A    基本オペレーティング・システムの日本語機能に関する注意事項

ここでは基本オペレーティング・システムの日本語環境の説明と注意事項について記述します。

A.1    省略時の日本語コードセットの設定

日本語ロケールの設定としてコードセット名を省略した ja_JP を指定した場合のコードセットは,日本語 EUC (eucJP) となります。 この省略時の設定は,スーパユーザ・アカウントで /usr/sbin/i18n_setcodeset スクリプトを実行することによって,シフト JIS など他のコードセットに変更することができます。ただし,ネットワーク上の複数のシステム間で通信を行う場合は操作上の問題が発生することがあるので,この設定はなるべく変更しないでください。

A.2    使用する日本語コードセットの変更

ロケールのコードセットを変更する際には,stty コマンドを使用して,tty のアプリケーション・コードも同じように変更してください。

% setenv LANG ja_JP.eucJP
% stty acode eucJP
 

/usr/i18n/skel/ja_JP/.cshrc で定義されている setlang エイリアスを使用すれば,これらの変更を同時に行うことができます。

A.3    条件付き日本語 SUPPORTED サブセット

表 A-1 に示すサブセットは,条件付き日本語 UNSUPPORTED サブセットです。 これらのサブセット内で発生した問題については,他のSUPPORTEDサブセットよりも低い優先度で処理されます。

表 A-1:  条件付きSUPPORTEDサブセット

サブセット名 内容
IOSJPABASE 日本語 vi エディタ
IOSJPAMANOS IOSJPABASE に含まれる日本語ソフトウェアのためのリファレンス・ページ
IOSJPWNNPGMR Wnn かな漢字変換を利用したソフトウェアの開発のためのヘッダファイルおよびライブラリ
IOSJPWNNSRC Wnn のソースファイル

A.4    JIS X0212 補助漢字

日本語 EUC コードセットおよび Super DEC 漢字コードセットの CS3 は JIS X0212 補助漢字文字セットに割り当てられていますが,フォントは提供されていません。 ただし,XPG4 のワイド文字関数 (mbtowc() など) では CS3 のエンコーディングは正しく処理されます。

A.5    JIS X 0208-1990 の第 2 水準漢字のかな漢字変換入力

Tru64 UNIX V5.1A では,dxjim や Wnn を使用してすべての JIS 第 2 水準漢字をかな漢字変換によって入力することができるようになりました。

Wnn を使用して第 2 水準漢字を入力するには,以下の作業を行なう必要があります。

[uum を使用してかな漢字変換入力を行なう場合]

uum で入力するためには,以下のいずれかの方法で tankan2.dic を読み込む必要があります。

[mule でかな漢字変換入力を行なう場合]

/usr/i18n/mule/lib/mule/19.28/lisp/eggrc-wnn の以下の行のコメントアウトを外してから,mule を起動してください。

    ;       (add-wnn-dict "wnncons/tankan2.dic" "" 1 nil nil)
 

注意

このファイル中には上記と同じ行が 3 行あります。 コメントアウトを外すのは Wnn4 に関する行のみです。

A.6    /usr/i18n/bin/stty コマンドの /usr/bin/stty コマンドへの統合

V5.0 以降,/usr/i18n/bin/stty コマンドで提供していた国際化機能は /usr/bin/stty コマンドに統合されています。このため,/usr/i18n/bin/stty は提供されていません。

A.7    STREAMS tty におけるかな漢字変換入力の設定

V5.0 以降,アジア言語用カーネル構築の省略時の設定で,疑似端末デバイス (pty) に STREAMS tty が使用されます。システム構成ファイルの次の行をコメントアウトしてカーネルを構築することにより,BSD tty を使用するように変更することができます。

options    RPTY
 

STREAMS tty の場合,strconf コマンドで STREAMS の構成情報を取得でき,これによって STREAMS tty であるかどうかの確認を行うことができます。

STREAMS tty において tty レベルのかな漢字変換入力を行う場合には,stty コマンドの jinkey オプションで,かな漢字変換入力の開始を指定する文字を設定する必要があります。次の例のようにして設定してください。

% stty jdec ikk jinkey [Ctrl/^]
%
 

ここでは,[Ctrl/^] を変換入力の開始文字として指定しています。[Ctrl/^] を入力することによってかな漢字変換のモードに入ります。かな漢字変換のモードに入ると, それぞれのユーザの設定に従って [Ctrl-スペース] などの変換キーでかな漢字変換が使用できます。BSD tty の場合と異なり,新しい行でかな漢字変換モードに入る場合には,かな漢字変換入力の開始を指定する文字 (この例の場合,[Ctrl/^]) を再度入力する必要があります。STREAMS tty および BSD tty でのかな漢字変換についての詳細は,『STREAMS tty によるかな漢字変換』を参照してください。

