この付録では,TruCluster Software バージョン 1.5 またはバージョン 1.6 から TruCluster Server バージョン 5.1B にアップグレードしようとする際に,第 8 章で説明されているオプション 2 あるいはオプション 3 のストレージ・マッピングおよび構成スクリプトを使用することができない,あるいは選択することができない場合のサイトについて,アップグレードを行うための情報を説明します。
一般的に,第 8 章で説明されているプロシージャならびにスクリプトを使用することができる場合は,これらを使用することを推奨します。ストレージ・トポロジ,システム構成,サイト・ポリシ等の理由によりこれらを使用することができない場合は,この付録で説明する ASE (Available Server Environment) での手動によるストレージ構成情報の収集方法,ならびに新規 Tru64 UNIX システムあるいはシングル・メンバ・クラスタ上での手動によるストレージ構成方法を使用してアップグレードを行ってください。旧スタイルのデバイス名 (rz*
) から新スタイルのデバイス名 (dsk*
) へのマッピングはユーザの責任で行います。
ユーザは独自のアップグレード・プロシージャを作成しなければなりません。第 8 章ならびにこの付録の内容を理解した後,いずれのアップグレード・オプションが最適であるかを判断してください。続いて,そのオプション・プロシージャを修正するようにします。
F.1 デバイスならびにストレージ構成情報の手動による収集
この節では,現在の ASE 構成ならびにストレージ環境に関する情報を収集するために
clu_migrate_save
スクリプトを使用するオプション 2 およびオプション 3 に置き換わる手順について説明します。
まず,8.3.2 項を参照し,現在の ASE に対する最新の構成マップを作成します。
第 8 章では,clu_migrate_save
スクリプトにより LSM および AdvFS 構成情報を含む現在の共用ストレージ情報を収集します。clu_migrate_configure
スクリプトは収集された情報を読み取り,新規 Tru64 UNIX システムあるいはシングル・メンバ・クラスタ上のストレージを構成します。ただし,物理デバイスの接続後に新規クラスタ上のストレージを手動により構成しようとしている場合,clu_migrate_configure
は実行されません。このため,ASE のメンバのストレージ構成情報を手動により収集しなければなりません。
注意
手動による情報収集に加えて,現在の ASE メンバ上で
clu_migrate_save
を実行することを推奨します。ストレージ構成情報を収集するだけでなく,clu_migrate_save
は各ディスクのrz*
スペシャル・ファイル名をディスクのラベルのlabel:
フィールドに書き込みます (このスクリプトは,第 8 章で説明されているように元のディスク・ラベルを保存します。アップグレード後に,このラベルを復元することができます)。また,新規 Tru64 UNIX システムあるいは TruCluster Server クラスタ上で
clu_migrate_configure -x
を実行することを推奨します。clu_migrate_configure -x
コマンドはストレージを構成しませんが,-x オプションを指定しないで起動された場合に実行するコマンドの一覧を表示し,旧スタイルのデバイス名 (rz*
) から新スタイルのデバイス名 (dsk*
) へのマッピングを表示します。ただし,clu_migrate_configure -x
がこのマッピングを行うために,ASE メンバ上でclu_migrate_save
を実行しておく必要があります。
旧スタイルのデバイス名から新スタイルのデバイス名へのマッピングの補助としてスクリプトを使用しない場合は,デバイス名を手動によりマッピングする際に十分注意してください。ユーザは各デバイスの物理的な位置を知っている必要があり,アップグレード時にこの知識と,hwmgr
および
scu
などのユーティリティを使用して
dsk*
名がいずれのデバイスに割り当てられているかを判定することができなければなりません。新規システムあるいはクラスタが
dsk*
を,以前
rz*
として認識されていたいずれのデバイスに割り当てているかを判定することは,簡単な作業ではありません。これが,スクリプトを提供している第一の理由です。たとえ,新規 Tru64 UNIX システムあるいは TruCluster Server クラスタ上のストレージを構成するために移行スクリプトを使用する必要がない場合であっても,rz*
デバイスが現在いずれの
dsk*
として認識されているかを明確にするために,これらのスクリプトを使用することを推奨します。
ASE の各メンバ上で次の手順を行います。
バージョン 114 以上の
sys_check -all
コマンドを実行して,システム情報を保存し,ストレージ・マップを作成します。次の例を参照してください。
# /usr/sbin/sys_check -all > file.html
注意
システムに
sys_check
