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この章では,HP OpenVMS オペレーティング・システムのシステム管理ユーティリティやツールについて,その概要を説明します。
本書では,ユーティリティやツールの使い方を各章で作業別に説明します。
たとえば,この章では,システム管理ユーティリティ (SYSMAN) の概要について説明します。
9.12.2 項 「ディスク・クォータの設定」 では,SYSMAN でディスク・クォータを管理する方法について説明します。
『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』 では,SYSMAN でシステム・パラメータを管理する方法について説明します。
システム管理ツールを使用する際には,必要に応じて,
次のマニュアルも参照してください。
-
オンライン・ヘルプ
DCL やシステム管理ユーティリティのコマンドや修飾子について
-
『OpenVMS システム管理 ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』
システム管理ユーティリティのコマンドや修飾子について
-
『OpenVMS DCL ディクショナリ』
DCL のコマンドや修飾子について
この章の内容この章では,次の作業について説明します。
さらに,次の項目について説明します。
システム操作や資源を監視・制御するために,次のソフトウェア・ツールが用意されています。
2.1.1 OpenVMS Management Station | |
OpenVMS Management Station は,OpenVMS システムでアカウント管理タスクを実行するシステム管理者や他のユーザのための,
強力な Microsoft® Windows® 版管理ツールです。
OpenVMS Management Station ソフトウェアがあれば,ユーザは,
複数のシステムにわたる OpenVMS アカウント管理プログラムを包括的に扱うことができます。
1 つのソースから複数のシステムを管理することができます。
OpenVMS Management Station ソフトウェアは,既存のすべての OpenVMS システム管理ユーティリティと共存します。
図 2-1 「OpenVMS Management Station スクリーン例」 は OpenVMS Management Station のスクリーン例です。
OpenVMS Management Station は,アカウント管理に複数のユーティリティを使用しなければならないという問題を解決します。
たとえば,アカウントの作成には,通常,次のステップが必要です。
-
UAF エントリの追加
-
ライト識別子の付与
-
ディレクトリの作成
-
ディスク・クォータの作成
-
ネットワーク代理の付与
以上のステップでは,DCL,Authorize ユーティリティ,SYSMAN ユーティリティの DISKQUOTA コンポーネントを使用する必要があります。
OpenVMS Management Station があれば,
このプロセスを簡単に実行することができます。
OpenVMS Management Station は,次の 2 つのコンポーネントから構成されます。
-
クライアント
PC にインストールして,管理操作の実行に使用する Microsoft Windows 版ソフトウェア。
-
サーバ
このソフトウェアは,管理対象となるすべての OpenVMS システムにインストールする。
ユーザは,サーバとは直接対話することはなく,クライアントが行う。
OpenVMS Management Station のドキュメントMicrosoft Windows のヘルプ・ファイルで,
OpenVMS Management Station の特長,機能,使用方法,使用例について詳しく説明されています。
『OpenVMS Management Station Overview and Release Notes』
には,OpenVMS Management Station の概要が記載されており,
このソフトウェアの使用方法が説明されています。
Alpha または I64 コンピュータ,および PC への OpenVMS Management Station のインストールについては,次のマニュアルを参照してください。
『HP OpenVMS インストレーション・ガイド[翻訳版]』 OpenVMS Management Station を使用すると,管理が必要なシステムを,
システム管理者およびシステム管理者の環境にとって意味のある状態で構成した上で,そのシステム上のユーザ・アカウントを管理することができます。
必要に応じて,複数の OpenVMS システムにわたって,ユーザ・アカウントを簡単に管理することができます。
システムは,ネットワーク内の一部のクラスタや,
建物内のある特定の階の全システム,クラスタおよびクラスタ化されていないノードが混在する構成であっても構いません。
OpenVMS Management Station を使用すると,OpenVMS ユーザ・アカウントをきわめて簡単に管理することができます。
たとえば,複数システム上でアカウントを作成する場合,
OpenVMS Management Station は,
利用者登録ファイル (UAF) エントリの追加,ライト識別子の付与,
OpenVMS ディレクトリの作成,ディスク・クォータの設定,
OpenVMS Mail 特性の設定などの処理を,
アカウントの各インスタンスごとに行います。
OpenVMS Management Station は,次の OpenVMS 資源を管理します。
-
-
RIGHTSLIST.DAT ユーザ・ライト・ファイル
-
-
-
-
OpenVMS メール VMSMAIL_PROFILE.DATA ファイル
OpenVMS Management Station は,次のアカウント管理操作をサポートします。
2.1.2 システム管理用の DCL コマンド | |
ほとんどのシステム管理作業は,
DCL (Digital Command Language) コマンドで行えます。
たとえば,MOUNT という DCL コマンドは,ディスクとテープをシステムに認識させるコマンドです。
システム管理者が使用するほとんどの DCL コマンドには,
特別な特権(OPER 特権など)が必要です。
DCL コマンドの一般的な形式は次のとおりです。
コマンド名 [/ 修飾子 [,...]] [ パラメータ [,...]] [/ 修飾子 [,...]]
