14    UUCP ネットワーク・コマンド

この章では,UNIX 間コピー・プログラム (UUCP) について説明します。 UUCP を使用すると,次の処理を行うことができます。

UUCP についての補足情報は, uucp_intro(7) リファレンス・ページを参照してください。 UUCP システム管理およびタスクの概要については,『ネットワーク管理ガイド』を参照してください。

UUCP を使用すれば,非同期式ハード配線回線,ネットワーク,または電話回線 (両端でモデムを使用) を,次のものに接続することができます。

14.1    UUCP パス名規約

UUCP パス名は,次に示す例外を除いて,使用するオペレーティング・システムの規約に準拠します。

14.2    UUCP をサポートするホストの検索

ローカル・ホストから UUCP コマンドを使用してリモート・ホストと通信するには,UUCP プロトコルをサポートしているホストを確認しなければなりません。 ローカル・ホストから UUCP コマンドを使用して通信できるすべてのホストのリストを表示するには,UUCP uuname ユーティリティを使用します。 次に,uuname コマンドを使用した場合の出力例を示します。

% uuname
elvis
fab4
Y107
 

この例では,3 つのリモート・ホストが,UUCP を使用してローカル・ホストにアクセス可能であることを示しています。 ローカル・ホストを識別するには,-l オプションを指定して uuname コマンドを使用します。 たとえば,次のように入力します。

% uuname -l
music
 

互換性にあるホスト間で UUCP コマンドを使用することにより,ホスト music 上のユーザは,ホスト elvisfab4 または Y107 との間でファイルの送受信を行うことができます。

詳細は uuname(1) リファレンス・ページを参照してください。

14.3    リモート・ホストへの接続

UUCP コマンドを実行する前に,ローカル・ホストをリモート・ホストに接続しなければなりません。 リモート・ホストに接続するには,次の 3 のコマンドを使用することができます。

注意

リモート接続は,ローカル・ホストおよびリモート・ホスト上のセキュリティ機能の影響を受けます。 詳細についてはシステム管理者に問い合わせてださい。

14.3.1    cu を使用したリモート・ホストへの接続

cu コマンドとそのオプションを使用すると,リモート・ホストに接続して,ログインした後,ローカル・ホストからリモート・ホスト上でタスクを実行することができます。 2 つのホスト間で切り換えを行うことによって,両方のホスト上でタスクを実行することができます。 ローカル・ホストとリモート・ホストが同じオペレーティング・システムを使用している場合には,ローカル・ホストからリモート・ホストにコマンドを入力することもできます。

14.3.1.1    cu を使用した名前によるリモート・ホストへの接続

次の手順は,cu コマンドを使用して,ローカル・ホスト earth からリモート・ホスト moon に接続し,moon にログインして,そこからコマンドを入力する方法を示しています。

  1. ローカルのシステム・プロンプトで,次の cu コマンドを入力する。

    メッセージが表示されて接続が確認されます。

    earth% cu moon
    Connected
     
    

    リモート・ホストのログイン・プロンプトが表示されます。

    リモート・ホストによっては,ログイン・プロンプトが表示されるまでに,Return キーを何回か押さなければならない場合があります。

  2. ログイン・プロンプトからホスト moon にログインする。

    ホスト moon のシステム・プロンプトが表示されます。

  3. ホスト moon がサポートするコマンドを入力する。

    たとえば,/usr/geog/crater/earthside ディレクトリの内容を表示するには,システム・プロンプトで次のコマンドを入力します。

    moon% ls /usr/geog/crater/earthside
    copernicus.dat
    tycho.dat
    moon% 
     
    

注意

この例は,すべての cu 接続で使用できるわけではありません。 簡単な一般例として示しています。 詳細については,システム管理者に問い合わせてください。

リモート・ホストにログインした後は,リモート・ホストとローカル・ホストは同時に実行しているため,両ホストの間で切り換えを行うことができます。 ローカル・ホストに戻ってコマンドを入力するには,コマンドの前にチルダと感嘆符 (~!) を付けて入力するか,あるいはローカル・ホストのプロンプトが表示されるのを待ってから,コマンドを入力してください。 リモート・ホストに戻るには,Ctrl/D を押します。

14.3.1.2    cu を使用した直接接続のリモート・ホストの指定

直接接続のリモート・ホストに接続するには,cu コマンドで -l オプションを使用して,2 台のコンピュータを接続しているハード配線回線名を指定してください。 このような回線名のほとんどは,標準デバイス名 tty のバリエーションです。

-l オプションを指定して cu コマンドを実行し,名前のわからない (ただしハード配線デバイス ttyd0 を使用する) リモート・ホストに接続するには,次のように入力します。

earth% cu -lttyd0
Connected
 

接続が確立されると,リモート・ホスト moon にログインして,コマンドを実行することができます。 14.3.1.1 項の手順を参照してください。

ローカル・ホストに戻るには,コマンドの前にチルダと感嘆符 (~!) 付けてを入力するか,あるいはローカルのシステム・プロンプトが表示されるのを待ってから,コマンドを入力してください。 リモート・ホストに戻るには,Ctrl/D を押します。

注意

-l オプションを使用し,さらにリモート・ホスト名を入力しても,エラー・メッセージは表示されません。 この場合 cu は,-l オプションで指定された回線を無視して,要求されたホスト名で最初に接続可能な回線に接続しようとします。 接続できても,希望するホストではないことがあります。

14.3.1.3    cu を使用した電話回線によるリモート・ホストへの接続

リモート・ホストが UUCP を介してローカル・ホストと通信できるようにセットアップされていない場合には,cu を使用すると,電話回線を介してリモート・ホストに接続できます。 この接続のためには,次の条件が満たされていなればなりません。

次の例は,cu コマンドを使用して,外線の電話番号が 1-612-555-6789 であるリモート・ホストに接続する方法を示しています。 -s オプションで,伝送速度 300 ボーを指定します。 外線番号の 9 をダイアルする必要がある場合には,ローカルのシステム・プロンプトから,次のように cu コマンドを入力します。

earth% cu -s300 9=16125556789
Connected
 

接続が確立されたら,リモート・ホストにログインして,コマンドを実行することができます。 14.3.1.1 項で説明している手順を参照してください。

ローカル・ホストに戻るには,コマンドの前にチルダと感嘆符 (~!) を付けて入力するか,あるいはローカルのシステム・プロンプトが表示されるのを待ってから,コマンドを入力してください。 リモート・ホストに戻るには,Ctrl/D を押してください。

-s オプションを使用して伝送速度を指定しない場合は,省略時の設定により,/usr/lib/uucp/Devices のデータから適切な速度が選択されます。

セキュリティ機能を追加する場合には,-n オプションを使用して,電話番号の入力を求めるプロンプトを表示させます。 このオプションは,ps コマンドによる電話番号の表示を抑制します。 -n オプションを指定しない場合には,入力した番号を cu コマンドで表示します。

