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HP OpenVMS: Volume Shadowing for OpenVMS 説明書

第2章 システムに高度なデータ可用性を構成する

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OpenVMSドキュメント・ライブラリ

タイトルページ/目次
まえがき
第1章:Volume Shadowingの紹介
第2章:システムに高度な可用性を構成する
第3章:ボリューム・シャドウイングを使うための準備
第4章:DCLコマンドによるシャドウセットの作成と管理
第5章:システムサービスによるシャドウセットの作成と管理
第6章:シャドウセットの整合性の保証
第7章:ミニコピーによるデータのバックアップ
第8章:ホストベース・ミニマージ
第9章:シャドウ化されたシステムでのシステム管理作業
第10章:ボリュームシャドウイングの性能
付録A:メッセージ
用語集
索引
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システムの可用性は,多くのコンピューティング環境にとって,重要な課題です。 信頼できる環境であれば,ユーザはいつでも好きな方法でシステムにアクセスすることができます。

2.1 ボリューム・シャドウイングを使用したデータの高可用性のレベル

システム全体の可用性にとって重要な要素は,データの可用性, あるいはアクセス可能性です。 Volume Shadowing for OpenVMS は高度なデータ可用性を実現し,シャドウセットを 1 つのノードに, あるいは OpenVMS Cluster システムに構成することができるため,ディスク媒体, ディスク・ドライブ,ディスク・コントローラなどに障害が発生しても, データへのアクセスが中断されることはありません。 メンバが複数の OpenVMS Cluster ノードにローカルに接続されているシャドウセットでは, シャドウセット・メンバをサービスしている 1 つのノードがシャットダウンしても, そのデータは別のノードを通じてアクセスすることができます。

1 つのディスク・ボリュームで構成された仮想ユニット (シャドウセットのシステム表現) を作成することはできますが,シャドウ (同一データの複数のコピーを持つこと) を可能にするためには,複数のディスク・ボリュームをマウントしなくてはなりません。 このように構成すれば,1 つのディスク・ドライブが故障したり, 1 つのボリュームが劣化しただけで,システムダウンになることが避けられるようになります。 たとえば,シャドウセットの 1 つのメンバが故障しても,残りのメンバはソース・ディスクとして使うことができ,そのデータはアプリケーションからアクセスできると同時に新しくマウントされるターゲット・ディスクへコピーするためにも使うことができます。 データのコピーが完了すれば,両方のディスクには同じ情報が入っているので,ターゲット・メンバが今度はシャドウセットのソース・メンバになります。

2 つのコントローラを使うと,1 つのコントローラが故障しても, もう一方のコントローラが使用できるので,データ可用性が大幅に向上します。 システムにボリューム・シャドウイングを設定する場合は, 各々のディスク・ドライブを,できるかぎり, 異なるコントローラの入出力チャネルに接続します。 接続を分離させれば,1 つのコントローラの障害や, それにアクセスする通信パスの障害を保護することができます。

単一ノード環境の代わりに,OpenVMS Cluster システムを使って, 複数のコントローラを使うと,データ可用性は大幅に向上します。 複数のローカル・コントローラに接続された複数のディスクと, 他の OpenVMS Cluster システム の MSCP でサービスされるディスクは, これらのディスクに互換性があり,結合するディスクが 3 台以下であれば, 統合して単一のシャドウセットにすることができます (OpenVMS Alpha Version 7.3-2 およびOpenVMS Integrity Version 8.2 以降では,1.3.2 項 「サポートされるデバイス」 で説明するように,異なるサイズのディスクを 1 つのシャドウセットに組み込むことができます)。

図 2-1 「可用性のレベル」 では,物理的なデータ可用性を実現する方法を, 構成の種類別に低いレベルから高いレベルまで,定性的に分類しています。

図 2-1 可用性のレベル

可用性のレベル

2.2 項 「障害からの修復と復旧」 では,物理的な障害に耐えることができる高度なデータ可用性を実現するシャドウ・システムを構成する方法を説明します。

2.2 障害からの修復と復旧

ボリューム・シャドウイングの障害 (一部の障害はボリューム・シャドウイング・ソフトウェアで自動的に復旧させることができる) は,次のカテゴリに分類できます。

  • コントローラのエラー

  • デバイスのエラー

  • データのエラー

  • 接続障害

シャドウセットの修復と復旧の処理は,発生した障害の種類とハードウェア構成によって異なります。 一般に,デバイスにアクセスできないときには, できる限り別のコントローラへフェールオーバする方法を取ります。 それができなければ,シャドウセットから削除します。 媒体の欠陥によって発生するエラーは, ボリューム・シャドウイング・ソフトウェアで自動的に修復できることがあります。

