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OpenVMS マニュアル | 
    
  
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HP OpenVMS
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| 目次 | 索引 | 
第 1 章
OpenVMS Cluster システムの管理の概要
DEC (Digital Equipment Corporation) 社は,1983 年に開発した VAXcluster システムによって, "クラスタ"・テクノロジを開拓しました。この VAXcluster システムは,複数の標準 VAX コンピューティング・システムと VMS オペレーティング・システムを使用して構築されました。初期の VAXcluster システムでは,集中化されたシステムのパワーと管理機能に加えて,物理的に分散された多くのコンピューティング・システムを利用できるという柔軟性が提供されました。
その後,この技術は混成アーキテクチャのクラスタ・システムをサポートするように進化し, OpenVMS Cluster システムと名前を変えています。当初は,OpenVMS Alpha と OpenVMS VAX の混成アーキテクチャ・クラスタ・システムがサポートされていました。 OpenVMS Version 8.2 で,OpenVMS Integrity システムのみのクラスタ・システムと OpenVMS Integrity と OpenVMS Alpha の混成アーキテクチャ・クラスタ・システムがサポートされています。 HP は,今後も継続して OpenVMS Cluster 機能を強化し,拡張していきます。
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1.1 概要
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OpenVMS Cluster システムは, OpenVMS ソフトウェア,Alpha システム,VAX システム,Integrity サーバ,ストレージ・デバイスが高度に統合され,それらがあたかも 1 つのシステムのように動作します。 OpenVMS Cluster は 1 つの仮想システムとして動作しますが,実際には多くの分散するシステムで構成されています。 Alpha コンピュータと VAX コンピュータ,あるいは Alpha コンピュータと Integrity サーバは, OpenVMS Cluster システムのメンバとして,1 つのセキュリティ/管理ドメイン下で,処理リソース,データ・ストレージ,キューを共用することができ,しかもブートやシャットダウンは個別に行うことができます。
OpenVMS Cluster システム内のコンピュータ間の距離は,使用するインターコネクトに応じて異なります。たとえば,コンピュータ室にまとめて設置することができる場合,ビルの 2 つのフロアにまたがる場合,大学のキャンパスの複数の建物にまたがる場合,あるいは数百キロ離れた 2 つ以上の異なる場所に設置することも可能です。
2 つの異なる場所に設置されているコンピュータで構成される OpenVMS Cluster システムのことをマルチサイト OpenVMS Cluster システムと呼びます。マルチサイト OpenVMS Cluster は,ディザスタ・トレラント OpenVMS Cluster システムの基礎になります。マルチサイト・クラスタの詳細については,『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。
Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMS は, OpenVMS ディザスタ・トレラント・クラスタを構成および管理するための HP の保守用システム管理/ソフトウェア・パッケージです。 Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMS の詳細については, HP のサービス担当者にお問い合わせいただくか,次の URL を参照してください。
http://h71000.www7.hp.com/availability/index.html  | 
 OpenVMS Cluster システムはトランザクション処理システム,ネットワーク・クライアント/サーバ・アプリケーション用のサーバ,データ共用アプリケーションなど,高可用性アプリケーションを開発するための理想的な環境です。
 OpenVMS Cluster システムのコンピュータは,相互に連携して,協調動作する分散オペレーティング・システムを形成し,以下の表に示すように多くの利点をもたらします。
 
