6    プロセッサ固有の情報

本章では,AlphaServer プロセッサの特定のモデルとクラスをサポートするためのオペレーティング・システム機能に関する情報を提供します。また,特定のプロセッサ・モデルに対して恒久的で限定的な構成上の制限事項についても説明します。次の情報が含まれます。

6.1    旧式のプロセッサ

旧いシステムに関しては以下の注意事項があります。

Alpha VME シングルボード・コンピュータ

Alpha VME シングルボード・コンピュータ (SBC) および PCI/ISA EBMnn モジュール SBC 向けにオペレーティング・システムを構成する方法の詳細については,『『System Configuration Supplement: OEM Platforms』』を参照してください (PCI/ISA モジュール・システムおよびそのコンポーネントの製品ファミリは,以前は DIGITAL Modular Computing Components ―― DMCC と呼ばれていました)。

VME バスに対するサポートは,オペレーティング・システムの将来のリリースでは廃止される予定です。それに伴い,このバス技術を使用するシステムやオプションも廃止されます。

EISA 設定ユーティリティ

Tru64 UNIX およびそのソフトウェア補助機能でサポートされている ECU (EISA Configuration Utility) はバージョン 1.10 以上です。使用しているシステムで EISA バスが構成されている場合には,サポートされているこのバージョンまで ECU をアップデートしてください。

6.2    AlphaServer TS202c

AlphaServer TS202c システムは,デュアルプロセッサのシステムで,16 GB のメモリを搭載するように構成できます。このシステムには,2 つの cPCI スロットがありますが,ディスク・ストレージ・デバイスなしで構成されています。システムは,ネットワーク・ブート可能なスタンドアロン・システム (SAS) カーネルを実行するようになっています。

本節には,Tru64 UNIX バージョン 5.1B について,AlphaServer TS202c システム固有の情報が含まれています。この情報は,2001 年 5 月に『Release Notes and Installation Instructions for AlphaServer TS202c Systems』として発行されました。本リリースでは,インストール情報は Tru64 UNIX 『インストレーション・ガイド』に組み入れられました。

次の情報を提供します。

6.2.1    オペレーティング・システム機能

次の機能は,AlphaServer TS202c のリリースをサポートするために Tru64 UNIX バージョン 5.1 のベース・オペレーティング・システムで初めて追加された機能です。

6.2.2    オペレーティング・システム機能の制限事項

以下の使用上の制限事項は,Tru64 UNIX バージョン 5.1B にのみ当てはまります。

ファームウェア要件

AlphaServer TS202c でネットワーク・ブート可能カーネルを実行するには,ファームウェアのリビジョン・レベルがバージョン X6.0-0 以上でなければなりません。

RIS からのインストール

本リリースのオペレーティング・システムでは,RIS サーバからのインストールをサポートしていません。本ソフトウェアは,インストール用の CD-ROM からのみインストールできます。

誤ったフォーマットの rc.config ファイル

EVM (Event Manager) は,rc.config ファイルに空行が含まれていると異常処理をすることがあります。発生しうる処理異常としては,EVM デーモンによるコア・ダンプまたはブート処理中のシステムによる次のエラーの表示があります。

evmwatch: Failed to create EVM listening connection
evmwatch: Error: Connection error
Failed to create EVM listening connection
evmwatch: Error: Connection error    
S97evm: Communication with syslogd is not functioning    
evmpost: Failed to create EVM posting connection
evmpost: Error: Connection error
evmpost: Failed to create EVM posting connection
evmpost: Error: Connection error
evmpost: Failed to create EVM posting connection   
evmpost: Error: Connection error
SysMan authentication server started   
SysMan Station Server (smsd) started
The system is ready.

環境モニタによる不正なエラー・メッセージの表示

/usr/sbin/envconfig コマンド行ユーティリティを使って ENVMON_HIGH_THRESH 属性の値を変更すると,次のエラー・メッセージが表示されます。

env_high_temp_thresh: attribute does not allow this operation

このメッセージにもかかわらず,属性値は変更され,デーモンは再スタートされます。

正しい属性値を表示するには,次のコマンドを使います。

# /usr/sbin/envconfig -q

バイナリ・エラー・ログの不正なエントリ

システムは Correctable Environmental Machine Check エラー (Error 686) を Uncorrectable Environmental Machine Check エラー (Error 682) として,バイナリ・エラー・ログに誤って記録します。これは,AlphaServer TS202c システム固有の問題で,オペレーティング・システムの将来のリリースでは修正されます。

バイナリ・エラー・ログ・イベントがダブル・エラー停止として不正に報告されることがある

タイプ 113 のバイナリ・エラー・ログ (binlog) イベントは,EVM (Event Manager) が報告するときは Double Error Halt イベントと報告され,分析ユーティリティが報告するときは Console Data Log イベントとして報告されます。EVM はこのイベントの発生を,root ユーザにメールするか,システム・コンソールに表示することによって知らせます。

イベントは実際には Console Data Log イベントです。このタイプのイベントは,ダブル・エラー停止,回復不能な環境エラー,プラットフォーム固有のシステム障害など,いくつかの種類のエラーが生じると報告されます。イベントの原因については,その変換データを参照してください。

hwautoconfig がサブシステムのデバイス特殊ファイルを作成しない

システムのブート時に,hwautoconfig ユーティリティによってサブシステムが構成されますが,サブシステムのデバイス特殊ファイルが作成されません。サブシステムのデバイス特殊ファイルを作成するには,sysconfig -u コマンドを使用してサブシステムの構成解除を行い,sysconfig -c コマンドを使用してサブシステムを再構成します。

または,autosysconfig ファイルの中で環境変数 SUBSYSTEM_LIST にサブシステムの名前を追加してから,hwautoconfig ユーティリティを実行することによって問題を回避することもできます。

kmem_debug_leak フラグがセットされるとアイドル状態のシステムでパニックが発生することがある

アイドル状態の AlphaServer TS202c システムで kmem_debug が有効になっていて kmem_debug_leak フラグがセットされると,パニックが発生することがあります。この問題を回避するには kmem_debug_leak フラグをセットしないようにします。

SEL ログに不正なコードが記録される

AlphaServer TS202c システムで 670 および OS Panic イベントが記録されるとき,SEL イベント情報が正しく記録されないことがあります。これらのイベントは,第 3 バイトが DF にセットされて記録されますが,本来は 660/670 のエントリについては C0,OS Panic については C1 がセットされるはずです。

この不正な記録によって,以下のイベントについて重複が生じます。

670 イベント・コード

x40 PAL detected Bugcheck Errorx43 EV68 detected Dcache Tag Parity Errorx45 EV68 detected Duplicate Dcache Tag Parity Errorx46 EV68 detected Bcache Tag Parity Errorx4A EV68 detected Double Bit ECC Memory Fill Errorx5C EV68 detected Second Dcache Store Data ECC Error

OS Panic コード

x40 ku_recvfrom - not SO_NAMEx45 m_copym offsetx46 m_copym sanityx43 nfs3_bio: write countx4A nfs_dgreceive 3x5C rtinithead

これらのイベントはバイナリ・エラー・ログでは正しく記録されます。

6.2.3    mksas コマンドの使用

以下の使用上の注意事項は,AlphaServer TS202c システムで mksas コマンドを使用する場合にのみ当てはまります。

6.2.3.1    構成ファイルの要件

mksas ユーティリティは,ブート可能イメージとインメモリ・ファイル・システムを生成するために使用します。このイメージは,ネットワークを介してシステムをブートし,ディスクレスで動作する機能を提供します。mksas を使用するには,ターゲット・システムのための構成ファイルが必要です。たとえば,ターゲット・ホストが TS2ONE なら,ホスト・システム TS2TWO 上でブート可能なイメージを生成するためには,TS2ONE のための構成ファイルが TS2TWO 上に必要です。

6.2.3.2    su コマンドの使用に関する制限事項

mksas ユーティリティを使用して作成したカーネルを実行しているときは,su コマンドを使用して root 以外のユーザ ID に切り替わることができません (この問題は,不正な umaskmksas ユーティリティで設定されることが原因です)。

6.2.3.3    省略時の構成ファイルに ftp が含まれていない

システムを構成してコア・ダンプ・ファイルをリモート・システムに書き出すようにするには,省略時の構成ファイルを編集して ftp コマンドをオプションとして含める必要があります。省略時の構成ファイルの編集については,6.2.3 項mksas(8) を参照してください。

6.2.3.4    mksas コマンドが警告メッセージを発する

mksas コマンドに指定した構成ファイルに重複するエントリが含まれていると,次のようなエラー・メッセージが表示されます。

Entry no: 160  -> /usr/lib/sabt/etc/mksas.inittab /etc/inittab
WARNING Entry no: 160. Duplicated entry. The file
/etc/inittab in the second field
is already given earlier.
Entry no: 161  -> /etc/rc.config /etc/rc.config
WARNING Entry no: 161. Duplicated entry. The file
/etc/rc.config in the second field
is already given earlier.
Entry no: 162  -> /etc/rc.config.common /etc
WARNING Entry no: 162. Duplicated entry. 
The file/etc/rc.config.common in the second field
is already given earlier.
Entry no: 163  -> /etc/hosts /etc/
WARNING Entry no: 163. Duplicated entry. 
The file /etc/hosts in the second field
is already given earlier.

