2    クラスタ管理ツール

この章では,TruCluster Server システムの管理に使用できるツールについて記載します。以下の管理ツールとオプションについて説明しています。

2.1    利用可能な管理ツールとインタフェースの概要

Tru64 UNIX には,単一システムとクラスタの管理用に数多くの管理ツールが用意されています。クラスタは,可能な限り単一システムとして管理されます。

多くのシステムが異機種混在環境で使用されていますが,このような環境では,システム管理者が,PC から,Tru64 UNIX ワークステーションから,文字セル端末から,あるいはダイヤルアップ回線経由のノート PC から TruCluster Server システムを管理すると思われます。

こうした事実から,Tru64 UNIX と TruCluster Server には,管理タスクを行うための Web ベースのグラフィカル・インタフェースとコマンド行インタフェースが用意されています。特に,SysMan には,システムとクラスタの管理のためのコマンド行,文字セル端末,Java,X Window,および Web ベースの Java アプレットの各インタフェースが用意されています。

SysMan は単一のアプリケーションまたはインタフェースではありません。むしろ,SysMan は,Tru64 UNIX と TruCluster Server システムの管理用のアプリケーション群です。SysMan には,SysMan Menu,SysMan Station,および SysMan コマンド行インタフェースという 3 つの主要な構成要素があります。それぞれの構成要素について,この章で説明します。

ニーズに合ったツールとユーザ・インタフェースを選択できます。おそらく従来からの Tru64 UNIX コマンド行の多彩な機能や柔軟性が最も快適と思われます。あるいは,PC からのクラスタ管理に重点を置く場合は,SysMan に対する Java スタンドアロン・グラフィカル・インタフェースを利用すれば,Windows が稼働している PC から管理タスクを実行できます。

使用できる多数のクラスタ管理ツールやインタフェースがあるので,この章では,初めに各種オプションについて説明します。各オプションの特徴や機能は,以降の各項で簡単に説明していますが,詳細は Tru64 UNIX 『システム管理ガイド』を参照してください。

一部のクラスタ操作では,グラフィカル・インタフェースを利用できないので,コマンド行インタフェースを利用する必要があります。このような操作とコマンドについては,2.2 節で説明します。

2.1.1    クラスタ・ツールのクイック・スタート

すでにクラスタ管理ツールを熟知していて,ツールを使用し始めたい場合は,表 2-1 を参照してください。この表では,要約情報だけを示しています。詳細については,この章の以降の部分で説明します。

表 2-1:  クラスタ・ツールのクイック・スタート

ツール ユーザ・インタフェース 起動方法
SysMan Menu X Window # /usr/sbin/sysman -menu [-display display]
文字セル # /usr/sbin/sysman -menu
Java アプレット http://cluster_member_name:2301/SysMan_Home_Page
PC アプリケーション http://cluster_member_name:2301/SysMan_Home_Page
SysMan Station X Window # /usr/sbin/sysman -station [hostname] [-display display]
Java アプレット http://cluster_member_name:2301/SysMan_Home_Page
PC アプリケーション http://cluster_member_name:2301/SysMan_Home_Page
SysMan -CLI コマンド行 # /usr/sbin/sysman -cli
HP Insight Manager Web インタフェース http://cluster_member_name:2301/
HP Insight Manager XE Web インタフェース http://xe_server_name:280/

2.1.2    HP Insight Manager の統合

SysMan を介した HP Insight Manager と Web ベースのシステム管理は,密接に結合されています。HP Insight Management のエージェントとサブエージェントにより,管理されるサブシステムすべてのデバイスとシステムの情報が得られます。HP Insight Manager の Web ベースの SNMP (Simple Network Management Protocol) エージェントを利用すれば,システムの状態に関する情報の収集と表示を行うことができます。SNMP エージェントでは,読み取り専用の情報が提供されるので,システムを管理することはできません。

HP Insight Manager には,SysMan 用の Web ベースの管理 (WBEM) フレームワークも用意されています。HP Insight Manager は,次の URL から入手して各 Tru64 UNIX システムで利用できます。

http://cluster_member_name:2301/

このサイトから,Web ブラウザで直接 SysMan Menu または SysMan Station を実行するか,PC クライアント・キットをダウンロードして,それぞれのアプリケーションをローカルにインストールすることができます。

