AdvFS ファイル・システムでクォータを使用すれば,ユーザ,グループ,あるいはファイルセットの単位で,使用する物理ストレージの量を追跡および管理することができます。 クォータの設定および編集には,root ユーザ特権が必要です。 root ユーザは,クォータによる使用ストレージ量の制限を受けません。 クォータが適用されるのは,root 以外のユーザだけです。
この章では,次のトピックについて説明します。
AdvFS のクォータ体系は,UFS のクォータと互換性があります。 ただし,AdvFS のクォータ体系は,次の 2 つの点で UFS のクォータと異なります。
AdvFS は,クォータの管理と適用を区別します。 クォータ情報は常時管理されますが,クォータの適用については有効/無効を切り替えることができます。
AdvFS はファイルセット・クォータをサポートします。 つまり,ドメインのファイルセットのサイズを制御するためにクォータ制限を設定することができます。
AdvFS ファイル・システムでは クォータは,ディスクの容量とファイル数に対して設定できます。
さらに,次に示す 2 種類のクォータが設定可能です。
ユーザおよびグループ・クォータ
AdvFS のユーザおよびグループ・クォータは,UFS クォータに良く似ています。
各ファイルセットの各ユーザまたはグループごとに,別々のクォータを設定することができます。
クォータ・ファイルは,特に指定しなければファイルセットのルート・ディレクトリに保存されます。
ファイルセット・クォータ
たとえば,
クォータ・ファイルとファイルセット・クォータは,root ユーザがローカル・システムで完全なバックアップを指定したときに保存されます。
バックアップの手順については,第 4 章を参照してください。
限界値は,ディスク使用量 (ブロック数) およびファイル数 (i ノード数) の両方に設定することができます。
表 3-1に,両方のタイプのクォータ値の限界サイズを示します。
* Version 5.0 より前のオペレーティング・システムでは,ユーザおよびグループのクォータの限界値は 2T バイトでした。
Version 5.0 以降のオペレーティング・システム上で,Version 5.0 より前のバージョンで作成したドメインを使用している場合,新しい限界値を利用するためにはドメインをアップグレードする必要があります (2.3.3.4 項を参照)。
クォータの限界値には,ハード限界値とソフト限界値の 2 種類があります。
root ユーザは,いつでも必要に応じてハード限界値とソフト限界値を設定/変更できます。
これらの限界値の変更は,クォータが有効なファイルセットにただちに反映されます。
ファイルセットのマウントやアンマウントは,クォータの限界値には影響を与えません。
ハードおよびソフト限界値は,ユーザ,グループ,およびファイルセットに対して設定することができます。
省略時の設定は,クォータ制限なしです。
また,次のように設定することもできます。
ハード限界値を 0 ブロックあるいは 0 ファイルに設定する。
クォータ制限は設定されません。
ハード限界値を 1 ブロックあるいは 1 ファイルに設定する。
ディスク・スペースの割り当てはできなくなります。
ソフト限界値を 1 ブロックあるいは 1 ファイルに設定し,ハード限界値を 0 ブロックあるいは 0 ファイルに設定する。
一時的なディスク・スペースの割り当てが可能になります。
設定したクォータ限界値は,root ユーザによって変更されるまで有効です。
クォータ限界値を超えて書き込みをする必要がある場合は,6.4.5 項
を参照してください。
ソフト限界値には猶予期間が設定されます。
猶予期間が終了すると,当該ユーザやグループは,ソフト限界値を下回る水準までファイルを削除しない限り,新しいファイルの作成や,ディスク・スペースの割り当てができなくなります。
このような場合に既存のファイルを更新すると,データが失われる可能性があります。
ソフト限界値を超えると,猶予期間のタイマが起動されます。
ソフト限界値を下回ると,そのたびにタイマが停止し,リセットされます。
ソフト限界値を超えてから猶予期間を変更した場合は,使用量が限界値を下回るまでは古い猶予期間が有効です。
猶予期間は次のものに対して設定できます。
ユーザ
ファイルセットごとに,すべてのユーザ用の猶予期間を 1 つだけ設定することができます (3.2.2 項を参照)。
ブロック数の猶予期間とファイル数の猶予期間は,同じである必要はありません。
グループ
ファイルセットごとに,すべてのグループ用の猶予期間を 1 つだけ設定することができます (3.2.2 項を参照)。
ユーザ猶予期間の方が長い場合でも,グループ内のすべてのユーザは,そのグループに設定された猶予期間によって制限されます。
ファイルセット
ファイルセット猶予期間はグループ猶予期間と同じです (3.3.2 項を参照)。
どのユーザあるいはグループもファイルセットのソフト限界値を超え,ファイルセット猶予期間のタイマが起動する原因となり得ます。
また,どのユーザあるいはグループも (限界値を超える原因となったユーザあるいはグループでなくても) ファイルセットがソフト限界値を下回るように,そのファイルを削除することができます。
AdvFS は,省略時では猶予期間を 7 日間に設定します。
猶予期間は,日,時間,分,秒単位で指定できます。
この期間は変更することができます。
猶予期間を 0 日に設定すると,省略時の設定が強制されます。
猶予期間を 1 秒に設定すると,猶予期間は無効になります。
表 3-2
では,ユーザおよびグループ・クォータと,ファイルセット・クォータを比較しています。
以下の項では,クォータ・ファイルについて説明し,ユーザおよびグループに対してクォータおよび猶予期間を設定する方法について説明します。
AdvFS ファイル・システムは,ユーザおよびグループのクォータ情報をファイルセット内のルート・ディレクトリの
ハード・ブロック限界値
ソフト・ブロック限界値
ブロック使用量
ハード・ファイル限界値
ソフト・ファイル限界値
ファイル使用量
ブロック猶予期間
ファイル猶予期間
クォータ・ファイルはスパース・ファイルです (1.3.3 項を参照)。
つまり,ユーザ ID やグループ ID が存在しない部分には,ディスク・スペースは割り当てられていません。
ユーザ・クォータおよびグループ・クォータの両方を設定する必要は必ずしもありません。
グループ・クォータを指定すると,そのクォータ値は当該グループに属する全ユーザに適用されます。
そのため,グループ・クォータよりも大きなユーザ・クォータを指定しても,指定したユーザ・クォータ値に達する前にグループ・クォータによって制限されるため,ユーザ・クォータは無視されます。
ユーザとグループのクォータを設定するには, 次のような手順に従って,ユーザおよびグループのクォータと猶予期間を設定します。
ユーザおよびグループ・クォータ,または猶予期間を設定するために, ユーザまたはグループのクォータ情報が表示されたら,必要に応じてハードおよびソフト限界値フィールドの数値を変更します。
その後,エディタを終了して変更内容を保存します。
ユーザまたはグループの猶予期間を設定するには,ユーザの場合は
-
ut
オプションを指定し,グループの場合は
-gt
オプションを指定して, 猶予期間情報が表示されたら,必要に応じて猶予期間を変更します。
その後,エディタを終了して変更内容を保存します。
クォータの設定と猶予期間の詳細については,
ファイルセットに設定したクォータを適用するには, 1 人のユーザに対してクォータを設定した後に, 下記の手順では,ユーザ
クォータを設定しようとしているファイルセットのマウント・ポイントが存在しない場合,
クォータ設定ファイルを表示するために,
エディタを終了して変更を保存します。
ファイルセット
ユーザとグループの両方に対してクォータが設定されている場合,小さい方の値が適用されます。
ファイルセットに対してソフト限界値を適用する場合には,そのファイルセットに猶予期間を設定することができます。
猶予期間を指定しない場合,AdvFS の省略時の設定である 7 日が猶予期間として使用されます。
猶予期間を無効にするには,値を 1 秒に設定します。
ブロック数とファイル数に対しては,異なる猶予期間を設定することができます。
グループ猶予期間がユーザ猶予期間よりも短い場合,ユーザはグループ猶予期間によって制限されます。
