9    LAT 接続

LAT (Local Area Transport) プロトコルは,端末や PC,プリンタ,モデムなど,ローカル・エリア・ネットワーク (LAN) 上のデバイスが接続されたターミナル・サーバとホスト・コンピュータ・システムとの間の通信をサポートします。 Tru64 UNIX の LAT は,STREAMS ベースのドライバです。

この章では次のことを説明します。

LAT の概要についての情報は, lat_intro(7) を参照してください。 トラブルシューティング情報については,10.10 節 を参照してください。

9.1    LAT 環境

LAT 環境では,システムは次の役割を担っています。

図 9-1に,LAT サーバ・ノードと LAT サービス・ノードを使用した LAN の例を示します。

図 9-1:  サンプルの LAT ネットワーク構成

また,LAT ソフトウェアによって,ホスト・アプリケーションは,アプリケーション・ポートとして指定されたサーバ・ポートとの接続を開始してリモート・デバイスにアクセスできます。 この節では,以下の項目について説明します。

9.1.1    LAT 接続のタイプ

次の LAT 接続のタイプが認められています。

9.1.2    LAT ネットワークでのアクセス制御方法

LAT ネットワークは本来ローカルなので,LAT 環境で高度な制御ができ,LAT デバイスへ物理的にアクセスできます。 物理的なアクセスの制御だけではなく,次の機能によって LAT アクセスを制御できます。

一般にグループは,LAT ネットワークを論理的な小単位に細分化して,サーバとサービス・ノード間のメッセージの通信量を制限するために,ネットワーク・マネージャ,システム管理者,サーバ・マネージャによって設定されます。 グループを利用することにより,サーバによる情報の保持の対象となるサービス・ノード数を制限し,サーバの LAT データベースのサイズを管理するのにも役立ちます。

注意

グループを利用してアクセスを制限することはできますが,この機能は,セキュリティ機構として提供されるものではありません。

LAT サービス・ノードとの接続を確立するためには,ターミナル・サーバ・ポート上で有効なグループ,または LAT サービス・ノード上の発信ポートが,そのサービス・ノード上の最低 1 つのグループと一致する必要があります。 同様に,ターミナル・サーバまたはサーバ・ノードがサービス・ノードからのメッセージを処理するには,ターミナル・サーバ・ポートで有効なグループ,またはサーバ・ノードで有効な発信ポート・グループが,サービス・ノード上の最低 1 つのグループと一致する必要があります。 一致するグループがない場合は,サービス・ノードからのメッセージが無視されてしまいます。

LAT のサービス・ノード・グループおよび発信ポート・グループを有効にする方法については, latcp(8) を参照してください。

9.1.3    リモート・サービスのパスワードの指定方法

パスワードで保護されているリモート・サービスにアクセスする場合,LAT プロトコルはパスワードを要求します。 パスワードによって保護されたサービスを提供するターミナル・サーバで,パスワードのチェック機能が有効になっている場合には,アプリケーション・ポートをマップするときにパスワードを指定しなければなりません。 パスワードを指定しないと,ターミナル・サーバからサービスに接続しようとしてもすべて拒否されます。 詳細については latcp(8) を参照してください。

9.1.4    負荷分散

LAN上で 2 つ以上のノードが同じサービスを提供している場合に,ターミナル・サーバは,希望のサービスに対するランク付けが一番高いノードに接続します。 このランク付けは,サービスを提供するノードの現在の負荷に基づきます。 この処理は負荷分散と呼ばれます。

負荷分散は異種環境で機能します。 したがって,同じ名前を持つサービス・ノードが,異なるオペレーティング・システムを実行することもできます。

9.2    LAT の計画

この節では,LAT を構成する前に必要な作業について説明します。

9.2.1    LAT サブセットがインストールされていることの確認

次のコマンドを入力して,LAT サブセットがインストールされていることを確認します。

# setld -i | grep OSFLAT

LAT サブセットがインストールされていない場合は,setld コマンドを使ってインストールします。 サブセットのインストールについての詳細は, setld(8) または『インストレーション・ガイド』を参照してください。

LAT サブセットのインストール後,システムをリブートして LAT モジュールをカーネルにロードします。 システムは,ブート時に LAT モジュールをカーネルへ動的にロードするように構成されています。

