オペレーティング・システムを,現在のバージョンから新しいバージョンへアップデートする方法の説明 (2.1 節)
クラスタ・システムのオペレーティング・システムを次に新しいバージョンにアップデートする方法の説明 (2.2 節)
システムで Version 5.1 または Version 5.1A 以外のバージョンのオペレーティング・システムが稼働している場合に使用するアップデート・パス (2.3 節)
ユーザが制御できるアップデート・インストレーション機能の要約と,アップデート・プロセスにすでに組み込まれている機能 (2.4 節)
アップデート・インストレーションの動作概要 (2.5 節)
アップデート・インストレーション機能の説明やアップデート・インストレーションの動作概要に興味がない場合は,すぐに第 3 章へ進んでください。
そこでは,アップデート・インストレーションの実行方法を順を追って説明しています。
2.1 アップデート・インストレーションについて
アップデート・インストレーションでは,オペレーティング・システムを Version 5.1 または Version 5.1A から Version 5.1B にアップデートします。 アップデート・インストレーションでは,ディスク・パーティション,ファイル・システム,ファイル・カスタマイズ,ネットワーク環境,プリント環境,メール環境,ユーザ・アカウント,ユーザが作成したファイル,およびその他のシステム設定は保持されます。 アップデート・インストレーションが既存のファイルに与える影響の詳細については,付録 Eを参照してください。
ソフトウェア・パッチがオペレーティング・システムに正しく適用されている場合は,アップデート・インストレーションの前にパッチを削除する必要はありません。 アップデート・インストレーション・プロセスは,パッチを検出するように設計されており,アップデート・インストレーションの完了時に,オペレーティング・システムの新バージョンに対応する最新のパッチ・キットをインストールするよう勧めます。
オペレーティング・システムを構成するソフトウェア・サブセットのことを,ベース・ソフトウェア・サブセットといいます。 現在のバージョンのオペレーティング・システムにすでにインストールされているベース・ソフトウェア・サブセット,ワールドワイド言語サポート (WLS) ソフトウェア・サブセット,TruCluster Server Software サポート (TCR) ソフトウェア・サブセットは,アップデート・インストレーション中に Version 5.1B にアップデートされます。 さらに,Version 5.1B で新たに導入された必須のベース,WLS,TCR ソフトウェア・サブセットは自動的にインストールされます。
アップデート・インストレーション中に,オプション・ソフトウェア・サブセットを追加インストールすることはできません。
オプション・ソフトウェア・サブセットは,アップデート・インストレーションの完了後に,setld
コマンドを使用して追加インストールすることができます。
ベース・オペレーティング・システムをインストールするための
setld
コマンドの使用方法については,第 9 章を参照してください。
WLS ソフトウェアのインストールについては,『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』を参照してください。
レイヤード・プロダクトは,アップデート・インストレーションではアップデートされません。 レイヤード・プロダクトをアップデートするには,まず既存のバージョンを削除して,Version 5.1B で動作するように修正された新しいバージョンを再インストールする必要があります。 このような状況が存在する場合は,必要に応じて,アップデート・インストレーション・プロセスから通知されます。
ファイル・システムのタイプ,記憶位置,またはサイズを変更したい場合や,オプションのソフトウェアをインストールしたい場合は,アップデート・インストレーションは行わないでください。
アップデート・インストレーションではこのような機能は提供されていません。
2.2 クラスタのローリング・アップグレード
クラスタのローリング・アップグレードのステージの 1 つで,アップデート・インストレーションを行います。 クラスタのローリング・アップグレードは,クラスタの動作中に行います。 一度に 1 つずつメンバが切り離され,稼働状態に戻されます。 このときクラスタは,ベース・オペレーティング・システム,クラスタ・ソフトウェア,ワールドワイド言語サポート (WLS) ソフトウェアのバージョンが混在した状態をユーザに意識させないで動作を続けます。 サービスにアクセスしているクライアントには,ローリング・アップグレードが行われていることは分かりません。 Version 5.1A がインストールされ,運用されているクラスタは,Version 5.1B にローリング・アップグレードすることができます。
クラスタのローリング・アップグレード手順は,TruCluster Server の『クラスタ・インストレーション・ガイド』 に記載されています。 このマニュアルは,次の Web サイトで入手できます。
http://h50146.www5.hp.com/products/software/oe/tru64unix/manual/
クラスタに特有のコマンドをいくつか実行してクラスタのソフトウェア・アップグレードの準備を行った後で,手順の何箇所かで本書の 第 3 章 が参照され,クラスタの先行メンバに対してアップデート・インストレーションを実行します。 先行メンバとは,最初にアップグレードするクラスタ・メンバのことです。
クラスタのローリング・アップグレードの詳しい手順については,TruCluster Server 『クラスタ・インストレーション・ガイド』 を参照してください。
