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OpenVMS マニュアル


 

OpenVMS ドキュメント
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タイトルページ
目次
まえがき
第1章:OpenVMS Cluster システムの管理の概要
第2章:OpenVMS Cluster の概念
第3章:OpenVMS Cluster インターコネクト構成
第4章:OpenVMS Cluster オペレーティング環境
第5章:共用環境の準備
第6章:クラスタ・ストレージ・デバイス
第7章:クラスタ・キューの設定と管理
第8章:OpenVMS Cluster システムの構成
第9章:大規模な OpenVMS Cluster システムの構築
第10章:OpenVMS Cluster システムの保守
付録A :クラスタ・システム・パラメータ
付録B :共通ファイルの作成
付録C :クラスタのトラブルシューティング
付録D :LAN 制御のためのサンプル・プログラム
付録E :LAN 制御のためのサブルーチン
付録F :NISCA プロトコルのトラブルシューティング
付録G :NISCA トランスポート・プロトコル輻輳制御
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HP OpenVMS
OpenVMS Cluster システム


目次 索引

第 1 章
OpenVMS Cluster システムの管理の概要

DEC (Digital Equipment Corporation) 社は,1983 年に開発した VAXcluster システムによって, "クラスタ"・テクノロジを開拓しました。この VAXcluster システムは,複数の標準 VAX コンピューティング・システムと VMS オペレーティング・システムを使用して構築されました。初期の VAXcluster システムでは,集中化されたシステムのパワーと管理機能に加えて,物理的に分散された多くのコンピューティング・システムを利用できるという柔軟性が提供されました。

その後,この技術は混成アーキテクチャのクラスタ・システムをサポートするように進化し, OpenVMS Cluster システムと名前を変えています。当初は,OpenVMS Alpha と OpenVMS VAX の混成アーキテクチャ・クラスタ・システムがサポートされていました。 OpenVMS Version 8.2 で,OpenVMS Integrity システムのみのクラスタ・システムと OpenVMS Integrity と OpenVMS Alpha の混成アーキテクチャ・クラスタ・システムがサポートされています。 HP は,今後も継続して OpenVMS Cluster 機能を強化し,拡張していきます。

1.1 概要

OpenVMS Cluster システムは, OpenVMS ソフトウェア,Alpha システム,VAX システム,Integrity サーバ,ストレージ・デバイスが高度に統合され,それらがあたかも 1 つのシステムのように動作します。 OpenVMS Cluster は 1 つの仮想システムとして動作しますが,実際には多くの分散するシステムで構成されています。 Alpha コンピュータと VAX コンピュータ,あるいは Alpha コンピュータと Integrity サーバは, OpenVMS Cluster システムのメンバとして,1 つのセキュリティ/管理ドメイン下で,処理リソース,データ・ストレージ,キューを共用することができ,しかもブートやシャットダウンは個別に行うことができます。

OpenVMS Cluster システム内のコンピュータ間の距離は,使用するインターコネクトに応じて異なります。たとえば,コンピュータ室にまとめて設置することができる場合,ビルの 2 つのフロアにまたがる場合,大学のキャンパスの複数の建物にまたがる場合,あるいは数百キロ離れた 2 つ以上の異なる場所に設置することも可能です。

2 つの異なる場所に設置されているコンピュータで構成される OpenVMS Cluster システムのことをマルチサイト OpenVMS Cluster システムと呼びます。マルチサイト OpenVMS Cluster は,ディザスタ・トレラント OpenVMS Cluster システムの基礎になります。マルチサイト・クラスタの詳細については,『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMS は, OpenVMS ディザスタ・トレラント・クラスタを構成および管理するための HP の保守用システム管理/ソフトウェア・パッケージです。 Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMS の詳細については, HP のサービス担当者にお問い合わせいただくか,次の URL を参照してください。

http://h71000.www7.hp.com/availability/index.html 



1.1.1 用途

OpenVMS Cluster システムはトランザクション処理システム,ネットワーク・クライアント/サーバ・アプリケーション用のサーバ,データ共用アプリケーションなど,高可用性アプリケーションを開発するための理想的な環境です。

1.1.2 利点

OpenVMS Cluster システムのコンピュータは,相互に連携して,協調動作する分散オペレーティング・システムを形成し,以下の表に示すように多くの利点をもたらします。