9.2.2    カーネルでの DLB サポートの確認

LAT サブセットをインストールしたら,次のコマンドを実行して,DLB (Data Link Bridge) がカーネルでサポートされていることを確認してください。

# sysconfig -q dlb

dlb: プロンプトが表示されない場合は,スーパユーザとしてログインして,次の手順を実行してください。

  1. 構成ファイルを編集して,次のエントリを追加します。

    options DLB
    

    省略時の構成ファイルは,/sys/conf/HOSTNAME です。 HOSTNAME は,ご使用のホスト・プロセッサ名で,すべて大文字です。

  2. doconfig コマンドを実行して,新しいカーネルを構成します。 カーネルの再構成についての詳細は,『システム管理ガイド』を参照してください。

  3. 次のコマンドを実行して,新しいカーネルでシステムをリブートします。

    # shutdown -r now
    

    このコマンドによってシステムはただちにシャットダウンされ,自動的にリブートされます。

9.2.3    構成の準備

カーネルで DLB がサポートされていることを確認したら,latsetup ユーティリティを使用して LAT を構成できます。

図 9-2 は,LAT を構成する際に必要な情報を記録することのできる LAT 設定ワークシートを示しています。 本書をオンラインで閲覧している場合は,プリント機能を使用してこのワークシートをプリントできます。 この後の項では,ワークシートに記録する必要のある情報について説明します。

図 9-2:  LAT 設定ワークシート

ブート時の LAT の自動スタート

省略時の設定では,/sbin/init.d/lat のスタートアップおよびシャットダウン・スクリプトは,実行レベル 3 に達すると LAT を自動的にスタートさせて,実行レベル 3 を終了すると LAT を自動的に停止します。 LAT を自動的にスタートさせたくない場合は,No の欄を選択してください。 それ以外の場合は,Yes の欄を選択してください。

tty デバイスのタイプ

各 LAT 接続用のターミナル・デバイス (tty) のタイプ。 Tru64 UNIX は SVR4 および BSD のデバイス・タイプをサポートしますが,SVR4 フォーマットだとデバイス数が制限されないので,SVR4 デバイスを使用することをお勧めします。

SVR4 デバイスの特殊ファイルのフォーマットは次のとおりです。

/dev/lat/n

n には 620 〜 4370 の値が使用されます。 たとえば /dev/lat/620/dev/lat/777,および /dev/lat/4000 は SVR4 デバイスを指定します。

BSD デバイスの特殊ファイルのフォーマットは次のとおりです。

/dev/ttyWX

W には 0〜9 の値が入り,X には 0〜9,小文字の a〜z,大文字の A〜Z のいずれかの 1 つの英数字が入ります。 たとえば /dev/tty02/dev/tty0e,および /dev/tty9f は BSD LAT ターミナル・デバイスを指定します。 ただし,すべての BSD ターミナル・デバイス名が,大文字小文字を区別するわけではありません。 デバイス特殊ファイル /dev/tty9f/dev/tty9F は,両方とも TTY9F に変換されます。

このフォーマットを使用すると,システムで実行する UUCP などのすべてのシリアル・デバイスが使用できる BSD ターミナル・デバイスを,最高 620 まで指定できます。 したがって,LAT で使用できる BSD デバイスの数は,620 未満になる可能性があります。

LAT tty デバイスの数

同時に着信する LAT 接続の数,アプリケーション・ポートの数,および必要な発信接続の数の総数です。

/etc/inittab の LAT エントリ (getty) の数

/etc/inittab ファイルに追加する LAT の getty エントリの数です。 これは,必要な同時着信 LAT 接続数です。

9.3    LAT の構成方法

この節では,次の各作業の実施方法について説明します。

9.3.1    latsetup による LAT の構成

latsetup ユーティリティを使用して,システムの LAT を構成したり管理したりします。 latsetup を使用するには,LAT および DLB は実行カーネルに組み込み,ご使用のシステムを実行レベル 3 または 4 にして,スーパユーザとしてログインする必要があります。 詳細については, latsetup(8) を参照してください。

latsetup ユーティリティには,次の機能があります。

NetRAIN セットを構成する NetRAIN 仮想インタフェースまたはアダプタ上で LAT を構成することはできません。 LAT は NetRAIN 上では,サポートされていません。

latsetup ユーティリティを起動するには,SysMan Menu から次のように選択します。 [ネットワーク] --> [追加ネットワーク・サービス] --> [LAT (Local Area Transport) の設定]。 別の方法としては,コマンド・ライン上で次のコマンドを入力します。

