6    フル・インストレーションの実行

この章では,フル・インストレーションの起動手順と,フル・インストレーション・セットアップ処理に必要なすべての情報の指定方法を,順を追って説明します。

フル・インストレーション手順の要約

必要な準備作業をすべて実行し,開始できる状態であることを確認してから,この手順を開始してください。

  1. プロセッサに固有のコンソール環境変数を設定します (6.2 節)。

  2. すべてのプロセッサに共通の標準コンソール環境変数を設定します (6.3 節)。

  3. 配布メディアからシステムをブートします (6.4 節)。

  4. フル・インストレーション・インタフェースが要求する情報を設定します (6.7 節)。

  5. 選択内容が希望どおりになっているか確認します。 必要であれば,前に戻って選択内容を変更します (6.15 節)。

  6. 適用するインストレーションの最終確認を行い,ソフトウェアのインストレーションを開始します (6.16 節)。

  7. WLS (Worldwide Support Software) ソフトウェアを CD-ROM からインストールする場合は,CD-ROM を交換します (6.17.3 項)。

  8. カーネルに組み込むカーネル構成要素を選択します (省略可能) (6.18 節)。

  9. 新しくインストールされたシステムにログインします (6.19 節)。

  10. インストレーション・ログ・ファイルを調べます (6.20 節)。

  11. 使用できるようにシステムをセットアップして構成します。 これでフル・インストレーションは完了です (第 7 章)。

6.1    インストレーションを開始する前に

フル・インストレーションを開始する前に,第 5 章で説明したすべての準備作業を行ってください。 最後の準備作業はシステム・ファームウェアの更新なので,システムはコンソール・モード (>>> プロンプト) になっているはずです。 システムがコンソール・モードになっていない場合は,shutdown -h now コマンドを実行してください。

注意

フル・インストレーションでは,インストール先のディスク上のユーザ・ファイルやデータ・ファイルは保存されないため,インストレーションを開始する前に現在のオペレーティング・システムのバックアップを取っていることを確認してください。 エラーが発生してオペレーティング・システムを正常にインストールできない場合は,以前のバージョンのオペレーティング・システムをリストアしなければならないことがあります。

6.2    [ステップ 1]: プロセッサに固有のコンソール環境変数の設定

システムのタイプによっては,すべてのプロセッサで設定する標準のコンソール変数 (6.3 節を参照) の他に,いくつかの特殊なコンソール環境変数の設定が必要になります。

次の手順に従って,プロセッサに固有のコンソール環境変数の設定が必要かどうかを判断してください。

  1. ハードウェアのフロント・パネルの社名ロゴを探して,使用しているプロセッサの種類を調べてください。

  2. そのプロセッサが 表 6-1 にあるか探してください。 そのプロセッサが見つかった場合は,ステップ 3 に進みます。 そのプロセッサが 表 6-1 になかった場合は,コマンドを実行せず,6.3 節に進みます。

  3. 使用しているプロセッサに対応する,表 6-1 内のコマンドを実行します。

    注意

    表 6-1 の情報は,完全で正確であるように注意を払っていますが,ハードウェアのドキュメントもあわせて確認し,ご使用のシステム・タイプに他の変数が必要でないか確認してから,フル・インストレーションを開始してください。 ハードウェアのドキュメントはシステム・タイプごとにカスタマイズされており,サポートされているコンソール環境変数の最終的な情報源になっています。

表 6-1:  プロセッサ固有のコンソール変数

プロセッサ コンソール変数を設定するコマンド

  • AlphaServer 800

  • AlphaServer 1200

  • AlphaServer 2100/2100A

  • AlphaServer 4000/4100A

  • AlphaServer 4100A

>>> show bus_probe_algorithm

bus_probe_algorithm old

>>> set bus_probe_algorithm new

>>> init

  • AlphaServer 1000,1000A

>>> show bus_probe_algorithm

bus_probe_algorithm old

>>> set bus_probe_algorithm new

>>> init

>>> set boot_file ""

  • AlphaStation 500

  • AlphaStation 600/600A

  • EB64+,EB66+,EB164 の各シングルボード・コンピュータ

  • Personal Workstation XP1000

>>> boot_file ""

  • Personal Workstation 433au,500au,600au

  • Ultimate Workstation 533-au2

>>> set os_type unix

>>> init

  • AlphaServer 8200

  • AlphaServer 8400

>>> set boot_reset on

>>> set os_type unix

>>> set console serial

6.3    [ステップ 2]: すべてのプロセッサに共通の標準コンソール環境変数の設定

次のコンソール環境変数を,すべてのプロセッサで設定します。

  1. boot_osflags 変数をクリアします。

    >>> set boot_osflags ""
    

  2. 次のコマンドを入力して,インストレーション時にシステムがクラッシュしたり,電源障害が発生した場合に,システムが必ずコンソール・プロンプト (>>>) に戻るように設定します。

    >>> set auto_action halt
    [脚注 10]
     
    

注意

大部分のプロセッサは,ソフトウェアがロードされた後,自動的にリブートします。 他のユーザや顧客に代ってオペレーティング・システムをインストールしている場合には,この機能を使用しないようにすることもできます。 自動リブートを使用不可にすると,インストレーション・インタフェースを実行し,ソフトウェアをロードしてから,実際のユーザにシステムを渡し,ユーザがシステムをブートしたり,ホストおよびサイトに固有の情報を入力したりできます。

自動リブートを使用不可にするには,次のコマンドを入力します。

>>> set boot_osflags h

AlphaServer 8400 プロセッサは,自動リブートをサポートしていません。

6.4    [ステップ 3]: システムのブート

ここでは CD-ROM からのブート方法を説明します。 この手順は,サポートされるすべてのシステムに当てはまります。 ネットワーク上でリモート・インストレーション・サービス (RIS) サーバからインストレーションを実行する場合は,ネットワーク・ブート手順について『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。 システムのブートで障害が発生した場合は,使用しているプロセッサのハードウェア・ドキュメントを参照してください。 ハードウェア関連の障害ではない場合は,『システム管理ガイド』を参照してください。 『システム管理ガイド』には,汎用カーネル (/genvmunix) のブートや,代替のカスタム・カーネルのブートについての説明があります。

