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OpenVMS マニュアル


 

OpenVMSドキュメント
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目次
まえがき
第1章:システム構成の概要
第2章:ビジネス要件とアプリケーション要件の決定
第3章:システムの選択
第4章:インターコネクトの選択
第5章:ストレージ・サブシステムの選択
第6章:SCSI と Fibre Channel ストレージに対するマルチパスの構成
第7章:ストレージ・インターコネクトとしての Fibre Channel の構成
第8章:可用性を目的とした OpenVMS Cluster の構成
第9章:スケーラビリティを目的とした OpenVMS Cluster の構成
第10章:システム管理の手法
付録A :インターコネクトとしての SCSI
付録B :MEMORY CHANNEL 技術概要
付録C :マルチサイト OpenVMS Cluster
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HP OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


目次 索引

第 8 章
可用性を目的とした OpenVMS Cluster の構成

可用性 (Availability) とは,コンピューティング・システムがアプリケーション・サービスを提供する時間の比率です。OpenVMS Cluster のさまざまな特長を活かせば,ディザスタ・トレランスをはじめ,さまざまなレベルの可用性に OpenVMS Cluster システムを構成できます。

この章では,高い可用性を備えた OpenVMS Cluster システムを構築するための方法や最適な構成例を紹介します。これらの方法や構成例は,可用性の要件ごとの設定やトレードオフの選択に役立ててください。

8.1 可用性の要件

OpenVMS Cluster システムは要求に応じてさまざまなレベルの可用性に構成できます。 表 8-1 は,そのような可用性レベルの主な分類を示したものです。

表 8-1 可用性の要件
可用性の要件 説明
一般の用途 システムやアプリケーションが利用できなくてもほとんど,あるいはまったく影響なしで待機できるビジネス向け。
24 x 365 重要時間帯のみならず年間を通してほとんどの業務時間帯は,途切れることのないコンピューティング・サービスが必要なビジネス向け。最小限のダウン・タイムはあっても構わない。
ディザスタ・トレラント 可用性の要件が厳しいビジネス向け。このようなビジネスでは,地震,洪水,停電などに対する対策が必要となる。



8.2 OpenVMS Clusterによる可用性の提供方法

OpenVMS Cluster システムでは,以下の方式により可用性を強化しています。

  • 複数のシステムでリソース・アクセスを共用できる高度な統合環境

  • 主要ハードウェア構成要素の冗長性

  • ハードウェア構成要素間のフェールオーバのソフトウェア・サポート

  • 高い可用性をサポートするソフトウェア製品



8.2.1 ストレージ領域までの共用アクセス

OpenVMS Cluster 環境では,複数のシステム上のユーザとアプリケーションが,ストレージ・デバイスとファイルを透過的に共用できます。システムのどれかをシャット・ダウンしてもユーザは共用ファイルとデバイスに引き続きアクセスできます。ストレージ・デバイスの共用方法には,以下の 2 通りがあります。

  • 直接アクセス
    ディスク・ストレージ・サブシステムとテープ・ストレージ・サブシステムを,ノードではなくインターコネクトに接続します。これにより,インターコネクトに接続されたすべてのノードがストレージ・システムまでのアクセスを共用できます。システムにシャットダウンや障害が発生しても他のシステムはストレージ領域にアクセスできます。

  • 他ノードのサービスによるアクセス
    ノードに接続されたストレージ・デバイスは,OpenVMS Cluster 内の他のノードのサービスを受けることができます。MSCP サーバ・ソフトウェアと TMSCP サーバ・ソフトウェアを利用すれば,すべての OpenVMS Cluster メンバがローカル・デバイスにアクセスできます。ただし,サービス元のノードにシャットダウンや障害が発生すると,他のノードにおけるストレージのアクセス機能に影響が出ます。



8.2.2 構成要素の冗長性

OpenVMS Cluster システムでは,以下の構成要素をはじめ,多くの構成要素に冗長性を設定できます。

  • システム

  • インターコネクト

  • アダプタ

  • ストレージ・デバイスとデータ

冗長構成要素を利用すれば,構成要素のどれかに障害が発生しても,ユーザやアプリケーションは別の構成要素を利用できます。

8.2.3 フェールオーバの仕組み

OpenVMS Cluster システムには,OpenVMS Cluster のどこかで障害が発生しても,それを回復できるフェールオーバのメカニズムがあります。 表 8-2 は,これらのメカニズムとそれによる回復レベルをまとめたものです。

表 8-2 フェールオーバのメカニズム
メカニズム フェールオーバ時の動作 回復方法
DECnet--Plus クラスタ・エイリアス ノードに障害が発生すると, OpenVMS Cluster ソフトウェアは新しい着信接続を他のノードに分散します。 手動。障害の発生したノードにログインするユーザは,残りのノードに再接続できます。

この方式に合わせて構成したアプリケーションでは自動処理。その場合,アプリケーションはクラスタ・エイリアス・ノード名で再接続し,その接続は残りのノードのどれかに直結されます。