# /usr/sbin/latsetup

ご使用の端末が Curses をサポートしていない場合には,-nocurses フラグを指定する必要があります。 このフラグによって,コマンド行モードで latsetup ユーティリティを実行できます。

注意

同じマシンで複数の latsetup プロセスを同時に実行しないでください。 誤った情報が latsetup のユーザに提供されて,/etc/inittab ファイルを壊す可能性があります。

9.3.2    LAT のスタートおよび停止

手動で LAT をスタートするには,次のコマンドを入力してください。

# /sbin/init.d/lat start

手動で LAT を停止するには,次のコマンドを入力してください。

# /sbin/init.d/lat stop

LAT セッション内から LAT を停止すると,そのセッションは終了します。

9.3.3    LAT スタートアップ・ファイルの作成

LAT の自動スタートアップおよびシャットダウンを有効にしている場合,システムが実行レベル 3 に達すると,カーネルに LAT をロードして /sbin/init.d/lat スクリプトを実行します。 このスクリプトは,/etc/latstartup.conf ファイルが存在する場合に,このファイル内の latcp コマンドを読み取って実行し,LAT をスタートします。 latcp コマンドについての詳細は, latcp(8) を参照してください。

/etc/latstartup.conf ファイルがない場合,LAT は省略時のパラメータ値でスタートします。 表 9-1に,LAT パラメータとその省略時の値を示します。

表 9-1:  LAT パラメータ

パラメータ 省略時の値
ノード名 ホスト名
マルチキャスト・タイマ 60 秒
ネットワーク・アダプタ ブロードキャスト・メディアに接続されているすべてのネットワーク・アダプタ。 NetRAIN セットを構成する NetRAIN 仮想インタフェース (nr) およびそれらのアダプタを除く。
サービス名 LAT のノード名パラメータからの値。 各サービスは次のパラメータを持ちます。
  パラメータ 省略時の値
  サービスの説明 Compaq Tru64 UNIX Version X.X LAT  SERVICE
  レーティング ダイナミック
  グループ・コード 0
エージェントの状態 無効
発信ポート・グループ グループ 0
学習されたサービスの最大数 100

ご使用のシステムで LAT をカスタマイズする場合は,/etc/latstartup.conf ファイルを作成して latcp コマンドを含むように変更できます。 たとえば,あるノード名を定義したり,サービス名を追加したりできます。

注意

ご使用のシステムがクラスタの場合,Context-Dependent Symbolic Link (CDSL) として /etc/latstartup.conf ファイルを作成する必要があります。 詳細については,『システム管理ガイド』 を参照してください。

例 9-1に,/etc/latstartup.conf ファイルの例を示します。

例 9-1:  /etc/latstartup.conf ファイルの例

/usr/sbin/latcp -n testnode     [1]
/usr/sbin/latcp -A -a lattelnet14 -i "LAT/telnet" -o  [2]
/usr/sbin/latcp -A -a testservice     [3]
/usr/sbin/latcp -g 0,21,52 -a testservice     [4]
/usr/sbin/latcp -A -a boundservice -p 620,621     [5]
/usr/sbin/latcp -c200    [6]
/usr/sbin/latcp -A -p 630 -O -V finance     [7]
/usr/sbin/latcp -u 0,1,41,97    [8]
/usr/sbin/latcp -e ln0    [9]

  1. LAT ノード名を変更します。 [例に戻る]

  2. LAT/Telnet 接続に使用できるオプション・サービスを追加します。 LAT/Telnet ゲートウェイについての詳細は,9.4.4 項を参照してください。 [例に戻る]

  3. アンバウンドの対話式サービス testservice を追加します。 [例に戻る]

  4. サービス testservice にグループ 0,21,および 52 を追加します。 [例に戻る]

  5. バウンド・サービスを追加して,2つの LAT デバイスをバインドします。 620 および 621 は,SVR4スタイルの LAT デバイスです。 [例に戻る]

  6. 学習されたサービスの数を 200 まで増加します。 [例に戻る]

  7. サービス finance に発信ポートをマップします。 [例に戻る]

