4    LSM ディスク,ディスク・グループ,およびボリュームの作成

この章では,以下の項目の説明を行います。

第 2 章 で記入したワークシートの情報を使用して,ディスク・グループと LSM ボリュームを作成します。

4.1    LSM ディスク作成の概要

LSM で使用するためにディスクまたはディスク・パーティションを初期化またはカプセル化すると,LSM ディスクが作成されます。 dsk10 などのディスク名を指定すると,ディスク全体が LSM スライス・ディスクとして初期化されます。 dsk10gdsk10c などのパーティション名を指定すると,パーティションが LSM シンプル・ディスクとして初期化されます。 LSM 制御下に置くデータを含むディスク・パーティションをカプセル化すると,nopriv ディスクが作成されます。

LSM ディスクを初期化するには,以下の手順を実行します。

注意

システムにとって新規のディスクの場合,LSM がすでに実行中であれば,hwmgr scan scsi コマンドを実行した後,voldctl enable コマンドを実行して LSM にディスクを認識させます。

LSM スライス・ディスクまたは シンプル・ディスクを作成するには,voldisksetup コマンドあるいは voldiskadd スクリプトを使用します (ディスクまたはパーティションのカプセル化については,4.6.1 項を参照してください)。

4.1.1    構成データベースのコピーの概要

特に指定しなければ,LSM は,各スライス・ディスクやシンプル・ディスクが,そのディスク・グループの構成データベースのコピーを 1 つ持つように構成します。 4 個未満のディスクでディスク・グループを作成する場合は,2 つの構成データベースのコピーを持つように各ディスクを構成し,1 つ以上のディスクが故障しても複数のコピーが残るようにします。 LSM ディスクの構成データベースのコピーの数を指定する場合は,voldisksetup コマンドを使用します。

LSM のスライス・ディスクとシンプル・ディスクは,ディスク・グループ用の構成データベースのコピーを,0 個,1 個,または 2 個持つことができます。 LSM は,ディスクをディスク・グループに追加し,ディスク・グループ全体でコピーの数と分散状況を適切に維持する必要がある場合だけ,ディスクに指定された構成データベースのコピーの数を有効にします。 大部分のシステム構成では,省略時のコピー数で LSM ディスクを初期化し,それを LSM に管理させます。

Fibre Channel 環境で,適正な数の LSM 構成データベースのコピーを維持し,分散させるには,以下の URL の『Ensuring Redundancy of LSM Configuration Databases on a Fibre Channel』という Best Practice を参照してください。

http://h30097.www3.hp.com/docs/best_practices/

4.1.2    ディスク・オフセットの概要

ディスクを LSM 用に初期化すると,省略時の設定では LSM は最初の 16 ブロックをスキップし,ディスク・ヘッダとブートストラップ情報をそのままにします。 スライス・ディスクの公用リージョンと,シンプル・ディスクのプライベート・リージョンは,この省略時のオフセットの後から最初のブロックを開始します。 必要に応じて,voldisksetup コマンドを使用して,異なるオフセットを指定してください。

たとえば,使用している RAID ハードウェア・デバイスのチャンク・サイズに入出力要求を合わせるように,LSM ディスクを設定できます。 詳細は,以下の URL の『Aligning LSM Disks and Volumes to Hardware RAID Devices』という Best Practice を参照してください。

http://h30097.www3.hp.com/docs/best_practices/

4.1.3    LSM スライス・ディスクの作成

以下の例は,各種の属性を備えた LSM スライス・ディスクの作成方法を示します。

必要に応じて (ただし推奨します),すべての LSM ディスクのディスク・ラベル情報のバックアップを取ってください (4.1.5 項を参照)。

ディスクまたはディスク・パーティションを LSM ディスクとして初期化した後は,それをディスク・グループに追加することができます。 ディスク・グループの作成方法は,4.2 節を参照してください。 LSM ディスクを既存のディスク・グループへ追加する方法は,5.2.2 項を参照してください。

4.1.4    LSM シンプル・ディスクの作成

シンプル・ディスクのプライベート・リージョンの省略時のオフセットは,a または c パーティションの場合は 16 ブロックで,それ以外のパーティションの場合は 0 ブロックです。 構成データベースのコピーの省略時の数は 1 です。

以下の例は,各種の属性を備えた LSM シンプル・ディスクの作成方法を示します。

必要に応じて (ただし推奨します),すべての LSM ディスクのディスク・ラベル情報のバックアップを取ってください (4.1.5 項を参照)。

LSM ディスクを初期化した後は,それをディスク・グループに追加することができます。 ディスク・グループの作成方法は,4.2 節を参照してください。 LSM ディスクを既存のディスク・グループへ追加する方法は,5.2.2 項を参照してください。

4.1.5    ディスク・ラベル情報のバックアップ

各 LSM ディスクについて,アップデートされたディスク・ラベル情報のバックアップを取ります。 この情報を取っておくと,故障したディスクを置き換える処理が簡単になります。 故障したディスクの属性を新しいディスクにコピーできるためです。 ディスクが故障した後ではディスク・ラベルは読み込めないため,その情報を新しいディスクにコピーすることはできません。

ディスク・ラベル情報のバックアップは,ディスクをディスク・グループに追加する前でも後でも行えます。 バックアップする情報は変わりません。

ディスク・ラベル情報をバックアップするには,次のコマンドを実行します。

# disklabel dskn > file

詳細は, disklabel(8) を参照してください。

4.2    ディスク・グループの作成

LSM を初期化すると省略時のディスク・グループ rootdg が作成されます。 このため,LSM を実行するシステムでは,必ずこのディスク・グループが存在します。 ディスクを論理的なセットとして編成するために,追加のディスク・グループを作成できます。 作成する各ディスク・グループには,一意の名前と,ディスク・グループの構成データベース格納用の LSM スライス・ディスクまたはシンプル・ディスクが少なくとも 1 つ必要です。 LSM ディスクは 1 つのディスク・グループにだけ属することができます。 [脚注 1]

大規模な LSM 構成の場合は,rootdg を小規模 (10 ディスク以下) に保って,残りの LSM 構成用に別のディスク・グループを作成してください。 可能な場合は,rootdg は,システム・ディスク関連のボリューム (スタンドアロン・システムの場合),クラスタ単位のルート,/usr,および /var ファイル・システム・ドメインとメンバのスワップ・デバイスのためだけに使用してください。

ディスク・グループを独立させると,LSM ボリュームを別のシステムやクラスタに移動できるようになります。

LSM ディスク・グループは以下のコマンドを使用して作成します。

4.2.1    voldiskadd スクリプトを使用した LSM ディスクとディスク・グループの作成

voldiskadd スクリプトを使用すると,以下の作業がすべて 1 つの対話型セッションで実行できます。

注意

ディスク・グループ内のディスクが 4 台未満の場合は,4.1.1 項を参照してください。

voldiskadd スクリプトを起動する方法には,ディスク名を指定して起動する方法と,ディスク名を指定しないで起動する方法があります。 ディスク名を指定しないで起動すると,以下の情報の入力が求められます。

例 4-1 のスクリプトは,ディスク dsk9 を使用してディスク・グループ dg1 を作成します。

例 4-1:  voldiskadd スクリプトによる LSM ディスク・グループの作成

# voldiskadd dsk9

Add or initialize disks
 
Menu: VolumeManager/Disk/AddDisks
 
  Here is the disk selected.
 
  dsk9
 
Continue operation? [y,n,q,?] (default: y) [Return]
 
  You can choose to add this disk to an existing disk group, a
  new disk group, or leave the disk available for use by future
  add or replacement operations. To create a new disk group,
  select a disk group name that does not yet exist. To leave
  the disk available for future use, specify a disk group name
  of "none".
 
Which disk group [<group>,none,list,q,?] (default: rootdg) dg1
 
  There is no active disk group named dg1.
 
Create a new group named dg1? [y,n,q,?] (default: y) [Return]
 
  The default disk name that will be assigned is:
 
  dg101
 
Use this default disk name for the disk? [y,n,q,?] (default: y) [Return]
 
Add disk as a spare disk for dg1? [y,n,q,?] (default: n) [Return]
 
  A new disk group will be created named dg1 and the selected disks
  will be added to the disk group with default disk names.
  dsk9
 
Continue with operation? [y,n,q,?] (default: y) [Return]
 
  The following disk device has a valid disk label, but does 
  not appear to have been initialized for the Logical Storage 
  Manager. If there is data on the disk that should NOT be 
  destroyed you should encapsulate the existing disk partitions 
  as volumes instead of adding the disk as a new disk.
 
  dsk9
 
Initialize this device? [y,n,q,?] (default: y) [Return]
 
  Initializing device dsk9.
 
  Creating a new disk group named dg1 containing the disk
  device dsk9 with the name dg101.
 
