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OpenVMS マニュアル


 

OpenVMS ドキュメント
ライブラリ

タイトルページ
目次
まえがき
第1章:OpenVMS Cluster システムの管理の概要
第2章:OpenVMS Cluster の概念
第3章:OpenVMS Cluster インターコネクト構成
第4章:OpenVMS Cluster オペレーティング環境
第5章:共用環境の準備
第6章:クラスタ・ストレージ・デバイス
第7章:クラスタ・キューの設定と管理
第8章:OpenVMS Cluster システムの構成
第9章:大規模な OpenVMS Cluster システムの構築
第10章:OpenVMS Cluster システムの保守
付録A :クラスタ・システム・パラメータ
付録B :共通ファイルの作成
付録C :クラスタのトラブルシューティング
付録D :LAN 制御のためのサンプル・プログラム
付録E :LAN 制御のためのサブルーチン
付録F :NISCA プロトコルのトラブルシューティング
付録G :NISCA トランスポート・プロトコル輻輳制御
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OpenVMS Cluster システム


目次 索引



仮想 LAN (VLAN) は,LAN ブロードキャスト・ドメインをより小さなセクションにセグメント化するためのメカニズムです。 IEEE 802.1Q 仕様で VLAN の動作が定義されています。 OpenVNS の実装では,特定の OpenVMS LAN ドライバに IEEE 802.1Q のサポートを追加することで, 1 つの LAN アダプタを使用して, VLAN のタグが付いたパケットを LAN アプリケーションに送ることができるようになっています。

VLAN を使用して以下のことを実行できます。

  • ネットワーク・セキュリティあるいはトラフィック格納の目的でネットワーク上の特定の LAN トラフィックをセグメント化する。

  • VLAN で分離したネットワークを使用してアドレス管理を簡単にする。



OpenVMS では,VLAN は仮想 LAN デバイスを LAN アプリケーションに提示します。仮想 LAN デバイスは,1 つの IEEE 802.1Q タグを物理 LAN デバイスを介した通信に関連付けます。仮想 LAN デバイスは,物理 LAN デバイス上で LAN アプリケーション (SCA,DECnet,TCP/IP,LAT など) を実行する機能を提供し, 図 3-2 に示すようなホスト間通信を可能にします。

  注意
DECnet-Plus および DECnet Phase IV は,VLAN デバイス上で実行するように構成できます。

図 3-2 仮想 LAN


OpenVMS VLAN は,仮想 LAN デバイスを提供する新しいドライバ SYS$VLANDRIVER.EXE を通して実装されています。また既存の LAN ドライバは,VLAN タグを処理できるように変更されています。 LANCP.EXE および LANACP.EXE は,VLAN デバイスの作成および無効化のための機能,および状態情報と構成情報を表示する機能を持つように変更されています。

OpenVMS VLAN サブシステムは,性能に特別に配慮して設計されています。このため,VLAN サポート機能を使用することによる性能の低下はごくわずかです。

VLAN デバイスを構成する際, VLAN デバイスと物理 LAN デバイスとで同じロックメカニズムを共有する点に注意してください。たとえば,OpenVMS クラスタ・プロトコルを物理 LAN デバイスに加えて VLAN デバイスでも実行するのは意義のあることではなく,実際には性能の低下をもたらします。

サポートされる Gigabit および 10-Gb LAN デバイス (10-Gb は Integrity サーバのみ) は, Alpha および Integrity サーバ上で VLAN トラフィックを処理する機能を持っています。

その他に,以下のような VLAN 関連の機能がサポートされます。

  • スイッチのサポート
    VLAN 構成で必要とされるスイッチの要件は, IEEE 802.1Q 仕様に準拠しているという点のみです。スイッチに対する VLAN ユーザ・インタフェースは標準ではありません。このため,スイッチを構成する際,とりわけ異なるスイッチに渡る VLAN を構成する場合は特に注意する必要があります。

  • LAN フェールオーバのサポート
    図 3-3 に, LAN フェールオーバのサポートについて図示しています。

    図 3-3 LAN フェールオーバのサポート



    LAN フェールオーバセットのすべてのメンバが VLAN 対応デバイスの場合, LAN フェールオーバセットをソースとして使用して VLAN デバイスを作成できます。ただし,VLAN デバイスを使用してフェールオーバセットを作成することはできません。