2.1.3    HP Insight Manager XE の統合

HP Insight Manager XE は Common Cluster 管理情報ベース (MIB) を使って TruCluster Server を探し出し監視します。MIB は /usr/sbin/clu_mibs SNMP サブエージェントがサポートします。このサブエージェントは,クラスタ・ソフトウェアに含まれており,自動的に起動します。

clu_mibs は TruCluster Server システム用の Extensible SNMP サブエージェント・デーモンであり,クラスタ MIB をサポートしています。このデーモンは現時点で Common Cluster MIB (/usr/share/sysman/mibs/svrClu.mib) と TruCluster Server MIB (/usr/share/sysman/mibs/truClu.mib) をサポートしています。

HP Insight Manager XE は,Web インタフェースを通してクラスタ状態の情報を収集し表示します。SNMP エージェントからは情報を読み取ることしかできず,このエージェントを使ってシステムを管理することはできません。管理作業を行う場合は,他のツールを使ってください。

2.1.4    利用可能な管理ツールとインタフェース

この項では,実行できるツールとプラットフォームおよびインタフェースとの関係について説明します。利用可能な管理ツールとインタフェースを,表 2-2 に示しています。

表 2-2:  利用可能な管理ツールとインタフェース

ツール X Window 文字セル Tru64 UNIX コマンド行 PC アプリケーション Java アプレット [脚注 1] 任意のプラットフォーム上の Web ブラウザ
sysman -menu 不可 不可
sysman -station 不可 不可 不可
sysman -cli 不可 不可 不可 不可 不可
HPInsight Manager 不可 不可 不可 不可 不可
HP Insight Manager XE 不可 不可 不可 不可 不可

どのユーザ環境を利用しても,操作のインタフェースは一貫しています。たとえば,SysMan Menu は,CDE (Common Desktop Environmen) を介した X Window アプリケーションとして文字セル端末インタフェース経由で起動するか,Java インタフェースを介して起動するかに関係なく類似しています。ただし,インタフェース間でナビゲーション方法に違いがあります。たとえば,SysMan Menu の文字セル・インタフェースには,アイコンのようなグラフィカルな要素はありません。それに対して,X Window インタフェースは,CDE のようなウィンドウ環境で動作するようになっているので,クリック可能なボタン,ドロップダウン・リストなどを備えています。

HP Insight Manager の Web ベースの SNMP エージェントは,システムの状態に関する情報の収集と表示を行います。管理タスクを行うには,他のツールを使用してください。

2.2    クラスタ構成ツールと関連ユーザ・インタフェース

すべての TruCluster 管理ツールに,SysMan インタフェースが備わっているわけではありません。表 2-3 は,クラスタ固有のタスクの管理ツールを示し,どのツールが SysMan Menu から利用できないかを示しています。この表では,NA は利用不可を表します。

表 2-3:  クラスタ管理ツール

コマンド SysMan Menu での利用 機能

caa_balance(8)

caa_profile(8)

caa_register(8)

caa_relocate(8)

caa_report(8)

caa_start(8)

caa_stat(1)

caa_stop(8)

caa_unregister(8)

sysman caa CAA (Cluster Application Availability) サブシステムで高可用性アプリケーションを管理する。
cfsmgr(8) sysman cfsmgr クラスタ・ファイル・システムを管理する。
cluamgr(8) sysman clu_aliases クラスタ別名を作成して管理する。
clua_active(8) クラスタ別名がアクティブで到達可能かどうかを調べる。
clu_add_member(8) NA クラスタにメンバを追加する。
clu_create(8) NA Tru64 UNIX システム上に最初のクラスタ・メンバを作成する。
clu_check_config(8) NA TruCluster Server が正しくインストールされて,クラスタが正しく構成されているかどうかを検査する。
clu_delete_member(8) NA クラスタからメンバを削除する。
clu_get_info(8) sysman hw_cluhierarchy (ほぼ同等) クラスタとそのメンバに関する情報を取得する。
clu_quorum(8) NA クォーラム・ディスクの構成または削除,あるいはクォーラム・ディスクのボート,メンバ・ボート,または期待ボートの調整を行う。
drdmgr(8) sysman drdmgr 分散デバイスを管理する。
imcs(1) NA Memory Channel アプリケーション・プログラミング・インタフェース (API) ライブラリ libimc の状態をレポートする。
imc_init(1) NA 現在のホスト上で Memory Channel API ライブラリ libimc を初期化して構成する。
mkcdsl(8) NA CDSL の作成または検証を行う。

