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本章では,InfoServer の機能と InfoServer Client for OpenVMS ソフトウェアについて説明します。このソフトウェアは OpenVMS システムが InfoServer デバイス・サービスを利用できるようにするためのものです。また,本章では,システム上でこのクライアント・ソフトウェアを起動し,InfoServer を公用装置として使用するための作業についても説明します。
本章では次の作業について説明します。
作業 | 参照箇所 |
---|---|
サーバ管理セッションの開始 | 第 25.3 節 |
InfoServer Client for OpenVMS の自動起動 | 第 25.5.3 項 |
InfoServer 装置を自動的に使用可能にする方法 | 第 25.6.3 項 |
さらに,次の項目について説明します。
項目 | 参照箇所 |
---|---|
InfoServer の機能 | 第 25.1 節 |
LASTport プロトコル | 第 25.2 節 |
InfoServer Client for OpenVMS の機能 | 第 25.4 節 |
LASTCP ユーティリティの機能 | 第 25.5 節 |
LADCP ユーティリティの機能 | 第 25.6 節 |
InfoServer システムは高性能の 仮想装置サーバ です。ローカル・エリア・ネットワーク (LAN) 上のクライアント・システムは,これにより,コンパクト・ディスク,読み書き可能ディスク,光磁気 (MO) 装置,およびテープを利用することができます。InfoServer クライアント・ソフトウェアを実行しているシステムであれば,InfoServer システムが提供する仮想装置に接続して,ローカルに接続された装置であるかのようにそれらを使用することができます。
ファイル・サーバと異なり,InfoServer システムは,仮想装置上のファイル・システムを意識しません。つまり,InfoServer システムでは,どのようなオンディスク構造を持つディスクでも利用できるということです。クライアント・システム自体がオンディスク構造を解釈し,各クライアントは独自のファイル・システムを使用してデータにアクセスすることができます。 1 つの InfoServer システムで,複数のオンディスク構造を同時にサポートし,同時にアクセスすることができます。
InfoServer システムの機能を次に示します。
図 25-1 に,InfoServer システムとクライアント・システムとの関係を示します。この図では,サーバに接続されている 2 つのコンパクト・ディスクと 2 つのハード・ディスクがクライアント・システムからはローカル・デバイスとして認識されています。VAX システムと RISC ワークステーションは,ソフトウェアの配布とオンライン・ドキュメンテーション用に 1 つまたは 2 つのコンパクト・ディスクを使用し,一方 PC は, InfoServer システム上のディスク・パーティションを参照することができます。また,X ターミナルは InfoServer システムからブートし,ページ・ファイル,フォント・ファイル,カスタマイズ・ファイル用に InfoServer ディスクを使用します。
図 25-1 InfoServer システムによるクライアントへのサービスの提供
InfoServer システムは,イーサネット LAN に接続してシステムをオンにすれば使用することができます。サーバが初期化 (ブートストラップ ) されると,サーバ・ソフトウェアにより,クライアント・システムは接続された装置媒体を自動的に使用できるようになります。このことをサーバ・ソフトウェアによる サーブ といいます。サーバのドライブにコンパクト・ディスクを挿入すると,サーバが新しい装置を検出して,ボリューム・ラベルをサービス名として使用することにより,クライアント・システムにこの新しい装置を自動的にサーブします。
サーバは,あらかじめ InfoServer ソフトウェアがインストールされている内部読み書き可能装置からブートストラップします。 InfoServer ソフトウェアの更新内容は,コンパクト・ディスクで配布されます。更新用コンパクト・ディスクを入手したら,以降のブート用に新しいソフトウェアを内部装置にインストールします。 InfoServer ソフトウェアをコンパクト・ディスクから更新するには,次の手順に従います。
InfoServer> UPDATE SYSTEM DKn: |
InfoServer 1000 システムの場合。
InfoServer> UPDATE SYSTEM DKn: FLASH |
次に InfoServer システムをブートするときには,更新されたソフトウェアが実行されます。
InfoServer ソフトウェアを更新するには, Software Products Library (以前は ConDIST と呼んでいました) を使用します。 InfoServer システムにログインした後,次の手順を実行してください。
UPDATE SYSTEM DKn: |
UPDATE SYSTEM DKn: FLASH |
これらのコマンドは, InfoServer ソフトウェアを内蔵の読み込み/書き込み装置に移動させる。次回 InfoServer システムをブートすると,更新されたソフトウェアが実行される。また,Software Products Library ディスクからサーバをブートすることもできる。
サーバの機能をカスタマイズしたい場合は,サーバにログインし,サーバの各種コマンドを入力することにより, InfoServer の機能を制御することができます。詳細は『InfoServer System Operations Guide』を参照してください。
25.1.1 複数のサーバの自動サービスについて
InfoServer システムは,サーバの電源が最初に投入されたとき,あるいは取り外し可能装置 (コンパクト・ディスクなど) がドライブに挿入されたときに,ローカルに接続された装置をクライアントに自動的にサーブします。サーバは各装置のボリューム・ラベルを読み取って,そのラベルをクライアントに提供するサービスの名前として使用します。
自動サービス機能は,InfoServer コマンド SET SERVER AUTOMOUNT を使用して使用禁止にすることができます。 |
複数のサーバが同じサービスを提供している場合,クライアントはレーティング方式に従って適切なサービスを選択します。詳細は『InfoServer System Operations Guide』の CREATE SERVICE コマンドの説明を参照してください。