このメッセージは無視してください。カーネルはエラーなしで構築されます。

6.2.3.5    addlist ファイルのサンプルを提供

システムには,/usr/lib/sabt/etc/addlist_file のサンプルが含まれています。addlist_file を使用して,miniroot ファイル・システムに追加ファイルを含めます。このサンプルは /usr/lib/sabt/etc ディレクトリにあり,mksas.inv という名前です。

6.2.3.6    処理の終了時に作業ディレクトリを削除する mksas の -t オプション

-tdirectory_name オプションを mksas コマンドで使用して,カーネル構築時に使用される一時作業領域を指定できます。mksas ユーティリティは処理を終了すると,一時作業領域とその作業領域を含んでいたディレクトリを削除します。-t オプションを使用するときは,削除したくないファイルが含まれている場所を directory_name に指定しないでください。

6.2.4    除外メモリの割り当て

除外メモリは,UNIX によって管理されるけれども,テストとコア・ダンプの対象とならないメモリです。メモリの除外領域は,contig_malloc() を使って割り当てることができます。これは,擬似デバイス・ドライバの postconfig_callback ルーチンの中で行えます。

除外メモリの割り当ての手順は,次の点を除き,通常の連続メモリ割り当て (malloc) に似ています。

呼び出しは,次のような形式になります。

addr = contig_malloc(size,  alignment , start_addr, M_EXEMPT, flags);
 				              |     	|	          |
 				              |	     |	          割り当て開始アドレス,または
 				              |	     |	          未指定の場合はゼロ。
 				              |	     start_addr が指定されていなければ割り当てのアラインメント。
 				              |	     指定がなければベースのページ・サイズとなる。
 				              バイト単位の割り当てのサイズ。必須。

除外メモリは, cma_dd サブシステムを次のように sysconfigtab エントリを使って定義することによって構成することもできます。

CMA_option = size - 0x40000, alignment - 0, Addrlimit - 0, Type - 150, Flag - 1
 

引数は前記の呼び出しと同じです。150 という値は malloc.h の内容に対応します。

割り当て領域に不良ページがあると,呼び出しによって返される addr の下位ビットがセットされます。

6.2.5    AlphaServer TS202c の構成

本節では,AlphaServer TS202c について次の構成手順を示します。

6.2.5.1    ネットワーク・ブート可能なカーネルの作成

mksas ユーティリティを使ってネットワーク・ブート可能 (SAS) カーネルを作成します。特に指定しなければ,SAS カーネルはシステムをシングルユーザ・モードでブートするために必要な最小限の数のファイルとディレクトリの構成で作成され,メモリ・ファイル・システムに格納され,インメモリのファイル・システムとして動作するようになっています。テストとデバッグのために,ディスク・ブート可能な SAS カーネルを作成することもできます。mksas ユーティリティは,カーネルを実行するシステム上にあるカーネル構成ファイルを使ってカーネルを作成します。その後に,追加ファイルを追加します。

次の手順は,SAS カーネルを作成し,ネットワークを介してブートする方法の例を示します。デバッグの手順も説明します。

  1. ホスト・システムを構成して,mksas ユーティリティをサポートするバージョンの Tru64 UNIX オペレーティング・システムを実行させます。このホスト・システムには,AlphaServer TS202c カーネル構成ファイルのコピーも含まれていなければなりません。

  2. ホスト・システムの上で,ネットワーク・ブート可能な SAS カーネルと miniroot ファイル・システムを作成します。デバッグのために,この SAS カーネルと miniroot ファイル・システムのディスク・ブート可能なコピーも作成しておきます。

  3. ホスト・システムを構成して BOOTP と tftp を実行するようにして,ネットワークを介して SAS カーネルをブートするクライアント・システムを決めます。

  4. クライアント・システム上で,boot コマンドに,次のようにブート・デバイスとしてネットワーク接続を指定して実行します。

    >>> boot eia0
     
    

追加機能と miniroot ファイル・システムのファイルを追加するには,-a オプションを使用して,addfile_list または追加ファイルのリストを mksas コマンドに指定します。このコマンドに指定できるオプションの一覧については,mksas(8) を参照してください。省略時の構成にファイルを追加するときは,依存関係のあるファイルをすべて含める必要があります。たとえば,savecore コマンドを使ってクラッシュ・ダンプ・ファイルをリモート・ホストに書き出す場合には,構成に /usr/sbin/ftp/usr/sbin/ftpd を含める必要があります。

ファイルを追加するとき,-C オプションを mksas コマンドに指定してファイル・システムのサイズを調べることができます。 このオプションでは,miniroot ファイル・システムのサイズはわかりますが,カーネルのサイズは含まれません。通常,カーネルは約 13 MB です。ファイル・システムの合計サイズを算出するには,このサイズを -C オプションによって返されるサイズに足します。AlphaServer システムは,92 MB までのサイズのイメージをブートできます。

6.2.5.2    サーバとクライアントの構成

ネットワーク・ブート可能な SAS カーネルを作成したら,SAS カーネルのブート元となるサーバ・システムを構成する必要があります。また,クライアント・システムを構成して SAS カーネルをブートして実行するようにします。サーバ・システムには,BOOTP に対するサポートと,RFC 1782 と 1783 に対応した tftp プログラムが必要です。

サーバを構成するには,次の手順に従います。

  1. /etc/inetd.conf ファイルを編集して,joindtftp がクライアントからのブート・リクエストに応えるようにして,SAS カーネル・イメージのブート元となるディレクトリを指定します。それには,次の行のコメントを解除し,tftp の行の末尾に正しいディレクトリを追加します。

    #tftp  dgram  udp  wait  root  /usr/sbin/tftpd  tftpd /tmp
    #bootps  dgram  udp  wait  root  /usr/sbin/joind  joind
    

    /tmp ディレクトリの指定を削除し,SAS カーネルを格納しておくディレクトリを代わりに指定します。

  2. rcmgr コマンドを使って,joind のランタイム構成変数を設定します。

    # rcmgr set JOIND yes
    
    # rcmgr set JOIND_FLAGS ""
    

  3. /etc/bootptab ファイルを作成または編集します。このファイルは,サーバがリモート・クライアントをブートするのに必要な情報を含んでいるテキスト・ファイルです。xjoin GUI を使用して,/etc/bootptab ファイルを編集または作成します。詳細については,xjoin(8) および bootptab(4) を参照してください。

    このファイルに次の行を追加します。

    .ris.dec:hn:vm=rfc1048:sm=255.255.255.0:
    .ris0.alpha:tc=.ris.dec:bf=/usr/mksas.kernel:
    anchor:tc=.ris0.alpha:ht=ethernet:gw=16.142.160.1:ha=00508B6B32CC:
    ip=16.142.160.55:
     
    

    .ris.dec エントリは,すべてのクライアントに居欝する特性を定義します。それぞれのフィールドは,次のことを指定します。

    .ris0.alpha エントリは,bootp サーバを使用するすべてのクライアントに共通する特性を定義します。それぞれのフィールドは,次のことを指定します。

    例に示したホスト名エントリは,特定のクライアントの特性を定義します。それぞれのフィールドは,次のことを指定します。

  4. 次のコマンドを使って joind サーバ・プロセスを開始します。

    /sbin/init.d/dhcp start

クライアントをブートするには,次のコマンドを使います。

>>> boot eia0 

デバイス名 eia0 は,ネットワーク接続の名前と同じです。デバイス名は,AlphaServer システムによっては異なる場合があります。次のコンソール・コマンドを使ってデバイス名を調べることができます。

>>> show dev 

64 MB を超える大きさの SAS カーネルをブートする場合,eia0_TFTP_blocksize コンソール変数の値を 1450 に設定する必要があります。

>>> set eia0_TFTP_blocksize 1450 

クラッシュ・ダンプ・ファイルを除外メモリまたはリモート・ホストに書き出すことができます。除外メモリ・ダンプは, dump_to_memory システム属性を設定し, メモリ・コア・ダンプの発生時にカーネル・ダンプ・サブシステムが使用する除外メモリまたはメモリ全体を指定することによって,行われるようになります。 システム属性 dump_exmem_addr は,ダンプ可能な領域の開始位置を (仮想アドレスまたは物理アドレスとして) 指定します。システム属性 dump_exmem_size は,利用可能なバイト数を指定します。特に指定しなければ,除外メモリの内容はダンプに含まれません。これを変更するには,システム属性 dump_exmem_include を設定します。これらのシステム属性の詳細については,sys_attrs_generic(5) を参照してください。

クラッシュ・ダンプ・ファイルをリモート・ホストに書き出すには,-r オプションを savecore コマンドに指定して使います。このオプションを使用するときは,ホスト,ユーザ名,パスワード,リモート・ホストに書き出すファイルを指定します。構成ファイルを使用して ftp 情報と書き出すファイルの名前を指定できます。構成ファイルを使用すれば,ユーザ名とパスワードの秘密を保てます。詳細については,savecore(8) を参照してください。

6.3    AlphaServer GS140 論理パーティション

1 つの AlphaServer GS140 システムは,最高 3 つの論理パーティションに分割することができます。各パーティションは,専用のハードウェア・リソース群に割り当てられます。オペレーティング・システムやアプリケーション・ソフトウェアは,パーティションを 1 つの AlphaServer GS140 システムとして扱います。

