この項では,TruCluster Server 環境でパッチ・キットをインストールまたは削除する際に気をつけるべき点について説明します。
3-3-1 クローニングの前に dupatch ツールを展開する |
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クローニング手順を開始する場合,まず Version 5.1B-4 CD を Version 5.1B-3 システムにマウント (または Web からダウンロードした場合はキットを解凍) し,dupatch コマンドを実行して,必要なクローニング・ツールをインストールしてください。
最新の dupatch ツールのインストールに関する詳細については,『パッチ・キット・インストレーション・ガイド』を参照してください。
3-3-2 無視できる dupclone エラー・メッセージ |
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システムにすべてのオペレーティング・システムおよび TruCluster Server ベース・サブセットがインストールされていない場合は,dupclone を使用してキットをインストールする際,以下のようなメッセージが表示される場合があります。
Problem installing:
- Tru64_UNIX_V5.1B:
Patch 27034.00
requires the existence of the following un-installed/un-selected subset(s):
- Tru64_UNIX_V5.1B:
Patch 27023.00
- Tru64_UNIX_V5.1B:
Patch 27050.00
.
.
. |
このメッセージは無視しても構いません。
ほとんどの場合,サブセットは正しくインストールされます。
dupclone の詳細については,1-2-3 項 「ノーロール・パッチの代わりとなるクローニング」を参照してください。
3-3-3
CSP がインストールされたシステムで dupatch クローニングが影響を受ける問題
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カスタマー固有パッチ (CSP) をシステムにインストールした場合,dupatch クローニング処理を使用してキットをインストールすると,クローニング処理が終了する際に以下のようなメッセージが表示される場合があります。
Inspecting 69 patches for possible system conflicts ...
./usr/bin/ls:
is installed by Customer Specific Patch (CSP):
- Tru64_UNIX_V5.1B / Installation Patches:
Patch 01682.00 - Fix for dupatch command
and can not be replaced by this patch. To install this patch,
ideally, you must first remove the CSP using dupatch.
Before performing this action, you should contact your
HP Service Representative to determine if this patch kit
contains the CSP. If it does not, you may need to obtain a new
CSP from HP in order to install the patch kit and retain the
CSP fix. Or, you may use dupatch baselining to enable the
patch installation. |
この場合,dupatch ベースライン処理を実行してパッチのインストールを可能にし,システム上の CSP はそのまま維持することをお勧めします。
CSP を削除すると,メッセージで説明されているように,その CSP によって行われた修正が削除される場合があります。
ベースライン処理を既存のシステム上で実行した後,システムを別のディスクのセット上に再度複製して dupatch クローニング処理を再度実行することによって,クローニング処理を最初から実行する必要があります。
ベースライン処理の実行およびパッチのクローニング処理に関する詳細については,『パッチ・キット・インストレーション・ガイド』を参照してください。
3-3-4 パッチが適用されたスタンドアロン・システムをクラスタへ移行する |
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非クラスタ・システムでベース・パッチのみをインストールした場合,TruCluster Server パッチに依存するさまざまなパッチのインストールが省略されます(この中には一部のセキュリティ・パッチも含まれます)。
これらのパッチはスタンドアロン・システムでは必要ありませんが,スタンドアロン・システムを clu_create コマンドを使用してクラスタ化し,クラスタ・パッチを適用した場合,一部の必須パッチのインストールが失敗することにより,複数のパッチの適用でエラーが発生します。
これらのエラーは必ずしもパッチ処理が失敗したことを示しているわけではありませんが,エラーの数が多いために紛らわしく,本当のエラーが分かりづらくなります。
スタンドアロンのシステムをクラスタに追加する推奨手順は以下のとおりです。
スタンドアロン・システムにオペレーティング・システムを再インストールします。
clu_create コマンドを実行し,スタンドアロン・システムをクラスタ・ノードとして設定します。
すべてのベース・パッチおよびクラスタ・パッチを適用します。
3-3-5 クラスタ・ドメインでインストールを行う場合は vfast ユーティリティを無効にする |
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TruCluster ドメイン cluster_root および cluster_var 上で vfast ユーティリティが実行されている場合,キットをインストールまたは削除する前に vfast を無効にしてください。
これら 2 つのドメインで vfast を無効にするには,以下のコマンドを使用します。
