インストレーションのクローニング処理の概要 (6.1 節)
インストレーションのクローニングはどのように行われるか (6.2 節)
インストレーションの構成記述ファイル (CDF),install.cdf
の概要 (6.3 節)
install.cdf
ファイルのフォーマットと内容 (6.3.1 項)
install.cdf
ファイルの例 (6.3.2 項)
適切な CDF の生成,CDF の編集,クローン・インストレーションの開始についての手順 (6.4 節)
フル・インストレーション・プロセスで行えるその他のカスタマイズについての詳細は,第 5 章を参照してください。
6.1 概要
インストレーションのクローニングでは,インストレーションの特性 (ファイル・システムやインストールされたソフトウェア) を稼働中のシステムから,同一または類似したハードウェア構成の 1 つまたは複数のシステムに複製します。
オペレーティング・システムの現行バージョンをマシンにインストールする際に,インストレーション・プロセスは,ユーザが指定したインストレーション・セットアップ・データのレコードが格納された構成記述ファイル (CDF) を自動的に生成します。
このファイルは,/var/adm/smlogs
ディレクトリに,install.cdf
というファイル名で作成されます。
install.cdf
ファイルには,ターゲット・システム上で同じインストレーションを行うために必要なインストレーション情報がすべて含まれています。
注意
オペレーティング・システムの Version 5.1B をターゲット・システムに複製する場合,Version 5.1B のフル・インストレーションで CDF を作成しなければなりません。 インストレーションのクローニングはオペレーティング・システムの異なるリリース間ではサポートされていません。 これは,オペレーティング・システムの他バージョンで作成された CDF が現行バージョンと互換性がないためです。
クローニング処理でインストールするシステムは,CDF が生成されたシステムと同じディスク構成でなければなりません。
すなわち,ファイル・システム
/
( root
),/usr
,/var
,/usr/i18n
および
swap
領域用に使用するディスクは,ディスク・タイプとデバイス名が両方のシステムで同じでなければなりません。
ただし,構成の多少の違いは許容されています。
許容される違いは,6.5.1 項
に記載しています。
install.cdf
ファイル内の属性を変更して,ターゲット・システムでのユーザの操作を不要にすることもできます。
install.cdf
ファイルにはホストおよびサイトに固有の属性も含まれていますが,複製されるシステムが一意に識別されるように,これらの属性を変更する必要があります。
通常,複製するシステムに対して,ホスト名エントリを変更しなければなりません。
インストレーションのクローニングと組み合わせて構成のクローニング (説明は 第 7 章) やユーザ提供スクリプト (説明は 第 5 章) を使用すると,インストールと構成を行った 1 つのシステムから,1 つまたは複数のターゲット・システムに対して,完全な複製とカスタマイズが行えます。
インストレーションのクローニングを用いて多数のシステムにインストールを行う方法には,次のような利点があります。
最小限の労力で同じインストレーションが実行できる。
ユーザの操作が最小限になるように,インストレーションのクローニング処理をセットアップできる。
インストレーションのクローニングを使用すると,すべてのシステムで同じインストレーションを手動で実行する必要がないので,時間を短縮し,環境の違いによるエラーを少なくすることができる。
ローカルにマウントしたリムーバブル・メディア (CD-ROM など) で同時にインストレーションを行うのではなく,ソフトウェアを集中管理できる。
システムを複製するには,オリジナルのモデル・システムの
install.cdf
ファイルを,表 6-1に示す 4 つの位置のいずれかにコピーします。
クローニングを行うシステム上でフル・インストレーションを開始する際に,インストレーション・プロセスはこの表に記載した順番で
install.cdf
ファイルを検索します。
表 6-1: install.cdf ファイルの検索順序
検索順序 | 位置 |
1 | ディスケット・ドライブ
floppy0
または
floppy1
のディスケット |
2 | RIS サーバ上の
/var/adm/ris/clients/sets/ profile_set
サブディレクトリ。
RIS クライアントを登録する際には,使用する
install.cdf
ファイルが存在する
profile_set
ディレクトリにターゲット・システムを登録する必要があります。 |
3 | クローンを作成するシステムの
/var/tmp
メモリ・ファイル・システム (MFS) |
4 | 配布メディア (ローカル CD-ROM または展開された RIS 領域) の
/isl
ディレクトリ |
インストレーション・プロセスが
表 6-1
に示した場所のいずれかで
install.cdf
ファイルを見つけると,ターゲット・システムでインストレーションのクローニングが開始されます。
ファイルが見つかると,インストレーション・プロセスは残りの場所の検索を中止します。
たとえば,インストレーション・プロセスがディスケット上で
install.cdf
ファイルを見つけると,RIS サーバ上の検索は行いません。
install.cdf
ファイルが上記の 4 つの場所のどこにもなかった場合は,ターゲット・システムで通常のフル・インストレーションが開始されます。
この章ではこの後,主に
install.cdf
ファイルの編集方法について説明します。
