5    サーバの作成と管理

この章では,プリント・システムのスプーラとスーパバイザの作成および管理方法について説明します。この章は次の節に分かれています。

5.1    スーパバイザとスプーラの作成

プリント・システムを構成する最初の手順の 1 つは,スーパバイザとスプーラの作成です。これらのサーバは,ユーザによって実行されたプリント・ジョブの流れを制御します。つまり,スーパバイザとスプーラはユーザから実行されたジョブを受け取り,プリント・データをプリンタに渡し,プリンタとユーザ間で制御情報と状態情報を送受信します。

プリント・システム・サーバ・プロセスには,それぞれ,それに関連付けられたデータベースがあります。このデータベースにはサーバの構成属性が含まれています。

実行するサーバ・プロセスの作成は,次の 2 つの手順で行います。

  1. サーバ用のオブジェクト・データベースを作成する。

  2. サーバを起動する。

5.1.1    オブジェクト・データベースの作成

オブジェクト・データベースを作成するには,pdmakedb コマンドを使用します。オブジェクト・データベースはサーバ・プロセスを起動する前に作成する必要があります。

pdmakedb コマンドは,はじめは単一のオブジェクト,つまり,対応するサーバ・オブジェクトを含むオブジェクト・データベースを作成します。データベースの名前は,サーバ・オブジェクトの名前でもあります (-n オプションに注意)。このコマンドはサーバ・オブジェクトに対して,省略時の属性と,管理者がオプションを使用して指定した任意の属性を追加します。

指定するデータベースが既に存在する場合,pdmakedb コマンドはエラー・メッセージを表示して終了します。

サーバを作成するときには次の構文を使用してください。

pdmakedb [-A adminACL] [- h] [-nserverName] [-s spoolDir] [- t serverType]

-A adminACL

サーバに対するアクセス制御リスト (ACL) を指定します。省略時の値は {name group} です。

-h

pdmakedb で,サポートされるオプションのリストを表示します。

-n serverName

サーバの名前の他に,オブジェクト・データベースの名前を指定します。このオプションには次の規則が適用されます。

サーバ名を指定しないとき,サーバの省略時の名前は,スプーラの場合は ホスト名_spl になり,スーパバイザの場合は ホスト名_sup になります。

-s spoolDir

-s オプションは,サーバが,印刷予定のドキュメントをスプールする場所を指定します。スプール・ディレクトリは任意の有効な UNIX ディレクトリ・パス名にできます。省略時の値は /var/spool/pd/serverName です (serverName は -n オプションで指定される)。

-t serverType

-t オプションは,オブジェクト・データベースのタイプ,つまり,スプーラまたはスーパバイザを指定します。serverType として有効な値は,スプーラの場合は SPL,スーパバイザの場合は SUP です。

-v

このオプションを指定すると,pdmakedb はコマンド行で渡された属性の正当性を確認して,メッセージを表示します。

pdmakedb プログラムは,コマンド行で指定しない任意のオプションに対して省略時の値を提供します。次に示すのは,pdmakedb を使用してスプーラとスーパバイザを作成する例です。オブジェクト・データベースは root アカウントから作成する必要があります。ACL にユーザを追加する必要があるときは,本書のセキュリティの章で説明されている手順を使用してください。

次の例は pdmakedb コマンドの使用方法を示しています。

前述のコマンドを実行すると,結果として,サーバ・データべースの blue_supblue_splblue_obg が作成されます。

5.1.2    オブジェクト・データベース・データの表示

pdshowdb コマンドを使用すると,サーバ・オブジェクトに現在設定されているすべての属性の値が表示されます。表示される属性には,構成属性と非構成属性の両方,および,ユーザから見える属性に加えて,内部属性が含まれます。このコマンドは,どのように使用してもオブジェクト・データベースを変更しません。

pdshowdb がサーバ・オブジェクト属性を表示するために使用するフォーマットは,-v オプション・セットを指定した pdmakedb および pdmoddb で使用するのと同じフォーマットです。

pdshowdb コマンドのコマンド行構文は次のとおりです。

pdshowdb [-e] [-h] [-n serverName]