  • サポートされる機能
    VLAN デバイスは,Fast Path,オート・ネゴシエーション,ジャンボフレーム設定などの物理 LAN デバイスがもともと持っている機能を継承します。機能の修正が必要な場合は,もとになっている LAN デバイスを修正する必要があります。

  • 制限事項
    VLAN デバイス経由でのサテライト・ブートはサポートされません。 OpenVMS LAN ブート・ドライバは VLAN サポートのための機能を持っていないため, VLAN デバイスを使用して OpenVMS システムをブートすることはできません。
    現在のところ,OpenVMS では VLAN デバイスの自動構成はサポートしていません。明示的に LANCP コマンドを使用して VLAN デバイスを作成する必要があります。



3.3 Cluster over IP

OpenVMS Version 8.4 で Cluster over IP (Internet Protocol) 機能が追加されています。 Cluster over IP により,業界標準のインターネット・プロトコルを使用して単一の LAN あるいは VLAN セグメントの範囲を越えたクラスタを形成することが可能になります。この機能により耐障害性機能がさらに高まります。

またシステム管理者は,SCACP 管理ユーティリティを使用して,クラスタ通信に IP を使用する OpenVMS クラスタを管理および監視することができます。

LAN 上のクラスタ・プロトコル (SCS,あるいは SCA とも呼ばれる) は,ポートエミュレータ・ドライバ (PEDRIVER) によって提供されます。 PEDRIVER は, 図 3-4 に示すように, LAN とインタフェースをとるのに 802.3 を直接使用するのに加えて UDP (User Datagram Protocol) および IP をクラスタ通信に使用します。 UDP のデータグラム属性は PEDRIVER が備える信頼性の高い配布メカニズムと組み合わされ, 2 つのクラスタ・ノード間の通信で SYSAP (システムレベル・アプリケーション) が使用するクラスタ・メッセージの伝送に使用されます。

Cluster over IP は,従来の LAN ベースの通信に加えて利用できるオプション機能です。ただし,クラスタのノード間にLAN および IP の両方の通信モードが存在する場合は, PEDRIVER は IP ではなく LAN 通信を使用します。

  注意
このドキュメントでは, OpenVMS Cluster over IP と IP Cluster Interconnect (IPCI) という用語はどちらもクラスタ通信に TCP/IP スタックを使用するという意味で使用されます。



Cluster over IP のソリューションは次の 2 つの機能で構成されます。

  • PEDRIVER の UDP プロトコル・サポート

  • ブート時における TCP/IP Services のロードおよび起動

図 3-4 に示すのは Cluster over IP のアーキテクチャです。

図 3-4 IP を使用したクラスタ通信の設計




IP UDP プロトコルを使用するための拡張が PEdriver に対して行なわれています。以下にその内容のいくつかを示します。

  • IP UDP サービスのパケット伝送特性は 802 LAN と同じです。 PEDRIVER は,遅延プロービング,順次メッセージの信頼配信 (再送信),実装データグラム・サービス,そしてクラスタ・トラフィックに適した I/O のブロック転送のための可変バッファ・サイズなどの機能を持つ NISCA のトランスポート層を実現します。

  • カーネル VCI (KVCI) はカーネル・モードです。 TCP/IP Services for HP OpenVMS に対する非常に効率的なインタフェースとして機能します。 PEdriver が OpenVMS LAN ドライバと通信するために使用する VIC インタフェースの変形です。 PEDRIVER は LAN デバイスに対する場合と同じように UDP と接続します。

  • UDP のサポートのために PEDRIVER の再下位層のみが拡張されています。 PEDRIVER の変更は PEDRIVER の上位層に対し透過的です。

  • PEDRIVER に対する IP インタフェースを制御および設定するための管理インタフェース機能を提供します。



IP のみネットワーク環境でもクラスタ通信が利用できるように,クラスタ起動時に TCP/IP スタックをロードしておくことが必要です。この操作を行っても OpenVMS Cluster の既存のクラスタ機能は維持されます。通常のブートシーケンスでは LAN ドライバのロードの後に PEDRIVER のロードが行なわれます。 TCP/IP ドライバは TCP/IP Services が起動されるときにロードされます。 Cluster over IP が有効な場合,LAN,TCP/IP excelets,および PEDRIVER が順番にロードされます。システムが立ち上がると,TELNET や FTP などのその他の TCP/IP コンポーネントを使用するために TCP/IP Services を起動することができます

