2    ファイル・システムのセットアップ

ファイル・システムの構成を決定すると,これを構築する作業を行なうことができます。 この章では,次のトピックについて説明します。

2.1    概要

AdvFS ファイル・システムを稼働させるのに必要な最小限の構成は,1 つのドメインと 1 つのマウント済みファイルセットです。

アクティブ・ドメインを作成する手順は,以下のとおりです。

  1. ドメインを作成し,ボリュームを割り当てる (2.3.3 項)。

  2. ファイルセットを作成する (2.4.3 項)。

  3. マウント・ポイント・ディレクトリを作成する (2.4.5 項)。

  4. ファイルセットをマウントする (2.4.5 項)。

ドメインごとに 1 つまたは複数のファイルセットを作成できます。 ガイドラインについては,1.4.1 項 を参照してください。

AdvFS は,/etc/fstab ファイルに完全に対応しており,システム・リブート時にファイルセットを自動的にマウントすることができます (2.4.1 項 を参照)。 この操作は,グラフィカル・インタフェース (付録 E) または SysMan Menu(付録 A) を使用して行なうこともできます。

AdvFS コマンドの一覧は,付録 B を参照してください。 AdvFS の構成についての詳細は,『システムの構成とチューニング』を参照してください。

2.2    ボリューム

AdvFS ファイル・システムでは,raw ディスク・パーティション,ディスク全体,LSM (Logical Storage Manager) の集合ボリューム,あるいはハードウェア/ソフトウェア RAID (Redundant Array of Independent Disk) ストレージなどをボリュームとして設定することができます。

オプションの AdvFS Utilities を使用すれば,ボリュームを追加してマルチボリューム・ドメインを作成することができます。 マルチボリューム・ドメインは,ファイルセットで使用可能なストレージ容量を増加させるとともに,予防的なディスク管理を可能にします。 ボリュームの追加は,ドメイン作成直後でも,ファイルセットの作成およびマウント前でも可能です。 予防的なディスク管理を行うためには,新しいボリュームをドメインに追加し,既存のファイルを新しいボリュームへ移行し,それらのファイルを古いボリュームから削除します。

ボリュームをドメインに関連付ける方法については,2.3 節 を参照してください。

2.2.1    ボリューム属性

AdvFS ボリュームは,データの読み込み,キャッシュ,書き込み,および連結方法を決定する属性とともに構成できます。 ドメインの初期作成やボリュームの追加によって AdvFS ボリュームがドメインに組み込まれる際に,省略時のボリューム属性が設定されます。 これらの省略時の属性を変更すると,システム構成によっては性能が向上する場合があります。

現在のボリューム属性を表示または変更するには,SysMan Menu の「AdvFS ドメインの管理」ユーティリティを使用するか (付録 A 参照),コマンド行で次のように chvol コマンドを実行します。

chvol device_name domain_name

chvol コマンドは,LSM のボリューム名の省略記法をサポー#トしています。 以下の 2 つは同じ意味になります。

# chvol dom1 testdg.vol1
# chvol dom1 /dev/vol/testdg/vol1 

アクティブ・ドメインのボリュームの属性は,システムを停止することなく,いつでも変更することができます。 システム性能を改善するための属性の変更については,第 5 章および『システムの構成とチューニング』を参照してください。

2.3    ドメイン

ドメインとは,AdvFS ファイル・システムの物理ストレージ層のことです。 ドメインは,1 つあるいは複数のボリュームを物理ストレージのプールとして定義したものです。 このストレージはディレクトリ構造とは別に管理されるため (2.3.1 項),ボリュームを追加/削除することにより,ドメインの大きさを拡大/縮小することができます。 またファイルのパス名を変えずに,ドメイン内のボリューム間でファイルを移動できます。 ドメインの名前を変更しても,ドメイン ID に影響はありません。

ドメインには,重複しない名前を付ける必要があります。 ドメイン名には,スラッシュ (/),シャープ記号 (#),コロン (:),アスタリスク (*),疑問符 (?),タブ,改行,フォームフィード,キャリッジ・リターン,垂直タブ,および空白を含めることはできません。

2.3.1    /etc/fdmns ディレクトリ

/etc/fdmns ディレクトリでは,作成するドメインごとにサブディレクトリを用意することにより,ドメインを定義します。 ドメイン名は,ディレクトリ・エントリとして定義されます。 ドメインを作成すると,そのディレクトリ・エントリが作成されます。 このサブディレクトリには,ドメイン内の各ボリュームへのシンボリック・リンクが含まれます。

このディレクトリは,標準の AdvFS コマンドを使用すると,AdvFS によって自動的に作成/管理されます。 ドメインでファイルセットをマウントするためには,有効な /etc/fdmns ディレクトリが必要になります。

ドメインを作成すると,/etc/fdmns ディレクトリのドメイン・エントリからブロック・デバイスへのソフト・リンクが作成されます。 このディレクトリ内にリンクを作成するだけでは,ドメインは作成できません。

/etc/fdmns ディレクトリは,定期的にバックアップを取ってください。 このディレクトリの内容が壊れた場合,またはディレクトリ自体を削除してしまった場合は,最も新しいバックアップからディレクトリをリストアしてください。 このディレクトリにダメージを受けると,そのドメインにはアクセスできなくなります。 これは,ドメインとファイルセットを含む物理ボリュームとの対応に関する情報が正しくなくなるためです。 ファイルセットには影響はありません。

AdvFS が正しく機能するためには,同じドメイン ID を持つドメイン内のボリュームの数が,メタデータ情報に保存されたボリュームの数と等しくなければなりません。 さらに,各ドメインは,/etc/fdmns ディレクトリのエントリに定義します(2.3.1 項を参照)。 このディレクトリには,最新情報が定義されている必要があります。 つまり,ドメイン・エントリはその対応するボリュームを正しく参照していなければなりません。 /etc/fdmns ディレクトリのボリュームへのリンクの数は,ボリュームの数に等しくなければなりません。

ダメージを受けたディレクトリを持つドメインからファイルセットをマウントしようとすると,次のようなメッセージが表示されます。 これはドメイン accounts についてのものです。

Volume count mismatch for domain accounts.
accounts expects 2 volumes, /etc/fdmns/accounts has 1 links.

/etc/fdmns ディレクトリの内容が破損したり,ドメインのボリュームが別のシステムに移された場合は,/sbin/advfs/advscan ユーティリティを使用してボリュームを検索し,ディレクトリを再構築します (6.3.3 項を参照)。

2.3.2    ドメイン情報の表示

ドメインが使用状態である場合,つまり 1 つ以上のファイルセットがマウントされている場合には,showfdmn コマンドを使用して,ドメインとそれに含まれるボリュームの詳しい情報を表示することができます。

showfdmn domain_name

たとえば,domain_1 ドメインの情報を表示するには次のようにします。

# showfdmn domain_1
      Id           Date Created      LogPgs Version Domain Name
2bb0c594.00008570 Fri Mar 22 12:33 2002 512       4 domain_1
 
Vol 512-Blks  Free % Used Cmode Rblks Wblks  Vol Name
 1L     8325 79210    90%    on   128   128  /dev/disk/dsk1c
 2    832527  1684    98%    on   128   128  /dev/disk/dsk2c
     --------------------
     1665054 80894    94% 