2.3    SysManの構成要素の概要

この節では,SysMan の管理オプションを紹介します。SysMan については, sysman_intro(8) および sysman(8) を参照してください。

SysMan には,クラスタ・ファイル・システム,ストレージ,およびクラスタ別名の管理をはじめとする一般的なシステム管理タスク用の使いやすいインタフェースが用意されています。SysMan に対するインタフェース・オプションには,以下のような利点があります。

SysMan には,SysMan Menu,SysMan Station,および SysMan コマンド行インタフェースという 3 つの主要な構成要素があります。以降の各項で,それぞれの構成要素を説明します。

2.3.1    SysMan Menu の紹介

図 2-1 に示すように,SysMan Menu により,単一システムやクラスタの利用可能な管理ユーティリティの大部分がメニュー・システムに組み込まれます。

図 2-1:  SysMan Menu の階層

SysMan Menu では,システム管理タスクのメニューは,管理カテゴリのブランチと実際のタスクのリーフという編成のツリー階層で提供されます。リーフを選択するとタスクが起動されて,タスクを実行するためのダイアログ・ボックスが表示されます。

SysMan Menu のユーザ・インタフェースは,SysMan Menu の起動方法にかかわらず機能的に同じです。たとえば,図 2-2 は,文字セル,X Window,Java,および Java アプレットのユーザ・インタフェースによる各ウィンドウを示しています。

図 2-2:  SysMan Menu のインタフェース

2.3.2    SysMan Station の紹介

SysMan Station では,システム (またはクラスタ) がグラフィカルに表現されるため,ディスクなどの個々のシステム構成要素のレベルまでシステムの状態を監視できるようになります。また,ファイル・システム,AdvFS (Advanced File System) ドメインなどの論理グループの表示や監視を行ったり,独自のビューを作成することもできます。システム構成要素を表示すると,その構成要素のプロパティまたは構成要素で管理タスクを実行できるようにする起動ユーティリティに関する詳細な情報を得ることができます。SysMan Menu と異なり,SysMan Station は,グラフィック機能が必要で,文字セル・ユーザ環境からは実行できません。

図 2-3 は,SysMan Station のグラフィカル・インタフェースの例を示しています。

図 2-3:  SysMan Station のグラフィカル・インタフェース

SysMan Menu と同様に,SysMan Station のユーザ・インタフェースは,SysMan Station の起動方法にかかわらず機能的に同じです。

2.3.3    SysMan コマンド行の紹介

sysman -cli コマンドは,SysMan の機能に対する汎用コマンド行インタフェースを備えています。sysman -cli コマンドを使用すれば,SysMan のデータの表示や変更を行うことができます。また,このコマンドを使用すれば, sysman_cli(8) で説明しているように,辞書型の情報 (SysMan データのデータ説明,キー情報,タイプ情報など) を表示することもできます。既知の構成要素すべてを SysMan データ階層に表示するには,sysman -cli -list components コマンドを使用してください。

2.4    クラスタでの SysMan Menu の使用

この節では,クラスタで SysMan Menu を使用する方法について説明します。初めに,フォーカスと SysMan Menu に対するフォーカスの影響を解説します。

2.4.1    フォーカスの取得

特定の管理操作の効果が及ぶ範囲のことをその操作のフォーカスといいます。TruCluster 環境では,管理操作のフォーカスは以下の 4 とおりが考えられます。

SysMan Menu では,管理タスクごとに選択する最適なフォーカスがわかっています。タスクでクラスタ単位の操作とメンバ固有の操作の両方がサポートされている場合は,SysMan Menu で,操作対象のクラスタ名または特定のメンバを選択できます。つまり,クラスタ名とクラスタ・メンバを選択できる場合は,操作は両方になりますが,メンバ名しか選択できない場合は,操作はメンバ固有になります。

特定の操作に対するフォーカス情報は,SysMan Menu のタイトル・バーに表示されます。たとえば,クラスタのローカル・ユーザをクラスタ単位の操作で管理するときは,タイトル・バーに以下のように表示される可能性があります (この例にある provolone はクラスタ・メンバで,deli はクラスタ別名です)。

