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SYS$EXAMPLES:MGRMENU.COM というコマンド・プロシージャは,基本的なシステム管理作業の手助けをするために用意されています。このプロシージャは,次の作業を行うためのメニューを表示します。
MGRMENU.COM コマンド・プロシージャはそのまま使用することも,必要に応じて変更することもできます。変更する場合は, SYS$EXAMPLES の元のバージョンが失われることのないよう, SYS$MANAGER などの別のディレクトリにコピーしてから,編集を行ってください。
メニューを表示するためには,次のコマンドを入力します。
$ @SYS$EXAMPLES:MGRMENU |
システム管理ユーティリティでシステム管理を行うためには,システム管理者のアカウント "SYSTEM" にログインする必要があります。
システムの機密保護を考えて,SYSTEM アカウントのパスワードは頻繁に変更するようにしてください。省略時の設定では, SYSTEM アカウントには全特権が割り当てられます。したがって,使用するときは十分に注意が必要です。 ユーザのサイトで強力な機密保護が要求される場合には,SYSTEM アカウントのバッチ型を除く使用をすべて禁止し,システム上で特権操作を行う人のために,それぞれ別々の特権を設定するようにします。これによって,システム上の特権動作に対してより限られたアカウントを設定できます。 |
VAX システム:
Username: SYSTEM Password: Welcome to OpenVMS VAX Version n.n on node x Last interactive login on Thursday, 20-FEB-2000 16:41 Last non-interactive login on Friday, 21-FEB-20000 17:06 |
Alpha システム:
Username: SYSTEM Password: Welcome to OpenVMS Alpha (TM) Operating System, Version n.n on node x Last interactive login on Thursday, 20-FEB-2000 16:41 Last non-interactive login on Friday, 21-FEB-2000 17:06 |
複数のコンピュータを管理する場合,システム管理ユーティリティ (SYSMAN) を使用してシステム管理を集中化することができます。
次の表に,SYSMAN の主な機能とその説明のある箇所を示します。
機能 | 参照箇所 |
---|---|
遠隔ノードから SYSMAN コマンドを実行する | 第 2.3.2 項 |
ユーザの SYSMAN 管理環境の定義 | 第 2.3.4 項 |
SYSMAN の優先順位,省略時の装置とディレクトリの設定, DCL 検証のための調整 | 第 2.3.6 項 |
SYSMAN からの DCL コマンドの実行 | 第 2.3.8 項 |
SYSMAN コマンド・プロシージャの実行 | 第 2.3.9 項 |
初期設定ファイルによる SYSMAN のセットアップ | 第 2.3.10 項 |
SYSMAN ユーティリティは,システム管理を集中化することによって,ノードや OpenVMS Cluster の管理を 1 カ所から行うためのプログラムです。 SYSMAN を使用すれば,管理する環境をノード単位,ノードのグループ単位,または OpenVMS Cluster 環境単位に定義できます。そのため,各ノードにログインして,同じような管理作業を何回も繰り返す必要はありません。このように定義した管理環境を使って,いままでと同じシステム管理を,ユーザのローカル・ノードから行うことができます。つまり,SYSMAN は,ターゲットとなる環境の中のすべてのノードに対して,管理作業を行います。
2.3.1.1 SYSMAN で必要な特権
SYSMAN を実行するためには,次の条件を満たしていなければなりません。
環境が遠隔ノードに設定されているときに, 125 より多くのライト識別子が割り当てられたアカウントから SYSMAN を実行すると,次のエラー・メッセージが表示されます。
SMI-E-RIGHTSLIM, Rights limit exceeded. |
このライト識別子の制限には,ユーザ登録レコードに関連付けられたライト識別子の他に,少なくとも次の 3 つの識別子が含まれます。
SYSMAN を実行するには,次のいずれかが必要です。
SYSMAN は,いままでシステム管理に使用されてきたソフトウェア・ツールの大部分を使用します。たとえば,MOUNT や INITIALIZE などの大部分の DCL コマンドを処理できます。また,AUTHORIZE や AUTOGEN などの多くの SYSMAN ユーティリティやコマンド・プロシージャも実行できます。
SYSMAN には,次の作業を行う独自のコマンドもあります。
コマンド | 作業 | 参照箇所 |
---|---|---|
ALF (自動ログイン機能) | ターミナルやポートへのユーザ名の割り当て | 第 7.9.1 項 |
CONFIGURATION | OpenVMS Cluster パラメータのチェックと変更 | 第 22.4 節 |
DISKQUOTA | ディスク使用の制御と監視 | 第 9.11.2 項 |
++IO | Alpha システムの入出力構成の制御と表示 | 第 8.4.2 項 |
LICENSE | ライセンスのロードとアンロード | 第 3.3.2 項 |
PARAMETERS | システム・パラメータのチェックと変更 | 第 15.7 節 |
STARTUP | ソフトウェア・スタートアップ・コンポーネントのチェックと変更による,スタートアップ・データベースのカスタマイズ | 第 5.4 節 |
