Compaq OpenVMS
システム管理者マニュアル


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11.2 バックアップのタイプ

バックアップ操作には,次の表に示すいくつかのタイプがあります。

操作 説明
ファイル操作 ファイルやディレクトリを個別に処理する。 第 11.13 節 を参照。
選択的操作 バージョン番号,ファイル・タイプ,UIC,作成日時,満了日,変更日などの基準に従い,選択的にファイルやボリュームを処理する。

このバックアップでは,ワイルドカード文字と入力ファイル選択修飾子 (/BACKUP, /BEFORE, /BY_OWNER [/OWNER_UIC], /CREATED, /EXCLUDE, /EXPIRED, /MODIFIED, /SINCE など) を利用する。詳細は 第 11.13 節 を参照。

物理操作 ファイル構造を無視し,論理ブロック単位でボリューム全体をコピー,セーブ,復元,比較する。
イメージ操作 入力ディスクのすべてのファイルを処理する。このイメージ操作には,次の 4 つの種類がある。

  • イメージ・バックアップ (完全バックアップ) は,ディスクまたはボリューム上のすべてのファイルのコピーを セーブ・セット と呼ばれる特殊ファイルに保存する。ディスクに初めて行うバックアップは,イメージ・バックアップである必要がある。初めてのバックアップで,追加型バックアップを行うことはできない。

  • イメージ復元 は,出力ディスクを初期化して,ボリューム全体を復元する。

  • イメージ・コピー 操作は,出力ディスクを初期化して,ボリューム全体をコピーする。イメージ・バックアップの内容は,論理的には入力ディスクの内容と同一。

  • イメージ比較 操作は,ボリューム全体の内容を比較する。

イメージ・コピーやイメージ・バックアップ機能は入力ボリュームのすべてのファイルを処理するため,ファイル選択修飾子を使用することはできない。ただし,イメージ・セーブ・セットからのファイルやディレクトリの復元では,選択的な操作を行うことができる。

追加型操作 追加型操作には,次の 2 つの種類がある。

  • 追加型バックアップ は,前回,/RECORD 修飾子を使用して行われたバックアップ以降に作成または変更されたファイルのみセーブする。/RECORD 修飾子は,ファイルのバックアップを行った日時を記録する。

  • 追加型復元 操作は,追加セーブ・セットを復元する。追加型復元操作を行うには, /INCREMENTAL コマンド修飾子を指定する。詳細は 第 11.16.2 項 を参照すること。

2 種類の BACKUP 操作である,ファイル操作とイメージ操作は, ODS-5 ファイル名から ODS-2 ファイル名への変換をサポートします。詳細については, 第 9.5.5.3 項 を参照してください。

11.3 バックアップ方法の定式化

バックアップ方法の定式化は,サイトの具体的な要件や,様々なバックアップのタイプの長所や短所を念頭に置いて行ってください。また,次の要因を考慮することも忘れないでください。

たとえばスタンドアロン型のワークステーションでは,たいていの場合,夜間のイメージ・バックアップが最適なバックアップ方法です。

また別の環境では,イメージ・バックアップと追加型バックアップを組み合せた方法も考えられます。たとえば,常に会話型ユーザがログインしている環境 ( 第 11.15.1 項 参照) では,イメージ・バックアップを毎日行うのは困難です。そのため,イメージ・バックアップを毎週行って,追加型バックアップを毎晩行うという方法がよいかもしれません。

イメージ・バックアップと追加型バックアップの比較を 表 11-1 に示します。

表 11-1 イメージ・バックアップと追加型バックアップの比較
バックアップ形態 長所 短所
イメージ 追加型バックアップより短時間の復元が可能。ディスク全体のバックアップが可能。 追加型バックアップより使用する空間が多く,時間が長くかかる。システム性能やオープンしているファイルに影響するため,会話型ユーザのログインがないことが前提になる ( 第 11.15.1 項 参照)。
追加型 時間と使用空間が少なくてすむ。 ファイルの復元が難しい。定期的なイメージ・バックアップと組み合わせる必要がある。

注意

イメージ・バックアップを実行する場合は,あらかじめ次のことに留意してください。

  • ディスクで初めてのバックアップなら,通常の追加型バックアップを行う前に,BACKUP/IMAGE/RECORD コマンドでイメージ・バックアップを行います。イメージ・バックアップは,ディスク全体のコピーを保存しながら,保存した各ファイルにマークを付けます。その後に実施する通常の追加型バックアップは,既にイメージ・バックアップが行われていることを前提としているため,新しいファイルや変更されたファイルを保存します。
    最初にイメージ・バックアップが行われていない場合には,追加型バックアップで必要以上にファイルを保存して,確実に追加型の復元ができるようにします。