次の手順では,ファイルセット
クォータを設定しようとしているファイルセットのマウント・ポイントが存在しない場合,
猶予期間の設定ファイルを表示するために,
エディタを終了して変更を保存します。
ファイルセット
次の手順では,グループ
クォータを設定しようとしているファイルセットのマウント・ポイントが存在しない場合,
エディタを終了して変更を保存します。
ファイルセット
ソフト限界値を適用する場合,すべてのグループに対して,ファイルセットごとに 1 つの猶予期間を設定することができます。
グループ猶予期間はファイルセット猶予期間と同じです (3.3.2.2 項参照)。
猶予期間を指定しない場合は,AdvFS の省略時の設定である 7 日間が猶予期間として使用されます。
猶予期間を無効にするには,値を 1 秒に設定します。
ブロック数とファイル数に対しては,異なる猶予期間を設定することができます。
グループ猶予期間は,すべてのどのユーザ猶予期間よりも優先されます。
次の手順では,ファイルセット
クォータを設定しようとしているファイルセットのマウント・ポイントが存在しない場合,
猶予期間の設定ファイルを表示するために,
エディタを終了して変更を保存します。
すでにクォータが有効になっている場合,グループが
ファイルセットのファイルの寿命を制限することができます。
一時的猶予期間を設定すると,指定した期間中,制限なしにファイルを割り当てることができます。
その期間を過ぎると,猶予期間に作成されたすべてのファイルが削除されるまで,それ以上ファイルを割り当てることはできません。
この一時的猶予期間の設定は,ファイルが短い期間しか必要のない場合に役立ちます。
一時的猶予期間を設定するには, AdvFS ファイル・システムでは,単一コマンドで一連のユーザあるいはグループのクォータを変更することができ,個々のクォータ値を個別に変更する必要はありません。
ファイルセットごとに 1 つの猶予期間がすべてのユーザやすべてのグループに適用されるため,各ユーザおよびグループ・クォータに対して複数の猶予期間を適用する必要はありません。
すべてのユーザに同じクォータ値を設定するには,次の手順を行ないます。
ユーザまたはグループにクォータを設定するために, 最初のユーザのクォータ設定を残りのユーザに適用するために,
詳細は,
次の手順では,後で他のユーザのクォータの変更に利用するためのプロトタイプ・ユーザ・クォータを設定しています。
ユーザ
ユーザ
クォータが設定されたかどうかチェックするために,
次の手順では,後で他のグループのクォータの変更に利用するためのプロトタイプ・グループ・クォータを設定しています。
グループ
グループ
クォータが設定されたかどうかチェックするために,
システムのスタートアップ時に,ユーザ・クォータおよびグループ・クォータを自動的に適用するには,次の手順を実行します。
このエントリによって,
クォータが適用されている状態でファイルセットをアンマウントした場合,ファイルセットを再マウントする時点で
マウントしたファイルセットの
システムのスタートアップ時にクォータを初期化するようにシステムが設定されている場合には (3.2.4 項を参照),ファイルセットをアンマウントしない限り, 次の例では,前の各項でクォータ値が設定されたファイルセットに関して,クォータを適用しています。
省略時の設定では, クォータは,一時的にまたは永続的に適用を解除することができます。
ファイルおよびディスク・スペースの使用量に関する情報は,クォータを現在適用しているかどうかには関係なく取得できます。
ユーザまたはグループのクォータの適用を永続的に停止したい場合には,次の手順を行ないます。
ここでは,ファイルセット・クォータ・ファイルについてと,コマンド行で,ファイルセットに対してクォータと猶予期間を設定する方法について説明します。
AdvFS GUI を使用して,ファイルセット・クォータを設定する方法は,付録 Eを参照してください。
AdvFS は,ファイルセットに関する構造情報に,ファイルセット・ソフト限界値およびハード限界値を保存します。
このファイルに直接アクセスすることはできません。
このファイルには,ユーザおよびグループ・クォータ・ファイルに含まれているのと同じ情報,つまり,ブロック数のハードおよびソフト限界値,ファイル数のハードおよびソフト限界値が含まれています。
あるファイルセットについてみると,ファイルセット猶予期間はグループ猶予期間と同じです。
ファイルセット・クォータは,ファイルセットが使用できるファイル数とディスク・スペース量を制限します。
ファイルセットにはソフト限界値とハード限界値の両方を設定できます。
ファイルセット・クォータが設定されていない場合,どのファイルセットも,ドメイン内のすべてのディスク・スペースにアクセスできます。
ファイルセット・クォータは
ファイルセット・クォータには猶予期間があります (3.3.2.2 項
を参照)。
猶予期間を設定していない場合,AdvFS の省略時の猶予期間である 7 日間が使用されます。
猶予期間を適用解除するには,1 秒に設定します。
ファイルセット・クォータ値の定義には
このコマンドは古い限界値と新しい限界値を両方表示します。
次の手順では, 既存のファイルセット・クォータを表示するために,
新しいファイルセット・クォータをチェックするには,
ファイルセット猶予期間はグループ猶予期間と同じもので,独立して変更することはできません。
このため,グループがソフト限界値を超えることのできる猶予期間を, たとえば,
ファイルおよびディスク・スペース使用量を, ユーザおよびグループ・クォータを適用している場合,定期的にクォータの設定を確認することができます。
root ユーザでない場合にできるのは,自分のファイルの情報を表示することだけです。
root ユーザは,すべてのファイルセットのすべてのユーザとグループのクォータ情報を表示することができます。
すべてのディスク・クォータ値は,1K バイト・ブロック単位で表示されます。
表 3-3
に示すコマンドは,ユーザおよびグループ・クォータが適用されているファイルセットのディスク・スペースおよびファイルの使用状況を調べるために利用できます。
次の例はユーザ
次の例はグループ
省略時の設定では,ユーザとグループの両方のクォータがチェックされますが, 次の例では,詳細モードでファイルセット
次の例は,
次の例では,
次の例では,
ファイルセット・クォータ情報は,ファイルセットをチェックする一般的なコマンドで表示することができます。
表 3-4
に示すのは,この目的のために使用できる便利なコマンドです。
ファイルセット・クォータが設定されている場合,このコマンドは,クォータ制限に到達するまでに利用可能なスペースの量を表示します。
ソフトおよびハード限界値が設定されている場合,このコマンドは,低い方の限界値を使用して利用可能なディスク・スペースを計算します。
ファイルセット・クォータで許容されるスペースより少ないスペースしかドメイン内にない場合,このコマンドは,そのドメインで利用可能な実際のスペースを表示します。
ファイルセット・クォータが設定されていない場合,このコマンドは,ドメイン・サイズを表示します。
未使用スペースはどのファイルセットにも利用できます。
AdvFS は,各ファイルセットの容量をそれぞれ個別に計算します。
ドメインに複数のファイルセットがある場合は,ファイルセット・クォータによって制限されない限り,すべての未使用スペースが各ファイルセットで利用できます。
そのため,ドメイン内の各ファイルセットの総容量が 100% 超えた値で表示される場合もあります。
次の例では,
この例では,使用量が限界値を超えているため,容量は実際の使用スペース (1750/1500) で計算され,結果は 100% を超えています。
使用量が限界値未満の場合は,容量は (Used)/(Used + Avail) で計算されます。
次の例では,ファイルセット
次の例は,ドメイン
この例で
このユーティリティには,次の制限事項があります。
すべてのファイルセットをマウントしておく必要があります。
AdvFS ファイルセット・クローンが使用するディスク・スペースは計算されません。
NFS マウントされているファイルセットに関しては有効な結果を生成しません。
次の例では,ドメイン
次の例では,2 つのファイルセットを含む
次の例では,クォータが設定されていない 2 つのファイルセットを含む