論理パーティションは,非共用モデルを採用しています。すなわち,1 つのパーティションに割り当てられたすべてのハードウェア・リソース (プロセッサ,メモリ,および I/O) は,そのパーティションに隔離されます。パーティションで実行しているオペレーティング・システムのインスタンスだけが,そのパーティションのハードウェア・リソースにアクセスできます。

論理パーティションを使用すれば,必要なフロア・スペースや電力消費を削減し,(コンピュータ・ルームを冷却する必要性が減少するので) 熱の発散効率を向上させることができます。たとえば,1 つの企業内の 2 つの部門が,コンピュータ利用について異なるニーズを持っていることがあります。この場合は,異なるアプリケーションを実行しなければならないこともあるでしょうし,オペレーティング・システムの構成や調整が異なることもあるでしょう。論理パーティショニングにより,1 台の AlphaServer GS140 コンピュータで,両方の部門のコンピューティング・ニーズを満たすことができます。

6.3.1    ハードウェアの要件

パーティションのハードウェア要件は,次のとおりです。

以降,この節ではパーティションを構成するために実行するタスクを説明し,パーティショニングした AlphaServer GS140 システムを管理する方法についての情報を提供します。ここで説明するトピックでは,次の作業について説明します。

6.3.2    論理パーティションのインストレーションと操作の準備

システムに添付されているハードウェア・ドキュメントを読んで,システムの操作方法を覚えてください。パーティショニングに特に関係するのは,システムの OFF/SECURE/ENABLE/RESET スイッチおよびいくつかのコンソール・コマンド (たとえば,bootcreateinitset,および show など) です。

パーティションをセットアップする前に,システム・ハードウェアが完全にインストールされ,すべての自己診断テストが正常終了することを確認します。

注意

パーティションへのオペレーティング・システムのインストールを開始する前に,パーティショニング手順を一度通読してください。パーティショニングされたシステムには,システムを運用可能な状態にする前に,管理について確認しておくべきことがあります。あるパーティションでのコンソール操作が別のパーティションの運用を妨げないように,予防措置を講じる必要があります。

次の項では,本書で使用する論理パーティションの用語を説明します。これらの用語を確認したら,6.3.3 項に進んでください。

6.3.2.1    一般に使用される用語の定義

パーティションを構成する前に,次の用語について知っておきましょう。

論理パーティション

オペレーティング・システムの 1 つのインスタンスが専用に使用するための,シングル・システム内のハードウェア・リソース (CPU,I/O,MEMORY,およびコンソール) の論理的なグループ化。1 つの物理システムが複数の論理パーティションを備え,それぞれのパーティションでオペレーティング・システムの独立したインスタンスを実行することもあります。

1 次パーティション

パーティション番号 0。パーティションが無効になっている場合に (つまり,すべてのハードウェア・リソースが 1 つのパーティションにある),アクティブなコンソール端末を持つパーティション。

2 次パーティション

番号が 0 より大きいパーティション。1 次パーティションのコンソールで lpinit コマンドが実行された後にコンソール・プロンプトを表示するパーティションの 1 つ。

1 次コンソール

1 次パーティションに接続されているコンソール端末。パーティションが無効な場合に唯一アクティブなコンソール端末です。

2 次コンソール

2 次パーティションに接続されているコンソール端末。パーティションが有効な場合のみアクティブになります。

電源 OFF/ENABLE スイッチ

AlphaServer GS140 コントロール・パネルにある 4 点スイッチ。スイッチの 4 点は次の機能を実行します。

コンソール・プロンプト

パーティションのコンソール端末上に表示され,コンソール・ファームウェアがコマンドを受け付ける準備ができたことを示すプロンプト。

P##>>> 

ここで ## は,コンソール・ファームウェアが現在実行されているプロセッサの番号です。これは,以降の例に示すように,通常,現在のパーティションの 1 次プロセッサです。

ctrl/p halt

コントロール・キーを押したまま,文字 p を押すと,パーティション 0 の 1 次プロセッサが停止してコンソール・モード (P00>>> プロンプト) に入ります。これは,1 次コンソール端末のみで可能です。halt 操作は,電源スイッチを SECURE の位置に合わせることで無効にできます。halt 操作は,2 次パーティションでは無視されます。

P##>>>stop N">

P##>>>stop N

コンソール・プロンプト (P##>>>) で stop N と入力すると,プロセッサ N が停止してコンソール・モードに入ります。このコマンドを 1 次コンソール端末で実行すると,任意のパーティションの任意のプロセッサを停止することができます。たとえば,パーティション 1 の 1 次プロセッサがプロセッサ 4 の場合,次のコマンドにより,プロセッサ 4 がコンソール・モードに入ります。

P00>>>stop 4

P##>>>continue N

プロセッサ Nctrl/p halt または stop N コマンドによってコンソール・モードに入った場合,P##>>> プロンプトで continue N と入力すると,プロセッサがプログラムの実行を再開します。たとえば次のようにします。

P##>>>continue 4

停止したプロセッサが 1 つの場合は,プロセッサ番号 (N) を省略できます。

P##>>>init

任意のパーティションのコンソール (P##>>>) プロンプトで,init と入力すると,システム全体が完全に再初期化されます。アクティブなパーティションがすべて即座に終了し,システムがリセットされます (電源スイッチを瞬間的に RESET の位置に動かしたときと同様です)。パーティションが有効な場合,コンソールは次のプロンプトを表示して,init コマンドの確認を要求します。

Do you really want to reset ALL partitions?(Y/<N>)

Y を入力して init コマンドを実行するか,N を入力して取り消します。

6.3.3    論理パーティションの構成とインストレーション・タスク

以降の各項では,AlphaServer GS140 システムのパーティショニングを行うための特定のタスクを説明します。それぞれのタスクは,示された順に実行しますが,場合によって省略できるタスクもあります。

この項を以前に読んでおり,スタートアップ・コマンドの通常の実行順を知りたいだけならば,ここにその要約を示します。

P00>>> set lp_count  n
            (論理パーティションの数に n を設定します)
 
P00>>>init
            (1 次パーティションを初期化します)
 
P00>>>lpinit
            (各 2 次パーティションを開始します)
 
P00>>>boot
            (1 次パーティションをブートします)
 
P##>>>boot
            (各 2 次パーティションをブートします)

lpinit コマンドを省略すると,不適切な操作が行われます。コンソール・ファームウェアでは,これを防ぐために,lp_count がゼロ以外のときに,1 次パーティションのコンソール端末で boot コマンドが実行された場合,自動的に lpinit コマンドを実行するようにしています。

各 2 次パーティションは,スタートアップ時に構成情報を表示します。このメッセージには,6.3.3.8 項で説明しているように,連続する文字 Y が続く可能性があります。 これはエラーではないので無視してかまいません。

6.3.3.1    システムのハードウェア構成の確認

ハードウェアが論理パーティショニングのために正しく構成されていることを確認する必要があります。また,後で (パーティションを構成するときに) 使用するために,ハードウェア構成についていくつかの情報を記録しておく必要があります。次の手順に従って,ハードウェア構成を確認します。

  1. 電源の OFF/ENABLE スイッチを ENABLE の位置に設定することでシステムの電源を投入します。

    注意

    新たに設置されたシステム (出荷時にソフトウェアがインストール済み),または既存のシステムで,auto_action コンソール環境変数が BOOT か RESTART に設定されているシステムは,ハードウェアの自己診断が完了すると,自動的にオペレーティング・システムをブートします。この場合は,コンソール端末で ctrl/c を入力して,自動ブートを中断する必要があります。自動ブートが中断できない場合は,オペレーティング・システムが完全にブートするのを待ってから,そのオペレーティング・システムをシャットダウンします (ctrl/p を入力して自動ブートを停止してはなりません)。論理パーティションのセットアップを試みる前に,出荷時にインストール済みのソフトウェアについての詳細を『インストレーション・ガイド』で確認してください。

    出荷時にインストール済みのソフトウェアのディスクは,いずれかのパーティションのシステム・ディスクとして使用されている場合があります。オペレーティング・システムのインストールについては6.3.6 項を参照してください。

  2. 約 15 秒後に,次の例のような構成情報が 1 次コンソール画面に表示されます。

    F   E   D   C   B   A   9   8   7   6   5   4   3   2   1   0   NODE #
                                A   A   M   .   M   P   P   P   P   TYP
                                o   o   +   .   +  ++  ++  ++  ++   ST1
                                .   .   .   .   .  EE  EE  EE  EB   BPD
                                o   o   +   .   +  ++  ++  ++  ++   ST2
                                .   .   .   .   .  EE  EE  EE  EB   BPD
                                +   +   +   .   +  ++  ++  ++  ++   ST3
                                .   .   .   .   .  EE  EE  EE  EB   BPD
     
                                    .   +   +   +   .   +   +   +   C0 PCI +
        .   .   .   .   .   .   +   .   .   +   .   .   +   +       C1 XMI +
     
    .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   C4
                    +   .   +   +   .   .   .   .   +   .   .   +   C5 PCI +
    .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   .   C6
                    +   .   +   +   .   +   +   +   .   .   .   +   C7 PCI +
                                .   .   .   +   .   .   .   .          EISA +
     
