ASU ソフトウェアをインストールした Tru64 UNIX サーバでプリンタを動作させ,そのプリンタをプリンタ共有として Windows ユーザが使用できるようにすることができます。
Windows ユーザは,ネットワークをブラウズしてプリンタ共有を調べたり,[プリンタの追加ウィザード] を使ってプリンタ共有を使用するように Windows システムを構成したりすることができます。一度構成されると,プリンタ共有に関連付けられたプリンタは,ユーザのローカル・コンピューティング環境の透過的な拡張のように見えます。たとえば,Microsoft Word などのアプリケーションを使用して,ユーザがプリンタ共有に直接プリントすれば,ジョブはプリンタに転送されます。
この章では,次のトピックについて説明します。
ASU プリンタ共有の作成については,『Advanced Server for UNIX インストレーション/管理ガイド』 を参照してください。
5.1 印刷の操作についての計画
ネットワークで印刷を効率的にしかも高い費用対効果で行うには,次の事項について決めておく必要があります。
どのプリンタを使用するか。
どのコンピュータが ASU プリンタ共有を提供するか。
最大限利用できるようにするには,どのようにプリンタ共有を構成するか。
印刷装置は,ネットワークで使用するために特別に設計された印刷装置の中から選択することもできます。このような印刷装置には,ポートとエミュレーションの自動切り替え,複数の用紙トレイ,両面印刷などのオプションが付いています。ネットワーク・プリンタを決定するときには,次の項目を考慮してください。
処理能力の優れた印刷装置が 2,3 台必要なのか,または低価格の個人用印刷装置が多数必要なのか。
一般に,処理能力の優れたプリンタの方が多くの機能を備えていますが,故障した場合には多数のユーザに影響が及びます。
どのくらいの量を印刷するのか。
印刷量がプリンタの負荷サイクル (1 ヶ月に印刷できるページ数) に見合っていれば,保守上の問題は少なくなります。
精密なグラフィックス機能のサポートを必要とするか。
Windows NT と TrueType 技術を組み合わせることで,通常はビットマップとテキストしかサポートしないプリンタでも,精密なグラフィックスとフォントを印刷できます。TrueType フォントは動作環境に統合されているため,すべての Windows NT アプリケーションは,変更またはアップグレードをしなくても TrueType フォントを使用できます。グラフ,チャート,ハーフトーンの写真などを多く印刷する場合は,600 dpi 以上の解像度をサポートするプリンタの使用を検討します。
印刷速度はどれくらい重要か。
印刷装置は,コンピュータ上のシリアル・ポートまたはパラレル・ポートを経由してネットワークに接続したり,内蔵されたローカル・エリア・ネットワーク (LAN) カードを使用して直接ネットワークに接続したりできます。ネットワークに直接接続されているプリンタは通常,パラレル・バスやシリアル・バスよりも処理速度は高速になります。ただし,印刷の処理速度はネットワーク・トラフィック,ネットワーク・インタフェース・カード (NIC),プロトコル,および印刷装置の種類によっても異なります。
通常は,ネットワークの規模とは関係なく,いくつかのサーバにプリンタを集中して設置することになります。プリント・サーバのコンピュータは,同時にファイル・サーバまたはデータベース・サーバとして動作させることができます。ファイル操作が,サーバに直接接続されたプリンタに与える影響は,あまり大きくありません。
サーバが,頻繁に利用されるプリンタを多数管理する必要がある場合は,専用のプリント・サーバを設置した方が望ましい場合もあります。プリント・サーバとファイル・サーバをいっしょにするかどうかは,セキュリティに対する考え方によっても異なります。プリンタは使用するユーザが常に利用できるようにしておく必要がある一方で,ファイル・サーバではセキュリティが確保された部屋に設置することによって,アクセスを物理的に制限することが必要になる場合もあります。
パラレルまたはシリアル・インタフェースの印刷装置を使用する場合は,適切なプリンタ出力ポートを持っていること以外,プリント・サーバに特別なハードウェア要件はありません。多数のプリンタまたは大容量のドキュメントを管理するには,多くのメモリが必要になります。ASU サーバは,サーバの処理能力,実装されているメモリ,および一般的にプリント・サーバに送信するドキュメントのサイズと量に応じて,多数のネットワーク・インタフェース・プリンタを管理できます。サーバの処理能力を高いレベルで維持するには,印刷装置にメモリを増設します。サイズの大きいドキュメントや多数のドキュメントが蓄積するような場合を除けば,ディスク・スペースは最小限ですみます。