/usr/users
などのホーム・ディレクトリを含むファイルセットは急速に増大することがあるので,このようなファイルセットにはクォータを設定しておくと有効です。
これに対して,/tmp
ファイルセットはサイズが上下に変動するため,このファイルセットにクォータ値を設定するのはお勧めできません。
3.1.1 クォータ限界値
表 3-1: クォータの限界サイズ
ユーザおよびグループ・クォータ
ファイルセット・クォータ
ディスク使用量
80 億 T バイト*
40 億 T バイト
ファイル数
40 億
40 億
3.1.2 猶予期間
3.1.3 クォータの機能の要約
表 3-2: ユーザおよびグループ・クォータとファイルセット・クォータの比較
ユーザおよびグループ
ファイルセット
クォータ・ファイル
quota.user
および
quota.group
という名のファイルに定義する (3.2.1 項)。ファイルセットのメタデータの一部。
見ることはできない。
クォータ限界値の設定
/etc/fstab
ファイル内のマウント・オプションを変更し,ファイルセットをマウントし,edquota
コマンドを実行する (3.2.2 項)。chfsets
コマンドを実行 (3.3.2 項)。
猶予期間の設定
edquota
コマンドに
-ut
オプションまたは
-gt
オプションをつけて実行する (3.2.2 項)。グループの猶予期間と同じ (3.3.2 項)。
クォータの有効化
quotaon
コマンドを実行するか,リブート時にクォータを適用するために
rcmgr
コマンドを実行する (3.2.4 項および3.2.5 項)。クォータ限界値を設定すると有効になる(3.3.4 項)。
クォータの無効化
quotaoff
コマンドを使用するか,/etc/rc.config.common
ファイルのQUOTA_CONFIG="yes"
行を削除する(3.2.6 項)。chfsets
コマンドを使用してクォータ限界値を 0 に設定する(3.3.5 項)。
クォータ限界値のチェック
edquota
コマンドに
-u
または
-g
オプションをつけて実行する。chfsets
コマンドまたは
showfsets
コマンドを実行する。3.2.1 ユーザおよびグループのクォータ・ファイル
quota.user
ファイルと
quota.group
ファイルに保存します。
これらのファイルは,ファイルセットの作成時に作成され,ユーザ ID とグループ ID でインデックスされます。
クォータを適用する必要がない場合も,これらのファイルは削除できません。
各クォータ・ファイル・エントリには,次の情報が含まれています。
ls -l
コマンドを使用すれば,quota.user
ファイルあるいは
quota.group
ファイルが関係するファイルの容量を調べることができますが,それらは実際のディスク使用量を反映していません。
たとえば,quota.user
ファイルを表示するには,次のコマンドを実行します。
# ls -l quota.user
-rw-r----- 1 root operator 294912 Jul 20 08:50 quota.user
ls -s
コマンドまたは
du -k
コマンドを使用すれば,ファイルによるディスク使用量を 1K バイト単位のブロック数で表示できます。
たとえば,quota.user
ファイルのブロック数を表示するには,次のコマンドを実行します。
# ls -s quota.user
16 quota.user
# du -k quota.user
16 quota.user
3.2.2 ユーザおよびグループのクォータ,および猶予期間の設定
edquota
コマンドを使用します。
また,その猶予期間を変更するのにもこのコマンドを使用します。
猶予期間は,各ファイルセットごとに,すべてのユーザまたはすべてのグループに対して 1 つしか設定できません。
ただし,ブロック数とファイル数に対して同じ値の猶予期間を設定する必要はありません。
設定したグループ猶予期間は,ファイルセット猶予期間としても設定されます (詳細は
3.3.2.2 項を参照)。
/etc/fstab
ファイル (2.4.1 項) にクォータ・ファイルのマウント・ポイント・オプション (userquota および groupquota) を追加します。
ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。
edquota
コマンドに適切なオプションを指定して実行します。
クォータ・ファイルの内容が,EDITOR 環境変数に指定されているエディタによって ASCII 形式で表示されます。
EDITOR 環境変数が設定されていない場合は,vi
エディタが使用されます。
クォータを設定することのできるファイルセットだけを見ることができます。
ファイルセットがわからない場合,ステップ 1 からやり直してください。
edquota
コマンドを実行します。
編集することのできる ASCII 形式のファイルが表示されます。
edquota
(8)quotaon
コマンドで有効化するか,システムを再起動する必要があります (3.2.4 項
および
3.2.5 項を参照)。
ファイルセットに対してすでにクォータ機能が有効になっている場合は,クォータ値を変更すると新しい限界値がすぐに有効になります。
edquota
コマンドに
-p
オプションをつけて使用して,そのユーザのエントリをプロトタイプとして他のユーザに適用することができます (3.2.3 項を参照)。
-p
オプションを使用せずに
edquota
コマンドを複数のユーザ名を指定して実行した場合,指定したすべてのユーザについて,エディタ・ウィンドウが表示されます。
3.2.2.1 ユーザ・クォータの設定
user5
のクォータを設定しています。
/etc/fstab
ファイル (2.4.1 項) にクォータ・マウント・ポイント・オプションを追加します。
そして,ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。
domain_1#geb1 /geb1 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
domain_2#geb3 /geb3 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
domain_4#geb4 /geb4 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
edquota
コマンドに
-u
オプションをつけてユーザ名を指定して実行します。
edquota
の出力に,そのファイルセットがない場合,ステップ 1 から繰り返します。
# edquota -u user5
Quotas for user user5:
/geb1: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
/geb3: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
/geb4: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
blocks in use
と
inodes in use
は,それぞれ各ファイルセットで使用されている 1K バイトのブロック数とファイル数を示しています。
これらの値は変更できません。
この例では,ファイルセットが新しく作成されています。
ソフトおよびハード限界値がゼロになっているので,限界値は設定されていません。
soft
および
hard
フィールドに設定された,指定ユーザの限界値を変更します。
複数のユーザ名を指定した場合,値はすべてのユーザ名に反映されます。
/geb1: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
/geb3: blocks in use: 0, limits (soft=5000, hard=10000)
inodes in use: 0 limits (soft= 100, hard= 200)
/geb4: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
geb3
のクォータが既に有効になっている場合は,新しい限界値が直ちに有効になります。
