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OpenVMS マニュアル |
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HP OpenVMS
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目次 | 索引 |
9.6.1 MSCP サービス対象のストレージへのアクセス |
MSCP サーバの機能性は,OpenVMS Cluster にとって大きな利点をもたらします。たとえば,ノードとストレージ間の直接通信が可能になります。そして,MSCP サービスによる I/O はオーバヘッドを引き起こしません。 図 9-11 は,サービス・システムによる特別な処理をパケットが要求する仕組みを簡略化したものです。
図 9-11 直接アクセスと MSCP サービスによるアクセスの比較
図 9-11 で,MSCP サービス対象のパケットは,別のシステムによる "中継"を受けてから宛先に到達します。MSCP サービス対象のパケットが宛先ストレージに対応するシステムに達すると,パケットは直接アクセスの場合と同様の処理を受けます。
大量の MSCP サービスを必要とする OpenVMS Cluster では,I/O パフォーマンスやスケーラビリティが低下します。MSCP サービスによる I/O と直接アクセスによる I/O を比較すると,I/O スループットは,全体で約 20% 低下します。サテライトがそれぞれのローカル・ストレージを OpenVMS Cluster 全体に提供する方式ではなく,少数の大ノードのストレージを多数のサテライトに提供するように構成してください。
9.6.2 ディスク・テクノロジ
ここ数年,CPU による情報処理能力は,I/O サブシステムによるプロセッサに対するデータ提供能力を越えています。その結果,プロセッサが I/O 処理の終了を待機する時間が増えています。
半導体ディスク (SSD),DECram,そして RAID レベル 0 は,処理速度と磁気ディスクのアクセス速度のギャップをとりもつテクノロジです。磁気ディスクのパフォーマンスは,シーク待ち時間と回転待ち時間による制約を受けますが,SSD と DECram はメモリを使用するため,即時アクセスが可能です。
RAID レベル 0 は,1 つのファイルを複数のディスク・ボリュームに分散 (または "ストラインピング") するための技術です。その目的は,アクセス頻度の高いファイルをストライプ・セットにパーティション化し,複数のデバイスに保存することにより,1 つのディスクにボトルネックが発生するのを防ぐことです。この技術では,1 つの I/O を多数のディスクで併行処理することができます。
表 9-5 は,ディスク・テクノロジとその機能をまとめたものです。
ディスク・テクノロジ | 特性 |
---|---|
磁気ディスク | アクセス時間がかかる。
低費用。 複数のインターコネクトで使用可能。 |
半導体ディスク | あらゆる I/O サブシステム・デバイス内で最速のアクセス時間。
書き込み頻度が高いファイルの場合に最高のスループット。 複数のインターコネクトで使用可能。 |
DECram | 中小サイズの I/O 要求で最高のスループット。
揮発性ストレージ領域; 一時読み取り専用ファイルに最適。 Alpha システムや VAX システムで利用可能。 |
RAID レベル 0 | HSD コントローラ,HSJ コントローラ,および HSG コントローラで使用可能。 |
注意: I/O をスケーリングする最も速い方法は,半導体ディスクや DECram に対して共用直接アクセスする場合です。
9.6.3 読み込み/書き込みの比率
I/O をシャドウ・セットに対して行う場合,アプリケーションの読み込み/書き込みの比率が重要です。シャドウ・セットに対する MSCP は,インターコネクト上でコピーされます。
したがって,100% (100/0) 読み込み処理のアプリケーションでは,シャドウイングにより I/O 処理に複数のパスを利用できるため,ボリューム・シャドウイングの恩典を受けることができます。読み込み/書き込みの比率が 50/50 のアプリケーションでは,さらにインターコネクトが活用されます。これは,書き込み処理では,I/O を各シャドウ・メンバに送信する必要があるからです。最も処理速度の遅い I/O を完了するために必要な時間により,遅延が発生する可能性があります。
