B    ユーザ定義文字データベースのセットアップと使用法

日本語,中国語,韓国語では,アジア系言語の標準の文字セットで定義されていない文字を補うために,ユーザ定義文字 (UDC) を使用することができます。 この付録では,UDC と,UDC の入力および表示をサポートするファイルの作成方法について説明します。

UDC の作成には,B.1 節で説明する cedit エディタを使用します。 UDC のフォント・ファイル,照合ファイル,およびその他のサポート・ファイルを作成するには,B.2 節で説明する cgen コマンドを使用します。 X アプリケーションはフォント・レンダラを使用して,UDC データベースから直接 UDC 用のフォントを取得できます。 フォント・レンダラについては,7.6 節を参照してください。

注意

システム標準の sort コマンドは,UDC 用に作成された照合ファイルにはアクセスしません。 これらのファイルにアクセスするには,asort コマンドを使用します。 これらの文字を含む文字列のソートについては, asort(1) のリファレンス・ページと,『国際化機能ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

端末あるいはワークステーションのモニタで UDC を表示させるためには,そのための設定操作が必要です。

atty ドライバには,UDC に関連するファイルのオンデマンド・ローディングを可能にするメカニズムが備わっています。 このメカニズムを有効にすると,stty コマンドで省略時のパラメータ値を変更できます。 表 B-1 に,オンデマンド・ローディングで使用する stty コマンド・オプションを示します。

表 B-1:  UDC サポート・ファイルのオンデマンド・ローディングのための stty オプション

stty オプション 説明
odl ソフトウェア・オンデマンド・ローディング (SoftODL) サービスを有効にします。
-odl ソフトウェア・オンデマンド・ローディング (SoftODL) サービスを無効にします。
odlsize size ODL バッファの最大サイズを設定します。 このサイズは,端末のフォント・キャッシュ・サイズと同じでなければなりません。 省略時の size は 256 文字です。
odltype type ODL バッファの置換方式を設定します。 type に指定できる値は,fifo (先入れ先出し) と lru (最低使用頻度) です。
odldb path

UDC をサポートするデータベースとその他のファイルのパスを設定します。

このパスが指定されていない場合,システムの省略時ファイルが使用されるか,あるいは,ユーザが個人用の UDC データベースを作成できるときは,プロセスの省略時ファイルが使用されます。

各種データベースの省略時パス名は,この章の後半で説明するファイル /var/i18n/conf/cp_dirs で指定されます。 たとえば,cp_dirs ファイルにはシステム全体の省略時パス名が /var/i18n/udc/var/i18n/odl であり,プロセスの省略時パス名が $HOME/.udc$HOME/.odl であることを指定できます。 odl ファイルを変更したいときは,odldb オプションを使用します。

odlreset ODL サービスをリセットし,内部 ODL バッファをクリアします。
odlall ODL サービスの現在の設定を表示します。

図 B-1 に,表 B-1 で説明したコンポーネントと SoftODL サービスの関係を示します。

図 B-1:  ユーザ定義文字をサポートするコンポーネント

B.1    ユーザ定義文字の作成

UDC エディタ (cedit コマンドで起動されます) は,ユーザ定義文字の属性を管理するための curses アプリケーションです。 cedit で操作できる文字属性は次のとおりです。

ユーザ定義文字には,文字属性 UDC データベースに格納される,それぞれの文字属性レコードがあります。 UDC データベースには,システム全体で使用されるものと,個人用のものがあります。 全ユーザが共有するシステム全体のデータベースは 1 つしか設定できませんが,すべてのユーザがシステム全体のデータベースの他に個人用のデータベースを持つことができます。

UDC エディタを起動するには,次のように入力します。

% cedit

オプションを指定しないで cedit コマンドを実行すると,省略時のデータベースが使用されます。 スーパユーザの場合,省略時のデータベースは /var/i18n/udc になります。 一般ユーザの場合には,省略時のデータベースは $HOME/.udc になります。 個人用データベース内の UDC を使用した場合,さまざまな問題が発生する可能性があります。 たとえば,個人用データベースに定義されている属性に依存している文字を使用したデータを交換するユーザは,個人用のデータベースを共同で管理しなければなりません。 このような問題を回避するには,特権ユーザが,システム全体のデータベースですべての UDC を管理するようにしてください。表 B-2 に示すように,cedit コマンドには多数のオプションと引数があります。

