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OpenVMS は,会話型の仮想メモリ・オペレーティング・システム です。システムにログインしている間は, DIGITAL コマンド言語 (DCL) を通じてシステムと会話できます。 DCL では,ユーザがコマンド を入力すると,システムがそれを読み取り翻訳します。 キーボード上でコマンドを入力して Return キーを押すと,システムはコマンドを実行します。入力の内容が解釈できない場合,システムは画面にエラー・メッセージを表示します。
本章では,OpenVMS オペレーティング・システムとその構成要素について,基本的な概念を説明し,次の項目についての概要を説明します。
本書では,標準的な DCL コマンドについてのみ説明します。システム管理者はローカル環境をサポートするためにシステムを変更できます。システム管理者は次のことができます。
本章で説明するコマンドについての詳細については,次のものを参照してください。
Extended File Specifications についての補足情報は次のとおりです。
ログインとは,自分自身が登録されたユーザであることをシステムに認識させる手続きです。ログインすると,コマンド入力可能な環境がシステムによって作成されます。この環境を プロセス と呼びます。
システムへのログイン方法およびシステムからのログアウト方法については, 第 2 章 を参照してください。
オペレーティング・システムと会話するには,ユーザ・ アカウント にログインしなければなりません。アカウントとは,ログイン時にシステムがユーザを識別するための名前または番号のことです。この名前または番号によって,システムは,ユーザのファイルがどこに格納されているのかを確認し,他のファイルに対するアクセス権を判断します。
通常,アカウントの設定はシステム管理者 (または,システムを使用する権限を持つ人間) が行います。システム管理者は,ユーザに必要に応じて特権を与えます。アクセスできるファイル,イメージ,またはユーティリティが決まります。これらはシステムの性能や他のユーザにも影響を与えるので重要です。
1.1.1 アクセス要求
アカウントにアクセスするには,ユーザ名とパスワード
を入力しなければなりません。システム管理者は通常,ユーザに対してユーザ名と初期パスワードを割り当てます。ユーザ名は,システムがユーザを識別し,他のユーザと区別するためのものです。多くの場合,ユーザ名には,ユーザの実際の姓か名前を使用します。パスワードは,システム保護のために設定します。パスワードを秘密にすることにより,他人のユーザ名でシステム資源を使用できないようにします。
1.2 ネットワーク
複数のコンピュータ・システムを 1 つに連結すると,
ネットワーク
が形成されます。 DECnet for OpenVMS ネットワーク中のオペレーティング・システムは,相互に通信し,情報や資源を共用できます。ネットワーク中の各システムはネットワーク・ノード
と呼ばれ,一意のノード名によって識別されます。
1.2.1 ネットワーク・ノード
ネットワーク・ノードにログインすると,他のネットワーク・ノードと通信できるようになります。ログインしたノードをローカル・ノード,ネットワーク上の他のノードを リモート・ノード と呼びます。リモート・ノード上のアカウントにアクセスすると,自分のログインしたローカル・ノードからそのアカウントにログインでき,自分のローカル・ノードと接続したまま,そのノード上でタスクを実行できます。
第 2 章 は,リモート・ノードにログインする方法を示しています。リモート・ノードで実行できる操作については,本書の該当する章を参照してください。
1.2.2 ネットワークを介してのプログラムの実行
DECnet ソフトウェアがサポートする機能によって,ネットワークを介してあたかもローカル・ノードで実行するかのようにリモート・ノード上でプログラム を実行できます。 DECnet ソフトウェアはオペレーティング・システム内部に統合されているため,リモート・ファイルにアクセスするプログラムを簡単に作成できます。アプリケーション・プログラムの中でリモート・ファイルへアクセスするには,リモート・ノードの名前と必要なアクセス制御情報をファイル指定の中に含めるだけで実現できます。
すべての DECnet 環境に共通する機能であるタスク間通信を利用すれば,使用するプログラミング言語にかかわらず,同じまたは異なるオペレーティング・システムで動作する 2 つのアプリケーション・プログラム同士で通信することができます。ネットワーク・アプリケーションの例としては,分散処理アプリケーション,トランザクション処理アプリケーション,そしてサーバへの接続を行うアプリケーションがあります。
