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OpenVMS マニュアル


 

OpenVMS ドキュメント
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タイトルページ
目次
まえがき
第1章:OpenVMS Cluster システムの管理の概要
第2章:OpenVMS Cluster の概念
第3章:OpenVMS Cluster インターコネクト構成
第4章:OpenVMS Cluster オペレーティング環境
第5章:共用環境の準備
第6章:クラスタ・ストレージ・デバイス
第7章:クラスタ・キューの設定と管理
第8章:OpenVMS Cluster システムの構成
第9章:大規模な OpenVMS Cluster システムの構築
第10章:OpenVMS Cluster システムの保守
付録A :クラスタ・システム・パラメータ
付録B :共通ファイルの作成
付録C :クラスタのトラブルシューティング
付録D :LAN 制御のためのサンプル・プログラム
付録E :LAN 制御のためのサブルーチン
付録F :NISCA プロトコルのトラブルシューティング
付録G :NISCA トランスポート・プロトコル輻輳制御
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OpenVMS Cluster システム


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TR (transport) ヘッダは,クラスタ・ノード間で SCS データグラムとシーケンス・メッセージを受け渡しするために使用されます。ネットワークのトラブルシューティングにとって重要なフィールドは, TR datagram fields,message acknowledgment, sequence number です。 CC ヘッダと TR ヘッダは同じ領域を使用するため, TR/CC フラグは,チャネルを送信されているメッセージの種類を示します。

図 F-10 は,ネットワークのトラブルシューティングにとって必要な TR ヘッダの部分を示しており, 表 F-11 では,これらのフィールドについて説明しています。

図 F-10 TR ヘッダ


注意: 図 F-10 に示す TR ヘッダは,2 つのノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.4 以上を実行しているときに使用されます。どちらか一方のノードまたは両方のノードがバージョン 1.3 またはそれ以前のバージョンのプロトコルを実行している場合,両方のノードで extended message acknowledgment および extended sequence number フィールドの代わりに message acknowledgment および sequence number フィールドが使用されます。

表 F-11 TR ヘッダのフィールド
フィールド 説明
Datagram flags (ビット <7:0>) トランスポート・データグラムに関する追加情報を提供する。

データグラムの種類の短縮形 完全なデータグラムの種類 機能
0 DATA Packet data ソフトウェアの上位レベルに渡されるデータが格納される。
1 SEQ Sequence flag これがシーケンス・メッセージであり,シーケンス番号が有効な場合は,1 に設定される。
2 予約   0 に設定される。
3 ACK Acknowledgment フィールドが有効であることを確認する。
4 RSVP Reply flag ACK データグラムが直ちに必要なときに設定される。
5 REXMT Retransmission シーケンス・メッセージのすべての再送に対して設定される。
6 予約   0 に設定される。
7 TR/CC フラグ Transport flag 0 に設定される。TR データグラムを示す。

Message acknowledgment ローカル・ノードが受信した最後のシーケンス・メッセージ・セグメントを指定する値。この値より前のすべてのメッセージも確認される。このフィールドは, 1 つまたは両方のノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.3 またはそれ以前のバージョンを実行しているときに使用される。
Extended message acknowledgment ローカル・ノードが最後に受信したシーケンス・メッセージ・セグメントを指定する値。この値より前のすべてのメッセージも確認される。このフィールドは,両方のノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.4 またはそれ以降のバージョンを実行しているときに使用される。
Sequence number ローカル・ノードからデータグラムを送信する順序を指定する値。この値は,このシーケンス・メッセージ・セグメントをリモート・ノードに配布することを保証するために使用される。このフィールドは,どちらか一方または両方のノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.3 またはそれ以前のバージョンを実行しているときに使用される。
Extended sequence number ローカル・ノードからデータグラムが送信される順序を指定する値。この値は,このシーケンス・メッセージ・セグメントをリモート・ノードに確実に配布するために使用される。このフィールドは,両方のノードが NISCA プロトコルのバージョン 1.4 またはそれ以降のバージョンを実行しているときに使用される。



F.9 LAN Protocol Analysis Program の使用

輻輳によって発生するパケットの損失,20 秒未満の断続的なネットワークの中断,バックアップ・ブリッジの問題,断続的に発生するパフォーマンスの問題など,一部の障害は診断が困難です。断続的な障害を診断するには,LAN 分析ツールを使用して, 付録 F.1 節 で説明している NISCA プロトコル・レベルの切り分けとトラブルシューティングが必要です。