表 14-1 に,cu コマンドのオプションとその説明をまとめます。 詳細は, cu(1) リファレンス・ページを参照してください。

表 14-1:  cu コマンドのオプション

オプション 説明
-sspeed リモート・ホストへのデータ伝送速度を指定する。 ほとんどの作業では,UUCP のインストレーション時に設定され,/usr/lib/uucp/Devices のデータに基づく省略時の速度で十分である。
-e | -o リモート・ホストに送信するデータのパリティに対し,偶数の場合には -e,奇数の場合には -o を指定する。
-h -h を指定すると,ローカル・エコーをエミュレートして,端末が半二重モードに設定されている他のホストへの呼び出しをサポートする。
-d -d を指定すると,診断トレースを出力する。
-n -n を指定すると,cu により電話番号の入力を求めるプロンプトを表示する (セキュリティ機能の追加)。
-lline

2 台のコンピュータ間での通信用のデバイス (回線) 名を指定する。 省略時の設定は,非同期のハード配線回線,またはモデムなどの自動ダイアラが接続されている電話回線である。 サイトに複数の通信回線がある場合には,cu リンク用に特定の回線を指定することもある。

通常は,回線またはデバイスを指定する必要はない。 UUCP インストレーション時に設定された省略時の設定で十分である。 リモートのコンピュータに接続したいが, その名前がわからない場合には,-l オプションと標準デバイス名 tty のバリエーション (たとえば -ltty1) を指定して,cu コマンドを入力する。 サイトのデバイス名については,システム管理者に問い合わせる。

-t 「自動応答」を設定している端末にダイアルして,carriage returncarriage return/linefeed にマップする。
host_name 接続を確立するリモート・ホスト名を指定する。
telno モデムを使用してリモート接続する際の電話番号を指定する。

14.3.1.4    ローカルの cu コマンド

cu コマンドでリモート・ホストに接続すると,ローカルの cu コマンドを使用して,次のタスクを実行できます。

一時的にローカル・ホストに戻って作業を行うには,リモートのシステム・プロンプトに対してチルダと感嘆符 (~!) を入力し,次の形式のローカルのシステム・プロンプトが表示されるのを待ちます。 この場合,local はローカル・ホストの名前です。

~ [ local ] !

ローカルのシステム・プロンプトが表示されるまで待たなくても,ローカル・ホストにアクセスする ~! を入力した直後に,コマンドを入力することもできます。 たとえば,cu でリモート・ホスト moon に接続しているときに, 次のコマンドを入力すると,ローカル・ホスト earth に戻り,cat コマンドを使用して,/usr/crew/r2/asimov/AI ファイルを読むことができます。

moon% ~!cat /usr/crew/r2/asimov/AI
 

頻繁に実行するタスクで使用する,次の 3 つの cu ローカル・コマンドがあります。 リモート・ホストで作業を続けながら,これらのコマンドをリモート・ホストから入力すると,ローカル・ホスト上でタスクを実行できます。 これらのコマンドの前には,チルダとパーセント記号を付けます。

~%cd directory_name ローカル・ホスト上のディレクトリを変更する。
~%take from [to] リモート・ホストからローカル・ホストへファイルをコピーする。
~%put to [from] ローカル・ホストからリモート・ホストへファイルをコピーする。

たとえば,cu を使用してリモート・ホスト moon に接続しているとき,次のコマンドを入力することにより,ローカル・ホスト earth の現在のディレクトリを,/usr/geog/ocean から /usr/geog/ocean/pacific に変更できます。

moon% ~%cd pacific
 

cu でリモート・ホスト moon に接続しているとき, リモートのシステム・プロンプトから,次の ~%take ローカル・コマンドを入力することにより,ファイル /usr/ETI/clavius を,ローカル・ホスト earth 上の /usr/NASA/decode へコピーできます。

moon% ~%take /usr/ETI/clavius /usr/NASA/decode
 

cu でリモート・ホスト moon に接続しているとき, リモートのシステム・プロンプトから,次の ~%put ローカル・コマンドを入力することにより,ローカル・ファイル /usr/NASA/jupiter を,リモート・ホスト上の /usr/ETI/clavius/hal9 へコピーできます。

moon% ~%put /usr/NASA/jupiter /usr/ETI/clavius/hal9
 

注意

~%take および ~%put コマンドを使用する前には,コピー先ディレクトリが存在することを確認してください。 uucp コマンドとは異なり,これらの cu ローカル・コマンドは,ファイル転送の間に中間ディレクトリを作成しません。

~%take および ~%put を使用して転送できるのは ASCII ファイルだけです。 たとえば,PostScript ファイルは ASCII ファイルですが,実行可能ファイルは ASCII ファイルではありません。

14.3.1.5    cu を使用したローカル・コンピュータの複数のリモート・コンピュータへの接続

cu コマンドを入力して,ホスト X をホスト Y に接続し,ホスト Y にログインしてから,そこで再び cu コマンドを入力して,ホスト Z に接続できます。 これによって,1 つのローカル・ホスト・コンピュータ X と,2 つのリモート・ホスト・コンピュータ Y および Z を使用できるようになります。

ホスト Z にログインすると,そのホスト上でオペレーティング・システムのコマンドを実行できます。 次のようにすると,Z から他のホスト上でコマンドを実行できるようになります。

表 14-2 に,最も一般的に使用される cu ローカル・コマンドを示します。 他の cu ローカル・コマンドについての詳細は, cu(1) リファレンス・ページを参照してください。

表 14-2:  ローカルの cu コマンド

コマンド 説明
~.

リモート・コンピュータからログアウトして,リモート接続を終了する。

モデムを使用し,電話回線を介してリモート・ホストと接続する場合には,このコマンドは常に動作するとは限らない。 動作しない場合には,Ctrl/D を押してログアウトする。 その後,プロンプトからチルダとピリオド ( ~.) を入力し,Return キーを押して,リモート接続を終了する。

~!

セッションをリモート・ホストからローカル・ホストへ戻す。 プロンプトに対してチルダと感嘆符 ( ~!) をタイプした後,任意のコマンドを入力する。 リモート・ホストに戻るには,Ctrl/D を押す。

cu 接続が確立されると, ~! (リモートからローカルへ),または Ctrl/D (ローカルからリモートへ) を入力することによって,2 つのホストを切り換えることができる。

~%cd directory_name ローカル・ホストの現在のディレクトリを,directory_name 変数で指定したディレクトリに変更する。 ディレクトリ名を指定しなければ,ホーム・ディレクトリに戻る。
~%take source [dest] リモートからローカル・ホストにファイルをコピーする。 ローカル・ホスト上の dest コピー先ファイルを指定しなければ,~%take コマンドは,リモート・ファイルをローカル・ホストにコピーして,同じファイル名を割り当てる。
~%put source [dest] ローカルからリモート・ホストにファイルをコピーする。 リモート・ホスト上の dest コピー先ファイルを指定しなければ,~%put コマンドは,ローカル・ファイルをリモート・ホストにコピーして,同じファイル名を割り当てる。
~$cmd ローカル・ホスト上で cmd コマンドを実行し,リモート・シェルで実行するために,出力をリモート・ホストに送信する。

