Advanced Server for UNIX (ASU) ソフトウェアは, Windows ユーザが UNIX ベースのファイル・システムとプリンタを共有として利用できるようにする,Tru64 UNIX のレイヤード・アプリケーションです。Windows ユーザは,ソフトウェアを変更しなくても共有に接続できます。一度接続すると,共有に関連付けられているファイル・システムとプリンタは,Windows ユーザのローカル・コンピューティング環境からは透過的な拡張のように見えます。
この章では,次の項目について説明します。
システム上で ASU ソフトウェアをインストール,構成,および実行すると,それらのシステムは ASU サーバとして構成されます。ASU サーバは,Windows ユーザに対し,UNIX ファイル・システムにはディスク共有としてアクセスし,プリンタにはプリンタ共有としてアクセスする機能を提供します。
ASU サーバは,Windows NT セキュリティ・モデルだけで,または Tru64 UNIX セキュリティ・モデルと Windows NT セキュリティ・モデルを組み合わせてサポートすることにより,ディスクおよびプリンタ共有に柔軟性のあるセキュリティ機能を提供します。省略時の設定では,ASU サーバは両セキュリティ・モデルを組み合わせて使用します。このセキュリティ・モデルでは,Windows ユーザは次に示すユーザ・アカウントを持つ必要があります。
ユーザが作成するドメイン・ユーザ・アカウント。ASU サーバは,このアカウントを使って Windows NT セキュリティを実現します。
ドメイン・ユーザ・アカウントを作成する際に自動的に作成される Tru64 UNIX ユーザ・アカウント。Tru64 UNIX オペレーティング・システム・ソフトウェアでは,このアカウントを使って,Tru64 UNIX セキュリティ・ポリシを実現します。
ASU サーバは,プリエンプティブ・マルチタスキング,シンメトリック・マルチプロセシングおよびタイムシェアリングなど,Tru64 UNIX オペレーティング・システムの諸機能との間での相互運用を提供します。Tru64 UNIX オペレーティング・システム・ソフトウェアと相互にやりとりする方法は,ASU レジストリと呼ばれるデータベースに格納されている値エントリに割り当てられている値によって決まります。
ASU サーバを,Windows ドメインで,プライマリ・ドメイン・コントローラ (PDC),バックアップ・ドメイン・コントローラ (BDC) またはメンバ・サーバとして 構成すると,表 1-1
に示す, Windows NT Advanced Server Version 4.0 のサービスを,Windows ユーザ,クライアントおよびサーバに対して提供します。
表 1-1: ASU サービス
サービス | 説明 |
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使用中のコンピュータで発生した管理上の警告について,指定したユーザおよびコンピュータに通知するために,ASU サーバおよび他の ASU サービスによって使用される。 |
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ドメインにあるコントローラの最新リストを維持管理し,要求があればリストを提供する。 |
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システム,セキュリティ,およびアプリケーション・イベントをイベント・ログに記録し,これらのログにリモート・アクセスできるようにする。 |
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ドメインまたは ASU サーバにログインするユーザのドメイン・ユーザ名とパスワードを確認する。 |
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ユーザが,ワークステーションからサーバ上の UNIX システム・アプリケーションを実行できるようにする。 |
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ディレクトリやディレクトリ内のファイルを他のワークステーションに複製する。 |
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ファイル,プリント,名前付きパイプを共有できるようにし,リモート・プロシージャ・コールをサポートする。 |
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ドメインのタイム・ソースとしてコントローラを識別する。他のコントローラは,クロックをタイム・サーバに同期させる。 |
ASU サーバおよびクライアント・ワークステーションは,Microsoft Windows および OS/2 オペレーティング・システムのネイティブのファイル共有プロトコルであるサーバ・メッセージ・ブロック (SMB) プロトコルを使って通信します。
クライアントは,ASU サーバに SMB 要求を送信します。SMB を受信すると,ASU サーバは,リクエストを等価な Tru64 UNIX システムのセマンティクスにマップし,クライアントの意図を解釈し,Tru64 UNIX システム機能を実行して,クライアントの要求に応えます。トランスポートやハードウェアなどのネットワーク・アーキテクチャの各層によって,信頼性の高い SMB のやりとりが保証されます。
ASU サーバは,協調して動作するシステム・プロセスを組み合わせたものです。
lmx.ctrl
プロセスは,ASU の マスタ制御プロセスであり,必ず実行されていなければなりません。UNIX ネットワーク・リスナ・サービスは,新しい ASU クライアント接続要求またはセッションを