I/O 読み込み/書き込みの比率は,DCL コマンド MONITOR IO で知ることができます。
9.6.4 I/O サイズ
I/O パケットごとに,プロセッサとメモリにオーバヘッドが生ずるので,I/O を 1 つのパケットにまとめれば,すべての I/O 処理のオーバヘッドを節約することができます。アプリケーションで使用できるパケット・サイズが大きければ,スループットが高くなります。パケット・サイズが小さいとオーバヘッドが大きくなります。
9.6.5 キャッシュ
キャッシュとは,最新のデータや使用頻度の高いデータを,メモリ,コントローラ,またはディスク内のアクセスしやすい場所に保存する技術です。キャッシュは半導体ディスク,DECram,RAID を補完する技術です。特別なコーディングをしなくてもアプリケーションはキャッシュの利点をそのまま利用できます。キャッシュすると, OpenVMS Cluster システム内で構成要素間の I/O 数が減少し,現在の I/O ボトルネックや潜在的な I/O ボトルネックを緩和できます。
表 9-6 は,3 種類のキャッシュ方式をまとめたものです。
キャッシュの種類 | 説明 |
---|---|
ホスト方式 | ホスト・システムのメモリにキャッシュが常駐。ホストからの I/O をサービス。 |
コントローラ方式 | ストレージ・コントローラにキャッシュが常駐。すべてのホストにデータをサービス。 |
ディスク | ディスクに常駐するキャッシュ。 |
ホスト方式のディスク・キャッシュの特長は,コントローラ方式やディスク方式のキャッシュとは異なります。ホスト方式のディスク・キャッシュでは,キャッシュそのものをノード間で共用できません。コントローラ方式やディスク方式のキャッシュは共用できます。これは,共用できるコントローラやディスクにキャッシュがあるためです。
9.6.6 "ホット"・ファイルの管理
"ホット"・ファイルは,システム内でほとんどの処理が発生する場所です。多くの環境でホット・ファイルが存在するのは,全 I/O のおよそ 80% がデータの 20% に集中するためです。つまり, 図 9-12 に示すように,ディスク・ドライブで領域は均等に分散しているのに,転送されるデータの 80% がディスクの 1 個所に集中するためです。
図 9-12 ホット・ファイルの分散
I/O のスケーラビリティを強化するには,管理が不適切だとボトルネックになりかねないホット・ファイルに着目します。この領域の処理は,I/O,MB 単位の転送データ量,キュー深度で表します。
RAID レベル 0 では,1 つのファイルを複数のディスクに分散してホット・ファイルのバランスを調整します。これにより,パフォーマンスに対するホット・ファイルの影響を緩和できます。
ホット・ファイルによる処理の解析には,以下の DCL コマンドを使用します。
ホット状態のディスクやサーバを探すには,MONITOR IO コマンドと MONITOR MSCP コマンドを使用します。
Volume Shadowing for OpenVMS 製品では,複数のディスクにデータのコピーを作成してアプリケーションとエンド・ユーザに対するデータの可用性を強化します。ボリューム・シャドウイングでは,データの冗長性と可用性が高くなるものの,以下の 2 つのレベルで OpenVMS Cluster I/O に影響が生じることがあります。
9.6.7 ボリューム・シャドウイング
要因 | 影響 |
---|---|
物理的な距離 | ホスト方式のボリューム・シャドウイングでは, MSCP サーバからサービスを受けるボリュームも含め,OpenVMS Cluster システム内の任意のデバイスのシャドウイングが可能です。この機能では,長距離通信が可能ですが,MSCP のオーバヘッドも生じます。たとえば,IP を使用する OpenVMS Cluster システムは,500 マイル離れて配置することができます。 Fibre Channel を使用すると,最大 100 km (62 マイル) 離れて設置することができます。距離と MSCP の相関により I/O スループットが低下する場合があります。 |
読み込み/書き込みの比率 | シャドウイングでは,データが複数のボリュームに書き込まれるので,書き込みの激しいアプリケーションでは,シャドウイングをするソフトウェアは,スループットが低下します。これは最も効率よくデータを取り出せるディスク・メンバを選択するからです。 |
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