オペレーティング・システム CD-ROM からシステムをブートするには,以下の手順を実行します。

  1. Operating System, Volume 1」というラベルの CD-ROM を CD-ROM ドライブに挿入します。

  2. init コマンドをまだ入力していない場合は入力します。

    >>> init
    

  3. 次のコマンドを入力して,CD-ROM ドライブのコンソール・デバイス名を確認します。

    >>> show device
    

    システム・タイプに応じて,次のようなデバイス情報の一覧表が表示されます。

    dka0.0.0.0.0               DKA0                           RZ28
    dkb0.0.0.1.0               DKB0                           RZ28
    dkc0.0.0.2.0               DKC0                           RZ26
    dkc100.1.0.2.0             DKC100                         RZ26
    dkc200.2.0.2.0             DKC200                         RZ26
    dkc300.3.0.2.0             DKC300                         RZ26
    dke100.1.0.4.0             DKE100                         RRD43   <==
    mka500.0.0.0.0             MKA500                         TLZ04
    mke0.0.0.4.0               MKE0                           TZ85
    ewa0.0.0.6.0               EWA0              08-00-2B-2C-CE-DE
    p_d0.7.0.3.0                                          Bus ID 7
    pka0.7.0.0.0               PKA0                  SCSI Bus ID 7
    pkb0.7.0.1.0               PKB0                  SCSI Bus ID 7
    pkc0.7.0.2.0               PKC0                  SCSI Bus ID 7
    pke0.7.0.4.0               PKE0                  SCSI Bus ID 7
    

    左から 3 番目の欄に RRD または CD-ROM という文字列がある行を探してください。 これらの文字列は,CD-ROM デバイスを意味します。 また,この表の 2 番目の欄は,システム上の各デバイスに割り当てられているコンソール・デバイス名を示します。

    この例では,RRD43 CD-ROM のコンソール・デバイス名は DKE100 です。 次のステップの boot コマンドで,このデバイス名を指定します。

  4. 次の構文で boot コマンドを入力します。

    boot console_cdrom_device_name

    コンソール cdrom_device_name は,3 で取得した名前です。 この例では,次のコマンドを入力してシステムを CD-ROM デバイスからブートします。

    >>> boot dke100
    

    次のような出力が表示されます。

    (boot dke100.1.0.4.0)
    block 0 of dke100.1.0.4.0 is a valid boot block
    reading 16 blocks from dke100.1.0.4.0
    bootstrap code read in
    base = 1ee000, image_start = 0, image_bytes = 2000
    initializing HWRPB at 2000
    initializing page table at 1e0000
    initializing machine state
    setting affinity to the primary CPU
    jumping to bootstrap code
     
    UNIX boot - Fri Aug 23 15:49:49 EDT 2002
                  
    .
    .
    .
    Starting installation from CD-ROM. Please wait

    注意

    ブート処理には数分かかります。 ハードウェアによって異なるメッセージがいくつか表示されます。 複雑なシステム (周辺デバイスが多いなど) ほど,ブート処理に時間がかかります。

これで,システムのブートが完了します。 インストレーション・プロセスは,6.5 節に続きます。

6.5    システム・ブート完了 -- ユーザ・インタフェース言語の選択

グラフィカル・ディスプレイを備えたシステムでシステム・ブートが完了すると,インストレーション画面の表示に使用する言語を次の中から選択できます。

この選択を行うと,インストレーション・ウィンドウとダイアログ・ボックスは選択した言語で表示されます。 インストレーション・プロセスは 6.6 節 で説明するように続行されます。

6.6    Welcome 画面

インストレーションのユーザ・インタフェースを表示する言語を選択すると,Welcome メッセージが表示されます。

6.7    [ステップ 4]: フル・インストレーションに必要なセットアップ情報の指定

フル・インストレーション時に指定する必要のある情報を 表 6-2 に示します。

指定する情報は,ユーザ・インタフェースに関係なく同じです。 ただし,情報が要求される順序が異なることがあります。 たとえば,グラフィカル・インタフェースでは,最初に,ホスト固有情報の入力が求められます。 テキスト・ベース・インタフェースでは,最初に,ワールドワイド言語サポート・ソフトウェアをインストールするかどうかが質問されます。

表 6-2:  フル・インストレーションで指定する情報

フル・インストレーションで要求される情報 ユーザの動作
ホスト情報 (Host Information)

CD-ROM からインストールしている場合は,次の情報を指定します。

インストレーションのセットアップ中にこの情報を入力しなかった場合,後で構成フェーズになってから,この情報の入力が要求されます。 6.8 節6.9 節,および 6.10 節で,ホスト固有情報とサイト固有情報を入力するためのガイドラインを示します。

RIS サーバからオペレーティング・システムをインストールしている場合,ホスト情報とサイト情報は,サーバから自動的に取得されます。

root パスワード (root Password) root ユーザのパスワードを設定します。 インストレーションのセットアップ中にパスワードを入力しなかった場合,システム構成に入る前 (リブート後) に,パスワードの設定と確認が要求されます。 効果的なパスワードを選択するためのガイドラインを,6.11 節に示します。
ソフトウェアの選択 (Software Selection) インストールするソフトウェア・サブセットのタイプを選択します。 省略時は必須ソフトウェア・サブセットのみがインストールされますが,インストールしたいオプション・ソフトウェアを選択することも,すべての必須ソフトウェア・サブセットとすべてのオプションのソフトウェア・サブセットをインストールするように指定することもできます。 サブセットの選択オプションについては,6.12 節で説明します。
ワールドワイド言語サポート (Worldwide Language Support) 追加の言語ソフトウェアをインストールするかどうかを指定します。 テキスト・ベース・インタフェースでは,処理の最初にこの判断を求められます。 グラフィカル・ユーザ・インタフェースでは,ソフトウェア選択ステップ中に,使用する言語を選択するように求められます。
ファイル・システム・レイアウト (File System Layout) 省略時のファイル・システム・レイアウトを使用するか,それとも / (ルート),/usr/var,および i18n のファイル・システムと swap 領域に関して,ファイル・システム・レイアウトをカスタマイズするかを決定します。 シングルディスクにオペレーティング・システムをインストールし,省略時のファイル・システム・レイアウトを使用したい場合は,省略時設定を受けいれることができます。 ファイル・システム・レイアウトのオプションについては,6.14 節で説明します。 インストールに使用する各ディスク上の LSM (Logical Storage Manager) ボリュームにインストールするためのオプションについては,6.14.4 項で説明します。
カーネル・オプション (Kernel Component Options) カーネルに組み込むカーネル構成要素のタイプを選択します。 必須のカーネル構成要素のみ,必須構成要素と選択したオプションの構成要素,またはすべての必須構成要素とすべてのオプション構成要素のいずれかを選択できます。 カーネル・オプションについては,6.18 節で説明します。 カーネル構成要素の選択をカスタマイズするオプションを選択すると,最初のシステム・リブート後に,この作業を実行することになります。