  8. 発信ポート・グループ 0,1,41,および 97 を追加します。 [例に戻る]

  9. ln0 アダプタを追加します。 [例に戻る]

latstartup.conf ファイル内では,サービスを追加する latcp コマンドを,このサービス名を必要とする latcp コマンドより先に配置する必要があります。 例 9-1の 3 行目および 4 行目で,この点について示しています。

9.3.4    inittab ファイルのカスタマイズ

/etc/inittab ファイルを変更して,getty 以外のプログラムを使用するように設定できます。 たとえば,/etc/inittab ファイルに次のエントリを追加して,LAT デバイス 620 でユーザ定義プログラム myownprogram が使われるように構成できます。

lat620:34:respawn:/usr/sbin/myownprogram  /dev/lat/620

この例では,デバイス /dev/lat/620 に絶対パス名を使用しています。

LAT によるユーザ定義プログラムの使用方法については,9.4.5 項を参照してください。 /etc/inittab およびgetty ユーティリティについての詳細は, inittab(4) および getty(8) を参照してください。

/etc/inittab ファイルを変更して次のようなエントリを追加すると,初期構成後に手動で作成した LAT デバイスを追加することもできます。

lat621:34:respawn:/usr/sbin/getty  lat/621  console vt100
 

2 番目のフィールド (34) には,エントリを処理する実行レベルを指定します。 この例では,getty プロセスは実行レベル 3 または 4 のいずれかで生成されます。 さらにこの例では,相対パス名 lat/621 を使用しています。

9.3.5    特定のネットワーク・アダプタでの LAT の実行

ご使用のシステムが複数のネットワーク・アダプタで構成されている場合,省略時の 設定では,latcp プログラムは,LAT プロトコルをサポートでき るすべてのアダプタで LAT プロトコルの使用をスタートしようとします (NetRAIN セットを構成する NetRAIN 仮想インタフェースおよびアダプタを除きます)。 別の論理ネットワークに接続されているアダプタの場合でも,これが理想的な状態です。 ただし,単一の論理ネットワークに接続されているアダプタの場合には,LAT プロトコルは 1 つのアダプタでだけ実行してください。 このように指定するには,latcp -e adapter コマンドを /etc/latstartup.conf ファイルに追加してください。 詳細については, latcp(8) を参照してください。

netstat -i コマンドを使用して,システムに定義されているアダプタの名前を調べてください。

9.4    LAT 接続の構成

この節では,次の各作業の実施方法について説明します。

9.4.1    プリンタの設定方法

以降の項では,LAT 経由で印刷を行うためのプリンタの設定方法について説明します。 プリンタを正しく構成すると,ホストが起動するコネクションを通して,ローカルの LAT ホストからプリンタにアクセスすることができます (9.4.2 項を参照)。

本書は LAT サービスの確立方法について説明しており,プリンタ設定の情報を詳細まで網羅しているわけではありません。 プリンタの設定方法についての詳細は,『システム管理ガイド 』, printconfig(8)lprsetup.dat(4) ,および lprsetup(8) を参照してください。

プリンタの設定を開始する前に,次の情報を収集しておく必要があります。

注意

この節の例では,DECserver 700 サーバを使用しています。 実際に設定を行う場合には,ご使用のターミナル・サーバに添付されたマニュアルを参照してください。

9.4.1.1    ターミナル・サーバでのプリンタの設定方法

プリンタを設定するには,次の手順に従ってください。

  1. ターミナル・サーバのシリアル・インタフェースにプリンタを接続します。

  2. ターミナル・サーバのマニュアルで指定されているターミナル・サーバ・コマンドを使用して,Tru64 UNIX サービス・ノードからのホスト開始要求を介して,接続されているリモート・プリンタにサーバがアクセスできるように設定します。 サービス・ノードは,ローカルの LAT ホストを指します。

  3. プリンタのマニュアルを参照して,プリンタの文字サイズ,フロー制御,パリティ,および速度を調べます。

  4. プリンタの特性とターミナル・サーバのポート設定値を比較します。 次のようなコマンドを入力すれば,ターミナル・サーバのコンソールにこの設定値を表示できます。

    Local> SHOW PORT 7 CHARACTERISTICS
    

    このコマンドによって,ポート 7 の特性が表示されます。 次に,ターミナル・サーバの最低限のポートの設定値を示します。

    文字サイズ: プリンタの文字サイズ
    フロー制御: XON (または,プリンタによっては-CTS/RTS)
    速度: プリンタの速度
    アクセス: リモート
    自動ボー: 不可
    自動接続: 不可