表 B-2:  cedit コマンドのオプション

cedit のオプションと引数 説明
-c old_db 日本語 ULTRIX の fedit フォント・ファイルやアジア版 ULTRIX の文字属性データベース・ファイルを,cedit で使用されるフォーマットに変換します。
cur_db 文字属性データベースのパスを指定します (省略時のパスを無効にします)。
-h cedit の構文を表示します。
-r ref_db

基準文字属性データベースのパスを指定します (省略時のパスを無効にします)。

このデータベースは,cedit で操作する UDC データベースのモデルとして使用します。

cedit の [File] メニューの Reference Database 項目は,cedit のコマンド行で -r オプションを指定した場合に得られる結果と同じです。

cedit コマンドは,UDC の作成をサポートしていないロケール設定の場合,エラー・メッセージを返します。 UDC がサポートされているロケールには,中国語や日本語のロケールがあります。 cedit を起動した後に,cedit ユーザ・インタフェース画面の [Options] メニューを使用して,ユーザ・インタフェース・メッセージやヘルプ・テキストを英語に戻すことができます。

注意

dtterm 端末エミュレータは,cedit の機能をサポートしていません。 このため,dtterm 下で cedit を使用しようとすると,UDC マネージャ・ユーティリティがハング・アップすることがあります。 cedit の機能をサポートしている,dxterm 端末エミュレータを使用してください。

次の項では,cedit の画面,メニュー項目,編集モード,およびファンクション・キーについて説明します。

B.1.1    cedit のユーザ・インタフェース画面上での操作

LANG 変数が zh_TW.big5 などのサポートされているロケールに設定されている場合,cedit コマンドは,ユーザ・インタフェース画面を表示します (図 B-2)。

図 B-2:  cedit のユーザ・インタフェース画面

ユーザ・インタフェース画面は,次の領域に分割されています。

メニュー上の項目を参照するには,メニュー・タイトルの下線が付いている文字のキーを押します。 または,キーボードの 4 つの矢印キーを使用してメニューを選択し,Return キーまたはスペース・バーを押します。

メニュー項目は,次のいずれかの状態で表示されます。

項目を起動せずに,1 つ上のレベルのメニューに戻るには,Ctrl/X を押します。

ユーザ・インタフェース画面のメニューには,ユーザ定義文字とその属性を管理するための,次のようなオプションがあります。

B.1.2    フォント・グリフの編集

ユーザ定義文字のフォント・グリフを作成または変更するには,以下の手順に従って,cedit のフォント編集画面を呼び出さなければなりません。

  1. [Edit] メニューから [Character] 項目を選択し,文字を選択します。

    cedit は,編集する文字の 16 進コード値 (\x プレフィックスは付けない) を入力するように求めます。 UDC 文字の有効なコード範囲は,一連の構成ファイルで定義されています。 現在のロケールの言語と地域に対して,複数のコードセットがサポートされている場合,cedit は,関連するすべてのロケールでその文字が使用できるように,その他のコードセットの値も判定しようとします。

    cedit が,他のコードセットにおける文字の値を判定できない場合には,[Options] メニューでコードセット設定を変更し,そのコードセットにおける文字のコードを明示的に指定することもできます。

    一般に,その言語でサポートされている他のコードセットに対してマップ可能な値を UDC が持つように定義します。 特定のアジア系言語における UDC のコードについては,次の言語固有のマニュアルを参照してください。

    これらのマニュアルは,本オペレーティング・システムのドキュメント Web サイト (http://h30097.www3.hp.com/docs/pub_page/V51A_DOCS/PRG_DOCS.HTM) で,プログラミング関連ドキュメントとして掲載されています。

    cedit エディタはまず,ユーザが入力したコードを現在の UDC データベースで検索します。 そのコードの文字が UDC データベースになければ,現在の基準文字データベースで検索します。

  2. [Edit] メニューの Font 項目を選択し,フォント・スタイル/サイズのオプションを表示します。

  3. フォント・スタイル/サイズ・オプションのいずれかを選択します。

    Motif アプリケーションで使用するフォント・グリフを作成する場合,使用可能なサイズ・オプションが,そのフォントを使用するウィンドウ領域に適していないことがあります。 その場合には,フォントの縦横両方の大きさに対応できる一番小さなサイズ・オプションを選択します。