-e

サーバを起動するために使用する実行可能ファイルの絶対パスを表示します。

-h

pdshowdb コマンドで使用可能なオプションを表示します。

-n serverName

オブジェクト・データベースの名前とそれに対応するサーバを指定します。

5.1.3    既存のオブジェクト・データベースの変更

pdmoddb コマンドを使用すると,既存のオブジェクト・データベースを変更できます。このコマンドは,属性が既にデータベースに存在している場合,コマンド行に指定された属性を変更します。指定された属性が存在しない場合,pdmoddb コマンドはその属性を作成して,指定された値を割り当てます。また,このコマンドは,まだ存在しておらず,コマンド行に指定されていない省略時の属性があれば,それを追加します。

pdmoddb コマンドは,処理中のサーバが使用しているデータベースを変更するために使用することはできません。サーバは,pdmoddb でデータベース・ファイルにアクセスする前にシャットダウンする必要があります。

指定されたデータベースが存在しないか,使用中である場合,pdmoddb コマンドはエラー・メッセージを表示して終了します。

pdmoddb コマンドのコマンド行構文は次のとおりです。

pdmoddb [-A adminACL] [- h] [-nserverName] [-s spoolDIR] [- t serverType]

-A adminACL

サーバに対するアクセス制御リスト (ACL) を指定します。 省略時の値は {name group} です。

-h

pdmoddb で,サポートされているオプションのリストを表示します。

-n serverName

変更しようとしているサーバ名の他に,オブジェクト・データベースの名前も指定します。

-s spoolDir

-s オプションは,サーバが,印刷予定のドキュメントをスプールする場所を指定します。スプール・ディレクトリ spoolDir は,任意の有効な UNIX ディレクトリ・パス名にすることができます。省略時の値は /var/spool/pd/serverName です (serverName は -n オプションで指定される)。

-t serverType

-t オプションは,オブジェクト・データベースのタイプを,SPL または SUP のいずれかに指定します。

-v

このオプションを指定すると,pdmoddbは,コマンド行で渡される属性の正当性を確認して, メッセージを表示します。

5.1.4    オブジェクト・データベースのバックアップ

不注意によるデータ喪失やデータ破損に備えて,プリント・システムのオブジェクト・データベースを定期的にバックアップしておくとよいでしょう。障害が発生して,オブジェクト・データベースにアクセスできなくなったり,オブジェクト・データベースが破損した場合は,最新のバックアップからシステムをリストアできるため,プリント・システム環境を最初から再作成する必要がありません。

次の領域のバックアップについて検討してください。

サーバ・データベースは,サーバが稼働していないときにバックアップをとるようにしてください。これにより,バックアップ・コピーが内部的に一貫していることが保証されます。定期バックアップは,バックアップの間,プリント・システムを一時的にシャットダウンできる時間に,毎日または毎週実行します。

5.2    サーバ・オブジェクト属性の構成

設定や変更ができるサーバ・オブジェクト属性は数多くあります。次に,属性を示し,それらの属性がサーバに対してどのような効果があるのかを説明します。

access-control-list

スプーラまたはスーパバイザの許可されたユーザを指定します。

descriptor

サーバを説明しているテキスト文字列です。

job-attributes-visible-to-all

pdls コマンド,および pdq コマンドを使用したときに,ジョブの所有者以外にも見えるジョブ属性とドキュメント属性のリストです。

message

サーバの状態を示すテキスト文字列です。

notification-profile

ユーザに通知されるイベントと,その通知方法を指定します。

hold-jobs-interrupted-by-printer-failure

再起動後にスプーラに戻されたジョブを,保留 (held) 状態または処理待ち (pending) 状態にするかどうかを指定します。

filter-definition

スーパバイザでサポートされている 1 つ以上の翻訳フィルタまたは変更フィルタを定義して,そのフィルタの起動方法を定義します。PostScript プリンタにテキスト・ドキュメントを印刷したい場合は,8.2 節で説明しているように,text-to-PostScript 翻訳フィルタを設定する必要があります。

5.2.1    サーバ属性の設定例

次の例は,スプーラおよびスーパバイザ用に共通なサーバ属性のいくつかを設定する方法を示します。

5.3    TruCluster 環境におけるサーバの構成

スプーラおよびスーパーバイザ (サーバ) は,TruCluster Server 環境の高可用性シングル・インスタンス・アプリケーションとして構成することができます。シングル・インスタンス・アプリケーションは,クラスタのただ 1 つのメンバ上でインストールされ,構成され,そして実行されますが,クラスタの全メンバで使用することができます。

