3    クォータの管理

AdvFS ファイル・システムでクォータを使用すれば,ユーザ,グループ,あるいはファイルセットの単位で,使用する物理ストレージの量を追跡および管理することができます。 クォータの設定および編集には,root ユーザ特権が必要です。 root ユーザは,クォータによる使用ストレージ量の制限を受けません。 クォータが適用されるのは,root 以外のユーザだけです。

この章では,次のトピックについて説明します。

3.1    クォータの概要

AdvFS のクォータ体系は,UFS のクォータと互換性があります。 ただし,AdvFS のクォータ体系は,次の 2 つの点で UFS のクォータと異なります。

AdvFS ファイル・システムではクォータ・ファイルが作成され,それによってクォータ,猶予期間,およびファイルセットの利用状況が追跡されます。 クォータ・ファイルはファイルセット内に保持されますが,UFS の場合とは異なり,ユーザ側でクォータ・ファイルを削除したり,作成することはできません。 クォータを設定していない場合も,ファイルセットにはクォータ・ファイルが存在します。

クォータは,ディスクの容量とファイル数に対して設定できます。 さらに,次に示す 2 種類のクォータが設定可能です。

クォータ・ファイルとファイルセット・クォータは,root ユーザがローカル・システムで完全なバックアップを指定したときに保存されます。 バックアップの手順については,第 4 章を参照してください。

3.1.1    クォータ限界値

限界値は,ディスク使用量 (ブロック数) およびファイル数 (i ノード数) の両方に設定することができます。 表 3-1に,両方のタイプのクォータ値の限界サイズを示します。

表 3-1:  クォータの限界サイズ

  ユーザおよびグループ・クォータ ファイルセット・クォータ
ディスク使用量 80 億 T バイト* 40 億 T バイト
ファイル数 40 億 40 億

* Version 5.0 より前のオペレーティング・システムでは,ユーザおよびグループのクォータの限界値は 2T バイトでした。 Version 5.0 以降のオペレーティング・システム上で,Version 5.0 より前のバージョンで作成したドメインを使用している場合,新しい限界値を利用するためにはドメインをアップグレードする必要があります (2.3.3.4 項を参照)。

クォータの限界値には,ハード限界値とソフト限界値の 2 種類があります。 ハード限界値は,超過することができません。 したがって,それ以上のスペースを割り当てたりファイルを作成したりできません。 一方ソフト限界値 (3.1.2 項 参照) は,一定期間,ハード限界値を超えない範囲で値を超えることができます。

root ユーザは,いつでも必要に応じてハード限界値とソフト限界値を設定/変更できます。 これらの限界値の変更は,クォータが有効なファイルセットにただちに反映されます。 ファイルセットのマウントやアンマウントは,クォータの限界値には影響を与えません。 ハードおよびソフト限界値は,ユーザ,グループ,およびファイルセットに対して設定することができます。 省略時の設定は,クォータ制限なしです。 また,次のように設定することもできます。

設定したクォータ限界値は,root ユーザによって変更されるまで有効です。

クォータ限界値を超えて書き込みをする必要がある場合は,6.4.5 項 を参照してください。

3.1.2    猶予期間

ソフト限界値には猶予期間が設定されます。 猶予期間とは,ソフト限界値を超えることが可能な期間のことです。 猶予期間までの時間計時は,使用しているディスク容量がクォータのソフト限界値を下回ると,いったんリセットされます。

猶予期間が終了すると,当該ユーザやグループは,ソフト限界値を下回る水準までファイルを削除しない限り,新しいファイルの作成や,ディスク・スペースの割り当てができなくなります。 このような場合に既存のファイルを更新すると,データが失われる可能性があります。

ソフト限界値を超えると,猶予期間のタイマが起動されます。 ソフト限界値を下回ると,そのたびにタイマが停止し,リセットされます。 ソフト限界値を超えてから猶予期間を変更した場合は,使用量が限界値を下回るまでは古い猶予期間が有効です。

猶予期間は次のものに対して設定できます。

AdvFS は,省略時では猶予期間を 7 日間に設定します。 猶予期間は,日,時間,分,秒単位で指定できます。 この期間は変更することができます。 猶予期間を 0 日に設定すると,省略時の設定が強制されます。 猶予期間を 1 秒に設定すると,猶予期間は無効になります。

3.1.3    クォータの機能の要約

表 3-2 では,ユーザおよびグループ・クォータと,ファイルセット・クォータを比較しています。

表 3-2:  ユーザおよびグループ・クォータとファイルセット・クォータの比較

ユーザおよびグループ ファイルセット
クォータ・ファイル quota.user および quota.groupという名のファイルに定義する (3.2.1 項)。 ファイルセットのメタデータの一部。 見ることはできない。
クォータ限界値の設定 /etc/fstab ファイル内のマウント・オプションを変更し,ファイルセットをマウントし,edquota コマンドを実行する (3.2.2 項)。 chfsets コマンドを実行 (3.3.2 項)。
猶予期間の設定 edquota コマンドに -ut オプションまたは -gt オプションをつけて実行する (3.2.2 項)。 グループの猶予期間と同じ (3.3.2 項)。
クォータの有効化 quotaon コマンドを実行するか,リブート時にクォータを適用するために rcmgr コマンドを実行する (3.2.4 項および3.2.5 項)。 クォータ限界値を設定すると有効になる(3.3.4 項)。
クォータの無効化 quotaoff コマンドを使用するか,/etc/rc.config.commonファイルのQUOTA_CONFIG="yes" 行を削除する(3.2.6 項)。 chfsets コマンドを使用してクォータ限界値を 0 に設定する(3.3.5 項)。
クォータ限界値のチェック edquota コマンドに -u または -g オプションをつけて実行する。 chfsets コマンドまたは showfsets コマンドを実行する。

3.2    ユーザおよびグループのクォータ

以下の項では,クォータ・ファイルについて説明し,ユーザおよびグループに対してクォータおよび猶予期間を設定する方法について説明します。

3.2.1    ユーザおよびグループのクォータ・ファイル

AdvFS ファイル・システムは,ユーザおよびグループのクォータ情報をファイルセット内のルート・ディレクトリの quota.user ファイルと quota.group ファイルに保存します。 これらのファイルは,ファイルセットの作成時に作成され,ユーザ ID とグループ ID でインデックスされます。 クォータを適用する必要がない場合も,これらのファイルは削除できません。 各クォータ・ファイル・エントリには,次の情報が含まれています。

