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マルチサイト OpenVMS Cluster 構成では,遠距離を隔てているサイトのノードに対応します。使用するテクノロジにもよりますが,サイト間の距離は,最大で約 240 キロメートルになります。サイト間は,FDDI,非同期転送モード (ATM),DS3 で結合され,大きな 1 つのクラスタを形成します。ほとんどの電話会社のサービス網から利用できる DS3 サービスと ATM サービスでは,マルチサイト・クラスタ用の長距離ポイント間通信が可能です。
図 8-8 は,マルチサイト OpenVMS Cluster システムの代表的な構成例です。 図 8-8 の後に,以下の構成を検討します。
図 8-8 WAN リンクで結合されたマルチサイト OpenVMS Cluster 構成
図 8-8 で,可能な構成の組み合わせをすべて表しているわけではありませんが,マルチサイト OpenVMS Cluster には次の構成要素を組み込むことができます。
関連項目: LAN 構成のガイドラインについては, 第 4.12.6 項 を参照してください。 ELAN 構成のガイドラインについては, 第 10.7.7 項 を参照してください。
マルチサイト OpenVMS Cluster システムには,以下の利点があります。
ボリューム・シャドウイングまたは RAID (Redundant arrays of independent disks) により,両サイトにメンバがある論理ボリュームを作成できます。サイトのどちらかが使用できなくなっても,反対のサイトからデータを利用できます。
VOTES システム・パラメータを調整しておけば,他のサイトに障害が発生したり,他のサイトとの通信ができなくなっても自動的に継続する優先サイトを選択できます。
関連項目: マルチサイト・クラスタのその他の説明については,『Compaq OpenVMS Cluster システム』を参照してください。
8.12 ディザスタ・トレラントな OpenVMS Cluster 構成
ディザスタ・トレラントな OpenVMS Cluster 構成では,Volume Shadowing for OpenVMS,高速ネットワーク,特別管理ソフトウェアを使用します。
ディザスタ・トレラントな OpenVMS Cluster 構成では,2 地点のサイトにあるシステムを 1 つの管理可能な OpenVMS Cluster システムに結合できます。前項で説明したマルチサイト・クラスタと同じく,これらの物理的に離れているデータ・センターは, FDDI で結合するか,ATM,T3,E3 のうちどれか1つと FDDI の組み合わせにより結合します。
OpenVMS ディザスタ・トレラントな製品を,従来は BRS (Business Recovery Server) と称していましたが,BRS は,システム管理とソフトウェア・サービスのパッケージである Disaster Tolerant Cluster Services に包含されることになりました。Disaster Tolerant Cluster Services の詳細については,弊社のサービス担当者にお問い合わせください。
CI (クラスタ・インターコネクト) OpenVMS Cluster システムの構成方法はさまざまです。この章では,可用性とパフォーマンスの両方を最大限に活用できる CI OpenVMS Cluster の構成方法について説明します。説明で紹介する構成例は,段階的に複雑になっていきます。それぞれの説明の後では各構成を比較して解析します。これらの構成では,クラスタ規模が非常に大きくなっても,その可用性,I/O パフォーマンス,ストレージの接続性のニーズに応じてスケールを拡張できる基本的な手法を説明します。
9.1 CI 構成要素
CI は,OpenVMS Cluster システム同士や OpenVMS Cluster システムとストレージ間の通信が行われるラジアル・バスです。CI は,以下の構成要素からなります。
HSJ ストレージ・コントローラまたは HSC ストレージ・コントローラは,オプションですが,通常は組み込まれています。
CI の 2 本の独立パスのそれぞれに (パス A とパス B),送受信ケーブル・ペア。
