ここでは,日本語ウィンドウ環境の機能と注意事項について説明します。
B.1 環境変数 LANG
CDE セッションをご使用の場合,シェルの起動時スクリプトの中で環境変数 LANG を定義しないようにしてください。ログイン時に選択した言語と LANG の値が異なっていると,セッションが起動できない場合があります。また起動できたとしても正しく動作しません。
起動時スクリプトの中で設定していなくても,環境変数 LANG の値はログイン時の言語に自動的に設定されます。
B.2 xnlLanguage リソースの削除
CDE を使用する場合,xnlLanguage リソースを
~/.Xdefaults
ファイルから削除してください。このリソースが指定されていると CDE が正しく動作しません。
B.3 dtsession*sessionLanguage リソース
前回のセッションと異なる言語設定で CDE セッションを起動した場合,ルート・ウィンドウの dtsession*sessionLanguage リソースの値が前回のセッション言語のままになっている場合があります。アプリケーションによっては,これが文字化けや誤動作の原因となる可能性があります。
このような場合は,一度ログアウトして同じ言語設定でログインし直すことにより,正しく設定されます。なお,dtsession*sessionLanguage リソースの現在の設定は,以下のコマンドで参照することができます。
% xrdb -q | grep -i lang
複数の日本語ロケールを切り替えて使用する場合は,次の点に注意してください。
アプリケーションによっては,ユーザのホーム・ディレクトリに日本語文字列を含むデータ・ファイルを作成する場合があります。
この時使用される日本語文字列は,使用中のロケールにしたがって記述されます。このため,たとえば ja_JP.SJIS で起動したアプリケーションは,ja_JP.deckanji で起動したときに作成された日本語データ・ファイルを正しく理解することができません。
このような問題が発生した場合は,ホーム・ディレクトリのデータ・ファイルを削除する等の対処を行ってください。
B.5 DEC 日本語入力サーバ (dxjim) に関する注意事項
dxjim には以下の注意事項が適用されます。
B.5.1 自動起動
CDE のログイン画面から日本語ロケールを選択してログインすると,dxjim
が自動的に起動されます。自動起動されないようにするには,ホームディレクトリの
.dtprofile
ファイルの最後に以下の1行を追加してください。
unset DTSTARTIMS
~/.dtprofile
は,CDE セッションを最初に起動した時に自動的に作成されるファイルです。
CDE によって
dxjim
が自動起動される時点では,ウィンドウ・マネージャはまだ起動されていないので,ウィンドウ・マネージャによるウィンドウ色の制御を受けません。
このため,省略時の設定ではこの
dxjim
のウィンドウの色は青になります。
B.5.2 候補リスト
変換候補リストボックスは入力中のウィンドウがフォーカスを失うと消えてしまいます。したがって,ウィンドウ・マネージャの設定によっては候補の選択をマウスでは行えない場合があります。そのような場合には,キーボードの矢印キーを使って候補の選択を行ってください。
B.5.3 オンライン・ヘルプ
dxjim
起動時の言語設定は日本語である必要はありませんが,言語設定が日本語でない場合,オンライン・ヘルプが正しく表示されないことがあります。
B.5.4 シフト JIS ロケール使用時の注意
dxjim
がシフト JIS ロケールで起動されている場合,シフト JIS 以外の日本語ロケールで起動されたアプリケーション上で日本語の入力を行なうと,表示が乱れることがあります。ただし,日本語の入力は正しく行われます。
dxjim
がシフト JIS 以外の日本語ロケールで,アプリケーションがシフト JIS の場合も,同等の現象が発生します。
B.6 日本語フォント
B.6.1 日本語 CDE フォント・エイリアス
CDE の日本語環境では次の日本語フォント・エイリアスが使用できます。
-dt-gothic-bold-r-normal--*-*-*-*-m-*-jisx0201.1976-0 -dt-gothic-bold-r-normal--*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-1 -dt-gothic-medium-r-normal--*-*-*-*-m-*-jisx0201.1976-0 -dt-gothic-medium-r-normal--*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-1 -dt-mincho-bold-r-normal--*-*-*-*-m-*-jisx0201.1976-0 -dt-mincho-bold-r-normal--*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-1 -dt-mincho-medium-r-normal--*-*-*-*-m-*-jisx0201.1976-0 -dt-mincho-medium-r-normal--*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-1 -dt-interface system-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208-kanji00 -dt-interface system-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208-kanji11 -dt-interface system-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-0 -dt-interface system-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-1 -dt-interface system-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0201-romankana -dt-interface system-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0201.1976-0 -dt-interface user-bold-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208-kanji00 -dt-interface user-bold-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208-kanji11 -dt-interface user-bold-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-0 -dt-interface user-bold-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-1 -dt-interface user-bold-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0201-romankana -dt-interface user-bold-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0201.1976-0 -dt-interface user-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208-kanji00 -dt-interface user-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208-kanji11 -dt-interface user-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-0 -dt-interface user-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0208.1983-1 -dt-interface user-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0201-romankana -dt-interface user-medium-r-normal-*-*-*-*-*-m-*-jisx0201.1976-0
JIS X0212 補助漢字のフォントは提供されていません。
B.6.3 明朝およびゴシック日本語フォントの使用範囲
以下の日本語フォントについては,それらの複写,記憶,表示は,当社の製品およびそれに付属する装置に限られていますので,使用にあたってはご注意いただくようお願いします。
XLFD | フォント・ファイル名 |
-jdecw-mincho-* | jdecw_mincho*.pcf |
-jdecw-gothic-* | jdecw_gothic*.pcf |
従来のバージョンに引続き,Ximp プロトコルを使用して日本語入力サーバを利用するための国際化ライブラリ
libXimp.so
を提供します。
本バージョンの
libXimp.so
は
libX11.so
の中の
XOpenIM
(3X)
なお従来のバージョンと同様,アーカイブ・ライブラリとリンクした場合は Ximp プロトコルを使用することができません。
B.7.2 XOpenIM(3X) のプロトコル拡張
libX11.so
中の
XOpenIM
(3X)
本バージョンの
XOpenIM
(3X)libXimp.so
をダイナミック・ロードしてXimp プロトコルによる接続を試みます。
B.8 Motif ツールキット
B.8.1 アーカイブ・ライブラリとのリンク
アーカイブ・ライブラリと
-non_shared
でリンクする場合,従来のバージョンでは日本語固有のライブラリを追加する必要がありましたが,本バージョンでは不要です。アーカイブ・ライブラリとのリンクは,たとえば以下のように行います。
% cc -non_shared foo.c -lDXm -lbkr -lMrm -lXm -lXt \
-lXmu -liconv -lX11 -lSM -lICE -ldnet_stub
B.8.2 on-the-spot 入力時のテキスト・スクロール
入力スタイルが on-the-spot のときに幅の短いテキスト・ウィジェットで長い文字列を変換した場合,テキストのスクロールのため変換対象が見えなくなることがあります。
B.8.3 DXmCSText ウィジェットのサイズ変更
DXmCSText ウィジェットの resizeHeight や resizeWidth リソースを TRUE にすると,ウィジェットのサイズ変更が適切に行われなくなることがあります。