ファイルセットのクォータがまだ有効になっていない場合は,クォータが有効にされると同時に新しい限界値が有効になります。
クォータを手動で有効にする方法は,3.2.5 項
を参照してください。
3.2.2.2 ユーザ猶予期間の設定
geb3
のすべてのユーザに対する猶予期間を設定しています。
/etc/fstab
ファイル (2.4.1 項) にクォータ・マウント・ポイント・オプションを追加します。
そして,ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。
domain_1#geb1 /geb1 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
domain_2#geb3 /geb3 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
domain_4#geb4 /geb4 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
edquota
コマンドに
-ut
オプションをつけて実行します。
edquota
の出力に,そのファイルセットがない場合,ステップ 1 から繰り返します。
# edquota -ut
Time units may be: days, hours, minutes, or seconds
Grace period before enforcing soft limits for users:
/geb1: block grace period: 7 days, file grace period: 7 days
/geb3: block grace period: 7 days, file grace period: 7 days
/geb4: block grace period: 7 days, file grace period: 7 days
geb3
ファイルセットのユーザ猶予期間を設定するために,block grace period
および
file grace period
フィールドの値を変更します。
Time units may be: days, hours, minutes, or seconds
Grace period before enforcing soft limits for users:
/geb1: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
/geb3: block grace period: 2 days, file grace period:3 days
/geb4: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
geb3
のクォータが既に有効になっている場合は,新しい猶予期間が直ちに有効になります。
すでにソフト限界値を超えている場合は,ソフト限界値を下回るまで新しい猶予期間は有効になりません。
ファイルセットのクォータがまだ有効になっていない場合は,クォータが有効にされるとすぐに新しい限界値が有効になります。
クォータを手動で有効にする方法は,3.2.5 項
を参照してください。
3.2.2.3 グループ・クォータの設定
rsgusers
に対して
geb3
にクォータを設定しています。
/etc/fstab
ファイル (2.4.1 項) にクォータ・マウント・ポイント・オプションを追加します。
そして,ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。
domain_1#geb1 /geb1 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
domain_2#geb3 /geb3 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
domain_4#geb4 /geb4 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
edquota
コマンドに
-g
オプションをつけて実行します。
複数のグループ名を指定した場合,値はすべてのグループに反映されます。
edquota
の出力に,そのファイルセットがない場合,ステップ 1 から繰り返します。
# edquota -g rsgusers
Quotas for group rsgusers:
/geb1: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
/geb3: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
/geb4: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
blocks in use
と
inodes in use
は,それぞれ各ファイルセットで使用されている 1K バイトのブロック数とファイル数を示しています。
これらの値は変更できません。
ソフトおよびハード限界値がゼロになっているので,限界値は設定されていません。
soft
および
hard
フィールドに,指定したグループの限界値を設定します。
/geb1: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
/geb3: blocks in use:0, limits(soft=60000, hard=80000)
inodes in use:0, limits(soft= 6000, hard= 8000)
/geb4: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
geb3
のクォータが既に有効になっている場合は,新しい限界値が直ちに有効になります。
ファイルセットgeb3
のクォータがまだ有効になっていない場合は,クォータが有効にされると同時に新しい限界値が有効になります。
クォータを手動で有効にする方法は,3.2.5 項
を参照してください。
ユーザとグループの両方のクォータが設定されている場合は,両方のうちに小さい方の値が使用されます。
3.2.2.4 グループ猶予期間の設定
geb3
のすべてのグループに対して猶予期間を設定しています。
/etc/fstab
ファイル (2.4.1 項) にクォータ・マウント・ポイント・オプションを追加します。
そして,ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。
domain_1#geb1 /geb1 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
domain_2#geb3 /geb3 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
domain_4#geb4 /geb4 advfs rw,userquota,groupquota 0 2
edquota
コマンドに
-gt
オプションをつけて実行します。
edquota
の出力に,そのファイルセットがない場合,ステップ 1 から繰り返します。
# edquota -gt
Time units may be: days, hours, minutes, or seconds
Grace period before enforcing soft limits for groups:
/geb1: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
/geb3: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
/geb4: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
geb3
ファイルセットのグループ猶予期間を設定するために,block grace period
および
file grace period
フィールドの値を変更します。
Time units may be: days, hours, minutes, or seconds
Grace period before enforcing soft limits for groups:
