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本章では,次の内容について説明します。
本章では,それぞれの簡単な紹介にとどめています。それぞれの計画,インストール,構成,使用,および管理については,使用するネットワーク製品のマニュアルを参照してください。
本章では,次の概念について説明します。
概念 | 参照箇所 |
---|---|
OpenVMS システムのためのネットワーク・ソフトウェア・オプション | 第 23.1 節 |
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS ソフトウェアの概要 | 第 23.3 節 |
DECnet-Plus for OpenVMS ソフトウェアの概要 | 第 23.8 節 |
DECnet over TCP/IPの使用方法 | 第 23.11 節 |
本章では,次の作業について説明します。
作業 | 参照箇所 |
---|---|
使用しているシステムに適したネットワーク・ソフトウェアの選択 | 第 23.2 節 |
TCP/IP ネットワークに参加するための準備 | 第 23.4 節 |
TCP/IP Services のインストールおよび構成 | 第 23.5 節 |
TCP/IP Services の開始および終了 | 第 23.6 節 |
DECnet-Plus ネットワークに参加するための準備 | 第 23.9 節 |
DECnet-Plus のインストールおよび構成 | 第 23.10 節 |
DECnet Phase IV から DECnet-Plus への移行 | 第 23.12 節 |
DECnet-Plus の開始および終了 | 第 23.13 節 |
IP ネットワーク・バックボーンを介した DECnet アプリケーションの実行 | 第 23.11 節 |
23.1 OpenVMS ネットワーク・ソフトウェア・オプション
OpenVMS システムを他のシステムおよびネットワークに接続できる能力は, OpenVMS オペレーティング・システムの機能の基本的な部分です。
OpenVMS システムで使用可能なネットワーク・ソフトウェア・オプションは,次のとおりです。
これらのネットワーク・オプションのうち 1 つを OpenVMS にインストールして使用することも,複数のオプションを組み合わせてインストールして使用し,次のような作業を実行することが可能です。
表 23-1 で,OpenVMS のための Compaq レイヤード・ネットワーク・ソフトウェアについて説明します。これらのソフトウェアは,OpenVMS オペレーティング・システムのインストールまたはアップグレード中に,インストールすることができます。また,個別にレイヤード・プロダクトとしてインストールすることも可能です。
製品 | 説明 |
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Compaq TCP/IP Services for OpenVMS | TCP/IP Services は,コンパックが業界標準の Transmission Control Protocol/Internet Protocol (TCP/IP) プロトコル・セットを OpenVMS Alpha および VAX オペレーティング・システム用にインプリメントしたものです。 OpenVMS システムが他の異機種混合ネットワーク (インターネット,UNIX システム, Windows NT システムなど) と通信する必要がある場合には, Compaq TCP/IP Services for OpenVMS ソフトウェアを選択します。 TCP/IP Services を使用すると,遠隔ホストに接続して,ファイルにアクセスしたり,メッセージを交換したり,アプリケーションを開発したり,ネットワークを監視したり,その他の重要な作業を実行したりできます。
TCP/IP Services は,システムで唯一のネットワーク・ソフトウェアとして使用できます。OpenVMS では, DECnet ソフトウェアを使用することが必須ではありません。 TCP/IP プロトコルは,DECnet-Plus プロトコルと共存することができます。 TCP/IP Services をネットワークのバックボーンとしてインストールしながら,DECnet-Plus もインストールし,DECnet のアプリケーションおよび機能を引き続き使用することができます。 DECnet プロトコルを IP バックボーンを介して使用する方法については, 第 23.11 節 を参照してください。 TCP/IP Services ソフトウェアのインストール,使用,管理の概要については, 第 23.3 節 を参照してください。 |
DECnet-Plus for OpenVMS (Phase V) | DECnet-Plus は,コンパックが Digital Network Architecture (DNA) の Phase V をインプリメントしたものです。このソフトウェアでは,以前の DECnet Phase IV 製品との完全な下位互換性の他, DECnet (NSP) および OSI を,DECnet,OSI,または TCP/IP ネットワーク・バックボーンを介して実行する機能も提供されています。 IP バックボーンを介して DECnet および OSI プロトコルを使用する方法については,
第 23.11 節 を参照してください。
OpenVMS システムが DECnet (Phase IV および Phase V) または OSI アプリケーションおよびプロトコルを使用して通信する必要があり,システムで TCP/IP または OSI プロトコルあるいはその両方と共存する必要がある場合には,DECnet-Plus ソフトウェアを選択します。 DECnet Phase IV から徐々にネットワークをアップグレードしている場合には, Phase IV 機能を OSI の機能および利点と共に使用できるため,DECnet-Plus の機能が役立ちます。 DECnet-Plus ソフトウェアののインストール,使用,管理の概要については, 第 23.8 節 を参照してください。 注意 : DECnet-Plus には, DNA Phase IV および Phase V プロトコルの両方が含まれているため, DECnet-Plus をインストールする同じシステム上で別の DECnet Phase IV ソフトウェア製品を実行することはできません。 DECnet-Plus へのアップグレードについては, 『DECnet-Plus Planning Guide』 を参照してください。 |