ディスク使用状況とクォータ値を調べるには,3.4 節を参照してください。

2.3.3    ドメインの作成

AdvFS ファイル・システムの設定の最初のステップは,ドメインを作成し,そのドメインに初期ボリュームを割り当てることです。 ただし,ドメインは,マウント可能な完全なファイル・システムではありません。 AdvFS ファイル・システムをマウントするためには,ドメインに 1 つ以上のファイル・セットが含まれていることが必要です。 ファイルセットをマウントすることにより,ファイルにアクセスすることができるようになります (2.4 節を参照)。 ドメインとファイルセットの各種構成の長所短所については,1.4.1 項を参照してください。

UFS ファイル・システムを AdvFS に変換する方法,またはルート・ドメインを AdvFS として構成する方法は,付録 Cを参照してください。

単一のファイルセットでシングル・ボリューム・ドメインを作成することは,従来の UFS ファイル・システムを作成するのと同じことです。 図 2-1に示すようなアクティブなシングル・ボリューム・ファイル・システムを設定するには,SysMan Menu の「新しい AdvFS ドメインの作成」ユーティリティ (付録 A 参照) または AdvFS GUI (付録 E 参照) を使用するか,あるいはコマンド行で次のように mkfdmn コマンドを実行します。

mkfdmn volume_name domain_name

図 2-1:  シングル・ボリューム・ドメイン

あるパーティションにドメインを作成し,それが /etc/fdmns ディレクトリにエントリがあるパーティションとオーバラップする場合,つまり,そのパーティションがあるドメインと既に関連付けられていた場合,エラー・メッセージが表示されます。 このエラー・メッセージを無視することもできますし,mkfdmn コマンドを -F オプションをつけて実行し,このテストをバイパスすることもできます。

ディスク・ラベルに使用中であることが表示されているボリュームに,ドメインを作成しようとしたときに,そのボリュームがマウントされているかまたは現在のスワップ・パーティションの場合,mkfdmn コマンドは失敗します。 ボリュームがマウントされていない場合は,警告メッセージが表示されます。 この警告を無視し,そのドメインを作成することもできます。 たとえば,/dev/disk/dsk3g が使用中で,ドメイン usr_domain を作成しようとした場合,次のメッセージが表示されます。

# mkfdmn /dev/disk/dsk3g usr_domain
Warning: /dev/rdisk/dsk3g is marked in use for 4.2BSD.
If you continue with the operation you can 
possibly destroy existing data.
CONTINUE? [y/n] <y>

mkfdmn コマンドは,LSM のボリューム名の省略記法をサポートしています。 以下の 2 つは同じ意味になります。

# mkfdmn dom1 testdg.vol1
# mkfdmn dom1 /dev/vol/testdg/vol1 

2.3.3.1    ドメイン・バージョン番号

ドメイン・バージョン番号 (DVN) は,ドメインに対応付けられています。 新しいドメインの DVN は,Version 5.0 オペレーティング・システムで初めて 4 になりました。 これより前のドメインの DVN は 3 です。

Version 5.0 より前のオペレーティング・システムで作成されたドメインは,いずれもこれ以降のバージョンで認識されますが,自動的に新しい構造にアップグレードされることはありません。

DVN3 のファイルセットを Version 5.0 以降が動作しているシステムにマウントすることはできます。 Version 5.0 以降で作成された DVN4 ドメインのファイルセットを,Version 4 オペレーティング・システムが動作する環境にマウントすることはできません。 以前のバージョンのオペレーティング・システムを動作させ,DVN4 ファイルセットにアクセスする必要がある場合は,Version 5.0 以降のソフトウェアが動作するサーバからそれを NFS マウントします。 したがって,アプリケーションで旧バージョンとの互換性が必要な場合は,ドメインをアップグレードしないでください。

DVN4 ドメインではディスク構造が改善されており,2T バイトを超えるクォータ値をサポートし,何千ものファイルを含むディレクトリの性能が向上しています。 ディレクトリが 1 ページ (約 200 ファイル) を超えると,DVN4 のドメインには自動的にインデックスが作成されます。 これは 5000 を超えるファイルがあるディレクトリで特に有効的に機能します。 ディレクトリにインデックスが付いているかどうかを調べるには,showfile コマンドを使用します。 同コマンドを -i オプション付きで実行すると,インデックスについての情報が表示されます。 詳細については, showfile(8) を参照してください。

2.3.3.2    DVN4 のドメインの作成

Version 5.0 以降のオペレーティング・システムで作成されたすべてのドメインは DVN 4 です。 したがって,完全なインストレーションの場合,その過程で作成されたすべてのドメインは新しい構造を持つことになります。

Version 4 のオペレーティング・システムが動作するシステムからのアップデート・インストレーションの場合は,すべての既存のドメインは DVN 3 のままです。 したがって,/root/usr,および /var もまた DVN 3 になります。 変換のユーティリティはありません。 データを DVN4 に移行する場合は,2.3.3.4 項を参照してください。

アクティブな,DVN4 のシングル・ボリューム・ドメインを作成する手順は以下のとおりです。

  1. mkfdmn コマンドを使用して,そのボリュームに関連するシングル・ボリューム・ドメインを作成します。

  2. mkfset コマンドを使用して,1 つ以上のファイルセットを作成します。

  3. mkdir コマンドを使用して,マウント・ポイントとなるディレクトリを作成します。 このディレクトリには,マウントするファイルセットと同じ名前を付けるのが慣例です。 たとえば,tmp という名前のファイルセットをマウントするディレクトリには,/tmp という名前を付けます。

  4. mount コマンドを使用して,各ファイルセットをマウントします。

注意

保存しておきたいデータのあるボリュームには,mkfdmn コマンドは使用しないでください。 このコマンドを使用すると,そのボリュームのデータが壊れます。 誤って mkfdmn コマンドを使用した場合,壊れたボリュームが AdvFS ボリュームであれば,/sbin/advfs/salvage ユーティリティを使用してデータの一部を復元できる場合もあります (6.2.6 項を参照)。

次の例では,DVN4 のシングル・ボリューム・ドメイン domain_2 を作成し,そのドメインに 2 つのファイルセット fileset_a および fileset_b を作成しています。 このドメインのボリュームは 1 つだけなので,それぞれのファイルセット上のファイルは,物理的には 1 つのボリューム上に存在します。 ドメイン名とファイルセット名の間のシャープ記号 (#) は構文の一部であり,コメントを示すものではありません。

# mkfdmn /dev/disk/dsk2c domain_2 
# mkfset domain_2 fileset_a
# mkfset domain_2 fileset_b
# mkdir /fileset_a 
# mkdir /fileset_b 
# mount domain_2#fileset_a /fileset_a
# mount domain_2#fileset_b /fileset_b

ドメインはさまざまな種類のストレージでセットアップできます。 詳細については,1.5 節 を参照してください。 AdvFS Utilities を利用できる場合,ボリュームを追加することによってドメインのサイズを変更することができます。 クラスタ化されていないルート・ドメインの場合を除いて,シングル・ボリューム・ドメインは,マルチボリューム・ドメインに編成し直すことができます。 SysMan Menuの「AdvFS ドメインの管理」ユーティリティ (付録 A),AdvFS GUI (付録 E),および2.3.4 項を参照してください。

2.3.3.3    DVN3 のドメインの作成

Version 5 システムで DVN3 ドメインを作成することができます。 mkfdmn コマンドに -V3 オプションを指定して実行します。 これは旧バージョンとの互換性が必要な場合に便利です。