14.3.2    tip を使用したリモート・ホストへの接続

tip コマンドとそのオプションを使用すると,リモート・ホストに接続して,ログインし,ローカル・ホストからリモート・ホスト上でタスクを実行できます。 2 つのホスト間で切り換えを行うことによって,各ホスト上でタスクを実行することができます。 ローカル・ホストとリモート・ホストが同じのオペレーティング・システムを使用している場合には,ローカル・ホストからリモート・ホストにコマンドを入力することができます。

14.3.2.1    tip を使用した名前によるリモート・ホストへの接続

次の手順は,tip コマンドを使用して,ローカル・ホスト earth から,リモート・ホスト moon に接続し,moon にログインして,そこからコマンドを入力する方法を示しています。

  1. ローカルのシステム・プロンプトで,次の tip コマンドを入力する。

    メッセージが表示されて接続が確認されます。

    earth% tip moon
    Connected
     
    

    リモート・ホストのログイン・プロンプトが表示されます。

    リモート・ホストによっては,ログイン・プロンプトが表示されるまでに,Return キーを何回か押さなければならない場合があります。

  2. ログイン・プロンプトからホスト moon にログインする。

    ホスト moon のシステム・プロンプトが表示されます。

  3. システム・プロンプトが表示されるのを待って,ホスト moon がサポートするコマンドを入力する。

    たとえば,/usr/geog/crater/darkside ディレクトリの内容を表示するには,システム・プロンプトから次のコマンドを入力します。

    moon% ls /usr/geog/crater/darkside
    copernicus.dat
    tycho.dat
    moon% 
     
    

注意

この例は,すべての tip 接続で使用できるわけではありません。 簡単な一般例として示しています。 詳細については,システム管理者に問い合わせてください。

リモート・ホストにログインした後は,リモート・ホストとローカル・ホストは同時に実行しているため,両ホストの間で切り換えを行うことができます。 ローカル・ホストに戻ってコマンドを入力するには,コマンドの前にチルダと感嘆符 (~!) を付けて入力するか,あるいはローカル・ホストのプロンプトが表示されるのを待ってから,コマンドを入力してください。 リモート・ホストに戻るには,Ctrl/D を押します。

14.3.2.2    tip を使用した電話回線によるリモート・ホストへの接続

次の条件を満たしている場合には,tip コマンドを使用し,電話回線を介してリモート・ホストに接続できます。

次の手順では,tip コマンドを使用して,内線の電話番号が 555-1234 のリモート・ホストに伝送速度 300 のボー・レートで接続しています。

  1. ローカル・プロンプト jupiter から,次の tip コマンドを入力する。

    メッセージが表示されて接続が確認されます。

    jupiter% tip -300 5551234
    Connected
     
    

  2. Return キーを押す。

    リモート・ホストによっては,リモート・ホストのログイン・プロンプトが表示されるまでに,Return キーを数回押さなければならない場合があります。

  3. リモート・ホストのログイン・プロンプトからログインする。

    ローカル・ホストとの接続は引き続きオープンされているので,ローカル・ホストまたはリモート・ホストの両方で作業ができます。

注意

伝送速度を指定しなければ,省略時の設定により,tip コマンドは 1200 ボー・レートを使用します。

次の手順では,tip コマンドを使用して,外線の電話番号が 1-612-555-9876 のリモート・ホストに伝送速度 300 のボー・レートで接続しています。

  1. 外線番号の 9 をダイアルする必要がある場合には,ローカル・ホスト earth のプロンプトから,次の tip コマンドを入力する。

    メッセージが表示されて接続が確認されます。

    earth% tip -300 9,16125559876
    Connected
     
    

  2. Return キーを押す。

    リモート・ホストによっては,リモート・ホストのログイン・プロンプトが表示されるまでに,Return キーを数回押さなければならない場合があります。

  3. リモート・ホストのログイン・プロンプトからログインする。

    ローカル・ホストとの接続は引き続きオープンされているので,ローカル・ホストまたはリモート・ホストの両方で作業ができます。

/etc/remote ファイルおよび /etc/phones ファイルのカスタマイズについての詳細は, 『ネットワーク管理ガイド』,および remote(4)phones(4) のリファレンス・ページを参照してください。

表 14-3 に,tip コマンド・オプションとその説明を示します。 詳細は, tip(1) リファレンス・ページを参照してください。

表 14-3:  tip コマンドのオプション

オプション 説明
-baud_rate

リモート・ホストへのデータ伝送速度を指定する。 省略時の値は 1200 ボー。

UUCP のインストール時に設定され,サイト用にカスタマイズされたボー・レートは,接続に使用するハードウェアに従って構成される。

-v .tiprc ファイルから読み取った (詳細モード) 任意の変数を表示する。
host_name 接続する リモート・ホストを指定する。 ローカル・ホストとリモート・ホスト間でのシステム通信のセットアップ方法に従って,tip コマンドは,ハード配線回線,またはモデムと電話回線を使用して接続する。
telno モデムを使用してリモート接続する際の電話番号を指定する。 リモート・ホスト名が tip で認識されない (つまり,/etc/remote ファイルにエントリがない) 場合には,この方法を使用する。

14.3.2.3    ローカルの tip コマンド

tip コマンドでリモート・ホストに接続しているときに,ローカル・コマンドを使用して,次のタスクを実行できます。

一時的にローカル・ホストに戻ってコマンドを入力するには,リモートのシステム・プロンプトからチルダと感嘆符 (~!) を入力します。 ローカルのシステム・プロンプトが次の形式で表示されます。 ここで,shell はローカルのシェル名であり,pmt はローカルのシェル・プロンプトです。 シェル・プロンプトは,C シェルに対しては %,Bourne,Korn,または POSIX シェルに対しては $ が表示されます。

~ [ shell  ] pmt!

リモート・ホストに戻るには,ローカルのシステム・プロンプトで Ctrl/D を押します。 tip プロセスを終了するには,チルダをタイプして Ctrl/D ( ~^D) を押します。

リモート・ホストで作業を続けながら,リモート・ホストから次の tip コマンドを使用すると,ローカル・ホストでタスクを実行できます。 これらコマンドは前にチルダを付けて使用します。

~c directory_name ローカルのディレクトリを変更する。
~t from [to] リモート・ホストからローカル・ホストにファイルをコピーする。
~< リモート・ホストからローカル・ホストにファイルをコピーする。
~p from [to] ローカル・ホストからリモート・ホストにファイルをコピーする。
~> ローカル・ホストからリモート・ホストにファイルをコピーする。