  注意
TCP/IP ソフトウェアは Cluster over IP を構成する前に構成してください。ネットワークと TCP/IP が適切に構成されているか確認するためには,サブネットの外部にあるノードから PING ユーティリティを使用してネットワークの接続を確認してください。



クラスタ通信に IP を使用するロジカル LAN フェールオーバ・セットを作成する機能により,高い可用性が提供されます。ローカルの LAN カードで障害が発生した場合,ロジカル LAN フェールオーバ・セットで構成された別のインタフェースに切り替えられるためノードは処理を再開することができます。ロジカル LAN フェールオーバ・セットの作成に関する詳細は,『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。 LAN ブリッジにおけるハードウェアの依存性は,情報の伝送に使用される GbE スイッチあるいはルータにより克服されます。

3.3.3 システムの特性

IP インターコネクトを設定しても OpenVMS Cluster の既存の機能は維持されます。 Cluster over IP は次のような特性を持ってます。

  • Cluster over IP は,TCP/IP スタックをインターコネクトとして使用するための新しいハードウェアを必要としません

  • クラスタ通信に UDP プロトコルが使用されます。

  • PEDRIVER は,最も遅延の少ないパスを選択することで IP ネットワークにおける遅延を低減する遅延プロービング機能を持っています。

  • クラスタをリブートせずに新しいバージョンへアップグレードする OpenVMS Cluster のローリング・アップグレード機能はそのまま維持されます。

  • LAN ベースの以前のバージョンの OpenVMS Cluster を実行しているサーバとの相互運用性は確保されます。 Cluster over IP は OpenVMS Version 8.4 でのみ利用できます。このため,IP インターコネクトを必要とするノードがクラスタ内にある場合は,そのクラスタ内のすべてのノードで OpenVMS Version 8.4 と TCP/IP Services Version 5.7 が実行されていなければなりません。

  • ブート時に,LAN,TCP/IP,および PEDRIVER がこの順番で起動されます。

  • PEDRIVER は,2 つのノード間の通信のための IP チャネルを自動的に検知および作成します

  • Cluster over IP 機能は,必要に応じて CLUSTER_CONFIG_LAN.COM を実行することにより有効にできます。

  • クラスタ通信に使用する IP アドレスは,そのインタフェースの静的なプライマリ・アドレスでなければなりません。



3.3.4 ソフトウェア要件

Clusters over IP インターコネクトをサポートするためには下記のソフトウェアが必要です。

  • OpenVMS Integrity Version 8.4 あるいは OpenVMS Alpha Version 8.4

  • HP TCP/IP services for OpenVMS Version 5.7

  注意
Cluster over IP を構成する前に TCP/IP ソフトウェアが構成されていることを確認してください。ネットワークと TCP/IP が適切に構成されていることを確認するためには,サブネットの外部にあるノードから PING ユーティリティを使用してネットワークの接続を確認してください。



IP マルチキャスト・アドレス

PEDRIVER は,LAN 上のクラスタ・メンバの検出に 802 マルチキャストを使用します。 IP マルチキャストを使用する各クラスタは,それぞれのクラスタでユニークな 1 つのマルチキャスト・アドレスを持っています。マルチキャスト・アドレスはキープアライブ・メカニズムにも使用されます。クラスタ通信には Administratively scoped IP multicast address が使用されます。

IP ユニキャスト・アドレス

ネットワークで IP マルチキャストが使用できない場合はユニキャスト・アドレスを使用できます。リモート・ノードがクラスタに参加するためには,そのリモート・ノードの IP アドレスがローカル・ノードの構成ファイルに存在していなければなりません。クラスタ全体で共通の 1 つのファイルにすべての IP アドレスを含めるのが良い方法です。稼動中のシステムの IP ユニキャスト・リストのリフレッシュには $MC SCACP RELOAD が使用できます。

NISCS_USE_UDP SYSGEN パラメータ

このパラメータは Cluster over IP 機能を有効にするために設定します。 PEDRIVER は, IEEE 802.3 に加えて UDP プロトコルをクラスタ通信に使用します。 Cluster over IP を有効にするには, CLUSTER_CONFIG_LAN を使用してこの SYSGEN パラメータを設定します。

UDP ポート番号

UDP ポート番号は CLUSTER_CONFIG_LAN を使用して構成でき,クラスタのすべてのノードで不変の定数です。

  注意
ファイアーウォールなどの標準的なインターネット機能は,クラスタに対して選択されたポート番号をベースに適用されます。



SYS$SYSTEM:PE$IP_CONFIG.DAT と SYS$SYSTEM:TCPIP$CLUSTER.DAT の 2 つの構成ファイルがあります。これらのファイルはブート時にロードされ, Cluster over IP に必要な構成情報を提供します。クラスタ・メンバになるようにノードが構成される際に Cluster over IP が有効であればこれらのファイルが生成されます。