コマンドは複数行に渡って入力できます。
コマンド全体を指す場合には,コマンド文字列 という用語を使用します。
コマンド文字列とは,コマンド名,コマンド修飾子,パラメータ,
およびパラメータ修飾子を含む,完全なコマンドの指定を意味します。
個々の DCL コマンドについては,
『OpenVMS DCL ディクショナリ』または DCL ヘルプを参照してください。
DCL コマンドの構文についての詳細は,
『OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。
2.1.3 システム・メッセージ | |
DCL またはユーティリティ内でコマンドが入力されると,システムは実行結果を示すメッセージを戻します。
システム・メッセージ は,次のいずれかを示します。
システム・メッセージを解釈しなければならない場合もあります。
たとえば,警告や異常終了が発生した場合,
どのように回復すればいいのか判断する必要があります。
このような場合には,
Help Message 機能を使用します。
この機能を使用すれば,システム管理者も普通のユーザも,
オンラインで迅速にシステム・メッセージの意味を知ることができます。
Help Message については,
『OpenVMS System Messages: Companion Guide for Help Message Users』
を参照してください。
システム・メッセージについての詳細は,
『OpenVMS System Messages and Recovery Procedures Reference Manual』
を参照してください。
2.1.4 システム管理用の DCL コマンド・プロシージャ | |
コマンド・プロシージャを使用すれば,手順の決まった作業を効率的に行えます。
コマンド・プロシージャ はいくつかの DCL コマンドの入ったファイルのことです。
場合によっては,DCL コマンドが使用するデータも入っています。
コマンド・プロシージャを実行すると,
システムはそのファイルを読み,中に入っているコマンドを実行します。
したがって,いちいちコマンドを会話形式で入力する手間を省けます。
コマンド・プロシージャを作成することによって,手順の決まったシステム管理作業を,ユーザのシステムに合わせて自動化することができます。
頻繁に使用する複数のコマンドを入れておくだけで,
簡単なコマンド・プロシージャができます。
次の例は,GO_WORK.COM というコマンド・プロシージャです。
$ SET DEFAULT [PERRY.WORK]
$ DIRECTORY
$ EXIT
|
@GO_WORK と入力すると,省略時のディレクトリが [PERRY.WORK] になり,
そのディレクトリにあるファイルのリストが表示されます。
複雑なコマンド・プロシージャでは,高度なプログラミング言語の代わりに DCL を使用することができます。
コマンド・プロシージャの作成方法についての詳細は,
『OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。
2.1.4.1 バッチ・モードでのコマンド・プロシージャの実行
コマンド・プロシージャをバッチ・キューに登録することによって,
コマンド・プロシージャをバッチ・モード で実行することができます。
資源が使用可能であれば,システムはバッチ・プロセスを作成し,
コマンド・プロシージャ内のコマンドを実行します。
ただし,会話型ユーザとのシステム資源の競合を避けるため,
通常,バッチ・モードで動作するプロセスの実行優先順位は低くなります。
バッチ・モードでコマンド・プロシージャを実行するのは,
次の理由からです。
-
-
会話型ユーザとのシステム資源の競合を避けるために,
低いスケジューリング優先順位でプロセスを実行する。
-
-
ターミナルにログインしなくても運用を継続できるようにして,
システムの機密保護を高める。
バッチ用コマンド・プロシージャに自分自身を呼び出すコマンドを入れておくと,
ユーザの手を煩わすことなく,繰り返し実行させることができます。
たとえば,ANALYZE/DISK_STRUCTURE ユーティリティでディスクのエラーを報告させるようなバッチ用コマンド・プロシージャを作成するとします。
このコマンド・プロシージャに自分自身を呼び出すコマンドを入れておくと,
このコマンド・プロシージャはスケジューリングされたときに自動的に実行され,
エラーが発生しないかぎり実行が繰り返されます。
次の例は,SYSTEM_DAILY.COM という自分自身を呼び出すコマンド・プロシージャの例です。
$ SET NOON
$! Resubmit this procedure to run again tomorrow.
$!
$ SUBMIT/KEEP/NOPRINT/QUEUE=SYS$BATCH/AFTER="TOMORROW+1:00"/USER=SYSTEM -
SYS$MANAGER:SYSTEM-DAILY.COM;
$!