                                .   .  A1   .  A0   .   .   .   .   ILV
                                .   . 1GB   . 1GB   .   .   .   .   2GB
    Compaq AlphaServer GS140 8-6/525, Console V5.4 15-MAR-99 10:07:33
    SROM V1.1, OpenVMS PALcode V1.48-3, Tru64 UNIX PALcode V1.45-3
    System Serial =  , OS = UNIX, 12:58:49  March 15, 1999
    Configuring I/O adapters...
    isp0, slot 0, bus 0, hose0
    isp1, slot 1, bus 0, hose0
    tulip0, slot 2, bus 0, hose0
    isp2, slot 4, bus 0, hose0
    isp3, slot 5, bus 0, hose0
    tulip1, slot 6, bus 0, hose0
    demna0, slot 1, bus 0, xmi0
    kzmsa0, slot 2, bus 0, xmi0
    kzmsa2, slot 5, bus 0, xmi0
    kzpsa0, slot 3, bus 0, hose5
    tulip2, slot 8, bus 0, hose5
    tulip3, slot 9, bus 0, hose5
    pfi0, slot 11, bus 0, hose5
    tulip4, slot 12, bus 0, hose7
    floppy0, slot 0, bus 1, hose7
    kzpsa1, slot 4, bus 0, hose7
    tulip5, slot 4, bus 2, hose7
    tulip6, slot 5, bus 2, hose7
    tulip7, slot 6, bus 2, hose7
    tulip8, slot 7, bus 2, hose7
    pfi1, slot 6, bus 0, hose7
    pfi2, slot 8, bus 0, hose7
    kzpsa2, slot 9, bus 0, hose7
    P00>>>
     
     
    

  3. NODE # で終わる行は,スロット番号を示します (構成手順のところで説明します)。システムには最高 9 つのスロットがあり,それぞれにスロット番号が付いています。次の行 (TYP で終わる行) は,各スロットのモジュールのタイプを示します。各スロットのモジュールのタイプを記録してください。

    	P = CPU (dual processor CPU module)
    	M = MEM (memory module)
    	A = IOP (IO port module)
     
    	  8   7   6   5   4   3   2   1   0
    	+---+---+---+---+---+---+---+---+---+
    	|   |   |   |   |   |   |   |   |   |
    	|   |   |   |   |   |   |   |   |   |
    	+---+---+---+---+---+---+---+---+---+
     
     
    

  4. 各パーティションにスロット (したがってモジュール) を割り当てることにより,システムを論理パーティションに分割します。各パーティションには,少なくともデュアル CPU モジュールが 1 つと MEM モジュールが 1 つ,および IOP モジュールが 1 つ割り当てられます。AlphaServer GS140 には全部で 9 つのスロットがあるので,最大 3 つのパーティションを構成することができます。

    注意

    1 つの CPU モジュールに,両方が同じパーティションに割り当てられている必要がある 2 つのプロセッサがあります。

  5. システムが最低限の要件を満たしていれば,次の項に進みます。そうでない場合は,要件を整えてから (ハードウェアを追加するなどして),次の項に進んでください。

6.3.3.2    ファームウェアのリビジョン・レベルの確認

論理パーティションには,コンソール・ファームウェアのサポートが必要です。『リリース・ノート』を参照して,リビジョン・レベルの最低要件が変わっていないことを確認してください。システムのファームウェアが論理パーティションをサポートしていることを確認するには,1 次コンソールで次のコマンドを使用して,ファームウェアのリビジョン・レベルを表示します。

P00>>>show version

コンソールに次のようなメッセージが表示されます。

version  V5.4,  15-MAR-1999 10:07:33

ファームウェアがバージョン 5.4 以上であることを確認します。システムのファームウェアをアップグレードする必要がある場合には,ハードウェアのマニュアルでファームウェアのアップグレード手順を参照してください。ファームウェア CD-ROM が,ソフトウェア・キットに付属していますが,Web ページから,または ftp でファームウェアをダウンロードすることもできます。ファームウェアの検索と更新についての詳細は,『インストレーション・ガイド』を参照してください。

6.3.3.3    論理パーティションの構成

一連のコンソール環境変数 (EV) を使用して,論理パーティションを構成して有効 (または無効) にします。2 つのコンソール環境変数は,16 進数の形式を取ります。これはビットマスクで,マスク内のビット位置がモジュールまたはプロセッサ番号に対応します。ハードウェア構成規則では,次の基準に従い,モジュール・タイプに応じてモジュールが特定のスロット番号に設置されている必要があります。

プロセッサ・マスク変数 (lp_cpu_mask) は,数字の 3 を CPU モジュールのスロット番号の 2 倍だけ左にシフトして設定します。各スロットについて考えられる CPU マスクは,次のとおりです。

    プロセッサ 00 と 01  (スロット 0):3 << (2 * 0) = 003
    プロセッサ 02 と 03  (スロット 1):3 << (2 * 1) = 00c
    プロセッサ 04 と 05  (スロット 2):3 << (2 * 2) = 030
    プロセッサ 06 と 07  (スロット 4):3 << (2 * 4) = 0c0
    プロセッサ 08 と 09  (スロット 5):3 << (2 * 5) = 300
    プロセッサ 10 と 11  (スロット 6):3 << (2 * 6) = c00
 
 

lp_cpu_mask 変数の値は,個々の CPU モジュール・スロットのマスクの論理和をとることにより生成されます。たとえば,スロット 0 と 1 の CPU モジュールにある 4 つのプロセッサをパーティション 0 に割り当てる場合,lp_cpu_mask0 変数に値 00f を代入します。

I/O ポート・マスク変数 (lp_io_mask) は,数字の 1 を IOP モジュールのスロット番号だけ左にシフトして設定されます。各スロットについて考えられる IOP マスクは,次のとおりです。

スロット 8 の IO ポート・モジュール:1 << 8 = 100
スロット 7 の IO ポート・モジュール:1 << 7 = 080
スロット 6 の IO ポート・モジュール:1 << 6 = 040

パーティションに IOP モジュールが 2 つある場合,lp_io_mask 変数の値は,個々の IOP モジュール・スロットのマスクの論理和をとることにより生成されます。たとえば,スロット 7 と 8 の IOP モジュールをパーティション 1 に割り当てる場合,lp_io_mask1 変数の値は 180 になります。

IOP モジュールを 2 次パーティションに割り当てる場合,そのパーティションに割り当てられている IOP のうちの 1 つは,KFE72 オプションがインストールされた DWLPB オプションに接続されていなければならないことを忘れないでください。KFE72 オプションは,2 次パーティション用のコンソール・シリアル・ポートを提供します。

6.3.3.4    環境変数の選択と設定

論理パーティションのためのコンソール環境変数を作成するには,まず,パーティションの数と,各パーティションに割り当てられているスロット (すなわち,CPUMEM,および IOP モジュール) を特定します (先に記録したモジュール・タイプとスロット番号を使用します)。特定できたら,コンソール環境変数を作成することができます。

コンソール環境変数および値の要約を次に示します。

コンソール環境変数
lp_count パーティションの数
lp_cpu_maskN パーティション N に対する CPU 割り当てマスク
lp_io_maskN パーティション N に対する IOP モジュール割り当てマスク
lp_mem_mode メモリ分離モード

次の表に,6.3.3.3 項の構成情報に基づいて,2 つのパーティションを構成する例とそのモジュールを示します。

パーティション モジュール
Partition 0 スロット 0 および 1 の CPU モジュール (CPU 0〜3,マスク = 00F)
  スロット 8 の IOP モジュール (I/O Port,マスク = 100)
  スロット 6 の MEM モジュール (2GB メモリ)
Partition 1 スロット 2 および 3 の CPU モジュール (CPU 4〜7,マスク = 0F0)
  スロット 7 の IOP モジュール (I/O Port,マスク = 080)
  スロット 4 の MEM モジュール (1GB メモリ)

メモリ用のコンソール環境変数マスクは存在しません。コンソール・ファームウェアは,メモリ・モジュールをパーティションに割り当てます。ファームウェアは,各パーティションに割り当てられるメモリの量の均衡を図ろうとします。

環境変数の作成または変更を行うには,コンソール・プロンプトで次のコマンドを実行します。ここで使用している値は,この項の最初に説明した,2 つのパーティションの例に基づくものです。実際に入力する値は,ハードウェアの構成とパーティションのレイアウトに依存します。

lp_count 環境変数の値は 0 です (これは後で変更します)。

コンソール環境変数が作成されている場合,次のコマンドを入力するとそれらが表示されます。コンソール環境変数が存在しない場合は,何も出力されません。

P00>>>show lp*
 
 

コンソール環境変数が存在しない (あらかじめ作成していない) 場合,次のコマンドを使用して環境変数を作成します。

それぞれのコマンドを入力してからの処理は 10 秒間かかります。環境変数が作成されると,コンソールに各環境変数の値がエコーされます。

P00>>>create -nv lp_count 0
P00>>>create -nv lp_cpu_mask0 f
P00>>>create -nv lp_cpu_mask1 f0
P00>>>create -nv lp_io_mask0 100
P00>>>create -nv lp_io_mask1 80
P00>>>create -nv lp_mem_mode isolate

コンソール環境変数がすでに存在する (あらかじめ作成されている) 場合は,次のコマンドを使用して,それらの値を設定します。

P00>>>set lp_count 0
P00>>>set lp_cpu_mask0 f
P00>>>set lp_cpu_mask1 f0
P00>>>set lp_io_mask0 100
P00>>>set lp_io_mask1 80
P00>>>set lp_mem_mode isolate