DVN3 ドメイン作成についての詳細は, mkfdmn(8) を参照してください。 作成した DVN3 ドメインをマウントする方法については,2.4.5 項 を参照してください。

2.3.3.4    ドメインの DVN4 へのアップグレード

ドメインをアップグレードするには,Version 5.0以降のソフトウェアが動作しているシステムで新しいドメインを作成し,古いドメインから新しいドメインへすべての情報をコピーします。 ドメインの作成に精通していない場合,まず2.3.3 項を参照してください。 ドメインのアップグレードの手順は以下のとおりです。

  1. vdump コマンドを使用して,ドメインのファイルセットのバックアップをテープに取ります。 セーブセット・エラーを防ぐために-xオプションを使用することをお勧めします。 新しいドメインを作成した後にドメインのデータをリストアできない場合は,それらのすべてのデータを失うことになります。

  2. 古いドメインをアンマウントし,rmfdmn コマンドを使用して削除します。

  3. mkfdmn コマンドを使用して新しいドメインを作成します。 新しいドメインの DVN は 4 になります。 mkfdmn コマンドを実行するときは,-x と -p オプションを使用する必要はありません。 DVN4 ドメインでは,さらに BMT 割り当てを行なう必要はありません。

  4. mkfset コマンドを使用して新しいファイルセットを作成し,それらをマウントします。

  5. vrestore コマンドを使用して,ファイルセットを新しいドメインにリストアします。

たとえば,ファイルセット fileset_pfileset_m のある /dev/disk/dsk1c 上のドメイン domain_p を,同じ名前および同じボリュームでアップグレードするには,次のコマンドを実行します。

# vdump -0 -N -x 8 /fileset_p
# vdump -0 -N -x 8 /fileset_m
# umount /fileset_p
# umount /fileset_m
# rmfdmn domain_p
# mkfdmn /dev/disk/dsk1c domain_p
# mkfset domain_p fileset_p
# mkfset domain_p fileset_m
# mount domain_p#fileset_p /fileset_p
# mount domain_p#fileset_m /fileset_m
# vrestore -x -D /fileset_p
# mt fsf 1
# vrestore -x -D /fileset_m

2.3.4    ドメイン・サイズの拡大

次のいずれかの方法でドメインを拡大することができます。

サイズを拡大/縮小してもディレクトリ構造には影響ありません。 ファイルへのすべてのパス名はそのままです。 また,処理中もファイル・システムを稼働させておくことができます。

クラスタ環境の場合を除いて,ルート・ドメインは 1 つのボリュームに制限されます。 ルート・ドメインのサイズを拡張する必要がある場合,ボリュームの状況によって,対応するストレージを拡張してそれをドメインに伝えるか,6.4.9 項の手順を行なってルートが置かれているデバイスを交換するかができます。

クォータが設定されている場合を除き,ドメインのすべてのファイルセットは利用可能なストレージにアクセスできます (クォータについては,第 3 章 を参照)。

2.3.4.1    ボリュームを追加することによるドメインのストレージの拡大

新しく作成したドメインは,ディスク,ディスク・パーティション,または論理ボリュームなどの 1 つのボリュームからなります。 AdvFS Utilities を利用する場合,ドメインのサイズは 1 つ以上のボリュームを追加することによって拡張することができます。 図 2-2 に,ドメインにボリュームを追加する様子を示しています。 ボリュームを最初に追加した状態では,その中にデータは何も含まれません。 ボリュームを追加した後は,ファイルをドメインに追加することで情報がその中に保存されます。 また,vfast ユーティリティの実行 (5.8 節を参照),ファイルの移動 (5.12 節 を参照),およびドメインの負荷分散 (5.11 節を参照 ) によっても情報が保存されます。

図 2-2:  ドメインの拡大

ボリュームを追加するには,SysMan Menu の「AdvFS ドメインの管理」ユーティリティ (付録 A参照) または AdvFS GUI (付録 E参照)を使用するか,コマンド行で次のように addvol を実行してください。

addvol device_name domain_name

たとえば,ドメイン resources にボリューム dsk3c を追加するには次のコマンドを入力します。

# addvol /dev/disk/dsk3c resources

addvol コマンドは,LSM のボリューム名の省略記法をサポートしています。 以下の 2 つは同じ意味になります。

# addvol dom1 testdg.vol1
# addvol dom1 /dev/vol/testdg/vol1

ボリュームの追加は,ドメイン作成直後でも,あるいは,ドメインで追加スペースが必要となった時点でも可能です。 また,ボリュームの追加は,ファイルセットがマウントされ使用中のアクティブなドメインに対しても行うことができます。

DVN3 ドメインのサイズを増やすより,新しいファイル構造 (2.3.3.4 項) にアップデートするほうが,性能が向上する場合があります。

クラスタ環境でない場合は,ルート・ドメインにボリュームを追加することはできません (『クラスタ管理ガイド』を参照)。 クラスタ構成で実行している場合は,ルート・ドメインに他のドメインと同じ要領でボリュームを追加できます。 クラスタを使用していない環境でルート・ドメインのサイズを拡張するには,6.4.9 項を参照してください。

注意

addvol コマンドを使用して,保存しておきたいデータのあるボリュームを追加しないでください。 このようにするとそのボリューム上のデータが壊れます。 誤って addvol コマンドを使用した場合には,/sbin/advfs/salvage ユーティリティを使用してデータの一部を復元できる場合もあります (6.2.6 項を参照)。

ドメインにボリュームを追加するには,次の手順を行ないます。

  1. showfdmn コマンドを使用して,ドメインの内容と各ボリュームの現在のディスク容量を表示します。 この操作はオプションです。

  2. 新しいボリュームをドメインに追加します。

    パーティションを追加し,それが /etc/fdmns ディレクトリにエントリのあるパーティションとオーバラップすると,つまり,そのパーティションがあるドメインとすでに関連付けられていると,エラー・メッセージが表示されます。 このエラー・メッセージは無視することができますし,addvol コマンドに -F オプションを使用して,このテストをバイパスすることもできます。 詳細については, addvol(8) を参照してください。

    注意

    -F オプションを使用するには細心の注意が必要です。 オーバラップ・チェックを無効にすると,広範囲のデータが失われることがあります ( addvol(8)を参照)。

  3. vfast ユーティリティを実行しない場合 (5.8 節を参照),balance ユーティリティを使用してボリューム間のファイルの分散を均等化することをお勧めします。

次の例では,1 つのディスクのボリューム /dev/disk/dsk3cdomain_1 に追加しています。

# showfdmn domain_1
    Id              Date Created     LogPgs Version Domain Name
2bb0c594.00008570 Fri Mar 22 12:33 2002 512       4 domain_1
 
Vol 512-Blks  Free % Used Cmode Rblks Wblks  Vol Name
 1L   832527 79210    90%    on   128   128  /dev/disk/dsk1c
 2    832527  1684    98%    on   128   128  /dev/disk/dsk2c
     --------------------
     1665054 80894    94% 
# addvol /dev/disk/dsk3c domain_1

2.3.4.2    ボリュームを交換することによるドメインのストレージの拡大

Advanced Utilities を利用できない環境でドメインのサイズを拡張するには,次の手順に従います。

  1. より容量が大きいストレージ・デバイス上に新規ドメインを作成します。 既存ドメインとは異なるドメイン名を使用してください。

  2. 既存ドメインのファイルセットと同じ名前のファイルセットを作成します。

  3. 作成したファイルセットごとに,一時的なマウント・ポイントを作成します。

  4. 作成した一時マウント・ポイントに各ファイルセットをマウントします。

  5. 適切なユーティリティ (vdump/vrestore,cpio,cp -R,tar など) を使用して,マウントした各ファイルセットに既存デバイスから対応するファイルセットをコピーします。

