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ユーザ環境のカスタマイズには,サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャを変更する以外の方法もあります。それは, ログイン・コマンド・プロシージャ にコマンドを登録して,ユーザがログインするたびに,必要な処理を行う方法です。
このセクションの例は DCL (.COM) コマンド・プロシージャ用ですが,拡張子を置き換えれば POSIX などの他のインタフェースにも使用できます。
コマンド・プロシージャ | 説明 |
---|---|
SYS$MANAGER:SYLOGIN.COM | 個々のユーザに関係なく,ユーザのログインのたびに必ず実行されるコマンドを登録するファイル。SYS$MANAGER:SYLOGIN.COM ファイルが存在し,かつ論理名 SYS$SYLOGIN にそのファイルが定義されている場合は,ユーザのログインがあったとき自動的に SYLOGIN.COM が実行される。 |
SYS$LOGIN:LOGIN.COM | 個々のユーザが自分のアカウントにログインしたときにのみ実行されるコマンドを登録するファイル。ユーザの SYS$LOGIN ディレクトリに LOGIN.COM というファイルが存在し,そのユーザがログインすると, LOGIN.COM が自動的に実行される。 |
ログイン・プロシージャにエラーがあると,システムから絞め出されることがあります。そうした緊急時に使用するブート・プロシージャについては, 第 4.4.2 項 を参照してください。 |
SYLOGIN.COM は,システム管理者が作成し保守するファイルです。ディストリビューション・キットに,このファイルのテンプレートが提供されています。システム管理者は,サイトの状況に応じて,テンプレートのコマンドを修正または新しいコマンドを追加することができます。
SYSTARTUP_VMS.COM のテンプレートには,論理名 SYS$SYLOGIN に対して SYLOGIN.COM を割り当てるコマンド行が入っています。
$ DEFINE/SYSTEM/EXEC/NOLOG SYS$SYLOGIN SYS$MANAGER:SYLOGIN.COM |
SYLOGIN.COM にエラーがある場合,ユーザのログイン・コマンド・プロシージャは実行されません。ユーザがキャプティブ・アカウントにログインしている際にこの状況が起こった場合は,システム環境が適切に設定されなかった可能性があるため,プロセスは終了します。 SYLOGIN.COM でエラーが生じる可能性が考えられる場合には,SET NOON または ON ERROR コマンドを使用して,明示的にそのコマンド・プロシージャを正常に終了し,ユーザのログイン・コマンド・プロシージャが実行されるようにする必要があります。 |
LOGIN.COM は,各ユーザが作成し保守するファイルです。このファイルは,ユーザのアカウントの最上位ディレクトリに存在する必要があります。システム管理者は,LOGIN.COM を各ユーザにコピーして,ユーザが LOGIN.COM を設定するのを助けてあげてください。
SYLOGIN コマンド・ファイルについては,
第 7.7.1 項 を参照してください。 LOGIN.COM プロシージャについては,『Compaq OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。
5.4 SYSMAN ユーティリティによるスタートアップ・データベースのカスタマイズ
スタートアップ・データベース には,システム・ソフトウェアが起動するときに使用する情報が入っています。たとえば,STARTUP.COM は STARTUP$STARTUP_VMS という名前のスタートアップ・データベースの情報を使って, OpenVMS オペレーティング・システムを起動します。また,STARTUP.COM は,STARTUP$STARTUP_LAYERED という名前のスタートアップ・データベースを使って,レイヤード製品を起動します。スタートアップ・データベースについての詳細は, 第 5.4.1 項 を参照してください。
SYSMAN ユーティリティの STARTUP コマンドを使用して,スタートアップ・データベースを次のようにカスタマイズすることもできます。
次に,これらの作業について説明します。
これらの作業を行う前に,SYSMAN を理解しておく必要があります。 SYSMAN についての詳細は, 第 2.3.1 項
を参照してください。また,スタートアップ・データベース,特に,レイヤード製品のスタートアップ・データベースを理解しておく必要があります。詳細は, 第 5.4.1 項
および
第 5.4.2 項 を参照してください。
5.4.1 スタートアップ・データベース
OpenVMS オペレーティング・システムには,SYS$STARTUP 論理名に定義されている場所に,3 つのスタートアップ・データベースが用意されています。
ファイル | 説明 |
---|---|
