アプリケーションやファイル・システムで LSM ボリュームを使用する前に LSM の構成を計画すると,LSM を効率的に使用できます。 LSM を構成するには,次の事項を決定します。
使用可能なディスクの数,サイズ,および性能特性と,ホスト・システムまたは TruCluster Server クラスタとの接続性。
必要なディスク・グループの数,どのディスクを各ディスク・グループに構成するか。
必要なボリュームの数,ボリュームの可用性と性能の要件。
この章では,LSM ボリュームおよびディスク・グループの計画に役立つ情報を示し,ワークシートを添付します。
ワークシートは,コピーして使用してください。
2.1 LSM ボリュームの計画
LSM ボリュームの計画時に,LSM ボリュームの属性を決定します。 LSM ボリュームには,以下の属性があります。
名前 (省略時の値はなし)。
サイズ (省略時の値はなし)。 ボリューム・サイズは,セクタ (省略時の単位),K バイト,M バイト,G バイト,または T バイト (テラバイト) で指定します。
プレックスのレイアウト・タイプ (連結,ストライプ,または RAID5)。 省略時のタイプは,連結です。
プレックスの数。 省略時の値は,連結データ・プレックスが 1 個,ログ・プレックスは 0 個です。
ログ・プレックス・サイズ。 省略時の設定では,LSM がボリューム・サイズに基づいて適切なログ・サイズを計算します。
ミラー・ボリュームの場合,DRL ログ・プレックス・サイズの省略時の値は,1 GB のボリューム・サイズに対し,スタンドアロン・システムでもクラスタでも,およそ 65 ブロックです。 これは,ディスク・グループまたは LSM を実行しているスタンドアロン・システムが TruCluster Server 環境へ移行できるようにするためです。
最小の DRL サイズは,1 GB のボリューム・サイズに対しおよそ 2 ブロックです (LSM 構成をクラスタで使用しなければ,この最小サイズで十分です)。
RAID 5 ボリュームの場合,省略時のログ・プレックス・サイズは,10 個の完全なデータおよびパリティのストライプを格納できる大きさです。
ディスク・グループ。
省略時の設定では,rootdg
ディスク・グループです。
1 つのボリュームは,1 つのディスク・グループ内のディスクだけを使用できます。
ボリュームで使用されるディスク。 省略時の設定では,LSM がディスクを選択します。
ボリュームでストライプ・プレックスまたは RAID5 プレックスを使用している場合は,各カラムは同一サイズで,異なるディスクに存在する必要があります。 また,可能ならば異なるバス上に配置します。
ボリュームにミラー・プレックスがある場合は,各ミラーは異なるバス上のディスクを使用する必要があります。 また,DRL プレックスは,データ・プレックスとして使用されていないディスクに割り当てる必要があります。
使用タイプ。
省略時のタイプは,fsgen
です。
表 2-1
は,各プレックス・レイアウト・タイプの利点と欠点を示します。
また,あるプレックス・タイプが他のプレックス・タイプよりも性能が良かったり,コスト面で優れているケースについてもリストします。
性能を最適化するには,作業負荷に合わせてシステムをチューニングする必要があります。
どのレイアウトを選択するかは,個々のシステムの構成や,必要とされるデータ可用性および信頼性,アプリケーションの要件に依存します。
表 2-1: 各プレックス・レイアウト・タイプの利点と欠点
プレックス・タイプ | 利点と用途 | 欠点 |
連結 | このタイプを使用しなければ無駄になってしまうはずの,複数のディスク上のスペースを使用できます。 連結プレックスはミラー化でき,データの冗長性を持たせて,可用性を高めることができます。 頻繁には使用されないデータまたはあまり変更されないデータを含むボリュームや,単一のディスクに収まる小規模なボリュームに適しています。 |
性能がばらつくことがあります (複数のアプリケーションで 1 つのディスクを使用するホット・スポット)。 ミラー化した場合,2 〜 32 倍のディスク・スペースが必要となります。 |
ストライプ | データを分散でき,入出力負荷を多数のディスクに均等に分散できます。 次の場合に適しています。
ストライプ・プレックスはミラー化でき,データの冗長性を持たせて,可用性を高めることができます。 |
ミラー化した場合,2 〜 32 倍のディスク・スペースが必要となります。 |
RAID 5 | ストライピングによる入出力分散の利点があります。 ミラー化したストライプ・プレックスのボリュームよりも使用するディスクが少ないが,パリティによって冗長性を確保します。 書き込みよりも読み取りの比率が高いボリュームに適しています。 |