  6. 新旧の各ファイルセットをアンマウントします。

  7. 新しいドメインの名前を,必要に応じて旧ドメインの名前に変更します。 ドメインとファイルセットの名前を変更しない場合には,/etc/fstab ファイルを編集する必要はありません。 名前を変更した場合には,/etc/fstab ファイルにも変更を反映してください。

  8. 新しい各ファイルセットを,旧ファイルセットのマウント・ポイントにマウントします。 この結果,ディレクトリ構造の一貫性が保持されます。 作成した一時マウント・ポイントのディレクトリはすべて削除します。

2.3.4.3    既存のボリュームを拡張することによるドメインのストレージの拡大

既存のボリュームのサイズを増やすことによって,利用可能なストレージの容量を拡大することができます。 たとえば,LSM とハードウェア RAID のコントローラは,ボリュームの動的なサイズ拡張をサポートします。 LSM またはハードウェア RAID のボリュームのサイズ拡張は,AdvFS とは独立して行なわれるので,ボリュームのサイズを変更したときには,それをドメインに知らせる必要があります。 これは,mount コマンドに -o extend オプションを指定して行ないます。 拡張のためにこのオプションを使用するのは,1 つのファイルセットのマウントに対してだけでよいです。

ファイルセットをまだマウントしていない場合は,次のように入力します。

mount -o extenddomain#fileset /mount_point

ファイルセットをすでにマウントしている場合は,次のように入力します。

mount -u -o extenddomain#fileset /mount_point

-o extend オプションを使用すると,追加したすべてのストレージを,ドメインのすべてのファイルセットで使用できます。

注意

ボリュームを拡張することによりドメインのサイズを拡大するという方向のみ可能です。 AdvFS はボリュームの縮小をサポートしません。

2.3.5    ドメイン・サイズの縮小

残りのボリュームに十分な空き容量がある場合は,ユーザの操作を中断せず,またドメイン内のファイルセットの論理構造に影響を与えずに,ドメインからボリュームを削除することができます。 ファイル・システムは,選択したボリュームの内容をドメイン内の他のボリュームへ自動的に移行します。 ドメインからボリュームを削除する前に,そのドメインのすべてのファイルセットをマウントする必要があります。 マウントされていないファイルセットがある状態でドメインからボリュームを削除しようとすると,エラーが発生します。

切り離そうとするボリュームからすべてのファイルを移すだけの十分な空き容量がそのドメインの他のボリュームにない場合には,可能な限りのファイルが他のボリュームへ移されます。 その後,十分なスペースがないことを示すメッセージが出力されます。 この場合,ドメインはダメージを受けません。

AdvFS コマンドでできるのは,ドメインのサイズを縮小することだけです。 mount コマンドの -o extend オプションでドメインの拡張を通知するように,ドメインにストレージの縮小を知らせる操作はありません。

注意

ドメインが LSM ボリューム上にある場合,サイズを縮小するのに LSM の shrink オプションは使用しないでください。

ボリュームを削除するには,SysMan Menu の「AdvFS ドメインの管理」ユーティリティ (付録 A参照) または AdvFS GUI (付録 E参照) を使用するか,コマンド行で次のように rmvol コマンドを実行します。

rmvol device_name domain_name

たとえば,ドメイン inventory から dsk3c を削除する場合,次のコマンドを入力します。

# rmvol /dev/disk/dsk3c inventory

rmvol コマンドは,LSM のボリューム名の省略記法をサポートしています。 以下の 2 つは同じ意味になります。

# rmvol dom1 testdg.vol1
# rmvol dom1 /dev/vol/testdg/vol1

Ctrl/c あるいは kill -term コマンドを使用すると,ドメインにダメージを与えないで rmvol 処理 ( rmvol(8) を参照) を中断させることができます。 既に削除したファイルは新しい場所にあります。 kill -KILL コマンドは使用しないでください。

状況によっては,rmvol コマンドを kill コマンドで中断するとボリュームにアクセス (書き込み) できない状態になる可能性があります。 この状態に陥ったボリュームは,showfdmn コマンドの出力で確認できます。 該当するボリュームには,"data unavailable" というメッセージが表示されます。 rmvol コマンドの中断後,ボリュームへの書き込みができなくなった場合は,chvol コマンドに -A オプションを使用してボリュームを再びアクティブにしてください。

ドメインのサイズを縮小する手順は以下のとおりです。

  1. showfdmn コマンドで,ドメインの内容と,各ボリュームの現在のディスク容量を表示します。 この操作はオプションです。

  2. ボリュームを削除します。

  3. vfast ユーティリティを実行しない場合,balance ユーティリティを使用してボリューム間でのファイル分散を均等化することをお勧めします。 この操作はオプションです。

バランシングや断片化の解消を行っているドメイン,または vfast を実行してバランシングや断片化の解消を行っているドメインから,ボリュームを削除することはできません。

次の例では,domain_2 ドメインのディスク /dev/disk/dsk2c を削除しています。

# showfdmn domain_2 
  Id              Date Created     LogPgs Version Domain Name
2bb0c594.00008570 Fri Apr 26 10:23 2002 512      4 domain_2
 
Vol 512-Blks    Free % Used Cmode Rblks Wblks  Vol Name
 1L   832527  386984    54%    on   128   128  /dev/disk/dsk1c
 2    832527  647681    22%    on   128   128  /dev/disk/dsk2c
 3    832527  568894    32%    on   128   128  /dev/disk/dsk3c
     ---------------------- 	
      249758 1603559    36%
# rmvol /dev/disk/dsk2c domain_2

ストライプ・セグメントを含む AdvFS ボリュームを削除する場合,rmvol ユーティリティは,そのセグメントを,同じファイルのストライプ・セグメントをまだ含んでいない他のボリュームへ移動します。 ドメイン内のすべてのボリュームに渡ってファイルがストライプ化されている場合, ボリューム削除の際に確認が必要になります。 削除処理を続行する場合は,残りのボリューム上に 1 つ以上のストライプ・セグメントが置かれます。 ファイルのストライプ化についての詳細は,5.13 節 を参照してください。

2.3.6    ドメインの削除

ドメインの削除は,ドメイン内のすべてのファイルセットをアンマウントした後に可能になります。 ドメインを削除すると,ドメインを定義していた /etc/fdmns ディレクトリのエントリが削除され,ファイルセットがマウントできなくなります。 削除されたドメインに割り当てられていたボリュームは未使用として再表示され,再使用できるようになります。

rmfdmn コマンドを使用してドメインを削除して,各ファイルセットを無効化することはできますが,ボリューム上のデータは変更されないためセキュリティ・ホールになる可能性があります。 /sbin/advfs/salvage コマンド (6.2.6 項を参照) を使用してデータにアクセスできることがあるためです。 rmfset コマンドを使用して,個々のファイルセットを削除する方が賢明です (2.4.7 項 を参照)。