コンパクト・ディスクをサーバのディスク・ドライブから取り出すと, InfoServer システムは,クライアントから関連するサービスへのすべての接続を切断します。また,クライアント・システムへの関連するサービスの提供も停止します。
25.1.2 サービスの中断を少なくする高可用性機能
InfoServer システムには,OpenVMS クライアントに特に有用な可用性の高い機能があります。サーバが何らかの理由で (サーバが再ブートされた場合やユーザがコンパクト・ディスクを取り出した場合など) サービス接続を切断した場合,OpenVMS クライアントは,そのボリュームに対してマウント・チェックを行います。同じサービスが LAN 上の別の InfoServer システムで提供されている場合,そのクライアントは自動的にそのサービスに接続します。
たとえば,2 つのサーバ上のそれぞれのドライブに同じ OpenVMS オンライン・ドキュメンテーションが格納されたコンパクト・ディスクが装着されている場合を考えてください。 1 つのサーバまたはドライブが故障した場合は,もう 1 つのサーバ上のディスクへの接続が新たに確立されます。これにより,ファイル操作は正常に続けられ,ユーザはサービスの中断をほとんど意識しないですみます。
25.1.3 X ターミナル・クライアントのサポート
X ターミナル・クライアントは,InfoServer システムを使用して,システム・ソフトウェアのダウンロード,フォント・サービスの準備,構成情報の保存,InfoServer ディスクとの間でのメモリのページ処理を行います。たとえば,コンパックの VXT 2000 ウィンドウ・ターミナル用システム・ファイルは,InfoServer システム上のコンパクト・ディスクからインストールすることができます。これらのファイルをインストールしておくと,各ターミナルに電源が投入されたとき,要求があるとすぐにダウンライン・ロードされます。
このターミナルでは必要に応じて,InfoServer ディスク上に動的にパーティションを割り当てることができます。たとえば,ユーザがターミナルのカスタマイズ情報を保存するよう要求すると, InfoServer システムにより自動的にディスク・パーティションが作成され,その情報を格納し,さらにそのパーティションにネットワーク・サービス名が付けられます。カスタマイズ情報が保存されると,ユーザはいつでもその情報を呼び出すことができます。
InfoServer クライアントである VXT 2000 ターミナルは,仮想メモリ・マシンとして機能することもできます。このようなターミナルでは,必要に応じてメイン・メモリのセクションを InfoServer ディスクとの間でページングすることができます。VXT クライアントにはローカル・ディスクがないため, InfoServer ディスクがページ・ディスクとして使用されます。メイン・メモリがディスクにページ・アウトされると, VXT クライアントはパーティションを作成するよう InfoServer システムに要求します。このパーティションは必要に応じて自動的に拡張されます。パーティションとそのネットワーク・サービス名は動的に作成されます。このとき,ユーザによる処置は必要ありません。
省略時の設定では, InfoServer ディスク DK1 (各 InfoServer 150 システムとともに出荷される内部ディスク) に対して,VXT 2000 クライアントがパーティションを遠隔割り当てできるようになっています。 InfoServer のコマンドを使用すれば,他のディスクも使用することができます。
25.2 LASTport プロトコルについて
InfoServer システムは,LASTport トランスポート・プロトコルと LASTport/Disk
および LASTport/Tape というシステム・アプリケーション・プロトコルを使用して,LAN 上で仮想装置を利用できるようにします。これらのプロトコルにより,ディスクやテープ装置への高性能のアクセスを行うことができます。 InfoServer システムは,このプロトコルのサーバ部分を実装し, InfoServer の記憶装置にアクセスするクライアント・システムがクライアント部分を実装します。
LASTport トランスポートを実行する OpenVMS システムでは,イーサネット装置はすべて,装置をアクティブなネットワークに接続するか,または適切なターミネータを使ってターミネートさせる必要があります。装置が適切にターミネートされていないと,システムがクラッシュします。
25.2.1 LASTport トランスポート・プロトコル
LASTport プロトコル は,多くのクライアントが InfoServer システムにアクセスし,信頼のおけるトランザクションを実行できるようにする,特殊な LAN トランスポート・プロトコルです。 InfoServer システムの場合,トランザクションとは装置の読み込み操作または書き込み操作を意味します。 LASTport プロトコルにより,多くのクライアント・システムは,同時に InfoServer の記憶装置との間で情報の読み込みと書き込みを行うことができます。
LASTport プロトコルは,タイマ・ベースのプロトコルではなく,トランザクション指向のプロトコルです。通常,クライアントがトランザクションを開始しない限り,クライアントと InfoServer システムとの間で情報の受け渡しは行われません。クライアント・システムはトランザクションの起動と同時にタイマを実行します。通常,2 秒から 5 秒たつと,そのトランザクションが失われたとみなし,トランザクションを再度実行します。
LASTport プロトコルにはルーティング機能はなく,LAN 内でのみ実行されます。LASTport プロトコルのタイプは 80--41 です。拡張 LAN が何らかのフィルタリング・デバイスを使用する場合は,このプロトコル・タイプにフィルタリングを行わないようにして,クライアントがフィルタリング・デバイスを通して InfoServer にアクセスできるようにする必要があります。
InfoServer システムは,LASTport プロトコルのマルチキャスト・アドレス機能を使用して装置との接続を確立します。マルチキャスト・アドレスの形式は 09--00--2B--04--nn--nn (nn は使用可能になっている作業グループによって決まる) です (『InfoServer System Operations Guide』を参照)。
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