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この章では,OpenVMS Cluster システム固有のキューイングについて説明します。 OpenVMS Cluster システムでは,スタンドアロン・コンピュータでキューを管理するために使用されるコマンドと同じコマンドを使用して,キューが設定および制御されるため,この章の説明では,『Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル』で説明しているスタンドアロン・システムでのキュー管理について,ある程度の知識があるものと仮定しています。
注意: キューイングの互換性については,『Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。
7.1 はじめに
ユーザは,ジョブが実際に実行されているプロセッサとは無関係に, OpenVMS Cluster システム内のどのキューにもジョブを登録できます。汎用キューは使用可能なプロセッサ間で作業負荷のバランスをとることができます。
システム管理者は,1 つまたは複数のキュー・マネージャを使用して, OpenVMS Cluster システム全体のバッチ・キューとプリント・キューを管理することができます。ほとんどのシステムでは,1 つのキュー・マネージャだけで十分ですが,クラスタ内のノード間でバッチ作業とプリント作業の負荷を分散する場合は,複数のキュー・マネージャを使用すると便利です。
注意: VAX コンピュータと Alpha コンピュータの両方が含まれる OpenVMS Cluster システムでは,この章で説明するキュー・マネージャを使用しなければなりません。
7.2 キューの可用性の制御
バッチ・キューとプリント・キューの属性を設定した後,システム管理者がクラスタ全体でキューを使用可能にするために特別な処理をする必要はありません。この処理は分散キュー・マネージャが行います。
分散キュー・マネージャは,クラスタの状態遷移中にノードがクラスタに追加されたり,クラスタから削除されるときに,キューイング・システムがその影響を受けないようにします。以下の表は,分散キュー・マネージャがどのように動作するかを示しています。
場合 | 動作 | 説明 |
---|---|---|
キュー・マネージャが実行されているノードが OpenVMS Cluster システムから削除された | キュー・マネージャは自動的に別のノードにフェールオーバされる。 | このフェールオーバは透過的に行われるため,ユーザが意識する必要はない。 |
ノードがクラスタに追加された | キュー・マネージャは自動的に新しいノードをサービスする。 | システム管理者が新しいノードでキューイングを開始するためにコマンドを入力する必要はない。 |
OpenVMS Cluster システムがリブートされた | デフォルト設定により,キューイング・システムは自動的に再起動される。 | したがって,スタートアップ・コマンド・プロシージャにキューイングのためのコマンドを指定する必要はない。 |
オペレーティング・システムは,キューイング・データベースに定義されているパラメータを使用して,自動的にキューイング・システムを復元する。 | これは,キューイング・システムを起動するときに,定義した属性がキューイング・データベースに保存されるからである。 |
キューを制御するために,キュー・マネージャはキューとジョブに関する情報を格納したクラスタ単位のキュー・データベースを管理します。キュー・マネージャを 1 つだけ使用する場合も,複数使用する場合も,1 つのキュー・データベースだけがクラスタで共用されます。すべてのプロセスの情報を 1つのデータベースに保存しておくと,どのコンピュータから要求されたジョブも任意のキューで実行できます (必要なマス・ストレージ・デバイスが使用可能な場合)。
7.3 キュー・マネージャの起動とキュー・データベースの作成
スタンドアロン・コンピュータの場合と同様に,キュー・マネージャは START/QUEUE/MANAGER コマンドを使用して起動します。しかし,OpenVMS Cluster システムでは,フェールオーバ・リストと,キュー・マネージャの固有の名前も指定できます。 /NEW_VERSION 修飾子を指定すると,新しいキュー・データベースが作成されます。
以下のコマンドの例では,キュー・マネージャの起動方法を示しています。
$ START/QUEUE/MANAGER/NEW_VERSION/ON=(GEM,STONE,*) |
以下の表では,このサンプル・コマンドの各コンポーネントについて説明しています。