フル・インストレーション・プロシージャは,6.8 節で始まり,6.16 節で終わります。 これらの節では,グラフィカル・インタフェースでの手順を中心に説明していますが,テキスト・ベース・インタフェースでも同じガイドラインを使用する必要があります。 ただし,情報を指定する方法が異なる場合は明記しています。

注意

他のユーザや顧客に代ってオペレーティング・システムをインストールする場合には,ホスト固有情報やサイト固有情報の入力を避けなければならないこともあります。 このような場合には,次のようにして対処できます。

  1. コンソール環境変数 boot_osflagshalt を設定します (6.3 節を参照)。

  2. ホスト名,日付や時刻,ロケーションや地域,root パスワードを入力しないでください。 フル・インストレーション・プロシージャはソフトウェア・サブセットのロード後,この情報を要求するために停止します。 これにより,このシステムのエンド・ユーザは,システムをブートして自分のホスト固有情報とサイト固有情報を指定することができます。

6.8    ホスト名の設定

ホスト名は,ネットワーク上でシステムを識別するために使用されます。

グラフィカル・インタフェースでは,さまざまなホスト固有情報とサイト固有情報が,図 6-2 に示す「Host Information」ダイアログ・ボックスに表示されます。 このダイアログ・ボックスの残りのフィールドの情報を指定する方法については,6.9 節6.10 節を参照してください。

図 6-2:  「Host Information」ダイアログ・ボックス

ホスト名を指定しなかった場合,システムのリブート後,最適化カーネルの構築前にフル・インストレーションが停止し,ホスト名の入力をユーザに求めます。

6.8.1    ホスト名選択のガイドライン

ホスト名を選択する上でのガイドラインを,以下に示します。

6.8.2    ホスト名の例

表 6-3 に,正しいホスト名と正しくないホスト名の例を示します。

表 6-3:  正しいホスト名と正しくないホスト名の例

正しいホスト名 正しくないホスト名
mysystem generic または binary [脚注 11]
y2k1-system.com 2001-system.com
system1 1.system
xyz-college.edu xyz_college.edu

6.9    日付と時刻の設定

システムの日付を,次の順で入力します。

07 06 200107 06 01 というフォーマットと順序で入力された数字は,どちらも 2001 年 7 月 6 日を表します。 テキスト・ベース・インタフェースでは,これらの数字をハイフン ( - ) で区切る必要があります。 たとえば,07-06-01 のように入力します。

システム時刻は,次の順で,2 組の 2 桁の数字 (24 時間表記を使用) を入力して設定します。

たとえば,hh フィールドに入力された 14 という数値は,午後 2 時を表します。 また,mm フィールドに入力された 06 という数値は,6 分を表します。

日付と時刻のどちらかを入力すると,もう一方も入力する必要があります。 日付と時刻を入力すると,システムの日付とクロックがすぐに設定されます。

日付と時刻を指定せず,リブートの前にシステムが停止するように設定していない場合は,フル・インストレーション・プロシージャは,システムのリブート後,最適化カーネルの構築前に停止し,現在の日付と時刻の入力をユーザに求めます。

6.10    ロケーションと地域 (以前のタイム・ゾーン) の設定

Version 5.0 のオペレーティング・システムから,タイム・ゾーンの命名規則が,地域/ロケーションという形式 (たとえば,Asia/TokyoPacific/Honolulu) になりました。 地域は大陸または海洋の名前で,ロケーションは,その地域内の主な都市またはロケールの名前です。 以前のバージョンのオペレーティング・システムでは,国/タイム・ゾーンというスタイル (たとえば,US/Eastern) が使用されていました。 すべての /etc/zoneinfo ディレクトリとタイム・ゾーン・ファイルは互換性を維持するために今でも利用できますが,多くのファイルはリネーム後の対応ファイルにハード・リンクされています。

指定したロケーションと地域は,タイム・ゾーンの設定に使用されます。 自分のサイトの地理上の位置を最も正確に表すロケーションと地域を選択する必要があります。 日本語ロケールの場合,省略時のロケーションは,アジア/東京 (Asia/Tokyo) です。 他のユーザの代りにインストレーションを行っている場合は,ロケーションと地域に none を設定することもできます。

ロケーションと地域を指定せず,リブートの前にシステムが停止するように設定 (6.6 節を参照) していない場合は,フル・インストレーション・プロシージャはシステムのリブート後に停止し,ロケーションと地域の情報の入力をユーザに求めます。

6.11    root パスワードの設定

UNIX オペレーティング・システムでは,スーパユーザは,一般ユーザより高い権限を持つことができます。 スーパユーザは,root ユーザとも呼ばれます。 スーパユーザは通常,システム管理作業の責任者です。 このユーザはすべてのファイルとすべてのデバイスにアクセスでき,オペレーティング・システムにどのような変更でも加えることができます。 このため,root ユーザ (root アカウント) には,特別なパスワードが必要になります。 6.11.1 項で,効果的な root パスワードを選択するためのガイドラインを説明します。

図 6-3 に,「Set Root Password」ダイアログ・ボックスを示します。

図 6-3:  「Set Root Password」ダイアログ・ボックス

次の規則に従うパスワードを選択してください。

パスワードを入力する際,セキュリティ上の理由で,パスワードは画面には表示されません。 確認のために,新しいパスワードを再入力する必要があります。 インストール後,最初に root としてシステムにログインする際に必要ですので,このパスワードを憶えておいてください。 システムのインストール後,root のパスワードはいつでも変更できます (passwd コマンドを使用)。

root パスワードを指定せず,リブートの前にシステムが停止するように設定していない場合は,フル・インストレーション・プロシージャは,システムのリブート後,最適化カーネルの構築前に停止し,root のパスワードの入力をユーザに求めます。

6.11.1    効果的なパスワード選択のガイドライン

root パスワードを選択する際には,以下の単語や情報は避けてください。

知人が推測できるパスワードは選択しないでください。 root ユーザはオペレーティング・システムに対する絶対的な権限を持っているため,root パスワードは特に慎重に保護しなければなりません。 基本的なガイドラインは,自分は憶えられるが,他人が推測しづらいパスワードにすることです。

6.11.2    root パスワードの例

表 6-4 に,推奨ガイドラインを守っているパスワードと,守っていないパスワードの例を示します。 これらのパスワードは,あくまでも例として示しています。 実際のパスワードとしては使用しないでください。