A.8    古い curses ライブラリを利用するアプリケーションに関する注意事項

Tru64 UNIX では,V4.0 以降,従来の curses ライブラリに代わって XPG4 に準拠した新しい curses ライブラリを提供しています。

ただし,V4.0 よりも前のバージョンのオペレーティング・システム上で開発された,curses ライブラリを利用するアプリケーションの実行には,Tru64 UNIX 上に古い curses ライブラリが存在することが必要になります。

古い curses ライブラリは OSFOBSOLETE (Obsolete Commands and Utilities) サブセットの一部として提供されています。

WX3 仮想端末日本語入力サーバ (wxfep) のように,古い curses ライブラリを使用しているアプリケーションを Tru64 UNIX V5.1 システムで実行する場合は,このサブセットをインストールしてください。

古い curses ライブラリは新しい curses ライブラリ (/usr/shlib/libcurses.so) とは別のディレクトリ (/usr/shlib/osf.1/libcurses.so) にインストールされ,プログラム・ローダによって自動的に選択されます。 OSFOBSOLETE サブセットのインストール後に,システムをリブートする必要はありません。

A.9    MH

以下の項で説明するように,MH のいくつかのコマンドにおいて問題があります。

A.9.1    MH コマンドでの日付出力

MH の inc コマンドあるいは scan コマンドでは,英国で一般に使用されている次のような形式が省略時の設定になっています。

	日/月
 

この部分を,日本で一般に使用されている形式

	月/日
 

で表示する場合は,以下のような内容の scan.date ファイルを ~/.mh_profilePath: エントリで示されているディレクトリの下などに作成し,コマンド行または ~/.mh_profile の中で -form オプションを使用してこのファイルを指定してください。

    %4(msg)%<(cur)+%| %>%<{replied}-%|%<{encrypted}E%| %>%>\
    %02(mon{date})/%02(mday{date})%<{date} %|*%>\
    %<(mymbox{from})To:%14(friendly{to})%|%17(friendly{from})%>  \
    %{subject}%<{body}<<%{body}>>%>
 

ここで,scan.date の代りに /usr/lib/mh ディレクトリにある scan.mailxscan.sizescan.timescan.timely のいずれかのファイルを指定することもできます。 これらのプログラムには,incscan コマンドの出力行の形式を指定するための特別なプログラムが含まれています。 詳細については, mh-format(4) を参照してください。

A.10    jvi (日本語 vi) エディタ

jvi は,日本語 ULTRIX の日本語 vi を Tru64 UNIX にポーティングしたものです。 Tru64 UNIX の標準版 vi とは動きが異なりますので注意してください。 かな漢字変換の入力方法なども日本語 ULTRIX の日本語 vi と同じです。

ロケールに設定したコードセットがシフト JIS の場合には,16 進数の漢字コードによるコード入力にシフト JIS の漢字コードを使用することはできません。

jvi は必ず日本語のロケールで起動してください (ただし,jvi は UTF ロケールではサポートされません)。 jvi を C ロケールで起動した場合の動作は保証されていません (コア・ダンプが発生したり,変換キー入力後にトラブルが発生することがあります)。

C ロケールで処理する必要がある場合は,標準版の vi エディタ (/usr/bin/vi) を使用してください。

A.11    wwpsof プリンタ・フィルタでの日本語テキスト出力の問題

wwpsof プリンタ・フィルタは,主にアジア言語のテキスト・ファイルをアウトライン・フォントを使用してプリント・サーバーに出力するために利用することができます。ただし,日本語のテキストを出力するための機能は実装されていません。日本語のテキストを出力する場合は,日本語プリンタ用のフィルタをご利用ください。

A.12    ln82rof プリンタ・フィルタの制限

ln82rof では以下のような制限事項があります。

A.13    iconv におけるUCS-4 日本語コードセットの UDC 変換に関する注意事項

iconv コマンドによる,UTF-8 および UCS-4 と日本語コードセットとの間のコード変換では,ユーザ定義文字領域の変換をサポートしていません。

A.14    Netscape Communicator

A.14.1    PostScript ファイルへの保存

「ファイル」メニューの「名前を付けて保存...」を使用して日本語テキストを PostScript ファイルに保存した場合,日本語 PostScript ファイルとして正しく保存できません。「ファイル」メニューの「印刷...」を使用して PostScript ファイルに出力した場合は,正しく保存できます。

A.14.2    日本語の Nethelp ドキュメントの参照

Netscape Communicator が Nethelp ドキュメントを参照する際,Netscape Communicator は次の順序で Nethelp ドキュメントを検索します。

