Compaq OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


前へ 次へ 目次 索引


6.4.2 マルチバス・フェールオーバと複数のパス

ホストからストレージまで複数のパスを持つパラレル SCSI 構成では,透過的フェールオーバによる構成よりも高い可用性とパフォーマンスが得られます。 図 6-9 に,この構成を示します。

図 6-9 マルチバス・フェールオーバと複数のパスによるパラレル SCSI 構成


この構成では,次の点に着目してください。

6.4.3 マルチポート・ストレージ・コントローラによる構成

可用性とパフォーマンスを強化するには,HSZ80 などのマルチポート・ストレージ・コントローラを使用します。 HSZ80 ストレージ・コントローラは HSZ70 に似ていますが, HSZ80 コントローラごとに 2 つのポートがあるという点で異なります。

この項では,マルチポート・ストレージ・コントローラを使用する 3 つの構成を示します。これらの構成は,可用性の高い順に紹介しています。

図 6-10 は,HSZ80 を透過モードで使用するインターコネクトが 1 本のシングル・ホストです。

図 6-10 透過モードによるシングル・インターコネクトのマルチポート・パラレル SCSI 構成


この構成では,次の点に着目してください。

図 6-11 は,ホストから 2 本のパスを使用し,透過モードで構成したシステムです。

図 6-11 透過モードによる複数パスのマルチポート・パラレル SCSI 構成


この構成の内容は以下のとおりです。

この構成では,バスが 2 本あっても,ホストから各論理ユニットまでのパスは 1 本だけです。コントローラに障害が発生すると,論理ユニットは他のコントローラの対応するポートに移動します。どちらのポートも同じホスト・バスにあるものとします。

この構成では SCSI バスを同時にアクティブにできるため, 図 6-10 の構成よりもすぐれたパフォーマンスが得られます。

図 6-12 は,マルチバス・モードでマルチポート HSZ80 ストレージ・コントローラ構成を使用するシステムです。

図 6-12 マルチバス・モードによる複数のパスのマルチポート・パラレル SCSI 構成


この構成の内容は以下のとおりです。

6.5 パラレル SCSI マルチパス構成のデバイス命名

SCSI デバイス名は,システムの拡張とともに拡張され,複雑になります。拡張前の SCSI デバイス名はパスとは無縁です。デバイス名は,デバイスをアクセスするためのノード,ホスト・アダプタ,SCSI バス ID,論理ユニット番号 (LUN) を表します。以下のような理由で,ホストが複数あって,パスが複数になる環境に,パス方式の名前は不適当です。

以上の制限事項のうち,最初の 2 つはノード割り当てクラスとポート割り当てクラスを使用すれば解決できます。3 番目の問題には,HSZ コントローラ方式の割り当てクラスを使用する必要があります。これら 3 つの割り当てクラスについては,以下の項でその概要を説明します。

6.5.1 ノード割り当てクラスの概要

ノード割り当てクラスは,ノード名の代わりにデバイス名に使用します。同じ SCSI デバイスに対して複数のノードが直接的な接続関係にあるとき,ノード割り当てクラスが必要です。

ノード割り当てクラスは,SCSI ストレージ・デバイスとアクセスを共用するすべてのノードが次の要件にあてはまるときに使用できます。

図 6-13 は,ノード割り当てクラスで命名されたデバイスの構成です。

図 6-13 ノード割り当てクラスで命名したデバイス


6.5.2 ポート割り当てクラスの概要

デバイス名におけるポート割り当てクラスは,デバイスのアクセスに使用するホスト・アダプタを表します。デバイス名のポート割り当てクラスの代わりにポート割り当てクラスを使用し,アダプタ・コントローラ名は定数 A に設定します。

SCSI システムが固有のデバイス名を作成するとき,SCSI ID が不十分な場合や,共用バス上のアダプタのコントローラ名が一致しない場合にポート割り当てクラスを使用できます。ポート割り当てクラスをデバイス名に使用できるのは, SCSI ストレージ・デバイスに対するアクセスを共用するすべてのノードに,そのデバイスまでの直接パスが 1 本しかない場合だけです。