SYSMAN コマンドを遠隔ノードで実行するためには,該当するノード上で,SMISERVER プロセスが動作している必要があります。 SMISERVER は,遠隔ノードでの SYSMAN コマンドの実行を管理する独立プロセスです。
OpenVMS Cluster の一部であるノードの場合は,通常 SYS$SYSTEM:STARTUP.COM から SMISERVER プロセスを起動します (このとき,ノードの VAXCLUSTER システム・パラメータ値は 1 以上にします)。
OpenVMS Cluster の一部でないノードから SMISERVER プロセスを起動するには,次のコマンド行をサイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャ SYSTARTUP_VMS.COM に入れておきます。
$ @SYS$SYSTEM:STARTUP SMISERVER |
SYSTARTUP_VMS.COM については, 第 5.2.7 項 を参照してください。
このコマンドを会話形式で入力した場合,システムを再ブートせずに SMISERVER プロセスを再起動できます。
2.3.3 SYSMAN 管理環境
SYSMAN を使用するための第 1 歩は,管理環境を定義することです。 管理環境とは, SYSMAN 以降のコマンドが動作する 1 つまたは複数のノードのことです。
省略時の設定において,管理環境は, ローカル・ノード (SYSMAN を実行したノード) です。しかし,管理環境を次のいずれかに再定義することによって,ローカル以外のノードでもコマンドを実行することができます。
ここでは, 図 2-2 を使って管理環境を説明します。
図 2-2 SYSMAN 管理環境例
たとえば,NODE21 を管理環境とすることも,また 図 2-2 の任意の 1 つのノード,ノードのグループあるいは OpenVMS Cluster を管理環境とすることもできます。
NODE21 から SYSMAN を実行した場合,ローカル・ノードはNODE21 です。つまり,SYSMAN を起動したときの管理環境ということになります。この場合,他のすべてのノードは遠隔ノードです。
2.3.4 SYSMAN 管理環境を定義する
管理環境の定義には,SYSMAN の SET ENVIRONMENT コマンドを使用します。環境を再定義するたびに,SYSMAN は新しいコンテキストを表示します。 SHOW ENVIRONMENT コマンドを使用すると,現在の環境を確認できます。
ローカル・ノード以外のノード,あるいはユーザの OpenVMS Cluster のノードで作業を行う場合,そのユーザの環境は非ローカル環境 であるといいます。機密保護上の理由から,SYSMAN はこの環境の違いを区別します。たとえば,別のクラスタなどの非ローカル環境を定義しようとすると, SYSMAN からパスワードの入力が求められます。これは,他のユーザ名でシステムを管理しようとしたときにも同様です。SET ENVIRONMENT コマンドに /USERNAME 修飾子を使用することによって,自分のユーザ名を変更することができます。
定義した SYSMAN の管理環境は,環境の定義を変更するか, SYSMAN を終了するまで有効です。
2.3.4.1 別のノードを環境として定義する
DECnet を介してアクセス可能なノードであれば,どのノードも管理環境として定義することができます。この場合,SET ENVIRONMENT/NODE コマンドを使用します。
次の例では, 図 2-2 の図中で NODE 21 にログインしているものと想定しています。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> SET ENVIRONMENT/NODE=NODE22 %SYSMAN-I-ENV, current command environment: Individual nodes: NODE22 Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes |
この例の SET ENVIRONMENT コマンドは,管理環境として NODE22 を定義しています。ただし,このコマンドは環境としてクラスタ 1 を設定するわけではありません。
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/NODE=(NODE23,NODE24,NODE25) Remote Password: %SYSMAN-I-ENV, Current Command Environment: Individual nodes: NODE23,NODE24,NODE25 At least one node is not in local cluster Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes |
この例の SET ENVIRONMENT コマンドは, 2 つの別のクラスタに属している NODE23,NODE24,および NODE25 のノードのグループを,管理環境として定義しています。
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER/NODE=NODE24 Remote Password: %SYSMAN-I-ENV, current command environment: Clusterwide on remote cluster NODE24 Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes SYSMAN> DO SHOW TIME %SYSMAN-I-OUTPUT, command execution on node NODE24 13-AUG-2000 13:07:54 %SYSMAN-I-OUTPUT, command execution on node NODE25 13-AUG-2000 13:10:28 |