これは,CI に接続された OpenVMS ノードと HSC コントローラまたは HSJ コントローラ間の信号の共通接続ポイントとしてサービスを提供するパッシブ・デバイスです。スター・カプラは,完全に独立し,電気的に隔てられた 2 つの "パス・ハブ"です。各 CI パス・ハブは,ロー・パワー信号だけを搬送するトランスフォーマしか組み込まれていないので非常に高い信頼性を備えています。
可用性とパフォーマンスは,どちらも構成要素の追加で強化できます。可用性を目的として追加する構成要素は,障害が発生した構成要素が実行すべき作業を引き受けることのできる冗長構成要素として構成します。パフォーマンスを目的として追加する構成要素は,他の構成要素と並列動作できるように構成します。
可用性とパフォーマンスのどちらも軽視できない状況はめずらしくありません。この節では,この両方の目的を達成するための手法を説明します。
9.2 構成の前提
以下に示す構成の前提は,次のとおりです。
従来の CI アダプタ・モデルは非常に低速である。
HSJ50 と比べて HSJ40 は幾分低速であり,HSC モデルは,さらに低速である。
図 9-1 に示す構成 1 に,単一点障害の要因はありません。 I/O パフォーマンスは,スター・カプラの帯域幅で制限されます。
図 9-1 同じ CI に接続された冗長 HSJ とホスト CI アダプタ (構成 1)
9.3.1 構成要素
図 9-1 に示す CI 構成の構成要素は次のとおりです。
構成要素 | 説明 |
---|---|
ホスト 1,ホスト 2 | デュアル CI 対応の OpenVMS Alpha ホストまたは VAX ホスト。
解説: どちらかのホストに障害が発生しても引き続きシステムを運用できます。平常時は,両方のホストのフル・パフォーマンスを活用できます。 |
CI 1-1, CI 1-2,CI 2-1, CI 2-2 | ホスト別のデュアル CI アダプタ。
解説: CI アダプタのどちらかのホストに障害が発生しても,残ったホストと HSJ ストレージ・コントローラまでの CI 接続を維持できます。 |
スター・カプラ | 2 個のパス・ハブを持つ 1 つのスター・カプラ・キャビネット。スター・カプラは,パス当たり 1 本の送受信ケーブル・ペアで CI ホスト・アダプタと HSJ ストレージ・コントローラに冗長接続されています。
解説: パス・ハブと接続ケーブルのどちらに障害が発生しても,残った CI パスでフル CI 接続を続行します。両方のパスが使用できる場合は,その両方を組み合わせた帯域幅がホスト間とホストストレージ・コントローラ間のデータ通信に利用できます。 |
HSJ 1, HSJ 2 | シングル StorageWorks キャビネットにデュアル HSJ ストレージ・コントローラ。
解説: ストレージ・コントローラのどちらかに障害が発生しても残ったコントローラが 2 つの HSJ が共用する SCSI バスにより,すべてのディスクの制御を引き受けます。両方のコントローラを使用できる場合,それぞれがディスクの一部のサービスをするように割り当てることができます。こうして,両方のコントローラの I/O 速度/秒と帯域幅のキャパシティをクラスタに活かすことができます。 |
SCSI 1, SCSI 2 | HSJ ペア間に接続された共用 SCSI バス。
解説: どちらの HSJ ストレージ・コントローラからも,共用 SCSI 上の各ディスクまでのアクセスを提供します。これにより当該バス上のディスクのデュアル・ポート化を実装します。 |
ディスク 1, ディスク 2, ... ディスク n-1,ディスク n | 重要なディスクは,共用 SCSI バスにより,HSJ ペア間でデュアル・ポート化されている。
解説: どちらかの HSJ に障害が発生しても,障害の発生した HSJ が制御していたディスクの制御を残った HSJ が引き受けます。 |
シャドウ・セット n によるシャドウ・セット 1 | 重要なディスクは,別の共用 SCSI に接続されているもう 1 つのディスクによりシャドウ化されている。
解説: 接続先のディスクと SCSI バスのどちらか,または両方に障害が発生しても,残ったシャドウ・セット・メンバを利用できます。両方のディスクが利用できる場合,それらを組み合わせた READ I/O キャパシティと READ データ帯域幅キャパシティをクラスタで利用できます。 |
この構成の長所は次のとおりです。