表 6-4:  root パスワードの例

正しい root パスワード お勧めできないパスワード ガイドラインに反している理由
OhU8one2too johnsmith 本当の名前をそのまま小文字で使用しているため
UrGr8t!! 123MainStreet 住所であるため
parTe2nite MyDogLassie ペットの名前であるため
99Pnt.99% 6July58 家族の誕生日であるため

6.12    インストールするソフトウェア・タイプの選択

フル・インストレーションで,ホスト情報の指定,日付と時刻の設定,root パスワードの指定に続くステップは,インストールするソフトウェアのタイプの選択です。 グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合は,図 6-4 に示す「Software Selection」ダイアログ・ボックスが表示されます。 テキスト・ベース・インタフェースでも,同じ情報が表示されます。

図 6-4:  「Software Selection」ダイアログ・ボックス

表 6-5 に,4 種類のソフトウェア・サブセットを示します。 各ソフトウェア・サブセットについては,付録 C で説明します。

表 6-5:  ソフトウェア選択オプションの説明

オプション 説明
最小構成 (Mandatory Only) このオプションは,ベース・オペレーティング・システムの実行に最低限必要なソフトウェア・サブセットをインストールするためのものです。 必須ソフトウェア・サブセットは必ずインストールされます。 このオプションは,グラフィカル・ユーザ・インタフェースでの省略時のオプションです。
すべてのソフトウェア (All Software) このオプションは,ベース・オペレーティング・システムのすべての必須ソフトウェア・サブセットと,ワールドワイド言語サポート (追加の国別サポートを選択しない場合) と別キットの TCR (TruCluster Server) ソフトウェアを除くすべてのオプション・ソフトウェア・サブセットをインストールするためのものです。
カスタマイズ (Customize) このオプションでは,必須ソフトウェアの他に,どのオプション・ソフトウェア・サブセットをインストールするかを選択することができます。 6.12.1 項で,ソフトウェア選択処理のカスタマイズについてのヒントを説明します。
国別サポート (Country Support) このオプションは,グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用しているときに,1 つ以上の追加の言語サポートを選択するためのものです。 各国には,オペレーティング・システムの地域化を可能とするソフトウェア・サブセット群があります。 省略時の設定は,米国の英語です。 すべてのベース・オペレーティング・システム・サブセットと,1 つ以上の追加の言語をインストールした場合,選択された各国の WLS サブセットがすべてインストールされます。

必須ソフトウェア・サブセット,オプション・ソフトウェア・サブセット,WLS ソフトウェア・サブセットについては,付録 Cを参照してください。

6.12.1    オプションのソフトウェア選択に関するヒント

「カスタマイズ」オプションを選択し,[リストの編集...] ボタンをクリックすると,図 6-5 に示す「Software Section: Edit List」ダイアログ・ボックスが表示されます。 このダイアログ・ボックスでは,インストールするオプションのソフトウェアを選択します。

注意

ダイアログ・ボックスの下部の説明は,各ソフトウェア・サブセットの現在の状態を示しています。 ソフトウェア・カテゴリ内に含まれている各ソフトウェア・サブセットを表示するには,プラス記号 (+) をクリックします。 カテゴリをクローズするには,マイナス記号 (-) をクリックします。

図 6-5:  「Software Subsets: Edit List」ダイアログ・ボックス

ソフトウェア・サブセットを選択するときには,ソフトウェア・サブセット・カテゴリ (「General Applications」など) または,カテゴリ内の個々のソフトウェア・サブセット (「DOS Tools」など) を選択することができます。 別の,まだ選択されていないソフトウェア・サブセットに依存するソフトウェア・サブセットを選択すると,この依存対象のサブセットも自動的に選択されます。 依存対象のあるサブセットを選択すると,次のようなメッセージのダイアログ・ボックスが表示されます。

The chosen subset(s) require one or more additional subset(s)
which will be loaded automatically:
  * Doc. Preparation Tools  (OSFDCMT540)

このように 1 つずつソフトウェア・サブセット (またはカテゴリ) を選択する方法以外に,まず一番上のカテゴリ (「Tru64 UNIX V5.1B Operating System」) を選択してから,必要としないカテゴリまたはサブセットをクリックして選択項目から外す方法があります。 その際,すべてのサブセットを追加するとシステムに不必要なソフトウェアまで含まれることになるため,キーボード・タイプ,X サーバ,フォントに関連するハードウェア固有サブセットはすべて削除してください。 なお,このユーザ・インタフェースでは,システムのハードウェア構成上必須のソフトウェア・サブセットを削除することはできません。

次の手順で,インストールするオプション・ソフトウェアを選択してください。

  1. 付録 Cで,すべてのソフトウェア・サブセットの説明を参照してください。

  2. 「Software Selection」ダイアログ・ボックスで,「カスタマイズ」を選択してから,[リストの編集...] ボタンをクリックします。

  3. オプションのソフトウェア・サブセットを選択します。 サブセットの選択が完了したら,ダイアログ・ボックスの下部に表示される,//usr/var ファイル・システムに必要なディスク・スペース (「必要なディスク容量」) の情報に注意してください。 この情報を使用して,インストールするソフトウェアを十分格納できる大きさのディスクおよびパーティションを選択してください。

    注意

    フル・インストレーション処理が提示する推奨パーティションを使用したくない場合は,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』のディスク・パーティションの設定についての情報を参照してください。 そして,「必要なディスク容量」の値を使用して,この後フル・インストレーション処理中に選択するディスクをどれにするかを決めます。

6.13    カーネルに組み込むカーネル構成要素のタイプの選択

フル・インストレーションの次のステップでは,インストレーション処理の終盤の構成フェーズでカーネルに組み込むカーネル構成要素のタイプを選択します。 インタフェースに関係なく,カーネル構成要素の組み込みに関するオプションは 3 つあります。 グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合,図 6-6 のダイアログ・ボックスが表示されます。

図 6-6:  「Kernel Options」ダイアログ・ボックス

表 6-6 に,カーネル構成要素オプションを示します。

表 6-6:  カーネル選択オプションの説明

オプション 説明
最小構成 (Mandatory Only) このオプションは,インストールするソフトウェア・サブセットを正常に動作させる上で最低限の必須カーネル構成要素カーネルに組み込むためのものです。 グラフィカル・ユーザ・インタフェースの場合,これが省略時のオプションです。
すべてのオプション (All Options) このオプションは,カーネルにすべてのカーネル構成要素を組み込むためのものです。 各カーネル構成要素は,追加のコードをカーネルにロードします。 このため,すべてのオプションを選択すると,カーネルのサイズが著しく,不必要に増加し,性能に影響を与える可能性があります。
カスタマイズ (Customize) このオプションを選択すると,システムのリブート後 (6.17.2 項を参照) に表示される「Kernel Options Selection」メニューから,特定のカーネル構成要素を選択できます。 メニューに表示されるカーネル構成要素は,インストールされているソフトウェア・サブセットによって異なります。 カーネル構成要素の選択については,6.18 節 を参照してください。