    ターミナル・サーバのポート設定値がプリンタ特性と一致しない場合は,DEFINE コマンドを使用してターミナル・サーバのポート設定値を定義してください。 次に例を示します。

    Local> DEFINE PORT 7 SPEED 9600
    

  5. ポートの設定値を定義したら,そのポートをログアウトして新しい設定値を初期化します。 次に例を示します。

    Local> LOGOUT PORT 7
    

9.4.1.2    ポート構成のテスト方法

プリンタおよびターミナル・サーバ・ポートでプリンタ特性が一致していることを確認するには,ターミナル・サーバで TEST PORT コマンドを使用します。 たとえば構成が正しい場合には,DECserver 700で次のコマンドを実行すると,ポート 7 に接続されているプリンタに文字のテスト・パターンがプリントされます。

Local> TEST PORT 7

プリンタは,ターミナル・サーバのコンソールで [Break] キーを押さない限り,24 行のテスト・データをプリントします。 データがプリントされない場合や誤っている場合には,ポートまたはプリンタが間違って設定されているか,またはハードウェアに問題があります。

9.4.1.3    プリンタ用のサービス・ノードの設定方法

サービス・ノード (ローカル LAT ホスト) では,latcp コマンドを使用して,ターミナル・サーバ上のリモート・ポートまたはリモート・サービスに未使用のアプリケーション・ポートをマップします。 9.4.1.1 項のプリンタには,ターミナル・サーバ名,およびポート名またはサービス名のいずれかを使用してください。

たとえば次のコマンドは,サーバ LOCSER 用のローカル・アプリケーション・ポート 621 を,リモート・プリンタ・ポート port07 にマップします。

# latcp -A -p 621 -H LOCSER -R port07

次のコマンドは,リモート・プリント・ポートの代わりにリモート・プリンタのサービス名を指定しています。

# latcp -A -p 621 -H LOCSER -V REMprinter07

詳細については, latcp(8) を参照してください。

9.4.1.4    サービス・ノードでのプリント・スプーラの設定方法

リモート・プリンタのプリント・スプーラを設定するには,lprsetup コマンドを使用してください。 次のシンボルは,ホストが開始する接続を介してリモート・プリンタにアクセスできるように,サービス・ノード (ローカル LAT ホスト) の printcap ファイルで設定する必要があります。

次の例に,LAT プリンタの /etc/printcap エントリを示します。

    lp25|lp0:\
            :af=/usr/adm/lpacct:\
            :ct=LAT:\   [1]
            :lf=/usr/adm/lperr:\
            :lp=/dev/lat/621:\    [2]
            :mx#0:\
            :of=/usr/lbin/lpf:\
            :sd=/usr/spool/lpd:

  1. ct シンボルに LAT を指定します。 [例に戻る]

  2. サービス・ノードを設定する際に,latcp コマンドで使用した LAT アプリケーション・ポート (tty デバイス) を指定します。 lp シンボルには完全パス名を指定する必要があります。 [例に戻る]

9.4.1.5    プリンタのテスト方法

プリンタを設定したら,ファイルをプリントして,すべてのものが正常に動作することを確かめます。 たとえば,プリンタ名が lp25 で test がテキスト・ファイルである場合は,次のコマンドを実行してプリンタをテストできます。

# lpr -Plp25 test

プリンタが動作しない場合は,すべての設定が正しいかどうかを確認してください。 printcap エントリが lf エントリを定義している場合は,対応するログ・ファイルを調べて,発生した可能性のあるエラーを確かめることができます。

9.4.2    ホスト側が開始する接続の設定方法

ホスト側が開始する接続は,ターミナル・サーバに接続されているビット・シリアルの非同期デバイスが,適切に構成されたシステム上でユーザが開発したアプリケーションと通信できる接続です。 このようなデバイスの例には,端末,モデム,別のホスト・コンピュータ・システムへの通信ポート,およびプリンタがあります。 プリンタ接続についての詳細は,9.4.1 項に説明があります。

