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クラスタで発生する再送の問題は,各 LAN セグメントに対して LAN プロトコル・アナライザを使用して対処することができます。クラスタ通信のために複数のセグメントが使用されている場合, LAN アナライザは分散イネーブル機能および分散トリガ機能をサポートしなければなりません ( 付録 F.8 節 を参照)。データグラムを送信するチャネルを PEDRIVER が選択する方法については, 付録 G.1 節 も参照してください。
関連項目: LAN アナライザを使用して再送されたデータグラムを切り分ける手法については, 付録 F.10.2 項 を参照してください。輻輳制御と PEDRIVER のメッセージ再送の詳細については, 付録 G も参照してください。
F.7 NISCA データグラムについて
NISCA プロトコル通信の問題に対処するには, OpenVMS Cluster システムで交換される NISCA プロトコル・パケットについて理解しておく必要があります。
F.7.1 パケットの形式
NISCA プロトコルのパケットの形式は,$NISCADEF マクロによって定義されています。このマクロは,VAX システムでは CD リスティング・ディスクの [DRIVER.LIS],Alpha システムでは [LIB.LIS] に格納されています。
図 F-5 は,NISCA データグラムの一般的な形式を示しています。NISCA データグラムは以下のヘッダと,ユーザ・データによって構成されています。
図 F-5 NISCA のヘッダ
警告: NISCA プロトコルは予告なく変更されることがあります。
F.7.2 LAN ヘッダ
NISCA プロトコルは,イーサネットと FDDI で構成される LAN でサポートされます。 付録 F.7.3 項 と 付録 F.7.4 項 を参照してください。これらのヘッダには,LAN アダプタ間で発生した問題を診断するのに役立つ情報が含まれています。
関連項目: LAN ヘッダの情報を切り分ける方法については,
付録 F.9.4 項 を参照してください。
F.7.3 イーサネットのヘッダ
イーサネット上で送受信される各データグラムには,先頭にイーサネット・ヘッダが付いています。イーサネット・ヘッダは 16 バイトの長さであり, 図 F_6 に示すとおりです。詳細については, 表 F-7 を参照してください。
図 F-6 イーサネット・ヘッダ
フィールド | 説明 |
---|---|
Destination address | データグラムを受信するアダプタの LAN アドレス |
Source address | データグラムを送信するアダプタの LAN アドレス |
Protocol type | NISCA プロトコルを示す 16 進数 (60--07) |
Length | データグラム内で length フィールドの後に続くデータのバイト数 |
FDDI で送受信される各データグラムには,先頭に FDDI ヘッダが付いています。NISCA プロトコルでは, FDDI でマッピングされたイーサネット形式のデータグラムを使用します。FDDI ヘッダは 23 バイトの長さで, 図 F-7 に示すとおりです。詳細については, 表 F-8 を参照してください。
図 F-7 FDDI ヘッダ
フィールド | 説明 |
---|---|
Frame control | NISCA データグラムは,優先順位 (5 x ) を含む論理リンク制御 (LLC) フレームである。フレーム制御バイトの下位 3 ビットには,優先順位の値が含まれる。すべての NISCA フレームは,優先順位フィールドが 0 以外の状態で送信される。優先順位フィールドが 0 の受信フレームは,イーサネット・セグメントを介して送信されたものと解釈される。これは,イーサネット・パケットには優先順位値がなく,イーサネットから FDDI のブリッジでは,優先順位値が 0 として生成されるからである。 |
Destination address | データグラムを受信するアダプタの LAN アドレス。 |
Source address | データグラムを送信するアダプタの LAN アドレス。 |
SNAP SAP | サブネットワーク・アクセス・プロトコル; サービス・アクセス・ポイントである。アクセス・ポイントの値は 16 進数の AA--AA--03 である。 |
SNAP PID | サブネットワーク・アクセス・プロトコル; プロトコル識別子である。識別子の値は 16 進数の 00--00--00 である。 |
Protocol type | 16 進数の NISCA プロトコル (60--07)。 |
Length | データグラム内で length フィールドの後に続くデータのバイト数。 |
F.7.5 Datagram Exchange (DX) ヘッダ
OpenVMS Cluster プロトコル用の DX (datagram exchange) ヘッダは,データを適切な OpenVMS Cluster ノードに渡すために使用されます。 DX ヘッダは 14 バイトの長さであり, 図 F_8 に示すとおりです。詳細については, 表 F-9 を参照してください。このヘッダには,2 つのノード間の OpenVMS Cluster 接続を記述する情報が含まれています。 DX ヘッダのデータを切り分ける方法については, 付録 F.9.3 項 を参照してください。
図 F-8 DX ヘッダ
フィールド | 説明 |
---|---|
Destination SCS address | アドレス AA--00--04--00-- remote-node -SCSSYSTEMID を使用して作成される。下位 16 ビットに対して,リモート・ノードの SCSSYSTEMID システム・パラメータの値が追加される。このアドレスは,送信先の SCS トランスポート・アドレスまたは OpenVMS Cluster マルチキャスト・アドレスを表す。 |
