Compaq OpenVMS
システム管理者マニュアル


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11.5.4 順編成ディスク・セーブ・セット

順編成ディスク・セーブ・セットでは,Files--11 ディスク・ボリュームを,磁気テープ・ボリュームのように順に処理することができます。順編成ディスク・セーブ・セットを使用する第 1 の利点は,マルチボリューム・セーブ・セットを構成するボリュームを一度に 1 つずつマウントできることです。これは,大容量の固定ディスク装置と小容量の着脱式ディスク装置があるだけで,テープ・ドライブが搭載されていないシステムで特に有効です。

順編成ディスクの 1 つが一杯になると,BACKUP は次のディスクをマウントするよう求めます。データの保存や復元で複数のディスクを使用することができます。つまり,ディスクを入れ換えながら処理を継続することができるのです。

マルチボリューム順編成ディスク・セーブ・セットを読み書きするためには,LOG_IO 特権か PHY_IO 特権が必要です。

順編成ディスク・セーブ・セットを作成する場合は,まず,DCL の MOUNT/FOREIGN コマンドを使用して,セーブ・セットの最初のボリュームをマウントしてください。これにより,ディスクはフォーリン・ボリュームとしてマウントされますが,BACKUP は Files--11 構造を使ってディスクを管理します。

順編成ディスクに保存を行う 場合は,出力セーブ・セット修飾子 /SAVE_SET を使用しなければなりません。また順編成ディスクからの復元 の場合は,入力セーブ・セット修飾子 /SAVE_SET を使用しなければなりません。 /SAVE_SET 修飾子が省略された場合,BACKUP は次のエラー・メッセージを出します。


%BACKUP-F-IMGFILSPE, /IMAGE specification must only have device name 

順編成ディスク・セーブ・セットにディレクトリ名を指定する必要はありません。順編成ディスク・セーブ・セットは,必ずマスタ・ファイル・ディレクトリ [000000] に書き込まれます。マスタ・ファイル・ディレクトリ以外のディレクトリが指定された場合,保存操作ではその指定は無視されます。また,復元または一覧出力操作では,ファイルが見つからないというエラー・メッセージが表示されます。

省略時の設定で BACKUP は最初の順編成ディスク・ボリュームを初期化せず,継続順編成ディスク・ボリュームだけ初期化します。このため,最初の順編成ディスク・ボリュームに /INITIALIZE 修飾子を指定しない場合は,次のことに注意する必要があります。

順編成ディスク・セーブ・セットに使用するボリュームは,セーブ・セット専用にしてください。一般のファイル用に使用していたボリュームを順編成ディスク・ボリュームとして使用するためには,初期化を行う必要があります。1 つの順編成ディスクに書き込み可能なセーブ・セット数は最大で 12 個です。1 つのディスクに 12 個を超えるセーブ・セットを作成したい場合は, Files--11 ディスク・セーブ・セットを使用してください。

BACKUP は,順編成ディスク・セーブ・セットを順編成ディスクまたは Files--11 のどちらの形式のセーブ・セットとしても読み取ることができます。

11.6 BACKUP が扱うファイル形式

VAX システムにおいて, BACKUP がディスクあるいは磁気テープに保存可能なファイルとディレクトリの形式は,Files--11 構造のレベル 1 とレベル 2 ディスク形式のものです。その逆の復元も, Files--11 構造のレベル 1 と 2 ディスクの両方に対して行うことができます。

VAX システムで Alpha システム・ディスクのイメージ・バックアップを行うと,復元操作により Alpha システムが正常にブートされます。

Alpha システムにおいては,BACKUP は Files--11 構造のレベル 2 またはレベル 5のファイルとディレクトリをディスクと磁気テープのいずれにも保存できます。必要な場合,BACKUP を使用して,保存されたファイルとディレクトリを Files--11 構造のレベル 2 またはレベル5 ディスクへ復元も行えます。

注意

OpenVMS Alpha オペレーティング・システムは, Files--11 構造のレベル 1 形式に対応していません。

ISO 9660 形式の媒体上のファイルのバックアップを行うことはできませんが,ISO 9660 形式の媒体に格納されたセーブ・セットを復元することはできます。

Files--11 ディスク構造についての詳細は, 第 9.1.1.2 項 を参照してください。 ISO 9660 装置についての詳細は, 第 8.2.2 項 を参照してください。

11.7 プロセス・クォータによる効率的なバックアップの実現

バックアップを行うプロセス,すなわち,BACKUP コマンドを入力するか,バックアップ・コマンド・プロシージャをキュー登録するプロセスに対するプロセス・クォータを正しく設定することによって,バックアップ効率を最適化することができます。これは,ストリーミング・テープ装置を使用する場合,特に大切です。

作業方法

プロセス・クォータによって効率的なバックアップを実現する手順を次に示します。

  1. バックアップに使用するアカウントを決める。既存のアカウントを利用することも,バックアップ専用にアカウントを作成することもできる。アカウントの作成については, 第 7.6 節 を参照。

