この章では,次の項目について説明します。
RIS サーバからのインストレーションの準備作業 (1.1 節)
開始前に,ネットワークが構成されているか調べる簡単なテスト (1.2 節)
RIS サーバからのアップデート・インストレーションの開始方法 (1.3 節)
RIS サーバからのフル・インストレーションの開始方法 (1.4 節)
ご使用のシステムがネットワーク環境にある場合は,次の条件を満たせば,オペレーティング・システムをネットワーク上のサーバからインストールすることができます。
サイトに,リモート・インストレーション・サービス (RIS) サーバとして構成されているシステムがある。
ご使用のシステムは,Version 5.1B のオペレーティング・システムをサービスする RIS サーバに,クライアントとして登録されている。
RIS 管理者への注意
Version 5.1B をクライアントに提供するためには,RIS サーバがバージョン 4.0 以降のオペレーティング・システムで稼働していなければなりません。
RIS サーバのセットアップ,サービスを行うためのソフトウェア環境の作成,正しいソフトウェア環境へのクライアント・システムの登録についての詳細が必要な場合は,『Sharing Software on a Local Area Network』を参照してください。
1.2 システムがネットワークに接続されているか
ご使用のシステムですでにオペレーティング・システムが稼働しており,アップデート・インストレーションを行いたい場合は,/sbin/ping
コマンドを実行してネットワーク接続を確かめることにより,システムが RIS サーバと通信できることを確認します。
ネットワーク接続をテストするには,次のコマンドを入力します。
ris_server_name
には,ローカルの RIS サーバ名を指定します。
# /sbin/ping -c2 ris_server_name
正常に動作した場合には,ネットワーク上の RIS サーバと通信できたことを示す,パケット紛失 0 % が表示されます。
例 1-1
では,RIS サーバ名は
server1
です。
例 1-1: /sbin/ping コマンドの出力
# ping -c2 server1 PING server1 (16.59.l24.96): 56 data bytes 64 bytes from 16.59.l24.96: icmp_seq=0 ttl=255 time=1 ms 64 bytes from 16.59.l24.96: icmp_seq=1 ttl=255 time=0 ms ----server1 PING Statistics---- 2 packets transmitted, 2 packets received, 0% packet loss round-trip (ms) min/avg/max = 0/0/1 ms
/sbin/ping
コマンドの結果が次のようになった場合,システムは RIS サーバと通信できません。
ネーム・サーバはシステム名を認識しているが,ネットワーク接続が設定されていない場合,システム名と IP アドレスのみがコマンドの出力として表示されます。
このような結果になった場合は,ネットワーク管理者にトラブルシューティングを依頼してください。
ネットワークのトラブルシューティングについての詳細は,『ネットワーク管理ガイド:接続編』および『ネットワーク管理ガイド:サービス編』を参照してください。
1.3 RIS サーバからのアップデート・インストレーションの開始
RIS サーバからアップデート・インストレーションを開始するには,次の手順を実行します。
1.1 節で説明した,ネットワーク経由のインストレーションの前提条件をシステムが満たしていることを確認します。 また,1.2 節 で説明しているように,システムがネットワーク上で構成されていることも確認します。 問題が発生した場合は,ネットワーク管理者に連絡するか,『Sharing Software on a Local Area Network』を参照してください。
アップデート・インストレーションの前提条件となっているすべての作業 (『インストレーション・ガイド』を参照) を完了します。 この作業には,現在のオペレーティング・システムのバックアップ,『リリース・ノート』の通読,システム・ファームウェアのアップデートが含まれます。
スーパユーザ (root
) として
shutdown
コマンドを実行して,システムをシングルユーザ・モードにします。
次の例では,スーパユーザになり,システムをシャットダウンして,シングルユーザ・モードに移行する方法を示します。
% su - password: # shutdown +10 Please log out
この例では,+10
は,10 分後にシステムをシャットダウンすることを示し,Please log out
というメッセージをすべてのログイン・ユーザに送信します。
システムがシングルユーザ・モードになると,画面は次のようになります。
.
.
.