Goodbye.

4.2.2    voldg コマンドを使用したディスク・グループの作成

構成データベースのコピー数が省略時の数でないディスク (4.1 節を参照) などの,LSM 用に初期化されたディスクを使用してディスク・グループを作成する場合には,voldg コマンドを使用します。

省略時の設定では,LSM は各ディスク・グループに,構成データベースのアクティブ・コピーを少なくとも 4 つ保持します。 省略時の設定で初期化したディスクを使用する場合でも,省略時と異なる数のコピーを指定できます。 最大値を指定することもできます。 これは,ディスク・グループ内のスライス・ディスクとシンプル・ディスクの数です。

たとえば,コピーを 1 つ (省略時の値) 格納するように初期化されたスライス・ディスクまたはシンプル・ディスク 10 個からディスク・グループを作成する場合は,このディスク・グループのコピーの数を,10 に設定できます。 それぞれのディスクにコピーを 2 つ格納するように構成した場合は,そのディスク・グループのコピーの数を 20 に設定することができます。

どのディスク・グループでも,アクティブな構成データベースのコピーの最大数は,グループ内のスライス・ディスクまたはシンプル・ディスクの数と,各ディスクに格納するように構成されているコピーの数で決まります。

注意

ディスク・グループに保持する構成データベースのコピー数を変更できるのは,ディスク・グループを作成するときだけです。 既存のディスク・グループのアクティブ・コピーの数は変更できません。

省略時のコピー数より多いコピーを持つと,性能に影響があります。 これは,LSM 構成に変更があるたびに,データベースのアクティブ・コピーへの書き込みが行われるためです。 省略時の値とは異なる数を使用する必要がある場合は,環境の要件を十分に満たし,なおかつ性能への影響を最小限にする小さな数を選んでください。

voldg コマンドを使用して,省略時の値でディスク・グループを作成する場合は,次のように入力します。

# voldg init disk_group disk [disk...]

たとえば,次のように実行します。

# voldg init dg1 dsk5 dsk6 dsk7 dsk9 dsk10 dsk11 dsk12

4 個未満のディスクでディスク・グループを作成する場合は,2 つの構成データベースのコピーを持つように各ディスクを構成し (4.1 節を参照),1 つ以上のディスクが故障してもディスク・グループに複数のコピーが残るようにします。

ディスク・グループを作成し,構成コピーの数を 10 に設定するには,次のように入力します。

# voldg init newdg disks nconfig=10

たとえば,次のように実行します。

# voldg init newdg dsk100 dsk101 dsk102... dsk110 nconfig=10

4.3    新しいデータのための LSM ボリュームの作成

新しいファイル・システムまたはアプリケーションのための LSM ボリュームを作成するには,volassist コマンドを使用します。 volassist コマンドは,必要な領域をディスク・グループ内で検出してボリューム用のすべてのオブジェクトを作成するか,コマンド行で指定された属性 (特定のディスク名など) を使用します。 コマンド行では,名前と長さ (サイズ) を指定する必要があります。

コマンド行,または作成するテキスト・ファイルで,他の LSM ボリューム属性を指定することができます。 属性値を指定しないと,LSM は省略時の値を使用します。

省略時の設定では,LSM はストライプ・プレックスに 64K バイト,RAID5 プレックスには 16K バイトのストライプ幅を使用します。 ただし,異なるストライプ幅を使用することもできます。 たとえば,I/O 転送サイズに違う値が必要なアプリケーションを使用する場合や,特定のストライプ幅を持つハードウェア・デバイスを作成し LSM ボリュームをそのデバイスから作成し,データの書き込み (データ・ストライプ) をそのハードウェアのストライプ幅に合わせるようにしたい場合などです。

詳細は,以下の URL の『Aligning LSM Disks and Volumes to Hardware RAID Devices』という Best Practice を参照してください。

http://h30097.www3.hp.com/docs/best_practices/

4.3.1    LSM ボリューム属性の概要

以下に割り当て可能な属性の優先順位を示します。

  1. コマンド行での値

  2. volassist の -d オプションで指定するファイル内の値

  3. /etc/default/volassist ファイル内の値

  4. 省略時の値

ボリューム属性の省略時の値を表示するには,次のコマンドを入力します。

# volassist help showattrs

#Attributes:
 layout=nomirror,nostripe,span,nocontig,raid5log,noregionlog,nofpalog,diskalign,nostorage
 mirrors=2 columns=0 nlogs=1 regionlogs=1 raid5logs=1 fpalogs=1
 min_columns=2 max_columns=8
 regionloglen=0 raid5loglen=0 logtype=region
 stripe_stripeunitsize=128 raid5_stripeunitsize=32
 usetype=fsgen diskgroup= comment="" fstype=
 user=0 group=0 mode=0600
 probe_granularity=2048
 alloc=
 wantalloc=
 mirror=

ボリューム属性には複数のオプションを持つものがあります。 また,オプションによってはグローバルに属性を定義するものや,特定のプレックス・タイプだけで属性を定義するものがあります。 たとえば,ストライプ・プレックスと RAID5 プレックスの両方に stripeunit (または stwidth) オプションを使用してストライプ・データ・ユニットのサイズを指定できますが,stripe_stripeunit (または stripe_stwid) オプションはストライプ・プレックスだけで使用でき,raid5_stripeunit (または raid5_stwid) オプションは RAID5 プレックスだけで使用できます。

属性の完全なリストは, volassist(8) を参照してください。 表 4-1では,値を指定できるいくつかの共通属性を説明しています。

表 4-1:  LSM ボリュームの共通属性

属性の説明 属性オプション
プレックス・タイプ layout={concatenated|striped|raid5}
使用タイプ -U {fsgen|gen|raid5}
プレックス数 (ミラー)。 省略時の値は 2。 mirror={number|yes|no}

ログ・タイプ

  • drl,ミラー・ボリューム専用

  • region,ミラー・ボリューム,または RAID5 ボリューム用

logtype={drl|region|none}
FPA ログ数 (ミラー・ボリューム専用) nfpalog=number
ストライプ・プレックスまたは RAID5 プレックスのストライプ幅のサイズ (ブロック,セクタ,K バイト,M バイト,または G バイト単位) stripeunit=data_unit_size または stwid=data_unit_size
ストライプ・ボリューム,または RAID5 ボリュームのカラム数。 通常は,各プレックス内のディスク数。 nstripe=number_of_columns または ncolumn=number_of_columns

省略時とは異なる同じ値を使用する LSM ボリュームを多数作成する場合は,これらの属性を多数指定しているテキスト・ファイルを作成すると役に立ちます。 コマンド行で指定できる属性はすべて,テキスト・ファイル内の個別の行で指定できます。 省略時の設定では,LSM は LSM ボリュームの作成時に,/etc/default/volassist を探します。 /etc/default/volassist が作成してあると,LSM は,コマンド行と /etc/default/volassist ファイルで指定されている属性を使用して,各ボリュームを作成します。

例 4-2 に,2 つのミラーを持つ 4 カラムのストライプ・プレックスで,ストライプ幅が 32 K バイト,ログなしの LSM ボリュームを作成するための LSM ボリューム属性ファイル /etc/default/volassist を示します。

例 4-2:  省略時の LSM ボリューム属性のファイル

# LSM Vn.n
# volassist defaults file. Use '#' for comments
# number of stripes
nstripe=4
# layout
layout=striped
# mirroring
nmirror=2
# logging
logtype=none
# stripe size
stripeunit=32k

たとえば,/etc/default/volassist ファイルの属性を使用して LSM ボリュームを作成する場合は,次のコマンドを入力します。

# volassist make volume length

カスタム属性ファイルを作成し,ボリューム作成時に LSM にそのファイル内の適用可能な属性を使用させるようにするには,その属性ファイルを次のように指定します。

# volassist make volume length -d filename

このオプションを使用すると,LSM はコマンド行の属性 (名前や長さなど) と,指定されたファイル内の属性を使用して,ボリュームを作成します。 コマンド行の属性と,指定されたファイル内の属性が矛盾する場合は,コマンド行の属性が優先されます。

ボリュームの長さ (サイズ) を指定するには,数字と,以下の適切なサフィックスを入力します。

サフィックス 単位
b ブロック
s セクタ (省略時の単位)
k K バイト
m M バイト
g G バイト
t T バイト

4.3.2    単一連結プレックスの LSM ボリュームの作成

単一連結プレックスのボリュームは,シンプル・ボリュームとも呼ばれます。 このボリュームには,データ冗長性はありません。 このため,ディスクが故障すると,データは失われます。 これを避けるには,最初からミラー連結プレックスでボリュームを作成する (4.3.3 項) か,または別のデータ・プレックスを後でボリュームに追加します (5.5.2 項)。