クォータ・ファイルはスパース・ファイルです (1.3.3 項を参照)。 つまり,ユーザ ID やグループ ID が存在しない部分には,ディスク・スペースは割り当てられていません。 ls -l コマンドを使用すれば,quota.user ファイルあるいは quota.group ファイルが関係するファイルの容量を調べることができますが,それらは実際のディスク使用量を反映していません。 たとえば,quota.user ファイルを表示するには,次のコマンドを実行します。

# ls -l quota.user
-rw-r-----  1 root     operator  294912 Jul 20 08:50 quota.user

ls -s コマンドまたは du -k コマンドを使用すれば,ファイルによるディスク使用量を 1K バイト単位のブロック数で表示できます。 たとえば,quota.user ファイルのブロック数を表示するには,次のコマンドを実行します。

# ls -s quota.user 
16   quota.user

# du -k quota.user 
16         quota.user

3.2.2    ユーザおよびグループのクォータ,および猶予期間の設定

ユーザ・クォータおよびグループ・クォータの両方を設定する必要は必ずしもありません。 グループ・クォータを指定すると,そのクォータ値は当該グループに属する全ユーザに適用されます。 そのため,グループ・クォータよりも大きなユーザ・クォータを指定しても,指定したユーザ・クォータ値に達する前にグループ・クォータによって制限されるため,ユーザ・クォータは無視されます。

ユーザとグループのクォータを設定するには,edquota コマンドを使用します。 また,その猶予期間を変更するのにもこのコマンドを使用します。 猶予期間は,各ファイルセットごとに,すべてのユーザまたはすべてのグループに対して 1 つしか設定できません。 ただし,ブロック数とファイル数に対して同じ値の猶予期間を設定する必要はありません。 設定したグループ猶予期間は,ファイルセット猶予期間としても設定されます (詳細は 3.3.2.2 項を参照)。

次のような手順に従って,ユーザおよびグループのクォータと猶予期間を設定します。

  1. /etc/fstab ファイル (2.4.1 項) にクォータ・ファイルのマウント・ポイント・オプション (userquota および groupquota) を追加します。 ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。

  2. ユーザおよびグループ・クォータ,または猶予期間を設定するために,edquota コマンドに適切なオプションを指定して実行します。 クォータ・ファイルの内容が,EDITOR 環境変数に指定されているエディタによって ASCII 形式で表示されます。 EDITOR 環境変数が設定されていない場合は,vi エディタが使用されます。 クォータを設定することのできるファイルセットだけを見ることができます。 ファイルセットがわからない場合,ステップ 1 からやり直してください。

  3. ユーザまたはグループのクォータ情報が表示されたら,必要に応じてハードおよびソフト限界値フィールドの数値を変更します。 その後,エディタを終了して変更内容を保存します。

  4. ユーザまたはグループの猶予期間を設定するには,ユーザの場合は - ut オプションを指定し,グループの場合は -gt オプションを指定して,edquota コマンドを実行します。 編集することのできる ASCII 形式のファイルが表示されます。

  5. 猶予期間情報が表示されたら,必要に応じて猶予期間を変更します。 その後,エディタを終了して変更内容を保存します。

クォータの設定と猶予期間の詳細については, edquota(8) を参照してください。

ファイルセットに設定したクォータを適用するには,quotaon コマンドで有効化するか,システムを再起動する必要があります (3.2.4 項 および 3.2.5 項を参照)。 ファイルセットに対してすでにクォータ機能が有効になっている場合は,クォータ値を変更すると新しい限界値がすぐに有効になります。

1 人のユーザに対してクォータを設定した後に,edquota コマンドに -p オプションをつけて使用して,そのユーザのエントリをプロトタイプとして他のユーザに適用することができます (3.2.3 項を参照)。 -p オプションを使用せずに edquota コマンドを複数のユーザ名を指定して実行した場合,指定したすべてのユーザについて,エディタ・ウィンドウが表示されます。

3.2.2.1    ユーザ・クォータの設定

下記の手順では,ユーザ user5 のクォータを設定しています。

  1. クォータを設定しようとしているファイルセットのマウント・ポイントが存在しない場合,/etc/fstab ファイル (2.4.1 項) にクォータ・マウント・ポイント・オプションを追加します。 そして,ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。

    domain_1#geb1  /geb1  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    domain_2#geb3  /geb3  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    domain_4#geb4  /geb4  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    

  2. クォータ設定ファイルを表示するために,edquota コマンドに -u オプションをつけてユーザ名を指定して実行します。 edquota の出力に,そのファイルセットがない場合,ステップ 1 から繰り返します。

    # edquota -u user5
     Quotas for user user5: 
     /geb1: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
            inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
     /geb3: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
            inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
     /geb4: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
            inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0) 
    

    blocks in useinodes in use は,それぞれ各ファイルセットで使用されている 1K バイトのブロック数とファイル数を示しています。 これらの値は変更できません。 この例では,ファイルセットが新しく作成されています。 ソフトおよびハード限界値がゼロになっているので,限界値は設定されていません。

  3. soft および hard フィールドに設定された,指定ユーザの限界値を変更します。 複数のユーザ名を指定した場合,値はすべてのユーザ名に反映されます。

     /geb1: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
            inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
     /geb3: blocks in use: 0, limits (soft=5000, hard=10000)
            inodes in use: 0  limits (soft= 100, hard=  200)
     /geb4: blocks in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0)
            inodes in use: 0, limits (soft = 0, hard = 0) 
    

  4. エディタを終了して変更を保存します。

ファイルセット geb3のクォータが既に有効になっている場合は,新しい限界値が直ちに有効になります。 ファイルセットのクォータがまだ有効になっていない場合は,クォータが有効にされると同時に新しい限界値が有効になります。 クォータを手動で有効にする方法は,3.2.5 項 を参照してください。