Halting processes ... INIT: SINGLE-USER MODE #
ローカル・ファイル・システムをマウントします。
# /sbin/bcheckrc
bcheckrc
コマンドは
mount -a
コマンドを呼び出し,標準の UNIX ファイル・システム (/
,usr
,var
) だけでなく,/etc/fstab
ファイル内のすべてのファイル・システムをマウントします。
bcheckrc
コマンドは,UNIX ファイル・システム (UFS) に対してファイル・システム・チェック・コマンド
fsck
も実行し,必要であれば LSM (Logical Storage Manager) を起動します。
fsck
が
/
(ルート) パーティションの問題を検出した場合,システムはシャットダウンします。
この場合,システムをリブートして,ファイル・システムを修復しなければなりません。
インターネット・アドレスのテーブルを削除し,アップデート・インストレーション中に
routed
および
gated
デーモンが起動されないようにします。
# route flush
次の形式で,/sbin/installupdate
コマンドを入力します。
/sbin/installupdate
[-u
]
[-nogui
]
{ris_server_name:
}
各オプションについて,次に説明します。
オプションの
-u
フラグを指定すると,ユーザの介入なしでアップデート・インストレーションが実行されます。
このオプションを指定すると,障害となっているレイヤード・プロダクトの削除や旧ファイルの削除が自動で行われ,すべてのカーネル構成要素がインストールされます。
したがって,アップデート中に質問に答える必要はありません。
オプションの
-nogui
(非グラフィカル・ユーザ・インタフェース) フラグを指定すると,グラフィック機能があるシステムで,テキスト・ベース・インタフェースが起動されます。
RIS サーバ名にはコロン ( :
) を付ける必要があります。
たとえば,server1
という名前の RIS サーバからアップデート・インストレーションを実行するには,次のコマンドを入力します。
# /sbin/installupdate server1:
別の例として,テキスト・ベース・インタフェースを使用して
server2
という名前の RIS サーバから自動モードでアップデート・インストレーションを実行するには,次のコマンドを入力します。
# /sbin/installupdate -u -nogui server2:
注意
RIS サーバからアップデートを開始できない場合は,『Sharing Software on a Local Area Network』 のトラブルシューティング情報を調べてください。
アップデートが開始されたら,『インストレーション・ガイド』 のアップデート・インストレーションの残りの手順に進みます。
システムをネットワーク経由でブートして,RIS サーバからフル・インストレーションを開始するには,次の手順を実行します。
1.1 節で説明した,ネットワーク経由でのインストールの前提条件を,システムが満たしていることを確認します。 また,1.2 節 で説明しているように,システムがネットワークに接続されていることも確認します。 問題が発生した場合は,ネットワーク管理者に連絡するか,『Sharing Software on a Local Area Network』を参照してください。
アップデート・インストレーションの前提条件となっているすべての作業 (『インストレーション・ガイド』を参照) を完了します。 この作業は独立した章で説明されており,現在のオペレーティング・システムのバックアップ,『リリース・ノート』の通読,システム・ファームウェアのアップデートが含まれます。
システムをコンソール・モード (>>>
プロンプト) にします。
システムの現在の状態に応じて,次のいずれかの処理を実行します。
システムが稼働していて,任意のバージョンのオペレーティング・システムをすでに実行中の場合,次のようなコマンドを使用して,シャットダウンしプロセッサを停止させます。
# shutdown -h +10 Please log out
この例では,Please log out
というメッセージがすべてのログイン・ユーザに送信され,システムは 10 分後にシャットダウンされて停止します。
システムをシャットダウンしてコンソール・モードにする方法についての詳細は,『システム管理ガイド』または
shutdown
(8)
システムの電源が入っていない場合は,プロセッサの電源を入れます。
コンソール・サブシステムはさまざまなスタートアップ・メッセージと診断メッセージを出力し,コンソール・モード・プロンプト ( >>>
) を表示して入力待ちになります。
ただし,システムに自動リブートが構成されている場合は,コンソール・モードでは停止せず,ブートが実行されてマルチユーザ・モードになります。
システムをコンソール・モードにするには,前述のように
shutdown -h
コマンドを使用します。
一部のプロセッサでは,すべてのプロセッサで設定される標準のコンソール変数の他に,1 つ以上のコンソール環境変数を設定する必要があります。 ハードウェアのフロント・パネルの社名ロゴを探して,プロセッサの種類を確認します。 次に,『インストレーション・ガイド』の「フル・インストレーションの実行」の章に進み,ネットワーク経由でシステムをブートする前に,特殊なコンソール変数の設定が必要か調べます。 そして,本手順のステップ 5 に進みます。
boot_osflags
コンソール変数をクリアします。
>>> set boot_osflags ""
インストレーション時にシステムがクラッシュしたり,電源障害が発生した場合にシステムがコンソール・モードに戻るようにするには,auto_action
コンソール変数を次のように設定します。
>>> set auto_action halt [脚注 1]
ネットワーク・アダプタ・デバイス名を調べます。
>>> show device
次のようなデバイス情報テーブルが表示されます。
dka400.4.0.6.0 DKA400 RRD43 2893 dva0.0.0.0.1 DVA0 ewa0.0.0.13.0 EWA0 08-00-2B-3E-B6-C8 pka0.7.0.6.0 PKA0 SCSI Bus ID 7