5.1.3 プリンタ共有へユーザがアクセスする方法の計画
プリンタ共有を構成する前に,ネットワーク・プリンティングの柔軟性と効率を向上させるさまざまな ASU 構成オプションについて考慮する必要があります。ASU では,プリンタ共有と印刷装置との間に 1 対 1 の対応関係を持たせる必要はありません。プリンタ共有と印刷装置をさまざまな方法で関連付けることにより,ユーザの印刷操作に軟性を持たせることができます。たとえば,次のように構成できます。
1 つのプリンタ共有と 1 台の印刷装置
複数のプリンタ共有と 1 台の印刷装置
複数のプリンタ共有を 1 台の印刷装置に割り当てることができるため,ドキュメントの印刷を柔軟に行うことができます。たとえば,1 台の印刷装置に 2 つのプリンタ共有が関連付けられている場合には,異なる印刷プロパティを設定できます。つまり,一方のプリンタ共有では区切りページを印刷して,もう一方のプリンタ共有では印刷しないというように設定することができます。または,一方のプリンタ共有ではドキュメントをためておいて夜間に印刷し,もう一方のプリンタ共有では 1 日 24 時間ドキュメントを印刷するというような設定もできます。
1 つのプリンタ共有と複数の同じ印刷装置 (プリンタ・プール)
プールでは,プリンタの数に制限はありません。アイドル状態の印刷装置があれば,それが次のドキュメントを受け入れます。この構成では,印刷装置の利用率が最大になり,ユーザがドキュメントを待つ時間が最小になります。
プールにある印刷装置はすべて同じハードウェア・モデルで,1 つの単位として動作します。プリンタ共有のプロパティ設定は,プール全体に適用されます。プリンタ・ポートは,同じタイプにすることも違うタイプを混在させることもできます (パラレル,シリアル,およびネットワーク)。
ハードウェア・プラットフォームとオペレーティング・システムが異なる場合は,別々のプリンタ・ドライバが必要になります。たとえば,Alpha コンピュータ上で Windows NT が動作するクライアントが,ASU サーバ上に作成されたプリンタ共有を使用するには,そのプリンタ用の適切な Alpha プリンタ・ドライバが必要です。
プリンタ・ドライバはローカルでインストールすることも,ASU サーバにインストールすることもできます。ASU サーバは,Windows 95,Alpha,Power PC,MIPS,および x86 ベースのクライアント向けのプリンタ・ドライバを,PRINT$ というディスク共有に格納できます。こうしておけばクライアントは,プリンタ・ドライバを自動的にダウンロードすることができます。
ASU サーバは,受け取った印刷要求が Alpha,Power PC,MIPS,または x86 ベースのいずれに該当するかを判断して,適切なドライバを自動的にクライアントに送ります。
Windows NT Version 3.1,3.5,3.51,または 4.0 をサポートするには,クライアントごとに適切なプリンタ・ドライバをインストールする必要があります。
プリンタ・ドライバのインストールについては,『Advanced Server for UNIX インストレーション/管理ガイド』 を参照してください。
表 5-1 は,サポートされていないプリンタに対する設定について説明しています。使用している印刷装置がこの表にない場合は,利用可能なドライバがあるかどうかを製造元に問い合わせてください。
プリンタの種類 | 次のプリンタと同じ設定にする |
HPPCL (LaserJet) 互換 | Hewlett-Packard LaserJet Plus |
Color PostScript | QMS-ColorScript |
35-font Plus フォント・セットまたはスーパセット | Apple LaserWriter® Plus |
9 ピン・ドット・マトリックス IBM 互換 | IBM Proprinter |
9 ピン・ドット・マトリックス Epson® 互換 | キャリッジの幅が狭い場合は Epson FX-80,広い場合は FX-100 |
24 ピン・ドット・マトリックス IBM 24 ピン互換 | IBM Proprinter X24 |
24 ピン・ドット・マトリックス Epson LQ 互換 | Epson LQ-1500 |
この節では,プリンタ共有のプロパティについて説明します。
5.2.1 区切りページ
ASU サーバは,各プリント・ジョブの前に,区切りページつまりバナーを自動的に印刷します。省略時のバナー・ページを変更したり,必要に応じてもう 1 つ作成したりすることができます。
