日本語トランスレータリファレンス・マニュアル 
日本語トランスレータ リファレンス・マニュアル  
 
 
第4章 漢字ReGISトランスレータ  
 
 
DECprint製品群で提供するReGISプロトコルをPostScriptに変換するトランスレータは,英語版とまったく同じです。この ReGIS トランスレータの他に, DECprint製品群では,DEC 漢字や JIS カタカナ文字セットを使用する,漢字 ReGIS トランスレータ(データ・タイプ名は REGIS_KANJI または REGIS_KANJI80)を提供します。この章では,英語版 ReGIS トランスレータと漢字 ReGIS トランスレータとの違いを説明します。この章で触れられていない部分については,英語版 ReGIS トランスレータと同じなので,「 PostScript Translators Reference  Manual for ReGIS and Tektronix 4010/4014 」のPART I "ReGIS Translator" を参照してください。
 
 
 REGIS_KANJIとREGIS_KANJI80は,日本語グラフィック端末,VT284のREGISモードとの互換機能を提供します。REGIS_KANJIはVT284のグラフィック設定のReGIS85桁表示に, REGIS_KANJI80はReGIS80桁表示に,それぞれ対応しています。
  注意  
ReGISおよび漢字ReGISトランスレータは,すでにVT端末用に作成されたReGIS 形式のファイルを印刷することを目的として提供されています。トランスレータからの出力は,VT端末のReGISよりも精度が高い等の利点がありますが,将来のバージョンアップでの互換性を維持するためには,本来のVT端末のReGISでサポートされていない機能を使用することは避けてください。また,日本語PostScriptプリンタを利用したグラフィック・アプリケーションを新たに作成する場合は,トランスレータを使用せずにPostScriptを直接使用することを強くお勧めします。  
 
 
 
VT284のReGIS仕様に関しては,『 Kanji Graphic Display VT284/VT286 Programmer Reference  Manual 』の第5章 "ReGIS PROGRAMMING" を参照してください。
REGIS_KANJIとREGIS_KANJI80の違いは,REGIS_KANJIが英語版VT24xとの互換性を重視して,初期画面アドレス,標準文字セルサイズを決定しているのに対して,REGIS_KANJI80 はVT284の画面の大きさ(縦720ピクセル横960ピクセル)を画面アドレスにしたときに,文字がVT284固有の大きさで表示されることを意図して,標準文字セルサイズを決定している点です。以下にREGIS_KANJI80の標準文字セルサイズを示します。
  注意  
REGIS_KANJIデータ・タイプの標準文字セルサイズは,英語版REGISデータ・タイプと同じです。 
 
 
 
 
 
表 4-1 REGIS_KANJI80での標準文字セルサイズ  
 
S0
 
[12,12]
 
[11,12]
 
[12,]
 
 
S1
 
[12,24]
 
[11,24]
 
[12,]
 
 
S2
 
[24,36]
 
[22,36]
 
[24,]
 
 
S3
 
[36,54]
 
[33,54]
 
[36,]
 
 
S4
 
[48,72]
 
[44,72]
 
[48,]
 
 
S5
 
[60,90]
 
[55,90]
 
[60,]
 
 
S6
 
[72,108]
 
[66,108]
 
[72,]
 
 
S7
 
[84,126]
 
[77,126]
 
[84,]
 
 
S8
 
[96,144]
 
[88,144]
 
[96,]
 
 
S9
 
[108,162]
 
[99,162]
 
[108,]
 
 
S10
 
[120,180]
 
[110,180]
 
[120,]
 
 
S11
 
[132,198]
 
[121,198]
 
[132,]
 
 
S12
 
[144,216]
 
[132,216]
 
[144,]
 
 
S13
 
[156,234]
 
[143,234]
 
[156,]
 
 
S14
 
[168,252]
 
[154,252]
 
[168,]
 
 
S15
 
[180,270]
 
[165,270]
 
[180,]
 
 
S16
 
[192,288]
 
[176,288]
 
[192,]
 