ネットワーク・ブート・デバイスは,3 番目の欄にハードウェア・イーサネット・アドレスがある行の中央の欄に表示されます。
この例では,ハードウェア・イーサネット・アドレスは
08-00-2B-3E-B6-C8
で,ブート・デバイスは
EWA0
です。
次のコマンド構文を使用して,bootp
ブート・リクエスト・プロトコルを初期化します。
set
network_device_protocols bootp
set
network_device_inet_init bootp
ネットワーク・ブート・デバイス名には大文字小文字の区別があり,小文字または大文字の英字が使用できます。
たとえば,ステップ
7
で調べたネットワーク・アダプタ・デバイス名を使用して,次の
bootp
初期化コマンドを入力します。
>>> set ewa0_protocols bootp >>> set ewa0_inet_init bootp
次のステップでシステムをブートする前に,表 1-1 を参照して,ご使用のプロセッサ・タイプに固有の boot コマンドがないか確認してください。
注意
表 1-1 の情報が,サポートされている各システムで,完全で正確なものになるように努めましたが,ご使用のプロセッサのハードウェア・ドキュメントもチェックして,他のコンソール変数や boot フラグの設定が必要でないことを確認してください。 ハードウェア・ドキュメントは,システム・タイプごとにカスタマイズされており,必要となるコンソール変数および boot フラグの最終的な情報となります。
表 1-1: プロセッサ固有のネットワーク・ブート・コマンド
プロセッサまたはオプション | ブート・コマンド |
AlphaStation 500,600,600A
|
>>> boot -fl "" ewa
|
AlphaServer 4000,4100
|
>>> boot -fl "" ewa0
|
FDDI デバイスがあるシステム | 1.4.1 項 を参照 |
ブート・ファイルをリセットします。
>>> set boot_file ""
次の構文で,boot コマンドを入力します。
boot
network_device
たとえば,ステップ 7 で取得した情報を使用するときには,boot コマンドは次のようになります。
>>> boot ewa0
これで,フル・インストレーションを起動するための,ネットワーク経由でのシステムのブートは完了です。 フル・インストレーションの残りの手順は,『インストレーション・ガイド』で説明しています。
ネットワーク経由でのシステムのブートで問題が発生した場合は,『Sharing Software on a Local Area Network』を参照してください。
1.4.1 ネットワーク・ブート・オプション: FDDI (Fiber Distributed Data Interface)
DEFTA デバイスでは,FDDI ネットワーク・インタフェースを経由したブートがサポートされています。
FDDI ネットワーク・インタフェース・デバイスからブートするには,システムがコンソール・レベルのときに
show config
コマンドを入力して,デバイス名を調べます。
たとえば,show config
コマンドを実行すると,DEFTA デバイスは
PMAF-FA
として表示されます。
スロット番号を確認し,表 1-2
を参照してブート・コマンドを入力します。
表 1-2
に,FDDI を使用しているシステムで,ネットワークを経由してブートするために必要なブート・デバイスを示します。
ネットワーク経由でブートする前に,ハードウェアのマニュアルの指示に従って,FDDI のファームウェアをアップデートしてください。
表 1-2: バスのタイプによる FDDI ブート・デバイス
バスのタイプ | ブート・デバイス |
EISA (Extended Integrated System Architecture) | fra0
[脚注 2]
|
PCI (Peripheral Component Interconnect) | fwa0
[脚注 2] |
XMI (Extended Memory Interface) | fxa0
[脚注 2] |
1.4.2 ネットワーク・ブートの失敗のトラブルシューティング
最初のネットワーク・ブートに失敗した場合は,コンソール・プロンプトに
init
と入力して,ネットワーク経由でのブートを再試行します。
リモート・サーバ・インストレーションの際に別の問題が発生した場合は,『Sharing Software on a Local Area Network』を参照してください。
このガイドには,ネットワーク・ブートの失敗についてのトラブルシューティング情報が記載されています。
1.4.3 ISA バスにグラフィックス・デバイスがあるシステムのネットワーク・リブートに関する考慮事項
ソフトウェア・サブセットがロードされた後にシステムが自動的にリブートしないとき,またカーネル・デバイス・ドライバを必要とする ISA バスのグラフィックス・デバイスがシステムにある場合には,システムをリブートする前に,isacfg
エントリを変更して,カーネル・デバイス・ドライバに一致させなければなりません。
次のコマンドを入力する際には,行の途中で [Return] キーを押さないで,入力行を自然に改行させてください。 バックスラッシュ (\) 文字は,行の継続を示しています。 コマンド行ではバックスラッシュを入力しないでください。
>>> isacfg -mod -slot slot_number -dev device_number \ -handle vendor_handle -etyp 1 -enadev 1
この例では,vendor_handle に,ベンダのインストレーション・ドキュメントに記載されているハンドルを指定してください。
RIS サーバ上の汎用カーネルにカーネル・グラフィックス・デバイス・ドライバがすでに組み込まれている RIS 領域から RIS インストレーションを実行し,ベンダのインストレーション・ドキュメントに記載されているハンドルをすでに設定している場合は,このコマンドを実行する必要はありません。 システムが自動リブート機能をサポートしていない場合は,ブート用のコマンドが画面上に表示されます。