cedit エディタは,フォントの全画面エディタ・インタフェースを表示します (図 B-3)。

図 B-3:  credit フォント編集画面

cedit のフォント編集画面には,次のウィンドウがあります。

注意

小さなウィンドウでのフォント・グリフ表示には,ハードウェア上の制約がいくつかあります。

参照および表示ウィンドウでのフォント・グリフの表示は,一部の端末,特に動的置換文字セット (DRCS) 機能をサポートしているローカル言語端末でのみ可能です。

端末エミュレーション・ウィンドウでは,表示ウィンドウのフォント・グリフは実寸大では表示されません。

編集ウィンドウで作成した,システム・ソフトウェア用のフォントは,エディタ・インタフェース画面が表示される前に,ユーザが選択したサイズになるように処理されます。

また,Motif アプリケーション用のフォントを作成することもできますが,Motif アプリケーション用のフォントは選択したサイズよりも小さくなります。 この場合,編集操作は,編集ウィンドウの左上隅から始まる長方形内で行い,利用可能な編集領域よりも小さいサイズのフォントに制限されます (図 B-4 を参照)。

Motif アプリケーションをサポートする UDC フォント・コンバータは,編集ウィンドウの左上隅をフォントの原点と見なし,この原点に基づいてグリフを囲むのに必要な大きさを決定し,その外側にある未使用の領域を破棄します。 また,このユーティリティを使用すると,コンパイル済みのフォント・グリフのサイズを明示的に指定することもできます。

図 B-4:  フォント・サイズを変更するフォント編集画面の解釈

cedit のすべての機能はキーにバインドされています。 つまり,キーを押すことにより,機能を実行できます。 PF2 キーまたは Help キーを押すと,各キーがバインドされている編集機能のダイアグラムが表示されます。 システムによってキーパッドのデザインが異なるため,オンライン・ダイアグラムがこの項の説明と異なることもあります。 cedit 編集画面には,次の編集モードがあります。

cedit は,4 つのバッファを使用してビットマップ・データを保持します。 これらのバッファのいくつかは,バッファの説明の次に解説する編集機能で使用されます。

フォント編集画面上でウィンドウ操作を行っているときは,キーストロークを使用するか,場合によっては Do キーを押したときに表示されるポップアップ・メニューを使用して,編集機能を呼び出します。 ポップアップ・メニューでは,次の機能を使用できます。

図 B-5 に,さまざまな編集機能を呼び出すためのキーパッド・キーマップを示します。 その次の表には,キーパッド機能と,描画に使用される英字キーの説明を示します。

図 B-5:  cedit の編集機能を呼び出すためのキーマップ

表 B-3:  さまざまなフォント編集機能のためのキー

キー 説明
Help または PF2 キーと編集機能の対応付けを表示します。 特定のキーの編集機能については,図の中のキーと Help キーを同時に押してください。
PF1 GOLD 状態 (代替機能を持つキーに関するワード・プロセッサ用語) を切り替えます。 一部のキーパッド・キーには,複数の機能が対応付けられています。 そのような場合は,PF1 キーを押してから他のキーパッド・キーを押すと,機能の 1 つが実行されます。
KP. 表示ウィンドウ上に実寸大のフォント・グリフを表示します。
GOLD KP. 編集ウィンドウ上に表示されているフォント・グリフをクリアします。
U または u 直前の操作を取り消します。
Ctrl/L 画面を再描画します。
Ctrl/Z cedit を停止します。
Do SCALE,USE,および REFER 機能を呼び出すためのポップアップ・メニューを表示します。
Enter 変更を保存し,フォント・エディタを終了します。
GOLD Enter 変更を保存せずに,フォント・エディタを終了します。

表 B-4:  cedit モードを切り替えるためのキー

キー 説明
PF3 カーソル・モードを切り替えます。
PF4 ペースト・モードを切り替えます。
KP- タイプ・モードを切り替えます。
KP. ラップ・モードを切り替えます。

表 B-5:  カーソル移動を制御するためのキー

キー 説明
上矢印 カーソルを上に移動します。
下矢印 カーソルを下に移動します。
左矢印 カーソルを左に移動します。
右矢印 カーソルを右に移動します。
KP7 カーソル・モードに応じて,カーソルを左上に移動します。
KP8 カーソル・モードに応じて,カーソルを上に移動します。
KP9 カーソル・モードに応じて,カーソルを右上に移動します。
KP4 カーソル・モードに応じて,カーソルを左に移動します。
KP6 カーソル・モードに応じて,カーソルを右に移動します。
KP1 カーソル・モードに応じて,カーソルを左下に移動します。
KP2 カーソル・モードに応じて,カーソルを下に移動します。
KP3 カーソル・モードに応じて,カーソルを右下に移動します。
KP5 カーソルを移動せずに,カーソルの下のピクセルを反転します。

