以降の各節では,本リリースにおける新機能,コマンドの改善,変更および修正事項について説明します。
1.1 新機能
以降の各項では,本リリースの新機能について説明します。
1.1.1 パーソナル・ディスク共有の作成
新しいレジストリ・エントリ
CreatePersonalShare
が
SYSTEM/CurrentControlSet/Services/AdvancedServer/UserServiceParameters
の下に追加されました。CreatePersonalShare
エントリは,ASU サーバが自動的に次のことを行うかどうかを指定します。
Tru64 UNIX ユーザ・アカウントが作成されたかまたはドメイン・ユーザ・アカウントが Tru64 UNIX ユーザ・アカウントにマップされた場合にパーソナル・ディスク共有を作成する。
ドメイン・ユーザ・アカウントが削除された場合,それに関連付けられているパーソナル・ディスク共有を削除する。
ドメイン・ユーザ・アカウントの名前が変更された場合,それに関連付けられているパーソナル・ディスク共有の名前を変更する。
ASU サーバは,パーソナル・ディスク共有を,ユーザの UNIX ホーム・ディレクトリにマップされた隠しディスク共有として作成します。ASU サーバは,UNIX ホーム・ディレクトリが存在しないか,または同じ名前の既存のディスク共有がある場合には,パーソナル・ディスク共有を作成しません。隠しディスク共有は,ドル記号 ($) で終わる名前を持ち,ASU サーバをブラウズしても表示されません。たとえば,peter
という名前の Tru64 UNIX ユーザ・アカウントを作成すると,peter のホーム・ディレクトリにマップされた
peter$
という名前のパーソナル・ディスク共有が自動的に作成されます。ユーザは,共有名にドル記号を付加することにより,隠しディスク共有に接続することができます。
省略時の値は 0 (パーソナル・ディスク共有の作成,削除,または名前の変更を行わない) です。CreatePersonalShare
エントリを有効にする場合には,CreateUnixUser
エントリも有効にする (省略時の設定では有効) 必要があります。
1.1.2 ユーザ・ホーム・ディレクトリの作成
新しいレジストリ・エントリ
CreateUnixHomeDirectory
が
SYSTEM/CurrentControlSet/Services/AdvancedServer/UserServiceParameters
キーの下に追加されました。CreateUnixHomeDirectory
エントリは,ASU サーバが,Tru64 UNIX ユーザ・アカウントを作成した場合に,そのユーザの Tru64 UNIX ホーム・ディレクトリを作成するかどうかを指定します。
Tru64 UNIX ユーザ・アカウントを作成して,ファイルおよびディレクトリに適切な Tru64 UNIX の所有権を割り当てたいが,ユーザにシステムへ直接ログインさせたくない場合には,Tru64 UNIX ホーム・ディレクトリを作成しないのは便利な方法です。
省略時の値は 1 (Tru64 UNIX ホーム・ディレクトリを作成する) です。
1.1.3 TruCluster メンバを隠す
新しいレジストリ・エントリ
HideClusterMember
が
SYSTEM/CurrentControlSet/Services/AdvancedServer/Parameters
キーの下に追加されました。HideClusterMember
エントリは,ネットワーク コンピュータ・インタフェースおよび他のブラウザ機能で TruCluster のメンバが表示されるかどうかを指定します。ネットワーク コンピュータのインタフェースおよび他のブラウザ機能では,HideClusterMember
エントリの値に関わらず,クラスタ別名が表示されます。
省略時の値は 0 (TruCluster メンバを隠さない) です。
1.1.4 プリント・ジョブの増加
Tru64 UNIX オペレーティング・システムでは,現在,1000 以上のプリント・ジョブをキューに登録できます。/etc/printcap
ファイルの
mj
エントリに値を割り当てることにより,キューごとにプリント・ジョブの最大数を設定することができます。ASU サーバは,SYSTEM/CurrentControlSet/Services/AdvancedServer/Parameters
キーの下の新しいレジストリ・エントリ
MaxPrintJobs
を使用することによって,mj
エントリの使用をサポートします。MaxPrintJobs
エントリは,ASU サーバで作成された任意のクラス・キューに登録可能なプリント・ジョブの最大数を指定します。
MaxPrintJobs
エントリは,キューが作成され,既存のキューに影響を及ぼさない場合に限って使用します。
省略時の値は 1000 プリント・ジョブです。
1.1.5 プリント・ジョブ名
新しいレジストリ・エントリ
MaxPrintJobName
が
SYSTEM/CurrentControlSet/Services/AdvancedServer/Parameters
キーの下に追加されました。MaxPrintJobName
エントリは,プリント・ジョブ名の最大文字数を指定します。MaxPrintJobName
エントリの値を超える文字は切り捨てられます。
省略時の値は 0 文字 (プリント・ジョブ名を切り捨てない) です。
1.1.6 数字の Tru64 UNIX ユーザ名
新しいレジストリ・エントリ
PreserveNumericUserName
が