本書のリモート操作の例では,代理アカウントを使用して,リモート・システムで操作できるようにしています。代理アカウントは,ユーザがリモート・システムにアクセスするための方法の1つです。リモート・システムにアクセスする他の方法については,『Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。 |
DCL (DIGITAL コマンド言語) は,オペレーティング・システムに特定の操作を実行させる命令からなります。 DCL には,200 を超えるコマンドと関数があり,これらを使用してオペレーティング・システムと通信し,様々なコンピューティングを達成できます。
1.3.1 モードの使用
DCL は,次の 2 つのモードで使用できます。
DCL コマンドを入力すると,DCL インタプリタがそれを読み込んで解釈します。コマンド・インタプリタのコマンドに対する応答は,入力したコマンドの種類によって異なります。 DCL コマンドには,次の 3 つの種類があります。
DCL には,他の言語と同様,独自の用語と使用規則があります。 DCL の用語には,コマンド,パラメータ ,および修飾子 があり,これらの要素は DCL が解釈できるように指定形式が決まっています。これをコマンド行 構文 と呼びます。
DCL コマンド行は,次のような形式を使用します。
[$] コマンド [[/修飾子[=値]]...] [[パラメータ[=値][/修飾子...]]...] |
大括弧 [ ] で囲んだ項目はオプションです。コマンドによっては必要ありません。 |
DCL コマンド行の構成要素については, 第 3.2 節 を参照してください。
レキシカル関数は,DCL インタプリタがコマンド文字列
を解釈する前に評価して置換するコマンド言語構成です。レキシカル関数については, 第 17 章
で詳しく説明します。
1.4 ファイルとディレクトリ
ファイル には情報が格納されます。ファイルに格納される情報は,コンピュータが理解できる機械可読データ のこともあれば,ユーザが入力して操作するテキストのこともあります。ファイルに格納されるテキストには,ドキュメント,プログラム,アドレス・リストなどがあります。このようなファイルに格納されているデータを見るためには,ターミナルの画面に表示したり,用紙に印刷したりします。
ファイルを作成または編成して,情報を格納する方法については, 第 4 章 を参照してください。
ディレクトリ は,ファイルの名前と位置情報が入った特殊なファイルです。たとえば,システム管理者がユーザ・アカウントを作成すると ( 第 1.1 節 を参照),そのユーザ名と同じ名前を持つディレクトリが自動的に作成されます。ユーザ名が JONES の場合,ディレクトリは [JONES] になります。
ディレクトリを使用して,ファイルを編成したり管理したりする方法については, 第 5 章 を参照してください。
ディレクトリ・ファイルはディスクに格納されます。ディスクは,オペレーティング・システムが情報を格納する
ハードウェア・デバイスの 1 つです。
1.4.1 ファイル指定
ファイルには,システムとユーザの両方から認識できるような ファイル名 とファイル・タイプ が必要です。ファイルにはバージョン番号 もあります。したがって,1 つのファイルに対し,複数のバージョンが存在することが可能です。バージョン番号を付けずにファイルを指定した場合,既存のバージョン番号の中で最も大きい番号が使用されます。ファイルを編集する場合,システムは元のファイルをセーブして,変更したファイルを出力します。省略時の設定では, 出力ファイルは元のファイルと同じ名前とタイプになり,バージョン番号が 1 だけ増分されます。
ファイル名,ファイル・タイプ,そしてバージョン番号を合わせて ファイル指定と呼びます。完全なファイル指定とは,次のとおりです。
それぞれのディスクには,メイン・ディレクトリという,システム管理者かシステム自体しか設定できないディレクトリがあります。このメイン・ディレクトリはマスタ・ファイル・ディレクトリ (MFD) と呼ばれ,ユーザ・ファイル・ディレクトリ (UFD) のリストが登録されます。 UFD は,マスタ・ファイル・ディレクトリに格納されているファイルで,最上位のディレクトリを指します。通常,最上位のディレクトリは,ユーザのログイン ・ディレクトリか 省略時のディレクトリです。アカウントを特に変更しない限り (省略時の設定では),ユーザがログインしたときのディレクトリは最上位ディレクトリになります。