$! Purge the log files
$ PURGE/KEEP=7 SYS$MANAGER:SYSTEM-DAILY.LOG
$!
$! Analyze public disks
$!
$ ANALYZE/DISK/LIST=SYS$MANAGER:WORK1.LIS; WORK1:
$ ANALYZE/DISK/LIST=SYS$MANAGER:WORK2.LIS; WORK2:
$!
$! Print listings
$!
$ PRINT/QUEUE=SYS$PRINT SYS$MANAGER:WORK1.LIS;,SYS$MANAGER:WORK2.LIS;
$ EXIT
|
2.1.4.2 弊社が提供するシステム管理用コマンド・プロシージャ
OpenVMS オペレーティング・システムには,システム管理用のコマンド・プロシージャがいくつか用意されています。
表 2-1 「システム管理用コマンド・プロシージャ」 に,よく使われるコマンド・プロシージャを示します。
表 2-1 システム管理用コマンド・プロシージャ コマンド・プロシージャ | 機能 |
---|
SYS$SYSTEM:STARTUP.COM | システムのブート時に使用され,
OpenVMS の起動に必要な作業を自動的に実行するコマンド・プロシージャ。
このプロシージャは変更してはならない。 |
SYS$STARTUP:SYSTARTUP_VMS.COM | システムのブート時に,STARTUP.COM が実行するコマンド・プロシージャ。
このコマンド・プロシージャにコマンドを追加しておけば,
ブート時に,システム独自の作業を実行させることができる。 |
SYS$SYSTEM:SHUTDOWN.COM | システムを一定の順序で停止する。 |
SYS$UPDATE:AUTOGEN.COM | システム・パラメータや,
ページ・ファイル,スワップ・ファイル,ダンプ・ファイルのサイズを,
システム構成や作業負荷に見合った値に自動的に設定する。 |
SYS$UPDATE:VMSINSTAL.COM | OpenVMS システムにソフトウェアをインストールする。 |
2.1.5 システム管理ユーティリティ | |
オペレーティング・システムとともに,システム管理作業に役立つシステム管理ユーティリティ も多数用意されています。
システム管理ユーティリティとは,
関連するシステム管理作業をまとめて行うプログラムの総称です。
たとえば,
ディスクやテープをシステムに認識させる MOUNT ユーティリティや,
ファイルを保存または復元する BACKUP ユーティリティなどがあります。
ほとんどのシステム管理ユーティリティでは,
操作を実行するための特別な特権が必要です。
通常,このようなユーティリティは,
省略時の設定ですべての特権を持つ SYSTEM アカウントから実行します。
2.2 項 「SYSTEM アカウントへのログイン」 に,SYSTEM アカウントへのログイン方法が説明されています。
たいていのユーティリティは,
次のコマンド形式で起動することができます。
ただし,MOUNT ユーティリティや ANALYZE/DISK_STRUCTURE ユーティリティなどは,
次に示す DCL コマンドの形式で起動します。
表 2-2 「SYSMAN ユーティリティとツール」 に,
システム管理ユーティリティとその用途を示します。
本書では,これらユーティリティの使用法について説明しています。
ユーティリティ・コマンドとコマンド修飾子については,
『OpenVMS システム管理 ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。
表 2-2 SYSMAN ユーティリティとツール ユーティリティ名 | 用途 |
---|
ACCOUNTING ユーティリティ | 資源使用状況のレポート作成。 |
ACL エディタ | ACL の作成と管理。 |
ANALYZE/DISK_STRUCTURE ユーティリティ | Files-11 構造レベル 1,2,および 5 のディスク・ボリュームの有効性検査と,
エラーおよび矛盾点のレポート作成。
矛盾点の解消にも使用可能。 |
ANALYZE/AUDIT ユーティリティ | システムの機密保護監査ログ・ファイルからの機密保護に関するレポートと要約の作成。
システムが作成する大量の監査情報の意味を理解するのに役立つ。 |
AUTHORIZE ユーティリティ | 既存の利用者登録ファイルとネットワーク登録ファイルに対するレコードの変更,
または新規の登録ファイルの作成。
ライト・データベースの記録の変更にも使用可能。 |
BACKUP ユーティリティ | ファイルやディスク・ボリュームのコピー,保存,復元。 |
BAD ユーティリティ | ブロック・アドレシング可能なデバイスの解析と,
データ格納域として信頼性が低いブロック箇所の記録。 |
CLUE (Crash Log Utility Extractor)[1] | VAX システムで,クラッシュ・ダンプについての情報を得る。 Alpha システムおよび I64 システムでは,SDA (System Dump Analyzer) 機能に CLUE 機能が含まれている[2]。 |