Manage Local Users on provolone.zk3.dec.com managing deli

2.4.2    コマンド行でのフォーカスの指定

操作でフォーカスを指定する場合は,SysMan Menu の -focus オプションを使用すれば,コマンド行からフォーカスを指定できます。

コマンド行でのフォーカスの指定が shutdown コマンドに及ぼす影響を考慮してください。shutdown コマンドは,クラスタ単位またはメンバ固有で実行される場合があります。次のコマンドでクラスタ・メンバから SysMan Menu を起動した場合は,クラスタ名が shutdown オプションの最初のフォーカスになります。

# sysman -menu
 

ただし,次のコマンドでクラスタ・メンバから SysMan Menu を起動した場合は,provolone クラスタ・メンバが shutdown オプションの最初のフォーカスになります。

# sysman -menu -focus provolone
 

SysMan Menu のセッション中に新しい管理タスクを開始すると,このダイアログ・ボックスには常に,前回のタスクでのフォーカスの指定先が強調表示されます。このため,1 つのクラスタ・メンバ上で数多くの管理機能を実行する場合は,そのメンバを 1 回だけ選択する必要があります。

2.4.3    SysMan Menu の起動

表 2-4 に示すように,各種インタフェースから SysMan Menu を起動できます。

表 2-4:  SysMan Menu の起動

ユーザ・インタフェース 起動方法

文字セル端末

クラスタ・メンバ上で端末セッションを起動するか,端末ウィンドウを開いて,次のコマンドを入力する。

# /usr/sbin/sysman -menu

DISPLAY 環境変数の設定,SysMan Menu コマンド行での -display 修飾子による直接指定,あるいはその他のメカニズムを介して X Window 表示がこの端末ウィンドウに関連付けられている場合は,SysMan Menu に対する X Window インタフェースが代わりに起動される。こような場合には,文字セル・インタフェースを強制的に使用するために,次のコマンドを使用する。

# /usr/sbin/sysman -menu -ui cui

CDE (または他の X Window 表示)

SysMan Menu は,X Window のウィンドウ環境で利用できる。SysMan Menu を起動するには,次のコマンドを入力する。

# /usr/sbin/sysman -menu [-display displayname]

CDE インタフェースを使用している場合,SysMan を起動するには,root ユーザのフロント・パネルの [SysMan] サブメニュー・アイコンをクリックして [SysMan Menu] を選択する。サブメニュー・アイコンではなく [SysMan] アイコン自体をクリックした場合は,SysMan Station が直接起動される。

また,フロント・パネルの [アプリケーション・マネージャ] アイコンをクリックしてから,[システム管理] グループの [SysMan Menu] アイコンをクリックすれば,CDE から SysMan Menu を起動することもできる。

コマンド行

SysMan Menu は,コマンド行からは利用できない。ただし,SysMan コマンド行インタフェース sysman -cli を利用すれば,コマンド行から SysMan ルーチンを実行したり,SysMan インタフェースへの入力をカスタマイズするプログラムを作成することができる。オプションとフラグの詳細は, sysman_cli(8) を参照。さらに詳しくは,2.8 節を参照。

Web ベースの Java アプレット 2.6.1 項を参照。
スタンドアロン Java アプリケーション 2.7.1 項を参照。

2.5    クラスタでの SysMan Station の使用

SysMan Station は,デーモン smsd(8) と SysMan Station のグラフィカル・ユーザ・インタフェースからなるクライアント/サーバ・アプリケーションです。SysMan Station は,単一システムまたはクラスタの監視と管理を行います。SysMan Menu を起動するか,SysMan Station からアプリケーションを直接起動することもできます。SysMan Station を使用して,以下のタスクを実行できます。

SysMan Station を起動しておくことが便利であるとわかれば,SysMan Station をデスクトップで実行したままにしておいてください。特に,Tru64 UNIX システムの管理の経験がない場合は,SysMan Station を利用すれば,先に Tru64 UNIX コマンドの構文を習得しなくてもクラスタを管理できます。

