この章では,Common Desktop Environment (CDE),および Tru64 UNIX ウィンドウ環境の X11R6.3 と Motif の構成要素について説明します。 次のトピックについて説明します。
9.1 Common Desktop Environment
Common Desktop Environment (CDE) は,X コンソーシアムの X ウィンドウ・システムおよび OSF の Motif ユーザ・インタフェースなどの業界標準をベースに共同開発されたグラフィカル・ユーザ・インタフェースです。 CDE は,マルチベンダ・プラットフォーム上で,共通な API とともに一貫したルック・アンド・フィールを提供します。
CDE は,ユーザによるカスタマイズが可能なビジュアルなデスクトップを提供します。 CDE インタフェースを使用すると,マウスとキーボードを使用してアプリケーションの操作を行うことができます。 CDE の画面上の下部にフロント・パネルが表示され,アプリケーション,プリンタ,頻繁に使用するオブジェクト,オライン・ヘルプなどにアクセスできます。
ユーザに対するサービスに加えて,CDE には,アプリケーションを CDE に統合するために必要なものがすべて用意されています。 CDE は標準に準拠しているため,統合されたアプリケーションは,この標準に準拠する他のプラットフォームに容易にポーティング可能です。 たとえば,ヘルプ・ファイルとそれにアクセスする方法は,標準に準拠するすべてのプラットフォームに対して適用できます。 詳細については,『Common Desktop Environment: プログラマ概要』を参照してください。
CDE のフロント・パネルには,アプリケーションの起動,デスクトップ・セッションでの管理作業,ワークスペースの変更などを行うためのツールのアイコンが表示されます。 ワークスペースとは,フロント・パネルが表示されるスクリーンのことです。 フロント・パネルは,別のワークスペースへ移動しても表示されます。 フロント・パネルには次のツールのアイコンが配置されています。
時計
カレンダ
ファイル・マネージャ
テキスト・エディタ
メーラー
ロック
ワークスペース・スイッチ
ビジー・ライト
プリンタ
セッション終了
SysMan Menu
スタイル・マネージャ
アプリケーション・マネージャ
ヘルプ・マネージャ
ゴミ箱
各ツールの使用方法については,『CDE ガイドブック』および『Common Desktop Environment: ユーザーズ・ガイド』を参照してください。
CDE には CDE Window List が組み込まれています。 CDE Window List は,マウス・ポインタが root ウィンドウにあるときにマウスの真中のボタンをクリックすることにより起動できます。 このツールは,デスクトップの各ワークスペース上にあるアプリケーション・ウィンドウを検索し,起動中のアプリケーションの名前,クラス,ワークスペース名を表示します。 詳細は,CDE Window List のオンライン・ヘルプを参照してください。
CDE Setup 機能は,GUI により CDE の設定とカスタマイズを容易にします。
また,フロント・パネル制御の作成も容易になります。
フロント・パネル制御は,フロント・パネル・タイプに組み入れることができます。
これらのタイプは,別のユーザのためにカスタマイズすることができます。
さらに,ユーザは,CDE ウィンドウ,アイコン,バインディングに対してパラメータを設定し,dtterm
,dtmail
,dtfile
アプリケーションのオプションを設定し,フロント・パネル端末エミュレータを決めることができす。
X サーバ,ログイン画面,システム・サービスの構成など,システム管理者用の機能も拡張されています。
CDE Setup
についての詳細は,
dtsetup
(8)9.2 X ウィンドウ・システム
X Window System Version 11, Release 6.3 のソフトウェアは,次のコンポーネントで構成されています。
X クライアント・ライブラリ
X サーバ
ディスプレイ・マネージャ
X プロトコル拡張機能
フォント・サーバ
X クライアント
X プリント・サーバ (Xp)
Tru64 UNIX は,X11R6.3 の X クライアント・ライブラリを完全にサポートしています。
Athena ウィジェット・セット (libXaw
)
ユーザ・インタフェース・コンポーネント (スクロール・バー,ラベル,ボタン) の高レベル・ライブラリ
X イントリンシックス・ライブラリ (Xt
)
Xlib
にコールを行う中レベル・ルーチン
X ライブラリ (Xlib
)
X サーバとのインタフェースを行う低レベル・ルーチン
X クライアント・ライブラリについての詳細は,X Window のドキュメントを参照してください。
9.2.2 X サーバ
シェアード・ライブラリを多用することで,Tru64 UNIX はすべてのグラフィック・オプションに対して単一の X11R6.3 X サーバ・イメージをサポートしています。
Tru64 UNIX のX サーバは初期化時に動的に構成を行い,特定のシステム構成で要求されるサーバ・コンポーネントだけをロードします。
システム管理者の作業を必要とすることはほとんどありません。