  • BACKUP/IMAGE によるディスクの復元操作後ただちに ANALYZE/DISK 操作を実行すると,システムは次のような警告メッセージを表示する場合があります。


    %ANALDISK-W-ALLOCCLR, blocks incorrectly marked allocated 
            LBN 97 to 105, RVN 1 
    


    これは,別名ファイルのエントリが独立 (1 次) ファイルのエントリとして復元されている場合に, BACKUP/IMAGE による復元操作を実行しようとしたときに起こることがあります。 1 次ファイルでは同じファイル・ヘッダが使用されますが別のデータ記憶ブロックが割り当てられるため,1 次ファイルも復元されます。
    ただし,エラー・メッセージは表示されますが,BACKUP にエラーはなく,データも失われないことに注意してください。

次の条件のいずれかが成立する場合,バックアップ中にテープまたはディスクを交換する必要はありません。

上記の場合は,夜間,または会話型ユーザのログインが最も少ないと思われる時間に,バッチ・ジョブでバックアップを行うことができます。 第 11.15.7 項 では,バッチ・ジョブで実行可能なコマンド・プロシージャ例をいくつか紹介します。

11.4 バックアップのインタフェース

OpenVMS の BACKUP ユーティリティには,次の 2 つのインタフェースが使用できます。

11.4.1 BACKUP コマンド行

バックアップを行うためには,入力側にバックアップ対象,出力側にセーブ・セットまたはファイルの書き込み先を指定する必要があります。 BACKUP では修飾子を使用することができ,それら修飾子は,コマンド行での位置によってその働きが変わります。BACKUP の形式は次のとおりです。


BACKUP/ 修飾子   入力指定/修飾子   出力指定/修飾子 

表 11-2 は,コマンド行上での位置別に BACKUP コマンド修飾子を定義したものです。

表 11-2 BACKUP コマンド修飾子の種類
種類 位置 働き
コマンド修飾子 コマンド行上の任意の場所 入力指定と出力指定の両方に作用
入力指定修飾子 入力指定の直後 入力指定にのみ作用
出力指定修飾子 出力指定の直後 出力指定にのみ作用

BACKUP を使用するにあたっては,コマンド行の間違った位置に修飾子を指定することのないように注意してください。 BACKUP コマンド行については,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』にさらに詳しい説明があります。

11.4.1.1 拡張文字セット

OpenVMS ではバージョン 7.2 から Extended File Specifications がサポートされており, BACKUP ユーティリティは拡張文字セットのファイル名を処理できます。含まれている文字は次の形式です:

拡張文字セットについて詳しくは『Compaq OpenVMS Extended File Specifications の手引き』を参照してください。

11.4.1.2 入力ファイルの指定

ファイルに基づく BACKUP 操作では,次のように相対入力ファイル・バージョンを指定できます。


$ BACKUP FILE.DAT;-2 SAVED_FILE.DAT

この例では,入力ファイル名の最新のバージョンから数えて2バージョン古いバージョンを選択し,別のファイル名を割り当てています。

BACKUP ユーティリティは,相対ファイル・バージョンの指定記法として,最も古いバージョンを表わす -0 を使用できません。代わりに -0 は指定したファイルの最新バージョンを選択したとみなされます。

11.4.2 Backup Manager

Backup Manager は,直感的でタスク指向のセルフ・ドキュメント方式で BACKUP の機能を提供する, OpenVMS の BACKUP ユーティリティへの画面用インタフェースです。 Backup Manager が,バックアップのプロセスを通じてガイドするので,バックアップ操作が簡単になります。 Backup Manager を使用しても,BACKUP コマンド行を使用しても,実際のパフォーマンスには差がありません。

Backup Manager の動作環境は次の通りです。

Backup Manager インタフェースは,OpenVMS Screen Management ランタイム・ライブラリ (RTL) ルーチンに対応します。

11.4.2.1 Backup Manager の機能

Backup Manager は次のようなバックアップの操作を実行できます。

Backup Manager では,次の 3 種類のオンライン支援が使用できます。

11.4.2.2 Backup Manager の起動

Backup Manager を起動するには,DCL のプロンプトで次のコマンドを入力します。


$ RUN SYS$SYSTEM:BACKUP$MANAGER

操作を開始すると,BACKUP ユーティリティからの出力が自動的に表示されます。いつでも出力を中断して (Ctrl/P),スクロールすることができます。また,Ctrl/T で状態を表示したり,Ctrl/C で現在の BACKUP 操作を停止したりすることもできます。

