般的な Hardware View を示しています。
前の例には,システム・バス,および CD-ROM リーダである
cdrom0
などバスに接続されたさまざまなデバイスが表示されています。
AdvFS_Filesystems のビューと同じフォーマットで,現在マウントされているファイル・システムを表示します。
AdvFS_Filesystems のビューと同じフォーマットで,使用可能なすべてのファイル・システム (UFS,AdvFS) を表示します。
システム内の最も重要な箇所だけを監視したり,ビューに表示されているコンポーネントを管理するアプリケーションを実行するように,ビューをカスタマイズして,保存することができます。 ビューをカスタマイズした場合,そのビューを保存して,アイコンに割り当てることができます。 これについては,1.8.3 項 で説明しています。
システム・コンポーネントの画面では,コンポーネントを MB1 でクリックして,個々のシステムコンポーネントを選択し,階層構造の部分を展開したり縮小することができます。 コンポーネントを選択するとき,MB3 を使用すると次の 1 つまたは複数のオプションを含むメニューが表示されます。 メニューに含まれるオプションは,選択したオブジェクトに対してオプションが適用されるかどうかによって異なります。
これらのオプションは,コンポーネントの下のサブ・コンポーネントを表示したり見えなくしたりします。 たとえば,SCSI バスを選択するときに [Expand] オプションを選択すると,そのバスに接続されているすべてのデバイスが表示されます。
[Contract] オプションを選択すると,表示されていたデバイスが見えなくなります。
コンポーネントとそのサブ・コンポーネントを表示しないようにしたり,非表示されているコンポーネントを表示するようにしたりできます。
たとえば,pci0
などの PCI バスを選択しているときに [Hide] オプションを選択すると,そのバスに接続されているすべてのデバイスが非表示になります。
ここで,非表示になったデバイスは,そのバスを MB1 でダブルクリックしても,あるいは [Expand] メニュー・オプションを選択しても表示できません。
[Unhide Children] を選択すると,PCI バスに接続されたデバイスを表示できます。
このオプションは,コンポーネントに対して起動できる管理ユーティリティまたは設定ユーティリティを表示します。 たとえば,ディスク・デバイスを選択して,ディスク構成ユーティリティを起動できます。
選択しているデバイスの特性と現在の構成設定の詳細を表示します。
オプションは,使用不可能な場合には淡色表示となります。
1.8.3 SysMan Station のメニュー・オプションの使用
SysMan Station のメイン・ウィンドウには,次のプルダウン・メニューとオプションがあります。 これらは,マウスによる選択以外に,キーボードによる選択も可能です。
このメニューには,SysMan Station をクローズして終了するオプション,または他のシステムに接続するオプションが含まれています。
このメニューを使用すると,対象グループ「Filesystems...」など,対象グループ全体を削除することにより「Status」ビューをカスタマイズすることができます。
このオプションを使用すると,初期ウィンドウの選択により,さらなる SysMan Station のカスタマイズが可能になります。
このメニューを使用すると,種々の表示ビューを選択することができます。
SysMan Station を終了する前に,カスタム・ビューを保存するように促されます。 そのとき,名前とアイコンをカスタム・ビューに割り当てることができます。 SysMan Station を次に起動したときに,保存したカスタム・ビューが「Views」ペインに追加されます。
コンポーネントのビューのプルダウン・メニューのオプションは,次のとおりです。
現在の画面をプリントするオプション,新たに接続を作成するオプション,および現在のウィンドウをクローズして SysMan Station を終了するオプションがあります。
コンポーネントのグループを変更するオプション,「Expand」および「Hide」オプションなど省略時設定の表示内容を変更するオプションがあります。
選択されているコンポーネントに適用できる SysMan Menu ユーティリティの起動を行います。 このウィンドウの内容は,選択されているコンポーネントまたはデバイスのタイプによって異なります。 そのコンポーネントに適用できるユーティリティがない場合や,コンポーネントが何も選択されていない場合は,メニューには何も表示されません。
現在のシステム・ビューを制御し,ビューを切り替えることができます。
アイコン・サイズなど,ビューの表示内容を制御できます。
メイン・ウィンドウなど,他のウィンドウを呼び出すことができます。