ボリュームの作成時には,LSM にディスク・グループ内の使用可能なディスクを選択させることも,使用したいディスクをユーザが指定することもできます。

ファイル・システムをサポートするボリュームに対しては,省略時の fsgen 使用タイプを使用します。 データベースのように,raw データを含むボリュームには,gen 使用タイプを使用します。

4.3.3    ミラー連結プレックスの LSM ボリュームの作成

データ冗長性 (高可用性) を確保するために,複数の連結プレックスを持った LSM ボリュームを作成することができます。 さらに可用性を向上させるには,ボリュームを段階的に作成して,LSM がプレックス用に使用するディスクを制御できるようにし,各データ・プレックスと DRL プレックスに,異なるバス上のディスクを指定します。

ファイル・システムをサポートするボリュームに対しては,省略時の fsgen 使用タイプを使用します。 データベースのように,raw データを含むボリュームに対しては,gen 使用タイプを使用します。 使用タイプは,ボリュームを作成するときだけ指定します。 既存のボリュームに,ミラー・プレックスやログ・プレックスを追加する場合は指定しません。

ログの可用性を向上させるには,ボリューム作成時に nlog=count 属性を使用して,複数のログを追加します。 ボリューム作成時に nfpalog=count 属性を使用して,1 つ以上の FPA ログをボリュームに追加することもできます。 FPA ログは必須ではありません。 このログは,5.4.2.2 項で説明しているように,プライマリ・ボリュームの 1 つのプレックスからセカンダリ・プレックスを作成するときにのみ使用されます。 FPA ログを複数持てば,ディスクが故障しても FPA ロギングを続けることができます。

4.3.3.1    1 ステップでのミラー連結ボリュームの作成

4.3.3.2    異なるバス上にプレックスがあるミラー連結ボリュームの作成

各プレックスが異なるバス上にあるミラー連結ボリュームを作成するには,以下の手順を実行します。

  1. ディスクを指定して,単一連結プレックスのボリュームを作成します。

    # volassist [-g disk_group] [-U use_type] make \
    volume length disks
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

    # volassist -g dg1 -U gen make vol2 3g dsk2 dsk3 dsk4
    

  2. 異なるバス上のディスクを指定して,ボリュームに別の連結プレックス (ミラー) を追加します。

    # volassist [-g disk_group] mirror volume disks
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

    # volassist -g dg1 mirror vol2 dsk5 dsk6 dsk7
    

    ボリュームにミラーを手作業で追加する場合は,LSM は DRL プレックスは追加しません。

  3. データ・プレックスとして使用されていないディスクを指定して,ボリュームに DRL プレックスを追加します。

    # volassist -g dg1 addlog volume disk
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

    # volassist -g dg1 addlog vol2 dsk8
    

    ボリュームは使用可能になりました。

4.3.4    単一ストライプ・プレックスの LSM ボリュームの作成

ストライプ・プレックスの LSM ボリュームは,連結プレックスのボリュームより,高性能 (高速) です。 LSM に対して,データをストライプするディスクの数 (ストライプ・カラム数) を指定することができます。 または,省略時の値以外のストライプ幅を指定することもできます。 LSM は,ボリューム・サイズと指定したストライプ幅に基づいて,必要な数のディスクにデータをストライプします。

単一連結プレックスのボリュームには,データ冗長性はありません。 このため,ディスクが故障すると,データは失われます。 これを避けるには,最初からミラー連結プレックスでボリュームを作成する (4.3.5 項) か,または別のデータ・プレックスを後でボリュームに追加します (5.5.2 項)。

注意

一般的に,ハードウェア・コントローラを使用してデータをストライプ化している場合には,データのストライプ化のために LSM は使用しないでください。 場合によっては,この構成で性能が改善されることがありますが,以下の条件を満たしている場合だけです。

ボリューム内の各プレックスの LSM カラム数は,ハードウェア RAID コントローラの数と同じである必要があります。 ハードウェア RAID セットに最適なカラム数を選択する方法は,ハードウェア RAID のドキュメントを参照してください。

この項では,1 つ以上のストライプ・プレックスがあるボリュームの作成例をいくつか示します。 これらの例では,異なるストライプ幅を指定する構文を示します。 省略時のストライプ幅を使用する場合は,このオプションを省略してください。

省略時の設定では,volassist コマンドは,ディスク上のストライプ・プレックスのカラムを,コマンド行で指定された順序とは関係なく,英数字の順序で作成します。 性能を向上させるには,異なるバスのディスクを使用して,各プレックスのカラムを作成します。 ストライプ・プレックス内のカラムとして使用するディスクの順序を指定する方法は,4.4.2 項を参照してください。

ストライプ・プレックスのボリュームを作成する場合,プレックスごとのストライプ・カラム数を指定する必要があります。 それぞれのカラムは,異なるディスクに割り当てる必要があります。 したがって,この値はプレックスをストライプ化するディスクの数になります。

ファイル・システムをサポートするボリュームに対しては,省略時の fsgen 使用タイプを使用します。 データベースのように,raw データを含むボリュームに対しては,gen 使用タイプを使用します。 使用タイプは,ボリュームを作成するときにのみ指定します。 既存のボリュームに,ミラー・プレックスやログ・プレックスを追加する場合は指定しません。

以下の例では,さまざまなプロパティの LSM ストライプ・プレックスを作成する方法を示します。

4.3.5    ミラー・ストライプ・プレックスの LSM ボリュームの作成

データ冗長性 (高可用性) を確保しつつ性能を向上するために,複数のストライプ・プレックスを持った LSM ボリュームを作成することができます。

ボリュームの作成時には,LSM にディスク・グループ内の使用可能なディスクを検出させることも,LSM に使用させたいディスクをユーザが指定することもできます。 さらに性能と可用性を向上させるには,ボリュームを段階的に作成して,LSM がプレックス用に使用するディスクを制御できるようにし,各データ・プレックスと DRL プレックスに,異なるバス上のディスクを指定します。

ログの可用性を向上させるには,ボリューム作成時に nlog=count 属性を使用して,複数のログを追加します。 ボリューム作成時に nfpalog=count 属性を使用して,1 つ以上の FPA ログをボリュームに追加することもできます。 FPA ログは必須ではありません。 このログは,5.4.2.2 項で説明しているように,プライマリ・ボリュームの 1 つのプレックスからセカンダリ・プレックスを作成するときにのみ使用されます。 FPA ログを複数持てば,ディスクが故障しても FPA ロギングを続けることができます。

ストライプ・プレックスのボリュームを作成する場合,プレックスごとのストライプ・カラム数を指定する必要があります。 それぞれのカラムは,異なるディスク割り当てる必要があります。 したがって,この値はプレックスをストライプ化するディスクの数になります。

ファイル・システムをサポートするボリュームに対しては,省略時の fsgen 使用タイプを使用します。 データベースのように,raw データを含むボリュームに対しては,gen 使用タイプを使用します。 使用タイプは,ボリュームを作成するときにのみ指定します。 既存のボリュームに,ミラー・プレックスやログ・プレックスを追加する場合は指定しません。

4.3.5.1    1 ステップでのミラー・ストライプ・ボリュームの作成

4.3.5.2    異なるバス上にプレックスがあるミラー・ストライプ・ボリュームの作成

可用性を高めるために,それぞれのデータ・プレックスとログ・プレックスを異なるバス上に置くように,LSM ボリュームを構成することができます。 このような構成にできない場合でも,次の手順を使用して,それぞれのデータ・プレックスとログ・プレックスを作成するディスクを LSM に指示することができます。

以下の手順によって,LSM はそれぞれのプレックスを,指定したディスクに確実に作成するようになります。 ncolumn オプションによって,LSM はすべての指定したディスクを対象に,プレックスをストライプ化します。 ncolumn の値は,指定したディスクの数と同じである必要があります。

注意

それぞれのデータ・プレックスはボリュームの完全なコピーです。 指定したボリュームのサイズと同じだけ,それぞれがディスク・スペースを使用します。

  1. 1 つのバス上のディスクを指定して,単一ストライプ・プレックスのボリュームを作成するには,次のコマンドを使用します。

    # volassist [-g disk_group] [-U use_type] make volume length \
    layout=stripe ncolumn=number_of_columns \
    [stwid=data_unit_size] disks
    

    たとえば,ディスク・グループ dg1 のディスク dsk10dsk11,および dsk12 上に,省略時の使用タイプ fsgen で,省略時のストライプ幅の 3 カラムのストライプ・プレックス 1 つの vstripe という 1GB のボリュームを作成するには,次のコマンドを入力します。