表 2-1 「障害の種類」 は, これらの障害の種類と復旧メカニズムを説明しています。

表 2-1 障害の種類

種類

説明

コントローラのエラー

コントローラの障害によって発生するエラーです。 障害が復旧可能であれば,処理は継続し,データ可用性に影響は与えません。 障害が復旧可能でなければ,そのコントローラに接続されているシャドウセット・メンバはシャドウセットから削除され,残りのメンバで処理が継続されます。 ディスクが 2 台のコントローラにデュアル・パスで接続された構成で, 1 つのコントローラに障害が発生した場合は,シャドウセット・メンバは残りのコントローラにフェールオーバし,処理を継続します。

デバイスのエラー

デバイスの機械部分や電子部分で障害が 発生した場合です。障害が復旧可能であれば,処理は継続します。 障害が復旧可能でなければ,エラーを検出したノードはそのデバイスをシャドウセットから削除します。

データのエラー

壊れたデータをデバイスが検出した場合です。 データ・エラーは媒体の欠陥によって発生しますが,媒体の欠陥では通常, デバイスをシャドウセットから削除する必要はありません。 データ・エラーの深刻さ (あるいは,媒体劣化の程度) に応じて,コントローラは次のいずれか手段を取ります。

  • エラーを訂正して,正しいデータを返します。

  • エラーを訂正して,デバイスとコントローラの機能に従って, それを新しい論理ブロック番号 (LBN) に割り当てなおします。

  • Volume Shadowing に,パリティ・エラー・ステータスを返します。 つまり,データの読み取りでエラーが発生したことを示します。

データがコントローラで訂正できない場合,ボリューム・シャドウイングでは,失われたデータを別のシャドウセット・メンバから読み出したデータで置き換え,エラーとなったメンバに書き込もうとします。 この修復操作はクラスタ内のアプリケーション入出力ストリームと同期を取って行われます。 操作が失敗すると,エラーとなったメンバはシャドウセットから削除されます。

接続障害

接続障害が発生した場合,障害を検出した最初のノードは, データの可用性や整合性に対する影響が最も小さい, 障害からの復旧方法を決定しなくてはなりません。各々のノードでは, 修復可能なデバイス障害を検出すると,以下のような手順を実行します。

  • エラーを検出したノードから,シャドウセットの少なくとも 1 つのメンバがアクセスできる場合,そのノードは障害の復旧を試みます。 ノードはシステム・パラメータの SHADOW_MBR_TMO で指定された時間 (この時間はデフォルトのままか,システム管理者が設定しなおしたものです) の間, 障害の発生したシャドウセット・メンバへのアクセスを繰り返し試みます。 SHADOW_MBR_TMO で指定された時間内に,障害のあるディスクへのアクセスが行えない場合,ディスクはシャドウセットから削除されます。

  • シャドウセットのどのメンバもノードからアクセスできない場合,そのノードはシャドウセットのメンバ構成の調整を行いません。 その代わりに,そのシャドウセットにアクセスできる別のノードが適切な訂正を行うものと想定します。

    ノードはシステム・パラメータの MVTIMEOUT で指定された時間 (この時間はデフォルトのままか,システム管理者が設定しなおしたものです) が経過するまで,シャドウセット・メンバへのアクセスを試みます。 時間切れになると,すべてのアプリケーション入出力は,次のエラー・ステータス・メッセージとともに返されます。

    -SYSTEM-F-VOLINV, Volume is not software enabled
    

 

