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OpenVMS マニュアル


 

OpenVMSドキュメント
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タイトルページ
目次
まえがき
第1章:システム構成の概要
第2章:ビジネス要件とアプリケーション要件の決定
第3章:システムの選択
第4章:インターコネクトの選択
第5章:ストレージ・サブシステムの選択
第6章:SCSI と Fibre Channel ストレージに対するマルチパスの構成
第7章:ストレージ・インターコネクトとしての Fibre Channel の構成
第8章:可用性を目的とした OpenVMS Cluster の構成
第9章:スケーラビリティを目的とした OpenVMS Cluster の構成
第10章:システム管理の手法
付録A :インターコネクトとしての SCSI
付録B :MEMORY CHANNEL 技術概要
付録C :マルチサイト OpenVMS Cluster
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HP OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


目次 索引

第 5 章
OpenVMS Cluster ストレージ・サブシステムの選択

この章では,ストレージ・サブシステムの設計方法について説明します。設計は次の手順で行います。

  1. ストレージ製品の選択肢

  2. 記憶容量の必要量の見積り

  3. ディスク・パフォーマンス・オプティマイザの決定

  4. ディスクの可用性の必要要件の決定

  5. 項目別の利点とトレードオフの確認:

    • SAS 方式のストレージ

    • SCSI 方式のストレージ

    • Fibre Channel 方式のストレージ

    • ホスト方式のストレージ

    • LAN InfoServer

この章では,これらの手順を詳細に説明します。

5.1 ストレージ製品の選択肢

OpenVMS Cluster のストレージは, SCSI-2 (Small Computer Systems Interface) 標準方式のモジュラ拡張システムである StorageWorks 製品ファミリから選択します。 StorageWorks では,次のモジュラ要素から選択して複雑なストレージ・サブシステムを構成できます。

  • ディスク,テープ,CD-ROM,半導体ディスク (SSD) などのストレージ・デバイス

  • アレイ・コントローラ

  • 電源

  • パッケージング

  • インターコネクト

  • ソフトウェア



5.1.1 デバイスの選択基準

ストレージ・デバイスは次の基準で選択してください。

  • サポートされているインターコネクト

  • 容量

  • I/O 速度

  • 設置面積

  • 購入価格,サービス費用,保守費用



5.1.2 インターコネクトとストレージ・デバイスの選択

OpenVMS Cluster システムには,メンバ・システムからストレージ・デバイスへのアクセスのために,ストレージ・デバイスを OpenVMS Cluster インターコネクトに直接接続できるという利点があります。

OpenVMS Cluster システムでは,次に示すストレージ・デバイスとアダプタを OpenVMS Cluster インターコネクトに接続できます。

  • LSI 1068 および LSI Logic 1068e (SAS 上)

  • HSZ シリーズと RZ シリーズ (SCSI 上)

  • HSG コントローラと HSV コントローラ (Fibre Channel 上)

  • ローカル・システム・アダプタ

表 5-1 は,特定のインターコネクトに接続できるストレージ・デバイスの種類をまとめたものです。

表 5-1 インターコネクト,および接続するストレージ・デバイス
ストレージ・インターコネクト ストレージ・デバイス
SCSI HSZ コントローラ,SCSI ストレージ・デバイス
Fibre Channel HSG コントローラ,HSV コントローラ,SCSI ストレージ・デバイス
SAS LSI 1068 および LSI 1068e コントローラ,SCSI ストレージ・デバイス



5.1.3 設置面積とストレージ・デバイスの選択

床面積当たりのコストが高く,ストレージ・デバイスで大きな床面積を占有したくない場合,次の選択肢があります。

  • 設置面積が小さくても容量が大きいディスク・ストレージ・アレイを選択する。天井が高い実験室向けには,積み重ね方式のキャビネットが用意されているストレージ・デバイスがあります。

  • ディスクのコストよりも容量を優先する。

  • 新しいストレージ・アレイやディスクに定期的にアップグレードする習慣をつける。ストレージ・デバイスのテクノロジの進歩とともに,パフォーマンスと容量が増える一方で物理的なサイズが小さくなっています。