 
  注意  
表 4-1  のサイズの値は画面アドレスが960×720のときの値です。画面アドレスの初期値はREGIS_KANJIとREGIS_KANJI80で同じですが(800×480), REGIS_KANJI80では,画面アドレスを960×720に設定して使用することを強くお勧めします。 
 
 
 
 
REGIS_KANJIおよびREGIS_KANJI80の初期設定状態を 
付録 D  に示します。
 
 ReGISトランスレータでは,使用できる文字セットはASCIIだけですが,漢字ReGISトランスレータでは DEC漢字指示セット,JISローマ字セット,JISカタカナ文字セットも指定できます。DEC漢字指示セットについては,「DEC漢字コード表」(AA-A056C-TE-JO)を参照してください。文字セットの切り替えは,テキスト・コマンドの以下の文字セットオプションを用います。
T(A0(L"<文字セット指示子>"),またはT(A0(R"<文字セット指示子>")
ダブルクオーテーションマーク(")はシングルクオーテーションマーク(')で置き換えることもできます。ここで,LはANSIデータ・タイプでのGL部分,すなわち文字コードの8ビット目(MSB)がoff(0)である文字コードを示し,RはGR部分,すなわち文字コードのMSBが on(1)である文字コードを示します。以下に各文字セットの<文字セット指示子>を示します。
 
+J
 
JIS ローマ字セット
 
 
+B
 
ASCII 文字セット
 
 
+I
 
JIS カタカナ文字セット
 
 
$+3
 
DEC 漢字指示セット1983年版
 
 
  注意  
漢字ReGISトランスレータで使用される文字の書体は明朝体です。
 漢字以外の文字セット指示子の + は,(,),または * と置き換えてもかまいません。
 漢字指示子は,$+1,$+@,$+B でもかまいません。いずれもDEC漢字指示セット 1983年版が表示できます。
 文字列の区切り文字であるシングルクオーテーション/ダブルクオーテーションが2バイト文字の1バイト目の後に続く場合は,これらは2バイト文字の2バイト目として処理されます。
 漢字ReGISトランスレータでは,DEC拡張漢字はサポートされません。したがってオンデマンド・ローディングも行われません。
 漢字に対しては,文字スペーシングの値が2倍にされて,次の文字の位置が決定されます。これは漢字(2バイト文字)を全角で,1バイトの文字を半角で表示するための処置です。
 DEC 漢字の未定義文字は全角空白で表示されます。
  
 
 
 
 
 
 英語版REGISデータ・タイプの文字ロード・コマンドでは,文字サイズは横8ドット縦10ドットのビットマップ文字が文字セット1,2,または3にロードできます。漢字 ReGIS では,この文字サイズを以下の形式で横8〜11ドット,縦10〜24ドットの範囲で選択できます。
L[<横ドット数>,<縦ドット数>]
  注意  
漢字ReGISでは,ロードされた文字を表示するときには,どのドットサイズで指定された文字でもユニットセル・サイズに合わせて,文字を拡大または縮小して表示します。
 ロード・コマンドで指定するドットサイズは,1つの文字セット内では変えないようにしてください。
  
 
 
 
 
 
 英語版REGISデータ・タイプでは文字シェーディングに用いられるのは,横8ドット縦10 ドットのビットマップ文字(ASCII文字セットのみ)ですが,漢字ReGISではそのときのGL文字セットがASCIIでない場合には,アウトライン文字(明朝体)を用います。
  注意  
アウトライン文字は,そのときのユニットセル・サイズよりやや縮小されて表示されます。これは,VT端末での文字シェーディングで,文字の下側の数ドット列が削除されて表示されることに対応しています。
 現在のGL文字セットが漢字のときは,シェーディング文字はASCII文字セットを用います。
  
 
 
 
 
 トランスレータはいずれも,既存の弊社製品との互換性を保つようにしていますが,いくつかの相違点もあります。 表 4-2  は,漢字ReGISトランスレータと対応する漢字グラフィック端末VT284のReGISモードとの機能の違いを示しています。 REGISデータ・タイプと VT240 との違いは,英語版マニュアル「 PostScript Translators Reference  Manual for ReGIS and Tektronix 4010/4014 」で述べられています。
表 4-2 VT284 と漢字 ReGIS トランスレータの違い  
 