表 B-6:  ウィンドウ領域にカーソルを移動するためのキー

キー [脚注 5] 説明
GOLD KP7 カーソルを左上隅に移動します。
GOLD KP8 カーソルを一番上の行に移動します。
GOLD KP9 カーソルを右上隅に移動します。
GOLD KP4 カーソルを一番左のカラムに移動します。
GOLD KP5 カーソルをウィンドウの中央に移動します。
GOLD KP6 カーソルを一番右のカラムに移動します。
GOLD KP1 カーソルを左下隅に移動します。
GOLD KP2 カーソルを一番下の行に移動します。
GOLD KP3 カーソルを右下隅に移動します。

表 B-7:  フォント・グリフを描画するためのキー

キー 説明
L または l 選択した 2 つの点を結ぶ線を描きます。
C または c 選択した点を中心とする円を描きます。
r 選択した領域に,点線の長方形を描きます。
R 選択した領域に,実線の長方形を描きます。
e 選択した領域に,点線の楕円を描きます。
E 選択した領域に,実線の楕円を描きます。
X または x 横軸 (X 軸) に沿ってフォント・グリフを反転します。
Y または y 縦軸 (Y 軸) に沿ってフォント・グリフを反転します。
/ 45 度の対角線に沿ってフォント・グリフを反転します。
\ 135 度の対角線に沿ってフォント・グリフを反転します。
F または f カーソル・モードに応じて,領域を塗り潰します。
T または t すべてのピクセル状態を反転させます。

表 B-8:  フォント・グリフを編集するためのキー

キー [脚注 6] 説明
KP0 編集ウィンドウの表示を,編集バッファ内のフォント・グリフから,使用バッファ内のフォント・グリフに変更します。
GOLD KP. 参照ウィンドウにフォント・グリフを表示します。
GOLD KP0 編集ウィンドウの表示を,使用バッファ内のフォント・グリフから,編集バッファ内のフォント・グリフに変更します。
Select 選択した領域で操作を開始するか,取り消します。
Insert カット-アンド-ペースト・バッファの内容を挿入します。
Remove 選択した領域をカット-アンド-ペースト・バッファにカットします。
GOLD Remove 選択した領域をカット-アンド-ペースト・バッファにコピーします。
GOLD 上矢印 フォント・グリフを 1 行上にずらします。
GOLD 下矢印 フォント・グリフを 1 行下にずらします。
GOLD 左矢印 フォント・グリフを 1 カラム左にずらします。
GOLD 右矢印 フォント・グリフを 1 カラム右にずらします。

以下に,一般的な cedit 操作を実行するために推奨する方法をまとめます。 通常,1 つの編集操作を実行する方法は複数あります。

フォント・グリフを作成したら,その名前,入力キー・シーケンス,照合値,さらにオプションとして,文字が属するクラス名を指定する必要があります。 cedit ユーザ・インタフェース画面の [Edit] メニュー項目を使用して,これらの属性を指定します。

B.2    システム・ソフトウェアが使用する UDC サポート・ファイルの作成

UDC データベースに格納されている文字属性は,さまざまなシステム・ソフトウェアのニーズに合わせて,特定の種類のファイルに出力されなければなりません。 たとえば,端末ドライバ・ソフトウェアと asort コマンドは,ユーザ定義文字属性を認識できなければなりませんが,UDC データベース内の情報に直接アクセスすることはできません。 そのため,UDC データベース内の文字属性を作成したり変更したときは,cgen コマンドを使用して,次のサポート・ファイルを作成する必要があります。

次のコマンドは,~wang/.udc 内の UDC データベースについて,これらのファイルのいくつかを作成します。

% cgen -odl -pre -col -iks ~wang/.udc

オプションを指定せずに cgen を実行すると,指定したデータベースに関する統計情報が表示されます。 UDC データベースを指定せずに実行すると,一般ユーザの場合は個人用のユーザ・データベースが使用されます。 スーパユーザの場合には,システム・データベースが使用されます。 つまり,上記の例で,コマンドを入力したユーザが wang でログオンしている場合,データベースの指定は必要ありません。

表 B-9 で,cgen コマンドのオプションについて説明します。 この表で,bdf フォーマットは Bitmap Distribution Format のことで,pcf フォーマットは Portable Compiled Format のことです。 これらのフォーマットについては, bdftopcf(1X) のリファレンス・ページを参照してください。