  2. AUTHORIZE ユーティリティを使用して,バックアップに使用するアカウントの現在のクォータの値を確認する。たとえば SYSTEM アカウントを使用してバックアップを行うのであれば,次のコマンドを入力する。


    $ SET DEFAULT SYS$SYSTEM
    $ RUN AUTHORIZE
    UAF> SHOW SYSTEM
    


  3. SYSMAN ユーティリティを使用して,システム・パラメータの WSMAX と CHANNELCNT の値を確認する。


    $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
    SYSMAN> PARAMETERS SHOW WSMAX
    %SYSMAN-I-USEACTNOD, a USE ACTIVE has been defaulted on node DIEM 
    Node DIEM:   Parameters in use: ACTIVE 
    Parameter Name          Current   Default   Minimum   Maximum Unit  Dynamic 
    --------------          -------   -------   -------   ------- ----  ------- 
    WSMAX                      2600      1024        60    100000 Pages       
    SYSMAN> PARAMETERS SHOW CHANNELCNT
    Parameter Name          Current   Default   Minimum   Maximum Unit  Dynamic 
    --------------          -------   -------   -------   ------- ----  ------- 
    CHANNELCNT                 127       127        21     2047 Channels 
     
    SYSMAN> EXIT
    $ 
    


    WSMAX と CHANNELCNT の値は "Current" という欄に示され,それぞれ 2600 と 127 である。これらの値を使用して,適切なプロセス・クォータを設定する。

  4. AUTHORIZE を使用して,ステップ 3 で求めたプロセス・クォータと 表 11-4 に示す最適値を比較する。示されている値は,効率的なバックアップを実現するための最適値である。

    表 11-4 効率的なバックアップのための最適プロセス・クォータ
    プロセス・クォータ 最適値
    WSQUOTA システム・パラメータ WSMAX に等しい値
    WSEXTENT WSQUOTA に等しい値
    PGFLQUOTA WSEXTENT に等しいか,大きい値
    FILLM システム・パラメータ CHANNELCNT より小さい値
    DIOLM 4096 か,FILLM 値の 3 倍のどちらか 大きい方
    ASTLM 4096 か, DIOLM 値より100 大きな値か, FILLM 値の 3 倍のうちの一番 大きな値
    BIOLM FILLM に等しい値
    BYTLM 次の式の結果に等しいか,大きい値:
    (256*FILLM)+(6*DIOLM)
    ENQLM FILLM より大きい値

  5. 必要ならば,AUTHORIZE の MODIFY コマンドを使用してプロセス・クォータを変更する。変更を有効にするためには,いったんログアウトする必要がある。プロセス・クォータの変更方法についての詳細は, 第 7.7.2 項 を参照すること。
    表 11-5 は,たいていのシステム構成で使用可能な,具体的なプロセス・クォータのリストである。ディスクのフラグメンテーションがひどかったり,システムの使用が激しいときにバックアップを行ったりする場合は, WSQUOTA と FILLM 値を小さくする。

    表 11-5 プロセス・クォータ例
    プロセス・クォータ 推奨値
    WSQUOTA 16384
    WSEXTENT WSQUOTA に等しいか,大きい値
    PGFLQUOTA 32768
    FILLM 128
    DIOLM 4096
    ASTLM 4096
    BIOLM 128
    BYTLM 65536
    ENQLM 256


次に,AUTHORIZE ユーティリティを起動して, SYSTEM アカウントのプロセス・クォータを設定するときに使用するコマンドを,順を追って紹介します。実際の操作で別のアカウントからバックアップを行う場合は,そのアカウントのプロセス・クォータを確認してください。

  1. 現在のクォータを確認する。


    $ SET DEFAULT SYS$SYSTEM
    $ RUN AUTHORIZE
    UAF> SHOW SYSTEM
    Username: SYSTEM                           Owner:  SYSTEM MANAGER 
    Account:  SYSTEM                           UIC:    [1,4] ([SYSTEM]) 
    CLI:      DCL                              Tables: DCLTABLES 
    Default:  SYS$SYSROOT:[SYSMGR] 
                                     . 
                                     . 
                                     . 
    Maxjobs:         0  Fillm:        40  Bytlm:        32768 
    Maxacctjobs:     0  Shrfillm:      0  Pbytlm:           0 
    Maxdetach:       0  BIOlm:        18  JTquota:       1024 
    Prclm:          10  DIOlm:        18  WSdef:          256 
    Prio:            4  ASTlm:        24  WSquo:          512 
    Queprio:         0  TQElm:        20  WSextent:      2048 
    CPU:        (none)  Enqlm:       200  Pgflquo:      20480 
                                     . 
                                     . 
                                     . 
    UAF> EXIT
    %UAF-I-NOMODS, no modifications made to system authorization file 
    %UAF-I-NAFNOMODS, no modifications made to network authorization file 
    %UAF-I-RDBNOMODS, no modifications made to rights database 
    $
    


    この例では,SYSTEM は次のクォータ値を持つ。

    WSQUOTA 512
    WSEXTENT 2048
    PGFLQUOTA 20480
    FILLM 40
    DIOLM 18
    ASTLM 24
    BIOLM 18
    BYTLM 32768
    ENQLM 200