次の 2 つの項の情報を使用して,コンソール環境変数の設定を表示 (および必要に応じて訂正) します。

6.3.3.5    コンソール環境変数の表示

コンソール環境変数の値を show コマンドを使用して,任意のパーティションのコンソールに表示できます。たとえば,lp_count の値を表示するには,次のように入力します。

P00>>>show lp_count

パーティショニング環境変数をすべて表示するには,次のコマンドを入力します。

P00>>>show lp*

コンソール環境変数が正しければ,次の項を無視して,6.3.3.7 項に進んでください。正しくない場合は,6.3.3.6 項に進んで必要な訂正を行います。

6.3.3.6    コンソール環境変数の訂正

注意

環境変数名の前に lp_ が付いたコンソール環境変数名は,1 次パーティション (パーティション 0) のコンソールだけを使用して設定しなければなりません。これらの値は,2 次パーティションで変更してはなりません。

set コマンドを使用して,任意のまたはすべてのコンソール環境変数を変更します。たとえば,すべての環境変数を変更するには,次のコマンドを実行します。

P00>>>set lp_count 0
P00>>>set lp_cpu_mask0 f
P00>>>set lp_cpu_mask1 f0
P00>>>set lp_io_mask0 100
P00>>>set lp_io_mask1 80
P00>>>set lp_mem_mode isolate

6.3.3.7    自動ブート・リセットの無効化

Tru64 UNIX の『インストレーション・ガイド』では,boot_reset コンソール環境変数を ON に設定することを勧めています。しかし,この設定は boot_reset コンソール環境変数を OFF に設定する必要がある論理パーティションとは互換性がありません。これは,パーティションのブートが他の (以前にブートされている) パーティションの運用を妨げないようにするためです。boot_reset コンソール環境変数が ON に設定されていると,ブート・コマンド (P00>>>boot) の実行後にシステム全体がリセットされます。このリセットは,全部のパーティションの運用を即座に終了します。

次のコマンドを実行して,boot_reset コンソール環境変数を無効にします。

P00>>>set boot_reset off

6.3.3.8    メモリ・インターリーブ・モードの設定

interleave コンソール環境変数の値を none に設定します。

P00>>>set interleave none
P00>>>init

インターリーブ・モードを none に設定するときに,コンソール画面に文字 Y が連続的にエコーされることがあります (Y 文字が数行にわたることもあります)。この出力は無視してください。

6.3.3.9    オペレーティング・システム・タイプの UNIX への設定

os_type コンソール環境変数の値を UNIX に設定します。

P00>>>set os_type UNIX

6.3.3.10    auto_action コンソール環境変数の設定

(リセット・スイッチを使用して) POWER-ON または RESET にした後,プロセッサを停止するには,次のコマンドを使用します。

P00>>>set auto_action halt

POWER-ON または RESET の後,オペレーティング・システムを自動的にブートするには,次のコマンドを使用します。

P00>>>set auto_action boot

6.3.4    パーティションの初期化

Tru64 UNIX をパーティションにインストールする前に,パーティションを初期化する必要があります。この操作は,ハードウェア・リソース (CPUIOP,および MEM モジュール) をそれぞれのパーティションに割り当て,2 次パーティションのそれぞれに対してコンソールを生成します。次の手順に従ってください。

  1. lp_count 環境変数の値にパーティションの数を設定します。たとえば,2 つのパーティションを有効にする場合は,次のようになります。

    P00>>>set lp_count 2
    

  2. パーティション 0 を初期化します。

    P00>>>init
    

    構成情報が (前述のように) 1 次コンソール画面上に表示され,その後にコンソール・プロンプト (P00>>>) が表示されます。

  3. 2 次パーティションをすべて初期化します。

    P00>>>lpinit
    

1 次コンソール上には,各パーティションについて,物理メモリの開始アドレスなど,一連のパーティション構成メッセージが表示されます。メモリ構成を変更した場合に,カーネルの再構築が必要かどうかを判断できるようアドレスを記録します。

一般的なパーティション構成を次に示します。

Partition 0: Primary CPU = 0
Partition 1: Primary CPU = 4
Partition 0: Memory Base = 000000000   Size = 080000000
Partition 1: Memory Base = 080000000   Size = 040000000
No Shared Memory
LP Configuration Tree = 128000
starting cpu 4 in partition 1 at address 040010001
starting cpu 5 in partition 1 at address 040010001
starting cpu 6 in partition 1 at address 040010001
starting cpu 7 in partition 1 at address 040010001
 
 

構成された 2 次パーティションのそれぞれについて,2 次コンソール画面に情報が表示され,その後にコンソール・プロンプト (P04>>> など) が続きます。lpinit コマンドを入力した後,2 次コンソールに構成情報が表示されるまでに 20 秒かかります。

6.3.5    インターリーブ・モード・エラーの修正

interleave 環境変数の設定に誤りがあると,コンソールに次のエラー・メッセージが表示されます。

Insufficient memory interleave sets to partition system.
Issue command "set interleave none" then reset system.
 
 

このエラーから回復するには,次のコマンドを入力します。

P00>>>set interleave none

P00>>>set lp_count 0

P00>>>init

その後,この項の手順を繰り返します。

6.3.6    オペレーティング・システムのインストール

パーティションを構成して初期化したら,それぞれのパーティションにオペレーティング・システムをインストールすることができます。オペレーティング・システムのインストールは,『インストレーション・ガイド』の説明に従って行います。

AlphaServer GS140 システムは,Tru64 UNIX がディスクの 1 つにプリインストールされた状態で出荷されます。このディスクは,パーティションのいずれか (通常,パーティション 0) のルート・ディスクとして使用することができます。プリインストール・ディスクを使用するには,それをブートしてから,インストレーションを完了するための手順に従います。省略時の設定では,bootdef_dev コンソール環境変数はプリインストール・ディスクを自動的にブートするように設定されています。そうでない場合は,6.3.3.1 項で記録した bootdef_dev の値を使用します。

注意

IOP モジュールの割り当て方によっては,FIS (出荷時インストール済みソフトウェア) ディスクの名前が変わり,パーティション 0 に割り当てられないこともあります。それぞれのパーティションで次のコマンドを使用して,ディスクの位置を確認します。

P##>>> show device

オペレーティング・システムは,CD-ROM から,またはネットワーク上のリモート・インストレーション・サーバ (RIS) からインストールすることもできます。すべてのパーティションに CD-ROM ドライブを構成することが現実には困難な場合や,RIS サーバが使用できないことがあります。ローカル・ネットワークが使用できる場合は,別の方法として,オペレーティング・システムを CD-ROM から 1 つのパーティションにインストールして,次にそのパーティションを,他のパーティションのための RIS サーバとして構成するという方法があります。リモート・インストレーション・サーバのセットアップについては,『Sharing Software on a Local Area Network』を参照してください。

6.3.7    パーティショニングされたシステムの管理

それぞれのパーティションで実行されているオペレーティング・システムは,あたかもパーティショニングされていないシステム上で実行されているかのように管理することができます。ただし,パーティショニングされたシステムを管理するときに,認識し,考慮すべき AlphaServer GS140 固有の運用特性がいくつか存在します。以降の各節では,これらのトピックについて説明します。

6.3.7.1    運用特性

パーティショニングされたシステムの通常の運用においては,一部の構成タスクおよび初期化タスクを繰り返さなければならないことがあります。これらのタスクには,パーティション間の干渉を防止するために,特別の予防措置が必要なものがあります。次の項では,これらのタスクについて説明します。

6.3.7.1.1    コンソール init コマンド (P##>>>init)

任意のパーティションのコンソール・プロンプトで init コマンドを入力すると,システム全体が初期化されます。これは,すべてのパーティションのオペレーティング・システムを即座に終了します。したがって,システム全体を再初期化する必要がない限り,init コマンドを実行してはなりません。

init コマンドを実行すると,すべてのパーティションを本当にリセットするかどうかを確認するプロンプトがコンソールに表示されます。init コマンドを取り消す場合は noinit コマンドを続行する場合は,yes と答えます。

6.3.7.1.2    オペレーティング・システムのシャットダウンとリブート

パーティションで実行されているオペレーティング・システムをシャットダウンし,コンソール・モード (P##>>> プロンプト) に戻るには,shutdown コマンドを使用します。たとえば次のようにします。

# /usr/sbin/shutdown -h +5 "Shutting down the OS"

shutdown コマンドはまた,オペレーティング・システムをシャットダウンしてからリブートすることもできます。たとえば次のようにします。

# /usr/sbin/shutdown -r +5 "Rebooting the OS"

6.3.7.2    中断されたオペレーティング・システムのブートの回復

オペレーティング・システムのブートが完了しなかった場合,または中断された場合は,コンソール・ブート・ドライバが矛盾した状態になります。この場合,コンソールには,次のメッセージが表示されます。

Inconsistent boot driver state.
System is configured with multiple partitions.
A complete INIT must be performed before rebooting.
 