ディスクを HSJ ストレージ・コントローラに割り当てるには,SYS$EXAMPLES で提供される OpenVMS Prefer ユーティリティを使用するか,IO$_SETPRFPATH 修飾子と IO$M_FORCEPATH 修飾子で $QIO コールを発行するか,HSJ の SET_PREFERRED コマンドを使用します (最後の方法はあまり推奨できる方法ではありません。使用するのはこの構成だけにしてください)。
この構成の短所は次のとおりです。
この構成には次のような強化手法が組み込まれています。
冗長 HSJ,ホスト CI アダプタ,CI を備えた 図 9-2 の構成には電気的な単一点障害の要因がありません。2 つのスター・カプラにより,I/O パフォーマンスと可用性は構成 1 を上回っています。
図 9-2 冗長 CI に接続された冗長 HSJ とホスト CI アダプタ (構成 2)
構成 2 の構成要素は次のとおりです。
パート | 説明 |
---|---|
ホスト 1, ホスト 2 | デュアル CI 対応の OpenVMS Alpha ホストまたは VAX ホスト。
解説: どちらかのホストに障害が発生しても,システムは処理を続行できます。正常時には,両方のホストのフル・パフォーマンスをアプリケーションに使用できます。 |
CI 1-1, CI 1-2,CI 2-1,CI 2-2 | 各ホストにデュアル CI アダプタ。アダプタ CI 1-
n は,CI
n に接続されたホスト 1 の CI アダプタ。以下同様。
解説: どちらかのホストの CI アダプタに障害が発生しても,そのホストと他のホストや HSJ ストレージ・コントローラとの CI 接続が維持されます。ホスト上の各 CI アダプタは,別々のスター・カプラに接続されています。障害がなければ,両方の CI アダプタのフル・データ帯域幅と I/O 通信速度/秒のキャパシティをホストで利用できます。 |
スター・カプラ 1, スター・カプラ 2 | 2 つのスター・カプラ。それぞれ独立したパス・ハブ・セクションを 2 つ持つ。各スター・カプラは,パス別の送受信ケーブルのペアで CI ホスト・アダプタと HSJ ストレージ・コントローラに冗長接続されている。
解説: パス・ハブや接続ケーブルに障害が発生しても,残った CI パスにより,その CI のフル接続が維持されます。パスが切断されても障害が発生したパスに接続されているストレージ・コントローラとホスト・アダプタで利用できる帯域幅だけの影響に留まります。すべてのパスが使用できる場合は, 両方の CI を組み合わせた帯域幅を使用できます。 |
HSJ 1, HSJ 2 | シングル StorageWorks キャビネットにデュアル HSJ ストレージ・コントローラを格納。
解説: どちらかのストレージ・コントローラに障害が発生しても, 2 つの HSJ 間で共用されている SCSI バスにより,障害が発生したコントローラが制御していたディスクの制御を残ったコントローラが引き受けます。両方のコントローラを使用できる場合,それぞれにディスクのサブセットのサービス担当を割り当てることができます。これにより,両方のコントローラの I/O 通信速度/秒と帯域幅とのキャパシティをクラスタで利用できます。 |
SCSI 1, SCSI 2 | HSJ ペア間に接続されている共用 SCSI バス。
解説: どちらかの共用 SCSI バスに障害が発生しても,HSJ ストレージ・コントローラから各ディスクへのアクセスは,残った共用 SCSI バスにより確保されます。これで,当該バスのディスクのデュアル・ポート化を実装しています。 |
ディスク 1, ディスク 2,... ディスク n-1,ディスク n | 重要なディスクは,共用 SCSI バスにより, HSJ ペア間でデュアル・ポート化されている。
解説: どちらかの HSJ に障害が発生しても,障害の発生した HSJ が制御していたディスクの制御を残った HSJ が引き受けます。 |
シャドウ・セット n によるシャドウ・セット 1 | 重要なディスクは,別の共用 SCSI に接続されているもう 1 つのディスクによりシャドウ化される。
解説: 接続先のディスクと SCSI バスのどちらか,または両方に障害が発生しても,残ったシャドウ・セット・メンバを利用できます。両方のディスクが利用できる場合,それらを組み合わせた READ I/O キャパシティと READ データ帯域幅キャパシティをクラスタで利用できます。 |
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