日本語テキスト・トランスレータは英語版の ANSIトランスレータを日本語のために拡張したものです。ここではこのANSIトランスレータとの相違を,4つのデータ・タイプごとに説明します。ここで説明されていない部分については英語版 ANSI トランスレータと同じなので,次の2冊,
「 Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Reference Manual 」
「 Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Supplement 」
を参照してください。
| 注意
ANSIデータ・タイプを指定したときに,英語版ANSIトランスレータを用いるか,日本語拡張版ANSIトランスレータを用いるかは,トランスレータをサポートするソフトウェアの設定によって変更できます。英語版ANSIトランスレータを使用している場合は,以下で説明される拡張された機能は使用できません。
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2.2.1 日本語拡張版ANSIデータ・タイプ |
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以下の項目が拡張されています。
日本語フォントとして以下のフォントがサポートされています。
- 明朝体・縦32ドット×横32ドット相当のDEC漢字フォント
- 明朝体・縦40ドット×横40ドット相当のDEC漢字フォント
- ゴシック体・縦40ドット×横40ドット相当のDEC漢字フォント
- 明朝体・縦32ドット×横16ドット相当の半角ローマ字,半角カタカナ・フォント
- 明朝体・縦40ドット×横20ドット相当の半角ローマ字,半角カタカナ・フォント
- ゴシック体・縦40ドット×横20ドット相当の半角ローマ字,半角カタカナ・フォント
- 10ポイント10文字/インチ(cpi)および10.3cpiフォントに対応するカタカナ・フォント
- 10ポイント12cpiフォントに対応するカタカナ・フォント
- 6.7ポイント13.6cpiフォントに対応するカタカナ・フォント
| 注意
- 明朝体とゴシック体のフォントは,実際には PostScript のアウトラインフォントを使用しているので,ここで示したドット数は目安です。
- 32×32は8ポイント9.38cpi,40×40は10ポイント7.5cpiです。対応する半角フォントはそれぞれ18.75cpi,15cpiです。
- 32×32は6.7ポイント6.8cpiフォントとしても用いられます。これは6.7ポイント13.6cpiフォントに対応する全角漢字フォントを提供するためです。
- これらの追加されたフォントはゴシック体を除いて,DEC BUILTIN1ファミリとしても登録されています。このことにより,英文書体であるクーリエと明朝体の違いを意識せずに,文字セットの切り替えや文字サイズの切り替えが行えます。
- ゴシック体,縦32ドット×横32ドット相当のDEC漢字フォントは存在しません。
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ANSIおよびKANJIデータ・タイプでサポートされる,すべてのフォントのフォントIDとサンプル文字列を 付録 B に示します。
文字セット指示命令SCS(Select Character Set)でサポートされる文字セットとして,JISカタカナ・セットとDEC漢字指示セットが追加されています。DEC漢字指示セットについては,「DEC漢字コード表」(AA-A056C-TE-JO)を参照してください。それ以外の文字セットのコード表は「 Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Reference Manual 」のAppendix Aを参照してください。
- JISカタカナ
JIS カタカナは標準の94文字セットのSCSシーケンスを用いてG0,G1, G2,G3
のいずれかのコード・テーブルに指示(designate)することができます。文字セット識別コードは "I"(4/9)です。
- 漢字
漢字を使用するときは必ず,DEC漢字指示セットがG3コード・テーブルに指示 (designate)されていなければなりません。以下のシーケンスは,すべてDEC漢字指示セットをG3コード・テーブルに指示します。G3に指示された漢字セットは通常の文字セットの呼び出し(invoke)と同様に,GLまたはGRコード・テーブルに呼びだして用います。
ESC
1/11
|
$
2/4
|
+
2/11
|
3
3/3
|
DEC漢字指示セット
1983年版
|
ESC
1/11
|
$
2/4
|
+
2/11
|
B
4/2
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JISX0208漢字指示セット
1983年版
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以下の1978年版の指示シーケンスもサポートします。ただし,実際に指示されるのは1983年版です。
ESC
1/11
|
$
2/4
|
+
2/11
|
1
3/1
|
DEC漢字指示セット
1978年版(新コマンド)
|
ESC
1/11
|
$
2/4
|
+
2/11
|
@
4/0
|
JISX0208漢字セット
1978年版
|
ESC
1/11
|
+
2/11
|
"
2/2
|
0
3/0
|
DEC漢字指示セット
1978年版(旧コマンド)
|
| 注意
- 旧コマンドは,既存のプリンタとの互換性を保つためにサポートされていますが,新しくテキスト・ファイルを生成する場合で,DEC漢字指示セットの指示が必要なときは,旧コマンドは使わないようにしてください。
- DEC漢字指示セットをGLコード・テーブルに呼びだした場合,DEC拡張漢字
領域は使用できません。
- ANSIデータ・タイプ,KANJIデータ・タイプ,およびLA_KANJI データ・タイプでは,DEC漢字1983年版のみをサポートします。
DEC漢字1978年版は,KANJI78データ・タイプでサポートされています。
DEC漢字1983年版では,DEC拡張罫線文字(コードFE21〜FE2B(16進)) はサポートされません。
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フォントがタイプ・ファミリで指定されているときには,文字サイズ変更命令GSM (Graphic Size Modification)を用いて,いわゆる横倍角,縦倍角,4倍角文字 (縦横倍角)が出力できます。
GSMでは文字の高さと幅の2つのパラメータを指定できますが,どちらのパラメー
タも,現在有効なフォントのタイプ・サイズを基準にして,拡大率を百分率で指定します。指定された大きさに該当するフォントが存在しない場合,その大きさよりも小さくて最も近いフォントを選びます。このとき,既存のフォントの高さや幅を 2倍に拡大すると目的のサイズに近いフォントが得られる場合,GSMは倍角文字を
生成します。以下に例を示します。
- 縦倍角の例
DEC BUILTIN1ファミリで,10ポイント・フォントが現在有効なとき,上記の GSM 命令に続くテキストは10ポイント・フォントが縦に2倍に拡大されたものになります。DEC BUILTIN1 ファミリの10ポイント・フォントでは,10, 10.3, 12, 15cpi (文字/インチ)といった複数のフォントが存在しますが,10cpiが,10ポイントの場合の文字幅100%を意味します。
- 横倍角の例1
同じくDEC BUILTIN1ファミリで,10ポイント・フォントが現在有効なとき,上記のGSM命令に続くテキストは10ポイント10cpiフォントが横に2倍に拡大されたものになります。すなわち,5cpiになります。
- 横倍角の例2
同じくDEC BUILTIN1ファミリで,10ポイント・フォントが現在有効なとき,上記のGSM命令に続くテキストは10ポイント15cpiフォントが横に2倍に拡大されたものになります。10cpiを100%の文字間隔とすると,ここで指定した文字幅パラメータ140%という値は約7.1cpiになり,このようなフォントは存在しません。そこで7.1cpiより文字幅が小さくて最も近いフォントを探しますが,15cpiフォントの横倍角が7.5cpiですので,このフォントが選ばれます。
- 4倍角(縦横倍角)の例
縦も横も2倍に拡大されたものを4倍角といいます。DEC BUILTIN1ファミリで, 10ポイント・フォントが現在有効なとき,上記のGSM命令に続くテキストは10ポイント10cpiフォントが縦横に2倍に拡大されたものになります。
| 注意
- 倍角はフォント・ローディング命令(DECLFF)によって,ダウンロードされたフォントに対しては無効です。
- 倍角をより確実に制御するために,タイプ・サイズ指定命令(GSS)によってフォントを選択してからGSMを用いることをお勧めします。
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