6.14    ファイル・システム・レイアウトのタイプの選択

インストールするソフトウェア・サブセットを選択した後,そのソフトウェア・サブセットをどこにインストールするかを決定する必要があります。 ファイル・システム・レイアウトの選択には,標準の UNIX ファイル・システム (//usr/var,1 つ以上の追加言語を選択した場合 /usr/i18n) とスワップ領域をインストールするディスクおよびディスク・パーティションの選択が含まれます。 そして,各ファイル・システムのファイル・システム・タイプとして AdvFS (Advanced File System) を割り当てる (省略時の設定) か,UFS (UNIX ファイル・システム) を割り当てるかを決定します。 フル・インストレーションでは,省略時のファイル・システム・レイアウトを使用するか,ファイル・システム・レイアウトを完全にカスタマイズするかを選択できます。

図 6-7 のダイアログ・ボックスに,ファイル・システム・レイアウトの選択肢を示します。

図 6-7:  「Select File System Layout」ダイアログ・ボックス

6.14.1 項に,省略時のファイル・システム・レイアウトを選択すべき状況について説明します。 また,6.14.2 項に,ファイル・システム・レイアウトのカスタマイズを選択すべき状況について説明します。

6.14.1    省略時のファイル・システム・レイアウトを使用するケース

次の条件に当てはまる場合は,省略時のファイル・システム・レイアウトを使用できます。

省略時のファイル・システム・レイアウトを使用したい場合は,使用しているインタフェースにかかわらず,次の事項について選択を行う必要があります。

  1. オペレーティング・システムをインストールするディスクを 1 つ選択する。

    選択するディスクには,1 GB 以上の容量が必要です (1 GB のディスクにインストールする場合の制限については,直前の「注意」を参照してください)。 推奨するパーティション・テーブルが,選択したディスクに適用されます。 表 6-7 に示すように,パーティションのサイズはディスクの容量に応じて異なります。

    表 6-7:  ディスク容量ごとの推奨パーティション・テーブル

      ディスク容量ごとのファイル・システム・サイズ
    ファイル・システムの名前と位置 1 GB ディスク 2 GB ディスク 3 GB 以上のディスク
    / (ルート) パーティション a 128 MB 256 MB 384 MB
    /usr パーティション g 745 MB 1490 MB 2235 MB
    スワップ領域パーティション b 128 MB 256 MB [脚注 12] 384 MB [脚注 12]

  2. すべてのファイル・システム用にファイル・システム・タイプを 1 つだけ選択する。

    省略時設定の AdvFS (Advanced File System) か,UFS (UNIX ファイル・システム) が選択できます。 UFS と AdvFS の説明および比較については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。

    注意

    システムをクラスタのメンバとして使用する場合は,ファイル・システム・タイプには AdvFS を選択しなければなりません。

  3. LSM ボリュームにインストールするかどうかを決定する。

    LSM ボリュームにインストールするかどうかを決定する際の参考になる LSM (Logical Storage Manager) の情報については,6.14.4 項を参照してください。

    注意

    LSM ボリュームはクラスタでは使われないため,システムがクラスタのメンバになる場合は,LSM ボリュームへインストールするオプションは選択しないでください。

省略時のファイル・システム・レイアウトを選択した場合の表示は,使用しているインタフェースによって異なります。

省略時のファイル・システム・レイアウトでの指定が完了したら,6.15 節に進みます。

6.14.2    ファイル・システム・レイアウトのカスタマイズが必要になるケース

次のいずれかの条件に当てはまる場合は,ファイル・システム・レイアウトをカスタマイズする必要があります。

カスタム・ファイル・システム・レイアウトを使用する場合は,次の事項について選択する必要があります。

  1. LSM ボリュームにインストールするかどうかを決定する。

    LSM を使用するかどうかを決定する際の参考になる LSM の詳細については,6.14.4 項を参照してください。

    注意

    LSM ボリュームはクラスタでは使われないため,システムがクラスタのメンバになる場合は,LSM ボリュームへインストールするオプションは選択しないでください。

  2. 各ファイル・システム用のディスクおよびディスク・パーティションを選択する。

    / (ルート),/usr/var,および /usr/i18n (/usr/i18n をディレクトリではなくファイル・システムにする場合) の各ファイル・システムを格納するディスクおよびディスク・パーティションを選択しなければなりません。 /usr/i18n ファイル・システムには,追加の言語サポートを選択した場合に,国際化に必要なサブセットがインストールされます。

    / (ルート) ファイル・システムは,選択した格納先ディスクの a パーティションに置かなければなりません。 これを変更することはできません。 /var ファイル・システムと /usr/i18n ファイル・システムは,独立したディスク・パーティションにしないで,/usr ファイル・システムに含めることもできます。

    物理ディスクと dsk* デバイス名の対応が分からないときは,[ディスクの確認...] ボタンをクリックして,「identify disk」ダイアログ・ボックス (図 6-10 を参照) を表示します。 テキスト・ベース・インタフェースを使用している場合は,ping disk_name コマンドを使用します。

    システム上ですでに以前のバージョンのオペレーティング・システムが稼働している場合は,フル・インストレーションの際に既存のデバイス名データベースをそのまま残す方法について,A.4 節を参照してください。

  3. 1 つまたは 2 つのスワップ領域用にディスクおよびディスク・パーティションを選択する。

    スワップ領域は 2 つまで割り当てることができます。 各スワップ領域は,異なるディスクに置くことをお勧めします。 また,スワップ領域用には最も高速のディスクを選択することをお勧めします。 必要なスワップ領域の計算方法や,スワップ領域を配置する位置については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。

    参考までに,推奨ファイル・システム・レイアウトでは,省略時のスワップ・パーティション・サイズとして,1 GB ディスクでは 128 MB,2 GB ディスクでは 256 MB,3 GB 以上のディスクでは 384 MB を使用します。

  4. 各ファイル・システムのファイル・システム・タイプを選択する。

    各ファイル・システムに対して,省略時設定である AdvFS (Advanced File System),または UFS (UNIX ファイル・システム) を選択できます。 UFS と AdvFS の説明および比較については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。