この節では,ホスト側が開始する接続用にシステムを設定する方法と,これらの接続を活用する,アプリケーション開発のためのガイドラインについて説明します。

9.4.2.1    ホスト側が開始する接続用のシステムの設定方法

ご使用のシステムをホスト側が開始する LAT 接続用に設定するには,次の手順に従ってください。

  1. latcp -A -p コマンドを使用して,ターミナル・サーバ上のリモート・ポートまたはサービスに,システムのアプリケーション・ポート (tty デバイス) をマップします。 次の例では,623 はアプリケーション・ポート,T1301A はターミナル・サーバ名,PORT_6 はターミナル・ポート名です。

    # /usr/sbin/latcp -A -p 623 -HT1301A -R PORT_6
    

    また,この例でポート名の代わりにサービス名を指定することもできます。

  2. tty デバイスの保護ビット,所有者,およびグループが,接続用に適切に設定されているかどうかを確認します。 通常のユーザが tty デバイスをオープンしたり読み取ったりできるようにする場合は,デバイスを world 読み取り可能にしてください。

  3. サーバ・ポートの特性をポートに接続されているデバイスの特性と一致させ,さらにホストが接続を開始できるようにサーバ・ポートを設定します。 詳細については,デバイスおよびターミナル・サーバのマニュアルを参照してください。

9.4.2.2    プログラム・インタフェース

ホストが開始する接続を適用するように開発されたアプリケーションは,次の例外を除いて,tty デバイスのアプリケーションに非常によく似ています。

ホストが開始する接続に使用できるプログラム例として,/usr/examples/lat ディレクトリに dial.c アプリケーション・プログラムを用意しています。 この例にアクセスするには,OSFEXAMPLES オプション・サブセットをインストールする必要があります。

Tru64 UNIX の LAT は,STREAMSベースの tty 設計です。 LAT の tty デバイスをオープンすると,POSIX 回線制御規則モジュール ldterm が LAT ドライバ上のストリームに組み込まれます。 アプリケーションが ldterm による追加処理を必要としない場合は,ストリームからこのモジュールを削除する必要があります。

/usr/examples/lat ディレクトリに含まれている lined.c アプリケーション・プログラムは,Clist ベースの tty と STREAMS tty 環境でターミナル (tty) 回線制御規則がどのように変更されるかを示します。 このサンプル・プログラムにアクセスするには,OSFEXAMPLES オプション・サブセットをインストールする必要があります。 さらに,strchg コマンドを使用して,ユーザの標準入力の STREAMS 構成を変更できます。

詳細については, autopush(8) および strchg(1) を参照してください。

9.4.3    発信接続の設定方法

発信接続では,ローカル・ユーザが llogin コマンドを使用して,リモート・ホストのサービスに接続できます。 発信接続を行うには,リモート・ホスト上の指定されたサービスをローカル・ホストのターミナル・デバイスの特殊ファイルと対応させます。 llogin コマンドについての詳細は, llogin(1)および『Tru64 UNIX ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

9.4.3.1    発信接続用のシステムの設定方法

LAT 発信接続用にシステムを設定するには,次の手順に従ってください。

  1. latcp -A -p コマンドを使用して,リモート・システムのポートまたはサービスにシステムの発信ポート (tty デバイス) をマップします。 次の例では,621 は発信ポート,REMOTE_SERVICE はリモート・ノードのサービス名です。

    # /usr/sbin/latcp -A -p 621 -O -V REMOTE_SERVICE
    

    次の例のようにリモート・ノード名とポート名を指定することもできます。 この例では,titan がノード名,PORT_1 がポート名です。

    # /usr/sbin/latcp -A -p 621 -O -H titan -R PORT_1
    

  2. 次のコマンドを使用して,リモート・サービスがシステムで利用できる学習されたサービスであることを確認します。

    # /usr/sbin/latcp -d -l
    

    サービスが表示されない場合,学習されたサービスが最大数に達しています。 この場合は,このサービスは使用できます。 発信接続を試みると,ローカル・ホストはリモート・サービスが使用できるかどうかを調べます。 使用できる場合は,発信 LAT 接続が実行されます。

    学習されたサービスの最大数を増加させるには,latcp -c コマンドを使用してください。 学習ずみサービスについての詳細は, latcp(8) および lat_intro(7) を参照してください。