高可用性サーバは,TruCluster Server CAA (Cluster Application Availability) サブシステムを使用するように構成されます。CAA は,クラスタ内でサーバによって要求されたリソースを監視し,リソースの必要性に合ったクラスタ・メンバ上で実行するようにします。サーバを実行中のクラスタ・メンバや,要求されたリソースに障害が発生した場合には,CAA は再配置, つまり要求されたリソースを持つ他のメンバにサーバをフェイルオーバします。

サーバを高可用性シングル・インスタンスとして構成および実行するには,次の準備が必要となります。

これらの各項目については,以降の各項で説明します。詳細については,『TruCluster Server 高可用性アプリケーション・ガイド』を参照してください。

5.3.1    リソース・プロファイル

リソース・プロファイルは,CAA によるアプリケーションの起動,管理,および監視方法を定義します。

Advanced Printing Software サーバのサブセット (APXSVRxxx) を構成するときには,TruCluster ソフトウェアがシステムにインストールされているかどうかを判断します。TruCluster Server ソフトウェアがインストールされている場合には,構成スクリプトが CAA リソース・ファイル apx-default.cap/var/cluster/caa/profile ディレクトリにインストールします。これは,プリント環境で動作するサーバおよびスーパーバイザを表すリソース・プロファイルです。ユーザが作成するスプーラおよびスーパーバイザは,apx-default リソースに格納されます。追加のリソースを作成して,スプーラおよびスーパーバイザを apx-default リソース・プロファイルから作成したリソースへ移動することもできます。

5.3.2    処理スクリプト

処理スクリプトは,アプリケーションの起動方法,アプリケーションの停止およびフェイルオーバ前のクリーンアップ方法,およびアプリケーションが実行中であるかどうかの確認方法を指定します。

Advanced Printing Software を TruCluster Server ソフトウェアが存在するシステムにインストールする場合には,/var/cluster/caa/script/apx-default.scr 処理スクリプトがインストールされます。

5.3.3    リソースの登録

リソース・プロファイルおよび処理スクリプトのインストール後,CAA にリソースを登録する必要があります。apx-default リソースを登録するには,caa_register コマンドを使用してください。

# /usr/sbin/caa_register apx-default

この CAA リソースを一旦登録すると,サーバを起動およびシャットダウンするには CAA コマンドを使用しなくてはなりません。pdsplrpdspvr,または pdshutdown コマンドを使用しないでください。次の項で,CAA コマンドがどのようにサーバを起動およびシャットダウンするかを説明します。

5.3.4    リソースの起動と停止

CAA に apx-default を登録すると,caa_start コマンドを使用してリソースを起動できます。

# /usr/sbin/caa_start apx-default

リソースが起動されると次のようなメッセージが表示されます。

Attempting to start `apx-default` on member `membername`
Start of `apx-default` on member `membername` succeeded.
 

アプリケーションを停止するには,caa_stop コマンドを使用します。

# /usr/sbin/caa_stop apx-default

5.3.5    apx-default リソースへのサーバの追加

クラスタ環境でサーバを構成後,リソースに追加のスプーラおよびスーパーバイザが必要になる場合があります。省略時のリソースにサーバを追加するには,まず,追加したいスプーラおよびスーパーバイザを起動します。/usr/pd/scripts/pd_get_started スクリプトまたは pdmakedbpdsplr,および pdspvr コマンドを使用することができます。新しいサーバが作成され,apx-default リソースの一部となります。

5.3.6    Advanced Printing クラスタ環境のカスタマイズ

リソースを再配置したり,新しいリソースを作成したり,リソースを変更および削除したりして, CAA のプリント環境をカスタマイズすることができます。以降の各項で,これらのトピックについて説明します。

5.3.6.1    リソースの再配置

リソースを再配置する場合には,あるクラスタ・メンバから他のクラスタ・メンバへリソースを移動します。リソースを再配置するには,caa_relocate コマンドを使用してください。リソースの再配置先のクラスタ・メンバを指定したり,CAA に有効なメンバを判断させることができます。リソースを再配置する場合には,関連するサーバをシャットダウンしてから新しいメンバで再起動します。

次の例で、リソースを再配置するための caa_relocate コマンドの使い方を示します。

apx-default リソースをメンバ goofy からメンバ daffy に再配置するには,次のコマンドを使用します。

# caa_relocate apx-default -c daffy

このコマンドに対して次のようなメッセージが表示されます。

Attempting to stop `apx-default` on member `goofy`
Stop of `apx-default` on member `goofy` succeeded.
Attempting to start `apx-default` on member `daffy`
Start of `apx-default` on member `daffy` succeeded.