ユーザとグループの両方に対してクォータが設定されている場合,小さい方の値が適用されます。

3.2.2.2    ユーザ猶予期間の設定

ファイルセットに対してソフト限界値を適用する場合には,そのファイルセットに猶予期間を設定することができます。 猶予期間を指定しない場合,AdvFS の省略時の設定である 7 日が猶予期間として使用されます。 猶予期間を無効にするには,値を 1 秒に設定します。 ブロック数とファイル数に対しては,異なる猶予期間を設定することができます。 グループ猶予期間がユーザ猶予期間よりも短い場合,ユーザはグループ猶予期間によって制限されます。

次の手順では,ファイルセット geb3 のすべてのユーザに対する猶予期間を設定しています。

  1. クォータを設定しようとしているファイルセットのマウント・ポイントが存在しない場合,/etc/fstab ファイル (2.4.1 項) にクォータ・マウント・ポイント・オプションを追加します。 そして,ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。

    domain_1#geb1  /geb1  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    domain_2#geb3  /geb3  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    domain_4#geb4  /geb4  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    

  2. 猶予期間の設定ファイルを表示するために,edquota コマンドに -ut オプションをつけて実行します。 edquota の出力に,そのファイルセットがない場合,ステップ 1 から繰り返します。

    # edquota -ut 
    Time units may be: days, hours, minutes, or seconds 
    Grace period before enforcing soft limits for users: 
    /geb1: block grace period: 7 days, file grace period: 7 days 
    /geb3: block grace period: 7 days, file grace period: 7 days 
    /geb4: block grace period: 7 days, file grace period: 7 days
    

  3. geb3 ファイルセットのユーザ猶予期間を設定するために,block grace period および file grace periodフィールドの値を変更します。

    Time units may be: days, hours, minutes, or seconds 
    Grace period before enforcing soft limits for users: 
    /geb1: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
    /geb3: block grace period: 2 days, file grace period:3 days
    /geb4: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
    

  4. エディタを終了して変更を保存します。

ファイルセット geb3のクォータが既に有効になっている場合は,新しい猶予期間が直ちに有効になります。 すでにソフト限界値を超えている場合は,ソフト限界値を下回るまで新しい猶予期間は有効になりません。 ファイルセットのクォータがまだ有効になっていない場合は,クォータが有効にされるとすぐに新しい限界値が有効になります。 クォータを手動で有効にする方法は,3.2.5 項 を参照してください。

3.2.2.3    グループ・クォータの設定

次の手順では,グループ rsgusers に対して geb3 にクォータを設定しています。

  1. クォータを設定しようとしているファイルセットのマウント・ポイントが存在しない場合,/etc/fstab ファイル (2.4.1 項) にクォータ・マウント・ポイント・オプションを追加します。 そして,ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。

    domain_1#geb1  /geb1  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    domain_2#geb3  /geb3  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    domain_4#geb4  /geb4  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    

  2. edquota コマンドに -g オプションをつけて実行します。 複数のグループ名を指定した場合,値はすべてのグループに反映されます。 edquota の出力に,そのファイルセットがない場合,ステップ 1 から繰り返します。

    # edquota -g rsgusers
    Quotas for group rsgusers: 
    /geb1: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
           inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
    /geb3: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
           inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
    /geb4: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
           inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
    

    blocks in useinodes in use は,それぞれ各ファイルセットで使用されている 1K バイトのブロック数とファイル数を示しています。 これらの値は変更できません。 ソフトおよびハード限界値がゼロになっているので,限界値は設定されていません。

  3. soft および hard フィールドに,指定したグループの限界値を設定します。

     /geb1: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
            inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
     /geb3: blocks in use:0, limits(soft=60000, hard=80000)
            inodes in use:0, limits(soft= 6000, hard= 8000)
     /geb4: blocks in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
            inodes in use: 0, limits (soft=0, hard=0)
    

  4. エディタを終了して変更を保存します。

ファイルセット geb3のクォータが既に有効になっている場合は,新しい限界値が直ちに有効になります。 ファイルセットgeb3のクォータがまだ有効になっていない場合は,クォータが有効にされると同時に新しい限界値が有効になります。 クォータを手動で有効にする方法は,3.2.5 項 を参照してください。 ユーザとグループの両方のクォータが設定されている場合は,両方のうちに小さい方の値が使用されます。

3.2.2.4    グループ猶予期間の設定

ソフト限界値を適用する場合,すべてのグループに対して,ファイルセットごとに 1 つの猶予期間を設定することができます。 グループ猶予期間はファイルセット猶予期間と同じです (3.3.2.2 項参照)。 猶予期間を指定しない場合は,AdvFS の省略時の設定である 7 日間が猶予期間として使用されます。 猶予期間を無効にするには,値を 1 秒に設定します。 ブロック数とファイル数に対しては,異なる猶予期間を設定することができます。 グループ猶予期間は,すべてのどのユーザ猶予期間よりも優先されます。

次の手順では,ファイルセット geb3 のすべてのグループに対して猶予期間を設定しています。

  1. クォータを設定しようとしているファイルセットのマウント・ポイントが存在しない場合,/etc/fstab ファイル (2.4.1 項) にクォータ・マウント・ポイント・オプションを追加します。 そして,ファイルセットをマウントしていない場合はマウントします。

    domain_1#geb1  /geb1  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    domain_2#geb3  /geb3  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    domain_4#geb4  /geb4  advfs rw,userquota,groupquota 0 2
    

  2. 猶予期間の設定ファイルを表示するために,edquota コマンドに -gt オプションをつけて実行します。 edquota の出力に,そのファイルセットがない場合,ステップ 1 から繰り返します。

    # edquota -gt 
    Time units may be: days, hours, minutes, or seconds 
    Grace period before enforcing soft limits for groups: 
    /geb1: block grace period: 7 days, file grace period:7 days 
    /geb3: block grace period: 7 days, file grace period:7 days 
    /geb4: block grace period: 7 days, file grace period:7 days 
    

  3. geb3 ファイルセットのグループ猶予期間を設定するために,block grace period および file grace period フィールドの値を変更します。

    Time units may be: days, hours, minutes, or seconds 
    Grace period before enforcing soft limits for groups: 
    /geb1: block grace period: 7 days, file grace period:7 days
    /geb3: block grace period:12hours, file grace period:5 days
    /geb4: block grace period: 7 days, file grace period:7 days 
    

