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OpenVMS マニュアル


日本語トランスレータリファレンス・マニュアル

日本語トランスレータ リファレンス・マニュアル


目次 索引

第2章 テキスト・トランスレータ

この章では,コントロール・コードやエスケープ・シーケンスを含んだテキスト・データを解釈して,PostScript に変換する,テキスト・トランスレータについて説明します。



2.1 テキストのための4つのデータ・タイプ

日本語DECprint製品群では,従来のプリンタ装置に出力していたテキスト・ファイルを,ユーザがPostScriptを意識せずに,従来のプリンタ装置と同様のインターフェイスで出力できるように,以下の4種のデータ・タイプをサポートしています。これらの4種類のデータ・タイプは,弊社が提供している実際のプリンタ装置と対応しています。データ・タイプを適当に選択することによって,たとえば,従来漢字LA86に出力していたテキスト・ファイルを,内容を変更することなしに日本語PostScriptプリンタに出力することができます。機能の詳細な違いは次節以降で説明しますので,ここではおおまかな相違点のみを説明します。

  1. ANSI
    弊社のLN03およびDEClaser2100/2200プリンタに対応したインターフェイスを提供します。すなわち,ISO/ANSI標準のコントロール機能により,文字セット,フォント,タブ,マージン,文字間隔/行間隔などを変えたり,文字列に対してアンダーライン,反転,網掛けなどの属性を指定することができます。このデータ・タイプでの機能はKANJI データ・タイプと同じですが,初期状態での文字セット,フォント,文字間隔などが異なります。たとえば,このデータ・タイプでの初期文字セットは,ASCIIとDECサプリメンタル文字セットです。初期状態の詳細は 付録 C "テキスト・トランスレータの初期設定値" を参照してください。また,英語版 ANSIトランスレータとの違いは, 第 2.2 節 "拡張された機能" で説明します。

  2. KANJI
    弊社の漢字LN03およびDEClaser2300(漢字LN05)レーザ・プリンタに対応したインターフェイスを提供します。より正確には,DEClaser2300のLN05モードに対応したインターフェイスです。機能はANSIデータ・タイプと同じですが,初期状態が異なります。たとえば,このデータ・タイプでの初期文字セットは JISローマ字とDEC漢字です。初期状態の詳細は 付録 C "テキスト・トランスレータの初期設定値" を参照してください。

  3. KANJI78
    弊社の漢字LN03およびDEClaser2300レーザ・プリンタに対応したインターフェイスを提供します。KANJIデータ・タイプとの違いは,KANJIデータ・タイプが DEC漢字1983年版をサポートするのに対して,KANJI78はDEC漢字1978年版をサポートすることです。その他の機能には違いはありません。

  4. LA_KANJI
    弊社の漢字LA86ドットインパクト・プリンタに対応したインターフェイスを提供します。正確には,DEClaser2300のLA86モードに対応したインターフェイスです。 DEC漢字1983年版をサポートします。
    ANSI データ・タイプ,KANJI データ・タイプとの違いは, 第 2.2 節 で説明します。

これらのデータ・タイプでサポートされる命令(エスケープ・シーケンス,コントロール・シーケンス)の一覧を 付録 A に示します。



2.2 拡張された機能

日本語テキスト・トランスレータは英語版の ANSIトランスレータを日本語のために拡張したものです。ここではこのANSIトランスレータとの相違を,4つのデータ・タイプごとに説明します。ここで説明されていない部分については英語版 ANSI トランスレータと同じなので,次の2冊,

「 Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Reference Manual 」

「 Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Supplement 」

を参照してください。

  注意
ANSIデータ・タイプを指定したときに,英語版ANSIトランスレータを用いるか,日本語拡張版ANSIトランスレータを用いるかは,トランスレータをサポートするソフトウェアの設定によって変更できます。英語版ANSIトランスレータを使用している場合は,以下で説明される拡張された機能は使用できません。



