1    概要

Advanced Printing Software は,ネットワーク・プリンティング・サービスです。これは,プリンタの種類にかかわらず,ローカル・ネットワークのどこからでもジョブおよびプリンタを管理します。このサービスでは,ユーザと利用できるプリンタの間にスマート・リンクが提供されます。

1.1    Advanced Printing Software を使用する利点

Advanced Printing Software によって管理されるプリンタを使用すると,次のような利点があります。

1.2    Advanced Printing Software の用語

次の用語は,Advanced Printing Software がプリント要求を処理する方法を記述するために使用されます。

1.3    ユーザ・インタフェースへのアクセス

本書で説明するコマンド行インタフェースに加えて,Advanced Printing Software には,プリント・ジョブの実行やプリント・ジョブのモニタに使用することができるグラフィカル・ユーザ・インタフェースが用意されています。

pdprint はプリント・ジョブを実行するために使用する GUI プログラムであり,pdprintinfo はジョブおよびプリンタの状態を取得するために使用する GUI プログラムです。これらの GUI には,コマンド行から,または CDE デスクトップの「印刷マネージャ」アイコンからアクセスできます。これらのプログラムには,次の方法を使用してアクセスできます。

1.4    コマンド構文と要素

プリント・システム・コマンドの構文は,すべて例 1-1 に示す形式をとります。

例 1-1:  コマンド行の構文

コマンド名 オプション オプションの引数 オブジェクト・インスタンス

次に,4 つの構文要素を示します。

コマンドは次のようになります。

pdpr -n 2 opus1.txt

1.5    オプションおよび引数の指定

オプションおよびオプションの引数は,プリント・システム・コマンドの省略時の動作を変更します。CLI コマンドでオプションおよび引数を使用する場合は,次のガイドラインが適用されます。

1.6    オペランドおよびクラス

コマンドの中には,最低 1 つのオペランドを指定しなければならないものもあります。コマンドのオペランドは,操作を実行するファイルの名前などのオブジェクトを指定します。

オペランドをとるコマンドの一部は,プリント・システムの異なるクラスのオブジェクトで操作を実行することができます。オブジェクトのクラスは,それがどのような種類のオブジェクトなのか (たとえば,プリンタ,キュー,ジョブ,サーバ,またはドキュメント) を示すものです。-c class オプションを使用して,コマンドのオペランド・クラスを指定します。

次の表は,エンド・ユーザが利用できるコマンドを要約したものです。

表 1-1:  エンド・ユーザ・コマンド

コマンド 説明
pdls プリント・オブジェクトの属性をリストする。
pdmod 以前に実行されたプリント・ジョブまたはドキュメントを変更する。
pdpause 自分のプリント・ジョブを一時停止する。
pdpr プリント・ジョブを実行する。
pdq プリント・ジョブについてレポートしたり,その状態を取得したりする。
pdresubmit 他の論理プリンタに対してプリント・ジョブを再実行する。
pdresume 自分のプリント・ジョブを再開する。
pdrm 自分のプリント・ジョブを削除する (すなわち,取り消す)。

この表から,たとえば pdlspdls -c job は,同じ結果になると推測することができます。

1.7    属性

プリント・システムは,プリンタ,ジョブ,ドキュメント,およびキューのようなオブジェクトを使用することにより,プリント・ジョブを管理します。すべてのオブジェクトには属性とそれに関連付けられた属性値があります。次に例を示します。

以降の各項では,print コマンドで属性を使用する方法についてのガイドラインを示します。

1.7.1    属性の省略時の値

属性の中には,省略時の値を持つ属性もあります。しかし,ほとんどの属性では,省略時の値は「値なし」です。属性値はいくつかの方法で変更できます。

すべての属性と,それに関連付けられた値についての詳細なディレクトリは,『Advanced Printing Software コマンド・リファレンス・ガイド』を参照してください。

1.7.2    属性値の構文

属性の中には,一度に値を 1 つだけとる属性 (単一値属性) と,複数の値をとる属性 (複数値属性) があります。さらに 1 つ以上の値を持ち,それぞれの値自身が,複数のコンポーネントを持つ属性もあります (複合属性)。

この項では,単一値,複数値,および複合のそれぞれの属性の構文を説明します。

1.7.2.1    単一値属性

単一値属性の構文は次のとおりです。

attribute=value

次に例を示します。

copy-count=2

1.7.2.2    複数値属性

複数値属性の構文は次のとおりです。

attribute="value_1 value_2 ... value_n"

次に例を示します。

content-orientations-supported="portrait landscape"

1.7.2.3    複合属性

複合属性の構文は次のとおりです。

attribute="{attribute=value attribute=value attribute=value}"

次に例を示します。

access-control-list="{name-type=all-users privilege-level=end-user}"

1.7.3    属性および値の短縮

属性または標準識別子の値は,名前または値の中の,各単語の何文字かだけを使用することによって短縮することができます。たとえば,job-sheets 属性の代わりに j-s という短縮形を使用し,job-copy-start という値の代わりに j-c-s という短縮形を使用して,この属性を j-s=j-c-s と指定することができます。

システムはあいまいでない短縮形だけを許容します。たとえば,job-ownerj-o と短縮すると,これは job-originator の短縮形でもあり得るので,有効ではありません。属性または値の名前は,それが一意となるように指定する必要があります。

次に,有効な短縮形の例を示します。

job-owner は,j-ow または job-own job-originator は,j-or または job-orig iso-a3-white は,i-a3-w

サイト固有の用紙またはトレイの名前のように,標準識別子でない値は短縮できません。

1.8    ジョブおよびドキュメントの識別子

プリント・ジョブはすべて,一意のジョブ識別子によって識別されます。ジョブ識別子は,サーバ (スプーラ) 名,コロン,およびジョブ番号で構成されます。サーバは,プリント要求の一部としてジョブを受け取ったときに,ジョブ識別子を割り当てます。

有効なジョブ識別子は,たとえば galileo_spl:1564kepler:1571 のようになります。

pdpause や pdresume のような一部のコマンドは,ジョブ識別子をオペランドとして受け取ります。このようなコマンドでは,マルチ・ドキュメント・ジョブの中のドキュメント識別子を指定することも可能です。

コマンドの中には,マルチ・ドキュメント・ジョブの中の特定のドキュメントを識別する必要があるコマンドもあります。ドキュメント識別子は,ジョブ識別子,ピリオド,およびドキュメント番号として表現されます。マルチ・ドキュメント・ジョブの中では,ドキュメントに 1 から始まる番号が付けられます。

kepler:1571 が有効なジョブ識別子の場合,このジョブの 2 番目のドキュメントは kepler:1571.2 となります。

1.9    コマンドについてのヘルプの表示

コマンドおよびそのオプションについてのヘルプを表示するには,コマンド名の後に -h オプションを付けて入力します。たとえば,pdpr コマンドについてのヘルプを表示する場合は,次のように入力します。

% pdpr -h

また,man コマンドを使用して,プリント・システムのコマンドについての情報を表示することもできます。たとえば,pdpr コマンドについてのヘルプの場合は,次のように入力します。

% man pdpr