パリティの計算が必要なため,入出力ストライプ・サイズによっては,ストライプ・プレックスのボリュームよりも性能が悪くなります。 RAID5 プレックスには,少なくとも 3 つのディスクと,ログ・プレックス用の別のディスクが必要です。 RAID5 プレックス・タイプは,クラスタではサポートされていません。 |
volassist
コマンドを使用して LSM ボリュームを作成すると (推奨の,簡単な方法です),LSM は必要な計算をすべて行い,適切なサイズのボリュームとログ・プレックスを作成します。
2.1.1 項と2.1.2 項では,ダーティ・リージョン・ログと RAID5 ログのスペースの要件を示します。
2.1.3 項,2.1.4 項,2.1.5 項,および2.2 節のワークシートを使用すると,必要なスペースを概算し,希望するボリュームに十分なスペースを割り当てられるだけの大きさがあるディスク・グループを作成できます。
2.1.1 ダーティ・リージョン・ログの計画
LSM は,スタンドアロン・システムとクラスタについて,1 GBのボリューム・サイズに対し,省略時の設定としておよそ 65 ブロックの DRL ログ・サブディスクを構成します。 これにより,関連付けられたミラー・ボリュームは,クラスタとスタンドアロン・システムのどちらでも使用できます。 クラスタでは,ボリュームへの入出力を行う各メンバは,それぞれがプライベート・ログを保持し,そのメンバからボリュームに対して行った変更を記録します。 ボリュームの DRL ログ・プレックスは,各メンバのプライベート・ログを集めたもので,スタンドアロン・システムの場合より大きくなります。
LSM をスタンドアロン・システムだけで使用する場合は,1 GB のボリューム・サイズに対し,およそ 2 ブロックの,最小の DRL ログ・サブディスクを使用することができます。 しかし,小さな DRL サイズを持ったミラー・ボリュームを作成すると,その後,そのスタンドアロン・システムを使用してクラスタを作成したり,ストレージを既存のクラスタに移動して,そのミラー・ボリュームをクラスタで使用すると,そのボリューム上の DRL ログは使用不能になります。 その場合でも,ボリューム自体は使用可能です。
表 2-2
には,各種のボリューム・サイズに対する概算の省略時の DRL サイズを示しています。
表 2-2: 省略時の DRL ログのサイズ (概算)
ボリューム・サイズ (GB 単位) | DRL サイズ (ブロック数) |
<=1 | 65 |
2 | 130 |
3 | 130 |
4 | 195 |
60 〜 61 | 2015 |
62 〜 63 | 2080 |
1021 | 33215 |
1022 〜 1023 | 33280 |
1024 | 33345 |
省略時のログ・サイズを使用することをお勧めします。 ログはボリュームのリージョンに対応したビットマップです (各ビットが数セクタに対応します)。 ログ・サイズを増やしたり減らしたりすると,この最小単位が変わってしまいます。
大きなログ・サイズを指定すると,各ビットに対応するリージョンは小さくなります。 写真を高解像度にするのと同様です。 各ビットが表す,ボリューム内のセクタの数は小さくなります。 たとえば,1 MB あたり 1 ビット (2048 セクタ) です。 そのため,ログのための入出力オーバヘッドが増加します。 ただし,システム・クラッシュが発生した後の再同期の時間は短くなります。 これは,再同期するリージョンが少ないためです。
小さなログ・サイズを指定すると,各ビットに対応するリージョンは大きくなります。 解像度の低い写真と似ています。 各ビットが表す,ボリューム内のセクタの数は大きくなります。 たとえば,1 ビットが 100 MB (204800 セクタ) に対応します。 そのため,ログのための入出力オーバヘッドは減少します。 ただし,システム・クラッシュが発生した後の再同期の時間は長くなります。 これは,再同期するリージョンが多いためです。
ログを使用しないと,1 ビットがボリューム全体に対応するログを使用するのと同じになります。 1 つでも書き込み操作が記録されていると,ボリューム全体がダーティになり,システム・クラッシュ後に完全なプレックス再同期化が必要になります。
最高の性能を実現するために,各ボリュームの DRL プレックスは,別のボリューム用のログ・プレックスとは異なるディスクに置く必要があります。 ダーティ・ビットは実際の書き込みが行われる前に設定されるため,多くのミラー・ボリュームの DRL プレックス用に同じディスクを使用すると,ディスクの動作が遅くなり,性能が低下します。 ただし,HSG80 RAID Array のようなハードウェアを使用している場合は,キャッシュによってディスク競合が管理されるため競合が少なくなります。
また,そのディスクが故障すると,そのボリュームのログが失われます。
故障したディスクを交換する前にシステムがクラッシュすると,システムの再起動時にこれらのボリュームに対する完全なプレックス再同期化が必要になります。