/geb1: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
/geb3: block grace period:12hours, file grace period:5 days
/geb4: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
geb3
のソフト限界値を超えていない限り,新しい猶予期間が直ちに有効になります。
すでにソフト限界値を超えている場合は,そのグループの使用量がソフト限界値を下回るまで,新しい猶予期間は有効になりません。
クォータがまだ適用されていない場合は,グループ猶予期間はクォータが適用されるとすぐに有効になります。
クォータを手動で有効にする方法については,3.2.5 項
を参照してください。
3.2.2.5 一時的猶予期間の設定
edquota
コマンドに
-t
を指定して実行します。
ブロック数または i ノードのソフト限界値は 1 に設定し,ブロック数または i ノードのハード限界値は 0 に設定します。
3.2.3 複数のユーザおよびグループに対するユーザおよびグループ・クォータの設定
edquota
コマンドに
-u
オプションまたは
-g
オプションをつけて実行します。
edquota
コマンドに
-p
オプションをつけて実行します。
edquota
(8)3.2.3.1 複数のユーザに対するクォータの設定
user5
に対してクォータを設定します (3.2.2.1 項を参照)。
# edquota -u user5
Quotas for user user5:
/geb1:blocks in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
inodes in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
/geb3:blocks in use:1 ,limits(soft= 5000,hard= 10000)
inodes in use:4, limits(soft= 100,hard= 200)
/geb4:blocks in use:2, limits(soft= 0,hard= 0)
inodes in use:1, limits(soft= 0,hard= 0)
user5
のクォータをプロトタイプとして使用して,新しいユーザ
user7
,user8
,および
user9
のクォータを設定します。
# edquota -p user5 -u user7 user8 user9
user7
に対して
edquota
コマンドを実行します。
# edquota -u user7
Quotas for user user7:
/geb1:blocks in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
inodes in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
/geb3:blocks in use:1 ,limits(soft= 5000,hard= 10000)
inodes in use:4, limits(soft= 100,hard= 200)
/geb4:blocks in use:2, limits(soft= 0,hard= 0)
inodes in use:1, limits(soft= 0,hard= 0)
rsgusers
のクォータを設定します (3.2.2.3 項を参照)。
# edquota -g rsgusers
Quotas for group rsgusers:
/geb1:blocks in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
inodes in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
/geb3:blocks in use:0, limits(soft= 60000,hard=80000)
inodes in use:0, limits(soft= 6000,hard= 8000)
/geb4:blocks in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
inodes in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
rsgusers
のクォータをプロトタイプとして使用して,新しいグループ
rsgstudents
のクォータを設定します。
# edquota -p rsgusers -g rsgstudents
rsgstudents
に対して
edquota
コマンドを実行します。
# edquota -g rsgstudents
Quotas for group rsgstudents:
/geb1:blocks in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
inodes in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
/geb3:blocks in use:0, limits(soft= 60000,hard= 80000)
inodes in use:0, limits(soft= 6000,hard= 8000)
/geb4:blocks in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
inodes in use:0, limits(soft= 0,hard= 0)
3.2.4 システム・スタートアップ時のユーザおよびグループ・クォータの適用
/etc/fstab
ファイルのエントリを編集して,クォータ・ファイルのマウント・ポイント・オプションを追加します。
マウント・ポイント・オプションについての詳細は,2.4.1 項
を参照してください。
rcmgr
コマンドを使用して,QUOTA_CONFIG
オプションを
/etc/rc.config.common
ファイルに追加します。
/usr/sbin/rcmgr -c set QUOTA_CONFIG "yes"
/sbin/init.d
クォータ・スクリプトが,/etc/fstab
ファイル内で
userquota
オプションまたは
groupquota
オプションが指定されているファイル・システムに対して,quotaon
コマンドを実行します。
これにより,次回以降のリブートで,マウントしたファイルセットに対して,クォータが適用されるようになります。
注意
quotaon
コマンドによりクォータの適用を明示的に有効にしなければなりません。
これは,/etc/rc.config.common
ファイルに
QUOTA_CONFIG="yes"
エントリが記述されている場合でも必要です。
QUOTA_CONFIG
オプションを "yes" に設定すると,quotacheck
コマンドも実行されます。
このコマンドは,/etc/fstab
ファイル内でクォータ・オプションが設定されている UFS ファイル・システムに対して実行され,ファイル・システムのクォータの整合性をチェックします。
AdvFS ファイル・システムでは,AdvFS メタデータ・トランザクション・ログによってストレージ割り当てとクォータの同期が維持されるため,特に指定しない限り,quotacheck
コマンドは AdvFS には実行されません。
/etc/fstab
ファイル内でクォータ・オプションが指定されている AdvFS ファイル・システムに対して,スタートアップ時に
quotacheck
コマンドを実行するためには,rcmgr
コマンドを使用して次のオプションを
/etc/rc.config.common
ファイルに追加します。
/usr/sbin/rcmgr -c set QUOTACHECK_CONFIG -a
quotacheck
コマンドの処理対象を省略時の状態 (UFS のみ) に戻すには,このオプションを次のように変更します。
/usr/sbin/rcmgr -c set QUOTACHECK_CONFIG ""
3.2.5 ユーザおよびグループ・クォータの手動による適用
/etc/fstab
ファイル・エントリに