ドメインを削除するには,GUI (付録 Eを参照) を使用するか,またはコマンド行ですべてのファイルセットとファイルセット・クローンをアンマウントした後,次のように rmfdmn コマンドを入力します。

rmfdmn domain_name

次に示すのは,ドメイン promotions を削除する例です。

# rmfdmn promotions 
rmfdmn: remove domain promotions? [y/n]y
rmfdmn: domain promotions removed 

マウントされたファイルセットがある状態でこのコマンドを使用すると,システムはエラー・メッセージを表示します。 AdvFS は,アクティブ状態のドメインは削除しません。

2.3.7    ドメイン名の変更

既存のドメインには,そのドメイン ID を変更することなく,新しい名前を割り当てることができます。 ドメイン名を変更する場合,そのドメイン内のすべてのファイルセットに対する,/etc/fstab (2.4.1 項を参照) のエントリをアップデートする必要があります。 ドメイン名を変更するには,AdvFS GUI (付録 Eを参照) を使用するか,コマンド行で次の手順を実行します。

  1. すべてのファイルセットおよび関連するクローンをアンマウントします。

  2. /etc/fdmns ディレクトリで,古いドメイン名を新しいドメイン名に変更します。

    # mv /etc/fdmns/old_domain_name /etc/fdmns/new_domain_name
    

  3. /etc/fstab ファイルを編集して,新しいドメイン名を入力し,古いドメイン名を削除します。

  4. 名前を変更したドメインのファイルセットをマウントします。

ドメイン名 marketingadvertising に変更する例を次に示します。 ここでは,ファイルセット fset/fset にマウントされていると想定しています。 また,ファイルの編集には vi エディタを使用します。

# umount /fset 
# mv /etc/fdmns/marketing /etc/fdmns/advertising 
# vi /etc/fstab 

/etc/fstab ファイルで,次の行を探します。

marketing#fset /fset advfs rw,userquota,groupquota 0 2

この行を次のように編集します。

advertising#fset /fset advfs rw,userquota,groupquota 0 2

ファイルセットをマウントします。

# mount /fset

2.4    ファイルセット

ファイルセットは,ファイル・システムのディレクトリ階層のマウント可能部分を表しています。 ファイルセットと従来の UNIX ファイル・システムは,多くの点で共通しています。 すなわち,AdvFS ファイルセットはマウントできます。 また,ファイルセットにはファイルが含まれ,ファイルセットはクォータ値が設定可能な単位であり,またデータをバックアップするための単位にもなっています。

ドメイン内のファイルセットは,ドメイン内のボリューム上の利用可能なスペースを共用し,同じドメイン・トランザクション・ログ・ファイルを使用します。 各ファイルセットには,固有のディレクトリ構造,ルート・タグ・ディレクトリ,クォータ・ファイル,およびフラグ・ファイルがあります。 1 つのドメイン内の最適な AdvFS ファイルセット数は,主に,そのファイルセットを使用するアプリケーションの要件に依存します。 ドメインとファイルセットのさまざまな構成の長所短所については,1.4.1 項を参照してください。

ファイルセットはその物理ストレージとは独立して管理されるため,各ファイルセットを個別にバックアップできます (第 4 章)。 また,それぞれにクォータ値を割り当てることができます (第 3 章)。 複数の小さいファイルセットを使用すると,大きいファイルセット 1 つの場合よりも速くバックアップやリストアができます。 vdumpvrestore コマンドは,複数のファイルセットに対して同時に実行できます。

従来のファイル・システムとは異なり,AdvFS のディレクトリ階層はストレージから独立しています。 このため,ファイルセットの論理構造に影響を及ぼさずにファイル・レイアウトを変更できます。

ファイルセット名はドメイン内で一意でなければなりません。 ファイルセット名には,スラッシュ (/),シャープ記号 (#),コロン (:),アスタリスク (*),疑問符 (?),タブ,改行,フォームフィード,キャリッジ・リターン,垂直タブ,および空白を含めることはできません。 なお,ドメインが異なるファイルセットには,同じ名前をつけても構いません。

domain#fileset のように,ファイルセット名はドメイン名と関連付けることができます。 シャープ記号 (#) はネーミング構文の一部であり,コメントを示すものではありません。

各ファイルセットには,ドメイン ID とファイルセット・タグで構成された一意のファイルセット ID があります。 各ドメインには,独自の連続したファイルセット・タグがあります。

AdvFS では,ファイルセット・クローンもサポートしています。 AdvFS のファイルセット・クローンは,データを瞬時に取り込むために作成される,既存のファイルセットの読み取り専用のコピーです。 ファイルセット・クローンの詳細は,2.4.10 項を参照してください。

2.4.1    /etc/fstab ファイルでのファイルセットの指定

AdvFS ファイルセットは,ファイル・システムの種類として advfs を指定して /etc/fstab ファイルに登録します ( fstab(4) を参照)。 登録方法は,他のファイル・システムを追加する場合と同様です。 /etc/fstab ファイルに記述されている AdvFS ファイルセットは,システム・リブートのたびにマウントされます。

ファイルセット・エントリには,ドメイン名,ファイルセット名,マウント・ポイント,ファイル・システム・タイプ,およびマウント・ポイント・オプションが含まれます。 ユーザおよびグループのクォータ(3.2 節参照)を設定する場合には,次に示すように,userquota オプションと groupquota オプション,およびパス・フィールド番号もエントリに含めます。 コンマで区切ったオプションのリスト,つまり rw から groupquota の間にスペースを含めることはできません。

domain#fileset /mount_point advfs rw,userquota,groupquota 0 2

たとえば,crdt ファイルセットをリブート時にマウントするには,/etc/fstab ファイルに次の行を追加します (ファイルセットのマウント・ポイントは既に存在するものと仮定します)。

acct_124#crdt /crdt advfs rw,userquota,groupquota 0 2 

たとえば,グループ・クォータだけを追加したい場合,ユーザ・クォータを指定しません。 この場合,ファイルセット・エントリは次のようになります。

acct_124#crdt /crdt advfs rw,,groupquota 0 2 

userquota オプションと groupquota オプションは,クォータ関連のコマンドで処理できるマウント済みファイル・システムを示します。 クォータ関連コマンドの多くは,-a (all) オプション付きで実行することによって,userquotagroupquota が指定されたファイル・システムのみに処理対象を限定することが可能です。

quota.user ファイルと quota.group ファイルをそのファイルセットのサブディレクトリに再配置することができます。 しかし,他のファイルセットに再配置したり,削除することはできません。 ファイルを再配置した場合,/etc/fstab ファイルのエントリを更新し,userquotagroupquota パラメータが再配置したファイルのパスと名前を含むようにする必要があります。