アプリケーション・リソース・プロファイルに定義された配置ポリシに従ってリソースを再配置するには,オプションを指定しないで caa_relocate コマンドを使用してください。

# caa_relocate apx-default

5.3.6.2    CAA リソースを管理するための apx_caa_setup スクリプトの使用

ユーザの CAA のプリント環境をカスタマイズするには apx_caa_setup スクリプトを使用してください。このスクリプトは,/usr/pd/cluster ディレクトリにあり,次のことを行うことができます。

apx_caa_setup スクリプトのメイン・メニューを次に示します。

  Advanced Printing Software Cluster Setup
 
                        *** MAIN MENU ***
 
            1  Display CAA printing resources
 
            2  Create CAA printing resource
 
            3  Modify CAA printing resource
 
            4  Delete CAA printing resource
 
            5  Initialize CAA resources for Advanced Printing
 
            6  Exit
 
Enter the number that corresponds to your choice:[6]

CAA リソースの表示

Display CAA printing resources 機能により,Advanced Printing 環境のすべての CAA リソースを表示することができます。apx-default リソースは,ユーザが作成したリソースと同様に表示されます。各リソースには,リソースの一部であるサーバのリストが含まれます。

Enter the number that corresponds to your choice:[6] 1
 
    Currently defined Advanced Printing CAA Resources
 
     1  mikes: green_spl green_sup 
     2  robs: rob_spl rob_sup
     3  orange: orange_spl orange_sup
     4  BLExit: root_sup root_spl
     5  blue: blue_sup blue_spl
 
        apx-default: daffy_spl daffy_sup

CAA プリント・リソースの作成

apx_caa_setup スクリプトを使用して CAA リソースを作成する場合には,作成するリソースと関連付けるスプーラおよびスーパーバイザについての問い合わせ後,そのリソースが CAA に登録されます。次に,このプロセスの出力例を示します。

Enter the number that corresponds to your choice:[6] 2
 
    Currently defined Advanced Printing CAA Resources
 
     1  mikes: green_spl green_sup     
     2  robs: rob_spl rob_sup
     3  orange: orange_spl orange_sup
     4  BLExit: root_sup root_spl
     5  blue: blue_sup blue_spl
 
        apx-default: daffy_spl daffy_sup
 
Enter a unique name for the new CAA resource: resourceX
 
Enter the names of one or more Advanced Printing spooler
or supervisors to be associated with the resource "resourceX":
 
  resourceX: orange_sup orange_spl
 
  Creating /var/cluster/caa/script/resourceX.scr ... 
  Creating /var/cluster/caa/profile/resourceX.cap ...
  Registering resourceX with CAA...

CAA プリント・リソースの変更

CAA プリント・リソースによって管理されているサーバを変更するには,apx_caa_setup スクリプトを使用してください。リソースを変更する場合には,サーバを追加するか,またはリソースからサーバを削除します。リソースからサーバを削除する場合,そのサーバは apx-default リソースに格納されます。

次の例では,2 つのサーバ,blue_sup および blue_spl を CAA プリント・リソース orange に追加する方法を示しています。サーバ orange_spl および orange_sup は既にリソースに関連付けられていますが,CAA リソース orange に他のものを追加する場合には, 再度入力しなくてはならないことに注意してください。このもともとのサーバを再入力しない場合には,サーバは apx-default リソースに戻されてしまいます。

Enter the number that corresponds to your choice:[6] 3
 
    Currently defined Advanced Printing CAA Resources
 
     1  mikes: green_spl green_sup
     2  robs: rob_spl rob_sup
     3  orange: orange_spl orange_sup
     4  BLExit: root_sup root_spl
     5  blue: blue_sup blue_spl
     6  apx_orange: orange_sup orange_spl
 
        apx-default: daffy_spl daffy_sup
 
Modify which resource? 3
Modify CAA map entry "orange"? ([y]/n)
 
Enter the names of one or more Advanced Printing spooler
or supervisors to be associated with the resource "orange":
 
  orange: orange_spl orange_sup blue_spl blue_sup
  Modifying resource orange...