利点 説明
リソースの共用 OpenVMS Cluster ソフトウェアは,すべてのクラスタ・メンバ間で,自動的にバッチ・キューとプリント・キュー,ストレージ・デバイス,その他のリソースの同期をとり,負荷のバランス調整を行う。
柔軟性 共通のリソースを利用するために,アプリケーション・プログラマはアプリケーション・コードを変更する必要がなく,ユーザも OpenVMS Cluster 環境に関する知識を必要としない。
高可用性 システム設計者は冗長なハードウェア・コンポーネントを構成することで,1 ヵ所で障害が発生してもシステム全体がダウンすることのない,可用性の高いシステムを構築できる。
ノンストップ処理 OpenVMS Cluster の各ノードで稼動される OpenVMS オペレーティング・システムは,構成が変更されても,容易に動的な調整が可能である。
拡張性 ビジネス・ニーズの拡大や変化に伴なって,企業はコンピューティング・リソースとストレージ・リソースを動的に拡張することができ,そのためにシステムをシャットダウンしたり,実行中のアプリケーションを停止する必要がない。
パフォーマンス OpenVMS Cluster システムは高いパフォーマンスを提供できる。
管理機能 複数の OpenVMS システムで同じシステム管理操作を繰り返す必要がなく,管理作業は 1 つ以上のノードに対して同時に実行できる。
セキュリティ OpenVMS Cluster のコンピュータは,クラスタ内のすべてのノードからアクセスできる 1 つのセキュリティ・データベースを共用する。
負荷分散 OpenVMS Cluster システムは,各メンバの現在の負荷をもとにクラスタ・メンバ間で作業負荷を分散させることができる。



1.2 ハードウェア・コンポーネント

OpenVMS Cluster システムは,以下の 3 つのグループのハードウェア・コンポーネントで構成されます。

  • コンピュータ

  • インターコネクト

  • ストレージ・デバイス

関連項目: OpenVMS Cluster の構成のガイドラインの詳細については, OpenVMS Cluster Software Software Product Description (SPD) および『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

1.2.1 コンピュータ

デスクトップからメインフレーム・システムに至るまで,最大 96 台のコンピュータを OpenVMS Cluster システムの メンバとして使用できます。以下のコンピュータは, OpenVMS Alpha または OpenVMS Integrity オペレーティング・システムを稼動し, OpenVMS Cluster のネゴシエーションに完全に参加するアクティブ・メンバになることができます。

  • Integrity サーバ

  • AlphaServer または AlphaStation



1.2.2 物理インターコネクト

インターコネクトとは,コンピュータを他のコンピュータやストレージ・サブシステムに接続する物理的なパスです。OpenVMS Cluster システムでは,さまざまなインターコネクト (バス) がサポートされており,メンバは以下に示す中から,最も適切で効果的な方法を使用して通信することができます。

  • LAN

    • Ethernet

    • Fast Ethernet

    • Gigabit Ethernet

    • 10 Gigabit Ethernet (Integrity のみ)

  • Internet Protocol (IP)

    • Fast Ethernet

    • Gigabit Ethernet

    • 10 Gigabit Ethernet (Integrity のみ)

  • MEMORY CHANNEL (ノード間通信,Alpha のみ)

  • SAS (Serial Attached SCSI) (ノード・ストレージ間のみ,Integrity のみ)

  • SCSI (Small Computer Systems Interface) (ノード・ストレージ間のみ)

  • FC (Fibre Channel) (ノード・ストレージ間のみ)

  注意
CI,DSSI,,および FDDI インターコネクトは, Alpha および VAX システムでのみサポートされます。 Memory Channel および ATM インターコネクトは Alpha システムでのみサポートされます。これらのインターコネクトの詳細については,本書の以前のバージョンを参照してください。

表 1-1 OpenVMS でサポートするインターコネクト
インターコネクト サポート・プラットフォーム 備考
IP: UDP Integrity および Alpha Fast Ethernet/Gigabit Ethernet/10 Gb Ethernet をサポート。 10 Gb Ethernet は Integrity サーバでのみサポート。
Fibre Channel Integrity および Alpha 共有ストレージのみ
SAS Integrity サーバ  
SCSI Integrity および Alpha 限られた共有ストレージ構成のみ
LAN: Ethernet, Fast Ethernet, Gigabit Ethernet, および 10 Gb Ethernet Integrity および Alpha 10 Gb Ethernet は Integrity サーバでのみサポート
MEMORY CHANNEL Alpha ノード間通信のみサポート