9.2.3 マルチヘッド・グラフィック・サポート
適切なオプション・カードがインストールされ,サポート機能がカーネルに組み込まれている場合,Tru64 UNIX におけるマルチヘッド・グラフィック・サポートは透過的です。
X11R6.4 の Xinerama として知られる PanoramiX 拡張により,マルチヘッド・システムをより適切に利用できます。
9.2.4 X サーバ拡張機能
Tru64 UNIX は次の X サーバ拡張機能をサポートしています (省略時の設定では,メモリを節約するために,X サーバはクライアントから特定の拡張機能への要求が出されるまで,ほとんどのサーバ拡張機能のロードを行いません)。
X11R6.3 に対するキーボード拡張機能
X11R6.3 に対するキーボード拡張 (XKB) により,以下のような機能を提供して X Window System におけるキーボードの制御およびカスタマイズ機能を強化しています。
キーボード・レイアウトに関する ISO 9996 標準のサポート
コア X キーボードの処理との互換性 (クライアントの修正は不要)
キーボードの LED 処理 や CapsLock および NumLock などのロック処理のための標準の方法
キーボード・ジオメトリのサポート
また,障害を持つ人々のための X11R5 AccessX サーバ拡張機能が XKB サーバ拡張機能に組み込まれています。 これらの機能としては,オートリピートに関する制御とともに StickyKeys,SlowKeys,BounceKeys,MouseKeys および ToggleKeys が含まれます。
XKME (X Keyboard Management Extension)
国際化 X クライアントをより適切にサポートするための内部拡張機能です。 XKB 拡張機能によって,XKME 機能は古い機能となっていますが,下位互換性のために提供されています。
MIT-SHM (MIT 共用メモリ)
イメージを多用するローカル・アプリケーションの性能を向上させます。
MIT-SUNDRY-nonstandard
X コンソーシアムの拡張機能です。 現在は X サーバに対するバグ互換性モードの制御に使用されます。
マルチバッファリング
複数バッファに書き込むことで,スムーズなアニメーションをサポートします。
SHAPE
円形,楕円形あるいは特殊な形のウィンドウなど,四角形以外のウィンドウをサポートします。
SMT (共用メモリ・トランスポート)
ローカル・クライアントの X トランスポートとして共用メモリを使用することを可能にし,性能を向上させます。
トランスポートは
local:0.0
で指定します。
XIE (X Imaging Extension, Version 3.0)
イメージの拡張制御およびデバイスに依存しないイメージ表示を提供します。
Tru64 UNIX では,バージョン 3 (
/usr/lib/Xie.a
および
/usr/shlib/libXie.so
) と業界標準のバージョン 5 (
/usr/lib/libXIE.a
および
/usr/shlib/libXIE.so
) を提供します。
X-Input
他社の入力デバイスに対応する,ユーザ独自のドライバの作成を可能にします。
作成したドライバは,X サーバ構成ファイル (
/usr/var/X11/Xserver.conf
) の エントリに追加することによって X サーバに動的ロードできます。
新しい入力デバイスは,Xサーバが次にリセットされた時点で認識されるようになります。
従来の静的リンク X サーバは,新しい拡張デバイスを追加するたびに X サーバの再構築が必要です。 Tru64 UNIXのロード可能 X サーバの実装では,X サーバ初期化時にロードされる外部共用可能デバイスとして新しい入力デバイスをシステム管理者が追加できるようにすることによって,この制限を回避しています。
ドライバのサンプル・コードは
/usr/examples
ディレクトリに用意されています。
X スクリーン・セーバ
一定の期間スクリーンが使用されていない場合,または再度スクリーンが使用されたとき,クライアントに通知します。 この拡張機能はスクリーン・セーバ・アプリケーションの開発に役に立ちます。
XSync
XSync
関数を
XFlush
,XEventsQueued
および
XPending
関数とともに使用すると,X サーバの内部で X クライアント間の同期を取ることが可能になります。
これにより,ネットワークにより引き起こされるエラーを除去することができ,また,異なるオペレーティング・システムが実行されているホスト間で X クライアントの同期を取ることができます。
この拡張機能は,特にオーディオ,ビデオおよびグラフィックスなどの同期が要求されるマルチメディア・アプリケーション,および要求を内部 X サーバ・タイマと同期させるようなアニメーション・アプリケーションに効果的です。
XTest
テストのために,アプリケーションが X イベントをシミュレートすることが可能になります。
XTrap
X クライアントのテストのための X イベントの記録および再生をサポートします。
XV (X Video)
ライブ・ビデオ PIP オプションなどの,TX グラフィック・デバイスに関するビデオ・オプションをクライアントが制御することが可能になります。
X プリント拡張