9.4.3.2    プログラム・インタフェース

発信接続を適用するために開発されたアプリケーションは,ホストが開始する接続用に開発されたアプリケーションと同じガイドラインに従います。 詳細については 9.4.2.2 項 を参照してください。

/usr/examples/lat ディレクトリ内の getdate.c アプリケーション・プログラムは,発信接続で使用できるプログラムの例です。 このサンプル・プログラムにアクセスするには,OSFEXAMPLES オプション・サブセットをインストールする必要があります。

9.4.4    LAT/Telnet ゲートウェイの設定方法

LAT/Telnet ゲートウェイ・サービスによって,LAT ターミナル・サーバのユーザは,Tru64 UNIX ホストを介して Telnet プロトコルを実行するリモート・ホストに接続できます。 ユーザは,最初にローカルの Tru64 UNIX システムにログインする必要はありません。 構成されている場合は,自由に rlogin コマンドを使用してリモート・ホストに直接接続できます。

LAT/Telnet ゲートウェイを設定するには,次の手順に従ってください。

  1. latcp コマンドを使用して,LAT/Telnet サービスを定義します。 次に例を示します。

    # /usr/sbin/latcp -A -a lattelnet -i "LAT/telnet gateway" -o
    

    -o フラグは,オプション・サービスであることを表します。 オプション・サービスは,LAT 用に特別に作成した特殊なアプリケーションと一緒に使用します。 これらのサービスは,特殊なアプリケーションを占有して使用するために,LAT tty デバイスにバインドされています。

  2. /etc/inittab ファイルを編集して,手順 1 で作成した lattelnet サービスを生成したい LAT デバイスのエントリを変更します。

    選択した LAT 端末は,ゲートウェイ専用になります。 選択した端末の数によって,システムが同時に提供できる LAT/Telnet ゲートウェイ・セッションの最大数が決まります。 たとえば次の例は,3 つのデバイスの LAT/Telnet ゲートウェイ・エントリを示します。 これは,このシステムが 3 つの同時セッションを提供できることを意味します。

    lat624:34:respawn:/usr/sbin/lattelnet  lat/624  lattelnet
    lat625:34:respawn:/usr/sbin/lattelnet  lat/625  lattelnet
    lat626:34:respawn:/usr/sbin/lattelnet  lat/626  lattelnet
    

    Telnet の代わりに rlogin コマンドを使用する場合は,/etc/inittab エントリの lattelnet プログラムの 3 番目の引数として,/usr/bin/rlogin を指定します。 次に例を示します。

    lat624:34:respawn:/usr/sbin/lattelnet lat/624 lattelnet /usr/bin/rlogin
     
    

  3. init コマンドで inittab ファイルを読み取り,init q コマンドを使用してゲートウェイを起動します。

  4. ps コマンドを使用して,lattelnet プロセスがスタートしたことを確認します。

    lattelnet プログラムは,syslogd デーモンを使用して,/var/adm/syslog.dated/date/daemon.log ファイルへメッセージのログを取ります。 このファイルを調べて,エラー・メッセージが生成されなかったことを確認してください。

  5. CONNECT コマンドを入力して,LAT ターミナル・サーバからゲートウェイに接続します。 たとえば,ゲートウェイとして,LOCAL というローカル・ノードを使用して,REMOTE というリモート・ノードに接続するには,次のように入力します。

    Local> CONNECT LATTELNET NODE LOCAL DEST REMOTE
    

    このコマンド行は,Telnet と rlogin のどちらでも使用できます。

    また,Telnet で接続する場合は,サービス名 LATTELNET を入力して,希望のリモート・ノードのプロンプトになるまで待ちます。 次の例に,ターミナル・サーバのユーザがサービス LATTELNET に接続し,リモート・ノード MYTRIX からのログイン・プロンプトを待っているときに起きる状態を示します。

    Local> CONNECT LATTELNET
    LAT to TELNET gateway on printf
    telnet> OPEN MYTRIX
    Trying...
    Connected to mytrix.
    Escape character is '^]'.
    mytrix login:
    

9.4.5    専用またはオプションのサービスの作成方法

専用サービスは,自分用の特殊アプリケーションと組み合わせて使用できます。 /usr/examples/lat ディレクトリに次のような特殊アプリケーション・プログラムが提供されています。

専用サービスの設定は,LAT/Telnet ゲートウェイの設定に似ています。 9.4.4 項 を参照してください。 専用オプションを設定するには,次の手順に従ってください。

