D    net コマンド

管理者は,ディスク共有,プリンタ共有,およびドメイン・ユーザ・アカウントについての情報を表示したり,それらの管理をするために,net コマンドを使用します。また,ユーザは,ディスク共有,プリンタ共有,およびドメイン・ユーザ・アカウントについての情報を要求するために,net コマンドを使用します。

Windows 95 クライアントでも,MS-DOS プロンプトから入力する net コマンドを提供していますが,これらのコマンドは,ディスク共有,プリンタ共有,およびドメイン・ユーザ・アカウントについての情報を表示するだけであり,管理のために使用することはできません。

net コマンドは,ASU ソフトウェアを実行しているシステムの Tru64 UNIX コマンド・プロンプトから,次のような形式で小文字で入力します。

# net command [/option]

入力するコマンド文字列が長い場合に,行の末尾で Enter キーを入力しないでください。そのまま入力を続ければ,テキストは自動的に画面上で改行されます。Enter キーは,コマンド文字列全体を入力し終わった場合にのみ入力してください。

表 D-1 で,ディスク共有,プリンタ共有,およびドメイン・ユーザ・アカウントの管理に使用する net コマンドについて簡単に説明します。

表 D-1:  net コマンドの説明

net コマンド 説明
access ASU サーバ資源のアクセス許可の表示または変更を行う。このコマンドを使用して,パイプやプリンタ・キューについてのアクセス許可の表示と変更を行う。その他すべてのタイプの資源に関するアクセス許可を管理するには,net perms コマンドを使用する。
accounts ドメイン内の ASU サーバの役割の表示,およびパスワードとログイン・ユーザの必要条件の表示や変更を行う。
admin リモート ASU サーバ上でコマンドを実行する。
auditing 資源の監査設定の表示および変更を行う。
browser ローカル・サーバから見えるドメインのリスト表示,またはドメイン内でアクティブなコンピュータのリスト表示を行う。
computer ドメイン内のコンピュータ・アカウントのリストの表示または変更を行う。このコマンドは,net computers と入力してもよい。
config 実行中の ASU server サービスに関する設定の表示または変更を行う。
continue 中断したサービスを再アクティブ化する。クライアントから入力した場合は,一時停止した共有プリンタを再アクティブ化する。
device デバイス名のリスト表示および共有プリンタの制御を行う。このコマンドは,オプションを付けずに使用した場合,特定 ASU サーバにある全共有プリンタの状態を表示する。プリンタ名オプションを付けて使用した場合は,指定のプリンタの状態のみを表示する。
file 全オープン共有ファイル名の表示,およびファイル・ロックがある場合には,各ファイルのファイル・ロック数の表示を行う。このコマンドは,クローズしている共有ファイルに対しても使用可能。オプションを付けずに使用した場合は,ASU サーバのオープン・ファイルをすべてリストする。このコマンドは,net files と入力してもよい。
group グローバル・グループの追加,表示,または変更を行う。このコマンドは,net groups と入力してもよい。
help ヘルプが参照できるネットワーク・コマンドおよびトピックの一覧を表示したり,特定のコマンドやトピックについてヘルプを提供する。
helpmsg ネットワーク・エラー・メッセージのヘルプを提供する。
localgroup ドメイン内のローカル・グループの追加,表示,または変更を行う。このコマンドは,net localgroups と入力してもよい。
logoff ネットワークからユーザ・アカウントをログオフする。
logon ドメインへのユーザ・アカウントのログイン,およびユーザのクライアントのユーザ名とパスワードの設定を行う。ユーザ名を指定しない場合,省略時のユーザ名は Tru64 UNIX システムのログイン名になる。
password ASU サーバ上またはドメイン内のユーザ・アカウントのパスワードを変更する。
pause サービスを中断する。一時停止できるサービスは,Alerter, Browser, EventLog, NetLogon, ReplicatorServer および TimeSource
perms ASU サーバ資源のアクセス許可および所有権情報の表示または変更を行う。このコマンドは,共有資源,ディレクトリ,およびファイルの操作に使用する。
print プリント・ジョブおよびプリンタ・キューの表示/制御を行う。プリンタ・キューのオプションの設定や変更も行う。
send ドメイン上の接続しているクライアントまたはネットワーク全体へメッセージを送信する。
session ASU サーバとクライアント間のセッションのリスト表示または切断を行う。このコマンドは,オプションを付けずに使用した場合,ローカル ASU サーバ上の全セッションについての情報を表示する。このコマンドは,net sessions と入力してもよい。
share 共有資源の作成,削除,変更,または表示を行う。このコマンドを使用して,クライアントが資源を使えるようにする。このコマンドは,オプションを付けずに使用した場合,ASU サーバ上の共有されている全資源についての情報を表示する。
sid アカウント名とそれに対応するセキュリティ識別子 (SID) 間の変換を行う。
start サービスを起動する。またはオプションを付けずに使用した場合は,実行中のサービスのリストを表示する。起動できるサービスは,Alerter, Browser, EventLog, NetLogon, ReplicatorServer および TimeSource
statistics 統計情報ログの表示またはクリアを行う。
status ASU サーバのコンピュータ名,構成設定,および共有資源のリストを表示する。
stop サービスを停止する。停止できるサービスは,Alerter, Browser, EventLog, NetLogon, ReplicatorServer および TimeSource
time クライアントのクロックと,ASU サーバまたはドメインのクロックとの同期をとる。または,ASU サーバやドメインのシステム時間を表示する。
trust ドメイン間の信頼関係の確立と解除,および指定のドメインの信頼情報のリスト表示を行う。
user ユーザ・アカウントの追加,変更,または削除,あるいはユーザ・アカウント情報の表示を行う。
version コマンドを入力したシステム上で,ASU のバージョン番号を表示する。
view ASU サーバのリスト表示または ASU サーバによって共有されている資源の表示を行う。