現在提供されているさまざまなネットワーク分析ツールを評価する場合, LAN アナライザの比較では,特定の機能が提供されるかどうか確認する必要があります。ここでは,必要な機能について説明します。

F.9.1 1 つの LAN セグメントまたは複数の LAN セグメント

1 つの LAN セグメントに関する問題のトラブルシューティングをする場合も,複数の LAN セグメントに関する問題のトラブルシューティングをする場合も,LAN アナライザは特定のデータ・パターンを切り分けるのに役立つものでなければなりません。定義した固有のパターンと一致するデータを切り分けることができる LAN アナライザを選択してください。LAN ヘッダの後に続くデータ領域のデータ・パターンを定義することができなければなりません ( 付録 F.8.2 項 を参照)。NISCA プロトコルのトラブルシューティングを正しく行うには,LAN アナライザは複数のデータ・パターンを同時に照合できなければなりません。

1 つの LAN セグメントまたは複数の LAN セグメントをトラブルシューティングするには,少なくとも TR ヘッダ内の送信データと再送データを定義し,切り分けなければなりません ( 付録 F.8.6 項 を参照)。さらに,複数の LAN セグメント間で効果的にネットワークのトラブルシューティングを行うには,LAN 分析ツールは以下の機能を備えていなければなりません。

  • 分散イネーブル機能とは,異なる場所で設定された複数の LAN アナライザの同期をとって,LAN 構成を通じて転送されるときに,同じイベントに関する情報を収集できるようにする機能です。

  • 分散コンビネーション・トリガ機能とは,異なる場所で複数の LAN アナライザを自動的に起動して,同じイベントに関する情報を収集できるようにする機能です。

分散イネーブル機能と分散コンビネーション・トリガ機能の目的は,パケットが複数の LAN セグメントを移動するときに,それらのパケットを取り込むことです。この後の節で説明しているこれらの機能の実装では,システム構成で拡張 LAN のすべての LAN セグメントに到達することができるように,マルチキャスト・メッセージが使用されています。分散イネーブル機能と分散コンビネーション・トリガ機能は,複数の LAN セグメント間で異なる場所にある複数の LAN アナライザの同期をとることができる機能を提供することにより,数マイル離れた複数のサイトにまたがる LAN 構成のトラブルシューティングを行うことができます。

F.9.2 複数の LAN セグメント

複数の LAN セグメントのトラブルシューティングを行うには, LAN アナライザはマルチキャスト・パケットを取り込み, LAN アナライザのトリガ機能を動的に有効に設定できなければなりません。以下の説明を参照してください。

手順 操作
1 LAN アナライザ固有の規則に従って,データの取り込みを開始する。 1 つの LAN アナライザだけが LAN で分散イネーブル・マルチキャスト・パケットを送信することが望ましい。パケットはメディア・アクセス制御規則に従って送信しなければならない。
2 分散イネーブル・マルチキャスト・パケットを待機する。パケットを受信したら,分散コンビネーション・トリガ機能を有効に設定する。分散イネーブル・パケットを受信する前に,すべての LAN アナライザはトリガ条件を無視することができなければならない。この機能は,同じイベントを収集することができる複数の LAN アナライザを設定するのに必要である。分散イネーブルを送信する LAN アナライザは,その受信を待機してはならないことに注意しなければならない。
3 明示的な (ユーザ定義) トリガ・イベントまたは分散トリガ・パケットを待機する。LAN アナライザがこれらのトリガのいずれかを受信すると, LAN アナライザはデータの取り込みを停止しなければならない。

いずれかのトリガを受信する前に,LAN アナライザは要求されたデータの取り込みを続行しなければならない。この機能は,複数の LAN アナライザが同じイベントを取り込むことができるようにするのに必要である。

4 トリガされた後,LAN アナライザは分散トリガ機能を完了して,他の LAN アナライザが,すでに発生したイベントに関連するデータの取り込みを停止するようにする。

Hewlett-Packard 社から提供されている HP 4972A LAN Protocol Analyzer は,ここで説明した必要な機能を提供するネットワーク障害分析ツールの一例です。

関連項目: HP 4972A LAN Protocol Analyzer の使用例については, 付録 F.11 節 を参照してください。

F.10 データの切り分け手法

ここでは,LAN 分析ツールを使用して,ノードと LAN アダプタ間で OpenVMS Cluster データを取り込むときに,切り分けなければならないデータの種類について説明します。

F.10.1 すべての OpenVMS Cluster トラフィック

特定の LAN セグメントですべての OpenVMS Cluster トラフィックを切り分けるには,LAN ヘッダにプロトコルの種類として 60--07 が格納されているすべてのパケットを取り込みます。

