本章では,システム・ハードウェアの管理に役立つ利用可能な SysMan Menu タスクについて説明します。ユーティリティは,シングル・システムでもクラスタ・システムでも使用できます。SysMan Menu は,別のオペレーティング環境からリモートで実行したり,Web アプリケーションとして起動したりできます。
本章では,SysMan Station を使ってハードウェアのステータスを監視し,ハードウェア管理ユーティリティを起動する方法を説明します。SysMan Station は,共通デスクトップ環境 (CDE) または他の X Window ユーザ環境で動作する X Window に準拠するグラフィカル・ユーザ・インタフェース (GUI) です。
この章では,次の項目について説明します。
次の SysMan Menu ハードウェア・タスクの使い方
ハードウェア階層の参照方法 (2.1.1 項)
クラスタの参照方法 (2.1.2 項)
デバイス情報の参照方法 (2.1.3 項)
CPU (Central Processing Unit) 情報の参照方法 (2.1.4 項)
SysMan Station を使ってコンポーネントとデバイスを検出して監視する方法 (2.2 節)
この章の情報と例は,Tru64 UNIX のコマンド行または CDE から SysMan Menu と SysMan Station を起動して使う方法を示します。Web など,他のオペレーティング環境を使う方法については,『システム管理ガイド』を参照してください。
ほとんどのハードウェア管理の操作に root ユーザの特権が必要ですが,SysMan の DOP (Division of Privileges) 機能を用いて,その特権を root
以外のユーザに割り当てることもできます。詳細は,
dop
(8)
SysMan Menu は次のサービス・タスクも提供します。
CPU の管理
OLAR (Online Addition/Replacement) ポリシー情報
これらの機能の詳細は,
hwmgr_ops
(8)2.1 SysMan Menu ハードウェア・タスクの使用
SysMan Menu タスクには,hwmgr
コマンドを実行した際にそのコマンド行から使用できる多くのハードウェア管理オプションがあります。hwmgr
コマンドとそのオプションについては,第 3 章
にさらに詳細な説明があります。コマンド構文とオプションすべてのリストは,
hwmgr
(8)
『システム管理ガイド』 で説明したように SysMan Menu を起動すると,メニューの [ハードウェア] ブランチでハードウェア管理オプションが使えるようになります。このブランチをダブルクリックして開くと,次のタスクが表示されます。
ハードウェア階層の参照
クラスタの参照
デバイス情報の参照
CPU (Central Processing Unit) 情報の参照
これらのタスクを選択すると,以降の項で説明する基本的なハードウェア管理タスクが起動されます。OLAR (Online Addition/Replacement) についての説明は,『Managing Online Addition and Removal』を参照してください。
次のオプション・ボタン (端末では選択肢) は,すべてのタスクで使用できます。
再実行 - コマンドを再度実行し,表示された情報を更新します。
停止 - コマンドを停止します。[再実行] オプションを使用すると情報が更新され,[了解] を選択すると終了します。
了解 - タスクを終了し,ウィンドウを閉じます。
ヘルプ - リファレンス・ページを表示します。
[ハードウェア階層の参照] タスクは,/sbin/hwmgr view hierarchy
コマンドを起動します。次の例は,クラスタの一部分として構成されていない単一の CPU システムによる出力を示したものです。
ハードウェア階層の参照 HWID: hardware component hierarchy --------------------------------------------------- 1: platform AlphaServer 800 5/500 2: cpu CPU0 4: bus pci0 5: connection pci0slot5 13: scsi_adapter isp0 14: scsi_bus scsi0 30: disk bus-0-targ-0-LUN-0 dsk0 31: disk bus-0-targ-4-LUN-0 cdrom0 7: connection pci0slot6 15: graphics_controller trio0 9: connection pci0slot7 16: bus eisa0 17: connection eisa0slot9 18: serial_port tty00 19: connection eisa0slot10 (以下,省略)
このタスクを使用して,システムやクラスタ全体のハードウェア階層を表示します。この階層には,CPU から,ディスクやテープなどの個々の周辺機器までの,各バス,コントローラ,およびシステム上のその他のコンポーネントが示されます。デバイスの多いシステムやクラスタでは,出力が長くなり,スクロールしなければ出力の先頭部分にあるコンポーネントが見えないこともあります。
この出力には,コンポーネントのさらに詳細な情報の調査やデバイスの追加または削除など,ハードウェア管理操作を実行するために
hwmgr
コマンド・オプションに指定できるコンポーネント情報が含まれているので役に立ちます。出力される階層に示される次のような項目を,コマンドへの入力として使用できます。
HWID - ハードウェア識別子 (または
id
)。階層内の個々のエントリに振られる一意の整数値。
コンポーネント名。PCI (Peripheral Component Interconnect) バスを表す
pci
など。
コンポーネントのベース名。後ろに,コンポーネントを識別する整数が続きます。たとえば,cdrom0
はそのコンポーネントのデバイス特殊ファイル (/dev/disk/cdrom0
) に対応します。デバイス特殊ファイル名についての詳細は,1.5 節