2.2.1 日本語拡張版ANSIデータ・タイプ

以下の項目が拡張されています。




日本語フォントとして以下のフォントがサポートされています。

  • 明朝体・縦32ドット×横32ドット相当のDEC漢字フォント

  • 明朝体・縦40ドット×横40ドット相当のDEC漢字フォント

  • ゴシック体・縦40ドット×横40ドット相当のDEC漢字フォント

  • 明朝体・縦32ドット×横16ドット相当の半角ローマ字,半角カタカナ・フォント

  • 明朝体・縦40ドット×横20ドット相当の半角ローマ字,半角カタカナ・フォント

  • ゴシック体・縦40ドット×横20ドット相当の半角ローマ字,半角カタカナ・フォント

  • 10ポイント10文字/インチ(cpi)および10.3cpiフォントに対応するカタカナ・フォント

  • 10ポイント12cpiフォントに対応するカタカナ・フォント

  • 6.7ポイント13.6cpiフォントに対応するカタカナ・フォント

  注意

  1. 明朝体とゴシック体のフォントは,実際には PostScript のアウトラインフォントを使用しているので,ここで示したドット数は目安です。

  2. 32×32は8ポイント9.38cpi,40×40は10ポイント7.5cpiです。対応する半角フォントはそれぞれ18.75cpi,15cpiです。

  3. 32×32は6.7ポイント6.8cpiフォントとしても用いられます。これは6.7ポイント13.6cpiフォントに対応する全角漢字フォントを提供するためです。

  4. これらの追加されたフォントはゴシック体を除いて,DEC BUILTIN1ファミリとしても登録されています。このことにより,英文書体であるクーリエと明朝体の違いを意識せずに,文字セットの切り替えや文字サイズの切り替えが行えます。

  5. ゴシック体,縦32ドット×横32ドット相当のDEC漢字フォントは存在しません。

ANSIおよびKANJIデータ・タイプでサポートされる,すべてのフォントのフォントIDとサンプル文字列を 付録 B に示します。




文字セット指示命令SCS(Select Character Set)でサポートされる文字セットとして,JISカタカナ・セットとDEC漢字指示セットが追加されています。DEC漢字指示セットについては,「DEC漢字コード表」(AA-A056C-TE-JO)を参照してください。それ以外の文字セットのコード表は「 Digital ANSI-Compliant Printing Protocol Level 3 Programming Reference Manual 」のAppendix Aを参照してください。

  1. JISカタカナ
    JIS カタカナは標準の94文字セットのSCSシーケンスを用いてG0,G1, G2,G3 のいずれかのコード・テーブルに指示(designate)することができます。文字セット識別コードは "I"(4/9)です。

  2. 漢字
    漢字を使用するときは必ず,DEC漢字指示セットがG3コード・テーブルに指示 (designate)されていなければなりません。以下のシーケンスは,すべてDEC漢字指示セットをG3コード・テーブルに指示します。G3に指示された漢字セットは通常の文字セットの呼び出し(invoke)と同様に,GLまたはGRコード・テーブルに呼びだして用います。

    ESC
    1/11
    $
    2/4
    +
    2/11
    3
    3/3
    DEC漢字指示セット
    1983年版
    ESC
    1/11
    $
    2/4
    +
    2/11
    B
    4/2
    JISX0208漢字指示セット
    1983年版



    以下の1978年版の指示シーケンスもサポートします。ただし,実際に指示されるのは1983年版です。

    ESC
    1/11
    $
    2/4
    +
    2/11
    1
    3/1
    DEC漢字指示セット
    1978年版(新コマンド)
    ESC
    1/11
    $
    2/4
    +
    2/11
    @
    4/0
    JISX0208漢字セット
    1978年版
    ESC
    1/11
    +
    2/11
    "
    2/2
    0
    3/0
    DEC漢字指示セット
    1978年版(旧コマンド)

  注意

  1. 旧コマンドは,既存のプリンタとの互換性を保つためにサポートされていますが,新しくテキスト・ファイルを生成する場合で,DEC漢字指示セットの指示が必要なときは,旧コマンドは使わないようにしてください。

