日本語 Compaq OpenVMS
日本語入力プロセス 利用者の手引き


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第 8 章
FIP/SUBの制限事項

この章では,FIP/SUB の制限事項について説明します。

8.1 端末に対する影響

FIP/SUBは,変換入力時にユーザ・プロセスとは独立に端末に対する入出力を行いますので,端末に対して以下のような影響があります。

  1. VT282,VT382 で 25 行目を使用する場合は,端末の表示設定が自動的に“25 行目=ホスト制御”になります。

  2. EDT,TPU などのエディタでは端末に対して挿入/書き換えモードの切り換えを行っていますが,挿入モードになっている状態で変換入力を行うと,表示がおかしくなります。この場合 [Ctrl/R] で変換入力行を再表示してください。

  3. シフトJIS端末で使用する場合は,シフトJIS端末でサポートしていない <ESC> シーケンスを出力するようなアプリケーションは使用できません。

8.2 端末ラインの属性に関する制限

FIP/SUBは疑似端末ドライバを使用しているため,端末ラインの属性に関して以下のような制限があります。

  1. FIP/SUBはサブプロセスで使用する疑似端末に対し,実際の端末の属性を引継ぎます。このとき端末の属性のうち,Hostsync,TTsync をセット,LFfill, CRfill,Remote,Modem,Autobaud,Hangup,DMA,Fallback をクリアします。これらの値をサブプロセス中で変更した場合でも,FIP/SUB終了時には,FIP/SUB実行前の値に戻ります。

  2. サブプロセス中で SET TERMINAL コマンド等で端末のスピード及びパリティの設定を行った場合,設定は行われますが,実際の処理は行われず無効となります。また,FIP/SUBを終了した時点で,それらの設定は元に戻ります。

  3. 端末デバイス名が _FTAxxx: (xxx は数字)になりますので,端末デバイス名を調べるようなプログラムは使用できないことがあります。

8.3 ユーザ・プロセスに関する制限

FIP/SUBは LIB$SPAWN を使用してサブプロセスを作成し,ユーザが入力するコマンドの実行はすべてこのサブプロセス中で行うため,シンボル,プロセス論理名,デフォルト・ディレクトリの設定などは,FIP/SUB終了時に親プロセスには反映されません。

8.4 その他の制限

  1. SET HOST,SET HOST/LAT コマンドでログインした環境では,デフォルトの変換開始キー [Ctrl/`] が機能しません。変換開始キーを別のキーに指定して起動してください。次の例は,変換開始キーを[F14] キーに指定して,起動しています。


        $ INPUT START/SUBPROCESS/SUBPROCESS/CONVERSION_KEY=F14 
    

  2. 半角カタカナをサポートしていないオペレーティング・システムで,論理名 FIP$SUB_DEFAULT_CODE_SET を定義した場合,かな漢字変換は行えません。

  3. コマンド・プロシージャ内でFIP/SUBを起動する場合は,論理名 SYS$INPUT に同値名 SYS$COMMAND を割り当ててください。


        $ DEFINE/USER_MODE SYS$INPUT SYS$COMMAND 
        $ INPUT START/SUBPROCESS 
    


    内部で日本語データを受け付けないようなアプリケーション・ソフトウェアに関しては, FIP/SUBを使用することはできません。たとえば,入力データが英数字であるかどうかをチェックしたり,7ビット ASCII データしか入力を受け付けないアプリケーション・ソフトウェアです。ただし,こうした特別処理を行うソフトウェアは少なく,一般的な入出力を行うソフトウェアではFIP/SUBで日本語を扱うことができます。


第 9 章
FIP/SUBの使用例

この章では,FIP/SUB の使用例を示します。

9.1 FIP/SUBの起動,日本語入力および終了


    $ INPUT START/SUBPROCESS 
    Creating subprocess... 
    Process INASAWA_1 spawned 
    Enter LOGOUT command to exit. Type CTRL ` to enter Kanji. 
    $ 

上記の例のように,FIP/SUBを起動するとサブプロセスが作られ,コマンドの入力およびプログラムの実行が可能になります。

例えば SEARCH コマンドの検索文字列として日本語文字列を指定する場合はつぎのようになります。


    $ SEARCH NIHONGO.TXT " 

ここで [Ctrl/`] を押すと,カーソルが変換入力行に移動し


    変換入力 : 

とプロンプトが表示されます。ローマ字/かな漢字変換により日本語文字列を入力することができます。


    変換入力 : 今日は 

[Return]キーを押すことによりカーソルが元の画面位置に戻り,コマンド行に入力した日本語文字列が表示されます。


    $ SEARCH NIHONGO.TXT "今日は 

二重引用符を閉じます。これで SEARCH コマンドを実行できます。


    $ SEARCH NIHONGO.TXT "今日は" [Return]

FIP/SUBを終了するには LOGOUT コマンドを入力します。


    $ LOGOUT 
      Process INASAWA_1 logged out at 20-JAN-1994 15:34:23.06 
    Control returned to process INASAWA 
    $ 