  • 電源と空調機用に適切な床面積を検討する。



5.2 記憶容量の必要量の決定

記憶容量は,システム・ファイル,アプリケーション・ファイル,ユーザ・ファイルを保存するために必要なストレージ・デバイスの容量です。記憶容量を算出すれば,OpenVMS Cluster 構成に必要な記憶容量が決まります。

5.2.1 記憶容量の必要量の見積り

オンライン記憶容量の必要量を見積もるには, 表 5-2 の説明に従って, OpenVMS Cluster システムのソフトウェアごとに必要なストレージの容量を合算します。

表 5-2 ディスク容量の見積り
ソフトウェア・コンポーネント 説明
OpenVMS オペレーティング・システム OpenVMS オペレーティング・システムに必要なブロック 1 数を見積ります。

関連項目: OpenVMS インストール・マニュアルと SPD (Software Product Description [ソフトウェア仕様書]) を参照してください。

ページ・ファイル,スワップ・ファイル,ダンプ・ファイル ページ・ファイル,スワップ・ファイル,ダンプ・ファイルに必要なディスク容量を AUTOGEN で決定します。

関連項目: 以上のファイル・サイズの計算や変更については,『OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。

サイト固有のユーティリティとデータ サイト固有のユーティリティ,コマンド・プロシージャ,オンライン・ドキュメント,関連ファイルごとのディスク記憶容量の必要量を見積ります。
アプリケーション・プログラム アプリケーション製造元のデータを基に,OpenVMS Cluster システムにインストールするアプリケーションごとの容量を見積もります。

関連項目: SPD (Software Product Description) を参考にして,使用するレイヤ製品の通常の操作に必要な容量を見積もります。

ユーザ作成プログラム ユーザ作成プログラムと付属データベースに必要な容量を見積もります。
データベース 各データベースのサイズを見積もります。この情報は,アプリケーション固有のデータベースに関係するドキュメンテーションに必要です。
ユーザ・データ 以下のガイドラインに基づいてユーザ・ディスク容量の必要量を見積もります。

  • 臨時ユーザには,10,000 ブロックから 100,000 ブロックを割り当てます。

    臨時ユーザは,電子メールの読み取り,書き込み,削除をします。臨時ユーザがプログラムを持つことはほとんどなく,したがって臨時ユーザがファイルを長期間保存することは滅多にありません。

  • 標準ユーザには 250,000 ブロックから 1,000,000 ブロックを割り当てます。

    標準ユーザは,電子通信,オンラインの情報保存にシステムを幅広く使用し,個人使用目的のプログラムも少数使用します。

  • 上級ユーザには,1,000,000 ブロックから 3,000,000 ブロックを割り当てます。

    上級ユーザには,電子メール用の標準システム用以外に,プログラム開発用,データ・ファイル保存用に大量のストレージ領域が必要になります。上級ユーザには,開発や保守管理の対象になるプロジェクトやプログラムの数により,数十万ブロックのストレージ領域が必要となることもあります。

合計必要量 以上の見積り容量の合計が,OpenVMS Cluster システムの構成に現在必要な,ディスク容量の概算容量になります。

1記憶容量の単位はブロックです。1 ブロックは 512 バイトです。



合計ディスク容量の必要量を決定する前に,オンライン・ストレージやバックアップ・ストレージの将来的な増加量を検討することも可能です。

たとえば,OpenVMS Cluster システムでは,どの程度の割合で新規ファイルが作成されるでしょうか。この値を見積り, 表 5-2 で計算した合計ディスク記憶容量に追加すれば,オンライン・ストレージにおける現在と将来のニーズをより正確に計算することができます。

バックアップ・ストレージの必要量を決定するには,古いデータやアーカイブ・データの扱いを決める必要があります。ほとんどのストレージ・サブシステムでは,新しいファイルが積極的に使用される一方で,古いファイルは使用されなくなります。オンライン・ストレージからバックアップ・ストレージに定期的に古いファイルを移動することで,オンライン・ストレージを新しいファイルに空けることができ,オンライン・ストレージの必要量を制御することができます。