図 6-14 は,デバイス名に割り当てクラスを使用した構成です。

図 6-14 ポート割り当てクラスを使用したデバイス名


6.5.3 HSZ 割り当てクラスを使用したデバイス名

同じストレージ・デバイスに複数のバスが接続されているノードがある場合, 図 6-15 に示す新しい HSZ 割り当てクラスを使用します。

図 6-15 HSZ 割り当てクラスを使用したデバイス名


HSZ 割り当てクラスは,割り当てクラス HSC,HSD,HSJ に似ています。 HSZ 割り当てクラス番号を使用したデバイス名の形式は,以下のとおりです。


$HSZ-allocation-class$ddcu

形式の意味は次のとおりです。

システム・マネージャは,構成に応じて以下のコマンドのどちらかを使用して HSZ コンソールから HSZ 割り当てクラスを設定します。


HSZ> SET THIS_CONTROLLER ALLOCATION_CLASS = n

または


HSZ> SET OTHER_CONTROLLER ALLOCATION_CLASS = n

ここで n は 1 から 999 の値です。

デュアル冗長構成の 1 つのコントローラ・モジュールに割り当てクラスが設定されると,他のコントローラでも自動的に同じ値に設定されます。

以下の例では,割り当てクラスは 199 に設定されます。この例では,この値が両方のコントローラに設定される様子を表しています。


z70_B => SET THIS ALLOCATION_CLASS=199 
z70_B => SHOW THIS_CONTROLLER 
Controller: 
        HSZ70 ZG64100136 firmware XB32-0, Hardware CX25 
        Configured for MULTIBUS_FAILOVER with ZG64100160 
            In dual-redundant configuration 
        Device Port SCSI address 6 
        Time: NOT SET 
Host port: 
        SCSI target(s) (0, 2, 3, 4, 5, 6) 
 
        TRANSFER_RATE_REQUESTED = 20MHZ 
        Host Functionality Mode = A 
        Allocation class         199 
        Command Console LUN is target 0, lun 1 
Cache: 
        32 megabyte write cache, version 4 
        Cache is GOOD 
        Battery is GOOD 
        No unflushed data in cache 
        CACHE_FLUSH_TIMER = DEFAULT (10 seconds) 
        NOCACHE_UPS 
z70_B => SHOW OTHER_CONTROLLER 
Controller: 
        HSZ70 ZG64100160 firmware XB32-0, Hardware CX25 
        Configured for MULTIBUS_FAILOVER with ZG64100136 
            In dual-redundant configuration 
        Device Port SCSI address 7 
        Time: NOT SET 
Host port: 
        SCSI target(s) (0, 2, 3, 4, 5, 6) 
 
        TRANSFER_RATE_REQUESTED = 20MHZ 
        Host Functionality Mode = A 
        Allocation class         199 
        Command Console LUN is target 0, lun 1 
Cache: 
        32 megabyte write cache, version 4 
        Cache is GOOD 
        Battery is GOOD 
        No unflushed data in cache 
        CACHE_FLUSH_TIMER = DEFAULT (10 seconds) 
        NOCACHE_UPS 

以下の規則は,SCSI デバイス名に HSZ 割り当てクラスを使用する場合に適用します。

  1. マルチバス・モードでは,デバイス名に HSZ 割り当てクラスを使用します (そうしないと,デバイスが構成されません)。

  2. 透過モードでは,デバイス名に HSZ 割り当てクラスを使用できますが,必須ではありません。

  3. HSZ の両方のコントローラに同じ HSZ 割り当てクラス番号を設定します。これは HSZ ファームウェアが自動的に処理します。

  4. クラスタ内では,すべてのタイプの割り当てクラスで HSZ 割り当てクラス番号を固有にします。

  5. HSZ 割り当てクラスを持つデバイスを参照するときは,HSZ 割り当てクラスを指定します。たとえば,DKA500 と NODE10$DKA500 という名前は使用できません。また,$GETDVI システム・サービスは,このようなデバイスに対しては, HSZ 割り当てクラスを組み入れた完全な名前だけを戻します。

6.6 Fibre Channel マルチパス構成

図 6-16 は,マルチバス・モードで構成されたストレージ・コントローラによるマルチパス構成を示したものです。

図 6-16 デュアル・ポート・ストレージ・コントローラが 2 つとバスが 2 本のシングル・ホスト


この構成では,次の点に着目してください。

各 HSG80 ポートに,専用の Fibre Channel アドレスと Fibre Channel ポート WWID がある点に着目してください。これは,すべてのポートが同じ SCSI アドレスに応答するために異なる SCSI バスに接続されているマルチバス・モードの HSZ80 と異なる点です。独立した FC アドレスにより,デュアル HSG80 の両方のポートを同じ FC で使用できます。