サポートされるインターコネクトおよび速度の最新情報については,『HP OpenVMS Cluster Software Software Product Description (SPD 29.78.xx)』を参照してください。

1.2.3 OpenVMS Galaxy SMCI

第 1.2.2 項 に一覧を示した物理インターコネクトに加え, OpenVMS Galaxy インスタンス用の共用メモリ CI (SMCI) という別のタイプのインターコネクトが利用可能です。 SMCI は Galaxy インスタンス間のクラスタ通信をサポートします。

SMCI と Galaxy 構成の詳細については,『OpenVMS Alpha パーティショニングおよび Galaxy ガイド』を参照してください。

1.2.4 ストレージ・デバイス

共用ストレージ・デバイスとは,クラスタ内の複数のコンピュータからアクセスできるディスクまたはテープです。ノードは,MSCP および TMSCP サーバ・ソフトウェア ( 第 1.3.1 項 を参照) を使用して,リモートのディスクおよびテープにアクセスします。

OpenVMS Cluster 内のシステムは,広範囲にわたるストレージ・デバイスをサポートしています。

  • 以下のディスクおよびディスク・ドライブ

    • Fibre Channel (FC) ディスク

    • SAS デバイス

    • SCSI デバイス

    • IDE や USB デバイスなどの Embedded デバイス

    • DSA (Digital Storage Architecture) ディスク

    • RF シリーズ ISE (integrated storage elements)

    • 半導体ディスク

  • テープとテープ・ドライブ

  • 以下のものを含むコントローラおよび I/O サーバ

    コントローラ インターコネクト
    HSG および HSV FC
    LSI 1068 および LSI Logic 1068e SAS
    HSZ SCSI


    さらに,K.scsi HSC コントローラを使用すると, StorageWorks アレイと, HSC ストレージ・サブシステム上の SCSI デバイスを接続することができます。
    注意: HSZ コントローラは,ディスクとテープを接続する多くの SDI (標準ディスク・インタフェース) および STI (標準テープ・インタフェース) の組み合わせをサポートします。

サポートされるストレージ・デバイスの最新情報については,『日本語 HP OpenVMS Version 8.4 ソフトウェア仕様書』を参照してください。

AlphaServer でサポートするオプションについては,次の URL の AlphaServer の Web ページを参照してください。

http://h18002.www1.hp.com/alphaserver/ 

Integrity サーバでサポートするオプションについては,次の URL の Integrity サーバの Web ページを参照してください。

http://h20341.www2.hp.com/integrity/cache/332341-0-0-0-121.html 



1.3 ソフトウェア・コンポーネント

OpenVMS Cluster の各ノードで稼動される OpenVMS オペレーティング・システムには,リソースの共用を可能にし,基礎になるハードウェア構成の変化に動的に対応する複数のソフトウェア・コンポーネントが含まれています。

1 台のコンピュータが使用できなくなっても,残りのコンピュータの OpenVMS が稼動しているため,OpenVMS Cluster システムは操作を続行できます。

1.3.1 OpenVMS Cluster ソフトウェアの機能

以下の表は,ソフトウェア・コンポーネントとその主な機能を示しています。

コンポーネント 機能 説明
接続マネージャ メンバの整合性 クラスタへのコンピュータの追加を調整し,コンピュータがクラスタに追加されるときやクラスタから削除されるときに,クラスタの整合性を維持管理する。
分散ロック・マネージャ リソースの同期化 分散ファイル・システム,ジョブ・コントローラ,デバイスの割り当て,その他のクラスタ機能の同期をとる。 OpenVMS Cluster 中の 1 つのコンピュータがシャットダウンされると,そのコンピュータが保有しているすべてのロックは解放されるため,他のコンピュータで処理を続行できる。
分散ファイル・システム リソースの共用 すべてのコンピュータは,ストレージ・デバイスの種類 (DSA,RF,SCSI,半導体サブシステム) や場所とは無関係に,マス・ストレージおよびファイル・レコードへのアクセスを共用できる。
分散ジョブ・コントローラ キューイング 汎用キューおよび実行キューをクラスタ全体で使用できるようにする。
MSCP サーバ ディスクの制御 ディスクに直接アクセスできないすべてのノードがディスクを利用できるように,固有のマス・ストレージ制御プロトコルを実装する。
TMSCP サーバ テープの制御 テープ・ドライブに直接アクセスできないすべてのノードがテープ・ドライブを利用できるように,固有のテープ・マス・ストレージ制御プロトコルを実装する。