2.3 どのバージョンのオペレーティング・システムを Version 5.1B にアップデートできるか
アップデート・インストレーション・プロセスは,オペレーティング・システムを,Version 5.1 または Version 5.1A から Version 5.1B へアップデートします。
システムに Version 5.1 または Version 5.1A 以外のバージョンがインストールされている場合は,Version 5.1B になるまでアップデートを繰り返すか,フル・インストレーションを実行しなければなりません。
表 2-1
に,Version 5.1B へのアップデート・パスを示します。
installupdate
コマンドは,アップデート・インストレーション・プロセスを起動します。
現在のバージョンからアップデート・パスの次バージョンへシステムをアップデートするには,アップデート先のバージョンに対応した適切な配布メディアを所有している必要があります。
表 2-1: サポートされているアップデート・インストレーション・パス
現在インストールされているオペレーティング・システムのバージョン | 直接アップデート可能なバージョン |
Version 4.0 (Rev. 386)
|
Version 4.0B |
Version 4.0B (Rev. 564)
|
Version 4.0D |
Version 4.0E
|
Version 4.0F |
Version 4.0D
|
Version 4.0G |
Version 4.0D
|
Version 5.0 |
Version 4.0F
|
Version 5.0A |
Version 4.0G (Rev. 1530)
|
Version 5.1 |
Version 5.0A (Rev. 1094)
|
Version 5.1A |
Version 5.1 (Rev. 732)
|
Version 5.1B |
この他のバージョンのオペレーティング・システムの配布メディアが必要な場合は,各支店/営業所にご連絡ください。
2.3.1 オペレーティング・システムのバージョン番号とリビジョン・レベルの判断方法
システムにインストールされているオペレーティング・システムのバージョン番号とリビジョン・レベルを調べるには,次のコマンドを実行します。
# sizer -v Compaq Tru64 UNIX Version 5.1A (Rev. 1885); Fri Aug 23 10:27:47 EST 2002
このコマンド出力では,Version 5.1A
がオペレーティング・システムのバージョンで,1885
がリビジョン・レベルです。
2.4 アップデート・インストレーションの機能
アップデート・インストレーションは,グラフィカル・インタフェースとテキスト・ベース・インタフェースのどちらでも起動できます。
アップデート・インストレーションを起動したとき,システムがグラフィック機能を備えている場合は,グラフィカル・インタフェースが使用されます。
システムがグラフィック機能を備えていない場合は,テキスト・ベース・インタフェースが使用されます。
システムがグラフィック機能を備えているにもかかわらずテキスト・ベース・インタフェースを使用したい場合は,-nogui
フラグを使用することにより,テキスト・ベース・インタフェースを強制的に使用することもできます。
ただし,この逆はできません。
テキスト・ベース・インタフェースを強制的に使用する方法については,3.3 節を参照してください。
アップデート・インストレーションの機能は,ユーザが制御できる機能とアップデート・インストレーション処理に組み込まれている機能の 2 種類に分類できます。
アップデート・インストレーションの開始時に制御可能な機能とオプションを,表 2-2 に示します。
アップデート・インストレーション処理に組み込まれている機能を,表 2-3 に示します。
表 2-2に,ユーザがオン,オフを指定できるアップデート・インストレーションの機能を示します。
表 2-2: ユーザによる制御が可能なアップデート・インストレーションの機能およびオプション
ユーザ・オプション | 説明 | 参照先 |
自動アップデート・インストレーション | オプションのカーネル構成要素を選択したり,旧ファイルを保管する必要がない場合は,-u
フラグを指定してアップデート・インストレーションを起動して,ユーザの介入なしでアップデート・インストレーションを実行することができます。 |
3.3 節 |
カーネル構成要素オプション | オプションのカーネル構成要素を対話形式で選択できます。 | 3.5.3 項 |
旧ファイルの保管 | アップデート・インストレーションで自動的に旧ファイルが削除される前に,これらのファイルを保管することができます。 | 3.5.6 項 |
表 2-3に,アップデート・インストレーション処理に組み込まれている機能を示します。
表 2-3: アップデート・インストレーション処理の組み込み機能
組み込み機能 | 説明 | 参照先 |
矛盾するレイヤード・プロダクトの通知 | インストールされているレイヤード・プロダクトが新しいバージョンのオペレーティング・システムと互換性がない場合,ユーザに通知されます。 このようなレイヤード・プロダクトは,後で再インストールする必要があります。 | 3.5.1 項 |
アップデート・インストレーションの実行を妨げるレイヤード・プロダクトの削除 | アップデート・インストレーションの実行を妨げているレイヤード・プロダクトを,ユーザに確認してから削除します。 | 3.5.1.2 項 |
ベース・オペレーティング・システム,TCR,WLS ソフトウェアの,新しいバージョンへのアップデート | 既存のインストール済みサブセットをアップデートし,新しいバージョンのオペレーティング・システムで新たに導入された必須サブセットをインストールします。 | 3.5.2 項 |