    # volassist -g dg1 make vstripe 1g layout=stripe \
    ncolumn=3 dsk10 dsk11 dsk12
    

    ボリュームは,次の表示のようになります。

    Disk group: dg1
     
    V  NAME         USETYPE      KSTATE   STATE    LENGTH   READPOL   PREFPLEX
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    v  vstripe      fsgen        ENABLED  ACTIVE   2097152  SELECT    vstripe-01
    pl vstripe-01   vstripe      ENABLED  ACTIVE   2097408  STRIPE    3/128    RW
    sd dsk10-01     vstripe-01   dsk10    0        699136   0/0       dsk10    ENA
    sd dsk11-01     vstripe-01   dsk11    0        699136   1/0       dsk11    ENA
    sd dsk12-01     vstripe-01   dsk12    0        699136   2/0       dsk12    ENA
     
    

  2. 異なるバス上のディスクを指定して,ミラー・プレックスをボリュームに追加します。

    # volassist [-g disk_group] mirror volume disks
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

    # volassist -g dg1 mirror vol_stripe dsk19 dsk20 dsk21
    

  3. データ・プレックスとして使用されていないディスク (可能であれば異なるバス上のもの) を指定して,ボリュームに DRL プレックスを追加するために,次のコマンドを使用します。

    # volassist [-g disk_group] addlog volume disk
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

    # volassist -g dg1 addlog vol_stripe dsk26
    

    完成したボリュームは使用可能になり,次の表示のようになります。

    Disk group: dg1
     
    V  NAME         USETYPE      KSTATE   STATE    LENGTH   READPOL   PREFPLEX
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    v  vstripe      fsgen        ENABLED  ACTIVE   2097152  SELECT    -
    pl vstripe-01   vstripe      ENABLED  ACTIVE   2097408  STRIPE    3/128    RW
    sd dsk10-01     vstripe-01   dsk10    0        699136   0/0       dsk10    ENA
    sd dsk11-01     vstripe-01   dsk11    0        699136   1/0       dsk11    ENA
    sd dsk12-01     vstripe-01   dsk12    0        699136   2/0       dsk12    ENA
    pl vstripe-02   vstripe      ENABLED  ACTIVE   2097408  STRIPE    3/128    RW
    sd dsk19-01     vstripe-02   dsk19    0        699136   0/0       dsk19    ENA
    sd dsk20-01     vstripe-02   dsk20    0        699136   1/0       dsk20    ENA
    sd dsk21-01     vstripe-02   dsk21    0        699136   2/0       dsk21    ENA
    pl vstripe-03   vstripe      ENABLED  ACTIVE   LOGONLY  CONCAT    -        RW
    sd dsk26-01     vstripe-03   dsk26    0        65       LOG       dsk26    ENA
     
    

4.3.6    RAID 5 プレックスの LSM ボリュームの作成

RAID 5 データ・プレックスのボリュームでは,データ冗長性を確保するために分散パリティを使用します。 ボリュームの作成時には,プレックス内のカラム数 (最低 3,最大 8) とストライプ幅 (16K バイト) に省略時の値を使用することもできます。 また,LSM が,ディスク・グループ内の任意の使用可能なディスクを使用して,ボリュームを作成するようにすることもできます。 あるいは,カラム数,ストライプ幅,使用するディスクをユーザが指定することもできます。

省略時の設定では,使用するディスクを指定すると,volassist コマンドは,RAID5 プレックスのカラムを,コマンド行での順序ではなく,英数字の順序でディスク上に作成します。 そして自動的に,そのボリュームの RAID5 ログ・プレックスを別のディスクに作成します。 LSM は,ミラー・ボリュームの場合と異なり,RAID 5 ボリュームのログ・プレックスをデータ・プレックスが使っているディスクには作成しません。 したがって,データ・プレックスとログ・プレックスを作成するのに十分なディスクを指定する必要があります。

性能を向上させるには,異なるバス上のディスクに,カラムを作成することができます。 RAID5 プレックス内のカラム用に使用するディスクの順序を指定する方法の詳細は,4.4.3 項を参照してください。

RAID5 プレックスを使用するすべてのボリュームの使用タイプは,ボリュームの使用目的とは無関係に,raid5 です。 layout=raid5 を指定すると,LSM は使用タイプの raid5 を自動的に適用します。

4.3.7    スワップ領域用の LSM ボリュームの作成

システムまたはクラスタ・メンバがスワップ領域のエラーによってクラッシュするのを避けるために,スワップ領域用の LSM ミラー・ボリュームを作成することができます。 構成するスワップ領域のサイズについての推奨値は,『システム管理ガイド』または『クラスタ管理ガイド』を参照してください。

セカンダリ・スワップ・デバイスには複数のディスクを使用し,デバイスをそれぞれ独立のボリュームとして追加することをお勧めします。 ストライピングを行ったり,単一の大きなボリュームに連結することは避けてください。 これにより,スワップ・アルゴリズムが効率良く実行できます。

スワップ領域用の LSM ボリュームの使用方法は,環境によって異なります。

スタンドアロン・システムとクラスタ・メンバのいずれの場合でも,すべてのスワップ・ボリュームは,rootdg ディスク・グループに属する必要があります。 このボリュームを作成するだけの十分な空きスペースがない場合には,rootdg にディスクを追加してください (5.2.2 項を参照)。

4.3.7.1    スワップ・ボリュームの作成

ミラー化したスワップ・ボリュームでは,ダーティ・リージョン・ロギング (DRL) を使用しないでください。 スワップ・ボリュームを作成したら,ボリュームの復旧ポリシも変更して,LSM がシステム障害後にプレックスの再同期化を行わないようにする必要もあります。 クラスタ・メンバでは,可能な場合は,メンバにローカルなディスクを選択します。 ディスクは,rootdg ディスク・グループに属している必要があります。

スタンドアロン・システムのセカンダリ・スワップ領域用,またはクラスタ・メンバの追加スワップ領域用の LSM ボリュームを作成する場合は,以下の手順を実行します。

  1. ミラー化を行う場合は,DRL プレックスなしでボリュームを作成します。 ボリュームには,次のいずれかの使用タイプを割り当てます。

    # volassist -U use_type make volume length [nmirror=count] \
    [layout=nolog] [disks]
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

  2. ボリュームをミラー化したら,ボリュームの復旧ポリシを変更して,LSM がシステム・クラッシュ後にプレックスの再同期化を行わないようにする必要があります。 たとえば,次のコマンドを実行します。

    # volume set start_opts=norecov swapvol_2
    

  3. 次のように swapon コマンドを実行して,LSM ボリュームを,スワップ領域として使用できるようにします。

    # swapon /dev/vol/rootdg/swapvol_2
    

  4. sysconfigtab ファイルをエディタで開き,vm: セクション内の swapdevice カーネル属性値にボリュームのデバイス特殊ファイルを追加します。

    たとえば,次のようにします。

    vm:
      swapdevice = /dev/vol/rootdg/swapvol, /dev/vol/rootdg/swapvol_2
    

    クラスタでは,適切なメンバのファイルを変更してください。 このファイルは,/cluster/members/member{n}/boot_partition/etc/sysconfigtab の形式の,コンテキスト依存のシンボリック・リンク (CDSL) になっています。

4.3.7.2    スワップ・ボリュームのミラーリング

ここで説明する手順は,スタンドアロン・システムのセカンダリ・スワップ・ボリュームと,クラスタ・メンバのミラー化されていないスワップ・ボリュームに対して適用します。

注意

スタンドアロン・システムでプライマリ・スワップ・ボリュームをミラー化する場合は,volrootmir コマンドを使用します。 詳細は,3.4.2.1.3 項を参照してください。

クラスタでは,rootdg ディスク・グループに属していて,スワップ・ボリュームをミラー化したいメンバにローカルな,LSM ディスクを選択します。 いずれのクラスタ・メンバからもコマンドを実行することができます。

スタンドアロン・システムで,セカンダリ・スワップ・ボリュームをミラー化する場合,またはクラスタ・メンバ上で,ミラー化されていないスワップ・ボリュームをミラー化する場合は,次の手順に従います。

  1. ボリュームをミラー化します。 クラスタでは,該当するクラスタ・メンバにローカルなディスクを指定します。

    # volassist mirror volume [dskN]
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

  2. ボリュームの復旧ポリシを変更して,システム・クラッシュ後にプレックスの再同期化を行わないようにするには,次のコマンドを実行します。

    # volume set start_opts=norecov swapvol_2
    

追加スワップ領域の構成についての詳細は, swapon(8) と, sysconfig(8) を参照してください。

4.4    省略時の値と異なるプロパティでの LSM ボリュームの作成

この項では,高レベル・コマンドでは指定できない属性値あるいはプロパティを使用して LSM ボリュームを作成する方法を説明します。 ここで説明する手順は,LSM を完全に理解していて,このようなボリュームを作成する必要がある場合のみ,実行してください。