B.9 デスクトップ・サービス
B.9.1 アプリケーション・マネージャ
日本語アプリケーション・グループ名をアプリケーション・マネージャのリネーム機能で変更することはできません。
B.9.2 CDE Window List
本リリースでは,すべてのワークスペース上に存在するアプリケーション・ウィンドウを検索するための CDE Window List アプリケーションを提供しています。
日本語ロケールで使用する場合,CDE Window List には以下のような制限事項があります。
全角 5 文字までのワークスペース名しか表示されません。
CDE Window List についての詳細は,『CDE ガイドブック』を参照してください。
B.9.3 日本語 Unicode ロケール (ja_JP.UTF-8) におけるワークスペース名
CDE では,4 つのワークスペース(仮想スクリーン) のデフォルトのワークスペース名として「ワークスペース 1」〜「ワークスペース 4」が定義されており,フロントパネル中央にこれらのワークスペース名が表示されます。
サイズが 1024×768 以下のスクリーン上で,日本語 Unicode ロケール (ja_JP.UTF-8) の言語設定で CDE にログインした場合,これらのワークスペース名はすべて「ワークスペース」と表示されます。
この問題はスクリーン・サイズを 1280×1024 以上にすることで解決できます。 詳しくは Xserver のリファレンス・ページを参照してください。
また,スクリーン・サイズを変更する方法以外に,以下のリソースを有効にすることによってこの問題を回避することもできます。
Dtwm*FrontPanel*highResFontList: -jdecw-screen-*-14-*: Dtwm*FrontPanel*mediumResFontList: -jdecw-screen-*-14-*: Dtwm*FrontPanel*lowResFontList: -jdecw-screen-*-14-*:
/usr/i18n/dt/config/ja_JP.UTF-8/sys.font
に上記の記述を追加すると,すべてのユーザに対してこの設定が有効になります。
なお,この設定を行なうと,ワークスペース名に使用できるの文字は日本語と ASCII 文字に限定されます。
B.10 デスクトップ・アプリケーション
B.10.1 端末エミュレータ (dtterm)
CDE 標準の端末エミュレータ
dtterm
には,以下の注意事項が適用されます。
B.10.1.1 パスワードのエコー
dtterm
上で
rlogin
コマンドを実行してパスワードを入力する場合,DEC 日本語入力サーバ (dxjim
) のかな漢字変換がオンになっていると,リターンキーを入力するまでの間パスワードが表示されてしまうことがありますのでご注意ください。
以下のいずれかの方法で,パスワードが表示されないようにすることができます。
dtterm
上で
[Shift]
+
[
スペース]
キーを入力してかな漢字変換をオフにしてからパスワードを入力します。
もう一度
[Shift]
+
[スペース]
キーを入力すると元の状態に戻ります。
dxjim
側でかな漢字変換の初期状態をオフにします。
dxjim
起動時にコマンドラインで指定する方法は以下のとおりです。
% dxjim -xrm 'DXjim.startupKanjiMode: off'
日本語入力を行う場合には,
[Shift]
+
[スペース]
キーを入力してかな漢字変換をオンにします。
ただし,この設定は
dxjim
から日本語入力を行うすべてのアプリケーションに影響しますのでご注意ください。
dtterm
側で
dxjim
と接続しないようにします。
dtterm
起動時にコマンドラインで指定する方法は以下のとおりです。
% dtterm -xrm '*inputMethod: none'
この場合,後から接続することはできません。
他の日本語入力システム (WX3 か VJE) を使用します。 これらのシステムは,かな漢字変換の初期状態が省略時の設定でオフになっています。
dtterm
では次の機能はサポートされていません。これらの機能は漢字端末エミュレータ (dxterm
) 上でご利用ください。
行間罫線
ReGIS スクリーン・モード
漢字端末エミュレータ (dxterm
) は,従来からDECwindwos Motif 上でご使用いただいている端末エミュレータです。本バージョンでも引き続きご利用いただけます。
漢字端末エミュレータには,以下の注意事項が適用されます。
B.10.2.1 端末コード
漢字端末エミュレータ (dxterm
) は,端末コードとして deckanji,sdeckanji,eucJP をサポートします。SJIS でコマンドおよびアプリケーションを使用する場合は,stty
コマンドでアプリケーション・コードを SJIS に設定してください。
% stty jdec acode SJIS
漢字端末エミュレータの印刷機能では日本語が正しく印刷されません。
B.10.3 キーキャップ編集
dxkeycaps
の GUI は一部英語で表示されます。
B.10.4 カレンダ・マネージャ
カレンダ・マネージャの日付表示の一部に,日本語の日付として適当でない形式のものがあります。
B.11 Mule
Mule をウィンドウ環境で使用する場合の注意事項を以下に示します。
B.11.1 日本語テキストのカット・アンド・ペースト