lmx.ctrl
プロセスに渡します。lmx.ctrl
プロセスは,新しいクライアント・セッションを受け付け,それを
lmx.srv
プロセスに割り当てます。lmx.srv
プロセスが,実際にクライアントのニーズに合ったサービスを提供します。
図 1-1
は,ネットワーク・リスナ・サービス,lmx.ctrl
プロセス,lmx.srv
プロセス,およびクライアントとの関係について示しています。
図 1-1: ASU プロセス・モデル
起動される
lmx.srv
プロセスの数は,クライアント・セッションの数によって異なります。ASU プロセス・モデルでは,複数のクライアント・セッションが 1 つの
lmx.srv
プロセスで処理できるようになっています。lmx.ctrl
プロセスは,新しいクライアント・セッションを既存の
lmx.srv
プロセスでサービスするか,または新しい
lmx.srv
プロセスを起動するかを判断します。このようにクライアント・セッションを
lmx.srv
プロセスに割り振ることによって,複数のクライアントの要求が一度に処理できます。
1.3 ASU サーバ・アーキテクチャ
ASU サーバは,Tru64 UNIX オペレーティング・システム・ソフトウェアでサポートされる,イーサネット,FDDI,またはトークン・リング・ネットワーク・アダプタ上で NetBIOS プロトコルを使用して,ネットワークに SMB を送信します。NetBIOS プロトコルは,ネットワーク上にあるワークステーションの論理名の確立,ネットワーク上にあるワークステーションの論理名間でのセッションの確立,およびそれらの間における,信頼性の高いデータ転送のサポートを担当します。
ASU ソフトウェアでは,次のトランスポート機能に対して,NetBIOS プロトコルを提供するとともに使用します。
ローカルおよびワイド・エリア・ネットワーキング用にシステムに実装されている TCP/IP トランスポート・ソフトウェアで使用される NetBIOS over TCP/IP (knbtcp
)
ローカル・エリア・ネットワーキングだけで使用される NetBEUI トランスポート
図 1-2
に,ASU アーキテクチャを示します。網掛け部分の構成要素は,ASU ソフトウェアから提供されます。
図 1-2: ASU ネットワーク・アーキテクチャ
ASU ソフトウェアの管理には,次のものが利用できます。
ASU コマンド
net
コマンド
Tru64 UNIX コマンドおよびグラフィカル・ユーザ・インタフェース (GUI)
Windows GUI
注意
Windows 2000 ドメインで ASU サーバを構成する場合は,Windows 2000 インタフェースを使って ASU サーバを管理する必要があります。
ASU コマンドは Tru64 UNIX 形式のコマンドであり,ASU サーバおよびドメインに関する情報の表示,管理,および問題の対処を行うときに使用します。ASU ソフトウェアを実行しているシステム上で,Tru64 UNIX コマンド・プロンプトに対して ASU コマンドを小文字で入力します。ASU コマンドについての詳細は,『Advanced Server for UNIX インストレーション/管理ガイド』を参照してください。
1.4.2 net コマンド
net
コマンドは Windows 形式のコマンドであり,ASU サーバの情報表示や,共有,ドメイン・ユーザ・アカウント,グループの作成および管理を行う際に使用します。
net
コマンドを入力するときは,net
の後にキーワードとオプションを指定します。ASU ソフトウェアを実行しているシステム上で,コマンド・プロンプトに対して次の形式で
net
コマンドを小文字で入力します。
#
net keyword [/option]
net
コマンドについての詳細は,『Advanced Server for UNIX インストレーション/管理ガイド』を参照してください。
1.4.3 Tru64 UNIX コマンドおよび GUI
Tru64 UNIX のユーザ・コマンドとファイル・システム・コマンドおよび GUI を使用すれば,追加の ASU 関連オプションを指定して,共有およびドメイン・ユーザ・アカウントの作成と管理を行うことができます。Tru64 UNIX コマンドと GUI を使用して ASU サーバを管理する方法については,『システム管理ガイド』 を参照してください。
1.4.4 Windows GUI
次の Windows ベースの GUI を使用して,ASU サーバおよびドメインを管理できます。
サーバー マネージャは,共有に関する情報の表示や,共有の作成および管理を行います。
ドメイン ユーザー マネージャは,ドメイン・ユーザ・アカウントおよびグループに関する情報の表示や,ドメイン・ユーザ・アカウントおよびグループの作成と管理を行います。
ポリシー エディタは,ASU レジストリに関する情報の表示や,ASU レジストリの管理を行います。
イベント ビューアは,ASU 関連アプリケーション,セキュリティ,およびシステム・イベントを表示します。
Windows NT Server Version 4.0 および Windows 2000 Server で提供される Windows バージョンの GUI を使用して ASU サーバを管理することができます。別のタイプの Windows オペレーティング・システム・ソフトウェアを実行しているシステムについては,ASU ソフトウェアが提供する Windows バージョンの GUI をインストールする必要があります。Windows ベースの GUI のインストールについての詳細は,『Advanced Server for UNIX インストレーション/管理ガイド』を参照してください。