この例の SET ENVIRONMENT コマンドは,NODE24 を含むクラスタ,すなわちクラスタ 2 を管理環境として定義しています。
ユーザの OpenVMS Cluster にいるノードを,ある特定のカテゴリに従って編成する場合 (たとえば,CI ベースのノード,C をインストールしたノードなど), SET ENVIRONMENT/NODE コマンドを使って論理名を定義します。次の手順に従ってください。
$ CREATE/NAME_TABLE/PARENT=LNM$SYSTEM_DIRECTORY SYSMAN$NODE_TABLE |
$ DEFINE CI_NODES NODE21,NODE22,NODE23/TABLE=SYSMAN$NODE_TABLE |
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> SET ENVIRONMENT/NODE=(CI_NODES) Remote Password: %SYSMAN-I-ENV, current command environment: Individual nodes: NODE21,NODE22,NODE23 At least one node is not in the local cluster. Username SYSTEM will be used on nonlocal nodes. |
第 22.6 節 に説明しているように,デュアル・アーキテクチャ OpenVMS Cluster 中の VAX と Alpha ノードの論理名を定義することもできます。
次の例では,複数の論理名を定義して管理環境を編成しています。
$ CREATE/NAME_TABLE/PARENT=LNM$SYSTEM_DIRECTORY SYSMAN$NODE_TABLE $ DEFINE CI_NODES SYS2,SYS8/TABLE=SYSMAN$NODE_TABLE $ DEFINE C NODE21,NODE22,NODE23/TABLE=SYSMAN$NODE_TABLE $ DEFINE PASCAL NODE23,NODE18,CI_NODES/TABLE=SYSMAN$NODE_TABLE $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN SYSMAN> SET ENVIRONMENT/NODE=(C,PASCAL) Remote Password: %SYSMAN-I-ENV, current command environment: Individual nodes: NODE21,NODE22,NODE23,NODE18,SYS2,SYS8 At least one node is not in the local cluster. Username SYSTEM will be used on nonlocal nodes. |
2.3.4.3 OpenVMS Cluster 環境を定義する
OpenVMS Cluster を管理環境として定義する場合には, SET ENVIRONMENT/CLUSTER コマンドを使用します。
SYSMAN で定義可能な OpenVMS Cluster 環境は次のいずれかです。
OpenVMS Cluster 環境 | 定義 |
---|---|
ローカル | SYSMAN を実行した OpenVMS Cluster |
非ローカル | SYSMAN を実行した OpenVMS Cluster 以外の OpenVMS Cluster |
図 2-2 のように NODE21 だけであった管理環境をクラスタ 1 にまで広げる場合, NODE21 から次のコマンドを入力します。
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER %SYSMAN-I-ENV, Current Command Environment: Clusterwide on local cluster Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes |
図 2-2 の OpenVMS Cluster 環境の場合, SYSMAN はクラスタ 1 のすべてのノード,すなわち,NODE21, NODE22,NODE23 上でコマンドを実行します。
SYSMAN で非ローカルの OpenVMS Cluster を管理する場合, /NODE 修飾子を使ってクラスタを特定します。 OpenVMS Cluster に別名を定義している場合, /NODE 修飾子にはノード名の代わりに,定義した別名を使用することもできます。
/CLUSTER と /NODE を同時に使用した場合,管理環境は,指定したノードが属するクラスタになります。たとえば, 図 2-2 のクラスタ 2 で管理作業を行う場合, SET ENVIRONMENT コマンドに /CLUSTER 修飾子を付けて,さらに /NODE 修飾子にクラスタ 2 内のノードを指定します。
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER/NODE=NODE24 Remote Password: %SYSMAN-I-ENV, Current Command Environment: Clusterwide on remote node NODE24 Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes |
SYSMAN を使って Alpha と VAX ノードが混在する OpenVMS Cluster を管理する方法については, 第 22.6 節 を参照してください。
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