CD-ROM からフル・インストレーションを行う場合は (CDF が置かれている場所には関係なく),6.6.3 項
を参照してください。
ここでは,ホストおよびサイトに固有の属性を変更することの重要性を説明しています。
CDF のフォーマットと内容についての詳細は,6.3 節,6.3.1 項,6.3.2 項
を参照してください。
インストレーション・クローニングを実行するための手順の詳細については,直接
6.4 節に進んでください。
6.3 インストレーション CDF の概要
install.cdf
ファイルには,インストレーションに関する次のような情報が格納されています。
ファイル・システムが作成された位置:
/
(ルート),/usr
,/var
,/usr/i18n
スワップ領域が作成された位置
各デバイスに対するディスク・ラベル定義
ファイル・システムが存在するディスクのタイプとディスク名
ファイル・システムのレイアウト (ファイル・システムが存在する個別のパーティション)
ファイル・システムのタイプ: UNIX ファイル・システム (UFS) または Advanced File System (AdvFS)
Logical Storage Manager (LSM) の構成
ホスト名や暗号化された
root
パスワードなど,ホストに固有の情報,および場所や地域 (タイムゾーン) など,サイトに固有の情報
インストレーションに使用した配布メディアのタイプ (CD-ROM または RIS)
インストールされたソフトウェア・サブセット
6.3.1 項ではインストレーション CDF のフォーマットと内容を示し,
6.3.2 項ではインストレーション CDF の例を示します。
6.3.1 CDF のフォーマットと内容
install.cdf
ファイルは,属性と値のペアのグループから構成されています。
属性と値は,等号 ( =
) で区切られています。
_item= は,属性と値のペアの論理グループを定義します。
スタンザ・ファイルのフォーマットについての詳細は,
stanza
(4)
表 6-2
に,install.cdf
ファイルの _item= を示します。
各項目内の属性と値のペアについての詳細は,付録 Aに記載しています。
表 6-2: install.cdf ファイルの項目
_item= | 内容 |
Inst_islinfo |
インストレーションに使用するメディア (CD-ROM,RIS,またはクローン) に関する情報と,インストレーション処理が開始される前のシステムの状態を伝えるその他のシステム情報 |
Inst_disklabel |
パーティションのサイズやオフセットなど,ディスクの構成情報 |
Inst_filesystem |
システム上で作成されたファイル・システムの数やタイプなど,ファイル・システムに関する情報。
作成されたファイル・システムとスワップ領域には,それぞれ
Inst_filesystem
項目が 1 つあります。
CDF には,/
( root ),/usr ,/var ,およびスワップ・デバイスを記述するために少なくとも 4 つの
Inst_filesystem
項目があります。 |
Inst_subsets |
インストールされたベース・ソフトウェア・サブセットのリスト。
ワールドワイド言語サポート (WLS) サブセットをインストールした場合,最大 2 つの
Inst_subsets
項目が追加で作成されています。
ハードウェア・リリースがインストールされたシステムを複製する場合は,他の
Inst_subsets
項目にハードウェアに固有のベース・サブセットが含まれています。 |
Inst_cinstall |
インストレーション処理に伝達されるターゲット・システムの構成情報。
Inst_cinstall
項目に指定された属性はすべてオプションです。
これらの属性に値が指定されていない場合,インストレーション処理は,システムの構成フェーズの中で対話形式でこの情報を要求します。 |
Inst_lsm_disks |
Logical Storage Manager (LSM) のプライベート・リージョンのパーティション情報 |
Inst_lsm_global |
プライベート・リージョンのサイズや LSM ホスト名などの,グローバル LSM 情報 |
例 6-1
に,install.cdf
ファイルの内容を示します。
各属性の説明と有効な値は,付録 A
に記載します。
各 _item 内での属性の順序には意味はありません。
例 6-1: インストレーション CDF の例
install: _item=Inst_islinfo _action=create media_type=CDROM srcloc=/ALPHA/BASE install: _item=Inst_disklabel g_size=1433600 c_offset=0 e_offset=1812528 b_size=401408 g_offset=663552 d_size=1148976 b_offset=262144 f_size=1148976 name=dsk1 h_size=2013328 d_offset=663552 a_size=262144 f_offset=2961504 c_size=4110480 _action=create h_offset=2097152 e_size=1148976 a_offset=0 install: _item=Inst_filesystem disk_number=1 disk_name=dsk1 controller_type=SCSI name=root partition=a controller_number=0 disk_type=RZ28M file_system_type=AdvFS _action=create install: _item=Inst_filesystem disk_number=1 disk_name=dsk1 controller_type=SCSI name=usr partition=g controller_number=0 disk_type=RZ28M file_system_type=AdvFS _action=create install: _item=Inst_filesystem disk_number=1 disk_name="in usr_domain" controller_type=SCSI name=var partition=g controller_number=0 disk_type=RZ28M file_system_type=AdvFS _action=create install: _item=Inst_filesystem disk_number=1 disk_name=dsk1 controller_type=SCSI name=swap1 partition=b controller_number=0 disk_type=RZ28M file_system_type=swap _action=create install: _item=Inst_filesystem disk_number=1 disk_name="in usr_domain" controller_type=SCSI name=i18n partition=g controller_number=0 disk_type=RZ28M file_system_type=AdvFS _action=create install: _item=Inst_subsets volume_name=DISC1 name=BASE ss_names=OSFADVFS540,OSFADVFSBIN540,OSFBASE540,OSFBIN540, OSFBINCOM540,OSFCDEDT540,OSFCDEMAIL540,OSFCDEMIN540, OSFCLINET540,OSFCMPLRS540,OSFFONT15540,OSFHWBASE540, OSFHWBIN540,OSFHWBINCOM540,OSFJAVA540,OSFKBDPCXAL540, OSFMITFONT540,OSFNETCONF540,OSFNETSCAPE540,OSFNFS540, OSFNFSCONF540,OSFOLDX11540,OSFPRINT540,OSFSER540, OSFSERPC540,OSFSYSMAN540,OSFTCLBASE540,OSFTKBASE540, OSFX11540,OSFXADMIN540,OSFXPRINT540,OSFXSYSMAN540 advflag=1 _action=create install: _item=Inst_subsets volume_name=DISC2 name=Worldwide_Language_Support ss_names=IOSPLCDEDT540,IOSPLCDEMAIL540,IOSPLCDEMIN540, IOSPLOLDX11540,IOSPLUCSBASE540,IOSPLX11540,IOSWWBASE540, IOSWWLAT2FONT100M540,IOSWWLAT9FONT100M540,IOSWWPRINT540, IOSWWSYSMAN540,IOSWWUCSBASE540,IOSWWX11540 advflag=1 _action=create install: _item=Inst_cinstall kernel_option=interactive timeset=yes lang_env=C password=Bp2xAe46zVpUo timezone=New_York locality=America _action=create hostname=taurus
この節では,ターゲット・システムでインストレーションのクローニングをセットアップして実行するための作業の要約を説明します。
適切なインストレーション CDF を作成または選択します (6.5 節)。
インストレーション CDF の変更。 複製されたシステムでのユーザの操作が最小限になるように,ホストおよびサイトに固有の属性を設定し,特定の属性を組み込みます (6.6 節)。
フル・インストレーションでも実行されるユーザ提供スクリプトまたは
config.cdf
ファイルを作成します (オプション) (6.7 節)。
配布のニーズに応じた適切な場所へ,インストレーション CDF をコピーします (6.8 節)。
ターゲット・システムでのフル・インストレーションの開始 (6.9 節)。
インストレーションのクローニングの各ステップの詳細を,以下の節で説明します。
6.5 [ステップ 1]: 適切な CDF の作成と選択
CDF を生成するためにモデル・システムをインストールする場合も,既存の CDF の中から選択してターゲット・システムを複製する場合も,複製するシステムのディスク構成,グラフィックス・アダプタ,フォント・サイズ,キーボード・タイプを考慮する必要があります。 ハードウェア構成が同じシステムを複製するのが理想的です。
モデル・システムで標準のフル・インストレーションを行う際 (クローニングではない),インストレーション・プロセスは,システムに備わっているグラフィックス・アダプタ,フォント・サイズ,キーボード・タイプに必要な必須ソフトウェア・サブセットを自動的に判断します。 その他のソフトウェア・サブセットはすべてオプションと見なされるため,個別に選択しない限りインストールされません。