4.4.1    異なるサイズのサブディスクを使用したストライプ・プレックスの作成

異なるサイズの LSM ディスクがあり,ストレージを最大限に利用するために特定のディスク上のスペースを使用したい場合は,低レベル・コマンドを使用して,手作業でサブディスクとプレックスのカラムを作成し,プレックスを作成してから,ボリュームを作成して起動します。

各カラムの構成は異なっていても構いませんが,各カラムの合計セクタ数は同じにする必要があります。 たとえば,各カラムに異なるサイズのサブディスクを異なる数,配置することができます。

各サブディスクの大きさはストライプ幅の倍数にして (したがって,各カラムの大きさも倍数になる),書き込みがそれぞれのサブディスク境界に揃うようにする必要があります。

次の表は,それぞれが 256000 セクタ (125 MB) からなる 3 つのカラムが,異なる数とサイズのサブディスクから成り立っている様子を示しています。 3 つのカラムから 768000 セクタ (375 MB) のプレックスが 1 つできます。 これらのサブディスクの名前とサイズは,以降の手順で例として使用します。

ストライプ・プレックス: plex-01
カラム 0 カラム 1 カラム 2

サブディスク dsk3-01, 128000 セクタ

サブディスク dsk4-01, 128000 セクタ

サブディスク dsk6-01, 64000 セクタ

サブディスク dsk9-01, 64000 セクタ

サブディスク dsk11-01, 64000 セクタ

サブディスク dsk12-01, 64000 セクタ

サブディスク dsk13-01, 51200 セクタ

サブディスク dsk14-01, 51200 セクタ

サブディスク dsk15-01, 51200 セクタ

サブディスク dsk16-01, 51200 セクタ

サブディスク dsk17-01, 51200 セクタ

合計: 256000 セクタ (125 MB) 合計: 256000 セクタ (125 MB) 合計: 256000 セクタ (125 MB)

以下の手順は,異なるサイズのサブディスクを作成して,同じサイズのカラムでプレックスを作成し,このプレックスを使用してボリュームを作成する方法を示します。 このプレックスは,省略時のストライプ幅 64K バイトを使用し,上述の表で示されているサブディスク・サイズの 3 つのカラムを持ちます。

各サブディスクは異なるディスクにあり,公用リージョンのオフセット 0 から始まります。 このため,サブディスクの長さだけを指定する必要があります。 すでに他のサブディスクを持っているディスクにサブディスクを作成するには,新しいサブディスクのオフセット (開始位置) と,長さを指定する必要があります。

異なるサイズのサブディスクを使用してボリュームを作成するには,以下の手順を実行します。

  1. プレックス (ミラー化する場合は,各プレックス) のボリューム・サイズとカラム数を決定します。 以下の例では,ボリュームは 375 MB で,各カラムは 375 の 3 分の 1 の 125 MB です。

  2. カラム・サイズ (125 MB,すなわち 256000 セクタ) を,予定しているカラムごとのサブディスク数 (以下の例では,2,4,および 5) で割り,各サブディスクのサイズを決定します。 最初のカラム (2 つのサブディスク) では,各サブディスクは,256000/2,すなわち 128000 セクタです。 他も同様です。

    逆に,各ディスクで使用可能な領域のサイズから,ストライプ幅の倍数の領域に作成できるサブディスクのサイズを決定し,各カラムに必要なサブディスクの数を計算することもできます。 使用可能な領域のサイズがカラム数に影響を与えます。

  3. サブディスクを作成するには,次のコマンドを使用します。

    volmake sd subdisk_name disk len=length
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

    # volmake sd dsk3-01 dsk3 len=128000
    # volmake sd dsk4-01 dsk4 len=128000
     
    # volmake sd dsk6-01 dsk6 len=64000
    # volmake sd dsk9-01 dsk9 len=64000
    # volmake sd dsk11-01 dsk11 len=64000
    # volmake sd dsk12-01 dsk12 len=64000
     
    # volmake sd dsk13-01 dsk13 len=51200
    # volmake sd dsk14-01 dsk14 len=51200
    # volmake sd dsk15-01 dsk15 len=51200
    # volmake sd dsk16-01 dsk16 len=51200
    # volmake sd dsk17-01 dsk17 len=51200
     
     
    

  4. 必要な数のカラムを持つプレックスを作成し,各カラムに適切なサブディスクを関連付けます。

    多くのサブディスクがある場合,最初に「空き」プレックスを作成し,その後サブディスク・グループを,各カラムについて 1 ステップの,別々のステップで対応させていきます。

    空きプレックスのサイズを指定する必要はありません。 サブディスク・カラムを対応させるときに,プレックス・サイズは,最長のカラムの最後を示すように,アップデートされます。 手作業でプレックスを作成する場合,ストライプ幅を設定する必要があります。

    たとえば,次のコマンドを実行します。

    # volmake plex plex-01 layout=stripe ncolumn=3 stwidth=64k
     
    # volsd assoc plex-01 dsk3-01:0 dsk4-01:0
    # volsd assoc plex-01 dsk6-01:1 dsk9-01:1 dsk11-01:1 dsk12-01:1
    # volsd assoc plex-01 dsk13-01:2 dsk14-01:2 dsk15-01:2 \
    dsk16-01:2 dsk17-01:2
    

    プレックスは,次の表示のようになります。

    # volprint -pht plex-01
    

    Disk group: rootdg
     
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    pl plex-01      -            DISABLED -        768000   STRIPE    3/128    RW
    sd dsk3-01      plex-01      dsk3     0        128000   0/0       dsk3     ENA
    sd dsk4-01      plex-01      dsk4     0        128000   0/128000  dsk4     ENA
    sd dsk6-01      plex-01      dsk6     0        64000    1/0       dsk6     ENA
    sd dsk9-01      plex-01      dsk9     0        64000    1/64000   dsk9     ENA
    sd dsk11-01     plex-01      dsk11    0        64000    1/128000  dsk11    ENA
    sd dsk12-01     plex-01      dsk12    0        64000    1/192000  dsk12    ENA
    sd dsk13-01     plex-01      dsk13    0        51200    2/0       dsk13    ENA
    sd dsk14-01     plex-01      dsk14    0        51200    2/51200   dsk14    ENA
    sd dsk15-01     plex-01      dsk15    0        51200    2/102400  dsk15    ENA
    sd dsk16-01     plex-01      dsk16    0        51200    2/153600  dsk16    ENA
    sd dsk17-01     plex-01      dsk17    0        51200    2/204800  dsk17    ENA
     
    

  5. このプレックスを使用して,次のようにボリュームを作成します。

    # volmake -U use_type vol volume_name plex=plex_name
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

    # volmake -U fsgen vol vol-01 plex=plex-01
    

  6. ボリュームを起動します。

    # volume start vol-01
    

    ボリュームは起動されて使用可能になり,次のように表示されます。

    # volprint -vht vol-01
    

    Disk group: rootdg
     
    V  NAME         USETYPE      KSTATE   STATE    LENGTH   READPOL   PREFPLEX
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    v  vol-01       fsgen        ENABLED  ACTIVE   768000   ROUND     -
    pl plex-01      vol-01       ENABLED  ACTIVE   768000   STRIPE    3/128    RW
    sd dsk3-01      plex-01      dsk3     0        128000   0/0       dsk3     ENA
    sd dsk4-01      plex-01      dsk4     0        128000   0/128000  dsk4     ENA
    sd dsk6-01      plex-01      dsk6     0        64000    1/0       dsk6     ENA
    sd dsk9-01      plex-01      dsk9     0        64000    1/64000   dsk9     ENA
    sd dsk11-01     plex-01      dsk11    0        64000    1/128000  dsk11    ENA
    sd dsk12-01     plex-01      dsk12    0        64000    1/192000  dsk12    ENA
    sd dsk13-01     plex-01      dsk13    0        51200    2/0       dsk13    ENA
    sd dsk14-01     plex-01      dsk14    0        51200    2/51200   dsk14    ENA
    sd dsk15-01     plex-01      dsk15    0        51200    2/102400  dsk15    ENA
    sd dsk16-01     plex-01      dsk16    0        51200    2/153600  dsk16    ENA
    sd dsk17-01     plex-01      dsk17    0        51200    2/204800  dsk17    ENA
     
    

4.4.2    異なるバス上のディスクを使用したストライプ・プレックスの作成

ストライプ・プレックスを使用したボリュームの性能は,異なるバス上のディスクにそれぞれのプレックスをストライプ化することで,向上させることができます。 バスの数が十分ある場合,最初のプレックスをサポートするバスから順に異なるバスへとボリュームをミラー化します。 たとえば,12 本のバスがある場合,1 つのプレックスを最初の 6 つのバスにストライプ化し,もう 1 つのプレックスを,残りの 6 つのバスにストライプ化することができます。