たとえば,tip でリモート・ホスト moon に接続しているとき,次のコマンドを入力して,ローカル・ホスト earth 上の現在のディレクトリを, /usr/geog/polar から /usr/geog/polar/arctic に変更できます。

moon% ~c arctic
 

tip でリモート・ホスト moon に接続しているとき,次のコマンドを入力して,/usr/darkside/temp/dat ファイルを, ローカル・ホスト earth 上の /usr/NASA/bios/temp ファイルにコピーできます。

moon% ~t /usr/darkside/temp/dat /usr/NASA/bios/temp
 

tip でリモート・ホスト moon に接続しているとき,次のコマンドを入力して,ローカルの /usr/NASA/bios/warn ファイルを, リモート・ホスト上の /usr/darkside/temp/change ファイルにコピーできます。

moon% ~p /usr/NASA/bios/warn /usr/darkside/temp/change
 

注意

~t および ~p コマンドで転送できるのは ASCII ファイルだけです。 たとえば,PostScript ファイルは ASCII ファイルですが,オブジェクト (コード) ファイルは ASCII ファイルではありません。

~t~p も,ファイル転送エラーをチェックしませんが,uucp コマンドには,この確認の機能があります。

14.3.2.4    tip コマンドを使用したローカル・ホストから複数のリモート・ホストへの接続

tip コマンドを入力して,ホスト X をホスト Y に接続し,ホスト Y にログインしてから, そこで tip コマンドを入力し (Ytip コマンドをサポートする場合),ホスト Z に接続することができます。 これによって,1 つのローカル・ホスト・コンピュータ X と,2 つのリモート・ホスト・コンピュータ Y および Z を使用できるようになります。

ホスト Z がホストである場合には,ログインすると,ホスト Z 上でオペレーティング・システムのコマンドを実行できます。 次のようにすると,Z から他のホスト上でコマンドを実行できるようになります。

注意

チルダ (~) で始まるコマンド・シーケンスは,チルダがコマンド行の先頭にある場合にのみ,tip によって解釈されます。

表 14-4 に,最も一般的に使用される tip ローカル・コマンドを示します。 他の tip ローカル・コマンドについての詳細は, tip(1) リファレンス・ページを参照してください。

表 14-4:  ローカル tip コマンド

コマンド 説明

~Ctrl/D
~.

リモート・コンピュータからログアウトして,リモート接続を終了する。

モデムを使用し,電話回線を介してリモート・ホストと接続する場合には,このコマンドは常に動作するとは限らない。 動作しない場合には,Ctrl/D を押してログアウトする。 その後,プロンプトから ~Ctrl/D を入力し,Return キーを押して,リモート接続を終了する。

~!

セッションをリモート・ホストからローカル・ホスト上のシェルへ戻す。 プロンプトに対してチルダと感嘆符 ( ~!) をタイプした後,任意のコマンドを入力する。 リモート・ホストに戻るには,Ctrl/D を押す。

tip 接続が確立されると,~! (リモートからローカルへ),あるいは Ctrl/D (ローカルからのリモートへ) を入力することによって,2 つのホストを切り換えることができる。

~c directory_name ローカル・ホスト上の現在のディレクトリを,directory_name 変数で指定したディレクトリに変更する。 ディレクトリ名を指定しなければ,ホーム・ディレクトリに戻る。
~t source [dest] リモートからローカル・ホストにファイルをコピーする。 ローカル・ホスト上の dest コピー先ファイルを指定しなければ,~t コマンドは,リモート・ファイルをローカル・ホストにコピーして,同じファイル名を割り当てる。
~p source [dest] ローカルからリモート・ホストにファイルをコピーする。 リモート・ホスト上の dest コピー先ファイルを指定しなければ,~p コマンドは,ローカル・ファイルをリモート・ホストにコピーして,同じファイル名を割り当てる。
~< リモートからローカル・ホストにファイルをコピーする。 tip コマンドは,リモート・ホスト上で リモート・ファイルやローカル・ファイル名の表示に使用するコマンド文字列 (たとえば, cat filename) の入力を求めるプロンプトを表示する。
~> ローカルからリモート・ホストにファイルをコピーする。 tipコマンドはローカル・ファイル名の入力を求めるプロンプトを表示し,そのファイルを標準入力と同様にリモート・ホストへ送信する。 ~> コマンドを実行する前に,この入力を認識するよう,リモート・ホストのコマンドをセットアップしなければならない。 たとえば,remote% cat > destination-file のように行う。

注意

tip プログラムは,システム・プロンプトとシステムの割り込み文字列に対応する文字列を使用をして, ~< または ~> コマンドによるファイル転送の終了をシグナル通知します。 これらの値は,/etc/remote ファイルに定義されます。 詳細は, remote(4) リファレンス・ページを参照してください。

14.3.3    ct を使用したモデムによるリモート端末への接続

モデムを備えたリモート ASCII 端末のユーザは,ct コマンドを使用すると,モデムと電話回線を介して,ローカル・ホストと通信できます。 リモート端末のユーザは,接続後,ローカル・ホストにログインして,作業を行うことができます。 使用できる電話回線がない場合には,ct コマンドはメッセージを表示して,回線が使用できるまで待つかどうかを尋ねます。

ct コマンドは,次のような場合に有効です。

次の ct の機能は,特定の環境で有効です。

注意

通常,リモート端末のユーザは,ローカル・ホストのユーザを呼び出して,ct セッションを要求します。 このような接続が頻繁に発生する場合には,システム管理者は UUCP を設定して,指定された時間に,1 つまたは複数の指定端末に対し,ローカル・ホストが自動的に ct を実行するようにします。 UUCP のカスタマイズについての詳細は,システム管理者に問い合わせてください。

たとえば,同じサイトにあるリモート端末のモデムに接続するには,次のコマンドを入力してください。 リモート・モデムの電話番号は 7-6092 とします。

earth% ct 76092
Allocated dialer at 1200 baud
Confirm hang_up? (y to hang_up)
 

コマンドを入力すると,接続を確認するメッセージが表示され,現在使用中の他の電話回線を中断するか,あるいはコマンドを取り消すかを入力するプロンプトが表示されます。

次の例は,ct コマンドを使用して,市内電話番号が 555-0043 であるリモート端末モデムに接続する方法を示しています。 この例では,外線番号として 9 を指定し,モデム回線を 2 分間待つように指示する -w オプションを指定しています。

earth% ct -w2 9=5550043
Allocated dialer at 1200 baud
Confirm hang_up? (y to hang_up)
 

前述の例と同様に,現在使用中の他の電話回線を中断するか,あるいはコマンドを取り消すかを入力するプロンプトが表示されます。

次の例は,ct コマンドを使用して,ローカル・ホスト earth から,市外電話番号が 1-201-555-7824 であるリモート端末のモデムに接続する方法を示しています。 この例では,外線番号として 9 を指定し,モデム回線を 5 分間待つように指示する -w オプションを指定しています。

earth% ct -w5 9=12015557824
Allocated dialer at 1200 baud
Confirm hang_up? (y to hang_up)
 