D.1    net コマンドについてのオンライン・ヘルプ

オンライン・ヘルプでは,各 net コマンドについて,構文,オプション,例を含めた詳細情報を提供しています。

ヘルプを参照できる net コマンドをリスト表示するには,次のように入力します。

# net help | more

net コマンドの構文およびオプションを表示するには,次のように入力します。

# net help command | more

選択した net コマンドのオプションについての詳細な説明を表示するには,次のように入力します。

# net help command/options | more

表 D-2 に,net コマンドについてのオンライン・ヘルプを参照する場合の構文の表記法について示します。

表 D-2:  net コマンド構文の表記法

記号 意味

中括弧 ( { } )

中括弧で囲まれたオプションは選択しなければならない。

{yes | no}

コマンドを使用するときに yes または no を指定しなければならない。

大括弧 ( [ ] )

大括弧で囲まれたオプションは選択しなくてもよい。

[password]

必要に応じて,コマンドにパスワードを指定して使用してもよい。

スラッシュ (/)

後続の項目は,実行すべきオプションである。

net file 1073722830 /close

識別番号 1073722830 の付いたファイルをクローズさせる。

縦線 ( | )

中括弧または大括弧で囲まれたオプションから 1 つを選択する。

{/hold | /release | /delete}

これらのオプションのうちの 1 つだけを使用できる。

反復記号 ( ...)

前のオプションを繰り返して指定できる。

/route: devicename [, ...]

1 つ以上のデバイスを指定できる。デバイス名は,コンマで区切る。

二重引用符 (" ")

テキストの文字列を入力できる。

net groups "text"

二重引用符で囲まれた情報を表示する。

シャープ記号 ( # )

シャープ記号を数字に置き換えなければならない。

/users:10

10 ユーザのみ接続できる。

D.2    特殊文字の使用

net コマンドで指定する情報には,Tru64 UNIX またはシェル固有の特殊文字,たとえばアンパサンド ( & ) などが含まれる場合があります。特殊文字を net コマンドで使用する場合には,特殊文字の前にバックスラッシュのエスケープ文字 ( \ ) を付けなければなりません。たとえば,次のコマンドは,peter というユーザを mrkt&dev というパスワードで ASU サーバにログインさせることを示しています。

# net logon peter mrkt\&dev

よく使用される Tru64 UNIX 特殊文字には,次のものがあります。

クライアント・コンピュータから,特殊文字を含む net コマンドを入力する場合には,特殊文字を含む文字列を二重引用符 (" ") で囲みます。

D.3    パスワードの使用

net コマンドの中には,パスワードを必要とするものがあります。パスワードをコマンド・オプションとして提供するには,パスワードをコマンドと同じ行に入力します。たとえば,peter という名前のユーザを changeme というパスワードで ASU サーバにログオンさせるには,次のように入力します。

# net logon peter changeme

オプションとして,パスワードをアスタリスク (*) で置き換えることができますが,この場合には,システムからパスワードの入力を要求するプロンプトが表示されます。Tru64 UNIX オペレーティング・システムでは,アスタリスク ( * ) は特殊文字であるため,バックスラッシュ ( \ ) を前に付けなければなりません。

たとえば,パスワードの入力を要求するプロンプトが表示されるのは,次のように入力した場合です。

# net logon peter \*

次のメッセージが表示されます。

Type your password:

入力したパスワードは,画面上に表示されません。

ユーザ・ログインの際に,Tru64 UNIX 特殊文字を含むパスワードは引用符で囲む必要があります。たとえば,peter というユーザ名と !!!!!!!!!! というパスワードで ASU サーバにログインするには,次のように入力します。

# net logon peter '!!!!!!!!!!'

D.4    コマンド確認の使用

net コマンドの中には,yes または no の確認が必要なものがあります。たとえば,リモート共有資源への接続をアクティブにしたままで,net logoff コマンドを入力して,ネットワークからログオフしようとした場合,ASU サーバは,次のようなプロンプトを表示します。

You have the following remote connections: 
LPT1
Continuing will cancel the connections. 
 