9.2 変換開始キーの指定

FIP/SUB起動の際に,/CONVERSION_KEYを指定すると,変換入力を開始するキーを指定することができます。

例 : VT282の[F20]キーを指定

VT282の場合には,[F6] から [F20] までのファンクション・キーを変換開始キーとして指定できます。例えば, [F20] キーを変換開始キーとして指定する場合は,次のように指定します。


    $ INPUT START/SUBPROCESS/CONVERSION_KEY=F20\& 
    Creating subprocess... 
    Process INASAWA_1 spawned 
    Enter LOGOUT command to exit. Type F20 to enter Kanji. 
    $ 

9.3 プロファイルの指定

FIP/SUB起動の際に,/PROFILE を指定することにより,FIP/SUBでかな漢字変換の動作を決定するプロファイルを指定することができます。詳しくは『 ユーザ・キー定義 利用者の手引き 』を参照してください。この例では数字キーパッドでかな漢字変換を行うために,システムで提供されている IM$PROFILE_LEIA.DAT を指定しています。


    $ INPUT START/SUBPROCESS/PROFILE=IM$PROFILE_LEIA 

9.4 変換入力行の指定

FIP/SUB起動の際に,/LINE を指定することにより,変換入力の作業領域として使用する画面上の位置を指定することができます。変換入力の作業領域として, 24行目を使用したい場合は,次のように指定します。


    $ INPUT START/SUBPROCESS/LINE=24 

9.5 シフトJIS端末の使用

DEC漢字を使用しているアプリケーションをシフトJIS端末から使用したい場合には,次のように指定します。


    $ INPUT START/SUBPROCESS/CODE=(SHIFT_JIS,TERMINAL) 

もし,シフトJIS端末の BS キーを DELETE キーとして使用したいときには次のように指定します。


    $ INPUT START/SUBPROCESS/CODE=(SHIFT_JIS,TERMINAL,DELETE=BS) 

9.6 シフトJISホストの使用

DEC漢字端末から,シフトJISを使用するアプリケーションの実行,または,シフトJISを使用するパソコン通信等への接続をしたい場合には次のようにします。


    $ INPUT START/SUBPROCESS/CODE=SHIFT_JIS 


第 10 章
IMCP の概要(VAX のみ)

この章は,日本語 Compaq OpenVMS VAX のシステム管理者を対象に書かれています。次のことを説明します。

10.1 IMCP とは

変換情報サーバ・コントロール・プログラム (IMCP) は,日本語 Compaq OpenVMS VAX 上で変換情報サーバ(CIserver) を設定したり,コントロールするためのプログラムです。CIserverは,かな漢字変換に必要な情報を FIP (Front-end Input Process) や,その他の変換情報サーバ・クライアントを使用するアプリケーションに提供するサーバです。CIserver はネットワークを経由して,FIP やその他の変換情報サーバ・クライアント・アプリケーションと接続し,かな漢字変換の情報を交換することができます。現在サポートされるトランスポートは,ローカル・トランスポートと DECnetトランスポートの2つです。

図 10-1 に,CIserverの概略図を示します。

図 10-1 CIserver 概略図


IMCP を使用すると次のことができます。

10.2 IMCP の起動と終了

IMCPを起動するには, まず DCLコマンドで以下のように入力します。


$ RUN SYS$SYSTEM:IM$CONTROL 

IMCP> というプロンプトが表示されますので, IMCP> プロンプトに続けて,IMCP のコマンドを入力します。 IMCP のコマンドについては, 第 10.3 節 で説明します。

IMCPを終了するには,IMCP>プロンプトに対して "EXIT" とタイプするか [Ctrl/Z] を押してください。

IMCP は,DCL シンボルにコマンドとして定義しておくことにより, 1 行で IMCP コマンドを実行することができます。

たとえば CIserver を停止するには,次のようにします。


$ IMCP :== $IM$CONTROL 
$ IMCP STOP SERVER 

注意

IMCPを使用するためにはBYPASS,OPERの特権が必要です。

10.3 IMCP コマンド

この説では,IMCP で使用できるコマンドについて説明します。 表 10-1 にIMCPコマンドの一覧を示します。

IMCP のコマンドは,IMCP> プロンプトに続けて入力することできます。

表 10-1 IMCPコマンド一覧
コマンド 説明
CREATE/PROXY CIserver プロキシ・データベースを作成します。
SET PROXY ユーザが CIserver を利用してアクセスする辞書を設定します。
SET PROXY/DEFAULT 登録されていないユーザの辞書アクセスを認めるか,あるいは拒否するかを決めます。
REMOVE PROXY CIserver プロキシ・エントリを削除します。
SHOW PROXY CIserver プロキシ・データベースに登録されたエントリを表示します。
SHOW SERVER CIserver のステータスを表示します。
SHOW CONNECTION CIserver に接続されているクライアントの情報を表示します。
STOP SERVER CIserver を停止します。
EXIT IMCP を終了します。
HELP IMCP サブコマンドに関する説明を表示します。