  2. DEC漢字指示セットをGLコード・テーブルに呼びだした場合,DEC拡張漢字 領域は使用できません。

  3. ANSIデータ・タイプ,KANJIデータ・タイプ,およびLA_KANJI データ・タイプでは,DEC漢字1983年版のみをサポートします。
    DEC漢字1978年版は,KANJI78データ・タイプでサポートされています。
    DEC漢字1983年版では,DEC拡張罫線文字(コードFE21〜FE2B(16進)) はサポートされません。




フォントがタイプ・ファミリで指定されているときには,文字サイズ変更命令GSM (Graphic Size Modification)を用いて,いわゆる横倍角,縦倍角,4倍角文字 (縦横倍角)が出力できます。

GSMでは文字の高さと幅の2つのパラメータを指定できますが,どちらのパラメー タも,現在有効なフォントのタイプ・サイズを基準にして,拡大率を百分率で指定します。指定された大きさに該当するフォントが存在しない場合,その大きさよりも小さくて最も近いフォントを選びます。このとき,既存のフォントの高さや幅を 2倍に拡大すると目的のサイズに近いフォントが得られる場合,GSMは倍角文字を 生成します。以下に例を示します。

  1. 縦倍角の例

     CSI 200  ;    100  SP    B 
    

     9/11     3/11      2/0   4/2 
    


    DEC BUILTIN1ファミリで,10ポイント・フォントが現在有効なとき,上記の GSM 命令に続くテキストは10ポイント・フォントが縦に2倍に拡大されたものになります。DEC BUILTIN1 ファミリの10ポイント・フォントでは,10, 10.3, 12, 15cpi (文字/インチ)といった複数のフォントが存在しますが,10cpiが,10ポイントの場合の文字幅100%を意味します。

  2. 横倍角の例1

    CSI 100  ; 200 SP  B 
    


    同じくDEC BUILTIN1ファミリで,10ポイント・フォントが現在有効なとき,上記のGSM命令に続くテキストは10ポイント10cpiフォントが横に2倍に拡大されたものになります。すなわち,5cpiになります。

  3. 横倍角の例2

    CSI 100  ; 140 SP  B 
    


    同じくDEC BUILTIN1ファミリで,10ポイント・フォントが現在有効なとき,上記のGSM命令に続くテキストは10ポイント15cpiフォントが横に2倍に拡大されたものになります。10cpiを100%の文字間隔とすると,ここで指定した文字幅パラメータ140%という値は約7.1cpiになり,このようなフォントは存在しません。そこで7.1cpiより文字幅が小さくて最も近いフォントを探しますが,15cpiフォントの横倍角が7.5cpiですので,このフォントが選ばれます。

  4. 4倍角(縦横倍角)の例

    CSI 200  ; 200 SP  B 
    


    縦も横も2倍に拡大されたものを4倍角といいます。DEC BUILTIN1ファミリで, 10ポイント・フォントが現在有効なとき,上記のGSM命令に続くテキストは10ポイント10cpiフォントが縦横に2倍に拡大されたものになります。

  注意

  1. 倍角はフォント・ローディング命令(DECLFF)によって,ダウンロードされたフォントに対しては無効です。

  2. 倍角をより確実に制御するために,タイプ・サイズ指定命令(GSS)によってフォントを選択してからGSMを用いることをお勧めします。




フォントがタイプ・ファミリで指定されていて,文字ピッチが現在有効なフォントの本来の文字ピッチから決まるのではない時,すなわち文字ピッチが明示的に指定されている時,DEC漢字(2バイト文字セット)は常に1バイト文字セットの半分の文字ピッチで,すなわち倍の文字間隔で出力されます。これがいわゆる全角/半角の文字関係です。

さらに,既存の漢字プリンタとの互換性のために,文字ピッチ指定命令,DECSHORP (Set Horizontal Pitch)に6.38cpiが追加されました。

