Compaq OpenVMS
OpenVMS Cluster システム


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9.3 サテライトのブート

OpenVMS Cluster のサテライト・ノードは,ブートの初期段階で 1 つの LAN アダプタを使用します。サテライトが複数の LAN アダプタを使用するように構成されている場合は,システム管理者はコンソール BOOT コマンドを使用して,ブートの初期段階でどのアダプタを使用するかを指定できます。システムが起動されたら,OpenVMS Cluster は使用可能なすべての LAN アダプタを使用します。このように柔軟性があるため,アダプタが故障したり,ネットワークで問題が発生しても,適切に対応することができます。

サテライト・ノードの構成およびブートのためのプロシージャとユーティリティは,Alpha システムの場合も VAX システムの場合も同じであるか,またはわずかに異なるだけです。詳細については, 第 9.4 節 を参照してください。

さらに,VAX ノードは Alpha サテライトを MOP ロードすることができ,Alpha ノードは VAX サテライトを MOP ロードすることができます。クロスアーキテクチャ・ブートについては, 第 10.5 節 を参照してください。

9.4 サテライト・ノードの構成とブート

サテライトのブートを行う場合は,以下の 表 9-3 の項目を参照してください。

表 9-3 サテライト・ブートのためのチェックリスト
ステップ 操作
1 ディスク・サーバ LAN アダプタを構成する。

OpenVMS Cluster システムでは,ディスクをサービスするための動作によって LAN にかなりの量の I/O トラフィックが発生するため,ブート・サーバとディスク・サーバはクラスタ内で帯域幅の最も広いアダプタを使用しなければならない。また, LAN アダプタ間で負荷を分散するために,サーバは 1 つのシステムで複数の LAN アダプタを使用することもできる。

十分なネットワーク帯域幅を提供するには,以下の方法を利用する。

  • 十分な帯域幅を持つネットワーク・アダプタを選択する。

  • トラフィックを分けて,合計帯域幅を増やすためにスイッチを使用する。

  • MOP およびディスク・サーバで複数の LAN アダプタを使用する。

  • スイッチまたはより高速な LAN を使用し,低速 LAN セグメントに展開する。

  • 複数の個別ネットワークを使用する。

  • 十分なパワーを備えたコンピュータを選択し,複数のサーバ・ノードを構成して負荷を共用することで,十分な MOP およびディスク・サーバの CPU キャパシティを提供する。

2 MOP サーバ・ノードとシステム・ディスク・サーバ・ノード (Alpha または VAX) がクラスタ・メンバとしてまだ構成されていない場合は, 第 8.4 節 の説明に従って,クラスタ構成コマンド・プロシージャを使用して,各 VAX ノードまたは各 Alpha ノードを構成する。複数のブート・サーバとディスク・サーバを使用して,可用性を向上し,複数のクラスタ・ノードに I/O トラフィックを分散する。
3 ディスクをサービスするために追加メモリを構成する。
4 OpenVMS Cluster にブートする各サテライトに対して, Alpha ノードまたは VAX ノードでクラス構成プロシージャを実行する。

9.4.1 1 つの LAN アダプタからのブート

サテライトをブートするには,以下のコマンドを入力します。


>>> BOOT LAN-adapter-device-name 

この例で,LAN-adapter-device-name には,有効な LAN アダプタ名を指定します。たとえば,EZA0 や XQB0 を指定できます。

会話型ブートを実行しなければならない場合は,以下の表に示すコマンドを使用します。

システム 操作
Alpha システム Alpha システム・コンソール・プロンプト (>>>) に対して,以下のコマンドを入力する。
>>> b -flags 0,1 eza0

この例で,-flags は flags コマンド・ライン修飾子を表しており,値は以下のいずれかである。

  • システム・ルート番号

    "0" は,システム・ルート [SYS0] からブートするようにコンソールに指示する。サテライト・ノードをブートする場合は,ブート・ノードのネットワーク・データベースからシステム・ルートが取り込まれるため,この指定は無視される。

  • 会話型ブート・フラグ

    "1" は,ブートを会話方式で行わなければならないことを示す。

引数 eza0 は,ブートのために使用する LAN アダプタである。

最後に,このブート・コマンド・ラインにロード・ファイルが指定されていないことに注意する必要がある。サテライト・ブートの場合,ロード・ファイルは DECnet または LANCP データベースのノード記述の一部である。

VAX システム VAX システム・コンソール・プロンプト (>>>) に対して,ブート・コマンドに完全なデバイス名を指定する。
>>>B/R5=1 XQB0

正確な構文は,システムの種類に応じて異なる。システムのハードウェア・ユーザ・ガイドを参照。

ブートが失敗した場合は,以下の操作を行います。

9.4.2 デフォルト・ブート・アダプタの変更

デフォルト・ブート・アダプタを変更するには,代替 LAN アダプタの物理アドレスが必要です。このアドレスを使用して,MOP サーバの DECnet または LANCP データベースのサテライトのノード定義を更新して,サテライトが認識されるようにします ( 第 9.4.4 項 を参照)。