ほとんどの場合,UFDはシステムの各ユーザごとに存在します。 UFDには,ユーザのディレクトリに登録されているファイルの名前とそのファイルへのポインタが格納されます。ディレクトリ構造についての詳細は, 第 5 章
を参照してください。
1.4.3 サブディレクトリ
マスタ・ファイル・ディレクトリやユーザ・ファイル・ディレクトリなどの中にあるディレクトリ・ファイルを サブディレクトリ と呼びます。サブディレクトリを使用すれば,ファイルを用途ごとに編成することができます。たとえば,メモ用のサブディレクトリと状態レポート用のサブディレクトリは別々に作成しておくのがよいでしょう。
ディレクトリと同じように,サブディレクトリにも,その中に登録されているファイルの名前とポインタが格納されます。サブディリクトリの中にも別のサブディレクトリを登録することができます。このような構造(最上位ディレクトリとサブディレクトリ)を階層ディレクトリ構造
と呼びます。
1.5 OpenVMS ユーティリティ
この節では,本書で記述されている OpenVMS のユーティリティの概要を説明します。
1.5.1 Mail と MIME ユーティリティ
OpenVMS Mail ユーティリティ(MAIL)を使用すると,同じシステム上のユーザや, DECnet で接続されたシステム上のユーザとの間でメッセージを送受信できます。
MAILを補足するものとして, MIME ユーティリティがあります。 MIME ユーティリティを使うと,他のユーザから受け取った,またはユーザが送信する, MIME エンコードされたメッセージをエンコードしたり,デコードしたりできます。
Mail とMIME の使い方については, 第 6 章 を参照してください。
1.5.2 Phone ユーティリティ
OpenVMS Phone ユーティリティ(PHONE)を使用すると,同じシステム上のユーザや, DECnet で接続されたシステム上のユーザとの間で会話することができます。
Phone の使い方については, 第 7 章 を参照してください。
1.5.3 テキスト・エディタ
テキスト・エディタ
を使用すると,テキスト・ファイルを作成したり変更したりできます。テキスト・エディタでは,キーボードから入力したテキストをテキスト編集コマンドを使用して変更できます。たとえば,レポート用のデータを入力した後で,段落を編成したり,情報をコピーしたり,句を置換したり,テキストを編集したりすることが可能です。また,テキスト・エディタは,プログラミング言語 (OpenVMS や VAX BASIC 用の DEC C など) やテキスト・フォーマッタ (VAX DOCUMENT や DIGITAL Standard Runoff など) 用のソース・ファイルも作成したり変更したりできます。 OpenVMS オペレーティング・システムは,複数のテキスト・エディタをサポートしています。エディタの 1 つである EVE の使い方については, 第 8 章
を参照してください。別のエディタ EDT の使い方については, 第 9 章
を参照してください。
1.5.4 DIGITAL Standard Runoff (DSR)
DIGITAL Standard Runoff (DSR) は,ソース・ファイルを書式化したテキストに変換し,目次と索引を作成するテキスト・フォーマッタです。ソース・ファイルは,テキスト・エディタで作成します。そして,ソース・ファイルのファイル・タイプを RNO にします。ソース・ファイルには,テキスト,DSR 書式化コマンド,フラグ (テキストに挿入する特殊命令文字),そして制御文字が入力されます。
第 10 章 に,DSR の使い方と DSR コマンド・リストについて説明があります。
1.5.5 Sort/Merge ユーティリティ
OpenVMS Sort/Merge ユーティリティ(SORT/MERGE)は, SORT コマンドまたは MERGE コマンドを使用して起動できます。 Sort/Merge ユーティリティを DCL の SORT コマンドで起動した場合, 1 つまたは複数の入力ファイル のレコードをユーザが選択したフィールドに従ってソートし,1 つの出力ファイルに記録します。 Sort/Mergeユーティリティを使用すれば,ファイル(1つまたは複数)のレコードの順序を変更し,アルファベット順や番号順に,昇順または降順に並べかえることができます。
Sort/Merge ユーティリティを DCL コマンドの MERGE で起動した場合,最大 10 個のソート済みファイルを 1 つの出力ファイルにマージします。
Sort/Merge ユーティリティの使い方については, 第 11 章 を参照してください。
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