ただし,これは性能上のリスクであって,データが失われるわけではありません。
2.1.2 RAID 5 ログの計画
LSM は RAID5 ボリューム用の省略時のログ・サイズを,ミラー・ボリュームとは異なるアルゴリズムで計算します。
この RAID5 ログは,完全なストライプ幅のデータとパリティのコピーを数回分格納するのに十分な大きさになります。
volassist
コマンドを使用して RAID5 ボリュームを作成するときに,RAID5 ログ・サイズが計算され,作成するボリュームに最適なサイズが決定されます。
省略時の RAID 5 ログ・サイズの計算式は,次のとおりです。
[10 × (カラム数 × ストライプ幅)]
たとえば,次のようになります。
カラム数が 3 (最小),ストライプ幅が省略時の 16K バイトの RAID5 ボリュームの場合,RAID5 ログ・サイズは [10 × (3 × 16K バイト)] で,480K バイトになります。
カラム数が 5,ストライプ幅が同じ RAID5 ボリュームの場合,RAID5 ログ・サイズは [10 × (5 × 16K バイト)] で,800K バイトになります。
RAID5 プレックスを使用するボリュームは,クラスタではサポートされません。 このため,RAID5 ログ・サイズはスタンドアロン・システムだけに適用されます。
最高の性能を実現するために,RAID5 ログ・プレックスは独自のディスクに存在する必要があります。
データ・プレックスへの書き込みが行われる前にログが書き込まれるため,複数のログ・プレックスに対して (複数のボリュームに対して) 同じディスクを使用すると,ディスクの動作が遅くなり,性能が低下します。
また,そのディスクが故障すると,そのボリュームのログが失われます。
故障したディスクを交換する前にシステムがクラッシュすると,システムの再起動時にこれらのボリュームに対する完全なパリティとデータの再同期化が必要になります。
これは,性能上のリスクがある上,データを失う可能性もあります。
2.1.3 連結プレックスを使用する LSM ボリュームのワークシート
連結プレックスを使用する LSM ボリュームの計画には,次のワークシートを使用します。
図 2-1: 連結プレックスのある LSM ボリュームのワークシート
属性 | 省略時の値 | 選択した値 |
ボリューム名 | 省略時の値なし | |
ボリューム・サイズ | 省略時の値なし | |
データ・プレックスの数 | 1 | |
DRL プレックスのサイズ (ミラー・ボリュームの場合) | ボリューム・サイズ 1 GB について 65 ブロック (省略時の値),またはボリューム・サイズ 1 GB について 2 ブロック (スタンドアロン・システムの場合のみ) |
|
DRL プレックスの数 | 1 | |
ディスク・グループ名 | rootdg
|
|
使用タイプ | fsgen |
|
必要なトータル・スペース | (ボリューム・サイズ × プレックス数) + (DRL サイズ × ログ数) |
2.1.4 ストライプ・プレックスを使用する LSM ボリュームのワークシート
ストライプ・プレックスを使用する LSM ボリュームの計画には,次のワークシートを使用します。
図 2-2: ストライプ・プレックスのある LSM ボリュームのワークシート
属性 | 省略時の値 | 選択した値 |
ボリューム名 | 省略時の値なし | |
ボリューム・サイズ | 省略時の値なし | |
データ・ユニットのサイズ (ストライプ幅) | 64K バイト | |
カラム数 | 少なくとも 2 (ディスク・グループ内のディスクの数とボリューム・サイズによる) | |
データ・プレックスの数 | 1 | |
DRL プレックスのサイズ (ミラー・ボリュームの場合) | ボリューム・サイズ 1 GB について 65 ブロック (省略時の値),またはボリューム・サイズ 1 GB について 2 ブロック (スタンドアロン・システムの場合のみ) |
|
DRL プレックスの数 | 1 | |
ディスク・グループ名 | rootdg
|
|
使用タイプ | fsgen |
|
必要なトータル・スペース | (ボリューム・サイズ × プレックス数) + (DRL サイズ × ログ数) |
2.1.5 RAID 5 プレックスを使用する LSM ボリュームのワークシート
RAID5 プレックスを使用する LSM ボリュームを計画するには,次のワークシートを使用します。
注意
RAID5 ボリュームはクラスタではサポートされません。
図 2-3: RAID 5 プレックスのある LSM ボリュームのワークシート
属性 | 省略時の値 | 選択した値 |
ボリューム名 | 省略時の値なし | |
ボリューム・サイズ | 省略時の値なし | |
データ・ユニットのサイズ (ストライプ幅) | 16K バイト | |
カラム数 (NCOL) | 3 〜 8 (ディスク・グループのディスク数と,ボリューム・サイズによる) | (最低 3) |