SysMan Station を終了する前に,カスタム・ビューを保存するように促されます。 そのとき,名前とアイコンをカスタム・ビューに割り当てることができます。 SysMan Station を次に起動すると,保存したカスタム・ビューがビュー・ペインに追加されます。
SysMan Station の Microsoft Windows でのインストールについての詳細は,1.10 節
を参照してください。
1.9 HP Insight Manager
Web ベースの管理ユーティリティである HP Insight Manager は,異機種コンピューティング環境で使用でき,ネットワークに接続された任意のデバイスの情報にアクセスできます。 デバイスとは,コンピュータ・システム,ネットワーク・プリンタ,あるいはネットワーク・コンポーネント (ルータなど) です。 システムとそのコンポーネントあるいは周辺装置などの設定情報を取得でき,場合によっては,資産管理,資産の保全,負荷管理,またはイベント管理のような管理タスクを実行できます。
現在の実装では,HP Insight Manager は,DNOSysManGUI; や他の UNIX ユーティリティに対して,一貫性のあるラッパーを提供します。 このラッパーにより,サポートされているシステムを Web ブラウザで管理することができます。 Windows NT を実行している PC またはサーバでは,デバイスの詳細を表示したり,管理タスクを実行することができます。 UNIX システムでは,HP Insight Manager を使用してデバイスの詳細を表示することはできますが,管理タスクを実行するには UNIX の SysMan Menu または SysMan Station を起動しなければなりません。
HP Insight Manager の機能は,いくつかのオペレーティング環境では,完全に実装されていますが,その他の環境ではまだ完全には実装されていません。 つまり,Windows NT システムでは多くの機能を使用できますが,Tru64 UNIX では使用できない機能がいくつかあります。
HP Insight Manager の主要なサーバ構成要素は HP Insight Manager で,Windows NT に対して完全な管理サービスを提供するソフトウェア・コンソールです。 このコンソールによって,ローカル・エリア・ネットワーク内のデバイス,またはエージェントを実行しているドメインと通信することができます。 ここでは,デバイスとはネットワークに接続されているエンティティのことです。 エンティティとは,すべての周辺装置を含むコンピュータ・システム,ネットワーク・プリンタ,またはルータなどです。 エージェントの実行が可能な,アドレスを持つネットワーク・エンティティは,XE サーバとの通信が可能です。 ただし,デバイスの中には,ハードウェアの追加が必要になるものもあります。
Web ブラウザによる管理を可能にするには,デバイスは HP Insight Manager により認識されるオペレーティング環境を備えていなければなりません。 このようなオペレーティング環境は,WBEM ネットワークとデバイス情報を通信したり,WBEM ネットワーク内の他の (権限のある) デバイスから送信された命令を受信して実行できなければなりません。
オペレーティング環境では,標準プロトコルを使用してお互いに通信する HP 管理エージェントを実行できなければなりません。 デバイスおよびそれらのオペレーティング環境は,データ・モデルを使用して,ハードウェアおよびソフトウェアの状態の情報を提供します。 データ・モデルには,管理情報ベース (MIB),簡易ネットワーク管理プロトコル (SNMP) などがあります。 これらは,デバイスの管理可能な構成要素を表す,属性と値を持つオブジェクトのデータベースと考えられます。
HP Insight Manager は標準のプロトコルを使用してそのデータのためにデバイスをポールし,データベースの形式に依存しない,一貫した形式でそのデータをユーザに渡します。 この標準プロトコルを使用して,取得 (または操作) できるデバイス・データに対して一貫したラッパー処理を行います。
クライアント PC と,UNIX サーバまたは Windows NT サーバで構成された環境では,HP Insight Manager を管理タスクへの共通インタフェースとして使用できます。 たとえば,特権 (root) ユーザとして PC で作業している場合,HP Insight Manager を起動して UNIX オペレーティング・システムを実行している AlphaServer の一般的なシステム状態を表示できます。 また,SysMan Station を起動して,ディスク上のファイル・システムの状態など,周辺装置の特定の状態を検査できます。 さらに,SysMan Menu タスクを起動して,そのファイル・システムに対して操作を行うこともできます。
ローカル・エリア・ネットワーク内の,エージェントを実行しているシステムのポートに Web ブラウザを接続して HP Insight Manager を使用します。