たとえば,quota.user ファイルをファイルセット crdtd4 サブディレクトリに再配置し,nq に名前変更するには,/etc/fstab の対応するエントリを次のように変更します。

acct_124#crdt /crdt advfs rw,userquota=/d4/nq,groupquota 0 2

この例では,グループ・クォータ・ファイルは移動されません。

2.4.2    ファイルセット情報の表示

どのシステム・ユーザも,マウントされているファイルセットおよびクローンに関する詳しい情報を表示することができます。 ドメインがアクティブな状態でない場合 (ファイルセットがマウントされていない場合) のみ,root ユーザ特権が必要です。 ファイルセット情報を調べるには,次のコマンドを入力します。

showfsets domain_name

次の例ではドメイン zso_domain の情報が表示されます。 このドメインには,4 つのファイルセットがあります。

# showfsets zso_domain
staff1_fs 	
    Id           :  2cb9d009.000419f4.1.8001
    Files        :     18554,  SLim= 0, HLim= 0
    Blocks(512)  :    712230,  SLim= 0, HLim= 0
    Quota Status :  user=on group=on
    Object Safety:  off
    Fragging     :  on
    DMAPI        :  off
 guest_fs
    Id           :  2cb9d009.000419f4.2.8001
    Files        :      4765,  SLim= 0, HLim= 0
    Blocks(512)  :    388698,  SLim= 0, HLim= 0
    Quota Status :  user=on group=on
    Object Safety:  off
    Fragging     :  on
    DMAPI        :  off
 staff2_fs
    Id           :  2cb9d009.000419f4.3.8001
    Files        :     12987,  SLim= 0, HLim= 0
    Blocks(512)  :    842862,  SLim= 0, HLim= 0
    Quota Status :  user=on group=on
    Object Safety:  off
    Fragging:       on
    DMAPI        :  off
 staff3_fs
    Id           :  2cb9d009.000419f4.4.8001
    Files        :     48202,  SLim= 0, HLim= 0
    Blocks(512)  :   1341436,  SLim= 0, HLim= 0
    Quota Status :  user=on group=on
    Object Safety:  off
    Fragging     :  on
    DMAPI        :  off 

次の例ではドメイン domain_2 が表示されます。 このドメインには,1 つのファイルセットと 1 つのファイルセット・クローンがあります。

# showfsets domain_2
test_fs
    Id           :  3003f44f.0008ac95.4.8001
    Clone is     :  clone_test
    Files        :      7456,  SLim= 0, HLim= 0
    Blocks (512) :    388698,  SLim= 0, HLim= 0
    Quota Status :  user=on group=on
    Object Safety:  off
    Fragging     :  on
    DMAPI        :  off
 Clone_test
    Id           :  3003f44f.0008ac95.5.8001
    Clone of     :  test_fs
    Revision     :  2 

グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用しても同様な情報が表示されます (付録 E を参照)。

2.4.3    ファイルセットの作成

ドメインには,マウントされたファイルセットが少なくとも 1 つ含まれていなければなりません (2.3.3 項参照)。 1 つのドメインに複数のファイルセットを作成し,それらのファイルセット間でドメインに設定されたストレージ・プールを共用することも可能です。 どのファイルセットも,そのドメインで利用可能なストレージをすべて使用することができます。

各ファイルセットは,ドメイン内の他のファイルセットとは独立してマウントあるいはアンマウントすることができます。 ファイルセット・クォータを設定すれば,ファイルセットで利用できるストレージ・サイズを制限することが可能です (第 3 章を参照)。 割り当て済みスペースの 5 % 以上を浪費するファイルにはフラグ・ファイルを作成し,ディスク・スペースの浪費を抑制できます (5.2 節を参照)。 ファイルセットには,作成時に mkfset コマンドで属性を設定できるほか,後でchfsets コマンドを使用して設定済みの属性を変更することもできます (2.4.9 項を参照)。

ドメインにファイルセットを作成するには,SysMan Menuの「新しい AdvFS ファイルセットの作成」ユーティリティ (付録 A参照) または AdvFS GUI (付録 Eを参照) を使用するか,あるいはコマンド行で次のように mkfset コマンドを実行します。

mkfset domain_name fileset_name

たとえば,ファイルセット coupons をドメイン advertising に作成するには次のように入力します。

# mkfset advertising coupons 

ファイルセットをマウントするには,マウント・ポイントとなるディレクトリを作成する必要があります (2.4.5 項を参照)。

ドメインについては,2.3.3 項を参照してください。

2.4.4    ファイルセットのアップグレード

Version 5.0 以降の Tru64 UINX で作成されたドメイン (DVN4) のファイルセットは,大きなクォータ値をサポートし,非常に大きなディレクトリでの性能が良くなっています。 以前に作成されたドメイン (DVN3) のファイルセットでは,このような改善は行われていません。 ファイルセットを新しいバージョンにアップグレードするためには,ドメインをアップグレード (すなわち新たに再作成) して,ファイルセットをリストアする必要があります。 リストア後のファイルセットには新しいクォータが設定され,性能が向上します (2.3.3 項を参照)。

Version 5.0 以降の Tru64 UINX が稼働しているサーバから NFS マウントする場合を除いて,Version 5.0 より前の Tru64 UINX では,DVN4 のファイルセットをマウントすることはできません。 互換性の問題を回避するための情報は (6.4.6 項を参照してください。

2.4.5    ファイルセットのマウント

従来の UNIX ファイル・システムの場合と同様に,AdvFS ファイルセットにアクセスするためにはマウントする必要があります。 マウント・ポイントが存在しない場合には,マウント・ポイントとなるディレクトリを作成します。 マウントするファイルセットは,その作成時のオペレーティング・システムに互換性がある必要があります (6.4.6 項を参照)。

ファイルセットをマウントするには,SysMan Menu の「一般的なファイルシステム・ユーティリティ - ファイルシステムのマウント」ユーティリティ (付録 Aを参照) または AdvFS GUI (付録 Eを参照) を使用するか,あるいはコマンド行で次のように mount コマンドを入力します。

mount domain_name#fileset_name mount_point

たとえば,マウント・ポイント・ディレクトリを作成し,ドメイン advertising のファイルセット coupons をマウントするには,次のように入力します。

# mkdir /coupons 
# mount advertising#coupons /coupons 

ファイルセットがリブート時に自動的にマウントされるようにするには,/etc/fstab ファイルに 2.4.1 項 の説明に従って,エントリを作成します。

AdvFS は,ファイルセットをマウントする前に,ドメインのすべてのボリュームのすべてのデータにアクセスできることを確認します。 問題が検出されるとマウントに失敗するか,ファイルセットが読み取り専用でマウントされることがあります (6.3.2 項を参照)。

間違ったボリューム数でファイルセットをマウントしようとした場合は,マウント操作は失敗します。 詳細については,6.3.3.2 項 および advscan(8) を参照してください。

Version 5.0 以降の Tru64 UINX で作成したファイルセットを Version 4.0 あるいはそれ以前のバージョンの Tru64 UINX が稼働しているシステムにマウントしようとすると,エラー・メッセージが出力されます (6.4.6 項 を参照)。

マウント操作で一時的アトミック書き込みデータ・ロギングを指定することができます (5.5 節を参照)。

2.4.6    ファイルセットのアンマウント

ファイルセットをアンマウントすると,そのファイルセットはドメイン内に残りますが,アクセスできなくなります。 そのファイルセットをマウントすると,再度利用できるようになります。

AdvFS ファイルセットをアンマウントするには,SysMan Menuの「一般的なファイルシステム・ユーティリティ -- ファイルシステムのアンマウント」ユーティリティ (付録 A参照) または AdvFS GUI (付録 Eを参照) を使用するか,あるいはコマンド行で次のように umount コマンドを入力します。

umount mount_point

たとえば,2.4.5 項 でマウントしたドメイン advertising のファイルセット coupons をアンマウントする場合,次のコマンドを入力します。

# umount /coupons

2.4.7    ファイルセットの削除

ファイルセットを削除すると,そのファイルセットを再度マウントすることはできません。 削除されたファイルセットは,ドメインから消えます。

ファイルセットを削除するには,あらかじめアンマウントし,そのファイルセットのクローンも削除しておく必要があります。 ファイルセットにゴミ箱ディレクトリ (2.6 節を参照) が設定されている場合は,このディレクトリも削除されます。