ログ・プレックスのサイズ | 10 × (NCOL × データ・ユニット・サイズ) | |
ログ数 (NLOGS) | 1 | |
ディスク・グループ名 | rootdg
|
|
使用タイプ | raid5
であることが必要 |
raid5 |
必要なトータル・スペース | (ボリューム・サイズ × NCOL ÷ (NCOL-1)) + (ログ・プレックス・サイズ × NLOGS) |
LSM を使用するシステムまたはクラスタには,rootdg
と呼ばれる必須のディスク・グループが 1 つあります。
ストレージの管理を補助するため,あるいはストレージ (LSM ボリューム) を異なるシステムに移動するのをサポートするために,追加のディスク・グループを作成できます。
以下の項で,rootdg
およびその他のディスク・グループに対する推奨事項と制限事項を説明します。
2.2.1 ディスクの数と使用のガイドライン
各ディスク・グループ (rootdg
を含む) は 2 つ以上のスライス
LSM ディスク,またはシンプル
LSM ディスクを持つ必要があります。
ディスク・グループの構成データベースのコピーを複数確保するためです。
スライス
・ディスクとシンプル
・ディスクだけが,プライベート・リージョンを持ちます。
ここに,ディスク・グループの構成データベースのコピーが格納されます。
特に指定しなければ,LSM は構成データベースのアクティブ・コピーを少なくとも 4 つ,各ディスク・グループに維持します。
これらは冗長性を確保するために,複数のディスク (そして,該当する場合は,複数のバス) に分散されます。
すべてのコピーは別のディスクに存在する必要があります。
ディスク・グループは,nopriv
ディスクだけとすることはできません。
rootdg
ディスク・グループは,すべてのディスク・グループに関する情報を,構成データベースの中に格納しています。
LSM オブジェクトが作成,変更,あるいは削除されるたびに,ディスク・グループと
rootdg
の構成データベースはアップデートされます。
各 LSM オブジェクト (ディスク,サブディスク,プレックス,およびボリューム) には,1 つのレコードが必要です。
そして,1 セクタ (512 バイト) には,2 レコードが格納されます。
性能を改善するために,rootdg
内のディスク数は 10 個以下に保ってください。
可能であれば,rootdg
の用途は,以下のものに限定してください。
システム関連のボリューム。 たとえば,スタンドアロン・システムのブート・ディスク・パーティションやプライマリ・スワップ領域のボリュームです。
クラスタ単位のファイル・システム・ドメインのボリュームやクラスタ・メンバ用のスワップ・デバイス・ボリューム。
上述のボリューム用のミラーであるホット・スペア・ディスク。
10 個を超えるディスクを LSM 制御下に置く場合は,追加のディスク・グループを作成してください。 または,ディスク・グループを異なるシステムかクラスタに移動します。
各ディスク・グループで,ディスク・グループの冗長 (ミラーまたは RAID5) ボリュームの各々に対し,1 つ以上のホット・スペア・ディスクを構成します。
各ホット・スペア・ディスクは,ボリューム内の最大のディスクと同じ大きさがある必要があります。
2.2.2 接続性と可用性のガイドライン
ディスク・グループでは,性能と可用性を向上させるために,ストレージ・デバイスを異なるバス上に配置する必要があります。
クラスタでは,LSM を完全な共用ストレージでだけ使用するのが理想的です。 ディスク・グループ内のすべてのディスクに直接接続されたクラスタ・メンバの数が多いほど,クラスタでのストレージの可用性は向上します。 ディスク・グループ内のすべてのディスクが,すべてのクラスタ・メンバに接続されている場合,可用性が最大になります。
drdmgr
および
hwmgr
コマンドを実行すると,どのクラスタがどのディスクに対してサービスを行っているかについての情報を得ることができます。
sms
コマンドを使用して,SysMan Station のグラフィカル・インタフェースを起動し,[Views] メニューから [Hardware] を選択すれば,アクティブ・メンバ,バス,ストレージ・デバイス,およびそれらの接続状況などを含む,クラスタ・ハードウェア構成をグラフィカルに表示できます。
クラスタでは,各ディスク・グループ内のディスクは,すべてのクラスタ・メンバからアクセスできる必要があります。 これにより,すべてのクラスタ・メンバが他のメンバの状態とは無関係に LSM ボリュームにアクセスできるようになります。 LSM ボリュームは,次のいずれかの条件が満たされていると,接続性は同じです。
LSM ディスク・グループのすべてのディスクが同じ共用 SCSI バスに接続されている。
