Tru64 UNIX システムをインストールおよび構成したら,この章の指示に従って,このシステムをクラスタの第 1 メンバにします。表 4-1 に,作業を実行順に示すとともに,必要な情報の参照先を示します。
注意
第 1 メンバのブート・ディスクまたはクォーラム・ディスクに対して Fibre Channel ストレージセットを使用する場合は,『クラスタ・ハードウェア構成ガイド』の Fibre Channel に関する章をお読みください。
作業 | 参照先 |
クラスタの作成に必要な情報を収集する。 | 第 2 章 |
Tru64 UNIX をインストールおよび構成する。 | 第 3 章 |
TruCluster Server のライセンスを登録する。 | 4.1 節 |
TruCluster Server サブセットをロードする。 | 4.2 節 |
必要に応じてパッチをあてる。 | 4.3 節 |
clu_create コマンドを実行する。 |
4.4 節 |
第 1 メンバのクラスタ・ブート・ディスクをブートする。 | 4.4 節および4.5 節 |
重要な構成ファイルのオン・ディスク・バックアップ・コピーを作成する。 | 4.6 節 |
シングル・メンバ・クラスタのフル・バックアップを実行する。 | Tru64 UNIX 『システム管理ガイド』 |
4.1 TruCluster Server のソフトウェア・ライセンス登録
TruCluster Server キットには,ライセンス PAK (Product Authorization Key) が含まれています。この PAK は,TruCluster Server のライセンスを登録するときに使用します。TruCluster Server のライセンスについては,1.5 節を参照してください。PAK がない場合には,弊社のサービス担当者に連絡してください。
ライセンス PAK の登録についての詳細は,Tru64 UNIX 『Software License Management
』,
lmf
(8)lmfsetup
(8)4.2 TruCluster Server サブセットのロード
TruCluster Server キットをロードするには,次の手順に従います。
スーパユーザ (root
) としてログインします。
TruCluster Server ソフトウェア・バージョン 5.1B のキットが含まれているデバイスまたはディレクトリをマウントします。
キットを配置するディレクトリを指定する
setld -l
コマンドを入力します。たとえば,CD-ROM を
/mnt
にマウントする場合には,次のように入力します。
# setld -l /mnt/TruCluster/kit
次のサブセット・インストレーション・オプションから 1 つを選択できます。
All mandatory subsets only (すべての必須サブセットのみ)
All mandatory and selected optional subsets (すべての必須サブセットと選択したオプション・サブセット)
All mandatory and all optional subsets (すべての必須サブセットとすべてのオプション・サブセット)
"All mandatory and all optional subsets" オプションを選択することをお勧めします。
オプションを選択すると,サブセットをシステムにコピーする前に,インストレーション・プロシージャにより十分なファイル・システム・スペースがあるかどうかが確認されます。
最初のクラスタ・メンバとなるシステムに,パッチ・キットをインストールします。パッチをあてる場合,ベース・オペレーティング・システム・パッチおよびクラスタ・パッチの両方を適用する必要があります。これは,TruCluster Server サブセットがシステム上に存在する場合にのみ行います。
クラスタ・サブセットがロードされる以前に,システムにパッチがあてられていた場合はシステムに再度パッチをあてる必要があります。最新の Tru64 UNIX および TruCluster Server パッチをインストールすることを推奨します。
パッチは,clu_create
コマンドを実行する前に適用してください。
パッチの詳細については 『Patch Kit Installation Instructions』 を参照してください。パッチは次のアドレスからダウンロードすることができます。
http://ftp.support.compaq.com/patches/.new/unix.shtml
4.4 clu_create コマンドの実行
/usr/sbin/clu_create