1.1.1 用途
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1.1.2 利点
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| 利点 | 説明 | 
|---|---|
| リソースの共用 | OpenVMS Cluster ソフトウェアは,すべてのクラスタ・メンバ間で,自動的にバッチ・キューとプリント・キュー,ストレージ・デバイス,その他のリソースの同期をとり,負荷のバランス調整を行う。 | 
| 柔軟性 | 共通のリソースを利用するために,アプリケーション・プログラマはアプリケーション・コードを変更する必要がなく,ユーザも OpenVMS Cluster 環境に関する知識を必要としない。 | 
| 高可用性 | システム設計者は冗長なハードウェア・コンポーネントを構成することで,1 ヵ所で障害が発生してもシステム全体がダウンすることのない,可用性の高いシステムを構築できる。 | 
| ノンストップ処理 | OpenVMS Cluster の各ノードで稼動される OpenVMS オペレーティング・システムは,構成が変更されても,容易に動的な調整が可能である。 | 
| 拡張性 | ビジネス・ニーズの拡大や変化に伴なって,企業はコンピューティング・リソースとストレージ・リソースを動的に拡張することができ,そのためにシステムをシャットダウンしたり,実行中のアプリケーションを停止する必要がない。 | 
| パフォーマンス | OpenVMS Cluster システムは高いパフォーマンスを提供できる。 | 
| 管理機能 | 複数の OpenVMS システムで同じシステム管理操作を繰り返す必要がなく,管理作業は 1 つ以上のノードに対して同時に実行できる。 | 
| セキュリティ | OpenVMS Cluster のコンピュータは,クラスタ内のすべてのノードからアクセスできる 1 つのセキュリティ・データベースを共用する。 | 
| 負荷分散 | OpenVMS Cluster システムは,各メンバの現在の負荷をもとにクラスタ・メンバ間で作業負荷を分散させることができる。 | 
OpenVMS Cluster システムは,以下の 3 つのグループのハードウェア・コンポーネントで構成されます。
関連項目:  OpenVMS Cluster の構成のガイドラインの詳細については, OpenVMS Cluster Software Software Product Description (SPD) および『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。
1.2.1 コンピュータ
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デスクトップからメインフレーム・システムに至るまで,最大 96 台のコンピュータを OpenVMS Cluster システムの メンバとして使用できます。以下のコンピュータは, OpenVMS Alpha または OpenVMS Integrity オペレーティング・システムを稼動し, OpenVMS Cluster のネゴシエーションに完全に参加するアクティブ・メンバになることができます。
インターコネクトとは,コンピュータを他のコンピュータやストレージ・サブシステムに接続する物理的なパスです。OpenVMS Cluster システムでは,さまざまなインターコネクト (バス) がサポートされており,メンバは以下に示す中から,最も適切で効果的な方法を使用して通信することができます。
![]()  |   注意 CI,DSSI,,および FDDI インターコネクトは, Alpha および VAX システムでのみサポートされます。 Memory Channel および ATM インターコネクトは Alpha システムでのみサポートされます。これらのインターコネクトの詳細については,本書の以前のバージョンを参照してください。  | 
| インターコネクト | サポート・プラットフォーム | 備考 | 
|---|---|---|
| IP: UDP | Integrity および Alpha | Fast Ethernet/Gigabit Ethernet/10 Gb Ethernet をサポート。 10 Gb Ethernet は Integrity サーバでのみサポート。 | 
| Fibre Channel | Integrity および Alpha | 共有ストレージのみ | 
| SAS | Integrity サーバ | |
| SCSI | Integrity および Alpha | 限られた共有ストレージ構成のみ | 
| LAN: Ethernet, Fast Ethernet, Gigabit Ethernet, および 10 Gb Ethernet | Integrity および Alpha | 10 Gb Ethernet は Integrity サーバでのみサポート | 
| MEMORY CHANNEL | Alpha | ノード間通信のみサポート | 
サポートされるインターコネクトおよび速度の最新情報については,『HP OpenVMS Cluster Software 
Software Product Description (SPD 29.78.xx)』を参照してください。
1.2.3 OpenVMS Galaxy SMCI
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第 1.2.2 項 に一覧を示した物理インターコネクトに加え, OpenVMS Galaxy インスタンス用の共用メモリ CI (SMCI) という別のタイプのインターコネクトが利用可能です。 SMCI は Galaxy インスタンス間のクラスタ通信をサポートします。
SMCI と Galaxy 構成の詳細については,『OpenVMS Alpha パーティショニングおよび Galaxy ガイド』を参照してください。
1.2.4 ストレージ・デバイス
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共用ストレージ・デバイスとは,クラスタ内の複数のコンピュータからアクセスできるディスクまたはテープです。ノードは,MSCP および TMSCP サーバ・ソフトウェア ( 第 1.3.1 項 を参照) を使用して,リモートのディスクおよびテープにアクセスします。
OpenVMS Cluster 内のシステムは,広範囲にわたるストレージ・デバイスをサポートしています。
| コントローラ | インターコネクト | 
|---|---|
| HSG および HSV | FC | 
| LSI 1068 および LSI Logic 1068e | SAS | 
| HSZ | SCSI | 
さらに,K.scsi HSC コントローラを使用すると, StorageWorks アレイと, HSC ストレージ・サブシステム上の SCSI デバイスを接続することができます。
注意:  HSZ コントローラは,ディスクとテープを接続する多くの SDI (標準ディスク・インタフェース) および STI (標準テープ・インタフェース) の組み合わせをサポートします。
サポートされるストレージ・デバイスの最新情報については,『日本語 HP OpenVMS Version 8.4 ソフトウェア仕様書』を参照してください。
AlphaServer でサポートするオプションについては,次の URL の AlphaServer の Web ページを参照してください。
http://h18002.www1.hp.com/alphaserver/  | 
Integrity サーバでサポートするオプションについては,次の URL の Integrity サーバの Web ページを参照してください。
http://h20341.www2.hp.com/integrity/cache/332341-0-0-0-121.html  | 
 OpenVMS Cluster の各ノードで稼動される OpenVMS オペレーティング・システムには,リソースの共用を可能にし,基礎になるハードウェア構成の変化に動的に対応する複数のソフトウェア・コンポーネントが含まれています。
 1 台のコンピュータが使用できなくなっても,残りのコンピュータの OpenVMS が稼動しているため,OpenVMS Cluster システムは操作を続行できます。
 以下の表は,ソフトウェア・コンポーネントとその主な機能を示しています。
 