LSM ディスク・グループのディスクは異なる共用 SCSI バスに接続されているが,これらのバスのすべてが同じクラスタ・メンバに接続されている。
プライベート・ディスク・グループ (すべてのディスクが単一クラスタ・メンバのプライベート・バスに接続されているディスク・グループ) はサポートされていますが,メンバが使用不能になると,クラスタはそのディスク・グループへアクセスできなくなります。 プライベート・ディスク・グループが適しているのは,そのディスク・グループを物理的に接続しているクラスタ・メンバだけがそのディスク・グループにアクセスする場合だけです。
ローカル・ディスクと共用ディスクを組み合わせてディスク・グループを構成することは避けてください。 また,ディスクが複数のメンバのプライベート・バスに分散しているディスク・グループを構成することは避けてください。 このようなディスク・グループは推奨できません。 ディスク・グループのすべてのディスクに直接アクセスできるメンバが 1 つもないからです。
rootdg
内のディスクが共用されているということは重要です。
しかし,これがすべての場合に実現できるわけではありません。
たとえば,メンバのスワップ・デバイスを LSM ボリュームとしてカプセル化でき,すべてのスワップ・ボリュームを,rootdg
に所属させる必要がありますが,そのデバイスは対応するメンバにとってプライベートになります。
共用ディスクとプライベート・ディスクを混在させたボリュームや,異なるメンバに接続されたプライベート・ディスクを取り混ぜて使用するボリュームは作成しないでください。
2.2.3 項 には,ディスク・グループを計画するときに使用する未記入のワークシートが含まれています。 そのページに直接記入するのではなく,コピーをとっても構いません。 そうすることで,LSM を実行している各システムの記入済みワークシートを,参照できるように保管しておくことができます。 また,LSM 構成はいつでも変更できるため,変更を記録するために,未記入のワークシートをコピーしておくことができます。
ワークシートには,ディスク・グループの目的を示すすべての情報を記入します。
たとえば,財務アプリケーションが使用するボリュームを 1 つ以上持つための,finance_dg
というディスク・グループを作成できます。
また他に,データベースが使用するボリュームを持つ,db1
というディスク・グループを作成できます。
ディスク・グループ名の選択は慎重に行ってください。
アクティブ・ボリュームが含まれるようになると,名前を簡単には変更できないためです。
ボリューム,プレックス,およびホット・スペア・ディスク情報の下には,ディスク・グループのすべてのボリュームの名前,そのプレックス・タイプ,どのディスクがどのプレックスに属しているか,およびホット・スペア・ディスクを記入します。 ホット・スペア・ディスクについての詳細は,3.5 節を参照してください。
ワークシートに記入した情報のほかに,volprint
コマンドの出力結果をプリントし,保管することもできます。
このコマンドは,各ボリュームが使用するサブディスクやすべての LSM オブジェクトのサイズなどの詳細情報を表示します。
詳細については,5.4.1 項
と
volprint
(8)
表 2-3
は,ディスク・グループ計画のワークシートの記入例です。
この例は,クラスタではなく,スタンドアロン・システムの例です。
表 2-3: スタンドアロン・システム用のディスク・グループのワークシートの記入例
ディスク・グループ名:
rootdg -- ルート・ファイル・システムおよびシステム・ディスク |
|||
ディスク・グループ情報 | バス/LUN | ディスク・サイズ | ボリューム,プレックス,およびホット・スペア・ディスク情報 |
dsk0 dsk1 dsk6 |
1 1 2 |
4 GB (すべて) | ボリューム:
rootvol-01(dsk0a)
|
dsk7 | 2 | 4 GB | ホット・スペア・ディスク |
ディスク・グループ名:
data_dg
-- データベース (冗長性が必要)。
ミラー・ストライプ・プレックスと DRL があるボリュームを含む。 |
|||
ディスク・グループ情報 | バス/LUN | ディスク・サイズ | ボリューム,プレックス,およびホット・スペア・ディスク情報 |
dsk2 dsk3 dsk8 dsk9 dsk12 |
1 1 2 2 3 |
18 GB (すべて) | ボリューム:
プレックス: db_vol-01 (dsk2,dsk3) プレックス: db_vol-02 (dsk8,dsk9) プレックス: db_vol-03 (DRL プレックス,dsk12) |
dsk13 dsk20 |
3 4 |
18 GB (すべて) | ホット・スペア・ディスク (それぞれ異なるバス上にある) |
ディスク・グループ名:
finance_dg
-- 財務アプリケーション (高可用性が必要)。