  1. $HOME/.netscape/nethelp

  2. $NS_NETHELP_PATH/nethelp

  3. $MOZILLA_HOME/nethelp

  4. <プログラム ディレクトリ>/nethelp

  5. /usr/local/lib/netscape/nethelp

日本語の Nethelp ドキュメントは以下のディレクトリに提供されているため,Netscape Communicator を日本語ロケールで起動しても,そのままでは英語の Nethelp ドキュメントが参照されます。

日本語 Nethelp ドキュメントを参照する場合には,$HOME/.netscape/nethelp/ (個人ごと) あるいは /usr/lib/netscape/nethelp/ (すべてのユーザ) を上記の日本語 Nethelp ドキュメントのディレクトリへのシンボリックリンクとして設定するなどして利用してください。

A.14.3    ブックマークの初期設定

Netscape Communicator を初めて起動した場合,英語のブックマーク /usr/lib/netscape/bookmark.htm が,$HOME/.netscape/bookmarks.html にコピーされ, そのユーザのブックマークの初期設定になります。 必要に応じて, 日本語のブックマークの初期設定ファイルをコピーしてご利用ください。日本語版のブックマークの初期設定ファイルは以下の場所にあります。

すべての新規ユーザに対して,日本語版のブックマークの初期設定を適用したい場合は,システム管理者が /usr/lib/netscape/bookmark.htm を日本語版のファイルで置き換えてください。

A.14.4    Netscape Communicator のリリース・ノートの参照

リリース・ノートには,報告されている最新の問題点が記載されています。 [ヘルプ] → [リリース ノート] を選択して,リリース・ノートをお読みください。

A.15    かな漢字変換ライブラリのリファレンス・ページ

jsy$ で始まるかな漢字変換ライブラリのリファレンス・ページを man コマンドで参照する場合は,エントリ名のドル記号 ($) をアンダー・バー (_) に置き換えてください。

たとえば,jsy$cnv_clause_delete のリファレンス・ページを参照する場合は,次のように入力します。

% man jsy_cnv_clause_delete.3jsy
 

A.16    IMLIB kkseq → keybind ファイルコンバータ (kk2keybind)

kkseq は日本語キーボード (LK41W-JJ など)で追加された変換キーなどに対応しましたが,kk2keybind コンバータは新しいキーを認識できませんので "invalid key description" エラーになります。 エラーになったキーを適当なキーに書き替えて変換してください。

A.17    日本語ロケールでの UTF-8 コードセットのサポートに関する制限事項

Tru64 UNIX V5.1B では,日本語環境として ja_JP.UTF-8 ロケールを使用できます。 ja_JP.UTF-8 ロケールでは,CDE でのサポート,dxjim による日本語入力,tty での端末コード変換など,他の日本語ロケールと同等の機能が実現されていますが,以下に示すように,いくつかのコマンドでサポートされていない機能および制限事項があります。

これらの制限事項は,Tru64 UNIX の将来のバージョンで対応する予定です。

また下記の機能については,Tru64 UNIX の将来のバージョンでもサポートされません。

A.18    cedit の外字編集画面が乱れる問題

ceditdtterm 上で実行した場合,外字編集画面が乱れて作業ができません。 ceditdxterm 上で実行してください。

A.19    gawk コマンドのリタイアに伴う SVE MNLS Migration Tools のエラー・メッセージ

SVE MNLS Migration Tools スクリプト中で指定されている gawk コマンドは Tru64 UNIX V4.0G 以降では提供されていません。このため,/usr/i18n/bin/svr4 ディレクトリにインストールされている chkmnls および msgtrn スクリプトを使用すると,以下のようなエラーメッセージが出力されます。

# /usr/i18n/bin/svr4/chkmnls mnlsdemo_disp.c
/usr/bin/gawk: No such file or directory
 

この問題を回避するために,gawk コマンドの代りに awk コマンドを使用するように MNLS Migration Tool の chkmnls および msgtrn スクリプトを適当なエディタで編集してください。

/usr/i18n/bin/svr4/chkmnls の場合:

 (変更前)
    nice /usr/bin/gawk -v G_ARGOPTM=$mflg -v G_FN_ALL="$FILE" '
 (変更後)
    nice /usr/bin/awk -v G_ARGOPTM=$mflg -v G_FN_ALL="$FILE" '
 

/usr/i18n/bin/svr4/msgtrnの場合:

 (変更前)
    /usr/bin/gawk -v OFILE=$MSG_TXTF '
 (変更後)
    /usr/bin/awk -v OFILE=$MSG_TXTF '