ReGISへの切り替え
 
エスケープシーケンス
 
データ・タイプ
  (REGIS_KANJI, REGIS_KANJI80)
 
 
初期画面アドレス
 
[0,0][767,479]
 
[0,0][799,479]
 
 
線の太さ
 
画面の1/960
 
画面の1/800
 
 
画面スクロール
 
 
 
 
 
 
    S[X,Y]
 
あり
 
なし
 
 
    S<langle symbol>pv<rangle symbol>
 
あり
 
なし
 
 
    S(D<langle symbol>0<rangle symbol>),S(D<langle symbol>1<rangle symbol>)
 
あり
 
なし
 
 
カーソル制御
 
 
 
 
 
 
    S(C<langle symbol>0<rangle symbol>),S(C<langle symbol>1<rangle symbol>)
 
あり
 
なし
 
 
印刷制御
 
 
 
 
 
 
    S(H),S(H[X,Y])
 
あり
 
なし
 
 
    S(H[X,Y][X,Y])
 
あり
 
なし
 
 
遅延時間指定S(W(M<langle symbol>n<rangle symbol>))
 
あり
 
なし
 
 
ページ排出指定S(F)
 
なし
 
あり
 
 
明度(Lightness)
 
明度100%が最も明るい
 
明度100%は黒で印刷
 
 
補色ライティングモードW(C)
 
あり
 
オーバーレイモードで
  代用
 
 
フォアグラウンド画面制御
      W(F<langle symbol>n<rangle symbol>)
 
あり
 
なし
 
 
線幅指定 W(L<langle symbol>n<rangle symbol>Y)
 
なし
 
あり
 
 
標準文字サイズ(T(Sn))と
  画面アドレスの関係
 
アドレスが変化しても
  見かけの大きさは変わらない
 
アドレスに対応して
  大きさは変化する
 
 
文字フォント
 
VT284/286 11×24
  文字セット
 
アウトライン
  フォント
  (モリサワ竜明朝書体)
 
 
80カラム/85カラム設定
 
設定画面による
 
データ・タイプによる
 
 
初期GL文字セット
 
設定による
  (JISローマ字またはASCII)
 
JIS ローマ字セット
 
 
初期GR文字セット
 
設定による
  (DEC漢字またはJISカタカナ)
 
DEC漢字
 
 
文字オートラップ
 
あり
 
なし(切り捨て)
 
 
文字ティルト指定
  T(D<langle symbol>A<rangle symbol>)
 
なし
 
あり
 
 
文字回転時のゆがみ
 
90度単位以外では大きくなる
 
90度単位以外でも文字サイズは変わらないが,互換性の保持のために,文字間隔は変わる
 
 
ロード文字セット名指定
 
あり
 
なし
 
 
レポート命令
 
あり
 
なし
 
 
DEC拡張漢字サポート
 
あり
 
なし
 
 
  注意  
トランスレータでは,色は灰色の濃さで表わされます。詳しくは,「 PostScript Translators Reference  Manual for ReGIS and Tektronix 4010/4014 」のTable 5-3を参照してください。
 トランスレータでは,色マップの変更(S(M))は既に描かれたものの色には影響しません。
 トランスレータは画面消去命令(S(E))ではページ排出しません。ページ排出が必要ならばS(F)を使ってください。
 トランスレータは非常に複雑なポリゴン(自身と交差する点が多くあるようなもの) の塗り潰しを行った場合に,PostScriptのlimitcheckエラーを引き起こす場合があります。
 トランスレータでは,標準文字サイズ番号によって指定された文字の大きさは,そのときの画面アドレスによって変化します。画面アドレスを変更するような ReGISアプリケーションが,文字サイズ番号による文字サイズ指定をしている場合,VT端末とトランスレータの互換性は失われます。このような場合は,ユニットセル・サイズ指定 (T(U[x,y]))で文字サイズを指定してください。
 REGIS_KANJI80の標準文字サイズは,画面アドレスが960×720のときにVT284と互換性が取れるように設定しています。