  1. ルートでログインします。

  2. アプリケーション・コードを入力してコンパイルしたら,希望のディレクトリに実行可能ファイルをコピーします。

  3. latcp -A -a コマンドを使用して,サービスを追加します。 次に例を示します。

    # /usr/sbin/latcp -A -a showdate -i "LAT/date service" -o
    

    -o は,専用のサービスであることを指定します。

  4. /etc/inittab ファイルを編集して,専用の tty デバイスのエントリを追加します。 次に例を示します。

    lat630:3:respawn:/usr/sbin/latdate lat/630 showdate
     
    

    注意

    同時に実行するすべてのサービスには /etc/inittab エントリが必要です。 この例では,latdate サービスのユーザは一度に1人だけ許可されます。

  5. init q コマンドを使用して,initinittab ファイルを読み取らせて,サービスをスタートします。

LAT 端末でサービスを使用するには,CONNECT コマンドを実行してください。 次に例を示します。

Local> CONNECT SHOWDATE

Tru64 UNIX ホストは,バウンド・インタラクティブ・サービスおよび アンバウンド・インタラクティブ・サービスも提供できます。 詳細については, lat_intro(7) を参照してください。 これらのサービスの作成に使用するコマンドの情報については, latcp(8) を参照してください。

9.4.6    端末の専用 tty デバイスの提供

ターミナル・サーバ・ポートに接続されている端末は,特定の Tru64 UNIX LAT ホストに専用 tty デバイスを提供できます。 この構成は,端末ユーザにホスト上の特定アプリケーション (データベースなど) へのアクセスを許可するが,セキュリティ上の理由によって,他のアプリケーションやホストへのアクセスを許可したくない場合に役立ちます。

端末を構成すると,端末は必ず LAT ホスト上の,指定された tty デバイスに接続されます。 端末のユーザは,セッションを切り替えたり,別のホストに接続したり,そのホストの別の tty デバイスに接続したりすることはできません。

9.4.6.1    専用 tty デバイスの設定方法

端末の専用 tty デバイスを設定するには,次の手順に従ってください。

  1. 端末が接続されているターミナル・サーバ名とポート名を調べます。 次のターミナル・サーバ・コマンドには,サーバ名およびポート名がそれぞれ示されています。

    Local> SHOW SERVER
    Local> SHOW PORT number
    

    number 変数は,ターミナル・サーバのポート番号です。

  2. LAT ホストで latcp -A -p コマンドを使用して,ターミナル・サーバ・ポートにアプリケーション・ポート (tty デバイス) をマップします。 たとえば次のコマンドは,ターミナル・サーバ LATTERM のポート 2 に,SVR4 デバイス (アプリケーション・ポート 630) をマップします。

    # latcp -A -p630 -H LATTERM -R PORT_2
    

    詳細については, latcp(8) を参照してください。

  3. LAT ホストで,アプリケーション・ポートとしてマップされた tty デバイス用の /etc/inittab ファイルに,getty エントリを追加します。 次に例を示します。

    lat630:34:respawn:/usr/sbin/getty        lat/630 console vt100
    

  4. ターミナル・サーバでポートのアクセスを REMOTE に定義して,ポートからログアウトします。 次に例を示します。

    Local> DEFINE PORT 2 ACCESS REMOTE
    Local> LOGOUT PORT 2
    

  5. 設定したターミナル・サーバ・ポートに接続されている端末で,[Return]キーを押します。 システムのプロンプトが表示されて,端末が専用 tty デバイスに接続されます。

この手順を繰り返す必要がある場合は,/etc/inittab ファイルから getty エントリを削除し,init q コマンドを実行して,最初の手順からスタートしてください。

9.4.6.2    専用 tty デバイスの削除方法

専用 tty デバイスをターミナル・ポートから削除し,このポートに接続されている端末が任意のホストに接続できるようにするには,次を実行します。

  1. 同じサーバの別の端末にログインします。

  2. ポートのアクセスを LOCAL に設定して,ポートからログアウトします。 次に例を示します。

    Local> DEFINE PORT 2 ACCESS LOCAL
    Local> LOGOUT PORT 2
    

  3. アプリケーション・ポートをアンマップして,/etc/inittab ファイルから getty エントリを削除します。