に記載されています。
物理位置の属性。デバイスのアドレスまたはパスを表します。たとえば,bus-0-targ-0-LUN-0
です。0/0/0
と出力されることもありますが,次のような情報を表しています。
scsi-0
はバスを表しており,対象コンポーネントが取り付けられているバスの番号を示す。
targ-0
は,バス上での対象コンポーネントのターゲット番号を示す。この場合は,バス 0 の最初のターゲットであることを表しています。
LUN-0
は,論理ユニット番号 (LUN) を示す。この場合は,バス 0 におけるターゲット 0 の最初の論理ユニット番号であることを表しています。
デバイスのハードウェア・カテゴリ。bus
や
ide_controller
など。
スロットへの接続。pci0slot5
や
eisa0slot9
のように,デバイスのスロット番号を表します。
バス,コントローラ,およびコンポーネントの関係。たとえば,表示例にある以下の行は,バス
scsi_bus scsi0
上のコントローラ
scsi_adapter isp0
に接続された 2 台のディスク・デバイスを表しています。
13: scsi_adapter isp0 14: scsi_bus scsi0 30: disk bus-0-targ-0-LUN-0 dsk0 31: disk bus-0-targ-4-LUN-0 cdrom0
同じコンポーネントが (共用バスなどで) 共用されている場合,階層に 2 回以上現れることがあります。その場合,それぞれが異なる ID で表示されます。共用デバイスの例を,3.4.7 項に示します。
特定のハードウェア・コンポーネントに対する操作に焦点を絞りたい場合は,view hierarchy
コマンドの出力情報を,hwmgr
コマンドで次のように使用します。次のコマンドは,HWID (id
) が 30 であるコンポーネントについて,コンポーネント属性
device_starvation_time
の値を取得する例です。コンポーネント 30 は,例に示した階層内で bus 0,target 0,LUN 0 の位置にある SCSI ディスクです。
# /sbin/hwmgr get attribute -id 30 \ -a device_starvation_time 30: device_starvation_time = 25 (settable)
この出力は,device_starvation_time
属性の値が 25 であることを示しています。ラベル
(settable)
は,これが構成可能な属性であり,次のようなコマンド・オプションで設定できることを示します。
# /sbin/hwmgr set attribute -id 35 \ -a device_starvation_time=30
コンポーネント属性の値を変更する前に,変更による影響を理解しておく必要があります。デバイスに付属のドキュメントを参照してください。
2.1.2 クラスタの参照
[クラスタの参照] タスクを選択すると,/sbin/hwmgr view cluster
コマンドが起動され,次のような出力が SysMan Menu のウィンドウ (端末の場合は画面) に表示されます。
クラスタの参照 /sbin/hwmgr -view cluster を開始しています... /sbin/hwmgr view cluster を実行しています: 金 5月 21 13時42分37秒 JST 1999 Member ID State Member HostName --------- ----- --------------- 1 UP rene (localhost) 31 UP witt 10 UP rogr
このコマンドをクラスタのメンバになっていないシステムで実行しようとすると,次のようなメッセージが表示されます。
hwmgr: This system is not a member of a cluster.
クラスタの特定メンバに対する操作に焦点を絞りたい場合は,次の例のように,hwmgr
コマンドで
Member ID
と
HostName
を指定できます。
# /sbin/hwmgr scan scsi -member witt
[デバイス情報の参照] タスクを選択すると
/sbin/hwmgr view devices
コマンドが起動され,出力が SysMan Menu のウィンドウ (端末の場合は画面) に表示されます。
このオプションを使って,システムまたはクラスタ全体のコンポーネント情報を表示させます。出力には,システムに接続されたすべてのコンポーネントおよび擬似デバイス (/dev/kevm
など) が表示されます。次に示すのは,クラスタを構成していない,小型の単一 CPU システムの出力例です。
デバイス情報の参照 /sbin/hwmgr -view devices を開始しています... /sbin/hwmgr view devices を実行しています: 金 5月21日 14時20分08秒 JST 1999 HWID: Device Special File Mfg Model Location Name ------------------------------------------------------------------ 3: /dev/kevm 28: /dev/disk/floppy0c 3.5in floppy fdi0-unit-0 30: /dev/disk/dsk0c DEC RZ1DF-CB(C)DEC bus-0-targ-0-LUN-0 31: /dev/disk/cdrom0c DEC RRD47 (C)DEC bus-0-targ-4-LUN-0
このコマンドが対象とするコンポーネントは,属性
dev_base_name
を持つとともにデバイス特殊ファイル (DSF) に対応している,階層内のエンティティすべてです。このコマンドからは,次の情報が出力されます。この情報を
hwmgr
コマンドで使用して,そのデバイスに対するハードウェア管理操作を実行します。
ハードウェア識別子 (HWID または
id
)。階層内の個々のエントリに振られる一意の整数値。