複数のキュー・マネージャを実行すると,クラスタ全体でバッチ・ジョブとプリント・ジョブが分散され,作業負荷のバランスをとることができます。たとえば,CPU またはメモリが不足しているクラスタでは,バッチ・キューとプリント・キューに対して個別にキュー・マネージャを作成できます。このようにすると,バッチ・キュー・マネージャをあるノードで実行し,プリント・キュー・マネージャを別のノードで実行できます。
7.4.1 コマンドの形式
追加キュー・マネージャを起動するには, START/QUEUE/MANAGER コマンドに /ADD 修飾子と /NAME_OF_MANAGER 修飾子を指定します。 /NEW_VERSION 修飾子は指定しません。以下の例を参照してください。
$ START/QUEUE/MANAGER/ADD/NAME_OF_MANAGER=BATCH_MANAGER |
複数のキュー・マネージャが 1 つの QMAN$MASTER.DAT マスタ・ファイルを共用しますが,各キュー・マネージャに対してキュー・ファイルとジャーナル・ファイルは追加作成されます。追加ファイルにはそれぞれ,以下の形式で名前が付けられます。
デフォルト設定では,キュー・データベースとそのファイルは SYS$COMMON:[SYSEXE] に保存されます。キュー・データベース・ファイルを他の場所に格納する場合は, 第 7.6 節
の指示に従ってください。
7.5 キューイング・システムの停止
STOP/QUEUE/MANAGER/CLUSTER コマンドを入力すると,キュー・マネージャは停止され, START/QUEUE/MANAGER コマンドを入力するまで (/NEW_VERSION 修飾子を指定せずに),キューイング要求は拒否されます。
以下のコマンドは,PRINT_MANAGER というキュー・マネージャを停止する方法を示しています。
$ STOP/QUEUE/MANAGER/CLUSTER/NAME_OF_MANAGER=PRINT_MANAGER |
規則:
キュー・マネージャが OpenVMS Cluster システムで実行されているかどうかとは無関係に,コマンド・ラインに /CLUSTER 修飾子を指定する必要があります。 /CLUSTER 修飾子を指定しないと,コマンドはキュー・マネージャを停止せずに,デフォルト・ノードのすべてのキューを停止します (これは,STOP/QUEUE/ON_NODE コマンドを入力するのと同じです)。
7.6 キュー・データベース・ファイルの移動
キュー・データベースのファイルは,デフォルトの SYS$COMMON:[SYSEXE] から,クラスタ単位でマウントされているディスク,またはクラスタ単位のキュー・スキームに参加しているコンピュータからアクセスできるディスクに移動できます。たとえば,実行される処理が少ない共用ディスクにデータベースを格納しておけば,システムのパフォーマンスを向上できます。
7.6.1 格納場所に関するガイドライン
マスタ・ファイル QMAN$MASTER は,キュー・ファイルおよびジャーナル・ファイルとは別の場所に格納できますが,キュー・ファイルとジャーナル・ファイルは同じディレクトリに格納しなければなりません。あるキュー・マネージャのキュー・ファイルとジャーナル・ファイルは,他のキュー・マネージャのキュー・ファイルおよびジャーナル・ファイルと別の場所に格納できます。
指定するディレクトリは,クラスタ内のすべてのノードからアクセスできなければなりません。ディレクトリ指定が隠し論理名の場合は,クラスタ内の各ノードの SYS$COMMON:SYLOGICALS.COM スタートアップ・コマンド・プロシージャに同じように定義しなければなりません。
関連項目:
キュー・データベース・ファイルの作成または移動の詳細については,『Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。 OpenVMS Cluster のバッチ/プリント・システムを設定する共通のプロシージャの例については, 第 7.12 節
も参照してください。
7.7 プリント・キューの設定
プリント・キューを設定するには, OpenVMS Cluster システムに最適なキュー構成の種類を判断しなければなりません。各コンピュータに接続されているプリント・デバイスの台数と種類,およびプリント・ジョブを処理する方法に応じて,複数の選択肢があります。たとえば,以下のことを決定する必要があります。
クラスタにとって適切な方式を判断した後,キューを作成することができます。 図 7-1 は,アクティブ・コンピュータ JUPITR,SATURN,URANUS で構成されるクラスタのプリンタ構成を示しています。