1.4 通信

SCA (System Communications Architecture) は, OpenVMS Cluster システムのノードが協調動作するための通信メカニズムを定義しています。 SCA は各ノードにあるリソース間のデータの共用を監視し,異なる Integrity サーバおよび Alpha システムで実行されているシステム・アプリケーション (SYSAP) を相互に結合します。

SCA は以下のコンポーネントの階層で構成されています。

通信ソフトウェア 機能
システム・アプリケーション (SYSAP) プロセッサ間通信のために SCS ソフトウェアを使用するクラスタ単位のアプリケーション (たとえば,ディスク/テープ・クラス・ドライバ,接続マネージャ, MSCP サーバ) で構成される。
SCS (System Communications Services) 基本的な接続管理/通信サービスを提供する。これは, OpenVMS Cluster システム内のノードのシステム・アプリケーション (SYSAP) 間の論理パスとして実装される。
ポート・ドライバ ローカル・ポートとリモート・ポートの間の通信パスを制御する。
物理インターコネクト CI,DSSI,Ethernet,ATM,FDDI, MEMORY CHANNEL インターコネクト用のポートまたはアダプタで構成される。 PEDRIVER は LAN (Ethernet) インターコネクト用のポート・ドライバで, OpenVMS Version 8.4 以降は,PEDRIVER はクラスタ通信に TCP/IP を使用することも可能です。



1.4.1 システム通信

図 1-1 は,OpenVMS Cluster のコンポーネント間の関係を示しています。

図 1-1 OpenVMS Cluster システムの通信


図 1-1 で,異なるノードにあるプロセスは相互に情報を交換します。

  • プロセスはプログラムから,$QIO システム・サービスや他のシステム・サービスを直接呼び出すことができ, OpenVMS レコード管理サービス (RMS) などの他の機能を使用して間接的に呼び出すこともできます。 $QIO システム・サービスはすべての I/O 要求を初期化します。

  • OpenVMS Cluster のあるノードの SYSAP は, 接続と呼ばれる論理パスを使用して他のノードの SYSAP と通信します。たとえば,あるノードの接続マネージャは他のノードの接続マネージャと通信し,あるノードのディスク・クラス・ドライバは他のノードの MSCP サーバと通信します。

  • 以下の SYSAP は,クラスタ通信のために SCS を使用します。

    • ディスク/テープ・クラス・ドライバ

    • MSCP サーバ

    • TMSCP サーバ

    • DECnet クラス・ドライバ

    • 接続マネージャ

    • クラスタ内通信 (ICC) プログラミング・インタフェースにノード間通信を提供する SCA$TRANSPORTは, ICC システム・サービスを通して分散キューマネージャが利用できます。

  • SCS ルーチンは,特定のインターコネクトを介して配布できるように,接続設定と SYSAP メッセージの書式化とポート・ドライバへの転送のサービスを提供します。

  • 通信は,ポート・ドライバを通じて,他の OpenVMS Cluster コンピュータやストレージ・コントローラのポート・ドライバに対して行われます。ポート・ドライバは,OpenVMS Cluster システムの 2 つ 1 組のポートの間で,仮想サーキットという論理的なパスを管理します。仮想サーキットは,多重送信が行なわれる接続での信頼性の高いメッセージ配信を提供します。
    OpenVMS Version 8.4 以降は,クラスタ通信に Transmission Control Protocol および Internet Protocol (TCP/IP) を使用することができます。 PEDRIVER は,LAN に加えて TCP/IP をクラスタ通信に使用できるように機能拡張されています。詳細は, 第 3 章 を参照してください。


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