I/O パス ストレージ・デバイスまでの冗長パスにより,パスのどれかに障害が発生しても OpenVMS Cluster ソフトウェアは,機能している作業パスがあれば,そこにフェールオーバします。 他の作業パスがあれば透過的
インターコネクト 冗長または複合インターコネクトにより, OpenVMS Cluster ソフトウェアは最速の作業パスを利用して他の OpenVMS Cluster メンバに接続します。インターコネクト・パスのどれかに障害が発生しても,機能している作業パスがあれば,そこにフェールオーバします。 透過的
ブート・サーバとディスク・サーバ 少なくとも 2 個のノードをブート・サーバとディスク・サーバに構成すると,サーバのどれかがシャット・ダウンしたり障害を起しても,引き続きサテライトからブートしたり,ディスクにアクセスできます。

ブート・サーバに障害が発生しても,MSCP サービス対象のディスクにアクセスできる代替パスがあれば影響はありません。

自動
ターミナル・サーバと LAT ソフトウェア ターミナルとプリンタをターミナル・サーバに接続します。ノードに障害が発生すると,LAT ソフトウェアは残ったノードのどれかに自動的に接続します。また,ユーザ・プロセスが LAT ターミナル・セッションから切り離されても,LAT セッションに再接続するとき,切り離されたセッションに LAT ソフトウェアが自動的に再接続します。

手動。ターミナル・ユーザが,障害の発生したノードにログインするには,残ったノードにログインしてアプリケーションを再起動する必要があります。
汎用バッチとプリント・キュー 汎用キューをセットアップすれば, 1 つ以上のノード上の (処理が発生した) 実行キューにジョブをフィードできます。ノードのどれかに障害が発生すると,汎用キューは,残ったノード上の実行キューにジョブを発行します。また,/RESTART 修飾子で発行されたバッチ・ジョブは,残ったノードのどれかで自動的に再起動します。

ディスパッチを待機中のジョブには透過的

障害の発生したノードで実行中のジョブには自動的,または手動

自動起動バッチとプリント・キュー フェールオーバ・リストで,実行キューを自動起動キューとしてセットアップすれば,可用性をフルに活用できます。ノードに障害が発生すると,自動起動キューとそのジョブがフェールオーバ・リストの次の論理ノードに自動的にフェールオーバし,別のノードで処理を続行します。自動起動キューは,ターミナル・サーバに接続されたプリンタに送信されたプリント・キューに特に適しています。 透過的

関連項目: クラスタ・エイリアス,汎用キュー,自動起動キューについては,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。

8.2.4 関連ソフトウェア製品

表 8-3 は,HP が可用性を強化するために提供しているさまざまな関連 OpenVMS Cluster ソフトウェア製品です。

表 8-3 可用性を強化する製品
製品 説明
Availability Manager 複数ノードのデータを同時に収集,解析し,すべての出力を一元された DECwindows 表示に送信します。解析時に可用性の問題を検出し,対処方法を提示します。
RTR 分散環境においてスケーラビリティと位置透過性を備えた連続的で耐障害性のあるトランザクション転送サービスを提供します。実行中のトランザクションは 2 フェーズのコミット・プロトコルにより保証され,データベースは全体に分配することが可能であるとともに,性能の改善のために分割することができます。
Volume Shadowing for OpenVMS OpenVMS Cluster システム上の任意のディスクを,そのOpenVMS Cluster システム内にある他の同じサイズ (同じ物理ブロック数) のディスクとで冗長構成にします。



8.3 高い可用性を備えた OpenVMS Cluster 構成の実現手法

選択するハードウェアとその構成方法は,OpenVMS Cluster システムの可用性に重要な影響があります。この節では,可用性強化を目的とした OpenVMS Cluster 構成設計の基本手法を説明します。

8.3.1 可用性の強化手法

表 8-4 は,高可用性 OpenVMS Cluster の構成方法をまとめたものです。これらの方法は,重要度の高い順に並んでいます。以下の方法のうち多くは,この章で紹介する最適構成の例で取り上げています。

表 8-4 可用性の強化手法
強化手法 説明
単一点障害 (Single point of failure (単一機器の障害がシステム全体の障害になる))の要因を排除 構成要素に冗長性を与え,ある構成要素に障害が発生しても他の構成要素で対応します。
システム・ディスクのシャドウ化 システム・ディスクは,ノード操作にきわめて重要です。Volume Shadowing for OpenVMS で,システム・ディスクを冗長化できます。
基本データ・ディスクのシャドウ化 Volume Shadowing for OpenVMS でデータ・ディスクを冗長化してデータの可用性を強化します。
ストレージ領域までの共用直接アクセスを提供 可能な場合,すべてのノードにストレージ領域の共用直接アクセスを与えます。これにより,ストレージ領域へのアクセス時に MSCP サーバ・ノードに対する依存度を緩和できます。
環境上のリスクを最小化 以下の手順により,環境上の問題のリスクを最小限に抑えます。

