2    プリンタの省略時設定の定義

この章では,論理プリンタの定義と使用,プリンタのプロパティと設定の確認,およびプリンタ属性ファイルのセットアップの方法について説明します。論理プリンタとは,システム管理者によって作成された,1 つ以上の物理プリンタのソフトウェア表現です。たとえば,1 つの論理プリンタが,標準紙に印刷するプリンタ,強調色とホチキスどめを使用するプリンタ,および大きなサイズの用紙に印刷するプリンタという,3 つの異なるプリンタを表すことができます。プリント要求をその特性に合った論理プリンタに送信すれば,サーバがそのジョブをどのように印刷できるかを決定します。

2.1    ネーム・サービスの定義

プリント・システムがネーム・サービスとして LDAP を使用している場合は,/var/pd/config/apx.conf を編集するか作成する必要があります。このファイルの内容は,プリント・システムの管理者から入手します。

/var/pd/config/apx.conf ファイルには,使用するネーム・サービスに関する情報と,LDAP ディレクトリ・サービスを実行しているホスト・システムに関する情報が記述されます。次は,/var/pd/config/apx.conf ファイルの例です。


 name-services = file nis ldap
  LDAP_hosts  = system.abc.xyz.com 
  LDAP_path   = ou=organizational unit,o=organization

2.2    省略時の論理プリンタの定義

全部の,またはほとんどのジョブを同じ論理プリンタに対して実行する場合は,そのプリンタを省略時のプリンタとして定義することができます。これにより,多くのプリント・システムのコマンドで論理プリンタを指定する必要も減少します。

次の場合について検討してみてください。

PDPRINTER 環境変数は省略時のプリンタを設定するもので,シェル,または .profile や .login ファイルで定義できます。省略時の値を設定または変更するには,次の手順のいずれかを使用します (PrinterName は,省略時のプリンタ名で置き換えてください)。

C シェル・ユーザのための手順は,次のとおりです。

  1. 次の行をホーム・ディレクトリの .login ファイルに挿入するか,次のように変更してからファイルを保存します。

    % setenv PDPRINTER PrinterName
    

  2. 次のコマンドを入力して,.login ファイルに対する変更を適用します。

    % source .login
    

  3. 次のコマンドを入力して,論理プリンタ名を表示します。

    % echo $PDPRINTER
    

次に Korn シェル・ユーザのための手順を示します。

  1. 次の行をホーム・ディレクトリの .profile ファイルに挿入するか,次のように変更してからファイルを保存します。

    % export PDPRINTER=PrinterName
    

  2. 次のコマンドを入力して,.profile ファイルに対する変更を適用します。

    % . ./.profile
    

  3. 次のコマンドを入力して,論理プリンタ名を表示します。

    % echo $PDPRINTER
    

PDPRINTER 環境変数を設定すると,プリンタを指定せずに実行したプリント・ジョブは,省略時の論理プリンタのキューに挿入されます。加えて,省略時の論理プリンタに関連付けられたスプーラ・サーバが,省略時のサーバになります。特定のコマンドをオペランドを指定しないで実行すると,システムは省略時のサーバの値を使用して,そのサーバのコンテキストの中で有効な結果を提供します。

2.2.1    CDE メール・ツールによる省略時のプリンタの指定要求

.dtprofile ファイルで PDPRINTER の値を指定していないときに,CDE メール・ツールから印刷すると,省略時のプリンタを指定していないという旨のダイアログ・ボックスが表示されます。作業用論理プリンタに対して印刷する場合,印刷は成功します。

このダイアログ・ボックスを消去するには,.dtprofile ファイルを編集し,次のコマンドを使用して省略時の論理プリンタを定義します。

% export PDPRINTER=<printer name>

2.3    省略時の論理プリンタへのアクセス

pdpr コマンドを使用してプリント・ジョブを実行します。たとえば,ファイル budget99.txt を省略時の論理プリンタに対して実行するには,次のコマンドを入力します。

