この章では,ASU サーバを使用して Tru64 UNIX プリンタをドメイン・ユーザと共有する方法について説明します。
5.1 プリンタ共有を作成する前の作業
プリンタ共有を作成する前に,次の確認を行ってください。
共有する予定のプリンタが,/etc/printcap
ファイルにエントリを持っていることを確認します。
プリンタのエントリが
/etc/printcap
ファイル内になければ,lprsetup
ユーティリティを使用して,プリンタをセットアップします。このユーティリティは,プリンタに関する情報を入力するように要求し,スプール・ディレクトリを作成し,出力フィルタをリンクして,/etc/printcap
ファイルにプリンタのエントリを追加します。
/etc/printcap
ファイルの
lmxnone
および
lmxnull
エントリや関連のスプール・ディレクトリを削除してはなりません。これらのエントリおよびディレクトリは,/etc/printcap
ファイルが存在しなかった場合に,net device
コマンドで作成されたものです。
プリンタ共有を作成したいプリンタが正常に機能することを確認します。
プリンタ共有は,必須とオプションの属性からなります。
表 5-1
に,値を指定する必要のある必須のプリンタ共有属性示します。
表 5-1: 必須のプリンタ共有属性
属性 | 説明 |
Share name | ユーザがプリンタ共有への接続に使用する最大 12 文字の英数字の一意名。 共有には,次の名前を使用してはならない: COMM,PRINT,DEV,PIPE,QUEUES,SEM,MAILSLOT,SHAREMEM。 共有名にドル記号 ( $ ) を付加すると,ユーザが ASU サーバをブラウズする際に非表示になる。 |
Device name | Tru64 UNIX オペレーティング・システム・ソフトウェアはこの名前でプリンタを認識する。 |
表 5-2
に,共有を作成するときに値を指定できるオプションの属性を示します。
表 5-2: オプションのプリント共有属性
属性 | 説明 |
Users | 共有に同時アクセス可能な最大ユーザ数。 |
Remark | 共有に関するコメント。コメントは引用符で囲む必要がある。 |
表 5-3
に,プリント・ジョブの最大数およびプリント・ジョブ名の長さを定義する
SYSTEM/CurrentControlSet/Services/AdvancedServer/Parameters
レジストリ・パス内のレジストリ値エントリを示します。
表 5-3: プリント・ジョブの値エントリ
エントリ | 指定/省略時の値 |
|
ASU サーバによって作成された任意のクラス・キューに登録可能なプリント・ジョブの最大数。 省略時の値: 1000 プリント・ジョブ |
|
プリント・ジョブ名の最大文字数。 省略時の値: 0 文字 (プリント・ジョブ名を切り捨てない) |
これらのキーの値を変更するには,レジストリ エディタを使用します。たとえば,regconfig
レジストリ エディタを使用して,プリント・ジョブ名の最大文字数を 8 文字に設定するには,次の手順に従います。行末のバックスラッシュ ( \ ) は,そのコマンド行が次の行に続くことを示しています。コマンド全体を入力したら,Enter キーを押してください。
次のコマンドを入力して,MaxPrintJobName
エントリの新しい値を入力します。
# regconfig SYSTEM/CurrentControlSet/Services/\ AdvancedServer/Parameters MaxPrintJobName REG_DWORD 8
次のコマンドを入力して,ASU サーバを再起動します。
#
net stop server
#
net start server
プリンタ共有を作成する場合は,次のいずれかの方法を使用します。
/print
オプションを指定した
net share
コマンド
Windows プリンタ ウィザード
ASU サーバを実行しているシステムで,Tru64 UNIX コマンド・プロンプトから
net
コマンドを小文字で入力します。コマンド全体を入力したら,Enter キーを押してください。
表 5-4
に,net share
コマンド・オプションを示します。このオプションを使用して,プリンタ共有の属性を設定します。
表 5-4: プリンタ共有属性の設定
属性 | net share オプション |
Share name | net share
コマンドの後に共有名を入力する。 |
Device name | 共有名の後にプリンタの Tru64 UNIX 名を入力する。 |
Users | /users:#
または
/unlimited |
Remark | /remark:"text" |
laserwriter
という名前の Tru64 UNIX プリンタのプリンタ共有win_printer
を作成するには,次のように入力します。
#
net share win_printer=laserwriter
/print
プリンタ共有
win_printer
に関する情報を表示するには,次のように入力します。
#
net share win_printer
5.4.2 Windows プリンタ ウィザードの使用
次の手順に従って,Windows プリンタ ウィザードでプリンタ共有を作成します。
管理権限を持つアカウントを使用して,Windows を実行しているシステムにログインします。