区切りページを設定または変更するには
net print
コマンドを使用します。
net
コマンドについての詳細は,『Advanced Server for UNIX インストレーション/管理ガイド』 および
net help
コマンドを参照してください。
5.2.2 プリント・プロセッサ・スクリプトの使用
プリント・プロセッサ・スクリプトを使用すると,プリント・ジョブをプリンタではなくファイルまたは端末に直接送るか,uucp
コマンドを使用してリモートの Tru64 UNIX システムのコンピュータに送るか,または
troff
や
nroff
などの別の Tru64 UNIX システムのプロセスに送ることができます。
プリント・プロセッサ・スクリプトを作成する場合は,ユーザがアクセスできるように,そのスクリプトを使用するキューを共有しなければなりません。ユーザは,他のプリント・キューと同様にこのキューにアクセスします。他のユーザへのサービスに影響を及ぼさないように,このスクリプトはバックグラウンドで実行してください。表 5-2 は,プリント・プロセッサ・スクリプトに使用できる環境変数を示しています。
変数 | 説明 |
$CLIENT | ジョブの送信元のコンピュータ名 |
$COPIES | 印刷部数 (1 部以上) |
$PRIO | プリント・ジョブの Tru64 UNIX システムの
lpr
優先順位 (1〜39) |
$DEST | ジョブの送信先である Tru64 UNIX システムの
lpr
プリンタ・クラス (サーバ・キュー) |
$FILENAME | 処理するファイルの絶対パス名 |
プリント・プロセッサ・スクリプトを作成するには,次の手順に従います。
テキスト・エディタを使用して,シェル・スクリプトを作成し,それを
lanman/customs
ディレクトリに保存します。
そのスクリプトを
chmod +x
コマンドを実行して実行可能ファイルにします。
net print /PROCESSOR:pathname
コマンドを使用して,プリンタ共有を構成し,プリント・プロセッサ・スクリプトを使用します。
net
コマンドについての詳細は,『Advanced Server for UNIX インストレーション/管理ガイド』 および
net help
コマンドを参照してください。
5.2.3 スケジュールとスプールの設定
印刷装置の使用率を最大にする 1 つの方法は,印刷時間をずらすことです。たとえば,プリンタ・トラフィックが一日中多い場合には,時間外に印刷するプリンタ共有に優先度の低いドキュメントを送ることによって印刷を遅らせることができます。印刷時間を指定すると,プリント・スプーラは任意の時間にドキュメントを受け付けますが,指定した時間が来るまで,指定の印刷装置にプリントしません。印刷停止時間になると,スプーラは印刷装置へのドキュメント送付を停止し,印刷が再び開始するようにスケジュールされている時間まで,残っているドキュメントを保存します。
表 5-3
は,スケジュールとスプールのオプションについての説明です。これらのオプションは,プリンタの [プロパティ] シートの [スケジュール] タブを使用するか,net
コマンドを使用して設定できます。
表 5-3: スケジュールのオプション
オプション | 説明 | net コマンド |
利用可能時間 | プリンタが利用できる時間を定義する。 |
|
優先順位 | ドキュメントの優先度に基づいて,優先度の異なるプリント・キューを設定する。 |
(1 が最高で 9 が最低) |
全ページ分のデータをスプールしてから印刷データをプリンタに送る | クライアントが印刷するページを送信するよりも,プリント・サーバの印刷速度の方が速い場合に,遅延が生じるのを防止する (省略時の設定は変更できない)。 | 同等な
net
コマンドはない。 |
net
コマンドについての詳細は,『Advanced Server for UNIX インストレーション/管理ガイド』 および
net help
コマンドを参照してください
5.2.4 プリンタ共有へのアクセスの制御
プリンタの使用を制御するには,各プリンタ共有にアクセス権を設定します。省略時の設定では,作成したすべてのプリンタ共有は,すべてのネットワーク・ユーザが利用できます。プリンタ共有へのアクセスを制限するには,ドメイン・ユーザ・アカウントまたはグループに対するアクセス権を変更しなければなりません。表 5-4
は,プリンタ共有に設定できるアクセス権について説明しています。プリンタ共有のアクセス権を変更できるのは,プリンタの所有者または「フル コントロール」アクセス権が与えられたユーザだけです。
