HP OpenVMS Systems Documentation |
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『OSF/Motifスタイル・ガイド』で説明しているように, アプリケーションを設計する際には優れたユーザ・ インターフェイスを設計するための原則に従ってください。それに加えて, ユーザ固有のニーズに合わせるためにユーザが必要な機能をカスタマイズできるようにアプリケーションを設計してください。 カスタマイズについては『OSF /Motifスタイル・ガイド』では説明していません。
メニューやダイアログ・ボックスを使用してアプリケーションをカスタマイズできるように設計してください。 また,アプリケーションに「オプション」メニューを用意して, ユーザが自分のニーズに合わせてアプリケーションをカスタマイズできるように設計してください。
作成するユーザ・インターフェイスの種類には関係なく,次のものはユーザがカスタマイズできるように設計してください。
どのようなカスタマイズ機能を含めるかはアプリケーションによって異なります。 カスタマイズ機能の例としては,起動プロシージャ,キーボード・ アクセレレータ,印刷とプロット設定値などがあります。
本章ではアプリケーションをカスタマイズするための一般的なガイドラインと, ウィンドウの位置,色,文字をカスタマイズするためのガイドラインについて説明します。
「オプション」メニューを使用してアプリケーションをカスタマイズできるように設計してください。 このメニューは少なくとも2つのセクションに分けてください。 上位のセクションには,アプリケーションの特定の機能をカスタマイズするために必要な次のようなメニュー項目を入れます。
下位のセクションには,設定値を保管したり復元したりするためのメニュー項目を入れます。
図 3-1は,「オプション」メニューの例です。
複数のウィンドウを使用するアプリケーションの場合は,アプリケーション全体の設定値をカスタマイズするための「オプション」メニューをメイン・ ウィンドウに設定し,各追加ウィンドウにも「オプション」メニューを設定して, 固有の設定値をカスタマイズできるようにします。
「オプション」メニューはメニュー・バー上で「ヘルプ」を除くすべてのメニュー名より右に配置してください。
アプリケーションは,どのレベルのウィンドウでも設定値をカスタマイズすることができ, カスタマイズした設定値を使用して,ユーザが指定したウィンドウと, その子孫ウィンドウに適用されるようにしてください。また, 子ウィンドウでカスタマイズした設定値は,その親ウィンドウが指定した設定値を上書きするように設計してください。
カスタマイズは,親ウィンドウから継承することができ,また子ウィンドウで指定することもできます。 たとえば,ダイアログ・ボックスは,フォントの設定をダイアログ・ ボックスで設定しないかぎり,フォント設定を電子メールのアプリケーションから引き継ぎます。 図 3-2では,いくつかのウィンドウ上のプルダウン・ メニューを使用して, 特定のウィンドウに対する設定値をカスタマイズしています。各プルダウン・ メニューで指定した設定値は,それらのプルダウン・メニューと同じ影模様の範囲内にあるウィンドウで有効になります。
ウィンドウにカスタマイズ機能がなかったり,ユーザが設定値を選択しない場合は, 親ウィンドウからの設定値を継承するように設計します。
設定値を使用する最も高いレベルのウィンドウで設定値をカスタマイズするように設計してください。 たとえば,あるアプリケーションで使用できる各ツール間で設定値を共有する場合は, そのアプリケーションのレベルで設定値をカスタマイズできるようにしてください。
また,次のような状況では,低いレベルのウィンドウでカスタマイズした設定値が有効になるように上書きされるよう設計してください。
たとえば,OpenVMS DECwindosメールではメイン・ウィンドウにある「オプション」メニューから「送信... 」メニュー項目を選択することによって, 使用しているエディタをカスタマイズすることができます。 しかし,「エディタ変更」メニューにあるメニュー項目を選択することによっても, 「作成」ウィンドウのエディタをカスタマイズすることができます。