クラスタ・メンバから SysMan Station を起動すると,モニタ・ウィンドウが表示されます (図 2-4)。

図 2-4:  SysMan Station の最初のクラスタ・ビュー

モニタ・ウィンドウには,以下のサブシステムの状態が表示されます。

状態を示す色とパターンで,以下のような障害またはトラブル状況が示されます。

状態インジケータ,またはその下のラベルをクリックすれば,指定したサブシステムに対して通知されたイベントを表示できます。cluster_event 属性に true が設定されたイベントを除き,イベントは,イベントを生成したメンバによって識別されます。クラスタ・イベントの一覧については,付録 A を参照してください。

ドロップダウン・リストには,次のような利用可能なビューが表示されます。

このいずれかのビューをクリックすれば,そのビューを表示する新しいウィンドウを開くことができます。たとえば,Hardware ビューをクリックすると,クラスタ・ハードウェアのビューが表示されます。このビューの例を図 2-5 に示しています。

図 2-5:  SysMan Station のクラスタ・ハードウェア・ビューのサンプル

ビュー内のオブジェクトには,そのタイプに基づくアクションが設定されます。つまり,クラスタやディスク・オブジェクトのようなオブジェクトには,管理アクションが関連付けられており,アクションはオブジェクトのタイプによって変わります。たとえば,クラスタ・オブジェクトでは,以下の管理アクションを実行できます。

一部の選択項目には,管理タスクが関連付けられていない場合があります。たとえば,グラフィック・カードの場合は,そのプロパティと関連イベントを表示できますが,そのカードを管理することはできません。

特定のオブジェクトに対して有効なアクションを調べるには,図 2-6 に示すように,オブジェクトをポイントしてマウスの右ボタンをクリックして押したままにします。

図 2-6:  SysMan Station での有効なアクションの表示

2.5.1    SysMan Station の起動

表 2-5 に示すように,各種インタフェースから SysMan Station を起動できます。

表 2-5:  SysMan Station の起動

ユーザ・インタフェース 起動方法
文字セル端末

SysMan Station は,ローカルまたはリモートの文字セル端末では利用できない。

CDE (または他の X Window 表示)

SysMan Station は,X Window のウィンドウ環境で利用できる。SysMan Station を起動するには,次のコマンドを入力する。

# /usr/sbin/sysman -station [hostname] [-display display]

CDE インタフェースを使用している場合,SysMan Station を起動するには,root ユーザのフロント・パネルの [SysMan] アイコンをクリックする。フロント・パネルの [アプリケーション・マネージャ] アイコンをクリックしてから,[システム管理] グループの [SysMan Station] アイコンをクリックすることもできる。

コマンド行

SysMan Station は,コマンド行からは利用できない。ただし,SysMan コマンド行インタフェース sysman -cli を利用すれば,コマンド行から SysMan ルーチンを実行したり,SysMan インタフェースへの入力をカスタマイズするプログラムを作成できる。オプションとフラグの詳細は, sysman_cli(8) を参照。

さらに詳しくは,2.8 節を参照。

Web ベースの Java アプレット 2.6.1 項を参照。
スタンドアロン Java アプリケーション 2.7.1 項を参照。

2.6    クラスタでの SysMan Java アプレットの使用

注意

Web ページのサービスを提供している Tru64 UNIX システムだけを管理できます。 クラスタでは,これは Web ページのサービスを提供しているクラスタ・メンバだけを管理できることを表します。したがって,クラスタを管理するには,2.7 節で説明している Java PC アプリケーションを使用してください。

HP Insight Manager には,SysMan 対応の Web ベースの管理 (WBEM) フレームワークが 2 つの Java アプレット形式で用意されています。

アプレットには,Web ブラウザ内部で実行するアプレット本体,および Tru64 UNIX システム上で実行する SysMan Station デーモン /usr/sbin/smsd の 2 つの構成要素があります。

ブラウザを使用して正しい URL を開き,いずれかのアプレットを起動します。すると,アプレットは,ポート 2301 で部分的に HP Insight Manager http サーバを介して,Tru64 UNIX システムとやりとりします。

ブラウザの要件

サポートするブラウザについての情報は次の Web ページを参照してください。

http://cluster_member_name:2301/SysMan_Home_Page

Tru64 UNIX システムでは,HP Insight Manager エージェント (デーモン) は,オペレーティング・システムをインストールすると省略時の設定で構成され,システムがブートすると自動的に起動されます。