SYSTEM/CurrentControlSet/Services/AdvancedServer/UserServiceParameters
キーの下に追加されました。PreserveNumericUserName
エントリは,数字で始まるドメイン・ユーザ・アカウントを作成する場合に,頭に文字
a
を付加して Tru64 UNIX ユーザ・アカウント名を作成するかどうかを指定します。
数字で始まる Tru64 UNIX ユーザ・アカウント名を作成するかまたはマップする場合には,このエントリを有効にすると便利です。
省略時の値は 0 (Tru64 UNIX ユーザ・アカウント名の前に文字
a
を付加する) です。
1.1.7 TruCluster Server のライセンス
新しいレジストリ・エントリ
UseClusterLicensing
が
SYSTEM/CurrentControlSet/Services/AdvancedServer/Parameters
キーの下に追加されました。UseClusterLicensing
エントリは,ASU サーバが TruCluster Server マルチ・インスタンス・クラスタ内で構成されている場合に,クラスタ単位のライセンスを使用するかどうかを指定します。
省略時の値は 0 (クラスタ単位のライセンスを使用しない) です。
1.1.8 セキュリティ・ログ情報
ASU サーバは,ユーザが ASU サーバへのログインを試みたが,(そのアカウントが削除されたか,あるいは NIS データベースまたは Active Directory に到達できないために) マップされた Tru64 UNIX ユーザ名のパスワード・エントリを見つけることができない場合,セキュリティ・ログに次のメッセージを記録します。
The mapped UNIX user name passwd entry cannot be found
1.2 コマンドの改善
以降の各項では,本リリースで行われたコマンドの改善について説明します。
1.2.1 acladm コマンド
acladm
コマンドは,見つかった無効なセキュリティ記述子について,より詳細なレポートを表示するようになりました。
acladm
-C
コマンドは,現在のバージョンでは,失われている標準の ACL を探します。標準の ACL が失われている場合,要求があれば,新しい標準の ACL を作成します。
acladm
-T
コマンドは,Creator Owner ACE を含む余分な ACL を削除します。
acladm
コマンドに,-M
オプション (move acl) と併用して,ACL ストアのバックアップ・コピーからASU の ACL をリストアするための新しい
-i
オプションが追加されました。ASU の ACL をバックアップからリストアする際に,ASU サーバを停止する必要はありません。たとえば,バックアップから
/usr/temp
ファイルをリストアした場合に,対応する ASU の ACL をリストアしたいとします。この場合は,次の手順に従います。
/usr/net/servers/lanman/datafiles/acl
ファイルをバックアップ・ファイルと同じ日付からリストアして,別のファイル名 (たとえば
may10.acl
) にします。
次のコマンドを入力して,ASU の ACL をリストアします。
# acladm -M -i may10.acl -v /usr/temp
blobadm
-R
-S
コマンドとともに
-v
オプションを使用すると,レジストリ・キー名と一緒にレジストリ・キー blob レコードのオフセットとサイズが表示されます。
1.2.3 elfread コマンド
elfread
には,次の 2 つの新しいオプションがあります。
-u user_name オプションを使用すると,特定のユーザによってログに記録されたイベントを選択することができます。
-w workstation_name オプションを使用すると,特定のワークステーションによってログに記録されたイベントを選択することができます。
lmshare
コマンドは,現在のバージョンでは,空白が含まれている共有名をサポートします。
lmshare
には,次の新しいオプションがあります。
-C オプションは,共有ファイルをチェックします。
-L sharename オプションは,指定された共有に関する詳細な情報を表示して,Permissions フィールドのプリンタ・フラグをデコードします。
-P オプションは,共有データベースから使用されていないディスク共有を取り除きます。存在していない Tru64 UNIX ディレクトリをポイントしている非 NFS ディスク共有は,使用されていないディスク共有と見なされます。
-R オプションは,共有ファイルをチェックして修復します。
-S
は,共有レコード内の共有サブタイプを設定またはクリアします。これは,NFS 共有を正規のディスク共有に変換して,対応する NFS エントリが
/etc/exports
ファイルから削除された場合に自動的に削除されるのを防ぐのに便利です。これはまた,パーソナル共有を正規のディスク共有に変換して,ユーザ・アカウントが SAM データベースから削除された場合に対応するパーソナル共有が自動的に削除されるのを防ぐのにも便利です。
サブタイプは,NFS 共有に対しては
N
,パーソナル共有に対しては
P
,共有のサブタイプをクリア (空白に設定) するには一重引用符 (' '
) を指定します。
lmstat
コマンドに,ハッシュ・テーブル統計情報を表示する新しい
-h
オプションが追加されました。
lmstat -l
コマンドは,本バージョンでは,共有メモリ・ロックを保持しているプロセス (存在する場合) の名前を表示します。