システムのクローンを作成する際に,CDF はターゲット・システムにインストールされるソフトウェア・サブセットを定義します。 したがって,ターゲット・システムのグラフィックス・アダプタ,フォント・サイズ,キーボード・タイプが,CDF を作成したモデル・システムと異なっている場合,正しいソフトウェア・サブセットがインストールされないため,クローニングで作成したシステムが動作しないことがあります。
異なるシステムでも使用できるような汎用的なインストレーション CDF を生成するために,モデル・システムでフル・インストレーションを実行して,そのインストレーションで生成された CDF が異なるグラフィックス・アダプタ,フォント・サイズ,キーボードを備えたシステムでも使用できるように変更することができます。 これは,モデル・システムでは必要なくても,複製されるシステムに必要なグラフィックス・アダプタ,フォント・サイズ,キーボード・タイプをすべてサポートするソフトウェア・サブセットをインストールすることで実現できます。 このようなオプションのソフトウェア・サブセットをインストールすると,使用しないソフトウェアが各システムにロードされることになりますが,異なる構成のターゲット・システムのクローニングに使用できる汎用の CDF が作成できます。
ディスク構成,グラフィックス・アダプタ,フォント・サイズ,キーボード・タイプに関して,モデル・システムとターゲット・システム間で許容される相違点を,以下の項で説明します。
6.5.1 許容されるディスクの相違点
ターゲット・システムのハードウェア構成は,CDF の生成に使用したモデル・システムと同じである必要があります。 ただし,多少の違いは許されています。
/
,/usr
,swap1
,/var
,/usr/i18n
(/usr
の下のディレクトリでない場合),swap2
(割り当てられている場合) が存在するディスクは,ターゲット・システムと CDF を生成したモデル・システムの間でディスク構成が同じでなければなりません。
ディスク構成が同じとは,ディスク・タイプ (RZ1BB
など) とデバイス名 (dsk0
など) が一致しているということです。
これらのディスクのパーティション・テーブルが両方のシステムで同じでない場合,クローニング・プロセスは,ターゲット・システムのディスクを CDF に記述されているとおりに再構成します。
クローニング処理の際に使用されないディスクが,ターゲット・システム上で異なっていても問題はありません。
注意
クローニング・プロセスがターゲット・システムのディスクを再構成する場合,再構成されるディスクのユーザ・データが壊れる恐れがあります。
install.cdf
ファイルには,モデル・システムのディスク・タイプとディスク名が入っています。
ターゲット・システムのディスク・タイプとディスク名を調べるには,ターゲット・システムがコンソール・モード (>>>) のときに
show dev
コマンドを実行します。
モデル・システムで生成された CDF とターゲット・システムの間で許容される相違点の例を,表 6-3
に示します。
どちらのシステムにもディスクが 2 つありますが,ターゲット・システムの 2 番目のディスクが,RZ1CB
ディスクではなく
RZ1BB
ディスクになっています。
クローニングは,デバイス名が
dsk0
である最初の
RZ1BB
ディスクで実行され,このディスクは両システムで共通であるため,この違いは問題になりません。
表 6-3: モデル・システムとターゲット・システムの間で許容されるディスクの相違点
システム | ディスク・タイプ | デバイス名 |
モデル・システム |
|
|
ターゲット・システム |
|
|
ディスク構成の違いが他になければ,ターゲット・システムはモデル・システムで生成された CDF を使用できます。
/
,/usr
,/var
ファイル・システムとスワップ領域が
dsk1
になければ,デバイス名
dsk1
のディスク・タイプは異なっていてもかまいません。
ただし
dsk0
のディスク・デバイスが異なっていると,クローン・インストレーションは失敗します。
6.5.2 グラフィックス・アダプタの違い
ターゲット・システムのいずれかに,モデル・システムと異なるグラフィックス・アダプタがある場合,ターゲット・システムでクローニング処理を開始する前に,そのシステムに必要なグラフィックス・オプションをサポートするソフトウェア・サブセットをモデル・システムにインストールするか,install.cdf
ファイルに手作業で追加する必要があります。
モデル・システムのインストール中にソフトウェア・サブセットを選択する際,「Windowing Environment」カテゴリの中で,「X Servers for <name>」という単語列で始まるソフトウェア・サブセットを探してください。 <name> の部分は,ソフトウェア・サブセットがサポートするグラフィックス・オプションを示す名前に置き換えます。 使用できるグラフィックス・ソフトウェア・サブセットは,次のとおりです。
X Servers Base
-
デバイス独立の X サーバのサポート (常にインストールされる)
X Servers for PCbus
-
EISA バスと PCI バスのグラフィックス・アダプタをサポート
注意
本リリースのオペレーティング・システムでサポートされるグラフィックス・アダプタはすべて,『QuickSpecs』にリストされています。 ターゲット・システムに他社製のグラフィックス・アダプタを装着している場合,インストレーション・クローニング後にこのアダプタのサポートをインストールする必要があります。
モデル・システムとターゲット・システムのグラフィックス・アダプタを
表 6-4
に示します。
表 6-4: モデル・システムとターゲット・システムのグラフィックス・アダプタ
システム | グラフィックス・アダプタ |
モデル・システム | デバイスに依存しない X サーバ |