DECnet for OpenVMS (Phase IV) |
DECnet Phase IV は,コンパックが Digital Network Architecture (DNA) の Phase IV をインプリメントしたものです。この製品には,DECnet-Plus (Phase V) で後に提供される OSI プロトコルや TCP/IP 通信機能が含まれていません。 TCP/IP Services ソフトウェアは,DECnet Phase IV と共にシステムで実行できますが,IP をネットワーク・バックボーンとして実行することはできません。
異機種混合環境ではなく,従来型の OpenVMS 環境で通信するために OpenVMS を使用する場合には,従来の DECnet 製品である DECnet Phase IV を選択する方がよい場合があります。 本章には,従来の DECnet Phase IV 製品について製品情報の概要は含まれていません。 DECnet Phase IV の使用方法については,『DECnet for OpenVMS Networking Manual』および『DECnet for OpenVMS Network Management Utilities』の各ドキュメントを参照してください (OpenVMS Documentation CD-ROM に含まれています)。 |
表 23-2 に,複数の OpenVMS システム間の通信のための,可能なネットワーク・ソフトウェアの組み合わせを示します。
システム A のソフトウェア | システム B のソフトウェア | システム A と B の間の通信に使用できるソフトウェア |
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TCP/IP Services | TCP/IP Services | TCP/IP アプリケーション
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DECnet Phase IV | DECnet Phase IV | DECnet アプリケーション
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DECnet-Plus | DECnet-Plus | DECnet アプリケーション
OSI アプリケーション |
DECnet-Plus | DECnet Phase IV | DECnet アプリケーション
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DECnet-Plus | OSI | OSI アプリケーション
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TCP/IP Services および DECnet Phase IV | TCP/IP Services | TCP/IP アプリケーション
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TCP/IP Services および DECnet Phase IV | DECnet Phase IV | DECnet アプリケーション
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TCP/IP Services および DECnet-Plus | TCP/IP Services | TCP/IP アプリケーション
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TCP/IP Services および DECnet-Plus | DECnet-Plus | DECnet アプリケーション
OSI アプリケーション |
TCP/IP Services および DECnet-Plus | TCP/IP Services および DECnet-Plus | OSI アプリケーション
DECnet アプリケーション DECnet アプリケーション DECnet を TCP/IP を介して使用 OSI アプリケーション OSI を TCP/IP を介して使用 TCP/IP アプリケーション |
TCP/IP Services および DECnet-Plus | OSI (RFC 1006 をサポートする) and TCP/IP Services | OSI アプリケーション
OSI を TCP/IP で使用 TCP/IP アプリケーション |
TCP/IP Services および DECnet-Plus | OSI (RFC 1006 をサポートしない) および TCP/IP Services | OSI アプリケーション
TCP/IP アプリケーション |
23.3 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS について
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS TCP/IP Services 製品は,業界標準の TCP/IP 通信プロトコル・セットを, Internet Engineering Task Force (IETF) によって使用される Request for Comments (RFCs) の指定に従って, OpenVMS にインプリメントしたものです。
TCP/IP Services を使用すると,異機種混合ネットワークがインターコネクトできるようになるため,ユーザは次のようにさまざまな方法で遠隔ホストに接続することが可能になります。