HP Insight Manager Web エージェントは,レベル 3 を実行するための状態遷移中に /sbin/rc3.d/S50insightd スクリプトによって初期化されます。このスクリプトは,/usr/sbin/insightd を実行し,エージェントが正常に起動されると,コンソールにブート時メッセージを出力します。SNMP サブエージェントの /usr/sbin/os_mibs/usr/sbin/cpq_mibs も,レベル 3 を実行するための状態遷移中に /sbin/rc3.d/S49snmpd スクリプトによって起動されます。システムが正しく構成されているかどうかをテストするには,次のコマンドを入力します。

# ps agx | grep insight
# ps agx | grep cpq
# ps agx | grep os_mib
 

あるいは,次のコマンドを入力します。

# ps agx | grep -E "insight|cpq|os_mibs" 
 

使用する可能性が低いために,省略時には HP Insight Manager Web Agent を使用可能にしたくない場合は,SysMan Menu または次の sysman imconfig コマンドを介して,Web Agent を使用不能にすることができます。

# /usr/sbin/sysman imconfig
 

HP Insight Manager Web Agent を使用不能にした場合は,SysMan PC アプリケーションからオンライン・ヘルプを使用できません。

2.6.1    SysMan Java アプレットの起動

Web ブラウザから SysMan Java アプレットを直接実行する方法の詳細については,適合する Web ブラウザで次の場所にアクセスしてください。

http://cluster_member_name:2301/SysMan_Home_Page

ブラウザが適合する場合は,SysMan Station または SysMan Menu へのリンクをクリックすると,ブラウザ内でアプレットが起動されます。 アプレットの起動に少し時間がかかるかもしれません。

アプレットが起動されると,クラスタ・メンバへの接続が確立します。root でログインしてください。

Web ブラウザから SysMan Menu や SysMan Station を実行する方法に慣れると,それらを次の URL から直接起動する方がさらに便利であることがわかります。

2.7    クラスタでの SysMan Java PC アプリケーションの使用

SysMan Menu と SysMan Station はどちらも Windows PC 上で動作する Java スタンドアロン・アプリケーションとして利用できます。これらのアプリケーションを他の PC アプリケーションとまったく同様にインストールして実行します。ただし,これらのアプリケーションは Web ブラウザ・ベースではありません。

アプリケーションが Java 実行時環境 (JRE) アプリケーションとして実行する点を除けば,アプリケーションの外観や機能は,文字セル版や X Window 版と同様です。

SysMan Java アプレットと異なり,スタンドアロン Java アプリケーションは,HP Insight Manager デーモンや http サーバに依存していません。 smsd デーモン smsd(8) は,ホストからシステム管理データを収集し,その情報を SysMan Station Java クライアントに渡す役割を果たします。

2.7.1    PC 上での SysMan Java アプリケーションの起動

Windows PC 上でのスタンドアロン Java アプリケーションのダウンロードと実行の詳細については,Web ブラウザで次の場所にアクセスしてください。

http://cluster_member_name:2301/SysMan_Home_Page

「Managing Tru64 UNIX from a PC」の節で,SysMan Station Java スタンドアロン・アプリケーションのダウンロード,インストール,および実行の手順ついて説明しています。

2.8    クラスタでの SysMan コマンド行インタフェースの使用

sysman -cli コマンドには,SysMan データへの汎用コマンド行インタフェースが用意されています。sysman -cli コマンドを使用すれば,SysMan データの表示または変更を行うことができます。また,このコマンドを使用すれば, sysman_cli(8) で説明しているように,辞書型の情報 (SysMan データのデータ記述,キー情報,タイプ情報など) を表示することもできます。

フォーカスを指定するには,-focus オプションを使用します。フォーカスとは特定の管理タスクの効果の及ぶ範囲のことで,これによりクラスタの範囲が,クラスタ・メンバ全体または特定のクラスタ・メンバと見なされます。

既知の構成要素すべてを SysMan データ階層に表示するには,sysman -cli -list component コマンドを使用します。

sysman -cli コマンドの例を例 2-1 に示しています。このコマンドでは,amember という名前のクラスタ・メンバの clua 構成要素の属性が表示されます。