  4. エディタを終了して変更を保存します。

すでにクォータが有効になっている場合,グループが geb3 のソフト限界値を超えていない限り,新しい猶予期間が直ちに有効になります。 すでにソフト限界値を超えている場合は,そのグループの使用量がソフト限界値を下回るまで,新しい猶予期間は有効になりません。 クォータがまだ適用されていない場合は,グループ猶予期間はクォータが適用されるとすぐに有効になります。 クォータを手動で有効にする方法については,3.2.5 項 を参照してください。

3.2.2.5    一時的猶予期間の設定

ファイルセットのファイルの寿命を制限することができます。 一時的猶予期間を設定すると,指定した期間中,制限なしにファイルを割り当てることができます。 その期間を過ぎると,猶予期間に作成されたすべてのファイルが削除されるまで,それ以上ファイルを割り当てることはできません。 この一時的猶予期間の設定は,ファイルが短い期間しか必要のない場合に役立ちます。

一時的猶予期間を設定するには,edquotaコマンドに -t を指定して実行します。 ブロック数または i ノードのソフト限界値は 1 に設定し,ブロック数または i ノードのハード限界値は 0 に設定します。

3.2.3    複数のユーザおよびグループに対するユーザおよびグループ・クォータの設定

AdvFS ファイル・システムでは,単一コマンドで一連のユーザあるいはグループのクォータを変更することができ,個々のクォータ値を個別に変更する必要はありません。 ファイルセットごとに 1 つの猶予期間がすべてのユーザやすべてのグループに適用されるため,各ユーザおよびグループ・クォータに対して複数の猶予期間を適用する必要はありません。

すべてのユーザに同じクォータ値を設定するには,次の手順を行ないます。

  1. ユーザまたはグループにクォータを設定するために,edquota コマンドに -u オプションまたは -g オプションをつけて実行します。

  2. 最初のユーザのクォータ設定を残りのユーザに適用するために,edquota コマンドに -p オプションをつけて実行します。

詳細は, edquota(8) を参照してください。

3.2.3.1    複数のユーザに対するクォータの設定

次の手順では,後で他のユーザのクォータの変更に利用するためのプロトタイプ・ユーザ・クォータを設定しています。

  1. ユーザ user5 に対してクォータを設定します (3.2.2.1 項を参照)。

    # edquota -u user5
    Quotas for user user5: 
    /geb1:blocks in use:0, limits(soft=    0,hard=     0)
          inodes in use:0, limits(soft=    0,hard=     0)
    /geb3:blocks in use:1 ,limits(soft= 5000,hard= 10000)
          inodes in use:4, limits(soft=  100,hard=   200)
    /geb4:blocks in use:2, limits(soft=    0,hard=     0)
          inodes in use:1, limits(soft=    0,hard=     0)
    

  2. ユーザ user5 のクォータをプロトタイプとして使用して,新しいユーザ user7user8,および user9 のクォータを設定します。

    # edquota -p user5 -u user7 user8 user9 
    

  3. クォータが設定されたかどうかチェックするために,user7 に対して edquota コマンドを実行します。

    # edquota -u user7 
    Quotas for user user7: 
    /geb1:blocks in use:0, limits(soft=    0,hard=     0)
          inodes in use:0, limits(soft=    0,hard=     0)
    /geb3:blocks in use:1 ,limits(soft= 5000,hard= 10000)
          inodes in use:4, limits(soft=  100,hard=   200)
    /geb4:blocks in use:2, limits(soft=    0,hard=     0)
          inodes in use:1, limits(soft=    0,hard=     0)
    

3.2.3.2    複数のグループに対するクォータの設定

次の手順では,後で他のグループのクォータの変更に利用するためのプロトタイプ・グループ・クォータを設定しています。

  1. グループ rsgusers のクォータを設定します (3.2.2.3 項を参照)。

    # edquota -g rsgusers
    Quotas for group rsgusers: 
    /geb1:blocks in use:0, limits(soft=     0,hard=     0)
          inodes in use:0, limits(soft=     0,hard=     0)
    /geb3:blocks in use:0, limits(soft= 60000,hard=80000)
          inodes in use:0, limits(soft=  6000,hard= 8000)
    /geb4:blocks in use:0, limits(soft=     0,hard=     0)
          inodes in use:0, limits(soft=     0,hard=     0)
    

  2. グループ rsgusers のクォータをプロトタイプとして使用して,新しいグループ rsgstudents のクォータを設定します。

    # edquota -p rsgusers -g rsgstudents
    

  3. クォータが設定されたかどうかチェックするために,rsgstudents に対して edquota コマンドを実行します。

    # edquota -g rsgstudents 
    Quotas for group rsgstudents: 
    /geb1:blocks in use:0, limits(soft=     0,hard=     0)
          inodes in use:0, limits(soft=     0,hard=     0)
    /geb3:blocks in use:0, limits(soft= 60000,hard= 80000)
          inodes in use:0, limits(soft=  6000,hard=  8000)
    /geb4:blocks in use:0, limits(soft=     0,hard=     0)
          inodes in use:0, limits(soft=     0,hard=     0)
    

3.2.4    システム・スタートアップ時のユーザおよびグループ・クォータの適用

システムのスタートアップ時に,ユーザ・クォータおよびグループ・クォータを自動的に適用するには,次の手順を実行します。

  1. /etc/fstab ファイルのエントリを編集して,クォータ・ファイルのマウント・ポイント・オプションを追加します。 マウント・ポイント・オプションについての詳細は,2.4.1 項 を参照してください。

  2. rcmgr コマンドを使用して,QUOTA_CONFIG オプションを /etc/rc.config.common ファイルに追加します。

    /usr/sbin/rcmgr -c set QUOTA_CONFIG "yes"

    このエントリによって,/sbin/init.d クォータ・スクリプトが,/etc/fstab ファイル内で userquota オプションまたは groupquota オプションが指定されているファイル・システムに対して,quotaon コマンドを実行します。 これにより,次回以降のリブートで,マウントしたファイルセットに対して,クォータが適用されるようになります。

注意

クォータが適用されている状態でファイルセットをアンマウントした場合,ファイルセットを再マウントする時点で quotaon コマンドによりクォータの適用を明示的に有効にしなければなりません。 これは,/etc/rc.config.common ファイルに QUOTA_CONFIG="yes" エントリが記述されている場合でも必要です。