たとえば,OpenVMS DECwindosメールでは,「オプション」メニューから「送信... 」メニュー項目を選択することによって送信元の名前をカスタマイズすることができます。 ただし,メッセージの内容に応じて送信元の名前を頻繁に変えたい場合などのために, 「作成」ウィンドウでも送信元の名前をカスタマイズすることができるようになっています。
カスタマイズした設定値はユーザがアプリケーションを終了させるまで有効にしてください。 ユーザがアプリケーションを終了させる際に,設定値を保管するかどうかを質問するダイアログ・ ボックスを表示するとよいでしょう。
設定値を保管した場合は次にアプリケーションを起動する際にはその設定値を使用し, ユーザが新しい設定値を指定するまでその値を有効にしておきます。
「オプション」メニューと関連ダイアログ・ボックスには,適当と思われるすべてのカスタマイズ機能を用意してください。 ただし,過剰な,あるいは不要なカスタマイズ機能はユーザが判断しなければならい事項が多過ぎ, 負担を強いることになります。本章で説明するすべてのカスタマイズ機能をアプリケーションに用意する必要はありません。
ユーザのニーズを考慮して,重要な機能には柔軟性の高いカスタマイズ機能を用意してください。 しかし,重要でない機能にはカスタマイズ機能を用意する必要はありません。 アプリケーションを使いやすく,また,管理しやすくするようなカスタマイズ機能を用意してください。 必要な場合は, 開放式のテキスト・フィールドよりは共通の省略時の設定の一覧を用意してください。 省略時設定値の一覧にはオプション・メニュー・ウィジェットまたは一覧ボックスを使用してください。 このような一覧により, ユーザがアプリケーションを素早くカスタマイズできるようになります。
たとえば,開発したアプリケーションが翻訳されずに英語が第2外国語となる人々によって世界中で使われるかもしれません。 そのようなアプリケーションの場合, 時間,日付,金額の単位をユーザがカスタマイズできるようにするとよいでしょう。
アプリケーションを設計していくにしたがって,同じ操作を別の方法でユーザに実行させることができることに気付くかも知れません。 このような場合には, ユーザの好みに応じて設定を選択できるようにするとよいでしょう。
たとえば,Motifのウィンドウ・マネージャでは,ユーザが,フォーカスの移動方法として明示的な方法( クリックして入力)と暗示的な方法(ポインタ) のいずれかを選択できるようにしています。
メニュー項目,サブメニュー,ダイアログ・ボックスを表示するメニュー項目を「オプション」メニューに追加することができます。 次の各節では, メニュー項目とダイアログ・ボックスの追加についてのガイドラインを示します。
ユーザが一度にカスタマイズできる設定値が1つのときはメニュー項目を使用してください。 たとえば,「強調表示変更」のようなメニューのチェック・ ボックスを使用して,ユーザが強調表示をオンまたはオフに設定できるようにします。
多くのメニュー項目をもつメニューの場合は,図 3-1 に示す「オプション」メニュー例のように,セパレータを使用してメニュー内で項目をグループ化してください。
メニューの設計についての詳しい説明は,第2 章を参照してください。
ユーザが一度に複数の設定値をカスタマイズできるようにする場合には, ダイアログ・ボックスを使用してください。その場合,カスタマイズのために個別のダイアログ・ ボックスを作成するかどうかを決めてください。 たとえば,テキストと色をカスタマイズするためのダイアログ・ボックスを1 つにするか,あるいはそれぞれ別のダイアログ・ボックスにするかを決めてください。
次に,ダイアログ・ボックス使用のガイドラインをいくつか示します。
たとえば,テキストをカスタマイズするための選択肢(フォント,ポイント・ サイズなど)すべてを1つのダイアログ・ボックスに含め,図形オブジェクトをカスタマイズするための選択肢( カラー,線の太さなど) すべてを別のダイアログ・ボックスに含めます。