ターゲット・システム | QVision (PCbus) |
モデル・システムの構成に基づいて,インストレーション・プロセスは,ソフトウェア・サブセット
X Servers for Base
をモデル・システムの必須サブセットとして自動的にインストールします。
したがって,ソフトウェア・サブセット
X Servers for PCbus
は,モデル・システムではオプションです。
クローン・システムで正しいソフトウェアが確実に使用できるようにするには,モデル・システムに
X Servers for PCbus
ソフトウェア・サブセットもインストールしなければなりません。
インストールしないと,ターゲット・システムでグラフィックス機能が使用できなくなる恐れがあります。
注意
グラフィックス機能を備えていないシステムの CDF は,グラフィックス・ハードウェアを備えているシステムのクローニングには使用しないでください。 ソフトウェア・サブセットの中には,特に共通デスクトップ環境 (CDE) に関するものに,グラフィックス機能を備えているシステムには必須でも,グラフィックス機能を備えていないシステムにはロードされないものがあります。
モデル・システムにすべてのグラフィックス・ソフトウェアをインストールすると,グラフィックスを確実に動作させることができます。
ただし,すべてのソフトウェア・サブセットをインストールすると,選択したグラフィックス・ソフトウェア・サブセットのみをロードする場合よりも多くのディスク容量が必要になることに注意してください。
6.5.3 フォント・サイズの違い
モデル・システムのフル・インストレーションによって CDF を生成する場合は,ターゲット・システムに必要なフォント・サイズを考慮しなければなりません。 CDF で定義されたサイズとは異なるフォントがターゲット・システムに必要な場合,モデル・システムをインストールする際に,正しいフォント・ソフトウェア・サブセットをロードしてください。
DECwindows 75dpi Fonts と DECwindows 100dpi Fonts のどちらが必要かは,使用するグラフィックス・アダプタの解像度によって異なります。 すでにオペレーティング・システムがインストールされているシステムでは,この値は次のコマンドを入力して調べることができます。
# /usr/sbin/sizer -gr
解像度が 1024×768 以下の場合は,DECwindows 75dpi Fonts が必要です。 解像度がそれより高い場合は,DECwindows 100dpi Fonts が必要です。 複製するシステムの解像度がはっきりしない場合は,両方のフォント・ソフトウェア・サブセットを選択しておけば,正しいフォントが確実に使用できます。
複数のグラフィックス・アダプタを備えたシステムで,1024×768 以下の解像度のアダプタとそれより高い解像度のアダプタがある場合,DECwindows 75dpi Fonts と DECwindows 100dpi Fonts の両方が必要になります。
他にもフォントを含むソフトウェア・サブセットがありますが,フォント・サイズによってパッケージが異なるのは DECwindows フォントだけです。
表 6-5
に,モデル・システムとターゲット・システムで必要なフォント・サイズが異なる例を示します。
表 6-5: モデル・システムとターゲット・システムのフォント・サイズ
システム | グラフィックス解像度 | 必要なフォント・サイズ |
モデル・システム | 1024x768 |
DECwindows 75dpi Fonts |
ターゲット・システム | 1280x1024 |
DECwindows 100dpi Fonts |
モデル・システムをインストールする際は DECwindows 75dpi Fonts ソフトウェア・サブセットが必須であり,自動的にインストールされます。 DECwindows 100dpi Fonts ソフトウェア・サブセットはオプションです。 ターゲット・システムのインストレーションのクローニングに必要なフォントを用意するためには,このオプションのソフトウェア・サブセットもインストールする必要があります。
モデル・システムにすべてのフォント・ソフトウェア・サブセットをインストールすると,正しいフォントを確実に用意できます。
ただし,すべてのフォント・ソフトウェア・サブセットをインストールすると,選択したフォントのみをロードする場合よりも多くのディスク容量が必要になります。
6.5.4 キーボード・タイプの違い
モデル・システムのインストレーションによって CDF を生成する場合は,CDF を用いてクローニングを行うシステムのキーボード・タイプを考慮しなければなりません。 クローニングで作成されるシステムのキーボード・タイプが異なる場合は,モデル・システムをインストールする際に,正しいキーボード用のソフトウェア・サブセットをロードしてください。
オペレーティング・システムの現行リリースがすでにインストールされているシステムでキーボード・タイプを調べるには,次のコマンドを使用します。
# /usr/sbin/sizer -wk
表 6-6
に,モデル・システムとターゲット・システムのキーボード・タイプの例を示します。
表 6-6: モデル・システムとターゲット・システムのキーボード・タイプ
システム | キーボード・タイプ |
モデル・システム | PCXAL |
ターゲット・システム | LK411 |
モデル・システムの構成に基づいて,インストレーション・プロセスは,ソフトウェア・サブセット PCXAL Keyboard Support をモデル・システムの必須サブセットとして自動的にインストールします。 したがって,LK411 Keyboard Support のソフトウェア・サブセットはオプションです。 このオプションのソフトウェア・サブセットをインストールすると,モデル・システムには不要なソフトウェアもロードされることになりますが,CDF はターゲット・システムのクローニングに適したものになります。