QUOTA_CONFIG オプションを "yes" に設定すると,quotacheck コマンドも実行されます。 このコマンドは,/etc/fstab ファイル内でクォータ・オプションが設定されている UFS ファイル・システムに対して実行され,ファイル・システムのクォータの整合性をチェックします。 AdvFS ファイル・システムでは,AdvFS メタデータ・トランザクション・ログによってストレージ割り当てとクォータの同期が維持されるため,特に指定しない限り,quotacheck コマンドは AdvFS には実行されません。

/etc/fstab ファイル内でクォータ・オプションが指定されている AdvFS ファイル・システムに対して,スタートアップ時に quotacheck コマンドを実行するためには,rcmgr コマンドを使用して次のオプションを /etc/rc.config.common ファイルに追加します。

/usr/sbin/rcmgr -c set QUOTACHECK_CONFIG -a

quotacheck コマンドの処理対象を省略時の状態 (UFS のみ) に戻すには,このオプションを次のように変更します。

/usr/sbin/rcmgr -c set QUOTACHECK_CONFIG ""

3.2.5    ユーザおよびグループ・クォータの手動による適用

マウントしたファイルセットの /etc/fstab ファイル・エントリに userquotagroupquota を追加し,限界値と猶予期間を設定するために edquota コマンドを実行したら,クォータを有効化するために quotaon コマンドを実行します。

システムのスタートアップ時にクォータを初期化するようにシステムが設定されている場合には (3.2.4 項を参照),ファイルセットをアンマウントしない限り,quotaon コマンドを再度実行する必要はありません。 スタートアップ時にクォータが適用されるように設定していない場合 (3.2.6 項を参照) には,リブートのたびに quotaon コマンドを実行する必要があります。

次の例では,前の各項でクォータ値が設定されたファイルセットに関して,クォータを適用しています。

# quotaon -av
/geb1:  group quotas turned on 
/geb1:  user quotas turned on
/geb3:  group quotas turned on
/geb3:  user quotas turned on
/geb4:  group quotas turned on
/geb4:  user quotas turned on 

省略時の設定では,quotaon コマンドは,ユーザおよびグループ・クォータの両方に作用します。 対象にユーザ (-u オプション) あるいはグループ (-g オプション) を指定して,どちらか一方に対してクォータを適用することも可能です。 ファイルセットを指定してユーザまたはグループ・クォータを適用することもできます。 詳細は, quotaon(8) を参照してください。

3.2.6    ユーザおよびグループ・クォータの適用解除

クォータは,一時的にまたは永続的に適用を解除することができます。 ファイルおよびディスク・スペースの使用量に関する情報は,クォータを現在適用しているかどうかには関係なく取得できます。

quotaoff コマンドは,クォータの設定を無効にします。 無効にしたクォータは,quotaon コマンドが手動かシステム初期化時に実行され,クォータが再び有効になるまで無効の状態になります。 クォータの適用は,対象にユーザ (-u オプション) かグループ (-g オプション) かを指定して解除できます。 ユーザまたはグループ・クォータを適用しているファイルセットを指定することもできます。 詳細は, quotaoff(8) を参照してください。

umount コマンドを実行するとクォータの適用が解除され,ファイルセットがアンマウントされます。 アンマウントしたファイルセットのクォータは,有効にできません。 ファイルセットを再マウントした場合に,そのファイルセットのユーザおよびグループ・クォータを有効にするには quotaon コマンドを実行する必要があります。

ユーザまたはグループのクォータの適用を永続的に停止したい場合には,次の手順を行ないます。

  1. quotaoff コマンドを実行し,ファイルセットに対してクォータ機能が適用されないようにします。

  2. edquota コマンドを使用してクォータ限界値を 0 に設定します。

  3. /etc/fstab ファイルからそのファイルセットの userquota および groupquota エントリを削除します。

3.3    ファイルセット・クォータ

ここでは,ファイルセット・クォータ・ファイルについてと,コマンド行で,ファイルセットに対してクォータと猶予期間を設定する方法について説明します。 AdvFS GUI を使用して,ファイルセット・クォータを設定する方法は,付録 Eを参照してください。

3.3.1    ファイルセット・クォータ・ファイル

AdvFS は,ファイルセットに関する構造情報に,ファイルセット・ソフト限界値およびハード限界値を保存します。 このファイルに直接アクセスすることはできません。 このファイルには,ユーザおよびグループ・クォータ・ファイルに含まれているのと同じ情報,つまり,ブロック数のハードおよびソフト限界値,ファイル数のハードおよびソフト限界値が含まれています。 あるファイルセットについてみると,ファイルセット猶予期間はグループ猶予期間と同じです。

3.3.2    ファイルセット・クォータおよび猶予期間の設定

ファイルセット・クォータは,ファイルセットが使用できるファイル数とディスク・スペース量を制限します。 ファイルセットにはソフト限界値とハード限界値の両方を設定できます。 ファイルセット・クォータが設定されていない場合,どのファイルセットも,ドメイン内のすべてのディスク・スペースにアクセスできます。 ファイルセット・クォータは chfsets コマンドで設定されます。 ファイルセット・クォータが設定されている場合,それらのクォータはファイルセットをマウントするたびに有効になります。

ファイルセット・クォータには猶予期間があります (3.3.2.2 項 を参照)。 猶予期間を設定していない場合,AdvFS の省略時の猶予期間である 7 日間が使用されます。 猶予期間を適用解除するには,1 秒に設定します。

ファイルセット・クォータ値の定義には chfsets コマンドを使用します。 このコマンドには,次のオプションを指定できます。

-F ファイル数のソフト限界値を設定
-f ファイル数のハード限界値を設定
-B ブロック使用量のソフト限界値を設定
-b ブロック使用量のハード限界値を設定

このコマンドは古い限界値と新しい限界値を両方表示します。

3.3.2.1    ファイルセット・クォータの設定

次の手順では,year1 ドメインの student_files ファイルセットのファイルセット・クォータを設定しています。 その他のクォータ・コマンドとは異なり,showfsets コマンドは,512 バイト・ブロック単位でブロック使用量を表示します。 K バイト値を表示したい場合には,-k オプションを使用します。

  1. 既存のファイルセット・クォータを表示するために,showfsets コマンドを使用します。

    # showfsets -k year1 student_files 
    student_files
       Id           : 2feff762.00034e3f.1.8001
       Clone is     : stufiles_clone
       Files        :        7,  SLim=    0,  HLim=      0
       Blocks (1k)  :      118,  SLim=    0,  HLim=      0
       Quota Status : user=on  group=on
       Object Safety: off
       Fragging     : on
       DMAPI        : off
    