 

次の手順を使用して,この状態から回復します。

  1. 実行しているすべてのパーティションのオペレーティング・システムをシャットダウンします。

  2. 1 次コンソールで,次のコマンドを実行します。

    P00>>>set lp_count 0
    P00>>>init
    P00>>>set lp_count N
    

    (ここで,N はパーティション数です。)

    P00>>>init
    P00>>>lpinit
    

  3. 各パーティションでオペレーティング・システムをブートします。たとえば次のようにします。

    P00>>>boot
    P04>>>boot
    

6.3.7.3    プロセッサの停止

通常の運用状態では,プロセッサを作業で停止する必要はありません。オペレーティング・システムがシャットダウンされると,プロセッサは停止してコンソール・モードに入ります。何らかの理由で,オペレーティング・システムがハングした場合 (たとえば,ロード可能なデバイス・ドライバのデバッグ中) には,プロセッサを手作業で停止する必要があります。

注意

プロセッサを停止できないことはまれですが,停止できない場合には,4 点スイッチの OFF/ENABLE スイッチを一瞬 RESET の位置に合わせ,システムをリセットしてから,放す必要があります。

次の手順は,電源 OFF/ENABLE スイッチが ENABLE の位置にある場合のみ機能します。

1 次パーティション

1 次コンソール端末で [Ctrl/p] を入力すると,1 次プロセッサがコンソール・モードに入り,P##>>> プロンプトが表示されます。stop N コマンド (N はプロセッサ番号) を使用して,2 次プロセッサを停止することができます (ただし,通常,これは必要ありません)。コンソール・プロンプトと stop コマンドの定義についての詳細は,6.3.2.1 項を参照してください。

2 次パーティション

2 次パーティションは,2 次コンソール端末で [Ctrl/p] コマンドを実行しても停止しません。2 次パーティションをコンソール・モードにするには,次の手順に従います。

  1. 1 次パーティションでオペレーティング・システムをシャットダウンします。

    # /usr/sbin/shutdown -h +5 "Shutting down the OS"
    

  2. 2 次パーティションの 1 次プロセッサを停止します。

    P00>>>stop N
    

    ここで N は,2 次パーティションの 1 次プロセッサの CPU 番号です (通常,2 次パーティションに割り当てられた CPU のうち,最も番号の小さいもの)。たとえば次のようにします。

    P00>>>stop 4
    

6.3.7.4    電源 OFF/ENABLE スイッチの位置

通常のシステム運用では,電源 OFF/ENABLE スイッチは SECURE の位置になければなりません。これにより,[Ctrl/p] によって,プロセッサを誤って停止することを防げます。

6.3.7.5    コンソール環境変数の変更によるパーティションの再構成

論理パーティションを制御するコンソール環境変数 (名前が lp_ で始まるもの) は,2 次パーティションでは変更してはなりません。これらのコンソール環境変数は,すべてのパーティションをシャットダウンし,1 次パーティションのコンソール端末で新しい値を設定することによってのみ変更できます。

新しいパーティションのレイアウトを決定したら,次の手順に従って,パーティションを再構成します。

  1. それぞれのパーティションでオペレーティング・システムをシャットダウンします。

    # /usr/sbin/shutdown -h +5 "Shutting down to reconfigure partitions"
    

  2. パーティションを無効にし,システムをリセットします。

    P00>>>set lp_count 0
    P00>>>init
    

  3. コンソール set コマンドを使用して,任意の,またはすべてのコンソール環境変数を変更します。6.3.3.4 項で説明した パーティションが 2 つ場合の例では,次のコマンドを使用します。

    P00>>>set lp_count 2
    P00>>>set lp_cpu_mask0 f
    P00>>>set lp_cpu_mask1 f0
    P00>>>set lp_io_mask0 100
    P00>>>set lp_io_mask1 80
    P00>>>set lp_mem_mode isolate
    

  4. 1 次パーティションを初期化します。

    P00>>>init
    

  5. 2 次パーティションをすべて初期化します。

    P00>>>lpinit
    

  6. 次のようなコマンドを使用して,それぞれのパーティションでオペレーティング・システムをブートします。

    P00>>>boot
    P04>>>boot
    

6.3.7.6    ブート前の他のコンソール環境変数の確認

それぞれのパーティションでオペレーティング・システムをブートする前に,コンソール show コマンドを使用して,コンソール環境変数が正しい状態にあることを確認します。

P0##>>>show boot_reset

boot_reset 環境変数は,off でなければなりません。

P0##>>>show interleave

interleave 環境変数は,none でなければなりません。

P0##>>>show auto_action

auto_action 環境変数は,HALT または BOOT に設定します。

P0##>>>show os_type

os_type環境変数は UNIX に設定しなければなりません。

6.3.7.7    ブート時の論理パーティショニング情報メッセージ

論理パーティションを構成して有効にすると,各パーティションの情報メッセージがオペレーティング・システムによって表示されます。これらのメッセージは,ブートストラップ処理の初期段階にコンソール端末に表示されます。次に,パーティションが 2 つあるシステムで通常見られる例を示します。

Partition 0
-----------
LP_INFO: 2 partition(s) established via lp_count
LP_INFO: primary processor for partition 0 is CPU 0
LP_INFO: partition 0 CPU allocation mask = 0xf
LP_INFO: partition 0 IOP allocation mask = 0x100
LP_INFO: Memory partitioning mode set to isolate
LP_INFO: partition 0 memory starting address = 0x0
 
Partition 1
-----------
LP_INFO: 2 partition(s) established via lp_count
LP_INFO: primary processor for partition 1 is CPU 4
LP_INFO: partition 1 CPU allocation mask = 0xf0
LP_INFO: partition 1 IOP allocation mask = 0x80
LP_INFO: Memory partitioning mode set to isolate
LP_INFO: partition 1 memory starting address = 0x80000000
 
 

これらのメッセージは,次の情報を示します。

6.3.8    ハードウェアの管理と保守

AlphaServer GS140 では,パーティションは共通の物理格納装置とハードウェア (たとえば,電源,システム・バス,および制御パネルの電源スイッチ) を共用します。次のハードウェア管理および保守タスクは,個々のパーティションで行うことはできません。パーティションを無効にし,システムをリセットして,パーティショニングされていない状態にする必要があります。

完全なシステム再初期化を必要とするタスクは,次のとおりです。

6.3.8.1    技術サポートの利用

特定の問題について技術サポート部門に連絡する必要がある場合,システムがパーティショニングされていることを顧客サービスの担当者に知らせることが重要です (特にサービス操作でリモート診断を使う場合)。サービス・コールをかけるとき,システムが論理パーティションを使用していることを,はっきりと告げてください。

論理パーティショニング・ソフトウェアは,顧客サービス担当者が,システムがパーティショニングされているかどうかを判断するための 2 つの方法を提供します。オペレーティング・システムのスタートアップ時に出力される LP_INFO メッセージは,スタートアップ ASCII メッセージの一部として,バイナリ・エラー・ログにも記録されます。オペレーティング・システムの任意のインスタンスで sizer -P コマンドを実行し,システムのパーティショニング状態を表示することができます。

# sizer -P
   Host hostname is instance 1 of 2 partitions.
   Physical memory starts at address 0x80000000.
   Memory mode is isolate.
   Processors assigned to instance 1: 4  5  6  7
   IO Port (s) assigned to instance 1:slot 7

システムがパーティショニングされていない場合,次のメッセージが表示されます。hostname は,システム名です。

Host hostname is not partitioned.
 

6.3.8.2    ハードウェア管理と保守タスクの実行

管理や保守のタスクを行う前に,すべてのパーティションの運用を停止し,システムをパーティショニングされていない状態に戻す必要があります。次の手順を使用して,パーティションをシャットダウンします。

  1. それぞれのパーティションでオペレーティング・システムをシャットダウンします。

    # /usr/sbin/shutdown -h +5 "Shutting down for maintenance"
    

  2. 1 次コンソール端末で次のコマンドを実行して,パーティションを無効にします。

    	P00>>>set lp_count 0
    

  3. 1 次パーティションの auto_action コンソール環境変数を HALT に設定します。

    	P00>>>set auto_action halt
    

    次の手順の 1 で auto_action 環境変数をリセットして,パーティションを初期化して,リブートしなければならない場合があります。

  4. 1 次コンソール端末で次のコマンドを入力し,システムを再初期化します。

    P00>>>init
    

システムが P00>>> プロンプトに戻ったら,システム管理および保守タスクを実行することができます。システム管理および保守タスクが完了したら,次の手順を使用してパーティションを再初期化し,パーティションをリブートします。

  1. コンソール環境変数が正しい値に設定されていることを確認します。

    P00>>>show lp*
    P00>>>show boot_reset
    P00>>>show interleave
    P00>>>show auto_action
    

    boot_reset 環境変数が off に設定され,interleave 環境変数が none に,auto_action 環境変数が HALT または BOOT に設定されていなければなりません。

  2. lp_count 環境変数をパーティションの正しい数に設定します。たとえば次のようにします。

    P00>>>set lp_count 2
    

  3. 1 次パーティションを初期化します。

    P00>>>>init
    

  4. 2 次パーティションをすべて初期化します。

    P00>>>lpinit
    

  5. それぞれのパーティションでオペレーティング・システムをブートします。システムのハードウェア構成を変更したり,ハードウェア・リソースを別のパーティションに割り当て直したりした場合,カーネルの再構築が必要になることがあります。パーティションについてカーネルの再構築が必要かどうかを判断するには,6.3.9 項の手順を使用します。