モデル・システムにすべてのキーボード・ソフトウェア・サブセットをインストールすると,正しいキーボード・タイプを確実に用意できます。
すべてのキーボード・ソフトウェア・サブセットをインストールすると,選択したキーボード・ソフトウェア・サブセットのみをロードする場合よりも多くのディスク容量がモデル・システムに必要になることに注意してください。
6.6 [ステップ 2]: CDF の変更
install.cdf
ファイルを変更することで,フル・インストレーションで通常は必要とされるユーザからの応答をすべて省略することができます。
ホストおよびサイトに固有の属性を変更して,クローニング処理が完了したときにターゲット・システムが一意に識別されるようにしてください。
注意
入力ミスがある場合や,属性と値のペアが間違った項目に挿入された場合は,インストレーションのクローニング処理が失敗し,クローン・システムが動作しないことがあります。
属性と値のペアには,空白を含めることはできません。 空白によりデータ確認エラーが発生するためです。 空白はよく注意してすべて削除してください (特に行末の空白)。 属性の値をヌルにした場合は,等号 (
=
) の後に何も入力しないように注意してください。先頭に下線 (
_
) が付いた属性は変更したり削除してはなりません。 このような属性 (たとえば_action=create
) は,フル・インストレーションとクローン・インストレーションに必要な内部変数です。
/var/adm/smlogs
ディレクトリにあるオリジナルの
install.cdf
ファイルは,変更しないでください。
代わりに,install.cdf
をコピーして,そのコピーを変更してください。
オリジナルの CDF には初期のシステム・インストレーションに関する情報が格納されており,将来のトラブルシューティングに役立つことがあるので,この CDF は
/var/adm/smlogs
ディレクトリに残しておいてください。
以下の 3 つの項では,クローニングを自動で実行するための確認属性およびカーネル・オプション属性の設定方法と,クローン・システムが一意になるようにするためのホストおよびサイト固有属性の変更方法について説明します。
6.6.4 項
では,CDF を変更したときによく発生するエラーを防ぐ方法について説明します。
6.6.1 ユーザの操作を不要にするための CDF 確認属性の設定
特に指定しなければ,インストレーション・プロセスはユーザに対してプロンプトを表示し,install.cdf
ファイルを適用するかどうか確認を求めます。
この確認をオフにしてユーザの操作を不要にするには,CDF 確認属性をオフにします。
この属性は,CDF を用いたインストレーションのクローニング・プロセスを開始する前に,ユーザの確認が必要かどうかを決定します。
この機能は,CDF の
Inst_islinfo
項目の中の属性と値のペア,prompt=
を用いて設定します。
インストレーションのユーザ・インタフェースにはこの値を設定する機能がないので,この属性は必ず手作業で CDF に追加する必要があります。
有効な値は,表 6-7
のとおりです。
表 6-7: prompt= 属性として有効な値
値 | 説明 |
prompt=yes |
|
prompt=no |
CDF 確認のための質問を省略します。フル・インストレーション・プロセスが
install.cdf
ファイルを検出したときには,インストレーション・クローニング・プロセスが自動的に開始されます。
これにより,複製されるシステムでのユーザの操作は不要になります。 |
例 6-2
の
install.cdf
ファイルの抜粋では,Inst_islinfo
項目のどこに属性と値のペア
prompt=
をいれるかを示します。
例 6-2: install.cdf ファイルへの CDF 確認属性の追加
install: _item=Inst_islinfo prompt=no media_type=CDROM server=cosmos _action=create srcloc=/ALPHA/BASE
6.6.2 ユーザの操作を不要にするためのカーネル・オプション属性の設定
Inst_cinstall
項目の
kernel_option
属性は,最適化カーネルに組み込まれるカーネル構成要素のタイプを制御し,ユーザの操作が必要かどうかを制御します。
注意
ターゲット・システム上で構築される最適化カーネルには,モデル・システムのオプション・カーネル構成要素が自動的に組み込まれるわけではありません。 ただし,カーネル構築タイプが
interactive
に設定され,ユーザが意識的にそれらの構成要素を選択すれば,組み込まれます。
kernel_option
属性として有効な値は,表 6-8
のとおりです。
表 6-8: kernel_option= 属性として有効な値
値 | 説明 |
kernel_option=interactive |
対話形式でカーネルを構築し,ユーザがオプション・カーネル構成要素をメニューから選択できるようにクローニング処理を停止します。
モデル・システムと同じオプション・カーネル構成要素を選択するには,この値に
|
kernel_option=mandatory |
すべての必須カーネル構成要素でカーネルを構築します。 ユーザの操作は不要になります。 |
kernel_option=all |
すべての必須カーネル構成要素とすべてのオプション・カーネル構成要素でカーネルを構築します。 ユーザの操作は不要になります。 |
例 6-3
の
install.cdf