注意

ミラー・ボリュームでは,すべてのデータ・プレックスを同じバス上に作成しないでください。 このようにすると,ボリュームの可用性が低下します。 そのバスで障害が発生すると,ボリューム全体が使用できなくなります。

作業を開始する前に,使用する LSM ディスクを決定し,ディスクがどのバスに接続されているかを確認し,LSM でバス上にデータをストライプおよびミラー化する方法に従って,ボリュームを作成する方法を計画します。

複数のバス上にストライプ化してミラー化したプレックスのあるボリュームを作成するには,低レベル・コマンドを使用して,各サブディスクを作成し,これらのサブディスクからプレックスを作成し,これらのプレックスからボリュームを作成し,ログ・プレックスを追加してボリュームを起動しなければなりません。

以下の手順では,2 つのプレックスと 1 つの DRL プレックスがあるボリュームを,rootdg ディスク・グループ内の下記の表に示すディスクとバスを使用して作成します。

プレックス plex-01 プレックス plex-02
バス 1 バス 2 バス 3 バス 4
dsk0 dsk7 dsk14 dsk21
dsk1 dsk8 dsk15 dsk22
dsk2 dsk9 dsk16 dsk23
dsk3 dsk10 dsk17 dsk24
dsk4 (DRL プレックス用)

最初のプレックスはバス 1 と 2 に交互にストライプされます。 2 番目のプレックスは,バス 3 と 4 に交互にストライプされます。 ログ・プレックスは,最初のプレックスと同じバス 1 上に置かれますが,ディスクは異なります。 ログ・プレックスは,データ・プレックスと異なるバス上に置くことを推奨していますが,これが,いつでも可能なわけではありません。

各プレックスが異なるバス上にある LSM ミラー・ストライプ・ボリュームを作成するには,以下の手順に従います。

  1. バス 1 とバス 2 上のディスクにサブディスクを作成します。 たとえば,次のように入力します。

    # volmake sd dsk0-01 dsk0 len=16m
    # volmake sd dsk1-01 dsk1 len=16m
    # volmake sd dsk2-01 dsk2 len=16m
    # volmake sd dsk3-01 dsk3 len=16m
     
    # volmake sd dsk7-01 dsk7 len=16m
    # volmake sd dsk8-01 dsk8 len=16m
    # volmake sd dsk9-01 dsk9 len=16m
    # volmake sd dsk10-01 dsk10 len=16m
    

  2. バスが交互に使用されるようにサブディスクを指定して,ストライプ・プレックスを作成します。 たとえば,次のように入力します。

    # volmake plex plex-01 layout=stripe stwidth=64k \
    sd=dsk0-01,dsk7-01,dsk1-01,dsk8-01,dsk2-01,dsk9-01, \
    dsk3-01,dsk10-01
    

    これによって,バス 1 と 2 に交互にストライプ化された 8 カラムのストライプ・プレックスが作成されます。

    プレックスは,次の表示のようになります。

    # volprint -p plex-01
    

    Disk group: rootdg
     
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    pl plex-01      -            DISABLED -        262144   STRIPE    8/128    RW
    sd dsk0-01      plex-01      dsk0     0        32768    0/0       dsk0     ENA
    sd dsk7-01      plex-01      dsk7     0        32768    1/0       dsk7     ENA
    sd dsk1-01      plex-01      dsk1     0        32768    2/0       dsk1     ENA
    sd dsk8-01      plex-01      dsk8     0        32768    3/0       dsk8     ENA
    sd dsk2-01      plex-01      dsk2     0        32768    4/0       dsk2     ENA
    sd dsk9-01      plex-01      dsk9     0        32768    5/0       dsk9     ENA
    sd dsk3-01      plex-01      dsk3     0        32768    6/0       dsk3     ENA
    sd dsk10-01     plex-01      dsk10    0        32768    7/0       dsk10    ENA
     
    

  3. 2 番目のデータ・プレックス用のサブディスクをバス 3 と 4 上のディスクに作成します。 たとえば,次のように入力します。

    # volmake sd dsk14-01 dsk14 len=16m
    # volmake sd dsk15-01 dsk15 len=16m
    # volmake sd dsk16-01 dsk16 len=16m
    # volmake sd dsk17-01 dsk17 len=16m
     
    # volmake sd dsk21-01 dsk21 len=16m
    # volmake sd dsk22-01 dsk22 len=16m
    # volmake sd dsk23-01 dsk23 len=16m
    # volmake sd dsk24-01 dsk24 len=16m
    

  4. バスが交互に使用されるようにサブディスクを指定して,2 番目のデータ・プレックスを作成します。 たとえば,次のように入力します。

    # volmake plex plex-02 layout=stripe stwidth=64k \
    sd=dsk14-01,dsk21-01,dsk15-01,dsk22-01,dsk16-01,dsk23-01, \
    dsk17-01,dsk24-01
    

    これによって,バス 3 と 4 に交互にストライプ化された 8 カラムのストライプ・プレックスが作成されます。

    プレックスは,次の表示のようになります。

    # volprint -pht plex-02
    

    Disk group: rootdg
     
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    pl plex-02      -            DISABLED -        262144   STRIPE    8/128    RW
    sd dsk14-01     plex-02      dsk14    0        32768    0/0       dsk14    ENA
    sd dsk21-01     plex-02      dsk21    0        32768    1/0       dsk21    ENA
    sd dsk15-01     plex-02      dsk15    0        32768    2/0       dsk15    ENA
    sd dsk22-01     plex-02      dsk22    0        32768    3/0       dsk22    ENA
    sd dsk16-01     plex-02      dsk16    0        32768    4/0       dsk16    ENA
    sd dsk23-01     plex-02      dsk23    0        32768    5/0       dsk23    ENA
    sd dsk17-01     plex-02      dsk17    0        32768    6/0       dsk17    ENA
    sd dsk24-01     plex-02      dsk24    0        32768    7/0       dsk24    ENA
     
    

  5. 両方のデータ・プレックスを使用して LSM ボリュームを作成します。 たとえば,次のように入力します。

    # volmake vol vol_mirr plex=plex-01,plex-02
    

    ボリュームは,次の表示のようになります。

     # volprint -vht vol_mirr
    

    Disk group: rootdg
     
    V  NAME         USETYPE      KSTATE   STATE    LENGTH   READPOL   PREFPLEX
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    v  vol_mirr     fsgen        DISABLED EMPTY    262144   ROUND     -
    pl plex-01      vol_mirr     DISABLED EMPTY    262144   STRIPE    8/128    RW
    sd dsk0-01      plex-01      dsk0     0        32768    0/0       dsk0     ENA
    sd dsk7-01      plex-01      dsk7     0        32768    1/0       dsk7     ENA
    sd dsk1-01      plex-01      dsk1     0        32768    2/0       dsk1     ENA
    sd dsk8-01      plex-01      dsk8     0        32768    3/0       dsk8     ENA
    sd dsk2-01      plex-01      dsk2     0        32768    4/0       dsk2     ENA
    sd dsk9-01      plex-01      dsk9     0        32768    5/0       dsk9     ENA
    sd dsk3-01      plex-01      dsk3     0        32768    6/0       dsk3     ENA
    sd dsk10-01     plex-01      dsk10    0        32768    7/0       dsk10    ENA
    pl plex-02      vol_mirr     DISABLED EMPTY    262144   STRIPE    8/128    RW
    sd dsk14-01     plex-02      dsk14    0        32768    0/0       dsk14    ENA
    sd dsk21-01     plex-02      dsk21    0        32768    1/0       dsk21    ENA
    sd dsk15-01     plex-02      dsk15    0        32768    2/0       dsk15    ENA
    sd dsk22-01     plex-02      dsk22    0        32768    3/0       dsk22    ENA
    sd dsk16-01     plex-02      dsk16    0        32768    4/0       dsk16    ENA
    sd dsk23-01     plex-02      dsk23    0        32768    5/0       dsk23    ENA
    sd dsk17-01     plex-02      dsk17    0        32768    6/0       dsk17    ENA
    sd dsk24-01     plex-02      dsk24    0        32768    7/0       dsk24    ENA
     
    