例 2-1:  sysman の出力例

# sysman -cli -focus amember -list attributes -comp clua
 
Component: clua
  Group: cluster-aliases
    Attribute(s):
      aliasname 
      memberlist 
  Group: clua-info
    Attribute(s):
      memberid 
      aliasname 
      membername 
      selw 
      selp 
      rpri 
      joined 
      virtual 
  Group: componentid
    Attribute(s):
      manufacturer 
      product 
      version 
      serialnumber 
      installation 
      verify 
  Group: digitalmanagementmodes
    Attribute(s):
      deferredcommit 
      cdfgroups 
 

2.9    クラスタでの HP Insight Manager の使用

HP Insight Manager を使用すれば,現在の Web ブラウザを使用して,広範囲な Tru64 UNIX 構成情報を表示できます。Tru64 UNIX システム上の Web ブラウザまたは Windows PC 上の Web ブラウザを使用できます。どちらを使用するかはユーザ次第です。

Tru64 UNIX に実装されるように,HP Insight Manager は,Tru64 UNIX システムのポート 2301 で受信待ちをするプライベート http サーバと Tru64 UNIX SNMP サブエージェントの組み合わせを利用して,クラスタ・メンバの構成情報を表示する Web ベースのインタフェースになっています。つまり,SNMP サブエージェント /usr/sbin/os_mibs/usr/sbin/cpq_mibs では,属性の取得はできますが,属性の設定はできません。

HP Insight Manager Web エージェントは,レベル 3 を実行するための状態遷移中に初期化されます。初期化スクリプトは /sbin/rc3.d/S50insightd にあります。このスクリプトは,/usr/sbin/insightd を実行し,エージェントが正常に起動されると,コンソールにブート時メッセージを出力します。SNMP サブエージェントの /usr/sbin/os_mibs/usr/sbin/cpq_mibs も,レベル 3 を実行するための状態遷移中に /sbin/rc3.d/S49snmpd スクリプトによって起動されます。

HP Insight Management エージェントは,クラスタ対応ではありませんが,指定したクラスタ・メンバに関する有用なデバイス情報や状態情報を提供します。特に,HP Insight Management を利用すれば,経験の浅いサポート要員でも Tru64 UNIX コマンド行インタフェースを使用せずに,システムやデバイスの情報 (特定のディスク・デバイスの容量,シリアル番号など) を収集できることがわかります。

HP Insight Manager の表示サンプルを 図 2-7 に示しています。

図 2-7:  HP Insight Manager の表示

HP Insight Manager のブラウザの要件については, insight_manager(5) を参照してください。HP Insight Manager では,Java,JavaScript,および cookie を有効にする必要があります。

2.9.1    HP Insight Manager の起動

HP Insight Manager を起動するには,管理したいクラスタ・メンバ上で次の URL を開いて,HP Insight Management Agents セクションにナビゲートします。

http://cluster_member_name:2301

ナビゲーション・フレームには,データを取得できるすべての下位構成要素と関連データ項目が一覧表示されます。また,ネットワーク・インタフェース・カード (NIC) のようなハードウェアに関する状態データや,CPU 使用率のような一般的なシステム状態に関するデータも表示されます。このフレームのコンテンツは,HP Insight Manager で利用できるデバイス・データによって変わります。一般的なカテゴリは,次のとおりです。

2.10    Tru64 UNIX 構成レポートの使用

HP Insight Manager に用意されている機能のほかに,Web ブラウザを使用してクラスタ・メンバ上でシステム検査を実行できます。このシステム検査では,sys_check コマンドが実行されますが,そのためには,コマンド行から sys_check を実行する場合と同じ特権が必要です。

新しいレポートを生成する場合は,ブラウザから SysMan Menu Java アプレットが起動されます。アプレットが正しく動作するように,2.6 節で記述されている互換性のあるブラウザを使用する必要があります。

任意のブラウザを使用して,生成されたレポートを表示することができます。

構成レポートを起動するには,管理したいクラスタ・メンバ上で次の URL を開きます。

http://cluster_member_name:2301/ConfigReport

構成レポート表示のサンプルを図 2-8 に示しています。

図 2-8:  構成レポート表示のサンプル

新しいシステム構成レポートを生成するには,Web ページの最下部の [Create New Report] をクリックします。この操作の結果,ブラウザ内の SysMan Menu Java アプレットが起動されます。このアプレットにより,レポートを作成する前に参照したい情報の種類を指定できます。

ブラウザからこの新しいレポートを表示するには,必ず [Export To Web] オプションを選択します。