本バージョンの Mule は V4.0 以降のオペレーティング・システムで動作するアプリケーションから日本語を正しくカット・アンド・ペーストできません。
正しくカット・アンド・ペーストするためには,Emacs Lisp 関数 x-cut-buffer-or-selection-value の変更が必要です。以下にその方法を示します。
root アカウントで Mule を起動します。
# /usr/i18n/mule/bin/mule
/usr/i18n/mule/lib/mule/19.28/lisp/term/x-win.el
をバッファに読み込みます。
C-x C-f [RET] /usr/i18n/mule/lib/mule/19.28/lisp/term/x-win.el
あるいは
M-x find-file [RET] /usr/i18n/mule/lib/mule/19.28/lisp/term/x-win.el
x-win.el
中の関数 x-cut-buffer-or-selection-value を以下に示す
diff
コマンドの出力のように変更します。
*** x-win.el~ Mon Aug 14 14:55:29 1995 --- x-win.el Mon Apr 22 10:23:11 1996 *************** *** 590,600 **** (defun x-cut-buffer-or-selection-value () (let (text type selection-error) ;; Don't die if x-get-selection signals an error. (condition-case c ! (setq text (x-get-selection 'PRIMARY (if (featurep 'mule) 'TEXT))) (setq selection-error c) (error nil)) (if (string= text ) (setq text nil)) ;; Try STRING data type. --- 590,602 ---- (defun x-cut-buffer-or-selection-value () (let (text type selection-error) ;; Don't die if x-get-selection signals an error. (condition-case c ! (progn ! (setq text (x-get-selection 'PRIMARY (if (featurep 'mule) 'TEXT))) ! (setq type '*autoconv*)) (setq selection-error c) (error nil)) (if (string= text ) (setq text nil)) ;; Try STRING data type.
バッファをセーブして
x-win.el
を更新します。
C-x C-s
あるいは
M-x save-buffer
x-win.el
をコンパイルして
x-win.elc
を更新します。
M-x byte-compile-file [RET] /usr/i18n/mule/lib/mule/19.28/lisp/term/x-win.el
Mule を終了します。
C-x C-c
あるいは
M-x save-buffer-kill-emacs
この変更は,これ以降に起動される Mule から有効になります。
なおこの変更はすべてのユーザに対して有効です。
B.12 VJE-Deltaを使用するための省略時の保護モードの変更
V4.0以降,bind
(2) によって作成される UNIX ドメイン (AF_UNIX) ソケットの省略時の保護モードが次のように変更されています。
それ以前のバージョンでは,省略時の保護モードは 0777 でした。
この変更は,潜在的なセキュリティ・ホールの問題を解決するためのものですが,この変更を行うと VJE-Delta 日本語入力システムが動作しなくなります。
VJE-Delta 日本語入力システムをご利用になる場合には,スーパユーザになって次のいずれかの方法で省略時の保護モードを 0777 に設定してください。
/etc/sysconfigtab
に次の 2 行を追加して,システムをリブートします。
generic: insecure-bind=1
稼働中のシステムで次のコマンドを実行します。この設定はシステムをシャットダウンするまで有効です。
# /sbin/sysconfig -r generic insecure-bind=1
この後,VJE-Deltaを再起動します。
注意
/tmp
に保護モード 0777 でないvjed
ファイルが存在する場合は,このファイルを削除してから VJE を再起動してください。
本リリースで WX3 を使用する場合,OSFOBSOLETE サブセットに含まれている古い curses ライブラリ (libcurses.so
) をインストールする必要があります。詳細については,A.8 節
を参照してください。
B.14 Ladebug Debugger の日本語メッセージおよび GUI に関する注意事項
Ladebug Debugger 画面で表示されるメッセージを日本語で表示させるためには,IOSJPLDBBASE サブセットが必要です。英語版 Ladebug Debugger をインストールした後,このサブセットをインストールしてください。これにより,メッセージが日本語で表示され,リファレンス・ページも日本語で表示されます。