図 6-17 は,ストレージ・コントローラをマルチバス・モードで構成した別のマルチパス構成です。

図 6-17 デュアル・ポート・ストレージ・コントローラが 2 つとバスが 4 本のシングル・ホスト


この構成では,次の点に着目してください。

6.7 マルチパス構成の実装

パラレル SCSI と Fibre Channel インターコネクトは,マルチパス構成をサポートします。これらの構成の実装は似ており,パスを指定するシステム・パラメータとコマンドは同じです。パス識別子の構文は異なります。

デバイスまでの複数のパスの実装は,次の手順で行います。

  1. マルチパス・サポートが必要なデバイスまで,複数の物理パスがあるシステムの構成。

  2. HSx コントローラをマルチバス・モードに設定。

  3. オプションで,構成に応じたマルチパス・システム・パラメータとコンソール・パラメータの設定によるマルチパス・サポートの指定。

  4. DCL コマンド SET DEVICE/qualifier/PATH=path-identifier によるマルチパス機能の操作の調整。

6.7.1 有効なマルチパス構成

図 6-18 は,有効なマルチパス, マルチホスト構成です。

図 6-18 共用バスと共用ストレージ・コントローラを持つ 2 つのホスト


この構成では,次の点に着目してください。

この構成では,各ホストに 2 本の直接パスがあり,各デバイスには 1 本の MSCP サービス対象のパスが接続されています。

図 6-19 は,同じバスで構成されていないシステムの有効なマルチパス構成です。

図 6-19 共用,マルチポート・ストレージ・コントローラを持つ2つのホスト


この構成では,次の点に着目してください。

この構成では,各ホストに直接パスが 2 本あり, 1 本はストレージ・コントローラに接続され,もう 1 本は MSCP サービス対象のパスが各デバイスに接続されている。

6.7.2 無効なマルチパス構成

図 6_20 は,無効なマルチパス構成を示しています。クラスタ上の複数のホストを HSZ または HSG に接続するには,同じコントローラ・モジュール ( 表 6-1 参照) に接続する必要がありますが,この構成では,各ホストが別々のコントローラ・モジュールに接続されています。無効になるのはこのためです。

図 6-20 無効なマルチパス構成


6.7.3 マルチパス・システム・パラメータ

マルチパス・サポートは 表 6-3 に示される 4 つのシステム・パラメータで制御されます。 (5 番目のマルチパス・システム・パラメータは,オペレーティング・システム用です。)

表 6-3 マルチパス・システム・パラメータ
パラメータ 説明
MPDEV_ENABLE ON のときマルチパス・セットを構成します (1)。OFF (0) の場合,新たなマルチパス・セットは無効です。ただし,既存のマルチパス・セットは有効です。デフォルトは ON です。
MPDEV_LCRETRIES 論理ユニットがオンラインのコントローラまでの直接パスをシステムが再試行する回数を制御します。この回数を超えると,別のコントローラか,MSCP サービス対象のパスに直接パスを移動します。有効範囲は, 1 から 256 です。デフォルトは 1 です。
MPDEV_POLLER ON (1) のとき,マルチパス・セット・メンバまでのパスに対するポーリングが有効になります。ポーリングにより非アクティブ・パス上のエラーを早めに検出することができます。パスが利用できなくなったり,パス・サービスが復活すると,システム・マネージャには OPCOM メッセージが通知されます。OFF (0) の場合,マルチパス・ポーリングが無効になります。デフォルトは ON です。
MPDEV_REMOTE ON (1) のとき,MSCP サービス対象のディスクがマルチパス・セットのメンバになります。 OFF (0) のとき,SCSI または Fibre Channel デバイスまでのローカル・パスだけで新たなマルチパス・セットが作成されます。このパラメータを OFF に設定しても,リモートパスがある既存のマルチパス・セットには影響はありません。このパラメータはデフォルトの設定値 OFF のままにしておきます。この制限事項は,OpenVMS の将来のリリースで解消される予定です。
MPDEV_D1 オペレーティング・システム用です。

ノードで MPDEV_ENABLE か MPDEV_REMOTE が OFF に設定され,ノードに 1 本以上のパスとそのシステム・ディスクまでの複数のパスがある場合,ノードをブートできるのは直接パスだけです。


前へ 次へ 目次 索引