たとえば,UNIX システムのホスト名とアドレスが
trout.cu.da.com
である場合には,ブラウザの「場所」(アドレス) フィールドに次の URL を入力します。
HTTP://trout.cu.da.com:2301
また,ホスト名とアドレスの代わりに
20.111.255.10
などの TCP/IP アドレスを指定することもできます。
システムに接続した後は,ローカル・システムや状態を表示したり,ローカル・ネットワーク内の他のシステムを選択することができます。
また,ローカル・デバイスの一覧からアドレスを選択することで,他のホストに接続することができます。
管理エージェントの設定と使用方法についての詳細は,
insight_manager
(5)1.10 パーソナル・コンピュータでの SysMan の使用
Java アプレットを使用する方法
(
insight_manager
(5)
この機能では,Microsoft Windows,MacOS および Linux がサポートされています。
この機能についての詳細情報と,必須ソフトウェアをダウンロードできるアドレスは,UNIX システムから利用可能な Web ページに説明してあります。
このページの URL は,http://<host>:2301/SysMan_Home_Page
です。
ここで,<host>
には,ホスト名およびアドレス,または TCP/IP アドレスを指定します。
次の手順に従ってください。
PC 上で,Netscape Web ブラウザを使用して
.../SysMan_Home_Page
ページを表示します。
このページへは,省略時設定の UNIX ホーム・ページの,Tru64 UNIX SysMan アイコンからリンクされています。
このページの「PC SysMan Client Software」セクションまで下方向にスクロールしてください。
必要条件と制限を確認して,自身のクライアント・システムに関する必要条件をメモします。 たとえば,クライアント・システム上では Internet Explorer Web ブラウザを使用しなければなりません。
必須ソフトウェアをダウンロードします。
ソフトウェア・キットをクライアント・システム上に保存するか,または直接実行するかを尋ねてきます。 後者のオプションでは,一般的な Windows のインストール手順でソフトウェアのインストールと設定を開始します。 たとえば,インストール先の場所の入力が求められます。 デスクトップの [スタート] メニューの既存のプログラム・グループまたは新規のプログラム・グループ,または指定したフォルダに,ショートカットを作成できます。
インストール処理が完了したら,「SysMan Station」および「SysMan Menu」が,Java アプリケーションとして,選択した場所に表示されます。 必要なアプリケーションを起動します。
どちらかのアプリケーションを起動すると,次の接続オプションを示すダイアログ・ボックスがオープンされます。
接続するホストの名前およびアドレス,または TCP/IP 番号を入力します。 省略時設定では,ローカル・ホストが表示されます。
現在のログイン名を使用するか,または新しいログイン名を使用するかを選択します。 たとえば,すでにクライアント・システムに通常のユーザでログインしている場合,そのホスト上で特権タスクを実行するためには,新たに root ユーザで接続する必要があります。
出力するディスプレイをリダイレクトする場合は,このボックスにチェック・マークを付けて出力先ディスプレイのアドレスを指定します。
[OK] を選択すると,アプリケーションのウィンドウがオープンします。 アプリケーションの起動にかかる時間は,ネットワークの転送速度と通信量によって異なります。 前述の節で説明したように,SysMan Station または SysMan Menu が使用できるようになります。
モデム接続を介してリモート・システムを管理できます。
シリアル回線コンソールを使用すると,ローカル・システムに接続されているモデムを介して,ローカル端末を,リモート・システム・コンソールおよびリモート・システムの通信ポート
COMM1
に接続することができます。
ローカル・システムは,モデム接続が可能であれば,どのような端末または端末エミュレーション・デバイスでも構いません。
たとえば,ダム端末,X 端末ウィンドウ,パーソナル・コンピュータ (PC) などが使用できます。
管理タスクを実行するには,root (または管理特権を持つアカウント) としてログインできなければなりません。
この接続はコンソール・ポートと呼ばれます。 端末接続は,プロセッサがサポートするコンソール・ファームウェアに応じて,57,600 までの通信レートをサポートします。 現在のところこの機能は,AlphaServer 1000A のような,コンソール・デバイスとしてモデムをサポートするシステムでのみ使用可能です。 使用しているシステムでこのような機能が使用できるかどうかについては,システム・ハードウェアのマニュアルを参照してください。