この機能により,X アプリケーションがプリント・デバイスへ直接出力することが可能になります。
X プリント・サーバ (Xp)
これによって,X イメージングがプリンタやファックスのような装置を非表示にできます。 X Print サービスの中心となるのは,X Print Server です。 印刷オペレーションが必要なアプリケーションは X Print Server に接続し,利用可能なプリンタの一覧表示,プリンタの選択,印刷要求のキュー登録を実行できます。
PanoramiX
システムに複数のビデオ・モニタを構成し,それらを 1 つの大きなスクリーンとして機能させることが可能です。 ウィンドウは複数のスクリーンに広がることも,1 つのスクリーンから別のスクリーンへ移動することもできます。 この拡張機能は,同種のグラフィック環境でのみサポートされます。 この環境は,共通のデバイス,深度,解像度などで構成されていなければなりません。
アプリケーション・グループ
アプリケーション・グループ・ウィンドウがそのグループ内のウィンドウに対する特定の要求を取り出し,それらを適切に処理することができるよう,ウィンドウのグルーピングを可能にします。 この機能はリモート実行拡張で使用され,X アプリケーションを Web ページに組み込むことを可能にしています。
X セキュリティ
X Window System に対してエンハンスト・セキュリティ機能を提供します。 セキュリティは,ユーザごと,あるいはリソースごとに指定することができます。
リモート実行
Web ブラウザなどから,X アプリケーションをリモートで起動させることができます。
低帯域幅 X (lbx)
モデムなど低帯域幅転送で X をより効率的に動作させることができます。
個々の X クライアント・ライブラリについては,X Window
のドキュメント,および,
X
(1X)Xdec
(1X)9.2.5 ディスプレイ・マネージャ
Tru64 UNIX は,標準の
Xdm
端末マネージャ・ソフトウェアをサポートしています。
Xdm
端末マネージャは X サーバをローカルに起動し,ネットワーク透過のログイン・プロンプトを表示します。
この機能により,xdm
でサポートされているネットワーク上のすべてのシステムに対し,そのリモート・システムのグラフィック・コンソールで直接ログインするのと同様にログインできます。
この機能により,X 端末を Tru64 UNIX 環境にスムーズに統合することができます。
Xdm
の詳細については,『システム管理ガイド』および
xdm
(1X)キーマップ・フォーマット
Tru64 UNIX で提供する省略時のキーマップは,XKB 標準キーマップ・フォーマットです。 これらのキーマップは,XKB 拡張をサポートおよび実行する X サーバで使用されます。 XKB キーマップ・ファイルは,簡単にカスタマイズおよびコンパイルできるテキスト・ファイルです。
下位互換性を維持するため,xmodmap
キーマップ・フォーマットもサポートされます。
xmodmap
キーマップ・フォーマットは事実上の業界標準で,シンボリック・キー名を使用して記述され,カスタマイズが容易です。
どちらのキーマップ・フォーマットも,モディファイア・キー (Compose
,
Alt
,
Shift
など) を指定することができます。
xmodmap
キーマップ・フォーマットではなく,XKB 規格キーマップ・フォーマットを使用することをお勧めします。
XDM-AUTHORIZATION-1
X クライアントが X サーバとの接続を確立する時に,キーと呼ばれる登録コードがクライアントからサーバへ渡されます。
X サーバがこのキーを認識すると接続が認められます。
xdm
(X ディスプレイ・マネージャ) は,ユーザの X セッション起動時に 1 つまたは複数のキーをユーザのホーム・ディレクトリの
.Xauthority
ファイルに書き込みます。
また,X ディスプレイ・マネージャ (xdm
) は,X サーバが読み取り可能なファイルにもキーを書き込みます。
セキュリティの向上のため,Tru64 UNIX は
MIT-MAGIC-COOKIE-1
キー・フォーマットと
XDM-AUTHORIZATION-1
暗号化キー・フォーマットの両方をサポートしています。
省略時のキーは
XDM-AUTHORIZATION-1
です。
9.2.6 フォント・サーバ
Tru64 UNIX は,標準のスケーラブル・フォント・サーバをサポートしています。 これにより,ネットワーク上の各システムが,ネットワーク上のいずれかの Tru64 UNIX システムに常駐するフォントに対してアクセスする機能が提供されます。 フォント・サーバは,フォントの格納場所を管理し,ネットワーク上の他の X サーバからローカルでは持っていないフォントを要求されたときにこれに応答します。 フォントに対するネットワーク透過のアクセスを提供する他に,要求を出している Xサーバにフォントを提供する前にフォントのスケーリングを適切に行う機能を持っているため,フォント・サーバは,ローカル X サーバのフォント・スケールの計算負荷を軽減します。
フォントを X サーバに表示する前に,グリフを ディスク上のフォーマットからビットマップに変換する必要があります。 この変換は X サーバまたは X サーバにフォントを提供するフォント・サーバ 内のフォント・レンダ・コードによって行われます。