表 5-4: プリンタ共有のアクセス権
アクセス権 | 可能な操作 |
アクセス権なし | プリンタ共有へのプリント不可 |
印刷 | プリンタ共有へのプリント |
ドキュメント管理 | ドキュメントの設定の制御,ドキュメントの一時停止,再開,再印刷,および削除 |
フル コントロール | 「印刷」および「ドキュメント管理」のアクセス権に加えて,次の操作が可能:
省略時の設定では,Administrators,Print Operators,および Server Operators は,「フル コントロール」アクセス権を持っている。 |
アクセス権は累積されます。ただし,「アクセス権なし」アクセス権は,他のすべてのアクセス権より優先されます。
5.2.5 プリンタ共有の監査
プリンタ共有を監査すると,その使用状況を追跡できます。特定のプリンタについて,監査の対象となるドメイン・ユーザ・アカウントおよびグループの操作を指定できます。成功した操作も失敗した操作も監査できます。ASU サーバは,監査で生成された情報をログ・ファイルに格納します。この情報はイベント ビューアを使用して表示できます。イベント ビューアについての詳細は,第 6 章を参照してください。
プリンタ共有を監査するには,スプーラ・イベントのログ収集を有効にし,ドメイン ユーザー マネージャを使用して監査の原則を設定してください。
表 5-5
は,監査できるプリンタ共有のイベントについて説明しています。
表 5-5: プリンタ共有の監査オプション
オプション | 監査項目 |
印刷 |
ドキュメントの印刷 |
フル コントロール |
|
削除 |
プリンタ共有の削除 |
アクセス権の変更 |
プリンタ共有のアクセス権変更 |
所有権の取得 |
所有権の取得 |
「フル コントロール」アクセス権を持つユーザは,サーバの [用紙] プロパティ・シートを使用して新しいフォーム (用紙) を定義できます。たとえば,レター・サイズの用紙で余白が標準とは異なる「Customer Receipt Form (受領証)」という名前のフォームを作成することができます。また,特定のユーザの要求に対応するために,同じ用紙サイズまたは余白 (またはその両方) を持つ複数のフォームを作成することもできます。たとえば,用紙サイズとイメージ領域 (余白) を同じにして,各事業部ごとにレターヘッドだけを変えたフォームを作成し,フォームごとに一意の名前を付けます。
新しいフォームの定義は,プリント・サーバのデータベースに追加され,プリンタごとではなくコントローラごとに格納されます。フォームは,プリンタの [プロパティの設定] プロパティ・シートを使用して,特定の印刷装置とトレイに割り当てます。
5.2.7 デバイス固有のプロパティの設定
デバイス固有のプロパティは,どの用紙トレイがセットされ,デバイスにどれだけのメモリがあるかなど,印刷装置の物理構成を示します。これらのプロパティは装置ごとに異なります。プリンタ共有を作成するときは,省略時の設定になっています。省略時の設定でも,多くの印刷要求を満たせますが,PostScript プリンタのドライバで利用できるオプションなど,特殊な印刷オプションには特別な設定が必要になります。
次の各項で,デバイス固有のプロパティについて説明します。デバイス固有のプロパティを表示または変更するには,[プリンタ] フォルダのプリンタ・アイコンを選択し,[プリンタ] メニューの [プロパティ],プリンタの [デバイスの設定] タブの順に選択します。
5.2.7.1 プリンタ・メモリの設定
ページ・プリンタは,1 ページ全体をメモリに格納しなければならないため,比較的大容量のメモリが必要になります。レーザ・プリンタなどのページ・プリンタを使用する場合は,装置の利用可能なメモリ容量が,[デバイスの設定] タブに表示されている値と一致していることを確認してください。印刷装置の実際のメモリ容量が,[デバイスの設定] タブに表示される値より多かったり少なかったりすると,印刷の処理速度が低下することがあります。
5.2.7.2 印刷フォームの使用
ASU サーバでは,トレイ・ベースの印刷モデルではなくフォーム (用紙)・ベースの印刷モデルを使用します。フォーム・ベースの印刷モデルでは,プリント・サーバの管理者が,各給紙方法 (トレイ) で供給されるフォーム (用紙) を定義することによって ASU サーバを構成します。フォームは次の基準で定義されます。
サイズ
印刷範囲を定める余白
フォーム名
各ユーザは,Windows NT ベースのコンピュータで実行される Windows ベースのアプリケーションを使用して,希望する印刷フォームを選択できます。このため,ユーザは,どのトレイにどのフォーム (用紙) が入っているかを知る必要がありません。ASU サーバは,トレイとフォームの割り当てに関するデータを解釈して,印刷装置に適切なトレイを選択するよう指示を送ります。