CSI     Ps      w 

9/11            7/7 

表 2-1 DECSHORPのパラメータ
Ps cpi
0 現在有効なフォントの文字ピッチ
1 10文字/インチ
2 12文字/インチ
3 13.2文字/インチ
4 16.5文字/インチ
5 5文字/インチ
6 6文字/インチ
7 6.6文字/インチ
8 8.25文字/インチ
9 15文字/インチ
10 12.77文字/インチ
11 17.1文字/インチ,または6.38文字/インチ
12 8.55文字/インチ
13 18.0文字/インチ
14 9.0文字/インチ
15 10.3文字/インチ
16 6.38文字/インチ

Psが11のとき,ANSIデータ・タイプでは17.1cpiに,KANJI,KANJI78, LA_KANJIデータ・タイプでは6.38cpiになります。これは漢字LN03等との互換性を維持するための処理です。将来,Psの11はどのデータ・タイプでもすべて 17.1cpiとして解釈されるようになる予定です。6.38cpiを使う場合は, Psを16にしてください。

  注意

  1. ANSI,KANJI,KANJI78データ・タイプでは,フォントがタイプ・ファミリで指定されている状態(初期状態)で文字ピッチの指定をしたときには,ピッチに合わせて最適の大きさのフォントをそのタイプ・ファミリの中から選択しますが,このとき,横倍角のフォントは選択の対象にはなりません。

  2. 文字ピッチ指定命令(DECSHORP)でパラメータ Ps を 0 にするか,またはパラメータを省略した場合,全角文字(2バイト文字)の文字ピッチがテキスト・トランスレータと漢字LN03とで異なります。テキスト・トランスレータはフォントの文字幅をそのまま使用しますが,漢字LN03は全角文字に対して1バイト文字の倍の文字幅を割り当てます。互換性を維持するためには,文字ピッチ指定命令で0以外のパラメータを指定してください。




文字属性指定命令,SGR(Select Graphic Rendition)に反転,網掛けが追加されました。

CSI     Ps    ;     ...;Ps    m 

9/11          3/11            6/13 

表 2-2 SGRのパラメータ
Ps 文字属性
0 すべての属性解除
1 太字(ボールド)
2 細字
3 斜体(イタリック)
4 下線(アンダーライン)
?4 スーパースクリプト(上付き)
?5 サブスクリプト(下付き)
?6 上線(オーバーライン)
7 白黒反転
?7 網掛け
9 消去線(ストライクスルー)
10から19 フォント選択
21 二重下線
22 太字/細字解除
23 斜体解除
24 下線/二重下線解除
?24 スーパースクリプト/サブスクリプト解除
?26 上線解除
27 白黒反転解除
29 消去線解除

  注意

  1. 太字,斜字体,白黒反転を指定した場合,トランスレータは該当する属性を有するフォントがあればそのフォントを選択し,なければ独自のアルゴリズムに従ってその属性を表現します。

  2. 細字は,該当する属性を持つフォントがある場合にのみ有効です。

  3. 複数の属性を同時に有効にして表示することができますが(たとえば,太字の斜体),下線と二重下線,太字と細字およびスーパースクリプトとサブスクリプトは同時に表示することはできません。

  4. 1回のSGRの中で,複数の属性を一度に指定することができますが,網掛けについては,他の属性と同時に指定することはできません。

  5. 網掛け属性の解除には,全属性の解除(パラメータ=0)を用います。

  6. 斜字体と白黒反転,または斜字体と網掛けを同時に使用するときに,文字間隔を詰めると文字の一部が欠けることがあります。文字間隔を十分広くとってください。

  7. フォントのタイプ・サイズが異なるとき,およびスーパースクリプト/サブスクリプトを指定したときには,下線,二重下線,消去線,反転,網掛けは,一般にずれます (つながりません)。タイプ・サイズが同じでも,タイプ・ファミリが異なると同様にずれることがあります。

  8. 白黒反転を下線または二重下線と同時に指定した場合,一般に下線,二重下線は見えなくなります。


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