2.3 シャドウセットの構成

Volume Shadowing for OpenVMS によって実現できる各種のレベルのデータ可用性の例を示すために,この節では代表的なハードウェア構成の例を示します。 図 2-2 「 2 つの FC スイッチ,2 つのディアル・コントローラ,および 2 つのシャドウセットを持つ OpenVMS Cluster システム 」図 2-4 「 4 つのシステム,4 つの FC スイッチ,4 つのコントローラ,および 2 つのシャドウセットで構成されたマルチサイト OpenVMS Cluster システム 」 は,可能なシャドウセットのシステム構成です。 システム例を説明するために使われているハードウェアは,代表的なものを示していますが,仮定にすぎません。 つまり,可用性の説明のために示しているだけで,実際の構成や製品を提案しているわけではありません。

以下の例では,シャドウセット・メンバには, $allocation-class$ddcu: という名前を付けます。 仮想ユニットには,DSAn: という形式を使いますが, n は 0 ~ 9999 の数です。これらの名前の付け方の詳細は, 4.2 項 「シャドウセットの作成」 を参照してください。

図 2-2は, 2 つの同じシャドウセットに接続されている 2 つのシステムで構成された OpenVMS Cluster システムを示しています。 それぞれのシステムは,2 つの同じ Fibre Channel (FC) スイッチに接続されている ホストベース・アダプタ(HBA)をそれぞれ 2 つ持っています。 一方,FC スイッチは 2 つのデュアル・コントローラに接続されており, さらにそれらは 2 つのシャドウセットに接続されています。

それぞれのシャドウセット・メンバは,2 つのパス,すなわち 1 つのストレージ・システムに接続されたデュアル・コントローラのそれぞれと接続されています。 それぞれのシャドウセット・メンバは,それぞれに独立してコントローラ間でフェールオーバすることができます。 各システムは,ダイレクト接続により両方のシャドウセットにアクセスできます。

この構成では,次のような障害に対処できます。

  • メディア・エラー

  • 1 つのシステムでの障害

  • システム毎の 1 つの HBA の障害

  • 1 つあるいは複数のコントローラの障害

  • シャドウセット内のいずれか 1 つのディスクの障害

図 2-2  2 つの FC スイッチ,2 つのディアル・コントローラ,および 2 つのシャドウセットを持つ OpenVMS Cluster システム

2 つの FC スイッチ,2 つのディアル・コントローラ,および 2 つのシャドウセットを持つ OpenVMS Cluster システム

図 2-3 に示すのは, 4 つのシステムで構成される OpenVMS Cluster システムです。 このクラスタ内の各システムは, 図 2-2 で示したそれぞれのシステムと同一の構成になっています。 この構成の OpenVMS Cluster では,図 2-2 のシステムで提供される保護機能に加えて,次のような点でより高い保護機能を提供します。

  • 2 倍のコンポーネントを持つことによりコンポーネント障害に対応

  • 3 メンバで構成されていることによりシャドウセット DSA42 では 2 つのデバイス障害にまで対応

このタイプの構成では,1 つ以上のシステムあるいはスイッチで障害が発生しても 継続してデータへのアクセスが可能です。

図 2-3  4 つのシステム,4 つの FC スイッチ,4 つのデュアル・コントローラ,および 2 つのシャドウセットで構成される OpenVMS Cluster システム

4 つのシステム,4 つの FC スイッチ,4 つのデュアル・コントローラ,および 2 つのシャドウセットで構成される OpenVMS Cluster システム

図 2-4 に示すのは, 2 つの場所で 図 2-3 と同じ構成を構築した OpenVMS Cluster システムです。 4 つのシステムのうち 2 つがそれぞれ異なる場所に置かれています。 この図では,長距離間でデータ・ディスクをシャドウイングできることを 示しています。 各シャドウセットのメンバは,2 つの離れた場所にまたがって構成されています。 このような構成をマルチサイト OpenVMS Cluster システムと呼びます。 双方の場所にある OpenVMS システムとシャドウ・ディスクはすべて, 単一の OpenVMS Cluster システムおよびシャドウセット構成として機能します。 どちらかのサイトで障害が発生しても,重要なデータはもう一方のサイトで利用可能な状態になっています。

図 2-4  4 つのシステム,4 つの FC スイッチ,4 つのコントローラ,および 2 つのシャドウセットで構成されたマルチサイト OpenVMS Cluster システム

4 つのシステム,4 つの FC スイッチ,4 つのコントローラ,および 2 つのシャドウセットで構成されたマルチサイト OpenVMS Cluster システム
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