TCP/IP による相互接続では,それぞれのネットワークのハードウェアの詳細を意識せず,コンピュータは個々の物理的ネットワーク接続に関係なく通信することができます。TCP/IP は,標準の伝送手段と,全二重で信頼性が高いストリーム通信サービスの両方を,ソフトウェア・アプリケーションに提供します。
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS ソフトウェアは, OpenVMS システム,UNIX システム,およびその他の TCP/IP プロトコル・セットと Sun Microsystems' Network File System (NFS) をサポートするシステムの間の相互操作性およびリソース共用機能を提供します。 TCP/IP システムおよびその他のインターネット・ホストは,イーサネット, Fiber Distributed Data Interface (FDDI),トークン・リング,および非同期転送モード (ATM) などさまざまなネットワーク・ハードウェア構成で標準の TCP/IP プロトコルを使用して,データおよびリソースを共用しています。
TCP/IP ネットワークに接続されているそれぞれのエンド・システムは, ホストと呼ばれます。それぞれのホストには,固有の名前とアドレスがあります。ローカル・ホストは現在使用しているシステムであり,遠隔ホストは通信している相手のシステムです。 ホストは,ホスト間で情報を伝送する ライン によって接続されています。ラインは,データを 1 つのホストから別のホストへ渡すときに経由する物理パスです (ラインの例としては,電話ライン,光ファイバ・ケーブル,およびサテライトがあります)。
TCP/IP ネットワークは,パケット交換ネットワークと呼ばれます。情報は,連続したストリームではなく,小さなパケット単位でホストからホストへ伝送されます。たとえば,ホストから別のホストへ伝送されるファイルは,多数の小さなパケットに分割され,一度に 1 つずつ,ネットワークを介して送信されます。それぞれのパケットには,デスティネーション・ホストのアドレスに関する情報が含まれています。デスティネーションに着くと,パケットは組み立てられます。
データ・メッセージをソース・ホストからデスティネーション・ホストに出力先を指定するプロセスは,
ルーティングと呼ばれます。相互に直接接続されていないホスト間では,仲介ホストを経由してデータをソースからデスティネーションに転送できます。
23.3.1 OpenVMS Cluster システムのサポート
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS は,OpenVMS Cluster システム,およびクラスタ・エイリアスの使用をサポートしています。ネットワークは,クラスタをインターネット・エイリアスと呼ばれる, 1 つの名前を持った 1 つのシステムとして認識します。遠隔ホストは,クラスタ・エイリアスを使用してクラスタを 1 つのホストとしてアドレスを指定したり,1 つのクラスタ・メンバのホスト名を使用して,クラスタ・メンバに個別にアドレスを指定することができます。
23.3.2 TCP/IP Services 管理ツールおよびユーティリティ
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS は,100 を超える OpenVMS DCL スタイルのコマンドが含まれた,総合的な使いやすいネットワーク管理ツールを提供します。これらのコマンドは, TCPIP>プロンプトで管理コマンドを実行することにより,TCP/IP Services の構成要素をローカルに構成し,監視し,チューニングすることができます。
UNIX 管理コマンドを使用して,コンポーネントの一部を管理することもできます。
使用しているシステムでの TCP/IP Services の管理方法の詳細については, 『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management』 を参照してください。
23.4 TCP/IP ネットワークに参加するための準備
ホストで TCP/IP を構成するためには,その前に,一意な IP アドレスとホスト名が必要になります。ネットワーク・ハードウェア・アドレスは,ハードコード化されていて固定されていますが, IP アドレスはそれと異なり,ネットワーク管理者によって割り当てられます。ネットワークを公的なインターネットに接続する場合は, InterNIC から公式の一意なネットワーク ID を取得する必要があります。 IP アドレスは 32 ビットの長さ (8 ビットが 4 つ) になっており,これでネットワークとホストを識別します。ホスト名は,通信を簡単にする目的で,コンピュータに割り当てられた名前です。
IP アドレスは,ホスト ID とネットワーク ID を指定し,ホストがどのパケットを受信して,どのパケットを無視するか決定するための判断材料を提供します。ホストは,自身のアドレスおよびデスティネーション・コンピュータのアドレスを,サブネット・マスクと比較して,別のホストが同じサブネットにあるのか異なるサブネットにあるのか判断します。デスティネーションのネットワーク ID がソースのネットワーク ID と一致する場合,パケットはローカル・ネットワークのデスティネーション・ホストに配布されます。 2 つのネットワーク ID が一致しない場合,パケットは IP ルータを経由してデスティネーション・コンピュータ宛に転送されます。
IP アドレスとホスト名の他に,次の情報をネットワーク管理者から聞いておく必要があります。
また,どのエンド・ユーザ・サービスを提供するかということと,ユーザのシステムがクライアントとして動作するか,サーバとして動作するか,あるいは両方として動作するかについても決定しておく必要があります。
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS のインストールおよび構成の計画の詳細については 『Digital TCP/IP Services for OpenVMS Concepts and Planning』 を参照してください。
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