    パーティションでカーネルの再構築が必要でない場合,オペレーティング・システムをブートします。

    P##>>>boot
    

    ここで ## は,パーティションの 1 次プロセッサの CPU 番号です。

6.3.9    UNIX カーネルの再構築が必要なハードウェア変更

システムのハードウェア構成を変更した場合,カーネルの再構築が必要になる場合があります。次の表に,カーネルの再構築が必要な,ハードウェア構成の変更を示します。

変更点 要件

プロセッサ - CPU モジュールの追加,削除,または再割り当て

任意のパーティションの lp_cpu_mask# 環境変数を変更した場合,カーネルの再構築は必要ない。デュアル CPU モジュールにある,両方のプロセッサを同じパーティションに割り当てる必要がある。

I/O プロセッサ - IOP モジュールの追加,削除,または再割り当て

IOP モジュールを追加または削除した場合,カーネルを再構築する。変更パーティションのカーネルだけを再構築すればよい。IOP モジュールをパーティション間で移動した場合は,両方のパーティションでカーネルの再構築が必要である。lp_io_mask# 環境変数は,IOP モジュールを割り当てる。

 

I/O バスおよび I/O コントローラを追加または削除した場合,影響のあるパーティションについて,カーネルの再構築が必要になる。

メモリ・モジュール - メモリ・モジュール構成の変更

1 次パーティション (パーティション 0) では,メモリ・モジュール構成を変更した場合,カーネルの再構築は必要ない。

 

2 次パーティションのカーネルは,特定のメモリ・アドレス (すなわち,そのパーティションの物理メモリ開始アドレス) で実行されるように構築する必要がある。特定のタイプのメモリ再構成を行うと,このアドレスが変わるので,カーネルの再構築が必要になる。パーティションのメモリ・サイズが増減すると,それより大きい番号のパーティションのメモリ開始アドレスがすべて変わる。

 

たとえば,パーティション 0 にある 2GB のメモリ・モジュールを 4GB のメモリに交換した場合,パーティション 1 のメモリ開始アドレスは 2GB 大きくなる。この例では,カーネルの再構築が必要である。

 

メモリ・モジュール構成を変更した後に,2 次パーティションのカーネルがブートに失敗した場合,カーネルを再構築する必要がある。

 

各パーティションのメモリ開始アドレスは,P00>>>lpinit コマンドを実行するたびに 1 次コンソールに表示される。

6.3.9.1    パーティションごとの UNIX カーネルの再構築方法

次の手順は,カーネルを再構築する方法の説明です。これは,『システム管理ガイド』に記載されている通常のカーネルの構築方法の特殊なケースです。この手順では,6.3.4 項に説明されているとおりにパーティションが初期化され,カーネルの再構築を必要とするパーティションが,P##>>> コンソール・プロンプトを表示して停止していると想定します。以下の詳細については,『システム管理ガイド』のカーネル構成情報を参照してください。

  1. 汎用カーネルをシングルユーザ・モードでブートします。

    P##>>>boot -fl s -fi genvmunix
    

  2. ファイル・システムを検査してマウントします。

    # /sbin/bcheckrc
    

    ファイル・システムのマウントについての情報は,『システム管理ガイド』を参照してください。

  3. このパーティションにホスト名 (システム名) を設定します。

    # hostname NAME
    

  4. カーネルを再構築します。

    # doconfig
    

    注意

    doconfig-c オプションを指定してカーネルを再構築してはなりません。

  5. 現在のカーネルを保存します。

    # cp /vmunix /vmunix.save
    

  6. 新しいカーネルをインストールします。ここで,SYSNAME は,ローカル・ホスト名です。

    # cp /sys/SYSNAME/vmunix /vmunix
    

  7. ファイル・システムをアンマウントします。

    # umount -a
    

  8. オペレーティング・システムを停止します。

    # sync
    # sync
    # halt
    

  9. 新しいカーネルをブートします。

    P##>>>boot
    

6.3.10    回復不能なハードウェア・エラーのマシン・チェックへの対応

ハードウェア・エラーは,次の 2 つに大別されます。

ハードウェア・エラーの中には,オペレーティング・システムをリブートするために,完全にシステムをリセットしなければならないエラーもあります。

システム全体にかかわるハードウェア障害については,オペレーティング・システムがクラッシュ・ダンプを書き出した後に,強制システム・リセットを行います。リセットが完了した後で,auto_action が BOOT に設定されていれば,コンソール・ファームウェアが自動的にすべてのパーティションを再初期化します。次のコマンドを使用して,それぞれのパーティションでオペレーティング・システムをブートします。

P00>>>boot
P##>>>boot

それ以外の場合,システムは停止し,コンソール・モード (P00>>> プロンプト) に入ります。これが発生した場合,次のコマンドを入力して,パーティションを再起動し,オペレーティング・システムをリブートします (ここで N は,パーティションの数です)。

P00>>>set lp_count N
P00>>>init
P00>>>lpinit
P00>>>boot
 
 

2 次パーティションについては,boot コマンドを入力します。

P##>>>boot
 
 

ローカル (パーティションの中に存在する) のハードウェア障害については,影響を受けるパーティションで実行されているオペレーティング・システムは,クラッシュ・ダンプを書き出した後に,無条件で停止します。これにより,シャットダウンが可能になるまで,他のパーティションは稼働し続けることができます。影響を受けるパーティションを再起動するには,次の手順を使用して,完全なシステム・リセットを行う必要があります。

  1. 稼動中のそれぞれのパーティションでオペレーティング・システムをシャットダウンします。

    # /usr/sbin/shutdown -h +5 "Shutting down for error recovery"
     
     
    

  2. 1 次コンソール端末で,次のコマンドを入力します。

    P00>>>set lp_count 0
    P00>>>init
    

  3. 次のプロンプトがコンソールに表示されます。

    Do you really want to reset ALL partitions?(Y/<N>)
    

    Y を押して,リセットを実行します。リセットが完了し,auto_action が BOOT に設定されていれば,コンソール・ファームウェアがすべてのパーティションを自動的に再初期化します。

  4. 次のコマンドを使用して,それぞれのパーティションでオペレーティング・システムをブートします。

    P00>>>boot
    P##>>>boot
    

    そうでない場合は,次のコマンドを入力します (N はパーティションの数です)。

    P00>>>set lp_count N
    P00>>>init
    P00>>>lpinit
    P00>>>boot
     
     
    

    それぞれの 2 次パーティションについて,次のコマンドを入力します。

    P##>>>boot
     
     
    

これらの回復手順で,すべてのパーティションの完全なシステム運用を再開できない場合,OFF/ENABLE スイッチを一瞬だけ RESET の位置に動かしてから放すことで,システムを手動でリセットします。リセットが完了したら,回復手順を再度実行します。それでも障害が起こる場合は,技術サポート部門に連絡してください。

6.3.11    論理パーティショニングのエラー・メッセージ

エラー状態 (たとえば,無効なパーティション構成) が生じた場合,エラー・メッセージがパーティションのコンソール端末に表示されます。現在のパーティションの 1 次プロセッサは,エラー・メッセージを表示した後に停止し,コンソール・プロンプトに戻ります。このようなエラーから回復するには,論理パーティショニング・コンソール環境変数を修正して,パーティションをリブートします。

表示されるのは,次のようなエラー・メッセージです。

LP_ERROR:invalid partition count (lp_count = #, max nodes = #)

lp_count コンソール環境変数の設定が誤っています。値が 0 より小さいか,AlphaServer GS140 がサポートするパーティションの最大数を超えています。

LP_ERROR:no CPUs for partition (check lp_cpu_mask)

lp_cpu_mask# (# は,現在のパーティション番号を表す) の値が,誤って設定されています。このパーティションにプロセッサが割り当てられていません。

LP_ERROR:no IOP for partition (check lp_io_mask)

lp_io_mask# (# は,現在のパーティション番号を表す) の値が,誤って設定されています。このパーティションに I/O ポート・モジュールが割り当てられていません。

LP_ERROR:lp_count > 1, but partitions not initialized Please execute 'lpinit' command at >>> prompt

このメッセージは,パーティションは構成されているが初期化されていないことを示します。

LP_ERROR:must set lp_mem_mode [share or isolate]

lp_mem_mode コンソール環境変数が設定されていないか,設定が誤っています。論理パーティションの場合,lp_mem_modeisolate に設定しなければなりません。

Bootstrap address collision, image loading aborted

カーネルのリンク・アドレスがパーティションのメモリ開始アドレスに一致しません。このエラーからの回復方法については,6.3.9 項を参照してください。

6.3.12    コンソール・ファームウェアのエラーまたは情報メッセージ

コンソール・ファームウェアは,特定のイベント (システム・リセットやパーティションのスタートアップなど) についての安全チェックをいくつか実装しています。これらのチェックにより,パーティション間の干渉が防止されます。異常が検出されると,次のいずれかのメッセージがそのパーティションのコンソールに表示されます。

Do you really want to reset ALL partitions?(Y/<N>)

このメッセージは,init コマンドの実行,または boot_reset コンソール環境変数が ON であることによってブートした結果,システム・リセットが要求された後に表示されます。このメッセージは,操作を続行すると,すべてのパーティションの運用が停止され,システムがリセットされると警告するものです。リセットが必要な場合,稼動中のパーティションのオペレーティング・システムをすべてシャットダウンしてから,リセットを行います。

Auto-Starting secondary partitions...

このメッセージは,コンソール・ファームウェアが論理パーティションを初期化していることを示します (自動的に lpinit コマンドを実行します)。自動起動は,システム・リセット (または電源投入) の後に発生します。コンソール・ファームウェアは,以下の条件が満たされていると,すべてのパーティションでオペレーティング・システムをブートします。

Insufficient memory interleave sets to partition system.Issue command "set interleave none" then reset system.