VMS$PHASES.DAT | このファイルには,STARTUP.COM が起動するフェーズが順番に並んでいる。オペレーティング・システムの基本的な作業環境を実現するための 4 つの基本的なフェーズ (INITIAL,CONFIGURE,DEVICE, BASEENVIRON),続いて,レイヤード製品用のフェーズが登録されている。 STARTUP.COM は,このフェーズ・リストをスタートアップのために使用する ( このファイルを変更してはならない)。 |
VMS$VMS.DAT | 論理名 STARTUP$STARTUP_VMS と等価。このファイルには,システムのスタートアップ時,オペレーティング・システムの基本環境を起動するために使用されるファイルについての情報が入っている (
このファイルを変更してはならない)。
STARTUP$STARTUP_VMS はユーザの情報しか提供しない。このファイルの情報を表示するためには SYSMAN を使用する。詳細は 第 5.4.5 項 を参照。 |
VMS$LAYERED.DAT | 論理名 STARTUP$STARTUP_LAYERED と等価。このファイルには,サイト別製品およびレイヤード製品を起動するファイルについての情報が入っている。システムの起動時,システムはこのファイルの情報を使って,レイヤード製品を起動する。このファイルについての詳細は, 第 5.4.2 項
を参照。
SYSMAN を使ってこのファイルを編集すれば,ユーザが起動したいレイヤード製品を登録できる。 |
ユーザのレイヤード製品とは異なるサイト別ソフトウェアを管理したい場合は,SYSMAN を使用して,追加のスタートアップ・データベースを作成することができます。
5.4.2 レイヤード製品のスタートアップ・データベース
レイヤード製品のスタートアップ・データベース・ファイル (STARTUP$STARTUP_LAYERED で参照されるファイル) には,サイト別製品およびレイヤード製品を起動するファイルとコマンド・プロシージャのリストが入っています。このファイルは,各スタートアップ・ファイルについて,次の特性を持っています。
各フェーズは,その次のフェーズの前提条件を満たしていなければならない。つまり,フェーズの順序はきわめて重要である。あるフェーズで発生するコンポーネントが,それ以降のフェーズのコンポーネントに依存しないようにする。 SYSMAN を用いたレイヤード製品のインストールでは,必要なすべてのコンポーネントがそのフェーズまでに必ず出るようにする。
(P1: 引数 ,P2: 引数 ,...) |
パラメータを 1 つしか指定しない場合は,括弧を省略することができます。
5.4.3 現在のスタートアップ・データベースの指定
SYSMAN において,現在のデータベースというのは, SYSMAN コマンドが処理するデータベースのことを指します。
STARTUP$STARTUP_LAYERED またはユーザが作成したデータベース・ファイルは,表示することも変更することも可能です。 STARTUP$STARTUP_VMS は,表示することは可能ですが,変更はしないでください。
省略時の設定では,現在のデータベースはレイヤード製品データベースです。別のデータベースに対してコマンドを実行したい場合は, STARTUP SET DATABASE コマンドに,次の形式で目的のデータベースを指定します。
STARTUP SET DATABASE データベース |
データベースは,現在のデータベースにするデータベース名です。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> STARTUP SET DATABASE STARTUP$STARTUP_LOCAL %SYSMAN-I-NEWCOMPFIL, current component file is now STARTUP$STARTUP_LOCAL |
5.4.4 ターゲット・スタートアップ・データベース名の確認
ターゲット・データベースがどのデータベースであるか確認する場合は,次のように STARTUP SHOW DATABASE コマンドを使用します。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> STARTUP SHOW DATABASE |
現在のデータベースの内容を表示したい場合は, STARTUP SHOW FILE コマンドを使用します。 STARTUP SHOW FILE コマンドには,いろいろな修飾子を指定して,表示する情報量を制御することができます。詳細は『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> STARTUP SHOW FILE/FULL |
5.4.6 スタートアップ・データベースへのスタートアップ・ファイルの登録
レイヤード製品のスタートアップ・データベースにファイルを追加するためには,STARTUP ADD コマンドを使用します。 /MODE 修飾子は,ファイルの実行モードを指定します。 /PHASE 修飾子は,システムのスタートアップ・コマンド・プロシージャのどのフェーズでファイルが実行されるかを指定します。レイヤード製品のスタートアップ・フェーズについては, 第 5.4.2 項 を参照してください。