コマンドを実行すると,Tru64 UNIX システムからクラスタの第 1 メンバが作成されます。
このコマンドは,/usr
ファイル・システム・ディスクの空き容量が
vmunix
(通常,この製品の合計は 100 MB 以下) のサイズの最低 3 倍はあることを確認します。ディスクの容量が足りない場合,カスタマイズされたクラスタ・カーネルを構築するのに十分な容量がないことを告げるメッセージが表示されます。ディスク容量が足りないため,カーネルを構築することができなくても,clu_create
コマンドは正常に終了します。その後,クラスタ
genvmunix
をブート・ディスクからブートし,シングル・メンバ・クラスタにおいてカスタマイズされたカーネルの構築を試みることができます。
注意
clu_create
コマンドは,vdump
およびvrestore
コマンドを使用して,クラスタ単位のルート (/
),/usr
,および/var
の各ファイル・システムを操作します。Tru64 UNIX システム上にあるこれらファイル・システムのいずれかに,ネットワーク・ファイル・システム (NFS) がマウントされていて,そのファイル・システムの NFS サーバがダウンしている場合,ファイル・システムのダンプを取ろうとすると,vdump
はハングします。automount
デーモンを実行する場合には,NFS ファイル・システムがマウントおよびアンマウントされ,同様にハングする可能性があるので注意してください。
clu_create
コマンドを実行する前に,すべての NFS ファイル・システムをアンマウントするか,またはそれらがアクセスできることを確認します。あるいは,clu_create
コマンドを実行する前に,Tru64 UNIX システムをリブートすることにより,すべての不要なマウントを解除することもできます。automount
デーモンを実行するシステムでは,clu_create
コマンドより先に/sbin/init.d/nfsmount stop
コマンドを実行すると,自動マウントを無効にすることができます。
/usr/sbin/clu_create
コマンドを実行します。このコマンドは,シングル・メンバ・クラスタの作成に必要な情報を入力するためのプロンプトを表示します。付録 A
のチェックリストの情報を使用して,プロンプトに応答します。
このコマンドには各質問へのオンライン・ヘルプもあります。
関連するヘルプ・メッセージを表示するには,プロンプトで
help
または疑問符
?
を入力します。
4.4.1 クラスタ・インターコネクトの選択
clu_create
コマンドはクラスタ・インターコネクトのタイプ (LAN または Memory Channel) を入力するように求めます。このとき,Memory Channel アダプタがインストールされていると,省略時の値として Memory Channel が示されます。
クラスタ・インターコネクトのタイプに Memory Channel を指定すると,clu_create
は省略時の物理クラスタ・インターコネクト・インタフェースとして
mchan0
を割り当てます。
LAN を指定すると,clu_create
コマンドから物理クラスタ・インターコネクト・デバイス名を入力するように求められますが,その場合は,以下のオプションがあります。
tu0
,
ee0
, または
alt0
のように,1 つのネットワーク・インタフェースのデバイス名を指定する。
複数のネットワーク・インタフェースのデバイス名を繰り返し指定する。clu_create
コマンドでは,これらのインタフェースを NetRAIN 仮想インタフェースに構成するという指定ができる。
注意
すでに存在する NetRAIN デバイスのデバイス名 (たとえば,
/etc/rc.config
ファイルで定義されているもの) を指定すると,clu_create
コマンドから,その NetRAIN デバイスを物理クラスタ・インターコネクト・デバイスとして再定義するかどうかの確認を求められます。"yes" と答えると,clu_create
コマンドは,/etc/rc.config
ファイルから NetRAIN デバイスの定義を削除し,そのデバイスを/etc/sysconfigtab
ファイルのics_ll_tcp
スタンザにクラスタ・インターコネクト・デバイスとして定義します。
その後,clu_create
コマンドは
member
member-ID-icstcp0
という形式で物理クラスタ・インターコネクト・デバイスの IP 名を作成します。省略時には,このデバイスに IP アドレスとして
10.1.0.