CAA プリント・リソースの削除

apx_caa_setup スクリプトを使用して CAA プリント・リソースを削除すると,そのリソースは停止して,登録が取り消され,処理スクリプトおよびリソース・プロファイルが削除されます。

CAA プリント・リソースの初期化

CAA プリント・リソースを初期化する場合には,次のタスクが実行されます。

初期化中に表示される出力例を次に示します。

Enter the number that corresponds to your choice:[6] 5
 
The Advanced Printing CAA map file already exists.
This option performs the following tasks:
 
  - Disassociates all Advanced Printing spoolers and
    supervisors from named CAA resources.
 
  - Stops and unregisters printing resources, but leaves
    spoolers and supervisors running.
 
  - Deletes resource profiles and action scripts associated
    with printing resources defined in the
    /var/pd/config/apx_caa_map.conf file.
 
  - Creates a new, empty /var/pd/config/apx_caa_map.conf file.
 
  - Registers the apx-default resource.
    Do you want to initialize anyway? (y/[n])

5.3.7    1 つのメンバで実行するためのプリンタの構成

いくつかのプリンタは,ホストのシリアルまたはパラレル・ポートに直接接続されます。これらのプリンタは,そのホスト上で実行されているスーパーバイザによって制御されなくてはなりません。正しいクラスタ・メンバ上でスーパーバイザが実行されるようにするには,そのスーパーバイザに対して別個の CAA リソースを作成する必要があります。リソース・プロファイルには,次のように指定します。

物理プリンタ・オブジェクトの作成後,printer-associated-host 属性にプリンタをアクセスするホストの名前を設定します。

# pdset -c printer -x printer-associated-host=hostname printername

さらに,プリンタに関連付けられているスーパーバイザは,そのプリンタが直接接続されているホスト上で実行する必要があります。

printer-associated-host 属性で指定されている以外のホスト上で実行中のスーパーバイザからジョブをプリンタに送信すると,そのスーパーバイザは物理プリンタを使用不能にして,次の属性を設定します。

5.3.8    クラスタにおける LPD インバウンド・ゲートウェイ

LPD インバウンド・ゲートウェイは CAA アプリケーションとして構成されませんが,クラスタの各メンバ上で実行できます。LPD インバウンド・ゲートウェイを構成するには,/usr/pd/scripts/inbound_gw_config.sh スクリプトを実行します。このスクリプトはクラスタの各メンバ上で LPD インバウンド・ゲートウェイを構成し,rc.config ファイルを修正して,システムが再起動するたびに LPD インバウンド・ゲートウェイを再起動できるようにします。

/sbin/init.d/apxstart コマンドおよび stop コマンドによって LPD インバウンド・ゲートウェイを起動および停止します。

5.4    サーバの管理

この節では,スプーラおよびスーパバイザに対して実行できる管理タスクについて説明します。これらのタスクには,サーバの起動と停止,一時停止と再開,使用可能設定と使用不能設定,そして,削除も含まれます。

5.4.1    サーバの状態

サーバ属性の server-stateenabled は,サーバ・プロセスの状態を決定します。サーバ・プロセスは次の状態のいずれか 1 つになります。

server-state は,ready (処理可能) に設定されていても,サーバが使用不能の場合には,プリント・ジョブを受け付けません。

次のコマンドを使用して,サーバの状態を調べてください。

# pdls -c server blue_sup

次に示すように,このコマンドの省略時の設定では,server-state 属性と enabled 属性の両方を返します。

server-name server-state enabled 
----------- ------------ ------------ 
blue_sup   ready     yes 

5.4.2    サーバの起動

サーバの起動には,それぞれのサーバ・タイプに対する実行可能ファイルを実行することが含まれます。スタートアップ構文は,シェル・プロンプトでタイプできる文字列です。ただし,一般に,サーバの起動はシェル・スクリプトの形式で行い,ホストはそのシェル・スクリプト内部からスタートアップ構文を実行します。シェル・スクリプトは,管理者が作成するスタートアップ・スクリプトの一部にすることも,あるいは,UNIX システムのブート時に通常実行されるスクリプトにすることもできます。Tru64 UNIX システムでは,このファイルは /sbin/init.d/apx になります。