userquota
と
groupquota
を追加し,限界値と猶予期間を設定するために
edquota
コマンドを実行したら,クォータを有効化するために
quotaon
コマンドを実行します。
quotaon
コマンドを再度実行する必要はありません。
スタートアップ時にクォータが適用されるように設定していない場合 (3.2.6 項を参照) には,リブートのたびに
quotaon
コマンドを実行する必要があります。
# quotaon -av
/geb1: group quotas turned on
/geb1: user quotas turned on
/geb3: group quotas turned on
/geb3: user quotas turned on
/geb4: group quotas turned on
/geb4: user quotas turned on
quotaon
コマンドは,ユーザおよびグループ・クォータの両方に作用します。
対象にユーザ (-u
オプション) あるいはグループ (-g
オプション) を指定して,どちらか一方に対してクォータを適用することも可能です。
ファイルセットを指定してユーザまたはグループ・クォータを適用することもできます。
詳細は,
quotaon
(8)3.2.6 ユーザおよびグループ・クォータの適用解除
quotaoff
コマンドは,クォータの設定を無効にします。
無効にしたクォータは,quotaon
コマンドが手動かシステム初期化時に実行され,クォータが再び有効になるまで無効の状態になります。
クォータの適用は,対象にユーザ (-u
オプション) かグループ (-g
オプション) かを指定して解除できます。
ユーザまたはグループ・クォータを適用しているファイルセットを指定することもできます。
詳細は,
quotaoff
(8)umount
コマンドを実行するとクォータの適用が解除され,ファイルセットがアンマウントされます。
アンマウントしたファイルセットのクォータは,有効にできません。
ファイルセットを再マウントした場合に,そのファイルセットのユーザおよびグループ・クォータを有効にするには
quotaon
コマンドを実行する必要があります。
quotaoff
コマンドを実行し,ファイルセットに対してクォータ機能が適用されないようにします。
edquota
コマンドを使用してクォータ限界値を 0 に設定します。
/etc/fstab
ファイルからそのファイルセットの
userquota
および
groupquota
エントリを削除します。
3.3.1 ファイルセット・クォータ・ファイル
3.3.2 ファイルセット・クォータおよび猶予期間の設定
chfsets
コマンドで設定されます。
ファイルセット・クォータが設定されている場合,それらのクォータはファイルセットをマウントするたびに有効になります。
chfsets
コマンドを使用します。
このコマンドには,次のオプションを指定できます。
-F
ファイル数のソフト限界値を設定
-f
ファイル数のハード限界値を設定
-B
ブロック使用量のソフト限界値を設定
-b
ブロック使用量のハード限界値を設定
3.3.2.1 ファイルセット・クォータの設定
year1
ドメインの
student_files
ファイルセットのファイルセット・クォータを設定しています。
その他のクォータ・コマンドとは異なり,showfsets
コマンドは,512 バイト・ブロック単位でブロック使用量を表示します。
K バイト値を表示したい場合には,-k
オプションを使用します。
showfsets
コマンドを使用します。
# showfsets -k year1 student_files
student_files
Id : 2feff762.00034e3f.1.8001
Clone is : stufiles_clone
Files : 7, SLim= 0, HLim= 0
Blocks (1k) : 118, SLim= 0, HLim= 0
Quota Status : user=on group=on
Object Safety: off
Fragging : on
DMAPI : off
SLim
は,ファイル数とブロック使用量に対するソフト限界値,HLim
はハード限界値です。
chfsets
コマンドを使用してクォータを設定します。
# chfsets -F 1000 -f 2000 -B 25000 -b 50000 year1 student_files
showfsets
コマンドをもう一度実行します。
# showfsets -k year1 student_files
student_files
Id : 2feff762.00034e3f.1.8001
Clone is : stufiles_clone
Files : 7, SLim= 1000, HLim= 2000
Blocks (1k) : 118, SLim= 25000, HLim= 50000
Quota Status : user=on group=on
Object Safety: off
Fragging : on
DMAPI : off
edquota
コマンドに
-gt
オプションを使用して変更する場合は,ファイルセット猶予期間も変更することになります。
グループ猶予期間とファイルセット猶予期間の設定の詳細は,3.2.2.4 項
を参照してください。
3.3.3 複数のファイルセットに対するクォータの設定
chfsets
コマンドの実行時に複数のファイルセット名を指定することにより,ドメイン内の複数のファイルセットに対してクォータ限界値を設定できます。
domain_2
の
data
および
data2
ファイルセットのハード限界値を変更するには,これらの両方のファイルセット名を指定して
chfsets
コマンドを実行します。
# chfsets -b 1000 -f 200 domain_2 data data2
chfsets
コマンドを実行すると,ファイルセット・クォータは,すぐに適用されます。
他の操作は必要ありません。
これによって,ファイルセット・クォータは,そのファイルセットをマウントすれば有効になります。
3.3.5 ファイルセット・クォータの適用解除
chfsets
コマンドを,ハード限界値とソフト限界値をそれぞれ 0 に設定して実行することによって,ファイルセットに対するクォータの適用を,一時的または永続的に解除することができます。
ファイルおよびディスク・スペースの使用量に関する情報は,クォータを現在適用しているかどうかには関係なく取得できます。
3.4 ファイルセットおよびディスク・スペース使用量の確認
df
,
showfdmn
,
/sbin/advfs/vdf
,および
showfsets
コマンドを使用してモニタすることができます。
ディスク使用量を表示する一般的な方法については,または表示されたディスク使用量情報が読めない場合は,6.4.1 項を参照してください。
ファイルのアドレス範囲を表示する
ls
などのコマンドでは,スパース・ファイルであるクォータ・ファイルは,実際より大きいサイズに表示されます。
3.4.1 ユーザおよびグループ・クォータの確認
表 3-3: ユーザおよびグループの使用状況情報コマンド
コマンド
説明
ncheck
ファイルセット内の各ファイルのタグおよび絶対パス名を表示します。
quot
ファイルセットの所有者の要約を表示します。
quota
ディスク使用状況と限界値をユーザまたはグループ別に表示します。
quotacheck
ファイルセット内でのクォータの一貫性をチェックします。
repquota
ファイルセットのユーザおよびグループ・クォータの要約を表示します。
ncheck
コマンドは,ファイルをsort
コマンドに渡すことによって,ソートされた出力を
quot
コマンドの入力として使用し,すべてのファイルとその所有者をリストすることができます。
このようなリストを表示するには,次のように入力します。
ncheck
domain#fileset
|sort +0n| quot -n
domain#fileset
3.4.1.2 ファイルセット所有者の要約
quot
コマンドは,各ユーザが所有する,マウントされたファイルセットのブロック使用量とファイル数を表示します。
ファイルセットを指定しない場合,このコマンドは
/etc/fstab
ファイルの
ro
,rw
,およびrq