SYS$SYSTEM:PE$IP_CONFIG.DAT には,オプションの IP マルチキャスト・アドレスとそのクラスタのノードの IP ユニキャスト・アドレスが含まれます。同じ IP マルチキャスト・ドメイン内のノードの検出には, IP マルチキャスト・メッセージが使用されます。異なる IP マルチキャスト・ドメインにあるリモート・ノードは, IP ユニキャスト・メッセージ機能を使用してクラスタに参加できます。 SYS$SYSTEM:PE$IP_CONFIG.DAT はクラスタのすべてのノードで共通にすることもできます。

SYS$SYSTEM:TCPIP$CLUSTER.DAT には,クラスタ通信が有効な IP インタフェース名および IP アドレスが含まれます。また,TCP/IP ルーと情報も含まれます。 SYS$SYSTEM:TCPIP$CLUSTER.DAT はクラスタの各ノードで固有のファイルです。

3.3.6 サテライト・ノードのサポート

Integrity サテライト・ノードのサポート

Integrity サーバ・サテライト・ノードは,ブート・サーバが存在するのと同じ LAN 上になければなりません。 Alpha サテライト・ノードは,ディスク・サーバと同じ LAN の存在しなければなりません。

Alpha サテライト・ノードのサポート

Alpha コンソールは,サテライト・システムのネットワーク・ロードに MOP プロトコルを使用します。 MOP プロトコルはルーティングには対応していないため,サテライト・ブート・サーバとそのサーバからブートされるすべてのサテライトは同じ LAN に存在しなければなるません。また,Alpha サテライト・ノードがシステム・ディスクにアクセスするためには,ブート・サーバはクラスタ通信のための LAN デバイスを少なくとも 1 つ持っている必要があります。

3.3.7 ロジカル LAN を使用した高可用構成

ロジカル LAN フェールオーバセットを作成し,そのロジカル LAN フェールオーバ・セットでクラスタ通信に IP を使用すると,高い可用性が得られ NIC 障害に耐えることができます。ローカルの LAN カードで障害が発生してもロジカル LAN フェールオーバ・セットで構成された別のインタフェースに切り替えられるため,ノードは通信し続けることができます。ロジカル LAN フェールオーバ・セットの作成および Cluster over IP の使用についての詳細は,『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。ロジカル LAN フェールオーバの作成および構成方法の例については, 第 8.2.3.5 項 を参照してください。

3.3.8 性能に関するガイドライン

距離が長くなった場合の通信の光速の遅延に比べれば,クラスタ通信のための TCP/IP スタックのオーバーへッドは無視できます。マルチサイト・クラスタでは Cluster over IP 機能が利用できます。より良い性能のためには FASTPATH CPU 構成が推奨されます。 LAN,TCP/IP,および PE デバイスは単一の CPU に存在しなければなりません。 CPU に過度余裕や飽和状態が発生しないようにしてください。

  注意
PPE (Packet Processing Engine) が有効な場合, Fastpath 構成は BG デバイスには適用できません。 BG デバイスは,Cluster over IP が構成されており TCP/IP スタックがロードされている場合,常にプライマリ CPU を使用します。 $SET DEVICE/PREFERRED コマンドを使用して BG デバイスを適当な CPU に移す必要があります。



図 3-5 に,IP をインターコネクトとして使用した OpenVMS Cluster システムの例を示します。 Cluster over IP により,地理的に異なるさまざまな場所にあるノードに接続することができます。同じドメインのノードを探すのには IP マルチキャストを使い,異なるサイトあるいは異なるドメインのノードを探すのには IP ユニキャストが使用されます。 Cluster over IP は, Integrity サーバと Alpha システムで構成された混成アーキテクチャをサポートします。 Lab 1 と Lab 1 は同じ IP マルチキャスト・アドレスを持ち,異なる LAN を使用して接続されています。 Node A と Node B は同じ LAN 内にあり,クラスタ通信には LAN を使用しています。ただし,これらのノードが地理的に分散した別のサイトにあるノードと通信する場合は,クラスタ通信に IP が使用されます。

図 3-5 IP ベースの OpenVMS Cluster 構成



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