Tru64 UNIX はロード可能フォント・レンダをサポートしているので,X11R6.3 標準に準拠した固有のフォント・セットのためのフォント・レンダを作成し,Tru64 UNIX にインストールすることができます。
フォントおよびフォント・レンダのインストール後,必要なエントリが X サーバ構成ファイル (
/usr/var/X11/Xserver.conf
) あるいは フォント・サーバ構成ファイル (
/usr/var/X11/fs/config
) のどちらか一方または両方に置きます。
新しいフォント・レンダは,次に X サーバまたはフォント・サーバ (フォント・レンダが構成されている方) がリセットされると認識されます。
9.2.7 X クライアント
Tru64 UNIX は,下記のような X11R6.3 で提供されるすべての X クライアントをサポートします。
appres
,
atobm
,
bdftopcf
,
bitmap
,
bmtoa
,
chooser
,
editres
,
fs
,
fsinfo
,
fslsfonts
,
fstobdf
,
iceauth
,
ico
,
imake
,
listres
,
lndir
,
maze
,
mkfontdir
,
oclock
,
optacon
,
puff
,
puzzle
,
restart
,
resize
,
showfont
,
showrgb
,
smproxy
,
twm
,
uil
,
viewres
,
x11perf
,
x11perfcomp
,
xauth
,
xbiff
,
xcalc
,
xcd
,
xclipboard
,
xclock
,
xcmsdb
,
xconsole
,
xcutsel
,
xdm
,
xdpr
,
xdpyinfo
,
xedit
,
xemacs
,
xev
,
xeyes
,
xfd
,
xfindproxy
,
xfwp
,
xfontsel
,
xfwp
,
xhost
,
xkbbells
,
xkbcomp
,
xkbprint
,
xkbdfltmap,
,
xkbvleds
,
xkbwatch
,
xkill
,
xload
,
xlogo
,
xlsatoms
,
xlsclients
,
xlsfonts
,
xmag
,
xman
,
xmbind
,
xmh
,
xmkmf
,
xmodmap
,
xon
,
xpr
,
xprop
,
xrdb
,
xrefresh
,
xset
,
xsetroot
,
xsoundsentry,
xstdcmap
,
xterm
,
xwd
,
xwininfo
, および
xwud
。
各 X クライアントについての詳細は,それぞれのリファレンス・ページを参照してください。
9.3 Motif コンポーネント
Tru64 UNIX は,下記のような Motif V1.0 のすべてのコンポーネントをサポートしています。
ウィジェット・ライブラリ (Xm
)
リソース・マネージャ (Mrm
)
ウィジェット・メタ言語 (wml
)
ユーザ・インタフェース言語 (UIL)
Motif ウィンドウ・マネージャ (mwm
)
キー・バインド・ユーティリティ (xmbind
)
Motif デモンストレーション・プログラム(examples
)
Open Software Foundation は Motif R1.2 で,ANSI C,国際化機能,ドラッグ・ドロップ機能および ティア・オフ・メニューのサポートを追加しました。 これらのサポートにより,Motif R1.1.3 とのバイナリ互換性が維持できなくなるため,Tru64 UNIX ではバージョニング機能を通して Motif Version 1.1.3 ライブラリを提供し,Motif Version 1.1.3 にリンクされたアプリケーションが引続き実行できるようにしています。 これらのライブラリはオプションのサブセットに含まれています。 バージョニングについての詳細は,『プログラミング・ガイド』を参照してください。
Motif についての詳細は 『OSF/Motif Programmer's Guide』および各リファレンス・ページを参照してください。
Motif の国際化サポートについては
第 8 章
を参照してください。
9.3.1 拡張ウィジェット・セット
Xm
ウィジェット・ライブラリに加えて,Tru64 UNIX では 次のようなウィジェットを含む拡張ウィジェット・セット (DXm
) をサポートしています。
DXmColorMix
色の編集および選択をサポートします。
DXmPrintWidget
グラフィック・プリント・オプションを提供します。
DXmCSText
XmText
と同じようなユーザ・インタフェースで,コンパウンド・ストリングの編集をサポートします。
DXmHelpWidget
ヘルプ・トピックを表示します。
DXmSvn
データの一覧を通じて 構造化ナビゲーションをサポートします。
X11R6.3 で提供されるすべての X クライアントに加えて,Tru64 UNIX では,下記の X クライアントを提供しています。
accessx
,
dxconsole
,
dxdiff
,
dxkbledpabel
,
dxkeyboard
,
dxkeycaps
,
dxpresto
, および
dxterm
。