member-ID
を割り当てます。
clu_create
コマンドがクラスタ・インターコネクトを定義するために書き込む
/etc/sysconfigtab
属性のリストは,表 C-2
を参照してください。
4.4.2 clu_create が実行するタスク
clu_create
コマンドでは,次のタスクが実行されます。
クラスタ単位のルート (/
),/usr
,/var
の各ファイル・システム,および第 1 メンバのブート・ディスクの設定
クォーラム・ディスクの構成 (オプション)
クラスタ・コンポーネントでのカーネルの構築
カーネルの構築が成功すると,clu_create
により新しいカーネルが第 1 メンバのブート・ディスクにコピーされます。カーネルの構築に失敗すると
clu_create
により警告メッセージが表示されますが,第 1 メンバの作成は続行されます (ブート・ディスクからクラスタ
genvmunix
をブートして,シングル・メンバ・クラスタ上のカーネルを構築することができます)。
ブート関連コンソール変数
bootdef_dev
と
boot_reset
の設定および
boot_dev
の作成と設定
clu_create
で変数が設定でき,カーネルの構築に成功した場合は,clu_create
によってシステムがリブートされます。この時点でシステムをリブートしない場合には,シングル・メンバ・クラスタとしてシステムをブートする準備ができたら,4.5 節を参照してください。
clu_create
で変数を設定できない場合は,システムを停止して,変数を2.7 節で指定した値に設定し,4.5 節の情報を参考にしてシステムをシングル・メンバ・クラスタとしてブートします。
注意
第 1 メンバのブート・ディスクが,デュアル SCSI または Fibre Channel バスに接続された HS コントローラを介してアクセスされたり,複数バス・フェイルオーバ用に構成されていたりする場合,あるいは,システムが AlphaServer 8200 または 8400 の場合は,システムを停止し,
bootdef_dev
コンソール変数の設定方法について,2.7 節を参照してください。
clu_create
コマンドでは,インストレーションのログ・ファイルが
/cluster/admin/clu_create.log
に書き込まれます。ログ・ファイルには,すべてのインストレーション・プロンプト,応答,およびメッセージが含まれています。システムをシングル・メンバ・クラスタとしてブートする前に,このログ・ファイルにエラーがないかどうかを確認してください。clu_create
のログ・ファイルの例は,D.1 節に示しています。
4.5 シングル・メンバ・クラスタとしてのシステムのブート
システムを手動でブートする場合は,シングル・メンバ・クラスタとしてシステムをリブートする前に,clu_create
のログ・ファイル
/cluster/admin/clu_create.log
の次の項目を確認します。
新しいメンバのカーネルが正常に作成され,このメンバのブート・パーティションにコピーされたことを確認します。clu_create.log
ファイルで,次のようなメッセージを探してください。
*** PERFORMING KERNEL BUILD *** Working....Tue May 8 15:54:11 EDT 2001 The new kernel is /sys/PEPICELLI/vmunix Finished running the doconfig program. The kernel build was successful and the new kernel has been copied to this member's boot disk. Restoring kernel build configuration.
ブート関連コンソール変数が,Tru64 UNIX ブート・ディスクではなく,第 1 メンバのクラスタ・ブート・ディスクをブートする設定になっていることを確認します。ログで,次のようなメッセージを探してください。
Updating console variables Setting console variable 'bootdef_dev' to dsk10 Setting console variable 'boot_dev' to dsk10 Setting console variable 'boot_reset' to ON Saving console variables to non-volatile storage
新しいカーネルが適切な場所にあり,コンソール変数が正しく設定されている場合は,新しく作成したそのメンバ・ブート・ディスクから,シングル・メンバ・クラスタとしてシステムをリブートします。次のように入力します。
# shutdown -r now
カーネルの構築に失敗したか,または,コンソール変数を設定できなかった場合は,以下のようにしてシステムを停止させます。
# shutdown -h now
次の手順を実行します。
clu_create
でコンソール変数を設定できなかった場合は,コンソール変数を