表 B-9:  cgen コマンドのオプション

オプション 説明
-bdf X および DECwindows の Motif アプリケーションに必要な .bdf (Bitmap Distribution Format) ファイルを作成します。
-col 照合値テーブルを作成します。 これらのテーブルをソート操作に使用したいときは,sort コマンドではなく asort コマンドを使用しなければなりません。
-dpi 75|100 -bdf と -pcf オプションを指定して,.bdf.pcf ファイルを作成するときの解像度を 75 または 100 に設定します。
-fprop property -bdf と -pcf オプションを指定して,.bdf.pcf ファイルを作成するときのフォント・プロパティを設定します。
-iks 入力キー・シーケンス・ファイルを作成します。
-merge font_pattern

fontconverter コマンドを呼び出して,指定された font_pattern (たとえば,'*-140-*jisx0208*') に合った既存の .pcf フォント・ファイルと UDC フォントをマージします。

-merge オプションを指定するときは,-pcf と -size オプションも指定する必要があります。 出力の .pcf ファイルは,registry_width_ height.pcf の形式です。 registry は,指定されたフォント・ファイルのフォント・レジストリ・フィールドです。

-osiz width-xheight

bdf 出力フォーマットのフォント・サイズを指定します。

bdf フォーマットのフォント・サイズは,UDC データベースで定義されているフォント・サイズと異なる場合があります。 cedit コマンドがサポートするフォント・サイズには制限があります。 -osiz オプションを指定すると,.bdf ファイルと,.bdf ファイルから生成される .pcf ファイルの両方で,これらのサイズ制限を変更できます。

-osiz オプションで指定したサイズ・パラメータが,-size オプションで指定したサイズ・パラメータよりも小さい場合は,UDC フォント・グリフの左上部分だけが使用されます。 -osiz オプションで指定したサイズ・パラメータが,-size オプションで指定したサイズ・パラメータよりも大きい場合には,結果として得られたフォント・グリフの右下部分が OFF ピクセルで塗り潰されます。

-pcf

bdftopcf コマンドを呼び出して,X と Motif アプリケーションに必要な .pcf ファイルを作成します。

このオプションを指定した場合,cgen コマンドは mkfontdirxset コマンドも呼び出して,フォントをフォント・サーバに通知し,アプリケーションから利用できるようにします。

-pre

プリロード・フォント・ファイルを作成します。

プリロード・フォント・ファイルは,端末と一部のプリンタに直接かつ完全にロードされるファイルです。 ほとんどのデバイスではメモリに制限があるため,UDC データベースが大きい場合には,プリロード・ファイルを使用しても意味がありません。 オンデマンド・ローディング (ODL) では,プリロード・フォント・ファイルの代わりに ODL フォント・ファイルを使用します。

-odl

ODL フォント・ファイルを作成します。

端末ドライバは,必要性と使用可能なメモリに応じて,ODL フォント・ファイルからフォントをインクリメンタルにロードします。

-win userfont

Windows Version 3.1 や Windows NT Version 3.5 システムにコピー可能な,userfont というフォント・ファイルを作成します。 指定したファイルには 1 つのサイズしか使用できないため,-size フラグを指定する必要があります。 このオプションで作成されるフォント・ファイルでサポートされるコードセットは,big5 (中国語 Windows システム),SJIS (日本語 Windows システム),および deckorean (韓国語 Windows システム) です。

B.3    X11 や Motif アプリケーションで使用する UDC フォントの処理

cgen の -pre オプションで作成されたプリロード・フォント・ファイルを,X11 や Motif アプリケーションで使用できるようにするには,BDF (Bitmap Distribution Format) または PCF (Portable Compiled Format) に変換しなければなりません。 この変換を行う fontconverter コマンドは,変換出力に対し次のいずれかの処理を実行できます。

ここでは,fontconverter コマンドと,そのオプションの使用方法について説明します。 cgen コマンドにも fontconverter のオプションに対応するオプションがあります。 つまり,fontconverter の操作は,cgen のコマンド行で類似したオプションを指定することにより,間接的に実行できます。

B.3.1    fontconverter のコマンド・オプションの使用法

次の例は,出力ファイルに省略時の名前を使用する最も簡単な形式の fontconverter コマンドです。 この例とこれ以降の説明では,コマンド入力時のロケールには日本語ロケールが設定されており,24x24 のフォント・サイズがフォント・グリフの作成時に cedit エディタで指定されているものとします。