関連項目: LAN ヘッダの詳細については, 付録 F.8.2 項 も参照してください。

F.10.2 特定の OpenVMS Cluster トラフィック

特定の LAN セグメントで特定のクラスタの OpenVMS Cluster トラフィックを切り分けるには,以下のパケットを取り込みます。

  • LAN ヘッダにプロトコルの種類として 60--07 が格納されているパケット

  • DX ヘッダに,OpenVMS Cluster 固有のクラスタ・グループ番号が格納されているパケット

関連項目: LAN および DX ヘッダの詳細については, 付録 F.8.2 項付録 F.8.4 項 を参照してください。

F.10.3 仮想サーキット (ノード間)・トラフィック

特定の 1 組のノード間の仮想サーキット・トラフィックを切り分けるには,LAN ヘッダに以下の情報が格納されているパケットを取り込みます。

  • プロトコルの種類 60--07

  • 送信先 SCS アドレス

  • 送信元 SCS アドレス

さらに,DX ヘッダから以下の追加情報を取り込むことにより,特定の LAN セグメントへの特定の 1 組のノード間の仮想サーキット・トラフィックを切り分けることもできます。

  • その OpenVMS Cluster 固有のクラスタ・グループ・コード

  • 送信先 SCS トランスポート・アドレス

  • 送信元 SCS トランスポート・アドレス

関連項目: LAN ヘッダと DX ヘッダの詳細については, 付録 F.8.2 項付録 F.8.4 項 を参照してください。

F.10.4 チャネル (LAN アダプタ間)・トラフィック

チャネル情報を切り分けるには,LAN アダプタ間のすべてのチャネルですべてのパケット情報を取り込みます。DX ヘッダには, 1 組の LAN アダプタ間の大量の通信トラフィックを診断するのに役立つ情報が格納されています。LAN ヘッダに以下の情報が格納されているパケットを取り込みます。

  • 送信先 LAN アダプタ・アドレス

  • 送信元 LAN アダプタ・アドレス

ノードは複数の LAN アダプタを使用することができるため,送信元 LAN アドレスと送信先 LAN アドレスを指定しても,そのノードに対するすべてのトラフィックを取り込むことができない可能性があります。したがって,特定のチャネルでのトラフィックを切り分けるには,送信元 LAN アドレスと送信先 LAN アドレスとしてチャネルを指定しなければなりません。

関連項目: LAN ヘッダの詳細については, 付録 F.8.2 項 を参照してください。

F.10.5 チャネル制御トラフィック

チャネル制御トラフィックを切り分けるには,以下の情報が格納されているパケットを取り込みます。

  • LAN ヘッダにプロトコルの種類として 60--07 が格納されているパケット。

  • CC ヘッダ・データグラム・フラグ・バイト (TR/CC フラグ,ビット<7>) が 1 に設定されているパケット

関連項目: LAN ヘッダと CC ヘッダの詳細については, 付録 F.8.2 項付録 F.8.5 項 を参照してください。

F.10.6 トランスポート・データ

トランスポート・データを切り分けるには,以下の情報が格納されているパケットを取り込みます。

  • LAN ヘッダにプロトコルの種類として 60--07 が格納されているパケット

  • TR ヘッダ・データグラム・フラグ・バイト (TR/CC フラグ,ビット <7>) が 0 に設定されているパケット

関連項目: LAN ヘッダと TR ヘッダの詳細については, 付録 F.8.2 項付録 F.8.6 項 を参照してください。

F.11 HP 4972A LAN Protocol Analyzer の設定

Hewlett-Packard 社から提供されている HP 4972A LAN Protocol Analyzer は, 付録 F.9 節 に示したすべての要件を満たすアナライザであるため,ここで特に詳しく説明します。しかし,HP 4972A LAN Protocol Analyzer は LAN ネットワークのトラブルシューティングにとって役立つ製品の一例にすぎません。

注意: この特定の製品をここでは例として採用していますが,この製品を購入しなければならないわけではなく,この製品の購入を特に推奨しているわけでもありません。

ここでは,チャネルの形成と再送の問題に関して,ローカル・エリア OpenVMS Cluster システム・プロトコルのトラブルシューティングを行うために, HP 4972A LAN Protocol Analyzer を設定する例を示します。

F.11.1 チャネルの形成に関する問題の分析

LAN プロトコル・アナライザがある場合,チャネル制御ヘッダに関連するデータを取り込むようにフィルタを設定することができます ( 付録 F.8.5 項 を参照)。