  6. DRL プレックスをボリュームに追加します。 できれば,データ・プレックスで使用していないディスクを指定します。 たとえば,次のように入力します。

    # volassist addlog vol_mirr dsk4
    

    ボリュームは,次の表示のようになります。

    Disk group: rootdg
     
    V  NAME         USETYPE      KSTATE   STATE    LENGTH   READPOL   PREFPLEX
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    v  vol_mirr     fsgen        DISABLED EMPTY    262144   ROUND     -
    pl plex-01      vol_mirr     DISABLED EMPTY    262144   STRIPE    8/128    RW
    sd dsk0-01      plex-01      dsk0     0        32768    0/0       dsk0     ENA
    sd dsk7-01      plex-01      dsk7     0        32768    1/0       dsk7     ENA
    sd dsk1-01      plex-01      dsk1     0        32768    2/0       dsk1     ENA
    sd dsk8-01      plex-01      dsk8     0        32768    3/0       dsk8     ENA
    sd dsk2-01      plex-01      dsk2     0        32768    4/0       dsk2     ENA
    sd dsk9-01      plex-01      dsk9     0        32768    5/0       dsk9     ENA
    sd dsk3-01      plex-01      dsk3     0        32768    6/0       dsk3     ENA
    sd dsk10-01     plex-01      dsk10    0        32768    7/0       dsk10    ENA
    pl plex-02      vol_mirr     DISABLED EMPTY    262144   STRIPE    8/128    RW
    sd dsk14-01     plex-02      dsk14    0        32768    0/0       dsk14    ENA
    sd dsk21-01     plex-02      dsk21    0        32768    1/0       dsk21    ENA
    sd dsk15-01     plex-02      dsk15    0        32768    2/0       dsk15    ENA
    sd dsk22-01     plex-02      dsk22    0        32768    3/0       dsk22    ENA
    sd dsk16-01     plex-02      dsk16    0        32768    4/0       dsk16    ENA
    sd dsk23-01     plex-02      dsk23    0        32768    5/0       dsk23    ENA
    sd dsk17-01     plex-02      dsk17    0        32768    6/0       dsk17    ENA
    sd dsk24-01     plex-02      dsk24    0        32768    7/0       dsk24    ENA
    pl vol_mirr-01  vol_mirr     DISABLED EMPTY    LOGONLY  CONCAT    -        RW
    sd dsk4-01      vol_mirr-01  dsk4     0        65       LOG       dsk4     ENA
     
    

  7. LSM ボリュームを,次のように起動します。

    # volume start vol_mirr
    

    ボリュームは使用可能になりました。

4.4.3    異なるバス上のディスクを使用した RAID 5 プレックスの作成

RAID5 プレックスを使用したボリュームの性能は,異なるバス上のディスクにプレックスをストライプすることで,向上させることができます。

作業を開始する前に,使用する LSM ディスクを決定し,ディスクがどのバスに接続されているかを確認し,LSM でバス上に RAID 5 データ・プレックスをストライプ化する方法に従って,ボリュームを作成する方法を計画します。

サブディスクの各カラムは同じサイズで,データ・ユニット・サイズの倍数である必要があります。 たとえば,RAID5 プレックスの 16K バイトのデータ・ユニット・サイズ (ストライプ幅) は 32 ブロック (セクタ) に対応するため,各カラムのサブディスクのサイズの合計は,32 の倍数でなければなりません。

各カラムが 1 つのサブディスクからなっている場合 (通常の構成) は,サブディスクのサイズは 32 の倍数でなければなりません。 カラムが 2 つのサブディスクからなっている場合は,合計が 32 の倍数である限り,各サブディスクは異なるサイズで構いません。

RAID5 ログ・プレックスに,異なるバス上 (理想的) の異なるディスクを指定することができます。 または,LSM に使用するディスクの選択を任せることもできます。

注意

ログ・プレックスと,データ・プレックスの 1 つのカラムが同じバス上にあり,そのバスで障害が発生すると,ボリューム全体が失われることになります。 できれば,ログ・プレックスを,データ・プレックスで使用するディスクが接続されていないバス上に置いてください。

以下の手順では,rootdg ディスク・グループ内の下記の表に示すディスクとバスを使用して RAID 5 ボリュームを作成します。

バス 1 バス 2 バス 3 バス 4 バス 5
dsk1 dsk4 dsk8 dsk11 dsk22 (RAID 5 ログ・プレックス用)
dsk2 dsk5 dsk9 dsk12

完成したボリュームは,データとパリティがバス 1〜4 に順番にストライプ化されています。 ログ・プレックスは,バス 5 に置かれます。

ディスクが異なるバスにある RAID 5 プレックスを作成します。

  1. サブディスクを次のように作成します。

    # volmake sd dsk1-01 dsk1 len=1m
    # volmake sd dsk2-01 dsk2 len=1m
    # volmake sd dsk4-01 dsk4 len=1m
    # volmake sd dsk5-01 dsk5 len=1m
    # volmake sd dsk8-01 dsk8 len=1m
    # volmake sd dsk9-01 dsk9 len=1m
    # volmake sd dsk11-01 dsk11 len=1m
    # volmake sd dsk12-01 dsk12 len=1m
    

  2. バスが順番に切り替わるように,サブディスクを適切な順に指定して,RAID 5 データ・プレックスを作成します。 たとえば,次のように入力します。

    # volmake plex plex_r5 layout=raid5 stwidth=16k \
    sd=dsk1-01,dsk4-01,dsk8-01,dsk11-01,dsk2-01,dsk5-01, \
    dsk9-01,dsk12-01
    

    これによって,カラムがバス 1 から 4 の順に繰り返してストライプ化される 8 カラムの RAID5 データ・プレックス plex_r5 が作成されます。

    このプレックスは,次の表示のようになります。

    Disk group: rootdg
     
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    pl plex_r5      -            DISABLED -        14336    RAID      8/32     RW
    sd dsk1-01      plex_r5      dsk1     0        2048     0/0       dsk1     ENA
    sd dsk4-01      plex_r5      dsk4     0        2048     1/0       dsk4     ENA
    sd dsk8-01      plex_r5      dsk8     0        2048     2/0       dsk8     ENA
    sd dsk11-01     plex_r5      dsk11    0        2048     3/0       dsk11    ENA
    sd dsk2-01      plex_r5      dsk2     0        2048     4/0       dsk2     ENA
    sd dsk5-01      plex_r5      dsk5     0        2048     5/0       dsk5     ENA
    sd dsk9-01      plex_r5      dsk9     0        2048     6/0       dsk9     ENA
    sd dsk12-01     plex_r5      dsk12    0        2048     7/0       dsk12    ENA
     
    

  3. これらのデータ・プレックスを使用して LSM ボリュームを作成します。 たとえば,次のように入力します。

    # volmake -U raid5 vol vol5 plex=plex_r5
    

    これにより,プレックス plex_r5 から,使用タイプ raid5 (RAID5 プレックスのボリュームでは必須) の LSM ボリューム volr5 が作成されます。

  4. RAID 5 ログ・プレックスをボリュームに追加します。 この際に,ディスクを指定することもできます (特に指定しなければ,LSM はボリュームで使用していないディスクがあれば,それを選択します)。 たとえば,次のように入力します。

    # volassist addlog volr5 dsk22
    

  5. LSM ボリュームを,次のように起動します。

    # volume start volr5
    

    ボリュームは使用可能になり,次のように表示されます。

    Disk group: rootdg
     
    V  NAME         USETYPE      KSTATE   STATE    LENGTH   READPOL   PREFPLEX
    PL NAME         VOLUME       KSTATE   STATE    LENGTH   LAYOUT    NCOL/WID MODE
    SD NAME         PLEX         DISK     DISKOFFS LENGTH   [COL/]OFF DEVICE   MODE
     
    v  volr5        raid5        ENABLED  ACTIVE   14336    RAID      -
    pl plex_r5      volr5        ENABLED  ACTIVE   14336    RAID      8/32     RW
    sd dsk1-01      plex_r5      dsk1     0        2048     0/0       dsk1     ENA
    sd dsk4-01      plex_r5      dsk4     0        2048     1/0       dsk4     ENA
    sd dsk8-01      plex_r5      dsk8     0        2048     2/0       dsk8     ENA
    sd dsk11-01     plex_r5      dsk11    0        2048     3/0       dsk11    ENA
    sd dsk2-01      plex_r5      dsk2     0        2048     4/0       dsk2     ENA
    sd dsk5-01      plex_r5      dsk5     0        2048     5/0       dsk5     ENA
    sd dsk9-01      plex_r5      dsk9     0        2048     6/0       dsk9     ENA
    sd dsk12-01     plex_r5      dsk12    0        2048     7/0       dsk12    ENA
    pl volr5-01     volr5        ENABLED  LOG      2560     CONCAT    -        RW
    sd dsk22-01     volr5-01     dsk22    0        2560     0         dsk22    ENA
     
    

4.5    LSM ボリュームを使用するファイル・システムの構成

LSM ボリュームを作成した後は,LSM ボリュームをディスク・パーティションと同様に使用できます。 LSM ではディスク・デバイス・ドライバと同じインタフェースが使用されるため,ディスクやディスク・パーティションに対して指定できる任意の操作が LSM ボリュームに対して指定できます。