11.5 セーブ・セット

BACKUP コマンドを使用してファイルをテープにセーブした場合,それらファイルはセーブ・セットと呼ばれる特殊なファイルに書き込まれます。またセーブ・セットは,/SAVE_SET 修飾子を使ってディスクに作成することもできます。セーブ・セットは,それが置かれている媒体に従って分類されており, 表 11-3 は,セーブ・セットの保管に使用可能な媒体をまとめたものです。

表 11-3 セーブ・セットの種類
媒体 参照箇所
磁気テープ 第 11.5.1 項
Files--11 ディスク 第 11.5.2 項
遠隔ノードの Files--11 ディスク
(ネットワーク・セーブ・セット)
第 11.5.3 項
順編成ディスク・セーブ・セット 第 11.5.4 項

11.5.1 磁気テープ・セーブ・セット

BACKUP セーブ・セットの保管媒体として最もよく使用される媒体は,磁気テープです。ディスク媒体より価格が安く,コンパクトで,保管が容易です。データの保存や復元を行うときに複数のテープを使用することができます。つまり,バックアップ中,テープが終端に達したらテープを巻き取り,次のテープに入れ換えてから,処理を継続することができます。

BACKUP は,あらゆる磁気テープ・ファイルを BACKUP セーブ・セットと見なします。また,BACKUP コマンド行の入力側と出力側の両方にセーブ・セットを指定することはできません。したがって,磁気テープ間で BACKUP 操作は行えないことになります。

磁気テープ・セーブ・セットのディスクへのコピーには,BACKUP コマンドを使用してください。ただし,/INTERCHANGE 修飾子を使用して作成した磁気テープ・セーブ・セットは,DCL の COPY コマンドを使用できます。

磁気テープ・セーブ・セット指定の長さは,次に示すように区切り文字のピリオド (.) とファイル・タイプを含めて 17 文字までです。

WKLY27JAN2000.BCK

テープからデータを復元するとき,入力側の磁気テープのセーブ・セット名が省略された場合,BACKUP はテープの次のセーブ・セットを復元します。ただし,入力セーブ・セット修飾子に /REWIND が指定された場合は,テープを巻き戻し,先頭のセーブ・セットを読み取ります。

11.5.2 Files--11 ディスク・セーブ・セット

Files--11 ディスクにセーブ・セットを書き込む場合は,出力セーブ・セット修飾子として /SAVE_SET を指定する必要があります。この修飾子は,ファイルのコピーではなくセーブ・セットを作成するよう,出力ボリュームに指示します。また,ディスクは Files--11 ボリュームとしてマウントし,ボリューム・セットの場合はすべてのボリュームをマウントしておく必要があります。

BACKUP は,Files--11 セーブ・セットを Files--11 または順編成ディスクのどちらの形式のセーブ・セットとしても読み取ることができます。

Files--11 ディスクに保管されたセーブ・セットは標準の OpenVMS ファイルであり,コピーや名前変更,削除,バックアップを行うことができます。

11.5.3 ネットワーク・セーブ・セット

セーブ・セット指定に遠隔ノードのノード名を指定することによって,そのノードに接続されている Files--11 ディスクにセーブ・セットを作成したり,ディスクのセーブ・セット (ネットワーク・セーブ・セット) を読み取ったりすることができます。 遠隔ノード とは,ネットワークを介して,使用中のノード (ホスト・ノード) からアクセス可能なノードです。ネットワーク・セーブ・セットは,遠隔ノードの公用アクセス可能なディスク,すなわち,/SYSTEM か /GROUP,/CLUSTER 修飾子を使用して遠隔ノードからマウントしたディスクに存在する必要があります。

遠隔ノードのボリューム保護とファイル保護の設定によっては,ネットワーク・セーブ・セット指定にアクセス制御文字列を指定しなければならないことがあります。そうしたアクセス制御文字列は,次の形式でユーザ名とパスワードから構成します。


遠隔ノード名"ユーザ名   パスワード"::装置名:[ ディレクトリ ] 


次は,遠隔ノードの DOUBLE にネットワーク・セーブ・セットを作成している例です。


$ BACKUP
_FROM: [MY_DIR]
_TO: DOUBLE"username password"::DBA0:SAVEIT.BCK/SAVE_SET

代理ネットワーク・アクセスのときのように,遠隔ノードへのアクセスに権限が必要ない場合は,アクセス制御文字列を省略してください。アクセス制御文字列と代理ネットワーク・アクセスについては,『DECnet for OpenVMS Networking Manual』で詳しく説明しています。


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