現在使用中の他の電話回線を中断するか,あるいはコマンドを取り消すかを入力するプロンプトが表示されます。

詳細は, ct(1) リファレンス・ページを参照してください。

表 14-5 に,ct コマンドのオプションと必要なエントリを示します。

表 14-5:  ct コマンドのオプション

オプション 説明
-wminutes

ct コマンドが回線を待つ最大時間を分単位で指定する。 ct コマンドは,接続が確立されるか,指定された時間が経過するまで,リモートのモデムに 1 分間隔でダイアルする。

-w オプションを指定すると,接続が確立できなかった場合に,通常 ct が表示するメッセージを抑制する。

-xnumber ローカル・ホスト上でのコマンド実行時の標準エラー出力についての詳細情報を作成する。 これは,デバッグの際に参照する。 デバッグ・レベル number は,0 〜 9 の数字。 推奨する省略時の値は 9。
-v ct コマンドで,実行中のナレーティブを標準エラー出力に送信できるようにする。
-h ct によって,現在の接続が切断されないようにする。
-sspeed ct のデータ伝送速度を指定する。 省略時の値は 1200 ボー。 ボー・レートは,接続する端末のボー・レートに設定する。
telno リモート・モデムの電話番号を指定する。 市内電話番号または市外電話番号を入力し,外線用の 9 や,その他のアクセス・コードを表す 2 次ダイアル・トーンを指定する。
 

2 次ダイアル・トーンの後ろには等号 (=) を使用し (9=),555-5092 のように,遅延にはハイフン (-) を指定する。 電話番号は 31 文字まで,また下記のいづれも含むことができる。

0 〜 9 の数字
ハイフンまたはダッシュ (-)
等号 (=)
アスタリスク (*)
番号記号またはポンド記号 (#)

14.4    uux を使用したリモート・ホスト上でのコマンドの実行

uux コマンドを使用すると,ローカル・ホスト上で作業しながら,リモート・ホスト上でコマンドを実行することができます。 リモート・ホストにコマンドが存在しない場合には,uux は実行されず,リモート・ホストがそのことをメールで通知します。 コマンドが実行されて出力を生成する場合 (たとえば catdiff) には,uux に,指定のホスト上のファイルに出力を書き込むようにさせることができます。

注意

機密保護のため,uux を介したコマンドの使用を制限しているサイトがあります。 また,ローカル・ホストにエンハンスト・セキュリティ機能が設定されている場合には,uux を介したリモート・ホスト上での特定のコマンドの実行に影響があります。 詳細については,システム管理者に問い合わせてください。

uux コマンドの構文は,使用するシェルのコマンド・インタプリタが特殊文字を処理する方法によって決まります。 この構文は,Bourne,Korn,および POSIX シェルでは同じですが,C シェルでは異なります。

どのシェルから uux を使用するかに関係なく, デスティネーションの指定には次の 2 つの方法があります。

uux [ option... ] "commandstring > destination"

uux [ option... ] commandstring \{ destination \}

最初の構文では,右山カッコ (リダイレクション記号) (>) は,リモート・コマンドの出力を,デスティネーションのディレクトリまたはファイルに向けます。 二重引用符 (" ") は,リダイレクション記号の右山カッコ (>) が特殊文字であるため,コマンド全体を囲みます。 コマンド行で次のいずれかの文字を使用する場合には,必ずその文字またはコマンド全体を二重引用符 (" ") で囲んでください。

2 番目の構文では,デスティネーション名を中カッコ ({ }) で囲みます。 中カッコは,シェル・コマンド・インタプリタでの特殊文字であるため,各中カッコの前にはバックスラッシュ (\) をタイプしなければなりません。 バックスラッシュがなければ,中カッコが誤って解釈される恐れがあります。

デスティネーション・ファイルのパス名を指定する場合には,完全パス名または ~user に続くパス名を使用できます。 この場合,user はユーザのログイン・ディレクトリ名です。

出力ファイルには「書き込み」許可のステータスが必要です。 あるターゲット出力ファイルの許可がどのように設定されているか不明な場合には,コマンドの結果を /usr/spool/uucppublic ディレクトリへ出力してください。 シェルからは簡単に,このディレクトリを ~uucp と指定することができます。

14.4.1    Bourne シェル,Korn シェル,または POSIX シェルからの uux の使用

次の例は,uux コマンドが,オペレーティング・システムのコマンド cat を使用して,ホスト gem にある /u/doc/F1 ファイルを, ホスト sky にある /usr/doc/F2 ファイルと連結する方法を示したものです。 結果はホスト gem 上の /u/doc/F3 ファイルに入ります。

uux "gem!cat  gem!/u/doc/F1  sky!/usr/doc/F2  >  gem!/u/doc/F3"
 

次の例では,タスクは前のコマンドと同じですが,リダイレクション記号ではなく,中カッコ ({ }) を使用して,uux コマンド行にデスティネーションを指定しています。 タスクは前のコマンドと同じですが,出力先は暗黙指定です。

uux gem!cat  gem!/u/doc/F1  sky!/usr/doc/F2  \{gem!/u/doc/F3\}
 

14.4.2    C シェルからの uux の使用

前の項と同じ操作を C シェルで行うには,次の uux コマンドのいずれか 1 つを入力してください。

uux "gem\!cat gem\!/u/doc/F1 sky\!/usr/doc/F2 > gem\!/u/doc/F3"
 

次の例では,暗黙のデスティネーション出力ファイルを使用しています。

uux gem\!cat gem\!/u/doc/F1 sky\!/usr/doc/F2 \{gem\!/u/doc/F3\}
 

次の 2 つの例では,uux コマンドは cat コマンドを使用して,acct6 ファイルをリモート・ホスト boston から, ローカル・ホスト上のパブリック・ディレクトリにある acct6 ファイルへの出力として送信します。

uux "cat boston\!/reports/acct6 > ~uucp/acct6"
 

次の例では,暗黙のデスティネーション出力ファイルを使用します。

uux cat  boston\!/reports/acct6  \{~uucp/acct6\}
 

14.4.3    その他の uux の機能およびヒント

uux コマンドでは,ローカル・ホストを省略時のホストとするため,コマンド行にローカル・ホストを指定する必要はありません。 たとえば,diff コマンドを実行して,ホスト car 上の /u/F1 ファイルを, ホスト sea 上の /u/F2 ファイルと比較し,その結果をローカル・ホストの /u/F3 ファイルに入れるには,次のコマンドを使用します。

uux "diff  car!/u/F1  sea!/u/F2  >  /u/F3"
 

また,次の例のように,感嘆符だけを使用して,ローカル・ホストを表すことができます。

uux "!diff  car!/u/F1  sea!/u/F2  >  !/u/F3"
 

diff または cat などのコマンドでパス名ソース・ファイルを指定する場合には,リモート・ホストが解釈するシェルのパターン照合文字を含めることができます。

疑問符 (?)
アスタリスク (*)
左大カッコ ([)
右大カッコ (])

これらの文字は,2つの バックスラッシュ (\ ... \) または二重引用符 (" ... ") で囲み,uux がコマンドをリモート・ホストに送信する前に,ローカルのシェルがその文字を解釈しないようにします。 デスティネーション名には,パターン照合文字を使用しないでください。