マウント・オプションを含むすべてのファイルセットを対象にします。
quot
コマンドをオプションを指定せずに入力すると,各ユーザのブロック数のみが表示されます。
# quot domain_1#set_1
domain_1#set_1:
34128 root
816 user5
quot
コマンドを
-f
オプションを指定して入力すると,各ユーザについて,ファイルのサイズとファイル数の両方が表示されます。
# quot -f domain_1#set_1
domain_1#set_1:
34128 125 root
816 9 user5
quota
コマンドは,/etc/fstab
ファイルに
userquota
および
groupquota
エントリのあるマウントされたファイルセットの,ブロック使用量,ファイル数,およびユーザ・クォータまたはグループ・クォータを表示します。
クォータ値を超えて使用しているすべてのファイルセットに関して,あるいはクォータが適用されているかどうかには関係なくマウントされているすべてのファイルセットに関して,ユーザ・クォータ情報を表示するか,グループ・クォータ情報を表示するかを選択できます。
quota
コマンドは,各ユーザの,ファイルセットのブロック使用量,ソフト限界値 (quota
),ハード限界値 (limit
),猶予期間,および使用ファイル数を表示します。
欄内のアスタリスク (*) は,ソフト限界値を超えていることを表しています。
ソフト限界値を超えていなければ,猶予期間は表示されません。
現在のクォータ値を表示するには,edquota
コマンドを使用します。
runner1
のクォータ情報を表示しています。
# quota -u runner1
Disk quotas for user runner1 (uid 446):
Filesystem blocks quota limit grace files quota limit grace
/ 60 100 150 3 10 20
/usr 5071* 5000 10000 24:40 2 20 40
/mile1 816 20000 30000 9 350 500
/mile2 22032 50000 200000 2 2000 4000
/mile3 2344 10000 15000 370 1000 2000
/mile4 18023* 10000 20000 7days 3 100 150
/mile5 32012* 20000 50000 7days 0 2000 3000
kingco
のクォータ情報を表示しています。
# quota -g kingco
Disk quotas for group kingco (gid 15):
Filesystem blocks quota limit grace files quota limit grace
/ 118 200 300 2 20 40
/usr 13184* 10000 20000 7days 2 40 80
/mile1 36136 100000 200000 124 10000 20000
/mile2 44064 200000 400000 4 2000 4000
/mile3 3587 30000 60000 628 3000 5000
/mile4 51071 150000 300000 6 1050 1800
/mile5 61044 100000 200000 3 10000 20000
3.4.1.4 ユーザおよびグループ・クォータの整合性の確認
quotacheck
コマンドは,実際のブロック使用量とファイル数が,設定された限界値と矛盾がないかをチェックします。
このコマンドは,ユーザおよびグループ・ファイルを調べ,現在のディスク使用状況の表を作成し,この表とディスク・クォータ・ファイルに保管されている情報とを比較します。
quotacheck
コマンドを使用するためには,ファイルセットがマウントされている必要があります。
-v
オプション (詳細モード) を指定すると,見つかった矛盾点とチェック・プロセスで実行された処理手順を表示します。
-u
(ユーザ) または
-g
(グループ) のいずれかのオプションを選択してどちらか一方の情報のみをチェックすることもできます。
set_1
のチェックを行い,矛盾がないことが示されています。
# quotacheck -v domain_1#set_1
*** Checking user and group quotas for domain_1#set_1 (/set_1)
/etc/fstab
ファイルにクォータが定義されているすべてのファイルセットについてチェックを行なっています。
この出力結果で
inodes
はファイルの数,blocks
はブロック使用量を表します。
quotacheck
コマンドの結果,/usr
ディレクトリの矛盾点が訂正されています。
# quotacheck -va
*** Checking user and group quotas for /dev/rdisk/dsk0g (/usr)
*** Checking user and group quotas for domain_1#set_1 (/set_1)
/usr:root fixed group quota: inodes 3057 -> 3022
blocks 100616 -> 123440
/usr:system fixed group quota: inodes 2483 -> 2488
blocks 91721 -> 114568
/usr:adm fixed group quota: inodes 280 -> 240
blocks 487 -> 464
3.4.1.5 ファイルセットごとのユーザおよびグループ・クォータの要約
repquota
コマンドは,指定したファイルセットの実際のディスク使用量とクォータを表示します。
出力される要約には,マウント済みで,/etc/fstab
ファイルにクォータ・エントリがあるファイルセットのみが含まれます。
特に指定しなければ,ユーザ・クォータが報告されますが,-u
オプションでユーザ・クォータの報告,-g
オプションでグループ・クォータの報告を,それぞれ明示的に指定することもできます。
-a
オプションを指定するとユーザとグループの両方のクォータが表示されます。
repquota
コマンドは,ユーザまたはグループのそれぞれについて,現在のファイル数,使用中のスペースの量,edquota
コマンドで設定したクォータ限界値が表示されます。
/set_1
にマウントした 1 つのファイルセットのクォータの要約を出力しています。
# repquota -v /set_1
*** Report for user quotas on /set_1 (domain_1#set_1)
Block limits File limits
User used soft hard grace used soft hard grace
root -- 34088 0 0 123 0 0
user5 -- 816 20000 30000 9 350 500
/etc/fstab
ファイルにクォータを定義しているすべてのマウントされたファイルセットについて,ユーザおよびグループ・クォータの情報を表示しています。
この例では,UFS と AdvFS の両方のファイルが表示されています。
# repquota -va
*** Report for group quotas on /usr (/dev/disk/dsk0g)
Block limits File limits
Group used soft hard grace used soft hard grace
system -- 114568 0 0 2488 0 0
daemon -- 144 0 0 1 0 0
uucp -- 801 0 0 8 0 0
mem -- 1096 0 0 10 0 0
bin -- 108989 0 0 3219 0 0
mail -- 209 0 0 2 0 0
terminal -- 56 0 0 2 0 0
adm -- 464 0 0 240 0 0
operator -- 392 0 0 3 0 0
211 -- 6937 0 0 33 0 0
*** Report for user quotas on /usr (/dev/disk/dsk0g)
Block limits File limits