Cluster group number | システム管理者が指定したクラスタ・グループ番号。クラスタ・グループ番号の詳細については, 第 8 章 を参照。 |
Source SCS address | 送信元 SCS トランスポート・アドレスを表し,アドレス AA--00--04--00-- local-node-SCSSYSTEMID を使用して作成される。下位 16 ビットに対して,ローカル・ノードの SCSSYSTEMID システム・パラメータの値が追加される。 |
F.7.6 CC (Channel Control) ヘッダ
CC (channel control) メッセージは,OpenVMS Cluster システム内のノード間でネットワーク・パスを形成し,パスを正常に動作する状態に維持するために使用されます。ネットワークのトラブルシューティングにとって重要なフィールドは,datagram flags/type と cluster password です。 CC ヘッダと TR ヘッダは同じ領域を使用するため,チャネルを介して送信されているメッセージの種類を示すために,TR/CC フラグが使用されます。 図 F_9 は,ネットワークのトラブルシューティングに必要な CC ヘッダの部分を示しており, 表 F-10 では,これらのフィールドについて説明しています。
図 F-9 CC ヘッダ
フィールド | 説明 |
---|---|
Datagram type (ビット <3:0>) | チャネル制御レベルでメッセージの種類を示す。以下の表はデータグラムとその機能を示している。
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データグラム・フラグ (ビット <7:4>) | 制御データグラムに関する追加情報を提供する。以下のビットが定義されている。
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クラスタ・パスワード | クラスタ・パスワードが格納される。 |
TR (transport) ヘッダは,クラスタ・ノード間で SCS データグラムとシーケンス・メッセージを受け渡しするために使用されます。ネットワークのトラブルシューティングにとって重要なフィールドは, TR datagram fields,message acknowledgment, sequence number です。 CC ヘッダと TR ヘッダは同じ領域を使用するため, TR/CC フラグは,チャネルを送信されているメッセージの種類を示します。
図 F_10 は,ネットワークのトラブルシューティングにとって必要な TR ヘッダの部分を示しており, 表 F-11 では,これらのフィールドについて説明しています。
図 F-10 TR ヘッダ
注意: 図 F-10 に示す TR ヘッダは,2 つのノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.4 以上を実行しているときに使用されます。どちらか一方のノードまたは両方のノードがバージョン 1.3 またはそれ以前のバージョンのプロトコルを実行している場合,両方のノードで extended message acknowledgment および extended sequence number フィールドの代わりに message acknowledgment および sequence number フィールドが使用されます。
フィールド | 説明 |
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Datagram flags (ビット <7:0>) | トランスポート・データグラムに関する追加情報を提供する。
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Message acknowledgment | ローカル・ノードが受信した最後のシーケンス・メッセージ・セグメントを指定する値。この値より前のすべてのメッセージも確認される。このフィールドは, 1 つまたは両方のノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.3 またはそれ以前のバージョンを実行しているときに使用される。 |
Extended message acknowledgment | ローカル・ノードが最後に受信したシーケンス・メッセージ・セグメントを指定する値。この値より前のすべてのメッセージも確認される。このフィールドは,両方のノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.4 またはそれ以降のバージョンを実行しているときに使用される。 |
Sequence number | ローカル・ノードからデータグラムを送信する順序を指定する値。この値は,このシーケンス・メッセージ・セグメントをリモート・ノードに配布することを保証するために使用される。このフィールドは,どちらか一方または両方のノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.3 またはそれ以前のバージョンを実行しているときに使用される。 |
Extended sequence number | ローカル・ノードからデータグラムが送信される順序を指定する値。この値は,このシーケンス・メッセージ・セグメントをリモート・ノードに確実に配布するために使用される。このフィールドは,両方のノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.4 またはそれ以降のバージョンを実行しているときに使用される。 |
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