RAID 5 プレックスがあるボリュームも含む (読み取り専用アプリケーション)。 |
|||
ディスク・グループ情報 | バス/LUN | ディスク・サイズ | ボリューム,プレックス,およびホット・スペア・ディスク情報 |
dsk4 dsk10 dsk14 dsk18 dsk24 |
1 2 3 4 5 |
9 GB (すべて) | ボリューム: fin_vol プレックス: fin_vol-01 (カラム 1 -- dsk4) プレックス: fin_vol-01 (カラム 2 -- dsk10) プレックス: fin_vol-01 (カラム 3 -- dsk14) プレックス: fin_vol-01 (カラム 4 -- dsk18) プレックス: fin_vol-02 (ログ・プレックス -- dsk24) |
dsk5 dsk11 dsk15 dsk19 dsk25 |
1 2 3 4 5 |
9 GB (すべて) | ホット・スペア・ディスク (各バスに 1 つ) |
下記のワークシートをコピーして,rootdg
ディスク・グループを含む,それぞれのディスク・グループの計画に使用してください。
表 2-4: ディスク・グループ用ワークシート
ディスク・グループ名: | |||
ディスク・グループ情報 | バス/LUN | ディスク・サイズ | ボリューム,プレックス,およびホット・スペア・ディスク情報 |
未使用ストレージ・デバイスとは,LSM が初期化を行って,LSM ディスクとすることができる,未使用のディスク,パーティション,およびハードウェア RAID ディスクです。 また,LSM 用に初期化したが,ディスク・グループに割り当てていない,未使用の LSM ディスクも未使用ストレージ・デバイスです。
以降の項では,未使用のディスク,パーティション,および LSM ディスクの識別方法について説明します。 未使用ハードウェア RAID ディスクの識別については,ハードウェア RAID のドキュメントを参照してください。
未使用のストレージ・デバイスの識別には,次の方法を使用できます。
Disk Configuration GUI (Graphical User Interface) (2.3.1 項)。
コマンド行インタプリタ・インタフェース (2.3.2 項)。
LSM を実行しているシステムでの,voldisk list
コマンド (2.3.3 項)。
2.3.1 Disk Configuration GUI を使用した,未使用ディスクの識別
Disk Configuration GUI を使用して未使用ディスクを識別するには,次のいずれかの方法を使用して,Disk Configuration インタフェースを起動します。
システム・プロンプトから,次のコマンドを入力します。
# /usr/sbin/diskconfig
CDE フロント・パネルの [SysMan Applications] ポップアップ・メニューで,次の操作を行います。
[システム設定] を選択します。
「SysMan Configuration」フォルダの「ディスク」アイコンをダブルクリックします。
「Disk Configuration on hostname」というウィンドウが表示されます。 このウィンドウは Disk Configuration GUI のメイン・ウィンドウで,次の情報を各ディスクについてリストします。
ディスク名 (dsk10
など)
デバイス・モデル (RZ1CB-CA など)
デバイスのバス番号
ディスクの詳細については,リストされた項目をダブルクリックします (または,ディスクが強調表示されているときに [設定] をクリックします)。 「Disk Configuration: Configure Partitions:」ウィンドウが表示されます。
このウィンドウには,次の項目が表示されます。
ディスク・パーティションのグラフ (棒グラフ)。 ディスク名,ディスクの総容量,および使用状況などのディスク情報。
[パーティション・テーブル] ボタン。 クリックすると,使用中の現在のパーティション,サイズ,および使用中のファイル・システムの棒グラフが表示されます。
[ディスクの属性] ボタン。 クリックすると,ディスク属性の値が表示されます。
Disk Configuration GUI についての詳細は,オンライン・ヘルプを参照してください。
2.3.2 オペレーティング・システムのコマンドを使用した,未使用ディスクの識別
次のオペレーティング・システム・コマンドを使用して,未使用ディスクを識別できます。
システム上のすべてのディスクをリストします。
# ls /dev/disk/dsk*c
次のような情報が表示されます。