ファイルセットを削除するには,SysMan Menu の「AdvFS ドメインの管理」ユーティリティ (付録 A参照) または AdvFS GUI (付録 Eを参照) を使用するか,あるいはコマンド行で次のように rmfset コマンドを入力します。

rmfset domain_name fileset_name

たとえば,ドメイン domain_1 のファイルセット tmp_1 を削除する場合は,次のように入力します。

# rmfset domain_1 tmp_1
rmfset: remove fileset tmp_1? [Y/N]y

ドメインのすべてのファイルセットを削除する最も確実な方法は,rmfset コマンドを使用することです。 このユーティリティを使用すると,ファイルセット内の全ファイルの,メタデータを指すポインタが消去されます。 したがって,このコマンドで削除したファイルセットは,/sbin/advfs/salvage ユーティリティを使用しても復元することはできません (6.2.6 項を参照)。 ドメインのすべてのファイルセットを削除する効率的な方法は,rmfdmn コマンドによるドメイン自体の削除です。 ただし,この方法では,一部のデータにアクセスされる可能性があるためセキュリティ・リスクが伴います。 rmfdmn コマンドは,/etc/fdmns ディレクトリのドメインの定義を削除し,ボリュームのラベルを書き換えますが,ボリューム内のデータはそのまま残ります。

2.4.8    ファイルセット名の変更

アンマウントされたファイルセットの名前は,変更できます。 ファイルセット名は利用者が割り当てる属性の 1 つであり,その値はドメイン内で保持されます。 ファイルセット名を変更しても,この属性が変化するだけであり,ファイルセット ID は変更されません。

ファイルセット名を変更するには,まず対象のファイルセットをアンマウントし,クローンが存在する場合には,それもアンマウントします。 続いて,SysMan Menuの「AdvFS ドメインの管理」ユーティリティ (付録 A参照) または AdvFS GUI (付録 Eを参照) を使用するか,あるいはコマンド行で次のコマンドを入力します。

renamefset domain_name old_fileset_name new_fileset_name

ファイルセット名を変更したら,/etc/fstab ファイルの対応するエントリを変更する必要があります (2.4.1 項を参照)。 この処理を行わないと,変更したファイルセットがシステム・ブート時にマウントされません。

たとえば,/mount_point にマウントされているドメイン dmn_1 のファイルセット sad の名前を happy に変更する手順は次のとおりです。 この手順では,ファイルの編集に vi エディタを使用しています。

# umount /mount_point 
# renamefset dmn_1 sad happy
# vi /etc/fstab 

/etc/fstab ファイル内で次の行を見つけます。

dmn_1#sad /mount_point advfs rw,userquota,groupquota 0 2

この行を次のように変更します。

dmn_1#happy /mount_point advfs rw,userquota,groupquota 0 2

ファイルセットをマウントします。

# mount /mount_point

注意

AdvFS のファイルセット・クローンの名前は変更できません。 既存のクローンを削除し,任意の名前で新しいクローンを作成する必要があります。

2.4.9    ファイルセットの属性の変更

chfsets コマンドを使用すると,ファイルセットの属性を変更できます。 -F-f-B,および -b オプションでファイルセットのクォータを変更できるほか (3.3.2 項を参照),-o オプションでフラグ・ファイルのオン/オフを切り替えることができます (5.2 節を参照)。 また,オブジェクト・セーフティのオン/オフ (6.4.11 項) やデータ管理 API (DMAPI) の有効/無効化 (付録 D)を切り替えることができます。

2.4.10    AdvFS ファイルセット・クローン

オプションの AdvFS Utilities を使用できる場合は,root ユーザでなくても AdvFS ファイルセット・クローンを使用してファイルをバックアップすることができます。 ファイルセット・クローンは,ファイルセット構造情報 (メタデータ) の読み取り専用スナップショットです。 ファイルセット・クローンを作成する場合,ユーティリティは,実際のデータではなくオリジナル・ファイルセットの構造だけをコピーします。 ファイルの内容が変更されると,ファイル・システムは変更前のオリジナルのデータを AdvFS ファイルセット・クローンにコピーします。 したがって,クローンを作成した時点でのシステムのコピーが,クローンが存在する限り保存されます。 (この処理を書き込み時コピーと呼びます)。

ファイルセット・クローンに含まれるのは変更されたデータのコピーだけなので,ファイルセット・クローンはオリジナルのファイルセットよりも小さいのが普通です。 図 2-3 に,オリジナル・ファイルセットとファイルセット・クローンの関係を図示します。

図 2-3:  ファイルセット・クローンの作成

以下に示すように,ファイルセット・クローンを使用すると,データの可用性が向上します。

ファイルセット・クローンのクローンは作成できません。 クローンではデータ・キャッシングを使用できません。

注意

テキスト・ファイルをエディタで編集すると,オリジナルのファイル全体がクローンにコピーされる場合があります。 これは,多くのエディタが,何が変更されたかには関係なくファイル全体を書き直すためです。 この場合,AdvFS ファイルセット・クローンのサイズは非常に大きくなる可能性があります。 この種の処理を AdvFS 側で変えることはできません。

クローン作成時に存在したファイルを削除した場合,(オリジナル・ファイルセットでは見えませんが) クローンにはそのまま残ります。 そのファイルはクローンにはコピーされず,実際の削除はクローンが削除されるまで行われません。 クローン内のファイルは,クローン作成時に存在したバージョンのファイルです。 その後の更新は失われます。

AdvFS ファイルセット・クローンのサイズは,クローンが存在する間に発生するアップデートの量に依存します。 ファイルセット・クローンはファイルがアップデートされると絶えず変更されるので,空きディスク・スペースに関する統計値を表示する df コマンドは,ファイルセット・クローンのサイズを正確には反映しません。

注意

ドメインがディスク・スペースを使い果たすと,ファイル・システムは AdvFS ファイルセット・クローン内のファイルの整合性を維持できなくなります。 オリジナルのファイルセットは利用可能な状態ですが,ファイルセット・クローンは整合性を失い,使用されなくなります。 この場合,警告メッセージが,ユーザの端末とシステム・コンソールの両方に表示されます。

DMAPI を有効にしたファイルセットのクローンは作成できません。

システム・ディスクのクローンを作成し,他のシステムでブートする方法については,Best Practices ドキュメントを参照してください。 この方法は,AdvFS のファイルセット・クローンを作成する方法とは異なります。

2.4.10.1    AdvFS ファイルセット・クローンの作成

AdvFS ファイルセットのクローン作成はユーザ側では意識されず,システム性能への影響もわずかに過ぎません。 クローンの作成には root 権限が必要です。 ファイルセット・クローンを作成するには,SysMan Menuの「AdvFS ドメインの管理」ユーティリティ (付録 A参照) または AdvFS GUI (付録 Eを参照) を使用するか,あるいはコマンド行で次のように clonefset コマンドを入力します。

clonefset domain_name fileset_name clone_name

たとえば,transactions ドメインの day300 ファイルセットに対するクローン clone_day300 を作成する場合は,次のコマンドを使用します。

# clonefset transactions day300 clone_day300

コマンド行で,バックアップのソースとしてクローンを使用する方法は,4.3.11 項 を参照してください。 AdvFS GUI でのクローン作成の方法はE.4.3 項 を参照してください。