左山カッコ (<),右山カッコ (>),セミコロン (;) およびパイプ (|) のシェル文字を使用する場合には, それらの文字をバックスラッシュ (\ ... \) または二重引用符 (" ... ") で囲むか,コマンド行全体をバックスラッシュまたは二重引用符で囲んでください。

注意

シェルのリダイレクション文字,2 つの左山カッコ (<<) および 2 つの右山カッコ (>>) は,UUCP では使用できません。

表 14-6 に,uux コマンドのオプションおよび必要なエントリをまとめます。 詳細は, uux(1) リファレンス・ページを参照してください。

表 14-6:  uux コマンドのオプション

オプション 説明
-n

コマンドがデスティネーション・ホスト上で実行できなかった場合に,通常 mailx を介して送られる通知を取り消す。

-n-z オプションは,相互に排他的である。

-z

デスティネーション・ホスト上でコマンドが実行できなかった場合に,mailx を介してメッセージを送信する。

-n-z オプションは,相互に排他的である。

-j リモートのコマンドを実行する uux が要求するジョブ識別番号を表示する。 この番号は uustat コマンドで使用する。 詳細は14.8.1 項を参照。
cmd_string 指定したホストが受けつけるコマンドを指定する。 コマンド・フォーマットについての詳細は,14.4 節を参照。
dest_name リモート・ホストで実行するコマンドの出力を格納するためのホストおよびファイルを指定する。 たとえば,リモート・ホスト上のディレクトリにあるすべてのファイルの一覧を表示する場合は,uux コマンドを使用して適切なデスティネーション名を入力すれば,ローカル・ホスト上のファイルに結果を入れることができる。 デスティネーション・フォーマットの詳細は,14.4 節を参照。

14.5    UUCP を使用したファイルの送受信

UUCP プロトコルをサポートする UNIX ベースのコンピュータでは,uucp コマンドを使用して,あるコンピュータから別のコンピュータに,1 つまたは複数のファイルをコピーできます。 uucp を使用すると,次のようにファイルをコピーできます。

多くのサイトでは,ファイル転送を円滑に行うために,パブリックの UUCP ディレクトリ usr/spool/uucppublic を作成して,利用できるようにしています。 このディレクトリは,すべてのユーザによる読み取りおよび書き込みアクセスが可能で,セキュリティ制限を回避します。 このディレクトリは, uucp コマンドでは,~uucp または ~/ で簡単に指定できます。

注意

uucp を介したファイル転送は,転送を行うホスト上のセキュリティ機能の影響を受けます。 uucp ユーティリティは,ファイル転送が失敗した場合に,エラー・メッセージを表示しません。 詳細は,システム管理者に問い合わせてください。

システム管理者は,リモート・ユーザによる不正な使用を防止するために,セキュリティ制限を定義しているので,ファイル転送でアクセスできるのは,一部のディレクトリおよびファイルのみです。

14.5.1    Bourne シェル,Korn シェル,および POSIX シェルでの UUCP を使用したファイルのコピー

Bourne,Korn,または POSIX シェルからは,コピー先ファイルのホスト名の前に指定する感嘆符 (!) の前にバックスラッシュ (\) を付けなくても,uucp ファイル名を指定できます。 たとえば,ローカル・ホスト earthstar ファイルを,リモート・ホスト sky 上のパブリック・ディレクトリにある /sun/stats ファイルにコピーするには,次のコマンドを入力してください。

earth% uucp star sky!~/sun/stats
 

同じファイルをコピーするときに,明示的に /usr/spool/uucppublic ディレクトリを識別するには,次のコマンドを入力します。

earth% uucp star sky!/usr/spool/uucppublic/sun/stats
 

ローカル・ホストからはアドレスがわからないリモート・ホストに,ファイルをコピーする場合は,そのリモート・ホストのアドレスがわかっている別のホストを介して行います。 この方法でローカル・ファイルをリモート・ホストにコピーするには,まず,1 つまたは複数の中間ホストにファイルを送信します。 このとき,各ホスト名は感嘆符 (!) で区切ります。 たとえば,ローカル・ファイル star を,リモート・ホスト sky 上の /sun/stats ファイルへコピーする場合に, まず,中間ホスト mlkway を介して送信するには,次のコマンドを入力してください。

earth% uucp star mlkway!sky!~uucp/sun/stats
 

ローカル・ホストから uucp を使用して,リモート・ホストからローカル・ホストにファイルをコピーできます。 たとえば,リモート・ホスト biochem から /cells/type1 ファイルを,ローカル・ファイル /dna/sequence にコピーするには,ローカル・ホスト earth から次のコマンドを入力してください。

earth% uucp  biochem!/cells/type1  /dna/sequence
 

複数のファイルをリモート・ホストからローカル・ホストにコピーする場合には,パターン照合文字を使用してファイルを指定することができます。 たとえば,リモート・ホスト moon 上の /geog/survey ディレクトリから,名前が report で始まるすべてのファイルを, ローカル・ホスト earth 上のパブリック・ディレクトリ ~uucp へコピーするには,次のコマンドを入力します。

earth% uucp  moon\!/geog/survey/report*  ~uucp
 

14.5.2    C シェルでの UUCP を使用したファイルのコピー

C シェルでは,感嘆符 (!) は特別な意味を持っています。 コマンド・インタプリタが誤って解釈しないように,パス名で使用する場合には,感嘆符の前にバックスラッシュ (\) を付けてください。

たとえば,ローカル・ホスト earth/usr/NASA/ctrl-specs ファイルを,リモート・ホスト luna7 上のパブリック・ディレクトリ ~uucp にコピーするには,ローカル・ホストから次のコマンドを入力します。

earth% uucp  /usr/NASA/ctrl-specs  luna7\!~uucp
 

リモート・ホスト luna7 上の /usr/reports/exobio ディレクトリにある plan9 ファイルを, ローカル・ホスト earth のパブリック・ディレクトリ ~uucp にコピーするには,次のコマンドを入力します。

earth% uucp  luna7\!/usr/reports/exobio/plan9  ~uucp
 

リモート・ホスト luna7 上の /sensory/visual/earthrise ディレクトリにある名前が msg で始まるすべてのファイルを,ローカル・ホスト earth のパブリック・ディレクトリ ~uucp にコピーするには,次のコマンドを入力します。