システム 操作
Alpha システム SHOW CONFIG コンソール・コマンドを使用して,追加アダプタの LAN アドレスを確認する。
VAX システム 以下の方法を使用して,追加アダプタの LAN アドレスを確認する。

  • コンソール・コマンド SHOW ETHERNET を入力する。

  • 以下のコマンドを使用して,READ_ADDR プログラムをブートする。
    >>>B/100 XQB0
    
    Bootfile:READ_ADDR

9.4.3 複数の LAN アダプタからのブート (Alpha のみ)

Alpha システムでは,ブートのために複数の LAN アダプタを使用することで,可用性を向上できます。これは,MOP サーバおよびディスク・サーバへのアクセスが異なる LAN アダプタを介して可能になるからです。複数のアダプタ・ブートを使用するには,以下の表に示す操作を実行します。

ステップ 操作
  1 追加 LAN アダプタの物理アドレスを取得する。
  2 これらのアドレスを使用して,一部の MOP サーバの DECnet または LANCP データベースに格納されているノード定義を更新して,サテライトが認識されるようにする ( 第 9.4.4 項 を参照)。
  3 サテライトが DECnet データベースにすでに定義されている場合は,ステップ 4 を実行する必要がない。サテライトが DECnet データベースに定義されていない場合は, Alpha ネットワーク・データベースに SYS$SYSTEM:APB.EXE ダウンライン・ロード・ファイルを指定する ( 例 10-2 を参照)。
  4 ブート・コマンド・ラインに複数の LAN アダプタを指定する (アダプタの名前を取得するには,SHOW DEVICE または SHOW CONFIG コンソール・コマンドを使用する)。

以下のコマンド・ラインは,Alpha システムで 1 つの LAN アダプタからブートする場合に使用するコマンドと同じですが ( 第 9.4.2 項 を参照),ブート・デバイスとして, eza0 と ezb0 の 2 つの LAN アダプタが指定されている点が異なります。


>>> b -flags 0,1 eza0, ezb0

このコマンド・ラインでは,以下の処理が実行されます。

ステージ 実行される処理
  1 MOP ブートが最初のデバイス (eza0) から行われる。ブートできない場合は,MOP ブートが次のデバイス (ezb0) から行われる。ネットワーク・デバイスからブートするときに,どのデバイスからも MOP ブートを行うことができない場合は,コンソールは最初のデバイスからもう一度開始する。
  2 MOP ロードが完了すると,ブート・ドライバはすべての LAN アダプタで NISCA プロトコルを起動する。NISCA プロトコルは,システム・ディスク・サーバにアクセスして,オペレーティング・システムのロードを完了するために使用される ( 付録 F を参照)。

9.4.4 代替 LAN アダプタを使用してブートするためのサテライトの有効化

OpenVMS では,DECnet または LANCP データベースで 1 つのリモート・ノード・テーブルに対して,ハードウェア・アドレス属性が 1 つだけサポートされます。複数の LAN アダプタが接続されているサテライトでクラスタにブートするときに,どの LAN アダプタも使用できるようにするには,以下の 2 種類の方法のいずれかを使用できます。

追加 LAN アダプタに対する擬似ノードの定義

異なる DECnet アドレスまたは LANCP アドレスを使用して,擬似ノードを定義する場合は,以下の操作を行います。

DECnet の場合は, 表 9_4 に示す手順に従います。LANCP の場合は, 表 9-5 に示す手順に従います。

表 9-4 DECnet MOP サービスを使用して擬似ノードを定義する手順
ステップ 手順 説明
  1 以下の NCP コマンドを使用して,ノードの既存の定義を表示する。
$ RUN SYS$SYSTEM:NCP

NCP> SHOW NODE node-name CHARACTERISTICS
このコマンドは,ハードウェア・アドレス,ロード・アシスト・エージェント,ロード・アシスト・パラメータなど,サテライトの属性の一覧を表示する。
  2 以下に示すように,NCP コマンド・プロンプトに対して,固有の DECnet アドレスとノード名を定義することにより,擬似ノードを作成する。
++DEFINE NODE pseudo-area.pseudo-number -

NAME pseudo-node-name -
LOAD FILE APB.EXE -
LOAD ASSIST AGENT SYS$SHARE:NISCS_LAA.EXE -
LOAD ASSIST PARAMETER disk$sys:[<root.>] -
HARDWARE ADDRESS xx-xx-xx-xx-xx-xx
この例は Alpha ノード固有の例である。VAX ノードの場合は, LOAD FILE APB.EXE コマンドを TERTIARY LOADER SYS$SYSTEM:TERTIARY_VMB.EXE に変更する。


++Alpha 固有

表 9-5 LANCP MOP サービスを使用して擬似ノードを定義する手順
ステップ 手順 説明
  1 以下の LANCP コマンドを使用して,ノードの既存の定義を表示する。
$ RUN SYS$SYSTEM:LANCP