/dev/disk/dsk0c /dev/disk/dsk26c /dev/disk/dsk42c /dev/disk/dsk59c /dev/disk/dsk10c /dev/disk/dsk27c /dev/disk/dsk43c /dev/disk/dsk5c /dev/disk/dsk11c /dev/disk/dsk28c /dev/disk/dsk44c /dev/disk/dsk60c /dev/disk/dsk12c /dev/disk/dsk29c /dev/disk/dsk45c /dev/disk/dsk61c /dev/disk/dsk13c /dev/disk/dsk2c /dev/disk/dsk46c /dev/disk/dsk62c /dev/disk/dsk14c /dev/disk/dsk30c /dev/disk/dsk47c /dev/disk/dsk63c /dev/disk/dsk15c /dev/disk/dsk31c /dev/disk/dsk48c /dev/disk/dsk64c /dev/disk/dsk16c /dev/disk/dsk32c /dev/disk/dsk49c /dev/disk/dsk65c /dev/disk/dsk17c /dev/disk/dsk33c /dev/disk/dsk4c /dev/disk/dsk66c /dev/disk/dsk18c /dev/disk/dsk34c /dev/disk/dsk50c /dev/disk/dsk67c /dev/disk/dsk19c /dev/disk/dsk35c /dev/disk/dsk51c /dev/disk/dsk68c /dev/disk/dsk1c /dev/disk/dsk36c /dev/disk/dsk52c /dev/disk/dsk6c /dev/disk/dsk20c /dev/disk/dsk37c /dev/disk/dsk53c /dev/disk/dsk7c /dev/disk/dsk21c /dev/disk/dsk38c /dev/disk/dsk54c /dev/disk/dsk8c /dev/disk/dsk22c /dev/disk/dsk39c /dev/disk/dsk55c /dev/disk/dsk9c /dev/disk/dsk23c /dev/disk/dsk3c /dev/disk/dsk56c /dev/disk/dsk24c /dev/disk/dsk40c /dev/disk/dsk57c /dev/disk/dsk25c /dev/disk/dsk41c /dev/disk/dsk58c
ディスクやパーティションが未使用であることを確認するには,ls /dev/disk/dsk*c コマンドの出力からディスクを選択し,そのディスクの名前を指定して
disklabel
コマンドを入力します。
# disklabel dsk20c | grep -p '8 part'
次のような情報が表示されます。
8 partitions: # size offset fstype fsize bsize cpg # ~Cyl values a: 131072 0 unused 0 0 # 0 - 25* b: 262144 131072 unused 0 0 # 25*- 77* c: 35556389 0 unused 0 0 # 0 - 6999* d: 0 0 unused 0 0 # 0 - 0 e: 0 0 unused 0 0 # 0 - 0 f: 0 0 unused 0 0 # 0 - 0 g: 17581586 393216 unused 0 0 # 77*- 3538* h: 17581587 17974802 unused 0 0 # 3538*- 6999*
詳細については,
disklabel
(8)
AdvFS を使用している場合,すべてのドメインで使用しているディスクを表示します。
# ls /etc/fdmns/*/*
クラスタの場合,メンバのブート・ディスクやクォーラム・ディスクのパーティションは,(未使用であっても) 使用しないでください。
クラスタでクォーラム・ディスクを識別するには,次のコマンドを実行します。
# clu_quorum
UFS を使用している場合は,マウントされているファイルセットをすべて表示します。
# mount
drdmgr
および
hwmgr
コマンドを実行すると,どのクラスタがどのディスクに対してサービスを行っているかについての情報を取得できます。
sms
コマンドを使用して,SysMan Station のグラフィカル・インタフェースを起動し,[Views] メニューから [Hardware] を選択すれば,アクティブ・メンバ,バス,ストレージ・デバイス,およびそれらの接続状況などを含む,クラスタ・ハードウェア構成をグラフィカルに表示できます。
2.3.3 LSM の voldisk コマンドを使用した,未使用ディスクの識別
LSM の起動時に,LSM はオペレーティング・システム・ソフトウェアからディスク・デバイス・アドレスのリストを入手し,ディスク・ラベルをチェックして,どのデバイスが LSM 用に初期化され,どのデバイスが LSM 用ではないかを調べます。