earth% uucp  luna7\!/sensory/visual/earthrise/msg'*'  ~uucp
 

ここで,ソース・ファイル名で使用しているパターン照合文字のアスタリスク (*) は,誤って解釈されないように一重引用符で囲みます。

次の例では,同じファイルが ~uucp にコピーされますが,誤って解釈されないように,ソース・ファイルのパス名全体を二重引用符で囲みます。

earth% uucp  "luna7\!/sensory/visual/earthrise/msg*"  ~uucp
 

表 14-7 に,uucp コマンドのオプションおよび必要なエントリをまとめます。 詳細は, uucp(1) リファレンス・ページを参照してください。

表 14-7:  UUCP コマンドのオプション

オプション 説明
-d ソース・ファイルを,リモート・ホスト上のファイルにコピーする際に必要な,中間ディレクトリを作成する。 デスティネーション・パス名を指定して uucp を入力すれば,必要なディレクトリが作成される。 -d オプションは省略時の設定。
-f ファイル転送中に,中間ディレクトリを作成しない。
-j 転送処理のジョブ識別番号を表示する。 ジョブ識別番号は,uustat コマンドで使用して転送のステータスを確認したり,転送を終了するために uustat -k で使用する。 詳細は14.8.1 項を参照。
-m リモート・ホスト上にファイルがコピーされたことを確認するために,uucp が要求者へメールを送信することを指定する。 ローカル転送の場合には,メールは送信されない。
-nusername リモート・ホスト上の受信者 username に,ファイルが送信されたことを通知する。 ローカル転送の場合には,メールは送信されない。
source_file 送信または受信するファイルのパス名を指定する。 UUCP パス名についての詳細は,14.1 節を参照。
destination_name コピーを受信するファイル (またはディレクトリ) のパス名を指定する。 デスティネーション・ファイルのパス名についての詳細は,14.5.1 項および14.5.2 項を参照。

14.6    uuto と uupick を使用したファイルのコピー

uuto コマンドでは,指定したファイルをコピー先ホスト上のパブリック・ディレクトリにコピーし,受信者は uupick を介してそのファイルを入手できます。 rmail プログラムが,受信者にファイルの到着を通知します。

注意

すべてのファイル転送は,ローカル・ホストおよびリモート・ホスト上のセキュリティ機能の影響を受けます。 詳細は,システム管理者に問い合わせてください。

たとえば,ローカル・ホスト moe から /usr/bin/data/junk ファイルを, リモート・ホスト stooge のユーザ curly に送信するには,次のコマンドを入力します。

moe% uuto  /usr/bin/data/junk  stooge!curly
 

uuto コマンドが,ファイルをホスト stooge 上の /usr/spool/uucppublic/receive/curly/moe ファイルにコピーします。 次に,rmail ユーティリティにより,ファイルが到着したことを通知するメール・メッセージが,ユーザ curly に送信されます。 メッセージを受信すると,ユーザ curly は,uupick コマンドを入力してファイルにアクセスし,保存,移動,または削除が行えるようになります。 次の例では,ユーザ curly は,ホスト stoogeuupick コマンドを入力します。 uupick からは,次のような応答が返ってきます。

stooge% uupick
from system moe: file junk
?
 

ユーザ curly は,uupick の疑問符 (?) プロンプトから d および q オプションを入力して,ファイルを削除し uupick を終了します。

? d
? q
 

表 14-8 は,uupick? プロンプトから入力する uupick ファイル処理オプションの一覧です。

表 14-8:  uupick コマンドのオプション

オプション 説明
* 使用可能な uupick ファイル処理オプションを表示する。
[Return] uupick が次のファイルに進むようにする。
a [dir] パブリック・ディレクトリにあるすべての uuto ファイルを,ローカル・ホスト上の指定したディレクトリへ移動する。 ディレクトリは完全パス名または相対パス名を使用して指定する。 省略時の値は,uupick を入力したディレクトリ。
d d オプションは,uupick で取得した現在のファイルを削除する。
m [dir] 完全パス名または相対パス名で指定したディレクトリにファイルを移動する。 省略時の値は現在のディレクトリ。
p ファイルを表示する。

q
[Ctrl/D]

パブリック・ディレクトリにあるファイルの表示,移動または削除を行うことなしに,uupick を終了できる。 Ctrl/D を押しても終了できる。
!command オペレーティング・システムのプロンプトに戻りコマンドを実行できる。 コマンドを実行すると,制御は uupick に戻る。

詳細は, uupick(1) リファレンス・ページを参照してください。

14.7    uuto を使用したファイルのローカル送信

uuto を使用して,同じローカル・ホスト上の別のユーザに,ファイルを送信することもできます。 ただし,受信者には,ファイルの転送を知らせるメール・メッセージは送信されません。 たとえば,ユーザ shemp は,同じローカル・ホスト stooge 上のユーザ larry に,次のように,ファイル /usr/bin/data/status を送信できます。

stooge% uuto  /usr/bin/data/status  larry
 

表 14-9 は,uuto コマンドのオプションおよび必要なエントリの一覧です。 詳細は, uuto(1) リファレンス・ページを参照してください。

表 14-9:  uuto コマンドのオプション

オプション 説明
-m uuto が,指定したユーザ名およびホストにソース・ファイルをコピーしたことを,送信者に通知する。
-p 通常,uuto は,ソース・ファイルを /usr/spool/uucppublic/receive   /username/host/file にコピーする。 -p オプションは,指定したホスト上のパブリック・ディレクトリにソース・ファイルのコピーを転送する前に,ローカル・ホスト上のスプール・ディレクトリにソース・ファイルを送信する。
file_name ソース・ファイルのパス名。
destination_name ソース・ファイルをコピーする先のパス名。 destination_name には,ファイルを受信するユーザ名を必ず含み,その形式は host!username である。 ここで,host はリモート・コンピュータ名であり,username は受信側のユーザ名である。 ローカル・ホスト上にファイルをコピーする場合には,destination_name は,ファイルを送信するユーザ名だけでもよい。

14.8    UUCP ユーティリティのジョブ状態の表示

UUCP ユーティリティには,uustatuulog および uumonitor という 3 つのコマンドがあります。 これらのコマンドは UUCP ジョブの状態情報を表示します。 詳細は以降の項で説明します。

14.8.1    uustat コマンド

uustat コマンドは,次のような情報や機能を提供することによって,UUCP ジョブをサポートします。

uustat による状態レポートは,この形式を基本として,ワークステーションの画面に表示されます。 uustat オプションを使用すると,表示形式を変更することができます。

jobid date/time status system_name username size file
 

注意

すべての状態表示は,ローカル・ホストおよびリモート・ホスト上のセキュリティ機能の影響を受けます。 詳細はシステム管理者に問い合わせてください。

オプションを指定しないで uustat を入力すると,保留状態のキューが最後にクリーンアップされてから入力された,すべての UUCP コマンドに関する状態情報が表示されます。

特定のユーザが要求したジョブの状態をレポートするには,次に示すように,-u オプションを使用します。 ここでは,ユーザ hugh が要求したジョブ状態を表示します。

% uustat -u hugh
 

uustat のオプションを使用すると,現在のキューおよび保留状態のキューに関する 2 種類の情報を作成することができます。 uustat -q コマンドでは,現在のキューに関する情報を出力し,1 つまたは複数のリモート・ホスト上で,実行するためにキューに入っている UUCP ジョブや,現在実行中の UUCP ジョブを表示します。 uustat -a コマンドでは,保留状態のキューに関する情報を出力し,設定した時間内に実行されなかったすべてのジョブを表示します。