# vfast deactivate cluster_root
# vfast deactivate cluster_var |
詳細については,vfast(8) のリファレンス・ページを参照してください。
3-3-6 一定サイズ以上の MFS ファイル・システムの作成はバージョン・スイッチに依存する |
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キットのインストール中,4 GB 以上 (または 1024 バイトのセクタ・サイズが使用されている場合は 2 GB 以上) の MFS ファイル・システムは,バージョン・スイッチ処理が行われるまで作成できません (バージョン・スイッチについては『パッチ・キット・インストレーション・ガイド』を参照)。
3-3-7 パッチ・キットの削除を可能にするためのファイルの保管 |
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同じロール内でオペレーティング・システムをアップグレードしてパッチ・キットをインストールする場合,パッチ・バックアップの内容が誤って削除されます。
この結果,バックアップが失われてしまうため,直前にインストールされたパッチは削除できません。
以下の手順を実行すると,後でパッチ・キットを削除する際に使用できるよう,バックアップが保存および復元されます。
インストール後の処理 (clu_upgrade postinstall) を実行した後,以下のように /backup ディレクトリおよび /doc ディレクトリのバックアップ・ファイルを作成します。
# cd /var/adm/patch/backup
# tar cvf /var/adm/patch/BACKUP.tar *
# cd /var/adm/patch/doc
# tar cvf /var/adm/patch/DOC.tar * |
スイッチ処理 (clu_upgrade switch) を実行した後,手順 1 で作成したファイルを展開します。
# cd /var/adm/patch/backup
# tar xvf /var/adm/patch/BACKUP.tar
# cd /var/adm/patch/doc
# tar xvf /var/adm/patch/DOC.tar |
これにより,以下のディレクトリにファイルが復元されます。
3-3-8 インストレーション後にバージョン・スイッチを有効にする |
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パッチによっては,パッチが提供する新機能を有効にするために,versw -switch コマンドの実行が必要になります (バージョン・スイッチに関する詳細については,『パッチ・キット・インストレーション・ガイド』を参照)。
dupatch によるインストール処理が完了した後,次のコマンドを入力します。
新しい機能は,システムのリブート後に利用可能になります。
versw -switch コマンドの実行は必須ではありませんが,実行しなかった場合,バージョン・スイッチ・パッチによって提供される機能を使用することはできません。
3-3-9 バージョン・スイッチの無効化に必要なスクリプト |
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3-3-8 項 「インストレーション後にバージョン・スイッチを有効にする」 の説明に従ってバージョン・スイッチを有効にした場合には,Version 5.1B-4 を削除する前に /usr/sbin/versw_enable_delete スクリプトを実行する必要があります。
このスクリプトを実行する際,クラスタまたは単体のシステムを完全にシャットダウンする必要があります。
したがって,シャットダウンによる業務への影響が最小限の時間帯を選んで実行してください。
以下に手順を示します。
インストレーション・プロセスの全フェーズが完了していることを確認します。
/usr/sbin/versw_enable_delete スクリプトを実行します。
# /usr/sbin/versw_enable_delete |
クラスタ全体またはシステム単体をシャットダウンします。
クラスタ全体またはシステム単体をリブートします。
『パッチ・キット・インストレーション・ガイド』に説明されているように,dupatch を単体システム上で,または,ローリング・アップグレードをクラスタ上で実行し,Version 5.1B-4 を削除します。
カーネルが再構築されたら,システムをブートする必要があります。
単体システム,または,クラスタの各メンバをリブートします。
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 | 注記: この手順では,Version 5.1B-4 を削除するクラスタのメンバを 1 つ 1 つリブートする必要があります。
ノーロール・パッチでは,パッチの削除後にシステムが自動的にリブートされるので,この方法を使用してキットを削除することはできません。 |
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3-3-10 ノーロール・パッチ処理を使用してキットを削除する場合の制限事項 |
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3-2-3 項 「パッチ適用前のシステムに戻すために実行が必要なスクリプト」では,キットを削除してシステムをパッチ適用前の状態に戻す場合に,システムをリブートする前に実行すべき操作について説明しています。
ノーロール・パッチではシステムが自動的にリブートされるので,この方法でシステムをパッチ適用前の状態に戻してパッチ・キットを削除することはできません。
3-3-11 パッチ適用システムへの古い NHD キットのインストール |
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本バージョンのパッチ・キットまたは以前のパッチ・キットがインストール済みの場合は,TruCluster Server システムに NHD-5 や NHD-6 キットをインストールしないでください。
これらの古い NHD キットのインストール・コードは一部のクラスタ・サブセット・ファイルを正しく維持しないため,古い NHD キットをインストールするとシステム構成が誤った状態になります。