  • 一時的な停電に備え,通常電源を代行するシステムを発電機か無停電電力系統 (UPS) に用意する。

  • 1 つのユニットに障害が発生してもシステム機器の使用に支障が発生しないよう,補助エアコン装置を設置する。

最低 3 ノードを構成 OpenVMS Cluster ノードには,操作を続行するための定足数が定められています。最適構成では,最低 3 ノードを使用し,どれか 1 ノードが使用できなくなっても,残り 2 ノードで定足数を満たして処理を続行します。

関連項目: 定足数の実現手法の詳細については, 第 10.5 節 と『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。

予備キャパシティを構成 構成要素ごとに,キャパシティの処理に必要な数に加え,少なくとも 1 つは予備の構成要素を構成します。構成要素の使用パーセンテージは,キャパシティの 80% 未満になるようにします。重要な構成要素については,リソースの使用パーセンテージがキャパシティの 80% を 十分に下まわるように構成します。これは構成要素のどれかに障害が発生しても残りの構成要素に余裕をもって作業負荷を分散するためです。
予備構成要素をスタンバイ 構成要素ごとに,予備構成要素を 1 つまたは 2 つ用意しておき,構成要素の障害発生に備えます。予備構成要素は定期的にチェックして正しく機能するか確認します。予備構成要素を 1 つまたは 2 つを超えて用意しても複雑になるだけでなく,必要なときに予備構成要素が正しく機能しなくなる可能性も高くなります。
共通環境ノードの使用 似たようなサイズ,パフォーマンスのノードを構成してフェールオーバ時のキャパシティの過剰負荷を避けます。サイズの大きなノードに障害が発生すると,サイズの小さいノードでは転化された負荷に対応できないことがあります。それによるボトルネックで OpenVMS Cluster のパフォーマンスが低下することがあります。
信頼性の高いハードウェアを使用 ハードウェア・デバイスの障害の可能性を考慮します。MTBF (平均故障間隔) に関する製品の記述を確認してください。一般に,テクノロジが新しいほど信頼性が高くなります。



8.4 高い可用性を備えた OpenVMS Cluster の保守

可用性の強化プロセスは現在進行中です。OpenVMS Cluster システムの管理方法は,その構成方法と同様に重要です。この節では,OpenVMS Cluster 構成の可用性の保守の方法を紹介します。

8.4.1 可用性の保守の手法

初期構成のセットアップ後, 表 8-5 の方法に従って,OpenVMS Cluster システムの可用性を保守します。

表 8-5 可用性の保守手法
方法 説明
フェールオーバ方法の計画 OpenVMS Cluster システムでは,ハードウェア構成要素間のフェールオーバをソフトウェア・サポートします。どのようなフェールオーバ機能があり,またニーズに応じたカスタマイズができるのはどれなのか,よく確認してください。障害時に回復すべき構成要素はどれか,また,フェールオーバで生じた余分な作業負荷に構成要素が対応できるか確認します。

関連項目: 表 8-2 は,OpenVMS Cluster フェールオーバ機能と,それによる回復レベルをまとめたものです。

分散アプリケーションのコーディング OpenVMS Cluster システムの複数のノードでアプリケーションを同時に実行できるようコーディングします。ノードに障害が発生しても,OpenVMS Cluster システムの残ったメンバは利用でき,ディスク,テープ,プリンタ,その他必要な周辺機器のアクセスを維持します。
変更を最小限にする 実行中のノードに対するハードウェアやソフトウェアの変更は,実装する前に,その必要性をよく検討してください。変更する場合は,生産環境で実施する前に,重要度の低い環境でテストします。
サイズと複雑さを抑制 冗長性を実現できたら,構成の要素数と複雑さを抑制してください。構成が簡潔であれば,ハードウェアやソフトウェアによるエラーだけでなく,ユーザやオペレータによるエラーも減ります。
全ノードに同一ポーリング・タイマを設定 OpenVMS Cluster システムの維持管理に使用するポーリング・タイマは,決められたシステム・パラメータで制御します。これらのシステム・パラメータの値は,すべての OpenVMS Cluster メンバ・ノードで同じ値に設定してください。

関連項目: これらのシステム・パラメータの詳細については,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。

管理のための事前対策 システム管理者の熟練度は高いほど適しています。アクセス権限はそれを必要とするユーザやオペレータだけに設定してください。 OpenVMS Cluster システムの管理とセキュリティ保持のポリシーは厳密に定義してください。
AUTOGEN の有効活用 通常の AUTOGEN フィードバックでは,システム・パラメータの設定に影響を与えるリソースの使用法が解析できます。
単独サーバやディスクに対する依存度の抑制 複数のシステムやディスクにデータを分散すれば,システムやディスクによる単一点障害を防げます。
バックアップ・ストラテジの実装 定期的に,そして頻繁にバックアップを実行すれば,障害後にデータを確実に回復できます。この表にある方法のどれも確実なバックアップにはなりません。


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