注意

設定時間が経過したら,保留状態のキューのエントリを,uucleanup コマンドを使用して手動で削除するか,または uudemon.cleanu スクリプトによって自動的に削除してください。 uudemon.cleanu スクリプトには,/etc/cron デーモンで起動する /usr/spool/cron/crontabs/uucp にエントリがあります。 UUCP キューのクリーンアップについての詳細は, uucleanup(8) リファレンス・ページを参照するか,システム管理者に問い合わせてください。

14.8.1.1    uustat のオプションを使用した保留状態のキュー出力の表示

保留状態のキューに入っているすべてのUUCPジョブの状態を確認するには, 次のように uustat -a を実行してください。

% uustat -a
sunC3113  Thu Jun 04 17:47:25 1999 S sun doc 289  D.car471afd8
gemN3130  Thu Jun 04 09:14:30 1999 R gem geo 338  D.car471bc0a
seaC3120  Wed Jun 03 16:02:33 1999 S sea doc 828  /u/doc/tt
seaC3119  Wed Jun 03 12:32:01 1999 S sea msg rmail doc
 

この出力例には,次の 7 つのフィールドがあります。

特定のホストによって要求された保留状態のキューにあるすべての UUCP ジョブの状態をレポートするには,次のように uustat -s を実行してください。 ここで示されている出力例は,ホスト sky に関するものです。

% uustat -s sky
skyNlbd7 Wed Jun 03 12:09:30 1999 S sky doc 522    /user/doc/A
skyClbd8 Wed Jun 03 12:10:15 1999 S sky doc 59     D.3b2a12ce4924
skyC3119 Wed Jun 03 12:11:18 1999 S sky doc rmail  msg
 

この出力は,コマンド uustat -a -s sky で生成される出力と同じです。

14.8.1.2    uustat オプションを使用した現在のキュー出力の表示

各ホスト上にある現在実行中,あるいは実行するためにキューに入っているすべての UUCP ジョブの状態を確認するには,次のように,uustat -q コマンドを実行します。

% uustat -q
sea  3C      Mon Jul 13 09:14:35 1999  NO DEVICES AVAILABLE
sun  2C      Mon Jul 13 10:02:22 1999  SUCCESSFUL
gem  1C (2)  Mon Jul 13 10:12:48 1999  CAN'T ACCESS DEVICE
 

この出力例には,次の 5 つのフィールドがあります。

詳細は, uustat(1) リファレンス・ページを参照してください。

表 14-10 は,uustat コマンドのオプションおよび必要なエントリの一覧です。

表 14-10:  uustat コマンドのオプション

オプション 説明

-a

元の UUCP コマンドを入力したユーザに関係なく,保留状態のキューに入っているすべてのジョブについて情報を表示する。

-k jobid

jobid で指定した UUCP プロセスを取り消す。 jobid で指定した UUCP コマンドを入力した場合にのみ,ジョブを取り消すことができる。 また,スーパユーザ特権を持っていれば,UUCP 要求も取り消すことができる。

-m

UUCP を使用して別のコンピュータと最後に通信しようとしたときの状態をレポートする。 たとえば,UUCP による要求が実行された場合,状態は成功としてレポートされ,ジョブが完了しなかった場合には,Login failed などのエラー・メッセージがレポートされる。

-p

ロック・ファイルのすべての PID 番号に対して, ps -flp (process status: a full, long list of specified process IDs: 指定されたプロセス ID に関する完全で詳細なリストによる処理状態の表示) を実行する。 このオプションの使用は,スーパユーザ特権を持つユーザのみ使用可能。

-q

各ホストについて,現在キューに入っているジョブを一覧表示する。 これらのジョブは,実行を待っているか,または実行中のいずれかである。 ホストに状態ファイルがある場合には,UUCP は,その日付,時刻,および状態情報をレポートする。 プロセスが完了すると,UUCP は現在のキューからジョブ・リストを削除する。

-r jobid

ジョブ識別番号で指定した UUCP プロセスを復活させる。 このオプションを使用すると,保留状態のキューにあるファイルに現在の日時のマークを付けて,割り当てたジョブの変更時間が経過するまで,クリーンアップ処理によってこれらのファイルが削除されないようにすることができる。

-shost

指定したホスト上で実行するためにユーザが入力した,すべての UUCP 要求の状態をレポートする。

-uusername

usernameのユーザによって,実行するために入力されたすべての UUCP 要求の状態をレポートする。

 

-shost および -uusername オプションを指定して uustat コマンドを実行すると,特定のホスト上の特定のユーザによって入力されたすべての UUCP 要求についての状態レポートを得ることができる。

14.8.2    uulog コマンドを使用した UUCP ログ・ファイルの表示

ローカル・ホストによって uucpuuto または uux コマンドが使用される場合には, UUCP ログ・ファイルが作成されます。 ログ・ファイルは,各リモート・ホストおよび各デーモンに対して作成されます。 uulog コマンドを使用すると,これらのログ・ファイルを表示できます。 uulog は,ホストによる uucpuuto および uux コマンド要求の要約を表示します。

uulog コマンドは,次に示すデーモンのいずれかのアクティビティに関するログ・ファイルの内容を表示します。

uuxqt ログ・ファイルだけを表示するには,次のように uulog-x オプションを使用します。

% /usr/lib/uucp/uulog -x
 

uulog コマンドを使用すれば,uucico ログ・ファイル,または任意のホストに対するファイル転送のログ,あるいはどちらかのログ・ファイルの最後の指定された数行のみを表示することもできます。 たとえば,ホスト sky に対する uucico ログ・ファイルを表示するには,次のように,-s オプションを使用します。

% /usr/lib/uucp/uulog -s sky
 

ホスト sky に対するファイル転送ログの最後の40行を表示するには,次に示すように,-f オプションと行数を指定します。

% /usr/lib/uucp/uulog -f sky -40
 

表 14-11 は,uulog コマンドのオプションおよび必要なエントリの一覧です。

表 14-11:  uulog コマンドのオプション

オプション 説明
-f host 指定された host のファイル転送ログに対して tail -f を実行し,ログ・ファイルの最後を表示する。 Interrupt キー・シーケンスを使用すると,ファイルを終了してプロンプトに戻る。
-s[host] 指定されたホストに関係するコピー要求についての情報を出力する。 ホストが指定されない場合には,すべてのホストについての情報が表示される。
-x[host] 指定されたホストに関する uuxqt ログ・ファイルを表示する。 ホストが指定されない場合には,すべてのホストについての情報が表示される。
-number ログ・ファイルの最終 number 行を表示する。 行数は number によって決まる。 このパラメータの適用についての詳細は, tail(1) リファレンス・ページを参照してください。

14.8.3    UUCP 状態のモニタ

uumonitor コマンドは,ジョブのバックログ,一時的なシャットダウン,あるいは電話番号またはログイン・パスワードのいずれかの変更によって状態が変更したホストを検出する際に有効です。

uumonitor 出力は,次の 6 つのフィールドから構成されます。

詳細は, uumonitor(8) リファレンス・ページを参照してください。