次に各コマンドについて詳しく説明します。


CREATE/PROXY

辞書アクセスを制御するための CIserver プロキシ・データベースを作成します。

形式

CREATE/PROXY


コマンド修飾子

なし


パラメータ

なし


説明

ユーザが CIserver を利用して,ローカルの辞書にアクセスするには,あらかじめアクセスするための権限 ( CIserver プロキシ ) をデータベースに登録しておく必要があります。この CREATE/PROXY コマンドは,アクセス権の情報を管理する CIserver プロキシ・データベース(SYS$SYSTEM:IM$CIS_PROXY_DB.DAT)を作成します。新規に CIserver プロキシを設定・登録するには,まずこのコマンドを用いてデータベースを作成します。


IMCP> CREATE/PROXY 
 

この例で,CREATE/PROXYコマンドは,ユーザの辞書アクセス権を登録,管理するための CIserver プロキシ・データベースを作成します。


HELP

IMCPサブコマンドに関する情報を表示します。

形式

HELP [help-topic [subtopic [...]]]


コマンド修飾子

なし


パラメータ

help-topic

知りたいIMCPのコマンド名を指定します。アスタリスク・ワイルドカード(*)をコマンド名の中あるいは,それのみで使用できます。

subtopic

サブトピック(コマンド修飾子あるいはコマンド・パラメータ)を指定します。
アスタリスク・ワイルドカード(*)をサブトピック名の中,あるいはそれのみで使用できます。

説明

HELP コマンドは,IMCPサブコマンドに関する情報を例を挙げて説明します。次の例は SET PROXY の HELP の実行例です。


IMCP> HELP SET PROXY 
 
SET 
 PROXY 
 
   SET PROXY コマンドは変換情報サーバ・クライアントを 
   ローカルのユーザにマップします。 
 
      形式 
 
         SET PROXY remote-user local 
 
   次の情報検索が可能です。 
 
   Parameter /DEFAULT 
 

この例は,Help-topic として SET コマンド,subtopic として PROXY コマンドの HELP 情報を示しています。


REMOVE PROXY

CIserver プロキシ・エントリを削除します。

形式

REMOVE PROXY user


コマンド修飾子

/LOG
/NOLOG

コマンドの実行結果を表示するかどうかを指定します。省略時設定は /NOLOG です。

パラメータ

user

ユーザ名を指定します。ユーザ名はnode::userの形で表され, nodeはノード名,userはそのノード上のユーザ名を示します。ノード名は 1 文字から 20 文字までの ASCII 文字,ユーザ名は 1 文字から 30 文字までの ASCII 文字で表すことができます。

注意

DECnetのノード名は1〜6文字の英数字で,必ず1つ以上の英字を含む文字列で表されます。


説明

CIserver プロキシ・データベースから指定された CIserver プロキシ・エントリを削除します。このコマンドで,省略時の CIserver プロキシ・エントリを削除することはできません。省略時の CIserver プロキシ・エントリの削除に関しては, SET PROXY/DEFAULT を参照してください。


IMCP> REMOVE PROXY TOKYO::JIM 
   
 

ノード"TOKYO"の,ユーザ"JIM"の CIserver プロキシ・エントリが削除されます。この後,このユーザからの辞書へのアクセスは,省略時の CIserver プロキシ・アカウントが使用されます。また,SET PROXY/NODEFAULTにより省略時の CIserver プロキシ・アカウントが登録されていない場合は,エラーとなり接続できません。


SET PROXY

ユーザが CIserver を利用してアクセスする辞書を設定します。

形式

SET PROXY user local


コマンド修飾子

/LOG
/NOLOG

コマンドの実行結果を表示するかどうかを指定します。省略時設定は /LOG です。

パラメータ

user

ユーザ名を指定します。リモートのユーザ名はnode::userの形で表され, nodeはノード名,userはそのノード上のユーザ名を示します。ノード名は 1 文字から 20 文字までの ASCII 文字,ユーザ名は 1 文字から 30 文字までの ASCII 文字で表すことができます。

注意

DECnetのノード名は1〜6文字の英数字で,必ず1つ以上の英字を含む文字列で表されます。

local

パラメータ user で示されるユーザが使用できる CIserver プロキシ・アカウントを示します。ローカル・ノード上のユーザ名を指定します。

説明

ユーザが CIserver を利用してアクセスする辞書を設定することができます。この設定を行うと,ユーザはローカルにある他のユーザと同じ権限で日本語変換するための辞書をアクセスすることができるようになります。ユーザとは,そのユーザのノード名,トランスポート・デリミタ, ユーザ名から構成されます。トランスポート・デリミタには,ローカル・トランスポートを表す "0:" と DECnet トランスポートを表す "::" の 2 種類があります。 DECnet のトランスポート・デリミタ "::" を使用する場合は,その前にノード名をつけなければなりませんが,ローカルのトランスポート・デリミタ "0:" を使用する場合は,ノード名は必要ありません。


  1. IMCP> SET PROXY TOKYO::JACK JACK_S 
     
     
    


    DECnet ノード "TOKYO" のユーザ JACK が,ローカルのユーザ JACK_S の権限で辞書アクセスができるように設定します。


  2. IMCP> SET PROXY 0:JACK JACK_S 
     
     
    


    ローカル・ノードのユーザ JACK が,同じローカルのユーザ JACK_S の権限で辞書アクセスができるように設定します。


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