User used soft hard grace used soft hard grace
root -- 123440 0 0 3022 0 0
bi -- 102534 0 0 2940 0 0
uucp -- 729 0 0 7 0 0
adm -- 1 0 0 1 0 0
user5 -- 15 18 24 1 0 0
kraetsch -- 6937 0 0 35 0 0
*** Report for group quotas on /set_1 (domain_1#set_1)
Block limits File limits
Group used soft hard grace used soft hard grace
system -- 22816 0 0 50 0 0
daemon -- 12088 0 0 82 0 0
*** Report for user quotas on /set_1 (domain_1#set_1)
Block limits File limits
User used soft hard grace used soft hard grace
root -- 34088 0 0 123 0 0
user5 -- 816 20000 30000 9 350 500
*** Report for group quotas on /set_3 (domain_2#set_3)
Block limits File limits
Group used soft hard grace used soft hard grace
system -- 1593 0 0 6 0 0
*** Report for user quotas on /set_3 (domain_2#set_3)
Block limits File limits
User used soft hard grace used soft hard grace
root -- 1593 0 0 6 0 0
表 3-4: ユーザおよびグループの使用量コマンド
コマンド
説明
df
ファイルセットごとにディスク使用量を表示します。
showfsets
-q
オプションを指定すると,ファイルセット・クォータ限界値を表示します。
showfdmn
ドメイン情報を表示します。
/sbin/advfs/vdf
他のファイルセット・ディスク使用量コマンドの出力フォーマットを加工できます。
df
コマンドを使用して,ファイルセット内の使用済みディスク・スペースおよび空きディスク・スペースを表示することができます。
このコマンドは,ハードあるいはソフトのいずれか低い方の限界値を使用して利用可能ディスク容量を計算します。
df
コマンドの出力結果には,メタデータやクォータ・ファイルが使用するスペースは含まれません。
fileset_1
で利用可能なスペースの量を表示しています。
# df /fileset_1
Filesystem 512-blocks Used Avail Capacity Mounted on
domain_1#fileset_1 1500 1750 0 117% /fileset_1
jan
および
mar
のそれぞれが,credit
ボリュームで利用可能なすべてのディスク・スペースを使用できることを示しています。
# df
Filesystem 512-blocks Used Avail Capacity Mounted on
credit#jan 2000000 390820 98864 80% /jan
credit#mar 2000000 271580 98864 73% /mar
showfsets
コマンドに
-q
オプションを指定すると,指定したドメイン内のファイルセットに関する,ファイルの使用状況,ハード限界値,ソフト限界値,および猶予期間が表示されます。
表示される数値には,使用中のブロック数,ブロック数の限界値,使用中のファイル数,およびファイル数の限界値が含まれます。
正しい情報を得るには,ファイルセットをマウントする必要があります。
domain_1
のファイルセット情報を表示しています。
# showfsets -q domain_1
Block (512) Limits File Limits
Fileset BF used soft hard grace used soft hard grace
fileset1 +- 1750 1500 2000 11:32 35 300 400
BF
フィールドに表示されているプラス記号 (+) は,使用中のブロック数がソフト限界値を超えていることを示しています。
ハード限界値に達すると,アスタリスク (*) が表示されます。
この場合は,ファイル数の限界にはまだ達していません。
3.4.2.3 ドメインの領域情報の表示
showfdmn
コマンドで,ファイルセットとクォータに関する意思決定の材料として利用できるドメインの統計情報が得られます。
このコマンドはドメインの属性と,(ボリュームの総容量,空きブロックの総数,および割り当て済みボリューム領域の割合 (パーセント) などの)ドメイン内の各ボリュームの情報を表示します。
# showfdmn usr_domain
Id Date Created LogPgs Version Domain Name
39cbf2d6.0002691e Sun Jan 20 17:01 2002 512 4 usr_domain
Vol 512-Blks Free % Used Cmode Rblks Wblks Vol Name
1L 10605520 7757728 27% on 256 256 /dev/disk/dsk8d
3.4.2.4 ドメインとファイルセットのディスク使用状況の表示
/sbin/advfs/vdf
ユーティリティは,showfdmn
,showfsets
,および
df
コマンドの出力を再フォーマットして,AdvFS ドメインおよびファイルセットのディスク使用量に関する情報を表示します。
このコマンドは,ドメインのディスク使用量とファイルセットのディスク使用量との間の関係を明らかにします。
vdf
コマンドは,アクティブでないシステム上で実行するこのをお勧めします。
このコマンドは,一連のユーティリティを実行するため,システムが実際にファイルの追加,削除,修正などを行なっていると
vdf
コマンドの出力に矛盾が生じる可能性があるからです。
vdf
コマンドでは,ドメインおよびファイルセット名のどちらでも指定できます。
ファイルセット名のみを指定した場合,df
コマンドを実行した場合と同じ出力結果となります。
ドメインを指定した場合,このユーティリティはメタデータのディスク・ブロック数も表示します。
-l
オプションでドメインあるいはファイルセットを指定した場合,ドメインおよびファイルセットの両方の情報が表示されます。
表示されるドメイン・メタデータは,ドメイン内のすべてのファイルセットで共用される総メタデータです。
usr_domain
に関する要約情報を表示しています。
# /sbin/advfs/vdf usr_domain
Domain 512-blocks Metadata Used Available Capacity
usr_domain 65536 11219 47549 6768 89%
jba
ドメインについて調べています。
それぞれ 60,000 ブロックのクォータが設定されています。
# /sbin/advfs/vdf -l jba
Domain 512-blocks Metadata Used Available Capacity
jba 266240 5824 29128 231288 13%
Fileset QuotaLimit Used Available Capacity
jbfsa 60000 20800 39200 35%
jbfs2a 60000 8328 51672 14%
jbb
ドメインに関する情報を表示しています。
この例では,各ファイルセットで使用可能な総容量は,ドメインの総容量と同じです。
# /sbin/advfs/vdf -l jbb
Domain 512-blocks Metadata Used Available Capacity
jbb 266240 5824 29128 231288 13%
Fileset QuotaLimit Used Available Capacity
jbfsb - 20800 231288 35%
jbfs2b - 8328 231288 14%