    SLim は,ファイル数とブロック使用量に対するソフト限界値,HLim はハード限界値です。

  2. chfsets コマンドを使用してクォータを設定します。

    # chfsets -F 1000 -f 2000 -B 25000 -b 50000 year1 student_files
    

  3. 新しいファイルセット・クォータをチェックするには,showfsets コマンドをもう一度実行します。

    # showfsets -k year1 student_files
    student_files
       Id           : 2feff762.00034e3f.1.8001
       Clone is     : stufiles_clone
       Files        :      7,  SLim=  1000,  HLim=   2000
       Blocks (1k)  :    118,  SLim= 25000,  HLim=  50000
       Quota Status : user=on  group=on
       Object Safety: off
       Fragging     : on
       DMAPI        : off
    

3.3.2.2    猶予期間の設定

ファイルセット猶予期間はグループ猶予期間と同じもので,独立して変更することはできません。 このため,グループがソフト限界値を超えることのできる猶予期間を,edquota コマンドに -gt オプションを使用して変更する場合は,ファイルセット猶予期間も変更することになります。 グループ猶予期間とファイルセット猶予期間の設定の詳細は,3.2.2.4 項 を参照してください。

3.3.3    複数のファイルセットに対するクォータの設定

chfsets コマンドの実行時に複数のファイルセット名を指定することにより,ドメイン内の複数のファイルセットに対してクォータ限界値を設定できます。

たとえば,domain_2data および data2 ファイルセットのハード限界値を変更するには,これらの両方のファイルセット名を指定して chfsets コマンドを実行します。

# chfsets -b 1000 -f 200 domain_2 data data2

3.3.4    ファイルセット・クォータの適用

chfsets コマンドを実行すると,ファイルセット・クォータは,すぐに適用されます。 他の操作は必要ありません。 これによって,ファイルセット・クォータは,そのファイルセットをマウントすれば有効になります。

3.3.5    ファイルセット・クォータの適用解除

chfsets コマンドを,ハード限界値とソフト限界値をそれぞれ 0 に設定して実行することによって,ファイルセットに対するクォータの適用を,一時的または永続的に解除することができます。 ファイルおよびディスク・スペースの使用量に関する情報は,クォータを現在適用しているかどうかには関係なく取得できます。

3.4    ファイルセットおよびディスク・スペース使用量の確認

ファイルおよびディスク・スペース使用量を,df, showfdmn, /sbin/advfs/vdf,および showfsets コマンドを使用してモニタすることができます。 ディスク使用量を表示する一般的な方法については,または表示されたディスク使用量情報が読めない場合は,6.4.1 項を参照してください。 ファイルのアドレス範囲を表示する ls などのコマンドでは,スパース・ファイルであるクォータ・ファイルは,実際より大きいサイズに表示されます。

3.4.1    ユーザおよびグループ・クォータの確認

ユーザおよびグループ・クォータを適用している場合,定期的にクォータの設定を確認することができます。 root ユーザでない場合にできるのは,自分のファイルの情報を表示することだけです。 root ユーザは,すべてのファイルセットのすべてのユーザとグループのクォータ情報を表示することができます。 すべてのディスク・クォータ値は,1K バイト・ブロック単位で表示されます。

表 3-3 に示すコマンドは,ユーザおよびグループ・クォータが適用されているファイルセットのディスク・スペースおよびファイルの使用状況を調べるために利用できます。

表 3-3:  ユーザおよびグループの使用状況情報コマンド

コマンド 説明
ncheck ファイルセット内の各ファイルのタグおよび絶対パス名を表示します。
quot ファイルセットの所有者の要約を表示します。
quota ディスク使用状況と限界値をユーザまたはグループ別に表示します。
quotacheck ファイルセット内でのクォータの一貫性をチェックします。
repquota ファイルセットのユーザおよびグループ・クォータの要約を表示します。

3.4.1.1    各ファイルのタグとフルパス名の表示

ncheck コマンドは,ファイルをタグ (iノードと同じ) 番号別にリストします。 このコマンドの出力をパイプ処理して sort コマンドに渡すことによって,ソートされた出力を quot コマンドの入力として使用し,すべてのファイルとその所有者をリストすることができます。 このようなリストを表示するには,次のように入力します。

ncheck domain#fileset |sort +0n| quot -n domain#fileset

3.4.1.2    ファイルセット所有者の要約

quot コマンドは,各ユーザが所有する,マウントされたファイルセットのブロック使用量とファイル数を表示します。 ファイルセットを指定しない場合,このコマンドは /etc/fstab ファイルの rorw,およびrq マウント・オプションを含むすべてのファイルセットを対象にします。

quot コマンドをオプションを指定せずに入力すると,各ユーザのブロック数のみが表示されます。

# quot domain_1#set_1 
domain_1#set_1: 
34128    root
  816    user5 

quot コマンドを -f オプションを指定して入力すると,各ユーザについて,ファイルのサイズとファイル数の両方が表示されます。

# quot -f domain_1#set_1
domain_1#set_1: 
34128     125   root
  816       9   user5

3.4.1.3    ディスク使用量と限界値の表示

quota コマンドは,/etc/fstabファイルに userquota および groupquota エントリのあるマウントされたファイルセットの,ブロック使用量,ファイル数,およびユーザ・クォータまたはグループ・クォータを表示します。 クォータ値を超えて使用しているすべてのファイルセットに関して,あるいはクォータが適用されているかどうかには関係なくマウントされているすべてのファイルセットに関して,ユーザ・クォータ情報を表示するか,グループ・クォータ情報を表示するかを選択できます。

quota コマンドは,各ユーザの,ファイルセットのブロック使用量,ソフト限界値 (quota),ハード限界値 (limit),猶予期間,および使用ファイル数を表示します。 欄内のアスタリスク (*) は,ソフト限界値を超えていることを表しています。 ソフト限界値を超えていなければ,猶予期間は表示されません。 現在のクォータ値を表示するには,edquota コマンドを使用します。