STARTUP MODIFY コマンドを使って STARTUP$STARTUP_VMS を変更しないでください。このコマンド・プロシージャはオペレーティング・システムを起動するプロシージャだからです。 STARTUP MODIFY コマンドを使用するためには,スタートアップ・データベースへの読み込みアクセスおよび書き込みアクセスが必要です。
SYSMAN を使用してレイヤード製品のスタートアップ・ファイルを登録する場合には,必要なすべての要素が前のフェーズで必ず発生するようにしてください。
STARTUP ADD コマンドに適切な修飾子を指定して実行します。 STARTUP ADD コマンドの修飾子については,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』の SYSMAN の説明を参照してください。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> STARTUP SHOW DATABASE %SYSMAN-I-DATANAME, STARTUP database is STARTUP$STARTUP_LAYERED SYSMAN> STARTUP ADD FILE/MODE=DIRECT/PHASE=LPMAIN FOR$LPMAIN_043_STARTUP.COM |
レイヤード・プロダクト・スタートアップ・データベースに追加したファイルの情報を変更するためには,STARTUP MODIFY コマンドを入力します (STARTUP MODIFY コマンドを実行するためには,スタートアップ・ファイルへの読み込みおよび書き込みアクセスが必要です)。
STARTUP MODIFY コマンドを使用して, STARTUP$STARTUP_VMS を変更しないでください。 |
STARTUP MODIFY コマンドの修飾子についての詳細は,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> STARTUP ADD/MODE=DIRECT/PHASE=LPMAIN FOR$LPMAIN_043_STARTUP.COM SYSMAN> STARTUP SHOW FILE/NODE SYSMAN> STARTUP MODIFY FILE FOR$LPMAIN_043_STARTUP.COM/NODE=ZNODE |
スタートアップ・データベースからレコードを削除すると,該当する製品が起動されなくなります。レコードを削除するためには, STARTUP REMOVE FILE コマンドを使用します。このコマンドによってスタートアップ・ファイルが削除されることはありません。しかし,そのファイルはシステム起動時に使用されなくなります (STARTUP REMOVE FILE コマンドを実行するためには,スタートアップ・データベースへの読み込みおよび書き込みアクセスが必要です)。
STARTUP REMOVE FILE コマンドを使用して, STARTUP$STARTUP_VMS を変更しないでください。 |
スタートアップ・データベース・ファイルからレコードを削除するためには, STARTUP REMOVE FILE コマンドを,次の形式で入力します。
STARTUP REMOVE FILE ファイル名 |
ファイル名には,削除するスタートアップ・ファイルの名前を指定します。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> STARTUP SHOW FILE/FULL SYSMAN> STARTUP REMOVE FILE FOR$LPMAIN_043_STARTUP.COM SYSMAN> STARTUP SHOW FILE/FULL SYSMAN> EXIT |
一時的にスタートアップ・ファイルの実行を禁止する場合は, STARTUP DISABLE コマンドを使用します。 /NODE 修飾子を指定すると,特定のノードについてのみスタートアップ・ファイルを無効にすることもできます。
STARTUP DISABLE コマンドを使用するためには,スタートアップ・データベースに対する読み込みアクセス権および書き込みアクセス権が必要です。このコマンドを使って STARTUP$STARTUP_VMS を変更しないでください。
スタートアップ・データベース・ファイルからレコードを削除するためには, STARTUP DISABLE コマンドを次の形式で入力します。
STARTUP DISABLE FILE ファイル名 |
ファイル名には,無効にするスタートアップ・ファイルの名前を指定します。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> STARTUP SHOW FILE SYSMAN> STARTUP DISABLE FILE FOR$LPMAIN_043_STARTUP.COM/NODE=ZURICH |
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