プリント・システム・サーバは UNIX デーモンに似た動きをします。プリント・システム・サーバは,ブート時に,ユーザからの入力なしに,シェル・スクリプトによって起動します。典型的な UNIX デーモンと同様,サーバはバックグラウンドで起動し,ランタイム・ディレクトリに対して相対的に動作します。スプーラまたはスーパバイザを起動するときには,root アカウントから起動する必要があります。

5.4.3    スプーラの起動

プリント・システムのスプーラを起動するコマンド構文は次のとおりです。

/usr/pd/lib/pdsplr [-a] [-c] [-d ODBpath] [-e emailAddress] [serverName]

-a

-a オプションは,クラッシュからの回復処理の一部として,オブジェクト・データベースをサーバが修復しなければならなかった後に行われるサーバのスタートアップ時だけに必要です。

-c

このオプションは,正常なシャットダウンの後のスタートアップ時に,データベースの完全性チェックを強制します (クラッシュ後の再起動時には,サーバはデータベースの完全性を自動的にチェックします)。

-d ODBpath

オブジェクト・データベース・ファイルの場所を指定します。サーバはスタートアップ時にサーバ名を必要とし,これによってオブジェクト・データベースの場所を特定できます。省略時の設定では,サーバは,オブジェクト・データベースがすべてのサーバ・オブジェクト・データベース用の標準位置 (/var/pd/odb) に存在すると想定します。

-e emailAddress

-e オプションは,サーバ・スタートアップ・エラーの通知を受け取る電子メール・アドレスを指定するために使用します。メール・アドレスを指定しない場合には,サーバ・スタートアップ・エラーは standard error および syslog に通知されます。

/usr/pd/lib/pdsplr -e someuser@somesystem.com myserver

次に示すのは,スプーラを起動する pdsplr コマンドの使用例です。

5.4.4    スーパバイザの起動

プリント・システムのスーパバイザを起動するためのコマンド構文は次のとおりです。

/usr/pd/lib/pdspvr [-a] [-c] [-dODBpath] [-eemailAddress] [serverName]

-a

このオプションは,クラッシュからの回復処理の一部としてオブジェクト・データベースをサーバが修復しなければならなかった後に行われるサーバ・スタートアップでの必須オプションです。

-c

-c オプションは,正常なシャットダウンの後のスタートアップ時に,データベースの完全性チェックを強制する,省略可能なオプションです。データベースが破損している可能性があるときには,-c オプションを使用するとよいでしょう。

-e emailAddress

-e オプションは,サーバ・スタートアップ・エラーの通知を受け取る電子メール・アドレスを指定するために使用します。電子メール・アドレスを指定しない場合には,サーバ・スタートアップ・エラーは standard error および syslog に通知されます。

プリント・システムのアウトバウンド・ゲートウェイ・スーパバイザを起動するためのオプションは,(前述の) スーパバイザ用のオプションと同じですが,コマンドが違います。アウトバウンド・ゲートウェイ・スーパバイザを起動するには,次のコマンドを使用してください。

# /usr/pd/lib/pdspvlpr 

次に示すのは,スーパバイザを起動する pdspvr コマンドと pdspvlpr コマンドの使用例です。

5.4.5    サーバを使用可能にする

はじめてサーバを作成して,起動した後,他のユーザから利用できるようにする前に,サーバを使用可能にする必要があります。

pdenable [-c server] [-mmessage_txt] [servername]

-m message text

このオプションには,サーバが使用可能になったときのメッセージを含めることができます。このメッセージは pdls コマンドで取得することができます。

次に示すのは,pdenable コマンドを使用してスプーラを使用可能にする例です。

5.4.6    サーバを使用不能にする

pddisable コマンドを使用するとサーバが使用不能になります。スプーラが使用不能にされると,それ以前に実行されたジョブはすべてスケジューリングされて,物理プリンタに渡されますが,新しいジョブの要求はすべて拒否されます。また,スーパバイザが使用不能にされると,スーパバイザによって処理中のジョブは最後まで処理が行われて,新しいジョブはすべて拒否されます。

pddisable コマンドの構文は次のとおりです。

pddisable [-c class_name] [-m message_txt] [-x extended_attribute_string] [-X attribute_filename] [-server name]