    注意

    このシステムをクラスタのメンバとして組み込む場合は,すべてのファイル・システムのファイル・システム・タイプとして AdvFS を使用しなければなりません。

ファイル・システム・レイアウトのカスタマイズ時の表示は,使用しているユーザ・インタフェースによって異なります。

カスタム・ファイル・システム・レイアウトの指定が終わったら,6.15 節に進みます。

6.14.3    カスタム・ファイル・システム・レイアウト用のディスク・パーティションの設定

カスタム・ファイル・システム・レイアウトに対応するためにディスク・パーティションの再設定が必要な場合,どちらのユーザ・インタフェースからも,ディスク構成ツールへアクセスできます。

ディスク・パーティションの設定は,経験のあるユーザだけが行う作業なので,ディスク構成アプリケーション (UNIX シェルから実行する作業) と,disklabel コマンドの使用方法については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』で説明しています。

6.14.4    LSM ボリュームへのインストレーションが必要になるケース

ディスク 1 台で省略時のファイル・システム・レイアウトを選択したか,2 台以上のディスクでファイル・システム・レイアウトをカスタマイズするかにかかわらず,システムを LSM ボリュームにインストールするかどうかを決める必要があります。

LSM オプションを選択すると,LSM が自動的に構成され,//usr,および /var ファイル・システムおよびスワップ領域が,ディスク・パーティションではなく LSM ボリューム内に直接構成されます。 LSM は,統合化されたホスト・ベースのディスク・ストレージ管理ツールで,データの消失を防ぎ,ディスクの入出力性能を向上させ,ディスク構成をカスタマイズします。 LSM は,ボリュームと呼ばれる仮想ディスクを,UNIX システム・ディスク上に作成します。 ボリュームは,ファイル・システム,データベース,あるいは他のアプリケーションが使用するデータが格納された特殊デバイスです。 LSM は,物理ディスクとアプリケーションの間にボリュームを透過的に配置します。 これによりアプリケーションは,物理ディスクではなく,ボリュームに対して操作を行うことになります。 フル・インストレーション・プロシージャは,LSM に必要なソフトウェア・サブセットを自動的にインストールします。 LSM を使用するかどうかを判断するための情報が必要な場合は,4.1.3 項の LSM の機能の概要を参照してください。 LSM のミラーリングおよびストライピング機能を使用するには,個別のライセンスが必要です。 LSM プライベート・リージョン用に使用するパーティションの選択については,6.14.4.1 項を参照してください。

LSM ボリュームはクラスタでは使われないため,システムがクラスタのメンバになる場合は,LSM ボリュームへインストールするオプションは選択しないでください。

フル・インストレーションでの LSM ボリュームへのインストレーションは,一般的でも必須でもありません。 ただし,以前にこの機能を使用しており,LSM をインストールするために別の作業をする手間を省くために,インストレーション・オプションとして提供されるようになりました。

注意

6.14.4.2 項 では,LSM を使用するように構成されていたシステムに対して,フル・インストレーション・プロシージャが行う特殊な処理について説明します。

6.14.4.1    LSM プライベート・リージョン用のパーティションの選択

LSM を選択した場合,インストールする各ディスクに対して,プライベート・リージョン・パーティションを選択する必要があります。 LSM はこれらのプライベート・リージョンを使用して,システム全体の構成情報を保持します。 複数のディスク上に複数のプライベート・リージョンを保持することにより,ディスクの故障のようなめったに発生しない障害に対するバックアップ機能が確保されます。 LSM プライベート・リージョンには,2 MB のディスク・スペースが必要です。 このため,LSM プライベート・リージョン用のパーティションは,少なくとも 2 MB のサイズが必要です。 パーティションは大きくても構いませんが,余ったスペースは他の用途には利用できません。 フル・インストレーション・インタフェースでの推奨ディスク・パーティション・レイアウトでは,すべてのディスクに 2 MB の d パーティションを用意します。 必要な場合は,このパーティションを LSM プライベート・リージョンとして使用します。

6.14.4.2    LSM で構成されていたシステムでの特殊な処理

LSM がすでに構成されているシステムに対してフル・インストレーションで LSM をインストールおよび構成する場合は,新しく LSM を選択できるように,クリーンアップ・プロシージャがシステムの準備を行います。 このプロシージャは,次のパーティションから LSM を削除して,フル・インストレーションでの選択内容が適用されるようにします。

このクリーンアップ・プロシージャは,フル・インストレーションでの選択内容で上書きされない既存の LSM 構成については,すべての情報 (ボリューム,プライベート・リージョン,ディスクなど) を保護します。 表 6-8に示す 4 つのLSM 構成要素として認識されない既存の LSM 情報は,すべて保護されます。 このクリーンアップ・プロシージャは,現在のブート・ディスクとは異なるディスクにインストールしている場合でも,すべての LSM パーティションに適用されます。

何らかの理由で構成要素が削除できなかった場合,フル・インストレーション・プロシージャは終了してシングルユーザ・モードになり,エラー・メッセージを表示します。 この時点で各種のコマンドが使用できるようになるので,既存の LSM 構成を調べて,手作業で障害の原因を取り除き,インストレーションを再スタートできるようにします。 既存の LSM 構成を調べるコマンドや,手作業で障害の原因を取り除く方法については,G.1.1.1 項を参照してください。

6.14.5    以前に使用されていたディスク上のデータの保護

単一のディスクへのオペレーティング・システムのインストール時に,既存のパーティション上のデータを保護したい場合は,既存のパーティションのサイズやオフセットが変更されないように,「ファイルシステム構成のカスタマイズ」オプションを選択します。

カスタム・オプションを選択すると,//usr/var ファイル・システムと,swap 領域をインストールするディスク・パーティションを選択できます。 選択したパーティションにデータ・ファイルやユーザ・ファイルが含まれている場合,そのデータは,新しいファイル・システムの作成時に失われます (重ね書きされます)。 保護したいデータを含むパーティションとオーバラップするパーティションを選択してこれらのファイル・システムを作成しても,同じ結果になります。 また,ディスク・ラベル内のパーティション情報を変更して,データが収められているパーティションのサイズとオフセットを変更しても,そのパーティション内のデータは失われます。 ただし,データが収められているパーティションに手を加えなければ,そのパーティション内のデータは保護されます。

インストレーション時に手が加えられなかったパーティション内のデータは,新しくインストールされたシステムでも使用できます。 このパーティションにファイル・システムが存在する場合は,そのパーティションをマウントして再びアクセスすることができます。 ファイル・システムのマウントについての詳細は, mount(8) を参照してください。