以下の項では,LSM ボリュームを使用するように AdvFS と UFS を構成する方法を説明します。

4.5.1    LSM ボリュームを使用する AdvFS ドメインの構成

AdvFS は LSM ボリュームを,他のストレージ・デバイスと同様に扱います。 AdvFS ドメインを作成する方法の詳細は,『AdvFS 管理ガイド』を参照してください。

注意

AdvFS ドメインがより多くのストレージを必要とする場合,新しい LSM ボリュームを作成し,AdvFS の addvol コマンドを使用してドメインに追加するか,すでにドメインの一部になっている LSM ボリュームを拡張します (5.4.9 項)。

AdvFS ドメインでは,LSM ボリュームと物理ストレージを混在させて使用することができます。 詳細は,『AdvFS 管理ガイド』を参照してください。

4.5.2    LSM ボリュームを使用する UFS ファイル・システムの構成

LSM ボリュームを使用するように UFS ファイル・システムを構成するには,以下の手順を実行します。

  1. LSM ディスク・グループとボリューム名を使用して,ファイル・システムを作成します。

    # newfs [options] /dev/rvol/disk_group/volume
    

    次の例では,dg1 ディスク・グループ内の LSM ボリューム vol_ufs に,UFS ファイル・システムを作成します。

    # newfs /dev/rvol/dg1/vol_ufs
    

    rootdg ディスク・グループの場合は,LSM ボリューム用にディスク・グループ名を指定する必要はありません。

    詳細は, newfs(8) を参照してください。

  2. LSM ブロック特殊デバイス名を使用して,ファイル・システムをマウントします。

    # mount /dev/vol/disk_group/volume /mount_point
    

    たとえば,次のコマンドを実行します。

    # mount /dev/vol/dg1/vol_ufs /mnt2
    

4.6    既存データ用の LSM ボリュームの作成

既存のデータを含むディスクまたはディスク・パーティションをカプセル化して,LSM を既存のデータの管理のために使用することができます。 LSM はディスクまたはパーティションを LSM nopriv ディスクに変換し,カプセル化されたディスクまたはディスク・パーティションから LSM ボリュームを作成します。

カプセル化できる対象は,以下のとおりです。

4.6.1    ディスクまたはディスク・パーティションのカプセル化

既存のデータをカプセル化するには,2 段階の手順が必要です。 最初に,volencap コマンドを使用してカプセル化スクリプトを作成します。 次に,volreconfig コマンドを使用して,このスクリプトを実行します。

カプセル化手順によって,指定したディスクまたはディスク・パーティションが,ディスク・ラベルと /etc/fstab ファイルの情報を使用して,LSM nopriv ディスクとして構成されます。 そして,各 nopriv ディスクに対して,別々の LSM ボリュームが作成されます。 省略時の設定では,nopriv ディスクとボリュームは,別のディスク・グループを指定しない限り,rootdg ディスク・グループに属します。

dsk3 のように指定して (パーティションを示す英字を指定しないで) ディスク全体をカプセル化すると,LSM は,使用中のすべてのパーティションそれぞれについて,nopriv ディスクとボリュームを作成します。

カプセル化によって,既存のデータは LSM の制御下に置かれます。 これによって LSM を使ってボリュームのデータをミラー化することができ,冗長性と高可用性を実現することができます。 ただし,障害が発生した LSM nopriv ディスクの復旧作業は複雑です。 また,これ以外に nopriv ディスクによって事態が複雑になることもあります。 ドメインをカプセル化したら,できれば直ぐにボリュームをディスク・グループ内の LSM スライス・ディスクまたはシンプル ・ディスクに移動してから, そのボリュームに対するミラー化などの操作を行ってください。

カプセル化が終了すると,/etc/fstab ファイルまたは /etc/sysconfigtab ファイル内のエントリは,ディスクまたはディスク・パーティションのブロック型デバイス名の代わりに LSM ボリューム名を使用するように変更されます。

ディスクまたはディスク・パーティションをカプセル化するには,以下の手順を実行します。

  1. カプセル化するディスクまたはディスク・パーティションのデータをバックアップします。

  2. ディスクまたはパーティションをアンマウントします。 または,データをオフラインにします。 ディスクやパーティションをアンマウントできず,データをオフラインにできない場合,カプセル化手順を完了するために,システムを再起動する必要があります。

  3. LSM のカプセル化スクリプトを作成します。

    # volencap [-g disk_group] {disk|partition}
    

    次の例では,ディスク dsk3 用のカプセル化スクリプトを作成します。

    # volencap dsk3
    

    注意

    複数のディスクまたはディスク・パーティションを同時にカプセル化することは可能ですが,各ディスクまたはディスク・パーティションを個別にカプセル化する方法をお勧めします。

  4. カプセル化手順を完了させます。

    # volreconfig
    

    カプセル化したディスクまたはディスク・パーティションが使用中の場合は,volreconfig コマンドが,システムをすぐに再起動するか後で再起動するかを確認してきます。

  5. ボリュームに対してミラーリングやその他の操作を行う前に,ボリュームを同じディスク・グループ内のスライス・ディスクまたはシンプル・ディスクに移動してください。 この手順は省略可能ですが,実行することをお勧めします。 詳細は,5.1.5 項を参照してください。

4.6.2    AdvFS ドメイン用の LSM ボリュームの作成

ドメインをカプセル化するか,ドメインを LSM ボリュームに移行すると,既存の AdvFS ドメイン用のストレージを LSM 制御下に置くことができます。

マウントされたファイルセットはドメインを抽象化したものなので,カプセル化処理中や移行中にマウント・ポイントを変更する必要はありません。 ドメインはカプセル化処理や移行処理が終われば,普通にアクティブにできます。 ドメインをアクティブにした後,ファイルセットには変化がないため,カプセル化処理や移行処理の結果は,AdvFS ドメインのユーザからは見えません。

4.6.2.1    AdvFS ドメインのカプセル化

カプセル化により,既存データを LSM 制御下に置くことができます。 この方法により,ボリューム内データをミラー化し,冗長性や高可用性を備えるために LSM を使用できるようになります。 ただし,カプセル化によって nopriv ディスクが作成され,故障した nopriv ディスクからの復旧は複雑で,その他にも nopriv ディスクが事態を複雑にする場合があります。 ドメインをカプセル化した後は,ボリュームに対してミラーリングやその他の操作を行う前に,ボリュームをディスク・グループ内の LSM スライス・ディスクまたはシンプル・ディスクに移動してください。

AdvFS ドメインをカプセル化するには,以下の手順を実行します。

  1. vdump ユーティリティを使用して,AdvFS ドメイン内のデータをバックアップします。

  2. すべてのファイルセットをアンマウントします。

    ドメインが使用中の場合 (ファイルセットをアンマウントできません) には,カプセル化スクリプトを作成 (ステップ 3) し,カプセル化を行うのに都合の良いときに,volreconfig を実行 (ステップ 4) します。

  3. LSM カプセル化スクリプトを作成します。

    # volencap domain
    

    次の例は,AdvFS ドメイン dom1 のカプセル化スクリプトを作成します。

    # volencap dom1
    

  4. カプセル化手順を完了します。

    # volreconfig
    

    AdvFS ドメインがマウントされている場合,volreconfig コマンドから,システムの再起動を求めるプロンプトが表示されます。

    LSM ボリュームの作成が成功すると,/etc/fdmns ディレクトリがアップデートされます。

  5. ボリュームに対してミラーリングやその他の操作を行う前に,ボリュームを同じディスク・グループ内のスライス・ディスクまたはシンプル・ディスクに移動してください。 この手順は省略可能ですが,実行することをお勧めします。 詳細は,5.1.5 項を参照してください。

4.6.2.2    AdvFS ドメインの移行

volmigrate コマンドによって,任意の AdvFS ドメイン (スタンドアロン・システムの root_domain 以外) を LSM ボリュームに移行できます。 この操作では,ドメインが使用していたディスク以外のディスクを使用するため,再起動は不要です。

volmigrate コマンドを使用して,指定したプロパティのボリュームを作成します。 指定するプロパティは,以下のとおりです。

同じディスク・グループ内に十分な数の LSM ディスクが必要です。 また,ディスクはドメインを入れることができるだけの十分な大きさが必要です。 ディスク要件とストライピングとミラーリングのためのオプションの詳細については, volmigrate(8) を参照してください。

ドメインを LSM ボリュームに移行するには,次のコマンドを入力します。

# volmigrate [-g disk_group] [-m num_mirrors] [-s num_stripes] \
domain disk_media_name...

volmigrate コマンドは,指定した特性のボリュームを作成し,データをドメインからボリュームに移動して,オリジナル・ディスクをドメインから削除し,これらのディスクを未使用の状態にします。 ボリュームは再起動されて,使用可能になるため,システムの再起動は不要です。