以下のデータグラム・フィールドを使用することにより, LAN アナライザを起動できます。

  • プロトコルの種類を 16 進数の 60--07 に設定

  • 適切なクラスタ・グループ番号

  • TR/CC フラグを 1 に設定

その後,取り込んだデータで HELLO,CCSTART,VERF, VACK データグラムを確認します。CCSTART,VERF,VACK, SOLICIT_SRV データグラムには,CC フラグ・バイトに AUTHORIZE ビット (ビット <4>) がセットされているはずです。さらに,これらのメッセージにはスクランブルされたクラスタ・パスワード (0 以外の登録フィールド) が含まれているはずです。スクランブルされたクラスタ・パスワードとクラスタ・グループ番号は, SYS$SYSTEM:CLUSTER_AUTHORIZE.DAT ファイルの最初の 4 ロングワードにあります。

関連項目: 追加データを切り分ける手法については, 付録 F.10.3 項付録 F.10.5 項 を参照してください。

F.11.2 再送に関する問題の分析

LAN アナライザを使用すると,OpenVMS Cluster システムを移動するときにデータグラムを追跡できます。 表 F-12 を参照してください。

表 F-12 データグラムのトレース
手順 操作
1 以下のデータグラム・フィールドを使用してアナライザを起動する。

  • プロトコルの種類を 60--07 に設定

  • 適切なクラスタ・グループ番号

  • TR/CC フラグを 0 に設定

  • REXMT フラグを 1 に設定

2 分散イネーブル機能を使用して,異なる場所で複数の LAN アナライザが同じイベントを取り込むことができるようにする。LAN アナライザはデータの取り込みを開始し,分散イネーブル・メッセージを待機し,明示的なトリガ・イベントまたは分散トリガ・メッセージを待機しなければならない。起動された後,アナライザは他の LAN アナライザがデータの取り込みを停止するように,分散トリガ機能を完了しなければならない。
3 すべてのデータが取り込まれた後,再送されているデータグラム (REXMT フラグがセットされているデータグラム) のシーケンス番号 (NISCA プロトコル・バージョン 1.3 それ以前のバージョンを実行しているノード) または拡張シーケンス番号 (NISCA プロトコル・バージョン 1.4 またはそれ以降のバージョンを実行しているノード) を確認する。その後,前に取り込んだデータから,以下の属性を持つ別のデータグラムを同じ 2 つのノード間 (必ずしも同じ LAN アダプタである必要はない) で検索する。

  • プロトコルの種類が 60--07 に設定

  • REXMT フラグがセットされているデータグラムと同じ DX ヘッダ

  • TR/CC フラグが 0 に設定

  • REXMT フラグが 0 に設定

  • REXMT フラグがセットされているデータグラムと同じシーケンス番号または拡張シーケンス番号

4 以下の手法は,問題の原因を検索する方法を示している。

状態 対処法
データグラムが壊れているように見える。 LAN アナライザを使用して,送信元ノードに向かってデータグラムが破損した原因を検索する。
データグラムが正しいように見える。 送信先ノードに向かって,データグラムが送信先に到達できることを確認する。
データグラムが LAN セグメント送信先に正常に到着した。 message acknowledgment または extended message acknowledgement フィールドにシーケンス番号 (NISCA プロトコル・バージョン 1.3 またはそれ以前のバージョンを実行しているノード) または拡張シーケンス番号 (NISCA プロトコル・バージョン 1.4 またはそれ以降のバージョンを実行しているノード) が格納されている送信先ノードからの TR パケットを検索する。ACK データグラムには,以下のフィールドが設定されている。

  • プロトコルの種類が 60--07 に設定

  • REXMT フラグがセットされているデータグラムと同じ DX ヘッダ

  • TR/CC フラグが 0 に設定

  • ACK フラグが 1 に設定

確認応答が送信されなかった。またはメッセージを受信してから確認応答を送信するまでに大幅な遅延が発生した。 送信先ノードおよび LAN アダプタに問題がないかどうか確認する。その後,ネットワークで ACK パケットを追跡する。
再送パケットを送信したノードに ACK が戻された。 以下のことを確認する。

  • 再送したノードで LAN データの受信に問題がある。

  • 元のデータグラムのラウンド・トリップ遅延時間が見積り時間切れの値を超えた。

2 番目の可能性は,SDA を使用し,再送されたデータグラムを受信するシステムの仮想サーキット表示の ReRcv フィールドを確認することにより調べることができる。

関連項目: この種類の SDA 表示の例については, 例 F-2 を参照。


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