このメッセージは,interleave コンソール環境変数の設定が誤っていることを示します。設定を none に変更します。

Insufficient memory modules to partition system.

各パーティションには,専用のメモリ・モジュールが必要です。パーティションの数を減らすか,パーティションごとにメモリ・モジュールをインストールします。

このメッセージは,lp_count コンソール環境変数が正しく設定されていない可能性があることを示します。たとえば,パーティションが 2 つあるの対し,lp_count が 4 に設定されている場合などです。この場合,実際のパーティションの数に合うように lp_count を設定します。

Inconsistent boot driver state.System is configured with multiple partitions.A complete INIT must be performed before rebooting.

オペレーティング・システムのブートが不完全または中断されたために,コンソール・ブート・ドライバが矛盾した状態になっています。この状態からの回復方法についての詳細は,6.3.7.2 項を参照してください。

Do you want to attempt to boot secondary partitions anyway?(Y/<N>).

このメッセージは,(おそらく lp_ コンソール環境変数の設定が誤っているために) コンソールがパーティションの設定の中に矛盾を検出したことを示します。操作を続行しても安全であることが確かな場合を除き,この質問には N と答え,矛盾を解決する必要があります。

TIOP # not configured in any partition.Non-existent TIOP # configured in a partition.

これらのメッセージ (一緒に,または個別に) は,lp_io_mask# コンソール環境変数の設定が誤っていることを示します。マスクが 0 または誤った IOP モジュール・スロット番号に設定されている可能性があります。設定を修正して,lpinit コマンドを再実行してください。

Secondary partitions have already been started.

このメッセージは,パーティションをスタートした後に,2 度目の lpinit コマンドを実行したことを示します。オペレーティング・システムをブートする前に,lp_ コンソール環境変数の値を確認する必要があります。

CPU # not configured in any partition.No valid primary processor specified for partition #.

このメッセージでは,CPU 番号 (#) は 1 つのCPU であることも,CPU のリストであることもあります。

これらのメッセージ (一緒に,または個別に) は,lp_cpu_mask# コンソール環境変数の設定が誤っていることを示します。マスクが 0 または誤った CPU 番号に設定されている場合もあります。設定を修正して,lpinit コマンドを再実行してください。

6.4    AlphaServer 1000 および 1000A の構成情報

以下の構成上の制限事項は,AlphaServer 1000 と AlphaServer 1000A システムにのみ適用されます。

6.4.1    EISA Configuration Utility Version 1.10

この注意事項は,埋め込み Cirrus VGA グラフィックス・コントローラのユーザに適用されます。

ECU (EISA Configuration Utility) のバージョン 1.10 を実行するとき,VGA グラフィックス・コントローラの省略時の設定は Disabled です。以前のバージョンでは,省略時の設定は Enabled でした。

ECU の以前のバージョンによって設定されているシステムで,ECU バージョン 1.10 を初めて実行するときは,埋め込み VGA グラフィックス・コントローラの設定は,自動的に Disabled に設定されます。省略時の値を変更するには,ECU を実行し,ステップ 3 を選択します。詳細を表示して編集し,終了する前に VGA グラフィックス・コントローラを Enabled に設定します。オペレーティング・システムのブートに先立って VGA グラフィックス・コントローラを Enabled に設定しないと,X サーバが起動せず,オペレーティング・システムをブートしたときには,システムでサポートされるのは汎用コンソールとなります。

6.4.2    グラフィックス解像度

1 MB のビデオ RAM を搭載した組み込みの Cirrus ビデオを内蔵する AlphaServer 1000A システムの省略時のグラフィックス解像度は,1024 × 768 です。オプションの 512 KB ビデオ RAM がない場合,オペレーティング・システムは 640 × 480 (省略時) または 800 × 600 の解像度だけをサポートします。

512 MB のビデオ RAM を搭載した組み込みの Cirrus ビデオを内蔵する AlphaServer 1000 システムの省略時のグラフィックス解像度は,640 × 480 です。この構成は 800 × 600 の解像度もサポートします。

800 × 600 の解像度を使用するには,/usr/lib/X11/xdm/Xservers ファイルで次の行を編集します。

:0 local /usr/bin/X11/X
 

この行を次のように変更します。

:0 local /usr/bin/X11/X "-screen0 800x600"
 

CDE セッション・マネージャに 800 × 600 の解像度を使用するには,/usr/dt/config/XserversXservers.conf ファイルの次の行を編集します。

:0 Local local@console /usr/bin/X11/X :0
 

この行を次のように変更します。

:0 Local local@console /usr/bin/X11/X :0 -screen0 800
 

XDM または CDE 用にこれらのファイルを編集する前に,使用するシステム・モニタが 800 × 600 の解像度をサポートすることを確認してください。

6.5    AlphaServer GS シリーズの構成情報

以下の構成上の制限事項は,AlphaServer GS システムにのみ適用されます。

6.5.1    1 次 CPU での OLAR エラーの可能性

オペレーティング・システムのバージョン 5.1A 以降,AlphaServer GS80,GS160,および GS320 システムで,1 次 CPU をオフラインにして取り外すことができるようになっています。1 次 CPU をオフラインにすると,1 次 CPU の役割が自動的に別の CPU に割り当てられます。この操作によって問題が断続的に派生する可能性があるため,現時点では 1 次 CPU をオフラインにしないでください。1 次 CPU は通常,CPU0 です。どの CPU が 1 次 CPU になっているかを確認するには,pset_info コマンドを使います。

# pset_info
 
number of processor sets on system = 1
 
pset_id  # cpus   # pids   # threads  load_av    created
  0         4        89       453       0.13     07/12/2001 17:25:28
 
total number of processors on system = 4
 
cpu #    running  primary_cpu  pset_id  assigned_to_pset
 0          1         1           0     07/12/2001 17:25:28
 1          1         0           0     07/12/2001 17:25:28
 2          1         0           0     07/12/2001 17:25:28
 3          1         0           0     07/12/2001 17:25:28

この出力は,CPU0 が 1 次 CPU であることを示します。

1 次 CPU をオフラインにすると,操作はおそらく正常に行われ,新しい 1 次 CPU (たとえば,CPU1 など) が自動的に選択されます。しかし,1 次 CPU だった CPU を再びオンラインにしようとしたとき,次のようなエラーが発生することがあります。

Processor X failed to start
 console callback PARTITION, POWER-HW timed_out.
 wf_hal_pwr_ctl: call to prom_power failed with status [ffffffe6]
 

この状態から回復するには,SRM コンソールを使ってシステムを初期化する必要があります。それには,オペレーティング・システムをシャットダウンしなければなりません。この問題は,コンソール・ファームウェアの将来のリリースで修正されます。

6.5.2    CPU の電源切断と投入を連続的に繰り返さないこと

連続的に実行されるテスト・ループで OLAR 管理コマンドを使用すると,CPU の信頼性低下を招く可能性があります。OLAR 管理コマンドは,CPU モジュールへの DC 電力供給を断ちます。シェル・スクリプトを使って CPU の電源切断と投入を連続的に繰り返すことはしないようにしてください。

CPU モジュールの DC/DC コンバータは,電源切断と投入の上限が 1000 回まで規定されています。CPU の電源切断と投入の回数がこの値を超えないようにしてください。

6.5.3    ホット追加に関する制限事項

本リリースのオペレーティング・システムは,GS80,GS160,および GS320 CPU のホット追加をサポートします。ただし,次の制限があります。メモリがなく,かつ,少なくとも 1 つの CPU がない状態でブートされた Quad Building Block (QBB) には,CPU をホット追加できません。追加した場合,システム・パニックが発生します。メモリがあり,少なくとも 1 つの CPU がある状態でブートされた QBB には,追加 CPU を必要に応じてホット追加できます (この制限は,カーネルの将来のアップデートではなくなります)。

6.6    Personal Workstation 433au,500au,および 600au システム

以下の構成上の制限事項は,Personal Workstation クラスのシステムにのみ適用されます。

6.6.1    64ビット PCI オプション・カード

64 ビット PCI スロットであるスロット 4 と 5 は,『Systems and Options Catalog』に記載のカードのみを対象としています。これらのスロット (下記 n) のいずれかに,サポートされていないカードが接続されていると,コンソール・ファームウェアによってシステム運用が禁止され,次のエラーが表示されます。

Illegal device detected on primary bus in physical slot n
Power down the system and remove the unsupported device from slot n

6.6.2    省略時のキーボード・マップの誤り

Personal Workstation 433au,500au,または 600au クラスのシステムで PCXLA-NA キーボードを使用する場合,正しいキーマップを使うようにキーボード・ドライバを再構成しない限り,キーは正しくマップされません。

キーボード・ドライバを再構成するには,次のコマンドを実行します。

# sysconfig -r gpc_input kbd_scancode=2

または,sysconfigdb コマンドを使って,次のエントリを /etc/sysconfigtab ファイルに追加できます。

gpc_input:
kbd_scancode = 2

sysconfig コマンドを使用してドライバを再構成した場合には,システムをリブートするたびにコマンドを実行する必要があります。sysconfigdb ユーティリティを使用した場合,変更した情報がリブートにまたがって維持されるため,ユーザによる他の操作は必要ありません。