  2. SYSMAN ユーティリティを使用して,システム・パラメータの WSMAX とCHANNELCNT の値を確認する。


    $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
    SYSMAN> PARAMETERS SHOW WSMAX
    %SYSMAN-I-USEACTNOD, a USE ACTIVE has been defaulted on node DIEM 
    Node DIEM:   Parameters in use: ACTIVE 
    Parameter Name          Current   Default   Minimum   Maximum Unit  Dynamic 
    --------------          -------   -------   -------   ------- ----  ------- 
    WSMAX                      2600      1024        60    100000 Pages       
    SYSMAN> PARAMETERS SHOW CHANNELCNT
    Parameter Name          Current   Default   Minimum   Maximum Unit  Dynamic 
    --------------          -------   -------   -------   ------- ----  ------- 
    CHANNELCNT                 127       127        21     2047 Channels 
     
    SYSMAN> EXIT
    $ 
    


    WSMAX と CHANNELCNT の値は "Current" という欄に示され,それぞれ 2600 と 127 である。

  3. ステップ 3 で求めたプロセス・クォータと 表 11-4 に示す値を比較し,適切な値を設定する。


    $ SET DEFAULT SYS$SYSTEM
    $ RUN AUTHORIZE
    UAF> MODIFY SYSTEM/WSQUOTA=2600
    UAF> MODIFY SYSTEM/WSEXTENT=2600
    UAF> MODIFY SYSTEM/DIOLM=4096
    UAF> MODIFY SYSTEM/ASTLM=4096
    UAF> MODIFY SYSTEM/BIOLM=40
    UAF> MODIFY SYSTEM/BYTLM=34816
    UAF> EXIT
    

  4. プロセス・クォータを有効にするため,いったんログアウトして,ログインしなおす。

11.8 ディスクとテープの使用法

バックアップ操作では,たいてい,ディスク・ボリュームとテープ・ボリュームの両方を使用することになります。バックアップでボリュームを使用する前に通常行う作業は次の 4 つです。

  1. 装置名の決定

  2. 装置の割り当て

  3. ボリュームの初期化 (任意)

  4. 装置のマウント (ディスクのみ,BACKUP はテープを自動的にマウント)

これらの作業全般の内容は,すでに 第 9 章 で説明したとおりです。本章では,特に BACKUP との関連でこれらの作業について説明します。本章で取り上げるディスク操作はすべてディスケットにも適用されます。

11.8.1 ボリュームの初期化

ボリュームの初期化では,次のことを行います。

重要

ボリュームを初期化すると,既存のファイルのリンクが解除され,ファイルが効率良く消去されます。残したいデータが入っているボリュームを初期化しないように注意してください。

11.8.1.1 ボリュームを初期化する時期

次の条件を満たす場合は,BACKUP で使用するボリュームを初期化する必要があります。

ボリュームを初期化する方法は, 表 11-6 に示す 3 つです。

表 11-6 ボリュームの初期化方法
方法 参照箇所
バックアップの前に DCL の INITIALIZE コマンドを使用する 第 9.3 節
BACKUP コマンド行で /REWIND 修飾子を使用する (テープのみ) 第 11.8.1.2 項
BACKUP コマンド行で /INITIALIZE 修飾子を使用する (ディスクのみ) 第 11.8.1.3 項

11.8.1.2 テープの初期化

INITIALIZE コマンドを使用してから,バックアップを行うという方法の代わりに,BACKUP コマンドで,一度にテープの初期化とバックアップを行うことができます。

作業方法

BACKUP コマンドでテープ・ボリュームを初期化する場合は,出力指定に /REWIND と /LABEL 修飾子を追加します。 /REWIND 修飾子はボリュームを巻き戻して,初期化します。 /LABEL 修飾子には,ボリューム・ラベルを指定することができます。

磁気テープのボリューム・ラベルには,任意の ANSI "a" 文字で最大 6 文字を指定することができます。ANSI "a" 文字とは,数字と英大文字,そして次の英数字以外の文字です。


  ! " % ' ( ) * + , _ . / : ; < = > ? 

英数字以外の文字を使用する場合は,ボリューム・ラベルを二重引用符で囲まなければなりません。

ボリュームに含まれるデータの内容に合せて,ボリューム・ラベルを指定してください。次に,ラベルの推奨例をいくつか紹介します。

ラベル バックアップ形態 満了日
DLY101 毎日,グループ 1,ボリューム番号 1 7 日後満了
DLY102 毎日,グループ 1,ボリューム番号 2 7 日後満了
WKY101 毎週,グループ 1,ボリューム番号 1 4 週間後満了
WKY201 毎週,グループ 2,ボリューム番号 1 4 週間後満了
MTH101 毎月,グループ 1,ボリューム番号 1 12 ヶ月後満了
YRY101 毎年,グループ 1,ボリューム番号 1 5 年後満了

初期化をするにあたっては,次のことに留意してください。



$ BACKUP [ACCOUNTS.JUNE] MUA0:JUNE.BCK/REWIND/LABEL=MTH101


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