1.2.6 lsacl コマンド
lsacl
コマンドには,次の新しいオプションがあります。
-i オプションは,新しいオブジェクトの継承された ACL を表示します。
-d オプションは,-i オプションとともに使用された場合,新しいオブジェクトがディレクトリ・オブジェクトであることを指定します。
-f オプションは,-i オプションとともに使用された場合,新しいオブジェクトがファイル・オブジェクトであることを指定します。
-m オプションは,本リリースではサポートされていません。
mapuname
コマンドには,次の新しいオプションがあります。
-g オプションは,本リリースではサポートされていません。
-l オプションは,マッピング (1 つまたは複数) を表示します。これは,省略時のオプションです。
-u オプションは,マッピングが Tru64 UNIX ユーザ・アカウント名にだけ適用されることを指定します。これは,省略時のオプションです。
1.2.8 nbstat および nbstatus コマンド
以前は,次のコマンドを ASU サーバで入力すると,No response for
cluster_alias_name
というメッセージが表示されていました。現在では,このコマンドは,要求を受け取った TruCluster メンバの 1 つにデータが登録されている NetBIOS 名を表示します。
#
nbstatus
cluster_alias_name
以前は,次のコマンドを PC で入力すると,Host not found
というメッセージが表示されていました。現在では,これらのコマンドでは,要求を受け取った TruCluster メンバの 1 つにデータが登録されている NetBIOS 名を表示します。
#
nbtstat -a
cluster_alias_ame
#
nbtstat -A
cluster_alias_ip_address
1.2.9 net perms コマンド
現在
net perms
コマンドは,許可についてユーザまたはグループ名を変換できない場合,何も表示しないのではなく,内部名を表示します。これは,信頼が一時的に破壊されているか,または信頼される側のドメインのドメイン・コントローラがネットワークから切断されている場合に,許可が消えたという印象を回避します。
1.2.10 rmacl コマンド
rmacl
コマンドは,現在のバージョンでは,Windows ではなく Tru64 UNIX から削除されたファイルおよびディレクトリの取り残された ACL を削除します。
1.2.11 samcheck コマンド
samcheck
コマンドは,ドメイン・ユーザから Tru64 UNIX ユーザ名への標準のマッピングだけが失われているバックアップ・ドメイン・コントローラ (BDC) について,SAM データベースを修復します。
1.3 変更および修正事項
以降の各項では,本リリースにおける変更および修正事項について説明します。
1.3.1 NFS ディスク共有
以前のバージョンでは,ASU サーバは,NFS エクスポート・エントリについて更新情報を保守していませんでした。更新を考慮して,ASU サーバは,起動時に,各エクスポート・エントリについて,NFS ディスク共有を削除して再作成していました。このため,NFS 共有が一時的に利用不能になっていました。
本リリースでは,ASU サーバが起動すると,不必要に NFS 共有をまず削除することなく,ASU ディスク共有と NFS エクスポート・エントリとの同期をとります。エクスポート・エントリに対応するディスク共有がない場合,ASU サーバはディスク共有を作成します。エクスポート・エントリがもう存在しないか,またはサポートされない (root=0) 場合,ASU サーバは対応するディスク共有を削除します。NFS エクスポート・エントリの NFS アクセス許可が変更された場合には,ASU サーバは対応するディスク共有のアクセス権を更新します。
1.3.2 プリンタ・エントリの変更
ASU サーバが PC に接続されているプリンタを認識するように構成されている場合には,次のように
lprsetup.dat
ファイルのエントリを変更する必要があります。
clientps
を
Compaq_Advanced_Server_ClientPS
へ
clienttxt
を
Compaq_Advanced_Server_ClientText
へ
サーバのデバッグ・ロギングが有効にされている場合は,正規の SMB コマンドと応答に加えて,現在では break oplock メッセージもログに記録されます。
1.3.4 プリンタ・ドライバの変更
以前のリリースでは,プリンタが共有されていない場合,ドライバが誤ったものになり,Windows クライアントから変更することも
net
コマンドを使用して変更することも不可能になっていました。
この問題は修正されています。
1.3.5 nogrpid マウントされたファイル・システムでの Tru64 UNIX グループの設定
ファイル・システムが
nogrpid
オプションを指定してマウントされ,UseUnixGroups
レジストリ・エントリが有効になっている (省略時の設定では無効) 場合,そのファイル・システム上に ASU サーバが作成するファイルおよびディレクトリには,マップされている Tru64 UNIX ユーザの省略時のグループ ID (gid) が割り当てられます。
ファイル・システムが
nogrpid
オプションを指定してマウントされていないか,または
UseUnixGroups
レジストリ・エントリが無効になっている場合,ファイルまたはディレクトリは,親ディレクトリの gid を継承します。