% fontconverter \
-font -jdecw-screen-medium-r-normal--24-240-75-75-m-240-jisx0208-kanji11 \
my_font.pre

上記のコマンドは,my_fonts.pre ファイル内のフォントを変換します。 省略時の設定では,コマンドはフォント・ファイル JISX.UDC_24_24.pcfJISX.UDC_24_24.bdf を作成します。

出力フォント・ファイルの省略時のベース名は,次のように言語によって異なります。

フォントの幅と高さを表す文字列が,出力フォント・ファイル名のベース名に自動的に追加されます。 ベース名は,レジストリ名として,XLFD (X Logical Font Description) でも使用されます。 フォントをアプリケーションから利用できるようにするためには,コンパイル済みの (pcf) フォントに対して,次のいずれかの処理を行う必要があります。

表 B-10 では,fontconverter コマンドのオプションを説明します。 オプションは,-preload を除き,コマンド行に指定する順に示されています。 これらのオプションの使用例については,B.3.2 項を参照してください。

表 B-10:  fontconverter コマンドのオプションと引数

引数またはオプション 説明
-merge

コマンド出力を,既存のフォント・ファイルとマージします。

-font オプションも参照してください。

-w

フォント幅を指定します。

このオプションは,フォントが cedit フォント編集ウィンドウで指定された幅よりも狭い幅で作成される場合に使用します。

-h

フォントの高さを指定します。

このオプションは,フォントが cedit フォント編集ウィンドウで指定された高さよりも低い高さで作成される場合に使用します。

-udc base_name

出力 UDC フォント・ファイルの基本ファイル名を指定します。

このオプションは,スタンドアロンの出力ファイルを作成し (出力を既存のファイルにマージしない),出力ファイルに省略時の名前を付けたくない場合に使用します。

-font reference_font

基準フォントを指定します。 基準フォントは,使用しているディスプレイ上で使用可能なフォントの名前です。 xlsfonts コマンド ( xlsfonts(1X) を参照) を使用して,使用可能なフォントを判別します。

-font オプションを -merge オプションと組み合わせて使用すると,reference_font は,変換されたフォント・グリフがマージされるフォントを示します。

-font オプションを -merge オプションなしで使用すると,reference_font のヘッダが,スタンドアロン出力ファイルのヘッダを生成するときの基準として使用されます。 また,reference_font の情報は,スタンドアロン出力ファイル内の省略時の文字を決定するのにも使用されます。 省略時の文字は,フォントが指定されたコードに対応するグリフをなにも含まないときに表示されるグリフ (通常は四角形) です。

-preload preload_font

入力ファイル (cgen-pre コマンドで作成されたもの) を指定します。

このオプションは,fontconverter コマンド行の任意の位置に preload_font 引数を指定したい場合に使用します。 preload_font をコマンド行の終わりに置くときは,-preload を省略できます。

B.3.2    出力ファイル・フォーマットの制御

X と Motif アプリケーションには,PCF フォーマットのロード可能なフォントが必要です。

-merge オプションを使用しない場合,fontconverter コマンドは,PCF と BDF の両方のフォーマットのスタンドアロン・フォント・ファイルを作成します。 -merge オプションを指定すると,変換されたフォントは,-font オプションで指定された標準 PCF フォントにマージされ,PCF フォーマットのスタンドアロン・ファイルのみが作成されます。

UDC フォントを標準のフォントとマージしたときは,すべての Motif アプリケーションで結合したファイルを使用できます。

独立したフォント・ファイルを作成した場合,マージしたフォントは,結合したファイルを明示的にロードするアプリケーションで使用できます。 フォント・レジストリが,特定のロケールの UDC レジストリの 1 つであれば,標準のシステム・アプリケーションでも作成したフォント・ファイルを使用できます。

fontconverter の処理時間は,フォントを既存のファイルにマージするときの方が,独立したファイルを作成するときよりも長くなる点に注意してください。

次のような操作を実行する fontconverter の例を,以下に示します。

% fontconverter -merge -font \
-jdecw-screen-medium-r-normal--24-240-75-75-m-240-jisx0208-kanji11 \
udc_font.pre

次のような操作を実行する fontconverter の例を,以下に示します。

% fontconverter -udc deckanji.udc -font \
-jdecw-screen-medium-r-normal--24-240-75-75-m-240-jisx0208-kanji11 \
udc_font.pre