コンソール・ポートを使用すると,次の操作を実行することができます。
tip
,telnet
,または PC 端末エミュレーション・ユーティリティなどのユーティリティを使用してリモート・システムに接続する。
システムをリモートでブートしたりシャットダウンして,すべてのブート・メッセージを監視する。
カーネル・デバッガを開始して,デバッガ・メッセージを監視する。
コマンドおよびユーティリティを使用して,システム管理タスクを実行する。
リモート・システムで環境構成ユーティリティ (ECU: Environment Configuration Utility) を実行すると,モデム接続が切断されます。
このため,コンソール・デバイスとしてモデムを設定して使用する前に,ECU を使用して環境構成を完了しておく必要があります。
1.11.1 コンソール・ポートの設定
以降の各項で,シリアル回線コンソール・ポートを設定し,ダイアル・イン用にリモート・モデムを設定する手順の概要を説明します。
ローカル (ダイアル・アウト) モデムはすでにインストールされ,使用できるように構成されているものとします。
1.11.1.1 モデムの COMM1 への接続
リモート・システムの
CONSOLE
環境変数を
serial
に設定しておく必要があります。
モデムに付属のハードウェア・マニュアルを参照して,モデムをシステムに接続してください。
正しいモデム設定値を取得し,適切なシステム・ファイル・エントリを作成する方法については,
modem
(7)/etc/inittab
ファイルの
cons
エントリを変更して,getty
または
uugetty
プロセスが COMM ポートを正しく設定できるようにする必要があります。
この行は,次のような行です。
cons:1234:respawn:/usr/sbin/getty console console vt100
コンソール・デバイスとしてボー・レート 38,400 で動作するように設定されたモデムを使用する場合は,この行を次のように変更します。
cons:1234:respawn:/usr/sbin/getty console M38400 vt100
シリアル・ドライバが変更されて,Carrier Detect (DCD) タイムアウト値が構成できるようになっています。 このタイマの省略時の値は 2 秒ですが,これは DEC STD-052 規格に従うものであり,ほとんどのモデムに適しています。 このタイマは,DCD 信号がドロップした場合に,回線の切断を宣言して DTR および RTS 信号をドロップするまでにドライバが待機しなければならない時間を決定するために使用されます。 モデムの中には DTR が短時間の間隔でドロップすると想定するものがあるので,モデムのマニュアルを参照して,間隔を確認してください。
タイマの変更は,/etc/sysconfigtab
ファイルまたは
sysconfig
コマンドで,0 (タイムアウト期間なし),1,あるいは 2 秒に設定することができます。
/etc/sysconfigtab
ファイルでタイマを設定するには,このファイルを編集して次の行を追加します。
ace: dcd_timer=n
この場合,n には 0,1,または 2 を指定します。
sysconfig
コマンドでタイマを変更する場合には,次の構文を使用します。
# sysconfig -r ace dcd_timer=n
この場合,n には 0,1,または 2 を指定します。
sysconfig
コマンドで値を変更した場合には,システムのリブート時に設定が失われることに注意してください。
リブートしても設定が失われないようにするには,/etc/sysconfigtab
ファイルを編集します。
1.11.1.3 コンソール環境変数の設定
COM1_MODEM
,COM1_FLOW
,および
COM1_BAUD
コンソール環境変数の設定は,モデム用にシステム・ファイルのエントリを作成した際に使用した
getty
または
uugetty
設定と同じ値でなければなりません。
コンソール環境変数の設定方法についての説明は,ハードウェアのマニュアルを参照してください。 通常,変数の設定は,次の例に示すように,システムのシャットダウン時にコンソール・モードで行います。
>>> set COM1_MODEM ON >>> set COM1_FLOW SOFTWARE >>> set COM1_BAUD 9600
有効な設定は次のとおりです。
COM1_MODEM
: ON または OFF
COM1_FLOW
: NONE,HARDWARE,SOFTWARE,BOTH
COM1_BAUD
: ご使用のシステムのハードウェア・マニュアルを参照
ボー・レートやフロー制御,またはモデム設定を変更すると (たとえば
getty
コマンドを使用して),その変更はコンソール・レベルまで通知されて,環境変数が自動的に変更されます。
1.11.1.4 モデム設定の確認