Do you want to continue this operation? (Y/N)  [Y]:

net コマンドに /yes または /no オプションを付けて使用することにより,プロンプトを予想して応答することができます。たとえば,次のようにコマンドを入力した場合,確認のプロンプトは表示されません。

# net logoff /yes

net コマンドに /yes/no オプションを付けて使用すれば,ASU サーバ・プロンプトによる割り込みのないバッチ・ファイルやシェル・スクリプトを作成することができます。

D.5    パス名の指定

ディスク共有を作成する場合は,ドライブ名 (常に c:) と,共有のマップ先となるサーバ上のディレクトリの場所から成るパスを指定しなければなりません。このディレクトリが存在していない場合は,そのディレクトリを作成するアクセス許可があれば,作成されます。

ドライブの指定とディレクトリの指定を区別するには,次のいずれかの方法を使用します。

どちらのコマンドでも,Tru64 UNIX サーバ上の /usr/net/servers/lanman/shares ディレクトリに test という共有が作成されます。

D.6    net コマンド・オプションの省略

他のコマンド・オプションと区別できるだけの文字を入力すれば,net コマンド・オプションを短縮することができます。しかし,各オプションの値を短縮することはできません。たとえば,net accounts コマンドには,オプション /forcelogoff:{minutes|no}, /minpwlen:length, /maxpwage:{days|unlimited}, /minpwage:days, および /uniquepw:number があります。net accounts コマンドは,次のようにオプションを短縮して入力することができます。

# net accounts /f:10 /minpwl:6 /ma:unlimited /minpwa:7 /u:3

注意

シェル・スクリプト内で net コマンド・オプションを短縮してはなりません。

D.7    リモート ASU サーバの管理

次の net admin コマンドを使用して,リモートの ASU サーバを管理することができます。

# net admin ¥¥servername password /command

password 変数は,リモートの ASU サーバでの管理者のパスワードです。たとえば,peter という名前のユーザのためにリモート・ドメイン・ユーザ・アカウントを作成して,パスワードを changeme にするには,リモート・システムの管理者は (システムのパスワードを使用して),次のように入力します。

# net admin ¥¥server1 system  /command net user peter \changeme /add 

net logon コマンドを使用して,ASU サーバに明確にログインしていない場合でも,root アカウントを使用して Tru64 UNIX システムにログインすると,ASU サーバは,そのユーザに管理特権を割り当てます。

ただし,ローカルの ASU サーバで管理特権を持っていても,リモートの ASU サーバで同じ特権を持つことにはなりません。このため,ASU サーバをリモートで管理する場合は,net logon コマンドを使用して,そのサーバが加わっているドメインにログインしておく必要があります。そうしない場合は,アクセス拒否エラーが表示されます。

ASU メンバ・サーバとして構成されたシステム上で net logon コマンドを入力すると,PDC ではなくメンバ・サーバにログインされます。PDC にログインするには,次の net logon コマンドを使用します。

# net logon administrator password /dom:domain_name.dom

Windows クライアントからは,メンバ・サーバにログインするために net logon コマンドを入力することはできません。

D.8    net コマンドの使用例

次に,一般的な管理作業を行う net コマンドの使用例を示します。これらの例では,Server1 というローカル ASU サーバに管理者としてログインしていると仮定します。

ASU サーバにログオンするには,次のコマンドを入力します。

# net logon username password

peter というユーザに対し,ユーザ・アカウントを作成して changeme というパスワードを設定するには,次のコマンドを入力します。

# net user peter changeme /add

peter というユーザ・アカウントを Domain Admins グループに入れるには,次のコマンドを入力します。

# net group "Domain Admins" peter /add

ローカル ASU サーバ上の共有を見るには,次のコマンドを入力します。

# net view

server2 というリモート ASU サーバ上の共有を見るには,次のコマンドを入力します。

# net view ¥¥server2

plans というディスク共有を作成し,それを tmp ディレクトリにマップするには,次のコマンドを入力します。

# net share plans=c:/tmp

print1 というプリンタ共有を作成し,laser というプリンタにマップするには,次のコマンドを入力します。

# net share print1=laser /print

ASU サーバへの接続状況を見るには,次のコマンドを入力します。

# net session

ディレクトリ上の資源のアクセス許可および所有権を見るには,次のコマンドを入力します。

# net perms c:/usr/net/servers/lanman/shares