バックアップ・ストレージの容量を適切に維持することで,アーカイブ処理の効果が意味を持つとともに,オンライン・ストレージの必要量を節約することができます。

5.3 ディスク・パフォーマンス・オプティマイザの決定

推定ディスク・パフォーマンス作業負荷の見積りと,作業負荷データの解析により,ディスク・パフォーマンスの必要量を決定することができます。

Monitor ユーティリティと DECamds では,アプリケーションとビジネスのニーズに対して,どのパフォーマンス・オプティマイザが最適であるかを判断できます。

5.3.1 パフォーマンス・オプティマイザ

パフォーマンス・オプティマイザは,アプリケーションとデータ用にストレージのパフォーマンスを強化するためのソフトウェア製品やハードウェア製品です。 表 5-3 は,各種パフォーマンス・オプティマイザの働きをまとめたものです。

表 5-3 ディスク・パフォーマンス・オプティマイザ
オプティマイザ 説明
DECram for OpenVMS システム管理者がメモリ内に論理ディスクを作成し, I/O パフォーマンスを強化するために必要なディスク・デバイス・ドライバ。メモリ内 DECram ディスク上のデータは,ハードウェア・ディスク上のデータよりも高速でアクセスできます。 DECram ディスクは, Volume Shadowing for OpenVMS でシャドウ・セットにすることができ, MSCP サーバによるサービスも可能です。 1
半導体ディスク (SSD) 一般のシステムでは, I/O 要求の約 80% がオンライン保存データの約 20% の部分に集中します。半導体デバイスは,このデータ・サブセットに必要な高速アクセスを提供します。
ディスク・ストラインピング ディスク・ストラインピング (RAID レベル 0) では,アプリケーションがディスク・ドライブ・アレイを並列にアクセスでき,高いスループットを実現できます。ディスク・ストライピングでは,いくつかのディスクが "ストライプ・セット" にグループ化され,アプリケーション・データは "チャンク" に分割され,これによってデータはストライプ・セット内のディスクに総当たり式に均等に分散します。

アクセス時間が節約されるので,ディスク・ストライピングでは特に以下のアプリケーションでパフォーマンスが向上します。

  • 大量のデータを並列転送する場合。

  • 複数のドライブ間に負荷を分散させる必要がある場合。

ディスク・ストライピングは 2 種類あります。

  • コントローラ方式のストライピング。HSJ コントローラと HSG コントローラがいくつかのディスクを 1 つのストライプ・セットに結合します。このストライプ・セットは,1 つのボリュームとして OpenVMS を構成します。この種のディスク・ストライピングはハードウェア方式です。

  • ホスト方式のストライピング。RAID for OpenVMS を使用して, OpenVMS ホストにストライプ・セットを作成します。 OpenVMS ソフトウェアは 1 つの I/O 要求を複数の同時要求に分割し,それをストライプ・セットのディスクに送信します。この種のディスク・ストライピングはソフトウェア方式です。

注意: Volume Shadowing for OpenVMS ソフトウェアをディスク・ストライピングと組み合わせると,ストライプ・セット・メンバを冗長化できます。コントローラ方式のストライプ・セットをシャドウ化したり,ホスト方式のストライプ・セットをシャドウ化することができます。

拡張ファイル・キャッシュ (XFC) OpenVMS Alpha には, XFC (extended file cache) を持つホスト方式のキャッシュが用意されています。これは,仮想 I/O キャッシュ (VIOC) と置き換えることも共存させることもできます。 XFC はクラスタ規模のファイル・システム・データ・キャッシュで, VIOC では使用できなかった機能をいくつか持っています。パフォーマンスを改善する,先読みキャッシングやキャッシュの自動サイズ変更機能などがこれに含まれます。 OpenVMS Integrity も XFC をサポートしていますが, VIOC はサポートしていません。
ディスク・キャッシュ付きコントローラ ストレージ・テクノロジによっては,メモリでディスク・キャッシュを実装するものがあります。キャッシュのデータで対応できるアクセスは,シーク・タイムやローテーション待ち時間なしで即座に処理されます。このようなアクセスでは,I/O 応答時間の 2 つの大きな要素が取り除かれます。 HSZ コントローラ,HSG コントローラにはキャッシュが組み込まれています。 RF ディスクと RZ ディスクにはすべて,ディスク・キャッシュが埋め込みコントローラの一部として組み込まれています。