2.4.10.2    AdvFS ファイルセット・クローンのマウントとアンマウント

クローンは,通常のファイルセットと同じ方法でマウント/アンマウントされます (2.4.5 項および 2.4.6 項を参照)。

2.4.10.3    AdvFS ファイルセット・クローンの削除

クローンは,通常のファイルセットと同じ方法で削除します (2.4.7 項を参照)。

2.4.10.4    AdvFS ファイルセット・クローンの名前の変更

ファイルセット・クローンの名前は変更できません。 クローンに新しい名前を割り当てるには,古いクローンを削除して,そのファイルセットの新しいクローンを作成する必要があります。 この新しいクローンは,削除したファイルセット・クローンより後の時点のスナップショットであることに注意してください。

2.5    AdvFS ルート・ファイル・システムの構成

AdvFS をルート・ファイル・システムに構成すると,次のような利点があります。

AdvFS ルート・ファイル・システムには,次のような制限事項が存在します。

ルート・ドメインには,ルート・ファイルセットのみを含めてください。 /usr ファイルセットや /var ファイルセットを含めることはお勧めできません。 システムで使用できるストレージ・デバイスが 1 台だけの場合には,ルート・ドメインとそれ以外のドメインを,異なるパーティションに配置してください。

基本オペレーティング・システムの初期インストール時にルート・ディレクトリを AdvFS ボリューム上に配置することも,あるいはインストール後に既存のルート・ファイル・システムを AdvFS に変換することもできます。 初期インストール時にルート・ディレクトリを AdvFS ファイル・システムでインストールする場合には,ルート・ディレクトリは特に指定しなければ a パーティション上に作成されます。

既存の UFS ルート・ファイル・システムを AdvFS へ変換する方法については,C.2 節を参照してください。 オペレーティング・システムの初期インストール時にルート・ファイル・システムとして AdvFS を使用する方については,『インストレーション・ガイド』を参照してください。

2.5.1    シングルユーザ・モードでのルート・ファイル・システムのマウント

システムがシングルユーザ・モードにブートされる際に,ルート・ファイル・システムは自動的に読み取り専用でマウントされます。 mount コマンドに -u オプションを使用すると,ルート・ファイルセットのマウント状態を read-only から read-write に変更することができます。

# mount -u /

ルート構成に変更を加える必要がある場合には,この手順を使用します。 たとえば,/etc/fstab ファイルの変更が必要な場合に使用します。 詳細については mount(8)を参照してください。

2.5.2    ルート・ドメイン名の変更

ルート・ドメインの名前は,他のドメインと同じ方法で変更できます (2.3.7 項を参照)。 ルート・ドメインの名前は,/etc/fdmns ディレクトリ内のディレクトリ名として,また /etc/fstab ファイルのルート・エントリとして格納されています。 ルート・ドメインの名前を変更した場合,両方をアップデートする必要があります。

2.5.3    ルート・ファイルセット名の変更

ルート・ファイルセット名の変更は,その他のファイルセットの名前を変更する手順と同様に行います (2.4.8 項を参照)。 ただし,複雑化する要因が 2 つあります。

このため,代わりのブート可能パーティションを使用して,変更しようとしているルート・ファイルセットを操作し,変更を行った後で,変更したファイルセットをルート・ファイルセットとしてリブートします。

ルート・ファイルセット名の変更手順は,以下のとおりです。

  1. 変更するもの以外のパーティションをブートします (UFS でも構いません)。

  2. 名前を変更しようとしているファイルセット用に,ブートしたパーティションの新しいエントリを /etc/fdmns ディレクトリに作成します。

  3. 新しいディレクトリへ移動して,元のファイルセットを保持するデバイスへのシンボリック・リンクを作成します。

  4. renamefset コマンドでルート・ファイルセット名を変更します。

  5. /etc/fstabファイルをアップデートするために,名前を変更したルート・ファイルセットを適当なディレクトリに一時的にマウントします。

  6. fstab エントリを変更して,新しいルート・ファイルセット名を反映させます。

  7. システムをシャットダウンします。

  8. 元の AdvFS システムでリブートします。

次の例では,ルート・ファイルセットの名前を root_fs から new_root に変更しています。 ルート・ファイルセットは,/dev/disk/dsk2aroot_domain ドメインにあるものとします。

  1. 変更するもの以外のデバイスをブートします。

  2. tmp_root_domain のエントリを /etc/fdmns ディレクトリに作成します。

    #mkdir /etc/fdmns/tmp_root_domain
    

  3. 新しいディレクトリに移動して,tmp_root_domain に対するシンボリック・リンクを作成します。

    # cd /etc/fdmns/tmp_root_domain 
    # ln -s /dev/disk/dsk2a 
    

  4. ファイルセット名を root_fs から new_root に変更します。

    # renamefset tmp_root_domain root_fs new_root 
    

  5. 変更したルート・ファイルセットをマウントして /etc/fstab ファイルをアップデートします。

    #mount tmp_root_domain#new_root /mnt
    

  6. /mnt/etc/fstab 内のtmp_root_domain のエントリを vi エディタを使って編集します。

    # cd /mnt/etc 
    # vi fstab 
     
    

    /etc/fstab ファイルで,次の行を探します。

    root_domain#root_fs / advfs rw,userquota,groupquota 0 2 
    

    この行を次のように変更します。

    root_domain#new_root / advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    

  7. システムをシャットダウンします。

    # shutdown -h now
    

  8. AdvFS システムをリブートします。

注意

ルート・ドメインおよびファイルセットの名前を変更した後 /etc/fstab ファイルのエントリの変更を忘れると,ブート時にマルチユーザ・モードに入れなくなります。 この場合,シングルユーザ・モードで /etc/fstab ファイルを編集してください。

2.6    ファイル回復のためのゴミ箱の設定

オプションの AdvFS Utilities を使用できる環境では,各エンドユーザは必要に応じて,削除したファイルのコピーを保存するようにシステムを設定することが可能です。 すなわち,ファイルセット内の 1 つ以上のディレクトリに,ゴミ箱ディレクトリを付加することができます。 こうしてゴミ箱を付加したディレクトリから削除したすべてのファイルは,対応するゴミ箱ディレクトリに自動的に移動されます。 その結果,ゴミ箱付きのディレクトリから削除したファイルの最も新しいバージョンを,mv コマンドで元のディレクトリに戻すことができます。

ただし,ゴミ箱ディレクトリには欠点もあります。 バックアップ媒体を使用せずにファイルを復元できる反面,ファイル削除時のディスクへの書き込み処理が増えます。

ゴミ箱ディレクトリの設定には root 権限は不要ですが,次の点に留意する必要があります。

表 2-1 は,ゴミ箱の設定と管理に使用するコマンドと,その機能を示しています。

表 2-1:  ゴミ箱関連コマンド

コマンド 説明
mktrashcan ゴミ箱を作成する。
shtrashcan ゴミ箱の内容を表示する。
rmtrashcan ゴミ箱ディレクトリを削除する。

たとえば,booklist ディレクトリにゴミ箱ディレクトリ keeper を設定するには,次のコマンドを実行します。

# mkdir keeper
# mktrashcan keeper /booklist
   'keeper' attached to '/booklist'

ファイルを削除し,ゴミ箱の内容を確認する手順は次のとおりです。

# rm old_titles
# shtrashcan /booklist
   '//keeper' attached to '/booklist'
# cd keeper
# ls
   old_titles

ゴミ箱とディレクトリの関係設定を解除するには,次のコマンドを実行します。

# rmtrashcan /booklist
   '/booklist' detached