ユーティリティがない場合は,次の URL から入手することができます。ftp://ftp.digital.com/pub/DEC/IAS/sys_check
/var/ase/config/asecdb
データベースとそのテキスト・コピーの両方を保存します。次の例を参照してください。
# cp /var/ase/config/asecdb asecdb.copy # asemgr -d -C > asecdb.txt
AdvFS ドメインおよびファイル・セットに関する情報を保存します。たとえば,/etc/fdmns
にディレクトリを移動し,次のコマンドの結果を保存します。
ls -lR
コマンドを使用して,すべてのドメインおよび関連するデバイスの一覧を表示します。
showfdmn *
コマンドを使用して,ファイル・ドメインおよびボリュームに関する情報を表示します。
showfsets
コマンドを使用して,各ドメインに関するファイル・セット情報を表示します。
LSM を使用している場合は,volsave
コマンドを実行してすべてのディスク・グループに関する LSM 構成情報を保存します (volsave
コマンドを実行する前に,すべての ASE サービスがオンラインで提供されている必要があります)。
# volsave -d volsave.output
デバイス名のマッピングに
clu_migrate_save
および
clu_migrate_configure -x
コマンドを使用しない場合は,新規システム上のストレージを構成するために旧スタイルのデバイス名 (rz*
) から対応する新スタイルのデバイス名 (dsk*
) へのマッピングを手動で行わなければなりません。マッピングの補助として,scu
コマンドを使用して旧スタイルのデバイス名とその属性の一覧を作成します。表示される属性は,ベンダ,シリアル番号,バス/ターゲット/LUN (SCSI バスの番号の変更に
ase_fix_config
が使用された場合は適用されません) などです。次の
scu
コマンドを使用してこれらの属性を表示し,結果をファイルに保存します。
# scu -f device show device # scu -f device show inq page serial # scu -f device show nexus
次の例を参照してください。
# scu -f /dev/rrz28g show device | grep -E "Vendor|Product|Firmware" Vendor Identification: DEC Product Identification: RZ26L (C) DEC Firmware Revision Level: 440C # scu -f /dev/rrz28g show inq page serial | grep "Product Serial" Product Serial Number: PCB=420240831056(ZG40831056 ?); \ HDA=0000000042181869 # scu -f /dev/rrz28g show nexus Device: RZ26L, Bus: 3, Target: 4, Lun: 0, Type: Direct Access
保存された構成情報を含むファイルを新規 Tru64 UNIX システムあるいはシングル・メンバ・クラスタにコピーします。
F.2 新規 Tru64 UNIX システムあるいは TruCluster Server クラスタ上のストレージの手動による構成
この節では,新規 Tru64 UNIX システムあるいはシングル・メンバ・クラスタ上のストレージを構成するために
clu_migrate_configure
スクリプトを使用するオプション 2 およびオプション 3 に置き換わる手順について説明します。
注意
ASE メンバ上で
clu_migrate_save
を実行していない場合,clu_migrate_configure -x
を使用してデバイス名のマッピングを表示することはできません。次に進む前に,すべての旧スタイルのデバイス名 (rz*
) から新スタイルのデバイス名 (dsk*
) へのマッピングを手動で行ってください。以降の手順では,clu_migrate_configure -x
で得られるマッピング結果をユーザ独自のものに置き換えてください。
ASE メンバ,Tru64 UNIX システム,シングル・メンバ・クラスタ上で
clu_migrate_save
を実行している場合は,clu_migrate_configure -x
を実行します。
# /usr/opt/TruCluster/tools/migrate/clu_migrate_configure -x
clu_migrate_configure -x
コマンドを実行すると,旧スタイルのデバイス名から新スタイルのデバイス名へのマッピングを表示します。ASE に制御されていたストレージを構成する場合は,この情報を使用します。
次の手順は,ストレージを構成する場合の例です。
デバイス名のマッピングに
clu_migrate_save
および
clu_migrate_configure -x
コマンドを使用しない場合は,旧スタイルのデバイス名 (rz*