ユーザの意見を聞いて,論理的な分類を行ってください。その場合, 実際にウィンドウを作成する必要はありません。紙の上に一般的なダイアログ・ ボックスを描き,制御ボタン類の切抜きをユーザに並べてもらったり, あるいはグラフィック・エディタや他のプロトタイプ作成ツールを使用してダイアログ・ ボックスを描いてもらいます。
図 3-3にフィードバック領域の例を示します。
ユーザがアイコンのサイズを設定できるようにするための不適切な方法と適切な方法を以下に示します。
ユーザ側で高度な柔軟性が求められる場合は,「その他」オプションを組み込んでください。 ユーザが「その他」を選択すると,テキスト・フィールドを次の図のように表示することができます。
この節では,次の設定値をカスタマイズする際のガイドラインについて説明します。
カスタマイズしたウィンドウの位置を保管できるようにし,アプリケーションを起動するたびにウィンドウが同じ位置に表示されるようにします。 このためには次のようないくつかの方法があります。
ウィンドウ位置としてXおよびYピクセル値を指定するように設計してはいけません。 多くのユーザは直接操作する方法を好みます。ただし,XおよびY ピクセル値を指定してウィンドウの位置を設定するようなダイアログ・ ボックスを用意する場合(たとえば,正確な位置を指定する必要があるプログラムなど) でも,ユーザが画面上で直接操作してウィンドウの位置をカスタマイズする方法も同時に用意してください。
カスタマイズしたアプリケーションの色を保管できるようにし,アプリケーションを起動するたびに同じ色で表示されるように設計してください。 色を使用して尺度や強弱を示している場合は,ユーザにとって意味がある色の選択ができるように設定してください。 背景色と描画色を同じものにする等のカスタマイズをユーザが行わないように設計します。
DECでは,ユーザが色をカスタマイズできるよう,アプリケーションに取り込むことのできるColor Mixing ウィジェットを提供しています。このColor Mixing ウィジェットを使用することによって,アプリケーション全体にわたる色のカスタマイズに一貫性をもたせることができます。Color Mixingウィジェットとアプリケーションにおける色の使用方法についての詳しい説明は, 第4章を参照してください。
カスタマイズした色の設定値が直ちに更新されないアプリケーションの場合は, メッセージ・ダイアログ・ボックスを使用して,ユーザにカスタマイズした色がどの時点で有効になるかを表示してください。
アプリケーションでテキストを使用している場合は,ポイント・サイズ, フォントの種類を変更することによってテキストをカスタマイズできるように設計してください。 アプリケーションを起動するたびにカスタマイズした設定値が使用されるように, ユーザがカスタマイズしたテキストの設定値を保管できるようにします。 他のカスタマイズ機能との一貫性を保つために, 「オプション」メニューからテキストをカスタマイズできるように設計します。 ただし,「オプション」メニューにテキストをカスタマイズするメニュー項目を入れるのは, カスタマイズできる機能が少ない場合です。 広範で高機能のカスタマイズを行う場合(テキスト・プロセッサを設計する場合など) は,別のメニューを設けてください。これは,複数の方法でテキストをカスタマイズできるようにするためです。
テキストのカスタマイズを実現する方法は,ポイント・サイズとフォントの種類がどれだけあるか, およびユーザがテキストの設定値をカスタマイズする頻度によって異なります。
選択肢の数が少ない場合は,図 3-4のように,1 つのサブメニューのみでポイント・サイズおよびフォントの種類をカスタマイズすることができます。
選択肢が多く,テキストのカスタマイズを頻繁に行わない場合は,図 3-5 に示すように複数のサブメニューを使用するとよいでしょう。
頻繁にテキストをカスタマイズする場合は,ポイント・サイズ,フォントの種類の選択肢を1 つのダイアログ・ボックスに統合して,1回のカスタマイズのために複数のメニューを表示しなくてもいいように設計してください。 たとえば,図 3-6のようなダイアログ・ ボックスを作成してください。