注意

フル・インストレーション・プロシージャは,ユーザ・データやユーザ・ファイル・システムが収められているパーティションで /etc/fstab ファイルを更新することはありません。 これらのパーティションをマウントしてユーザからデータを利用できるようにするには,フル・インストレーションの完了後,データが収められているパーティションのエントリを新しい /etc/fstab ファイルに手作業で追加します。

6.15    [ステップ 5]: 選択内容の確認

Disk Configuration アプリケーションや disklabel コマンドでディスク・パーティションを再構成していない限り,システムの日付と時刻以外は何も変更されていません。 このステップは,ディスクとソフトウェアに関する選択内容を確認する最後のチャンスとなります。 グラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用している場合は,ディスクとファイル・システム・レイアウトの選択後,図 6-12 に示す「Installation Summary」ダイアログ・ボックスが表示されます。 図の要約データは,カスタム・ファイル・システム・レイアウト選択時のものです。 どの情報も,このダイアログ・ボックスから直接変更できます。 すべての選択内容が正しければ,[完了] をクリックします。 もう一度,インストレーションの開始の確認が行われます。

テキスト・ベース・インタフェースを使用している場合は,ファイル・システム・レイアウトの確認が求められます。 入力した内容を再表示して,必要に応じて変更するには,history という単語を入力します。

図 6-12:  「Installation Summary」ダイアログ・ボックス

6.16    [ステップ 6]: 最終確認

すべての選択内容を確認した後,インストレーションの開始の確認がもう一度行われます。

インストレーションを取り消す方法については,6.16.1 項 を参照してください。

6.16.1    フル・インストレーションの取り消しと再スタート

この時点で,何らかの理由でインストレーションを開始したくない場合は,インストレーションを取り消すことができます。

フル・インストレーション・セットアップ処理をシングルユーザ・モードから再スタートするには,使用しているインタフェースにかかわらず,次のコマンドを入力します。

# cd /
# restart

システムがグラフィックス機能を備えているにもかかわらず,インストレーション・セットアップ処理をテキスト・ベース・インタフェースで再スタートしたい場合は,次のコマンドを入力します。

# cd /
# restart nogui

6.17    その後の処理

「Ready to Begin Installation」ダイアログ・ボックスの [了解] をクリックするか,テキスト・ベース・インタフェースで Return キーを押すと,フル・インストレーション処理でシステムの変更が開始されます。 最初に ファイル・システムが作成されてソフトウェアがロードされてから,システムのリブートソフトウェアの構成フェーズが実行されます。

インストレーション処理のこの段階で求められるユーザ操作は,次のとおりです。

6.17.1    ファイル・システムの作成とソフトウェア・サブセットのロードのフェーズ

実際にインストレーションが開始されると,//usr/var/usr/i18n の各ファイル・システムと swap 領域が,選択したディスクおよびパーティション上に作成されます。 ファイル・システムの作成が終ると,ソフトウェア・サブセットのロード・フェーズになります。 進行状況のインジケータには各フェーズの処理の完了した割合が表示され,処理の進行度が知らされます。

テキスト・ベース・インタフェースを使用している場合は,次のようなメッセージが表示されます。

Continuing installation...
 
Applying the selected disklabel on device dsk0
 
Creating the root file system on device dsk0a
 
Creating the usr file system on device dsk0g
 
Creating the var area in the usr file system
 
Creating the swap1 file system on device dsk0b
 
The installation procedure will now load a total of 31 software subsets
on your disk partitions. This total includes the following products:
 
        * 31 Base Operating System subsets
 
This process will take from 45 to 120 minutes to complete depending on
your distribution media and processor type.
 
LOADING THE BASE OPERATING SYSTEM SOFTWARE SUBSETS
 
 

注意

フル・インストレーション処理は,//usr/var の各ファイル・システム用の UFS ファイル・システムを作成する際には,省略時の i ノード密度は使用しません。 ファイル・システムの利用可能なスペースを最大限にするために,低い密度が使用されます。

6.17.2    システム・リブート・フェーズ

新しく作成されたシステム・ディスクからブートするために必要なブート・コマンドが,画面上に表示されます。 コンソール・モード・プロンプト (>>>) に対して,画面上に表示されたブート・コマンドを入力してください (例 6-5 に示されているブート変数は例ですので,実際のシステムにこの変数をそのまま入力しないよう注意してください)。

例 6-5:  ブート・コマンドの例

Issue the following console commands to set your default bootpath
variable and to boot your system disk to multiuser:
 
        >>> set boot_osflags A
        >>> set bootdef_dev DKA0
        >>> boot
 
syncing disks... done
CPU 0: Halting... (transferring to monitor)
 
?05 HLT INSTR
  PC= FFFFFC00.0044CA90 PSL= 00000000.00000005

今後のために,このブート・コマンドをここに書き留めておいてください。

>>>
>>>
>>>
 

ソフトウェアの構成処理は,システムのブート後に開始されます。 また,カーネル構築プロシージャは,ソフトウェアの構成後に開始されます。

6.17.3    ソフトウェア構成フェーズ

ソフトウェアの構成処理は,システム・ディスクからのリブート後に自動的に行われます。 この処理では,ソフトウェア・サブセットの調整や,ホスト名,root パスワード,およびタイム・ゾーンの設定,システムのチューニング,そしてオペレーティング・システムとハードウェアで使用するための最適化カーネルの構築が行われます。

インストレーション・プロシージャの早い段階で,必須のホスト固有情報やサイト固有情報 (root パスワード,システムのホスト名,日付と時刻,ロケーションとタイム・ゾーンなど) を指定しなかった場合,このフェーズでこれらの情報を入力するように求められます。

CD-ROM からインストレーションでワールドワイド言語サポート (WLS) ソフトウェアのインストールを選択している場合は,図 6-14 に示すダイアログ・ボックスが表示されます。 ドライブから「Operating System, Volume 1」というラベルの CD-ROM を取り出し,「Associated Products, Volume 1」というラベルの CD-ROM を挿入します。 この CD-ROM には,WLS ソフトウェアが収められています。

何らかの理由でこの CD-ROM が使用できない場合は,この時点では WLS のインストレーションを省略し,後で wwinstall スクリプトを使用して WLS をインストールすることもできます。 wwinstall スクリプトの実行方法については,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。

注意

RIS サーバから WLS をインストールしている場合は,インストール先のシステムが登録されている RIS 領域ですでに WLS ソフトウェア・サブセットが利用できるため,入力は求められません。 また,WLS サブセットはシステムがリブートされる前にインストールされています。