% pdpr budget99.txt

pdq コマンドを使用して,省略時のプリンタ上のジョブのリストを返すことができます。このようなリストを要求するには,次のコマンドを入力します。

% pdq

2.4    特定の論理プリンタへのアクセス

論理プリンタを指定するには,pdpr コマンドで -p printer_name オプションを使用します。たとえば,ファイル budget99.txt を,強調色が使用できる flashy というプリンタに対して実行するには,次のコマンドを入力します。

% pdpr -p flashy budget99.txt

特定の論理プリンタに対して実行したジョブのリストを表示するには,pdq コマンドの -p オプションを使用します。たとえば,論理プリンタ flashy に対して実行したジョブのリストを表示するには,次のコマンドを入力します。

% pdq -p flashy

利用可能な論理プリンタの名前を検索するには,次のように pdls コマンドを使用します。

% pdls -c printer

2.5    プリンタのプロパティの決定

ネットワーク環境では,さまざまなプリンタを利用できることがあります。どのプリンタが最も適しているかを決定するには,pdls コマンドを使用して,次のようなプリンタのプロパティをリストします。

次のコマンドを入力することにより,省略時のサーバがサポートするすべての論理プリンタのリストを要求することができます。

% pdls -c printer

特定のスプーラ上のすべてのプリンタに関する情報を要求するには,サーバ名の後にコロンを付けて指定します。たとえば,スプーラ doggone_spl がサポートするプリンタを検索するには,次のコマンドを実行します。

% pdls -c printer doggone_spl:

次の例では,プリンタ bulldog についての基本的な情報を要求します。

% pdls -c printer bulldog

関連付けられているサーバやプリンタなど,詳細な属性のリストを要求するには,次のように -r verbose オプションを使用します。

% pdls -c printer -r verbose bulldog

プリンタの機能をはじめとするすべての属性の完全なリストを要求するには,-r all オプションと -s line オプションを使用します。後者のオプションは,出力をウィンドウの幅で折り返すと読みにくいので,1 行に 1 つの属性を表示するように指示するものです。

% pdls -c printer -r all -s line bulldog

2.5.1    pdls コマンドを使用した特定の属性の要求

pdls コマンドに -r オプションを付けることにより,プリンタ属性を調べることができます。たとえば,printer-name 属性はサーバに関連付けられている論理プリンタの名前を表し,printer-associated-printers 属性は論理プリンタに関連付けられている物理プリンタの名前を表します。次の例は,サーバ bulldog_spl で利用できる論理プリンタおよび物理プリンタを調べる方法を示します。

% pdls -c printer -r \
  "printer-name printer-associated-printers" bulldog_spl:
printer-name  printer-associated-printers
------------  ---------------------------
fetch         bone_pp
              stick_pp
              slipper_pp
two_sidedPS   ln1701_pp
              ln1702_pp
biglab        office_pp
              hallway_pp
              javaroom_pp
              closet_pp

2.6    論理プリンタの省略時の値

プリント要求を実行するときには,おそらく,ジョブ開始シートの指定のように,特定の属性を頻繁に使用することでしょう。すべてのプリント要求で同じ属性を繰り返す代わりに,initial-value-job (初期値ジョブ) と initial-value-document (初期値ドキュメント) オブジェクトを使用して,省略時の設定を適用することができます。

initial-value-job オブジェクトは,サーバに格納されている属性と値の集合です。ジョブの実行時にオブジェクトを指定するか,またはジョブが特定の論理プリンタに割り当てられると自動的に,属性のセットがジョブに対して一度に全部適用されます。

initial-value-document オブジェクトは,それがジョブではなくドキュメントに適用されることを除けば,属性と値の同様の集合です。

プリント・システムの構成はすべて異なるので,このようなオブジェクトを使用する場合は,詳細を管理者に確認する必要があります。論理プリンタを管理するスプーラ・サーバの名前がわかっていれば,pdls コマンドを使用して,その初期値オブジェクトをシステムに問い合わせることができます。

たとえば,次のコマンドは,サーバ doggone_spl にある initial-value-job オブジェクトをすべてリストします。

% pdls -c initial-value-job doggone_spl:

前の例で,結果にオブジェクト名 bulldog_IVJ_DEFAULT が含まれている場合は,次のコマンドを使用して,そのオブジェクトの詳細をリストすることができます。

% pdls -c initial-value-job -r all -s line doggone_spl:bulldog_IVJ_DEFAULT

この結果は,initial-value-job オブジェクトがジョブに指定された場合,またはプリンタに関連付けられている場合に,必ずジョブに適用される属性のリストとなります。

2.6.1    printer-initial-value-job オブジェクトの使用

プリント・システムの管理者は,initial-value-job オブジェクトを論理プリンタの printer-initial-value-job 属性に関連付けることにより,プリンタに対して実行されたすべてのジョブに省略時の設定を適用できます。プリント・システムはプリンタに対して実行されたすべてのジョブに対し,この属性を利用して属性値を適用します。

たとえば,プリンタの initial-value-job オブジェクトには,job-sheets=job-copy-start 属性を含めることができます。省略時には,その論理プリンタに対して実行されたすべてのジョブにジョブ開始シートが取り込まれます。

プリント・ジョブの実行時に initial-value-job オブジェクトを指定することもできます。

2.6.2    printer-initial-value-document オブジェクトの使用

同様に,管理者はプリンタに対して実行されたすべてのドキュメントに,省略時の属性値を適用することができます。この場合,initial-value-document オブジェクトが論理プリンタの printer-initial-value-document 属性に関連付けられます。

たとえば,プリンタの initial-value-document オブジェクトに copy-count=2 属性を取り込むことが可能です。この結果,プリンタはすべてのジョブのすべてのドキュメントを 2 部ずつ印刷します。

プリント・ジョブの実行時に,initial-value-document オブジェクトで別の部数などを指定することも可能です。

2.6.3    論理プリンタにおける初期値オブジェクトのチェック

プリンタ bulldog に関連付けられた initial-value-job および initial-value-document オブジェクトの名前を確認するには ,次のコマンドを使用します。

% pdls -c printer -r \
  "printer-name printer-initial-value-job printer-init-val-doc" \
  bulldog

次に,initial-value オブジェクトがそれぞれ,bulldog_IVJ_DEFAULT および bulldog_IVD_DEFAULT であり,スプーラ名が doggone_spl だと仮定すると,次のコマンドを使用して,initial-value オブジェクトによって表される属性と値を表示できます。

% pdls -c initial-value-job -r all \
-s line doggone_spl:bulldog_IVJ_DEFAULT
 
% pdls -c initial-value-document \
-r all -s line doggone_spl:bulldog_IVD_DEFAULT

出力結果は,初期値オブジェクトによって定義されている属性のリストとなります。たとえば,initial-value-job 情報をリストするためのコマンドの出力は,次のようになります。


bulldog_IVJ_DEFAULT: object-class         = initial-value-job
bulldog_IVJ_DEFAULT: initial-value-job-identifier = bulldog_IVJ_DEFAULT
bulldog_IVJ_DEFAULT: job-hold             = no
bulldog_IVJ_DEFAULT: job-retention-period = 2:00
bulldog_IVJ_DEFAULT: associated-server    = dogear_spl
bulldog_IVJ_DEFAULT: job-sheets           = job-copy-start

2.6.4    属性ファイルの使用

属性ファイルと呼ばれるテキスト・ファイルに特定の属性をあらかじめ定義しておくことができます。その後,-X オプションを使用して属性ファイルを指定することにより,それをプリンタ・コマンドに取り込みます。詳細については,『Advanced Printing Software コマンド・リファレンス・ガイド』を参照してください。

次の例では,現在の作業ディレクトリにある budget_format.attr という属性ファイルに,PostScript ドキュメントをドキュメント・シートなしの両面印刷で印刷する属性のセットが入っています。

# Attribute file budget_format.attr 
# Use this for printing 2-sided PostScript documents
document-format=PostScript
document-sheets=none
sides=2

次の例では,ドキュメント budget99.ps を PostScript ドキュメントとして,ドキュメント・シートなしの両面印刷で印刷するための属性ファイルを使用しています。

% pdpr -X "budget_format.attr" budget99.ps