リモート・システムがブートされない場合は,そのシステムにダイアルして,ログイン・プロンプトまたはコンソール・プロンプトを表示させます。
ログアウトまたは接続を切断して,回線が正しくハングアップすることを確認してください。
再度ダイアル・インして,再接続できることを確認します。
1.11.2 コンソール・ポート接続の開始
別の方法で,ローカル・システムとリモート・システム間の接続を開始することができます。
tip
,kermit
,cu
接続は,端末または X 端末ウィンドウから開始することも,あるいは PC ベースの端末エミュレータを使用して開始することもできます。
たとえば,次のように
tip
コマンドを使用することができます。
# tip [telephone number] # tip cons
この例で,telephone_number
には,外線用の番号や市外局番を含めて,リモート・システムの電話番号を指定します。
2 行目は
/etc/remote
ファイルのエントリ例であり,このファイルでリモート・システムおよび tip 設定を詳細に指定することができます。
ダイアル・アウト・コマンドを開始して,2 つのモデムの接続が確立されると,connect
という文字がローカル端末のウィンドウに表示されます。
Return キーを押すと,コンソール・プロンプト (>>>
) または
login:
プロンプトが表示されます。
詳細については,
tip
(1)1.11.2.1 コンソール・ポートの使用
システムにアクセスして特権アカウントにログインすると,グラフィカル・ユーザ・インタフェースにアクセスする必要のない管理タスクであれば,コマンドの使用やユーティリティの実行など,本書で説明しているすべての管理タスクを実行できます。 次の機能は,リモート管理に有効です。
uucp
UNIX システム間コピー・ユーティリティはスクリプトやファイルをリモート・システムにコピーします。
詳細については,
uucp
(1)
ikdebug
カーネル・デバッグ・ツール
ikdebug
はリモートで起動して使用することができます。
詳細については
ikdebug
(8)/etc/remote
ファイルのエントリを変更して,正しいボー・レートに修正する必要があります。
たとえば,次の行のボー・レートを 9600 から変更しなければならない場合があります。
# access line for kernel debugger kdebug:dv=/dev/tty00:br#9600:pa=none:
詳しい説明については,『Kernel Debugging』を参照してください。
現在,syslogd
デーモンには内部スイッチがあり,コンソールへのメッセージ出力を無効にしたり有効にしたりすることができます。
この機能は,syslogd
コマンド行に
-s
フラグを指定するか,または次のコマンドを実行することにより起動します。
# /usr/sbin/syslog
詳細は,
syslog
(1)1.11.2.1.2 リモート・システムのシャットダウン
リモート・システムをシャットダウンすると,モデム接続はドロップします。 これを回避するには,システムをシャットダウンする前に,次のコマンドを実行してください。
# stty -hupcl
詳細については,
stty
(1)
シャットダウンが完了すると,コンソール・プロンプトにアクセスできます。
1.11.2.1.3 リモート・セッションの終了
オペレーティング・システムのシェル・プロンプトからリモート・セッションを終了するには,[Ctrl/d]
を押してログアウトしてリモート・セッションを終了します。
別の方法では,[+++]
をタイプしてモデムをローカル・コマンド・レベルにし,[ATH]
をタイプした後に
[Return]
キーを押して,接続をハング・アップします。
1.11.3 トラブルシューティング
システムの設定および接続に問題がある場合には,設定に関して次の点を調べてください。
ローカル・モデムがダイアル・アウトしない。
ケーブルと接続を調べて,電話線のプラグが正しいソケットに差し込まれ,ダイアル・トーンが聞こえることを確認してください。
リモート・モデムが応答しない。
リモート・モデムが自動応答
ATS0=n
に設定されていることを確認してください。
この場合
n
には,モデムが応答するまでに鳴るベルの回数を指定します。
modem
(7)
リモート・モデムが応答した後に接続が切断される。
これは,誤ったダイアル・イン・アクセスの設定が原因である場合がほとんどです。
modem
(7)
リモート・モデムが応答するが,文字がランダムに出力されるだけである。
この問題は通常,COMM ポートのボー・レートとモデムのボー・レートの不一致によって起こります。
modem
(7)
shutdown
コマンドでリモート・システムをシャットダウンすると接続がドロップされる。
stty
属性
hupcl
が省略時の設定です。
シャットダウン中に回線が切断されるのを回避するには,次のコマンドを使用します。
# stty -hupcl