2.7 節で指定した値に設定します (この後の手順では,コンソール変数が正しく設定されていることを前提としています)。
カーネルの構築に成功したら,bootdef_dev
が Tru64 UNIX ディスクではなく第 1 メンバのクラスタ・ブート・ディスクに設定されていることを確認して,第 1 メンバのブート・ディスクから
vmunix
をブートします。
>>> boot
カーネルの構築に失敗,または,第 1 メンバのブート・ディスクから
vmunix
をブートできなかった場合,bootdef_dev
が Tru64 UNIX ディスクではなく第 1 メンバのクラスタ・ブート・ディスクに設定されていることを確認してから,genvmunix
をブートします。
>>> boot -file genvmunix
システムがマルチユーザ・モードになったら,ログインしてカーネルを構築します。構築が成功した場合は,新しいカーネルを
/sys/HOSTNAME/vmunix
から
/vmunix
にコピー (
cp
) します。カーネルを
/vmumix
に移動する (
mv
) 場合は,/vmunix
コンテキスト依存シンボリック・リンク (CDSL) を上書きします。次にシステムをブートして,カスタマイズしたカーネルで動作するようにします。
# doconfig -c HOSTNAME # cp /sys/HOSTNAME/vmunix /vmunix # shutdown -r now
省略時のクラスタ別名に予約したネットワーク IP アドレスを割り当てている場合は,その別名アドレスの通知方法について2.3.1 項を参照してください。
LSM を使用する場合は 2.5.2 項を参照してください。
このノードをシングル・メンバ・クラスタとしてブートする場合は,/etc/ftpusers
などのアクセス関連ファイルがすべてクラスタ・メンバによって共用されるのに対し,/etc/securettys
などのその他のファイルはメンバ固有のファイルへの CDSL で置き換えられます。これは,ftpusers
などのファイルは,クラスタ単位の要素であるユーザ・アカウントを処理するのに対し,securettys
などのファイルはメンバ固有の情報,この場合は
tty
デバイスを処理するためです。
クラスタ・メンバとして最初にブートする場合は,clu_check_config
コマンドが実行され,複数の重要なクラスタ・サブシステムの構成が検査されます。
これらのサブシステムが正しく構成され,正しく動作しているかどうかを確認するには,/cluster/admin
ディレクトリの
clu_check_config
ログ・ファイルを調べます。問題がある場合は,
clu_check_config
(8)
次の一連のコマンドは,クラスタの初期構成や主なサブシステムをすばやく参照する際に便利です。
# clu_get_info -full | more # clu_quorum # cfsmgr | more # drdmgr `ls /etc/fdmns/* | grep dsk | sed 's/[a-z]$//' |\ uniq | sort` | more # cluamgr -s DEFAULTALIAS # caa_stat
4.6 重要な構成ファイルのオン・ディスク・バックアップ・コピーの作成
クラスタ・メンバは,次のファイルの情報を使用するため,クラスタの第 1 メンバをブートした後,これらのファイルが不注意で変更された場合に備えて,オン・ディスク・コピーを作成しておくことをお勧めします。メンバ固有のファイルについては,この例では,第 1 メンバのメンバ ID を
1
(memberid=1
) と想定しています。
# cp /etc/sysconfigtab.cluster /etc/sysconfigtab.cluster.sav
# cp /etc/rc.config.common /etc/rc.config.common.sav
/etc/sysconfigtab
-- このファイルは CDSL であり,ターゲットは次のとおりです。
../cluster/members/{memb}/boot_partition/etc/sysconfigtab
バックアップ・コピーを作成するには,第 1 メンバの
boot_partition/etc
ディレクトリに移動して,その
sysconfigtab
ファイルのコピーを作成します。たとえば,次のように入力します。
# cd /cluster/members/member1/boot_partition/etc # cp sysconfigtab sysconfigtab.sav
/etc/rc.config
-- このファイルは CDSL であり,ターゲットは次のとおりです。
../cluster/members/{memb}/etc/rc.config
バックアップ・コピーを作成するには,第 1 メンバの
etc
ディレクトリに移動して,その
rc.config
ファイルのコピーを作成します。
たとえば,次のように入力します。
# cd /cluster/members/member1/etc # cp rc.config rc.config.sav
さらに,シングル・メンバ・クラスタのフル・バックアップも実行しておくことをお勧めします。