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1.3 ソフトウェア・コンポーネント
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1.3.1 OpenVMS Cluster ソフトウェアの機能
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| コンポーネント | 機能 | 説明 | 
|---|---|---|
| 接続マネージャ | メンバの整合性 | クラスタへのコンピュータの追加を調整し,コンピュータがクラスタに追加されるときやクラスタから削除されるときに,クラスタの整合性を維持管理する。 | 
| 分散ロック・マネージャ | リソースの同期化 | 分散ファイル・システム,ジョブ・コントローラ,デバイスの割り当て,その他のクラスタ機能の同期をとる。 OpenVMS Cluster 中の 1 つのコンピュータがシャットダウンされると,そのコンピュータが保有しているすべてのロックは解放されるため,他のコンピュータで処理を続行できる。 | 
| 分散ファイル・システム | リソースの共用 | すべてのコンピュータは,ストレージ・デバイスの種類 (DSA,RF,SCSI,半導体サブシステム) や場所とは無関係に,マス・ストレージおよびファイル・レコードへのアクセスを共用できる。 | 
| 分散ジョブ・コントローラ | キューイング | 汎用キューおよび実行キューをクラスタ全体で使用できるようにする。 | 
| MSCP サーバ | ディスクの制御 | ディスクに直接アクセスできないすべてのノードがディスクを利用できるように,固有のマス・ストレージ制御プロトコルを実装する。 | 
| TMSCP サーバ | テープの制御 | テープ・ドライブに直接アクセスできないすべてのノードがテープ・ドライブを利用できるように,固有のテープ・マス・ストレージ制御プロトコルを実装する。 | 
SCA (System Communications Architecture) は, OpenVMS Cluster システムのノードが協調動作するための通信メカニズムを定義しています。 SCA は各ノードにあるリソース間のデータの共用を監視し,異なる Integrity サーバおよび Alpha システムで実行されているシステム・アプリケーション (SYSAP) を相互に結合します。
| 通信ソフトウェア | 機能 | 
|---|---|
| システム・アプリケーション (SYSAP) | プロセッサ間通信のために SCS ソフトウェアを使用するクラスタ単位のアプリケーション (たとえば,ディスク/テープ・クラス・ドライバ,接続マネージャ, MSCP サーバ) で構成される。 | 
| SCS (System Communications Services) | 基本的な接続管理/通信サービスを提供する。これは, OpenVMS Cluster システム内のノードのシステム・アプリケーション (SYSAP) 間の論理パスとして実装される。 | 
| ポート・ドライバ | ローカル・ポートとリモート・ポートの間の通信パスを制御する。 | 
| 物理インターコネクト | CI,DSSI,Ethernet,ATM,FDDI, MEMORY CHANNEL インターコネクト用のポートまたはアダプタで構成される。 PEDRIVER は LAN (Ethernet) インターコネクト用のポート・ドライバで, OpenVMS Version 8.4 以降は,PEDRIVER はクラスタ通信に TCP/IP を使用することも可能です。 | 
 
図 1-1 は,OpenVMS Cluster のコンポーネント間の関係を示しています。
 
図 1-1 OpenVMS Cluster システムの通信
 
図 1-1 で,異なるノードにあるプロセスは相互に情報を交換します。
 
 
1.4.1 システム通信
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OpenVMS Version 8.4 以降は,クラスタ通信に Transmission Control Protocol および Internet Protocol (TCP/IP) を使用することができます。 PEDRIVER は,LAN に加えて TCP/IP をクラスタ通信に使用できるように機能拡張されています。詳細は, 第 3 章 を参照してください。
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