ファイルの抜粋では,Inst_cinstall
項目のどこに属性と値のペア
kernel_option=
を入れるかを示します。
この例では値を
mandatory
に設定し,必須コンポーネントでカーネルを構築し,ユーザの操作を不要にしています。
例 6-3: install.cdf ファイル内でのカーネル構築タイプの設定
install: _item=Inst_cinstall kernel_option=mandatory timeset=yes lang_env=C password=Bp2xAe46zVpUo timezone=New_York locality=America _action=create hostname=taurus
CD-ROM からフル・インストレーションを行う場合は,必ずこの項をお読みください。 RIS サーバからフル・インストレーションを行う場合も,この項を読むことをお勧めします。
ホスト名,地理上のロケーションおよび地域,日付,時刻など,ホストおよびサイト固有情報の設定は,RIS インストレーションの場合は必要ありません。 これらの値は,CDF で定義されている場合でも,RIS サーバから自動的に取得されるためです。 これは,RIS からのフル・インストレーションと RIS からのクローン・インストレーションの場合に該当します。
ただし,CD-ROM からスタンドアロン・システムをインストールする場合,これらの値はインストレーションのクローニングに用いる CDF によって決まります。 CDF でこれらの属性が定義されていない場合,ソフトウェアがロードされた後に行われる,インストレーションのクローニング処理のソフトウェア構成フェーズで,値を対話形式で入力する必要があります。 クローニング処理でのユーザの操作を不要にしたい場合は,これらの属性の値を定義する必要があります。
考慮すべきホスト固有属性としては,以下のものがあります。
ホスト名
システムのホスト名は,Inst_cinstall
項目の属性と値のペア
hostname=
に設定されています。
同じネットワーク上にあるモデル・システムおよびターゲット・システムのホスト名は一意でなければならないので,この値は変更が必要です。
hostname=
属性が CDF に記述されていない場合,またはこの属性の値がヌルの場合,クローン・インストレーション処理のソフトウェア構成フェーズで,インストレーション・プロセスはこの情報を要求するために対話形式の動作になります。
LSM 構成データが CDF に記述されている場合は,Inst_lsm_global
項目の
lsm_hostname=
属性には,hostname=
属性に指定されているホスト名と同じ値を設定してください。
適切なホスト名の選択についてのガイドラインが必要な場合は,『インストレーション・ガイド』を参照してください。
パスワード
password=
属性に暗号化された値が設定されている場合,複製されるシステムはすべてモデル・システムと同じ
root
パスワードになるので注意してください。
この値をヌルにしておくことにより,インストレーション・プロセスが対話形式で
root
パスワードの入力を求めるように設定することも可能です。
セキュリティ上の理由から,システム間でパスワードを共有することはお勧めできません。
CDF 内に暗号化パスワードを残しておく場合は,そのパスワードがモデル・システムのものであることを念頭に置き,モデル・システムが不正にアクセスされるのを防ぐために,パスワードを変更してください。
password=
属性の値は暗号化されていなければならないため,この値を手作業で設定することはできません。
モデル・システム上のパスワードを変更する必要がある場合,『インストレーション・ガイド』に記載されている正しいパスワードの選び方に関するガイドラインを参照してください。
考慮すべきサイト固有属性としては,以下のものがあります。
地理上のロケーションと地域
システムの地理上のロケーションとタイム・ゾーンは,Inst_cinstall
項目の属性と値のペア
locality=
および
timezone=
に設定されています。
オペレーティング・システムの現行バージョンがすでにインストールされているシステムでは,これらの属性に対する有効な値が
/etc/zoneinfo
ディレクトリに置かれています。
ロケーションおよびタイム・ゾーンを業界標準に準拠した形式に変更したため,このファイルも変更されています。
たとえば,locality=US
および
timezone=Eastern
は,現在では
locality=America
および
timezone=New_York
と表現されます。
どちらの表現も使用できますが,新しいスタイルの方をお勧めします。
タイム・ゾーンで分類された locality の値を指定する際は,そのロケーションに対して有効なタイム・ゾーンを選択する必要があります。
ロケーションと地域についての詳細は,『インストレーション・ガイド』に記載しています。
locality=
および
timezone=
属性が CDF に存在しない場合,またはこれらの属性に対する値がヌルの場合,インストレーション・プロセスはソフトウェア構成フェーズで対話形式になり,この情報の入力を要求します。
timezone=
属性なしで
locality=
属性のみが存在することもあります。
これは,地理上のロケーションがすべてタイム・ゾーンで分類されているとは限らないためです。
たとえば,地理上のロケーション
Japan
にはタイム・ゾーンがありません。
この場合,インストレーション・プロセスは日本にタイム・ゾーンがないことを認識し,タイム・ゾーンの要求を省略します。
日付と時刻
install.cdf
には日付や時刻のような動的な値は指定できませんが,複製されたシステムでも正確さを保つことはできます。