DSF 名。/dev/disk/cdrom0c
など。ディスク・デバイスの場合には,ディスク領域全体を表す
c
パーティションのデバイス特殊ファイル名になります。テープ・デバイスの場合には,デバイスの省略時密度に対応するデバイス特殊ファイル名を表します。これらの名前については,1.5 節を参照してください。
製造元の型番を示す型式,または
3.5in floppy
のような一般的な名前。
デバイスの物理位置。たとえば,SCSI
bus-0-targ-0-LUN-0
です。0/0/0 と出力されることもありますが,次のような内容を表しています。
bus-0
- 対象コンポーネントが接続されているバスの番号。ここでは 0 です。
targ-0
- バスにおけるこのコンポーネントのターゲット番号。この場合は,バス 0 の最初のターゲットを表しています。
LUN-0
- 論理ユニット番号。この場合は,バス 0 の最初の論理ユニット番号を表しています。
前に示した出力例では,フロッピィ・ディスク・インタフェース
fdi
に接続されているフロッピィ・ディスクも,デバイス 0,ユニット 0 として示されています。
これらの情報を
hwmgr
コマンドに指定することにより,デバイスに対するハードウェア管理操作を実行します。次の例は,あるディスクに対して,それに対応するデバイス特殊ファイルを指定し,そのディスクのランプ (LED) を 30 秒間点滅させるコマンドの例です。
# /sbin/hwmgr locate -id 60 -time 90 hwmgr: Locate request successfully initiated
前記のコマンドは,特定の SCSI デバイスでのみ動作し,HSV110 のようなマネージド・アレイの一部を構成するディスクに対しては動作しないことがあります。ただし,ストレージ・アレイは通常,故障したディスクを検出すると,故障を知らせるために黄色または赤色のディスク・エラー・ライトを点滅させます。
2.1.4 CPU 情報の参照
[CPU (Central Processing Unit) 情報の参照] タスクを選択すると,/usr/sbin/psrinfo -v
コマンドが起動され,出力が SysMan Menu のウィンドウ (端末の場合は画面) に表示されます。このオプションを使って,CPU の状態情報を表示させます。シングル・プロセッサ・システムの場合,出力は次のようになります。
/usr/sbin/psrinfo /usr/sbin/psrinfo -v を開始しています... /usr/sbin/psrinfo -v を実行しています: 金 5月21日 14:22:05 EDT 1999 Status of processor 0 as of: 05/21/99 14:22:05 Processor has been on-line since 05/15/1999 14:42:28 The alpha EV5.6 (21164A) processor operates at 500 MHz, and has an alpha internal floating point processor.
SysMan Station は,さまざまなウィンドウ環境や Web ブラウザで動作するグラフィカル・ユーザ・インタフェースです。SysMan Station の起動と使用の方法については,『システム管理ガイド』 とオンライン・ヘルプを参照してください。ハードウェア管理に役立つ SysMan Station の機能には次のものがあります。
SysMan Station は,システムとコンポーネントの現在の状態を表示します。表示をカスタマイズして,システムとクラスタの中で最も関心のある部分に集中することができます。システムにハードウェアの障害が発生すると,GUI で表示されるアイコンの色が変わります。システムは階層表示され,CPU からテープ・デバイスなどの個々のコンポーネントまで,システム全体の位置関係が示されます。バス,コントローラ,およびアダプタのレイアウトは論理アドレス付きで表示されます。それぞれのバスまたはコントローラに接続されているコンポーネントと,そのスロット番号も表示されます。こうした情報は,コマンド・プロンプトから
hwmgr
コマンドを実行する場合に便利です。
コンポーネントを選択して,そのデバイスの詳細な属性を表示させることができます。たとえば,SCSI ディスクを選択してマウスの右ボタンを押すと,オプションのメニューが表示されます。このメニューには,選択したディスクのコンポーネント・プロパティを表示させるオプションがあります。このオプションを選択すると,そのコンポーネント・プロパティの詳細なテーブルが表示されます。この操作は,次の出力例 (一部省略) からもわかるように,hwmgr
コマンドを使用したのと同じことです。
# hwmgr get attr -id 30 30: name = SCSI-WWID:0c000008:0060-9487-2a12-4ed2 category = disk sub_category = generic architecture = SCSI phys_location = bus-0-targ-0-LUN-0 dev_base_name = dsk0 access = 7 capacity = 17773524 block_size = 512 open_part_mask = 59 disk_part_minor_mask = 4294967232 disk_arch_minor_mask = 4290774015 display truncated
デバイスを選択するとともに,必要なコマンドを起動することによって,デバイスの構成や日常的な管理操作を行うことができます。たとえば,ネットワーク・アダプタを選択して,その設定を構成したり,ドメイン・ネーム・サーバ (DNS) の構成といった関連作業を実行します。イベント・ビューアを起動すれば,選択したコンポーネントに関連するシステム・イベント (エラーなど) がポストされているかどうかを調べることができます。
リモート管理オプションについての詳細は,『システム管理ガイド』を参照してください。