次の例はユーザ runner1 のクォータ情報を表示しています。

# quota -u runner1 
Disk quotas for user runner1 (uid 446): 
  Filesystem  blocks  quota   limit grace files quota limit  grace
      /           60    100     150           3    10    20
      /usr      5071*  5000   10000 24:40     2    20    40
      /mile1     816  20000   30000           9   350   500
      /mile2   22032  50000  200000           2  2000  4000 
      /mile3    2344  10000   15000         370  1000  2000
      /mile4   18023* 10000   20000 7days     3   100   150
      /mile5   32012* 20000   50000 7days     0  2000  3000 

次の例はグループ kingco のクォータ情報を表示しています。

# quota -g kingco
Disk quotas for group kingco (gid 15): 
  Filesystem  blocks  quota   limit grace files quota limit  grace 
      /          118    200     300           2    20    40
      /usr     13184* 10000   20000 7days     2    40    80 
      /mile1   36136 100000  200000         124 10000 20000
      /mile2   44064 200000  400000           4  2000  4000 
      /mile3    3587  30000   60000         628  3000  5000
      /mile4   51071 150000  300000           6  1050  1800
      /mile5   61044 100000  200000           3 10000 20000

3.4.1.4    ユーザおよびグループ・クォータの整合性の確認

quotacheck コマンドは,実際のブロック使用量とファイル数が,設定された限界値と矛盾がないかをチェックします。 このコマンドは,ユーザおよびグループ・ファイルを調べ,現在のディスク使用状況の表を作成し,この表とディスク・クォータ・ファイルに保管されている情報とを比較します。

quotacheck コマンドを使用するためには,ファイルセットがマウントされている必要があります。 -v オプション (詳細モード) を指定すると,見つかった矛盾点とチェック・プロセスで実行された処理手順を表示します。

省略時の設定では,ユーザとグループの両方のクォータがチェックされますが,-u (ユーザ) または -g (グループ) のいずれかのオプションを選択してどちらか一方の情報のみをチェックすることもできます。

次の例では,詳細モードでファイルセット set_1 のチェックを行い,矛盾がないことが示されています。

# quotacheck -v domain_1#set_1
 *** Checking user and group quotas for domain_1#set_1 (/set_1)

次の例は,/etc/fstab ファイルにクォータが定義されているすべてのファイルセットについてチェックを行なっています。 この出力結果で inodes はファイルの数,blocks はブロック使用量を表します。 quotacheck コマンドの結果,/usr ディレクトリの矛盾点が訂正されています。

# quotacheck -va 
*** Checking user and group quotas for /dev/rdisk/dsk0g (/usr) 
*** Checking user and group quotas for domain_1#set_1 (/set_1) 
/usr:root    fixed group quota: inodes   3057 ->   3022 
                                blocks 100616 -> 123440
/usr:system  fixed group quota: inodes   2483 ->   2488 
                                blocks  91721 -> 114568 
/usr:adm     fixed group quota: inodes    280 ->    240 
                                blocks    487 ->    464

3.4.1.5    ファイルセットごとのユーザおよびグループ・クォータの要約

repquota コマンドは,指定したファイルセットの実際のディスク使用量とクォータを表示します。 出力される要約には,マウント済みで,/etc/fstab ファイルにクォータ・エントリがあるファイルセットのみが含まれます。 特に指定しなければ,ユーザ・クォータが報告されますが,-u オプションでユーザ・クォータの報告,-g オプションでグループ・クォータの報告を,それぞれ明示的に指定することもできます。 -a オプションを指定するとユーザとグループの両方のクォータが表示されます。

repquota コマンドは,ユーザまたはグループのそれぞれについて,現在のファイル数,使用中のスペースの量,edquota コマンドで設定したクォータ限界値が表示されます。

次の例では,/set_1 にマウントした 1 つのファイルセットのクォータの要約を出力しています。

# repquota -v /set_1
*** Report for user quotas on /set_1 (domain_1#set_1)
                    Block limits              File limits  
User       used    soft    hard  grace  used  soft  hard  grace  
root  --  34088       0       0          123     0     0  
user5 --    816   20000   30000            9   350   500  

次の例では,/etc/fstab ファイルにクォータを定義しているすべてのマウントされたファイルセットについて,ユーザおよびグループ・クォータの情報を表示しています。 この例では,UFS と AdvFS の両方のファイルが表示されています。

# repquota -va 
*** Report for group quotas on /usr (/dev/disk/dsk0g)
                    Block limits              File limits
Group         used  soft  hard  grace   used  soft  hard  grace
system   -- 114568     0     0          2488     0     0
daemon   --    144     0     0             1     0     0
uucp     --    801     0     0             8     0     0
mem      --   1096     0     0            10     0     0
bin      -- 108989     0     0          3219     0     0
mail     --    209     0     0             2     0     0 
terminal --     56     0     0             2     0     0 
adm      --    464     0     0           240     0     0
operator --    392     0     0             3     0     0  
211      --   6937     0     0            33     0     0
*** Report for user quotas on /usr (/dev/disk/dsk0g)
                     Block limits              File limits    
User          used  soft  hard  grace   used  soft  hard  grace
root     -- 123440     0     0          3022     0     0    
bi       -- 102534     0     0          2940     0     0    
uucp     --    729     0     0             7     0     0    
adm      --      1     0     0             1     0     0    
user5    --     15    18    24             1     0     0    
kraetsch --   6937     0     0            35     0     0 
*** Report for group quotas on /set_1 (domain_1#set_1)
                     Block limits              File limits    
Group         used  soft  hard  grace   used  soft  hard  grace
system   --  22816     0     0            50     0     0    
daemon   --  12088     0     0            82     0     0
*** Report for user quotas on /set_1 (domain_1#set_1)
                     Block limits              File limits    
User          used  soft  hard  grace   used  soft  hard  grace
root     --  34088     0     0           123     0     0    
user5    --    816 20000 30000             9   350   500 
*** Report for group quotas on /set_3 (domain_2#set_3)
                     Block limits              File limits    
Group        used   soft  hard  grace   used  soft  hard  grace
system   --  1593      0     0             6     0     0
*** Report for user quotas on /set_3 (domain_2#set_3)
                     Block limits              File limits    
User         used   soft  hard  grace   used  soft  hard  grace
root     --  1593      0     0             6     0     0