LSM がシステム上で実行されている場合,voldisk
コマンドを使用すると,認識されているすべてのディスクのリストを表示したり,特定のディスクの詳細情報を表示できます。
ディスクのリストを参照するには,次のコマンドを入力します。
# voldisk list
DEVICE [1]TYPE [2] DISK [3] GROUP [4] STATUS [5] dsk0 sliced - - unknown dsk1 sliced - - unknown dsk2 sliced dsk2 rootdg online dsk3 sliced dsk3 rootdg online dsk4 sliced dsk4 rootdg online dsk5 sliced dsk5 rootdg online dsk6 sliced dsk6 dg1 online dsk7 sliced - - online dsk8 sliced dsk8 dg1 online dsk9 sliced - - online dsk10 sliced - - online dsk11 sliced - - online dsk12 sliced - - online dsk13 sliced - - unknown dsk14 sliced - - unknown
出力情報について,次にリストします。
LSM ディスク・タイプ (sliced
,simple
,または
nopriv
) を示します。
ダッシュ (-) は,そのデバイスが LSM の制御下になく,LSM ディスク・タイプがないことを示します。
[例に戻る]
LSM ディスク・メディア名を指定します。 ダッシュ (-) は,そのデバイスがディスク・グループに割り当てられておらず,LSM ディスク・メディア名がないことを示します。 [例に戻る]
デバイスが属するディスク・グループを指定します。 ダッシュ (-) は,そのデバイスがディスク・グループに割り当てられていないことを示します。 [例に戻る]
LSM に関する,ディスクの状態を示します。
unknown
-- ディスクが LSM の制御下にありません。
online
-- ディスクが LSM の制御下にあります。
DISK 欄と GROUP 欄にダッシュがあれば,ディスクはディスク・グループに属さないため,未使用の LSM ディスクです。
offline
-- ディスクがアクセスできません。
理由は,ディスクが故障しているか,または意図的にオフラインにされているかのいずれかです。
online aliased
-- ディスクは,ハードウェア・クローン・ディスクです。
error
-- ディスクは検出されましたが,入出力エラーが発生しています。
failed was
-- LSM ディスク・メディア名は存在しますが,DEVICE に関連付けられていません。
このメディア名に関連付けられた最後のデバイスを表示します。
LSM ディスクの詳細を表示するには,次のコマンドを入力します。
# voldisk list disk
次に例を示します。
# voldisk list dsk5
Device: dsk5 devicetag: dsk5 type: sliced [1] hostid: hostname disk: name=dsk5 id=942260116.1188.hostname [2] group: name=dg1 id=951155418.1233.hostname [3] flags: online ready autoimport imported pubpaths: block=/dev/disk/dsk5g char=/dev/rdisk/dsk5g privpaths: block=/dev/disk/dsk5h char=/dev/rdisk/dsk5h version: n.n iosize: min=512 (bytes) max=2048 (blocks) public: slice=6 offset=16 len=2046748 [4] private: slice=7 offset=0 len=4096 update: time=952956192 seqno=0.11 headers: 0 248 configs: count=1 len=2993 logs: count=1 len=453 Defined regions: config priv 17- 247[ 231]: copy=01 offset=000000 enabled config priv 249- 3010[ 2762]: copy=01 offset=000231 enabled log priv 3011- 3463[ 453]: copy=01 offset=000000 enabled
詳細については,
voldisk
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