Windows ベースのアプリケーションでは,1 つのドキュメント内で異なるフォームを使用できます。たとえば,1 ページ目には封筒 (Envelope) を使い,2 ページ目にはレターヘッド (Letterhead) を使い,3 ページ目以降ではレター (Letter) を使用することができます。
5.2.7.3 フォントの種類の選択
フォントとは,特定のデザインと解像度を持つ文字と記号の集合のことです。 印刷装置では,次の 3 種類のフォントが使われます。
デバイス・フォントは,印刷装置のハードウェア内にあるフォントです。印刷装置自体に組み込まれている場合と,フォント・カートリッジやフォント・カードによって供給される場合があります。
スクリーン・フォントは,印刷装置への出力用に変換できる Windows NT フォント (TrueType フォントも含む) です。スクリーン・フォントを Windows NT コンピュータにインストールするには,[コントロール パネル] フォルダの [フォント] オプションを使用します。
ダウンロード可能なソフト・フォントは,プリンタの [プロパティ] シートの [デバイスの設定] タブを使用してインストールされるフォントです。ソフト・フォントを使用して ASU プリンタ共有に印刷するクライアントは,ソフト・フォントをローカルにインストールする必要があります。
ASU サーバは,プリンタで再現できる次の 3 種類のスクリーン・フォントをサポートします。
TrueType フォントは,装置の仕様に依存せず,すべての印刷装置で再現できるフォントです。TrueType フォントはアウトラインとして保存されているので,サイズを変更したり回転させたりすることができます。ドキュメントを作成するコンピュータ上にフォントがあれば,印刷装置で再現できます。ネットワーク環境で TrueType フォントを使用する最大の利点は,その可搬性にあります。つまり,TrueType フォントを使用するドキュメントは,印刷装置,アプリケーション,およびシステムに依存しません。
ラスタ・フォントは,ビットマップとして保存されており,印刷装置に依存するフォントです。印刷装置がラスタ・フォントをサポートしていない場合,ラスタ・フォントは印刷されません。ラスタ・フォントでは,サイズの変更や回転はできません。
ベクタ・フォントは,ビットマップを再現できないペン・プロッタなどの装置で使用すると便利です。ラスタ・フォントは,サイズとアスペクト比を任意に変更できます。
クライアント・コンピュータは,ドキュメントごとに,必要なスクリーン・フォントやソフト・フォントを ASU サーバにダウンロードします。次に,ASU サーバはそれらのフォントを印刷装置に送ります。印刷時間を短縮するには,印刷装置が持っているデバイス・フォントを使用してください。
すべての印刷装置で 3 種類のプリンタ・フォントをすべて使用できるわけではありません。たとえば,一般的なペン・プロッタでは通常,ダウンロードされたソフト・フォントを使用したり,ラスタ・スクリーン・フォントを印刷したりすることはできません。
5.2.8 ドキュメントの省略時の設定
印刷装置固有の設定とドキュメントのプロパティとは,しばしば混同されがちです。ドキュメントのプロパティは,印刷装置の物理的な設定には依存しません。アプリケーションが新しいドキュメントを作成するときは,ほとんどの場合,省略時のドキュメント設定をプリンタに要求します。
表 5-6
は,一般的な印刷装置固有のプロパティとドキュメントのプロパティを一覧表示しています。
表 5-6: 一般的な設定
印刷装置固有のプロパティ | ドキュメントのプロパティ |
色 | 部数 |
解像度 | 印刷の向き |
メモリ | 両面印刷 |
フォント・カートリッジの名前 | 部単位の印刷 |
用紙の位置 | 用紙 |
プロッタ・ペン |
プリンタ共有のドキュメントのプロパティを表示するには,[プリンタ] フォルダを開き,そのプリンタを選択し,次に [ファイル] メニューから [ドキュメントの既定値] を選択します。
注意
アプリケーションで設定されるドキュメントのプロパティは,プリンタの [プロパティ] シートで設定されているドキュメントの既定値 (省略時の設定) より常に優先されます。ただし,アプリケーションでドキュメントのプロパティ (印刷の向きや用紙サイズなど) が設定されていない場合,印刷装置は,プリンタのドキュメントの [プロパティ] シートで設定されているドキュメントのプロパティを省略時の設定として使用します。