LANCP> SHOW NODE node-name
このコマンドは,ハードウェア・アドレスやルート・ディレクトリ・アドレスなど,サテライトの属性の一覧を表示する。
  2 以下に示すように,LANCP コマンド・プロンプトに対して,固有の LANCP アドレスとノード名を定義することにより,擬似ノードを作成する。
++DEFINE NODE pseudo-node-name -

/FILE= APB.EXE -
/ROOT=disk$sys:[<root.>] -
/ADDRESS=xx-xx-xx-xx-xx-xx
この例は Alpha ノード固有の例である。VAX ノードの場合は,修飾子 FILE=APB.EXE を FILE=NISCS_LOAD.EXE に変更する。


++Alpha 固有

異なるブート・ノードに対する異なるノード・データベースの作成

異なるブート・ノードに対して異なる DECnet または LANCP データベースを作成する場合は,以下の操作を行います。

手順は DECnet の場合も LANCP の場合も類似していますが,データベース・ファイル名,ユーティリティ,コマンドは異なります。 DECnet プロシージャの場合は, 表 9_6 を参照してください。LANCP プロシージャの場合は, 表 9-7 を参照してください。

表 9-6 異なる DECnet ノード・データベースを作成する手順
ステップ 手順 説明
  1 異なるファイルを参照するように,異なるノードで論理名 NETNODE_REMOTE を異なる値に定義する。 論理名 NETNODE_REMOTE は,作成しているリモート・ノード・ファイルのワーキング・コピーを指す。
  2 各ノードのシステム固有の領域に NETNODE_REMOTE.DAT ファイルを格納する。

各ブート・サーバで,サテライトのアダプタのいずれかと一致する固有のアドレスとしてハードウェア・アドレスが定義されていることを確認する。NCP コマンド・プロンプトに対して,以下のコマンドを入力する。

++DEFINE NODE area.number -

NAME node-name -
LOAD FILE APB.EXE -
LOAD ASSIST AGENT SYS$SHARE:NISCS_LAA.EXE -
LOAD ASSIST PARAMETER disk$sys:[<root.>] -
HARDWARE ADDRESS xx-xx-xx-xx-xx-xx
システム・ルート 0 からのシステム・ブートの場合, [SYS0.SYSEXE] に格納されている NETNODE_REMOTE.DAT ファイルは [SYS0.SYSCOMMON.SYSEXE] に格納されているファイルより優先する。

NETNODE_REMOTE.DAT ファイルが相互のコピーである場合は,ノード名,3 次ローダ (VAX の場合) または LOAD FILE (Alpha の場合),ロード・アシスト・エージェント,ロード・アシスト・パラメータはすでに設定されている。新しいハードウェア・アドレスだけを指定しなければならない。

デフォルト・ハードウェア・アドレスは NETUPDATE.COM に格納されるため,2 番目のブート・サーバでこのファイルを編集しなければならない。


++Alpha 固有

表 9-7 異なる LANCP ノード・データベースを作成する手順
ステップ 手順 説明
  1 異なるファイルを参照するように,論理名 LAN$NODE_DATABASE を異なるノードで異なる値に定義する。 論理名 LAN$NODE_DATABASE は,作成しているリモート・ノード・ファイルのワーキング・コピーを指す。
  2 各ノードのシステム固有の領域に LAN$NODE_DATABASE.DAT ファイルを格納する。

各ブート・サーバで,サテライトのアダプタの 1 つと一致する固有のアドレスとしてハードウェア・アドレスが定義されていることを確認する。LANCP コマンド・プロンプトに対して,以下のコマンドを入力する。

++DEFINE NODE node-name -

/FILE= APB.EXE -
/ROOT=disk$sys:[<root.>] -
/ADDRESS=xx-xx-xx-xx-xx-xx
LAN$NODE_DATABASE.DAT ファイルが相互のコピーである場合は,ノード名と FILE 修飾子および ROOT 修飾子の値はすでに設定されている。新しいアドレスだけを指定すればよい。


++Alpha 固有

サテライトが MOP サーバから MOP ダウンライン・ロードを受信すると,サテライトはブートしている LAN アダプタを使用して,システム・ディスクをサービスしているどのノードにも接続できます。実行時ドライバのロードが完了するまで,サテライトはブート・コマンド・ラインに指定された LAN アダプタを独占的に使用します。その後,サテライトは実行時ドライバを使用するように変更され,すべての LAN アダプタでローカル・エリア OpenVMS Cluster プロトコルを起動します。

NCP コマンドの構文の詳細については,『DECnet for OpenVMS Network Management Utilities』を参照してください。

DECnet-Plus の場合: DECnet-Plus を実行している OpenVMS Cluster では,複数の LAN アダプタを使用するサテライトをサポートするために,同じ操作を実行する必要はありません。サテライトをダウンライン・ロードするための DECnet-Plus のサポートでは,LAN アダプタ・アドレスの一覧を指定したエントリをデータベースに登録できます。詳細については, DECnet-Plus のマニュアルを参照してください。


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