3.4.2    ファイルセット・クォータの確認

ファイルセット・クォータ情報は,ファイルセットをチェックする一般的なコマンドで表示することができます。 表 3-4 に示すのは,この目的のために使用できる便利なコマンドです。

表 3-4:  ユーザおよびグループの使用量コマンド

コマンド 説明
df ファイルセットごとにディスク使用量を表示します。
showfsets -q オプションを指定すると,ファイルセット・クォータ限界値を表示します。
showfdmn ドメイン情報を表示します。
/sbin/advfs/vdf 他のファイルセット・ディスク使用量コマンドの出力フォーマットを加工できます。

3.4.2.1    ファイルセット・スペース情報の表示

df コマンドを使用して,ファイルセット内の使用済みディスク・スペースおよび空きディスク・スペースを表示することができます。 このコマンドは,ハードあるいはソフトのいずれか低い方の限界値を使用して利用可能ディスク容量を計算します。

df コマンドの出力結果には,メタデータやクォータ・ファイルが使用するスペースは含まれません。

AdvFS は,各ファイルセットの容量をそれぞれ個別に計算します。 ドメインに複数のファイルセットがある場合は,ファイルセット・クォータによって制限されない限り,すべての未使用スペースが各ファイルセットで利用できます。 そのため,ドメイン内の各ファイルセットの総容量が 100% 超えた値で表示される場合もあります。 次の例では,fileset_1 で利用可能なスペースの量を表示しています。

# df /fileset_1
Filesystem        512-blocks  Used Avail  Capacity  Mounted on
domain_1#fileset_1      1500  1750     0      117%  /fileset_1 

この例では,使用量が限界値を超えているため,容量は実際の使用スペース (1750/1500) で計算され,結果は 100% を超えています。 使用量が限界値未満の場合は,容量は (Used)/(Used + Avail) で計算されます。

次の例では,ファイルセット jan および mar のそれぞれが,credit ボリュームで利用可能なすべてのディスク・スペースを使用できることを示しています。

# df
  Filesystem   512-blocks    Used    Avail Capacity  Mounted on
credit#jan        2000000  390820    98864      80%  /jan
credit#mar        2000000  271580    98864      73%  /mar 
 

3.4.2.2    ファイルセットの限界値の表示

showfsets コマンドに -q オプションを指定すると,指定したドメイン内のファイルセットに関する,ファイルの使用状況,ハード限界値,ソフト限界値,および猶予期間が表示されます。 表示される数値には,使用中のブロック数,ブロック数の限界値,使用中のファイル数,およびファイル数の限界値が含まれます。 正しい情報を得るには,ファイルセットをマウントする必要があります。

次の例は,ドメイン domain_1 のファイルセット情報を表示しています。

# showfsets -q domain_1
  		     Block (512) Limits	    	File Limits     
Fileset  BF  used soft hard grace  used soft hard grace     
fileset1 +-  1750 1500 2000 11:32    35  300  400

この例で BF フィールドに表示されているプラス記号 (+) は,使用中のブロック数がソフト限界値を超えていることを示しています。 ハード限界値に達すると,アスタリスク (*) が表示されます。 この場合は,ファイル数の限界にはまだ達していません。

3.4.2.3    ドメインの領域情報の表示

showfdmn コマンドで,ファイルセットとクォータに関する意思決定の材料として利用できるドメインの統計情報が得られます。 このコマンドはドメインの属性と,(ボリュームの総容量,空きブロックの総数,および割り当て済みボリューム領域の割合 (パーセント) などの)ドメイン内の各ボリュームの情報を表示します。

# showfdmn usr_domain
               Id         Date Created LogPgs Version Domain Name
39cbf2d6.0002691e Sun Jan 20 17:01 2002   512       4 usr_domain
 
 Vol  512-Blks    Free % Used Cmode Rblks Wblks Vol Name 
  1L  10605520 7757728    27%    on   256   256 /dev/disk/dsk8d

3.4.2.4    ドメインとファイルセットのディスク使用状況の表示

/sbin/advfs/vdf ユーティリティは,showfdmnshowfsets,および df コマンドの出力を再フォーマットして,AdvFS ドメインおよびファイルセットのディスク使用量に関する情報を表示します。 このコマンドは,ドメインのディスク使用量とファイルセットのディスク使用量との間の関係を明らかにします。

このユーティリティには,次の制限事項があります。

vdf コマンドは,アクティブでないシステム上で実行するこのをお勧めします。 このコマンドは,一連のユーティリティを実行するため,システムが実際にファイルの追加,削除,修正などを行なっていると vdf コマンドの出力に矛盾が生じる可能性があるからです。

vdf コマンドでは,ドメインおよびファイルセット名のどちらでも指定できます。 ファイルセット名のみを指定した場合,df コマンドを実行した場合と同じ出力結果となります。 ドメインを指定した場合,このユーティリティはメタデータのディスク・ブロック数も表示します。 -l オプションでドメインあるいはファイルセットを指定した場合,ドメインおよびファイルセットの両方の情報が表示されます。 表示されるドメイン・メタデータは,ドメイン内のすべてのファイルセットで共用される総メタデータです。

次の例では,ドメイン usr_domain に関する要約情報を表示しています。

# /sbin/advfs/vdf usr_domain
Domain     512-blocks   Metadata    Used   Available  Capacity
usr_domain      65536      11219   47549        6768       89%

次の例では,2 つのファイルセットを含む jba ドメインについて調べています。 それぞれ 60,000 ブロックのクォータが設定されています。

# /sbin/advfs/vdf -l jba
 
Domain     512-blocks   Metadata    Used   Available  Capacity
jba            266240       5824   29128      231288       13% 
 
Fileset    QuotaLimit               Used   Available  Capacity
jbfsa           60000              20800       39200       35%
jbfs2a          60000               8328       51672       14% 

次の例では,クォータが設定されていない 2 つのファイルセットを含む jbb ドメインに関する情報を表示しています。 この例では,各ファイルセットで使用可能な総容量は,ドメインの総容量と同じです。

# /sbin/advfs/vdf -l jbb
Domain     512-blocks   Metadata    Used   Available  Capacity
jbb            266240       5824   29128      231288       13% 
 
Fileset    QuotaLimit               Used   Available  Capacity
jbfsb               -              20800      231288       35%
jbfs2b              -               8328      231288       14%