この機能は,以前にインストレーション・インタフェースまたは RIS クローン・インストレーション・プロセスのいずれかにより日付と時刻が設定されたことを
install.cdf
に示すことで実現されます。
日付と時刻が設定されたかどうかを示すために使用される方法は,Inst_cinstall
項目にある
timeset=
属性と値のペアです。
timeset
属性として有効な値を,表 6-9
に示します。
表 6-9: timeset 属性として有効な値
値 | 説明 |
timeset=no |
システムの日付と時刻がまだ設定されていないことを示します。 クローン・インストレーション・プロセスは,対話形式になり,この情報を要求します。 |
timeset=yes |
システムの日付と時刻がすでに設定されていることを示します。
したがって,システムの時刻が設定されていなくても, |
CDF を変更する際に,属性と値のペアの後に空白を付けるという誤りを犯すことがよくあります。 確認処理で,CDF 内の行末に空白が検出されると,次のようなメッセージが表示されます。
----------------------------------------- Some errors occurred: SetItmAttr: invalid attribute value kernel_option=all -----------------------------------------
このエラーが発生すると,インストレーション処理は停止します。
上記の例では,確認処理は,属性と値のペア
kernel_option=all
の
all
という単語の後に空白を検出しています。
訂正するには,CDF を編集して空白を削除し,CDF を元の位置に戻します。
そして,ターゲット・システム上でインストレーション・プロセスを再起動します。
6.7 [ステップ 3]: その他のユーザ提供ファイルの作成と配置 (オプション)
さらに進んで,モデル・システムでカスタマイズした機能をクローン・システム上に再現したいときには,preinstall
,postload
,postreboot
ファイルを作成します。
フル・インストレーションには,ユーザ提供ファイルを呼び出してフル・インストレーション中にカスタマイズを行う機能があります。
フル・インストレーションでのこれらのファイルの呼び出しについての詳細は,第 5 章
を参照してください。
モデル・システムからターゲット・システムへ構成を複製することもできます。
ターゲット・システムにインストールすると同時に完全な構成を行いたい場合は,第 7 章
を参照して,フル・インストレーションの際に
config.cdf
ファイルを作成して適用する方法を検討してください。
ユーザ提供ファイルと
config.cdf
ファイルは,install.cdf
ファイルと同じ位置と順番で検索されるため,これらの機能は簡単に組み合わせることができます。
構成のクローニングの利点を利用したり,ユーザ提供スクリプトを呼び出してクローン・システムをさらにカスタマイズするには,それぞれ
第 5 章
と
第 7 章
を参照してください。
クローン・インストレーション・プロシージャを続行する場合は,6.8 節
に進んでください。
6.8 [ステップ 4]: CDF を正しい位置にコピーする
次の処理ステップは,変更した CDF を正しい位置にコピーすることです。
install.cdf
ファイルは,ユーザ提供ファイルや構成のクローニングでの
config.cdf
ファイルと同じ位置に置く必要があり,同じ位置で検索されるため,コピー処理の実際のステップは,ここでは繰り返しません。
メディアの要件に基づいて,install.cdf
ファイルをどこに移動するかを決定し,表 6-10
に示す項に進んで,ファイルをその場所にコピーする手順を参照してください。
表 6-10: install.cdf ファイルを置く位置
検索順序 | 位置 | コピー手順の参照先 |
1 | ディスケット・ドライブ
floppy0
または
floppy1
のディスケット |
5.8.1 項 |
2 | RIS サーバ上の
/var/adm/ris/clients/sets
ディレクトリ内にある
profile_set
サブディレクトリ |
5.8.2 項 |
3 | 複製されるシステム上の
/var/tmp
メモリ・ファイル・システム (MFS) |
5.8.3 項 |
4 | 配布メディア (ローカル CD-ROM または抽出された RIS 領域) の
/isl
ディレクトリ |
5.8.4 項 |
6.9 [ステップ 5]: ターゲット・システム上でのフル・インストレーションの開始
メディアの要件に基づいて,install.cdf
ファイルの内容を検証して正しい位置にコピーしたら,『インストレーション・ガイド』の説明に沿ってターゲット・システム上でフル・インストレーションを開始します。
インストレーション・プロセスが
install.cdf
ファイルを見つけると,ターゲット・システム上でインストレーションのクローニング処理が開始されます。
フル・インストレーション・プロセスが,正しい位置と名前のユーザ提供ファイルまたは
config.cdf
を見つけると,これらのファイルも実行されます。
ターゲット・システム上でフル・インストレーションを開始し,フル・インストレーションのグラフィカルまたはテキストベースのインタフェースが代わりに表示された場合は,サポートされている 4 箇所のどこにも
install.cdf
ファイルがなかったということです。
この場合は,install.cdf
ファイルを
表 6-1
に示した場所のいずれかにコピーして,ターゲット・システム上でフル・インストレーションを再起動してください。