1 MSCP サーバは,直接アクセスが可能なローカル接続ディスクを OpenVMS Cluster 上の他のシステムに開放します。

関連項目: 以上のパフォーマンス・オプティマイザで, OpenVMS Cluster における I/O のスケーラビリティが強化される様子については, 第 9.6 節 を参照してください。



5.4 ディスクの可用性の必要要件の決定

ストレージ・サブシステムでは,可用性はストレージ・デバイスの可用性とデバイスへのパスの可用性によって決まります。

ストレージ・サブシステムの可用性を最適化して強化するには,コストがかかります。可用性コストの解析では,障害発生時に利用できなくなるデータのコストに対してデータ保護に必要なコストを比較検討します。ビジネスの特性によっては,ストレージ・サブシステムの障害による影響は,軽度の影響,中程度の影響,重度の影響に分けることができます。

デバイスとデータの可用性オプションを利用すれば,ストレージ・サブシステムの障害時の影響を緩和したり,場合によっては帳消しにすることができます。

5.4.2 デバイスとデータの可用性オプティマイザ

可用性の必要要件によっては,最も優先順位の高いアプリケーションとデータを対象にして, 表 5-4 の説明に従って可用性オプティマイザを選択してください。

表 5-4 ストレージの可用性オプティマイザ
可用性オプティマイザ 説明
冗長アクセス・パス データまでの冗長アクセス・パスを構成することで,デバイスまでのパスにおけるハードウェア障害を防ぎます。
Volume Shadowing for OpenVMS ソフトウェア シャドウ・セットを構成する 1 つ以上の物理的に同一なディスクにデータを書き込むことで,仮想ディスクに書き込まれたデータの複製を作成します。複製データを利用して,あるディスクが使用できなくても,ユーザは目的のデータをアクセスできます。また,シャドウ・セットのメンバに障害が発生しても,シャドウ・ソフトウェアにより,そのドライブはシャドウ・セットから取り除かれ,残ったドライブを利用して処理が続行されます。シャドウ処理はアプリケーションには透過的に実行され,メディア,コントローラ,インターコネクトの障害が発生している間もデータの保存や配信が可能です。

シャドウ・セットには,最大で 3 つのメンバを組み込むことができ,シャドウ・メンバ・セットは, OpenVMS Cluster のストレージ・サブシステム内のどこにでも配置できます。

関連項目: ボリューム共用の詳細については,『Volume Shadowing for OpenVMS 説明書』を参照してください。

システム・ディスクの冗長化 複数のアクセス・パスがあるディスク・ドライブにシステム・ファイルを配置します。システム・ディスクを組み込んだシャドウ・セットを構成すると, OpenVMS Cluster の可用性が増します。また,複数のシステム・ディスクで OpenVMS Cluster システムを構成することもできます。

関連項目: 詳細については, 第 10.2 節 を参照してください。

データベースの冗長化 バッチ・ジョブで夜間に更新されるデータベースの一定のファイルやパーティションの冗長コピーを保存します。シャドウ・セットではディスク全体のコピーが作成されますが,この方法では,別のディスクにバックアップ・コピーを作成するか,ファイルやデータベースを選択してスタンバイ・テープにバックアップ・コピーを作成するだけで済みます。
新しいデバイス 新しいデバイスを選択して障害に備えます。一般に,デバイスが新しいほど信頼性と平均故障時間 (MTBF) がすぐれています。また,コントローラが新しいほど,最新のチップ・テクノロジで信頼性が高くなります。
包括的なバックアップ計画 周期の短い定期的なバックアップは,データの可用性を保証する最も効果的な方法です。

関連項目: Fibre Channel テープ・サポートの詳細については, 第 7.5 節 を参照してください。バックアップ計画と OpenVMS Backup の詳細については,『OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。バックアップ・ソフトウェアとバックアップ・ソリューションの詳細については, http://h18006.www1.hp.com/storage/tapestorage.html および http://h71000.www7.hp.com/openvms/storage.html を参照してください。


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