図 7-1 プリンタ構成の例
OpenVMS Cluster のプリント・キューは,スタンドアロン・コンピュータの場合と同じ方法で設定します。しかし,OpenVMS Cluster システムでは,作成する各キューに対して固有の名前を指定しなければなりません。
7.7.2 コマンドの形式
プリント・キューを作成して名前を付けるには,DCL プロンプトに対して,以下の形式で INITIALIZE/QUEUE コマンドを指定します。
INITIALIZE/QUEUE/ON=node-name::device[/START][/NAME_OF_MANAGER=name-of-manager] queue-name |
修飾子 | 説明 |
---|---|
/ON | キューが割り当てられるコンピュータとプリンタを指定する。 /START 修飾子を指定すると,キューが起動される。 |
/NAME_OF_MANAGER | 複数のキュー・マネージャを実行している場合は,修飾子を使用してキュー・マネージャを指定しなければならない。 |
自動スタート機能を使用すれば,OpenVMS Cluster でスタートアップを単純にし,実行キューの可用性を向上することができます。自動起動キューが実行されているノードが OpenVMS Cluster から削除されると,キューは自動的に,自動スタートが有効に設定されている次の使用可能なノードにフェールオーバされます。自動スタートは特に LAT キューで便利です。 LAT プリンタは通常,複数のシステムのユーザあるいは OpenVMS Cluster システムのユーザ間で共用されるため,LAT キューが使用できなくなると,多くのユーザに影響があります。
自動起動キューを作成する場合の形式:
キューを実行できるノードのリストを指定して自動起動キューを作成するには,以下の形式で DCL コマンド INITIALIZE/QUEUE を使用します。
INITIALIZE/QUEUE/AUTOSTART_ON=(node-name::device:,node-name::device:,...) queue-name |
/AUTOSTART_ON 修飾子を使用する場合, INITIALIZE /QUEUE コマンドに /START 修飾子を指定するか,または START/QUEUE コマンドを入力することにより,最初に自動スタートできるようにキューを有効にしておかなければなりません。しかし,キューが動作できるノードに対して ENABLE AUTOSTART/QUEUES コマンドが入力されるまで,キューでジョブの処理を開始することはできません。汎用キューを自動起動キューとして指定することはできません。
規則: 汎用キューは自動起動キューとして指定できません。 /ON 修飾子と /AUTOSTART_ON 修飾子のどちらも指定することはできません。
関連項目: 自動スタートが無効に設定されるタイミングの設定方法については, 第 7.13 節 を参照してください。
7.7.4 例
以下のコマンドを実行すると, 図 7-2 に示した JUPITR に対してローカル・プリント・キューが割り当てられ,キューが起動されます。
$ INITIALIZE/QUEUE/ON=JUPITR::LPA0/START/NAME_OF_MANAGER=PRINT_MANAGER JUPITR_LPA0 $ INITIALIZE/QUEUE/ON=JUPITR::LPB0/START/NAME_OF_MANAGER=PRINT_MANAGER JUPITR_LPB0 |
図 7-2 プリント・キューの構成
クラスタ単位のキュー・データベースを使用すると,クラスタ全体で機能する汎用キューを設定できます。クラスタ単位の汎用キューに登録されるジョブは,クラスタ内での位置とは無関係に,割り当てられていて使用可能な任意のプリント・キューに格納されます。しかし,印刷のためにキューに登録されるファイルは,プリンタが接続されているコンピュータからアクセスできなければなりません。
7.8.1 構成例
図 7-3 は,クラスタ単位の汎用プリント・キューを示しています。クラスタ内のすべての LPA0 プリンタのキューは,SYS$PRINT というクラスタ単位の汎用キューに割り当てられます。
クラスタ単位の汎用プリント・キューは,1 回だけ初期化し,起動する必要があります。最も効率よくキューを起動するには, OpenVMS Cluster の各コンピュータで実行される共通のコマンド・プロシージャを作成します ( 第 7.12.3 項 を参照)。
図 7-3 クラスタ単位の汎用プリント・キュー構成
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