[ネットワーク コンピュータ] をブラウズするか,または [スタート] ボタンの [ファイル名を指定して実行] または [検索] オプションを使用し,プリンタ共有を作成したい ASU サーバを探して,ダブルクリックします。
ディスク共有およびプリンタのフォルダをリストしたウィンドウが表示されます。
[プリンタ] フォルダをダブルクリックします。
[プリンタの追加] アイコンをクリックし,画面の指示に従って操作します。
ASU プリンタ共有を解除するために,Tru64 UNIX の
lprsetup
コマンドを使用したり,/etc/printcap
ファイルを編集してはなりません。プリンタ共有を解除するには,clsetup
コマンドを使用するか,または次のように入力します。
#
net share
sharename
/delete
clsetup
コマンドについての詳細は,
clsetup
(8)5.6 代替プリンタ・ドライバのインストール
代替プリンタ・ドライバをインストールすると,さまざまな Windows ベース・システム (Alpha, PowerPC, MIPS, または x86) のユーザは,プリンタ共有を追加するときに,必要なドライバを自動的にダウンロードすることができます。たとえば,Windows 95 ユーザが,ASU プリント共有をポイントするプリンタをシステムに追加すると,Windows 95 プリンタ ウィザードが ASU サーバに接続して,そのプリンタ用の x86 ベースのドライバを検索します。ドライバが見つかると,プリンタ ウィザードはそのドライバを Windows 95 システムにコピーします。ドライバが見つからない場合には,プリンタ ウィザードはユーザにそれを提供するように要求します。
プリンタ共有に対して代替プリンタ・ドライバをインストールするには,次の操作を実行する必要があります。
Windows NT システム上に,プリンタをローカルにインストールします。
プリンタ共有の [プロパティ] ダイアログ・ボックスを表示します。
[共有] タブをクリックします。
[共有する] を選択して,インストールする代替ドライバを選択します。
[OK] ボタンをクリックします。
プリンタ共有には,「アクセス権なし」,「印刷」,「ドキュメントの管理」,「フル コントロール」の 4 種類のアクセス権があります。
アクセス権は累積的に付与されますが,「アクセス権なし」は他のアクセス権をすべて無効にします。省略時の設定では,「フル コントロール」アクセス権が各ドメイン・ユーザ・アカウントに割り当てられます。
プリンタ共有のアクセス権を変更するには,プリンタの所有者になる必要があります。プリンタ共有のアクセス権は,次のいずれかの方法で変更できます。
net perms
コマンド
Windows のプリンタ情報 GUI
ASU サーバを実行しているシステムで,Tru64 UNIX コマンド・プロンプトから
net
コマンドを小文字で入力します。コマンド全体を入力したら,Enter キーを押してください。
peter という名前のユーザがプリンタ共有
win_printer
を使用できないようにするには,次のように入力します。
#
net perms ¥¥win_printer
/grant peter:noaccess
プリンタ共有
win_printer
に関するアクセス権を表示するには,次のように入力します。
#
net perms ¥¥win_printer
5.7.2 Windows プリンタ情報 GUI の使用
次の手順に従い,プリンタ共有のアクセス権を設定します。
[スタート] ボタンをクリックし,[設定] オプション,[プリンタ] フォルダの順に選択して,プリンタ共有を選択します。
インストール済みのプリンタを示すウィンドウが表示されます。
[プリンタ] ウィンドウで,プリンタ共有の名前をクリックします。
[ファイル] メニューから [プロパティ] を選択します。
プリンタの [プロパティ] ダイアログ・ボックスが表示されます。
[セキュリティ] タブ,[アクセス権] ボタンの順にクリックします。
[プリンタのアクセス権] ダイアログ・ボックスが表示されます。
アクセス権を設定したいユーザまたはグループの名前が表示されてない場合は,[追加] ボタンをクリックしてリストに追加します。そのユーザまたはグループに設定するアクセス権の種類を選択して,[OK] ボタンをクリックします。
Tru64 UNIX バージョン 5.0 以降のオペレーティング・システムを実行しているシステムでは,Tru64 UNIX SysMan Event Viewer を使用して,ASU サーバに送信したプリント・ジョブの状態情報を表示することができます。
ASU サーバは,lpd
デーモンの一部を使用します。そのため,ASU プリント・イベントは,通常の Tru64 UNIX プリント・イベントとして SysMan Event Viewer に表示されます。
SysMan Event Viewer については,Tru64 UNIX の『システム管理ガイド』を参照してください。
5.9 ASU プリンタ共有としてのクライアント・プリンタの構成
ASU プリンタ共有は,オペレーティング・システムに MS-DOS を使っている PC に接続されたプリンタに対して作成することができます。Windows が動作している PC に接続されたプリンタでは,プリンタ共有を作成することはできません。
PC に接続されたプリンタ用に特殊なディスク共有を作成するには,asuclient