-c class_name

使用不能にしようとしているオブジェクトのクラスとタイプを指定します (この場合,クラスはサーバ)。

-m message text

このオプションを使用すると,pdls コマンドで取得できるメッセージを含めることができます。

-x extended_attribute_string

このオプションを使用すると,pddisable コマンドを実行したときに設定される「属性タイプ = 値」のペアを 1 つ以上指定できます。

-X attribute_filename

このオプションを使用すると,pddisable コマンドを実行したときに設定される「属性タイプ = 値」の一連のペアを含むファイルの名前を指定できます。

5.4.7    サーバからのジョブの消去

サーバからジョブを消去するには,pddeletepdclean の 2 つのコマンドが使用できます。pdclean コマンドは,1 つのサーバにあるすべてのジョブを消去します。pddelete コマンドは,1 つのサーバから名前を指定した 1 つ以上のジョブを消去するために使用します。

5.4.7.1    サーバからのジョブの削除

pddeleteコマンドは,1 つのサーバから名前を指定したジョブを 1 つ以上消去するときに使用します。

pddelete [-c job] [-x extended_attribute_string] [-X attribute_filename] [job_id]

-x extended_attribute_string

このオプションを使用すると,pddelete コマンドを実行したときに設定される「属性タイプ = 値」の一連のペアを指定できます。

-X attribute_filename

このオプションを使用すると,pddelete コマンドを実行したときに設定される「属性タイプ = 値」の一連のペアを含むファイルの名前を指定できます。

次に示すのは,pddelete コマンドを使用してサーバから特定のジョブを削除する例です。

5.4.7.2    スプーラからのすべてのジョブの消去

pdclean コマンドは 1 つのスプーラにあるすべてのジョブを消去します。pdclean を使用してスプーラからジョブを消去する際には,次の事項を考慮してください。

pdclean コマンドのフォーマットは次のとおりです。

pdclean [-c server] [-mmessage_txt] [servername]

-m message text

サーバ・メッセージ・テキストを設定します。pdls コマンドを使用すると,このメッセージを表示できます。

5.4.8    サーバの一時停止

スプーラを一時停止するには pdpause コマンドを使用します。スーパバイザを一時停止することはできません。スプーラが一時停止されると,ジョブをスーパバイザに引き渡しませんが,スプーラに関連付けられた論理プリンタは引き続き新しいジョブを受け付けます。

pdpause コマンドの構文は次のとおりです。

pdpause [-c server] [-m message_txt] [-x extended_attribute_string] [-X attribute_filename] [server_name ]

-m message text

このオプションには,サーバが一時停止されたときのメッセージを含めることができます。このメッセージは pdls コマンドで取得することができます。

-x extended_attribute_string

このオプションを使用すると,コマンドを実行したときに設定される「属性タイプ = 値」の一連のペアを指定できます。

-X attribute_filename

このオプションを使用すると,コマンドを実行したときに設定される「属性タイプ = 値」の一連のペアを含むファイルの名前を指定できます。

次に示すのは,pdpause コマンドを使用してサーバを一時停止する例です。

5.4.9    サーバの再開

pdresume コマンドを使用すると,pdpause コマンドによって一時停止されていたサーバの処理を再開できます。pdresume コマンドの構文は次のとおりです。

pdresume [-c server ] [-m message_txt] [-x extended_attribute_string] [-X attribute_filename] [server_name ]

-m message text

このオプションでは,サーバ処理が再開されたときのメッセージを含めることができます。このメッセージは pdls コマンドで取得することができます。

次に示すのは,pdresume コマンドを使用してサーバを再開する例です。

5.4.10    サーバのシャットダウン

pdshutdown コマンドを使用すると,サーバ・プロセスをシャットダウンできます。このコマンドが実行されると,スプーラとスーパバイザは自分自身を使用不能にしてから,when_time オプションの値で指定された方法によってシャットダウンします。

pdshutdown [-c server] [-w when_time] [-x extended_attribute_string] [-X attribute_filename] [server_name ]

-w when_time

このオプションは,サーバがシャットダウンされる前にどの程度の処理ができるかを指定します。次の引数が指定可能です。

次に示すのは,サーバを停止するために pdshutdown コマンドを使用する例です。

5.4.11    サーバの削除

pddelete コマンドを使用すると,サーバを削除できます。 サーバを削除するときには,次の項目を考慮してください。

サーバがスプーラの場合:

削除する予定のサーバがスーパバイザの場合:

pddelete コマンドを使用して,サーバを削除します。このコマンドの構文は次のとおりです。

pddelete [-c server] [server_name]