変更されたファイル・タイプの検索 | 変更されたファイル・タイプを検索します。 ファイル・タイプの矛盾が見つかると,アップデート・インストレーションを続行できないことがあります。 | 3.5.5 項 |
ディスク・スペースの確保 | アップデート・インストレーションを実行するためのファイル・スペースが不足している場合に,不要なソフトウェア・サブセットや,.PreUPD
ファイル,core
ファイル,および余分なカーネル・ファイルを削除してディスク・スペースを確保することができます。 |
3.5.7 項 |
ユーザ提供ファイルで指定された命令の実行 | ユーザ提供スクリプト,プログラム,または実行可能ファイルを作成して正しい場所に移動しておくことによって,アップデート・インストレーションをカスタマイズできます。 アップデート・インストレーション・プロセスが,事前に定義されサポート対象である場所で,正しい名前のファイルを検出すると,そのファイルが実行されます。 | 『インストレーション・ガイド -- 上級ユーザ編』 |
図 2-1 に,アップデート・インストレーション処理の流れを示します。
アップデート・インストレーション処理がインストール済みのハードウェア・プロダクト・キットを検出すると,ハードウェア・プロダクト・キットが新しいバージョンのオペレーティング・システムと互換性があるかチェックされます。 ハードウェア・プロダクト・キットと,そのアップデート方法については,『New Hardware Delivery Release Notes and Installation Instructions』を参照してください。
分析フェーズ では,アップデート・インストレーションは,次の項目に関してシステムを分析します。
分析フェーズ中には,状況を改善するために 1 つ以上のアクションが取られる場合があります。 どのアクションが適切かは,ユーザが判断します。 アップデート・インストレーション・プロセスが分析フェーズ中に問題を検出した場合,ユーザはその問題を修正するか,システムに変更を加えないでアップデート・インストレーションを中止するかを選択できます。
アップデート・インストレーションでは,次の変更がリアル・タイムに行われます。
インストレーションの妨げとなるレイヤード・プロダクトの削除
ディスク・スペースのクリーンアップによる空きディスク・スペースの増加
古くなったファイルの保管と削除
たとえば,矛盾しているソフトウェアが検出され,ユーザがそのソフトウェアの削除を選択した場合,矛盾しているソフトウェアは分析ステップの完了時には削除されています。 このため,アップデート・インストレーションを取り消した場合でも,このソフトウェアは現在のシステムでは利用できなくなります。
アップデート・インストレーションは,すでにインストールされているオペレーティング・システム・ソフトウェア・サブセットに対応する,新しいバージョンのオペレーティング・システム・ソフトウェア・サブセットをインストールします。
さらに,新しいバージョンのオペレーティング・システムで新規に導入された必須ソフトウェア・サブセットが,すべて自動的にインストールされます。
オプションのソフトウェア・サブセットは,以前にインストールされている場合のみロードされます。
ソフトウェア・サブセットがすべて正常にインストールされ,確認処理が終了すると,以前のバージョンでカスタマイズされていた保護されたシステム・ファイル (.new..
プレフィックスを持つファイル) は,新しいバージョンのオペレーティング・システムで提供されるファイルに自動的にマージされます。
以前のバージョンのハードウェア・キットがインストールされている場合,新しいバージョンのオペレーティング・システムと互換性のあるバージョンのハードウェア・プロダクト・キットがここでロードされます。 ハードウェア・プロダクト・キットのインストレーション処理についての詳細は,『New Hardware Delivery Release Notes and Installation Instructions』を参照してください。
以前のバージョンのオペレーティング・システムに WLS ソフトウェアがインストールされていた場合,新しいバージョンの WLS サブセットがここでロードされます。
新しいバージョンのオペレーティング・システムとともに出荷された汎用カーネル (/genvmunix
) を使用してシステムがリブートされます。
ステップ 3 でロードされた,新しいバージョンのオペレーティング・システムが構成されます。
新しいバージョンの WLS ソフトウェア・サブセットがロードされた場合,この時点で構成されます。
新しいバージョンのハードウェア・プロダクト・キットが構成されます。 詳細については,『New Hardware Delivery Release Notes and Installation Instructions』を参照してください。
マシン固有のカーネルが,この時点で構築されます。 分析フェーズでオプションのカーネル構成要素を選択した場合は,オプションの構成要素もこのカーネルに組み込まれます。
新しく構築された最適化カーネルでシステムがリブートされます。 アップデート・インストレーションが完了し,アップデートされたシステムにログインすることができます。
アップデート・インストレーションは,通常,45 〜 120 分で完了します。 ただし,DS シリーズや GS シリーズなどの新しい高速のマシンでは,少し短縮されます。 実際にかかる時間は,プロセッサ・タイプ,アップデートされるソフトウェア・サブセットの数,アップデート・インストレーションに使用するメディアのタイプ (CD-ROM あるいはリモート・サーバ),CD-ROM ドライブの速度 (CD-ROM を使用する場合),ネットワークの通信量 (リモート・サーバを使用する場合) によって左右されます。