コマンドを使用します。プリンタに送られたプリント・ジョブはディスク共有に格納されます。PC はこのディスク共有に接続して,印刷するファイルを取り出します。PC に接続されたプリンタを ASU プリンタ共有として構成するには,以降の各項の手順に従って ASU サーバと PC を構成する必要があります。
5.9.1 ASU サーバの構成
PC に接続されたプリンタを認識するように ASU サーバを構成するには,次の操作を行います。
lprsetup
コマンドを入力します。
lprsetup
ユーティリティからプリンタ・タイプの入力を要求されると,PostScript プリンタの場合は
clientps
と入力し,テキスト・プリンタの場合は
clienttxt
と入力します。
続いて,スプール・ディレクトリとエラー・ログ・ファイルの入力を要求されると,パスを入力して,CLIENTNAME
をプリンタの接続先となる PC の名前で上書きします。
lprsetup
ユーティリティは,このプリンタのプリント・キューを Tru64 UNIX システム上に作成します。
net share
コマンドを使って,このプリンタのプリンタ共有を作成します。たとえば,laser
という名前のプリンタに
win_printer
というプリンタ共有を作成するには,次のように入力します。
#
net share win_printer=laser
/print
asuclient printername
-a
コマンドを入力して,このプリンタのディスク共有を作成します。たとえば,プリンタ
laser
のディスク共有を作成するには,次のように入力します。
#
asuclient laser
-a
PC を構成するには,次の作業を行う必要があります。
ASU ソフトウェアで提供されているスプーラ・エージェント・ソフトウェアをプリンタの接続先の PC にロードします。スプーラ・エージェント・ソフトウェアは,常駐型 (TSR) プログラムであり,ASU サーバからプリント・ジョブを受け取って MS-DOS TSR に送信し,プリント処理を実行できるようにします。
PC に対して永続性の接続を設定します。この接続によって,ASU サーバとのリンクが確立され,プリント・ジョブが特殊ファイル共有からコピーされて,接続されているプリンタに送られます。
以降の各項でこれらのタスクについて説明します。
5.9.2.1 スプーラ・エージェント・ソフトウェアのロード
スプーラ・エージェント・ソフトウェアを PC にロードする方法は,次項で説明しているように,PC に接続されているプリンタがテキスト・プリンタか PostScript プリンタかによって異なります。
5.9.2.1.1 テキスト・プリンタの場合
テキスト・プリンタが接続されている PC 上で,MS-DOS プロンプトから次の作業を行います。
autoexec.bat
ファイルを編集して,call ¥directory¥STARTNET.BAT
エントリの後に次のエントリを追加します。
print /d:portid: use driveid: ¥¥unix_server_name¥DOSUTIL driveid:¥clispool /i /s:driveid
portid
変数は,クライアントのプリンタ・ポートの ID です。たとえば,LPT1 または COM1 を指定します。
driveid
変数には,スプーラ・エージェント・ソフトウェアをインストールするドライブを指定します。
PC を再ブートします。
PostScript プリンタが接続されている PC 上で,MS-DOS プロンプトから次の作業を行います。
autoexec.bat
ファイルを編集して,call ¥transport¥STARTNET.BAT
エントリの後に次のエントリを追加します (transport
は TCP/IP または DECnet のいずれかになります)。
c:¥pcache¥pcache.com c:¥pcache¥print /d:portid: use driveid: ¥¥unix_server_name¥DOSUTIL driveid:¥clipcach /i /s:driveid
portid
変数は,クライアントのプリンタ・ポートの ID です。たとえば,LPT1 または COM1 を指定します。
driveid
変数には,スプール・エージェント・ソフトウェアをインストールするドライブを指定します。
PC を再ブートします。
ASU サーバ上で,AutoDisconnect
レジストリ値エントリが無効になっている場合には (省略時の設定),5.9.2.1 項の手順を実行すれば,自動的に永続性接続が作成されます。
ASU サーバ上で,AutoDisconnect
レジストリ値エントリが有効になっている場合は,これを無効にする必要があります。
AutoDisconnect
レジストリ値エントリを無効にするには,次の手順に従って,regconfig
レジストリ エディタを使用します。行末のバックスラッシュ(\)は,その行が続いていることを示しています。コマンド全体を入力したら,Enter キーを押してください。
次のコマンドを入力して
AutoDisconnect
エントリを無効にします。
# regconfig SYSTEM/CurrentControlSet/Services/\ LanmanServer/Parameters \ AutoDisconnect REG_DWORD 0
次のコマンドを入力して ASU サーバを再起動します。
#
net stop server
#
net start server