図 6-14:  「Software Installation」ダイアログ・ボックス

フル・インストレーションのセットアップ時にオプションのカーネル構成要素を選択するオプションを選択した場合は,6.18 節に進んで,カーネル・オプションを選択します。

6.18    [ステップ 7]: カーネル構成要素の選択 (オプション)

フル・インストレーション・セットアップ時に,必須のカーネル構成要素またはすべてのカーネル構成要素をインストールするオプションを選択した場合は,システム構成に必要なカーネル構成要素を使用して,カーネルの構築が自動的に行われます。 カーネルの構築後は,6.19 節に進んで,初めてシステムにログインする方法を参照してください。 オプションのカーネル構成要素を使用して後でカーネルを構築したい場合は,詳細について doconfig(8) を参照してください。

フル・インストレーション・セットアップ時に,カーネル構成要素の選択をカスタマイズするオプションを選択した場合は,システムのリブート後に,「Kernel Option Selection」メニューが表示されます。

「Kernel Option Selection」メニューにリストされるカーネル構成要素は,インストールされているソフトウェア・サブセットにより異なります。 インストレーション・プロシージャでは,カーネルに組み込む構成要素と,除外する構成要素を指定することができます。 フル・インストレーションの完了後にカーネル構成要素をインストールする必要がある場合は, doconfig(8) コマンドを使用します。

各カーネル構成要素についての説明が必要な場合は,「Help」オプションを使用して,オンライン・ヘルプを表示できます。

「Kernel Option Selection」メニューは,次のように表示されます。

    Kernel Option Selection
--------------------------------------------------------------
        1       System V Devices
        2       NTP V3 Kernel Phase Lock Loop (NTP_TIME)
        3       Kernel Breakpoint Debugger (KDEBUG)
        4       Packetfilter driver (PACKETFILTER)
        5       Point-to-Point Protocol (PPP)
        6       STREAMS pckt module (PCKT)
        7       Data Link Bridge (DLPI V2.0 Service Class 1)
        8       X/Open Transport Interface (XTISO, TIMOD, TIRDWR)
        9       ISO 9660 Compact Disc File System (CDFS)
        10      Audit Subsystem
        11      Alpha CPU performance/profiler (/dev/pfcntr)
        12      ACL Subsystem
        13      All of the above
        14      None of the above
        15      Help
        16      Display all options again
--------------------------------------------------------------
 
Enter your choices.
 
Choices (for example, 1 2 4-6) [14]: 5 9

注意

ISO 9660 Compact Disc File System (CDFS) は,動的ローディングが可能なカーネル・モジュールです。 ここで選択すると,このモジュールをカーネルに組み込むことができます。 組み込まなかった場合,このモジュールは必要に応じてロードされます。

カーネル構成要素の選択を入力し終わると,選択したオプションのリストが表示され,選択内容の確認を求められます。 たとえば,次のように表示されます。

You selected the following kernel options:
 
        Point-to-Point Protocol (PPP)
        ISO 9660 Compact Disc File System (CDFS)
 
Is that correct? (y/n) [y]:

6.18.1    必要に応じてカーネル・ファイルを編集する (オプション)

カーネル・オプションを選択して確認した後で,カーネル・ファイルを編集することができます。 カーネル構成ファイルは,カーネルに組み込まれる構成要素を定義するためのテキスト・ファイルであり,/usr/sys/conf/SYSTEM_NAME というファイル名になります。

注意

このファイルの編集は可能ですが,編集はお勧めしません。

ed テキスト・エディタ (および vi テキスト・エディタ) の使用方法については,『Tru64 UNIX ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

次のようなプロンプトが表示されます。

Do you want to edit the configuration file? (y/n) [n]:
 

ここで n を入力するか,Return キーを押して (省略時の応答を採用),構成ファイルの編集を省略すると,6.18.2 項に示すように,カーネルの構築処理が始まります。

y を入力してファイルを編集する場合は,次のメッセージが表示されます。

Using 'ed' to edit the configuration file.  Press return
when ready, or type 'quit' to skip the editing session:

ここで,編集セッションを省略してカーネル構築処理を開始したい場合は quit と入力し,ファイルを編集したい場合は Return キーを押します。 編集結果を保存して編集セッションを終了すると,カーネルの構築が始まります。

6.18.2    カーネル構築フェーズ

サブセットの構成が終ると,インストレーション・プロシージャは doconfig ユーティリティを呼び出して,ハードウェアに必要なデバイス特殊ファイルを自動的に作成し,カーネルを構築します。 次のようなメッセージが表示されます。

The system will now automatically build a kernel
and then reboot. This will take approximately 15
minutes, depending on the processor type.
When  the login prompt appears after the system
has rebooted, use 'root' as the  login name and
the SUPERUSER  password that was entered during
this procedure, to log into the system.
 
 
*** PERFORMING KERNEL BUILD ***
Working....Fri Aug 23 15:45:24 EST 2002
Working....Fri Aug 23 15:47:24 EST 2002
Working....Fri Aug 23 15:49:25 EST 2002
Working....Fri Aug 23 15:51:26 EST 2002
 

6.18.3    システムがシングルユーザ・モードでブートされた場合の操作

boot_osflags 変数が 6.17.2 項で説明したとおりに正しく設定されていない場合,システムがシングルユーザ・モードでブートされることがあります。 この場合,システムをマルチユーザ・モードに切り換えるには,ルート・プロンプト ( # ) に対して Ctrl/d を入力します。 この結果,実行レベルを入力するように求められます。 次の 4 つの実行レベルが利用できます。

init コマンドを使用して,システムをマルチユーザ・モードに切り換えます。

# init 3

6.19    [ステップ 8]: root ユーザとしてシステムへログイン

最終のシステム・リブート後の次のステップは,新しくインストールされたシステムへ root ユーザとしてログインすることです。 新しくインストールされたシステムでは,root というユーザ名だけが認識されます。 プロンプトが表示されたら,前のステップで設定した root パスワードを入力します。

6.20    [ステップ 9]: インストレーション・ログ・ファイルの調査

システムを一般向けに構成する前に,ソフトウェアが正しくインストールされて構成されたことを確認するために,インストレーション・ログ・ファイルを調査することをお勧めします。 インストレーション・エラーが発生した場合は,ログ・ファイルにリストされます。 付録 F を参照してください。

6.21    フル・インストレーションの完了

インストレーション・ログ・ファイルの調査が終わったら,フル・インストレーションは完了です。 第 7 章に進んで,通常運用できるようにシステムを構成するための SysMan (システム管理) ツールの説明を参照してください。