) から対応する新スタイルのデバイス名 (dsk*
) へのマッピングを手動で行わなければなりません。新デバイス名へのマッピングの補助として,新規システム上で
scu
コマンドを使用します。次の例を参照してください。
# scu -f /dev/rdisk/dsk5g show device | grep -E "Vendor|Product|Firmware" Vendor Identification: DEC Product Identification: RZ26L (C) DEC Firmware Revision Level: 440C # scu -f /dev/rdisk/dsk5g show inq page serial | grep "Product Serial" Product Serial Number: PCB=420240831056(ZG40831056 ?); \ HDA=0000000042181869 # scu -f /dev/rdisk/dsk5g show nexus Device: RZ26L, Bus: 1, Target: 4, Lun: 0, Type: Direct Access
ASE メンバから収集した
scu
情報を使用して,旧スタイルのデバイス名から新スタイルのデバイス名へのマッピングを作成します。デバイス名を手動によりマッピングする場合は,hwmgr
コマンドも有用なツールです。
F.1 節の
scu
の例では,このデバイスが ASE で
rz28
として認識されています。show nexus
の結果のバス番号が同一でないことに注意してください。ASE で
ase_fix_config
が実行されたため,両方のシステムのバス番号が異なっていますが,これは信頼できるマッピング・デバイス情報ではありません。
保存された
asecdb
データベース,sys_check -all
の結果,手動あるいは
clu_migrate_configure -x
を使用して作成したデバイス・マッピングに基づく LSM 情報を使用して,各デバイスおよび LSM ディスク・グループを構成します。
注意
ディスク上の LSM 構成情報のフォーマットは変更されています。この時点以降,ASE に戻す必要がある場合は,インポート時に ASE システム上に LSM 情報を復元しなければなりません。
各新規 LSM デバイスに対して,次のコマンドを実行します。
# voldisk define device # voldisk online device
各ディスク・グループに対して,次のコマンドを実行します。
# voldg import disk_group
各ボリュームに対して,次のコマンドを実行します。
# volume -g disk_group start volume
次の例を参照してください。
# voldisk define dsk5g # voldisk online dsk5g # voldg import toolsdg lsm:voldg: WARNING: Volume vol01: \ Temporarily renumbered due to conflict # volume -g toolsdg start vol01 # volume -g toolsdg start vol02
警告は無視することができます。
次回のリブート後,LSM が名前を更新するようにする場合は,lsmupdate_setup
コマンドを実行します。
# /sbin/lsm.d/bin/lsmupdate_setup
保存された
asecdb
データベース,sys_check -all
の結果,手動あるいは
clu_migrate_configure -x
を使用して作成したデバイス・マッピングに基づく AdvFS 情報を使用して,旧スタイルのデバイス名 (rz
) から新スタイルのデバイス名 (dsk
) へのマッピングを行い,適切な
/etc/fdmns
エントリを作成し,ASE 上にあった AdvFS ドメインを手動により再作成します。
次の例を参照してください。
# mkdir /etc/fdmns/data1_domain # cd /etc/fdmns/data1_domain # ln -s /dev/disk/dsk6g # mkdir /etc/fdmns/tools_dmn # cd /etc/fdmns/tools_dmn # ln -s /dev/vol/toolsdg/vol01 toolsdg.vol01
各ドメインに対して,showfsets
domain
コマンドを実行し,各ドメインに関するファイル・セットが正しいことを確認します。
ドメインをマウントします。各ドメインに対して
showfdmn
domain
コマンドを実行します。
/etc/fstab
ファイルにファイル・システムを追加します。また,/etc/exports
などのストレージ情報を含むその他の構成ファイルを更新します。
システムをリブートし,新規デバイス名を使用して LSM を構成します。
# shutdown -r now
次の LSM コマンドを実行して,LSM 構成を確認します。
# voldisk list # volprint -thA