DECevent Event Management ユーティリティ | バイナリ・エラー・ログ・ファイルを,バイナリ形式からテキスト形式へ変換する。
また,分析にも使用される。 |
ELV (ERROR LOG Viewer) ユーティリティ | バイナリ・エラー・ログ・ファイルを,バイナリ形式からテキスト形式へ変換する (最新のツール)。 |
ERF (Error Log Report Formatter) | バイナリ・エラー・ログ・ファイルを,バイナリ形式からテキスト形式へ変換する (一番古いツール)。 |
EXCHANGE ユーティリティ | オペレーティング・システムが認識しない,
非標準の形式で書かれた大容量記憶ボリュームとのデータのやり取り。 |
MSGHLP ユーティリティ | DCL コマンドから返されたシステム・メッセージに関する情報へのアクセス。 |
INSTALL ユーティリティ | 性能の改善またはイメージ特権の強化。 |
LATCP ユーティリティ | OpenVMS ホスト上での LAT ソフトウェアの設定と制御。
LAT ソフトウェアを利用することによって,
複数の遠隔システムにターミナルとプリンタを接続可能にする。 |
ESS$LADCP ユーティリティ[1] | OpenVMS ホスト上でのローカル・エリア・ディスク (LAD)
・ソフトウェアの設定と制御。
LAD ソフトウェアは,InfoServer システムと併用。 |
LMCP ユーティリティ[1] | DECdtm サービスによって使用されるトランザクション・ログの作成と管理。 |
MIME ユーティリティ |
MIME でエンコードしたメール・メッセージの OpenVMS システムでの読み込みと構築。 |
MONITOR ユーティリティ | システム全体の性能の監視。 |
MOUNT ユーティリティ | ディスクまたは磁気テープ・ボリュームを使用可能にする。 |
ネットワーク制御プログラム (NCP) | DECnet ネットワークの設定と制御,監視,テスト。 |
ネットワーク制御言語 (NCL) | DECnet-Plus ネットワークの設定と制御,監視,テスト。 |
Operator Communication Manager(OPCOM) ツール | システム・ユーザとの通信。 |
SYSGEN ユーティリティ | ページ・ファイルとスワップ・ファイル,ダンプ・ファイルの作成とインストールおよび,システム・パラメータの管理。
VAX システムでは,デバイス・ドライバのロードと接続にも使用される[1]。 |
SYSMAN ユーティリティ | システム管理の集中化。
システム管理作業を複数のノードで同時に実行可能。 Alpha システムおよび I64 システムでは,デバイス・ドライバのロードと接続にも使用される[2]。 |
TCP/IP サービス管理制御インタフェース |
TCP/IP サービスの構成と管理。 |
本書では,次のユーティリティについては説明していません。
それぞれ,該当するマニュアルを参照してください。
2.1.6 MGRMENU.COM コマンド・プロシージャ | |
SYS$EXAMPLES:MGRMENU.COM というコマンド・プロシージャは,基本的なシステム管理作業の手助けをするために用意されています。
このプロシージャは,次の作業を行うためのメニューを表示します。
MGRMENU.COM コマンド・プロシージャはそのまま使用することも,必要に応じて変更することもできます。
変更する場合は,SYS$EXAMPLES の元のバージョンが失われることのないよう,SYS$MANAGER などの別のディレクトリにコピーしてから,編集を行ってください。
メニューを表示するためには,次のコマンドを入力します。
システム管理ユーティリティでシステム管理を行うためには,システム管理者のアカウント "SYSTEM" にログインする必要があります。
この作業の実行方法-
コンソール・ターミナルから Return キーを押す。
-
Username: プロンプトに対して,SYSTEM と入力する。
-
Password: プロンプトに対して,パスワードを入力する。
パスワードは,オペレーティング・システムのインストールまたはアップグレード時に設定したものを使用する。
それ以降に変更してあれば,変更したパスワードを使用する。
-
パスワードが入力されると,コンソール・ターミナルにウェルカム・メッセージが表示される。
以前ログインしていれば,最後にログインした時間も表示される。
ログインが完了するとドル記号 ($) プロンプトが表示されし,これ以降コマンドを入力することができる。
例VAX システム:
Username: SYSTEM
Password:
Welcome to OpenVMS VAX Version n.n on node x
Last interactive login on Thursday, 20-FEB-2000 16:41
Last non-interactive login on Friday, 21-FEB-20000 17:06
|
Alpha システム:
Username: SYSTEM
Password:
Welcome to OpenVMS Alpha (TM) Operating System, Version n.n on node x
Last interactive login on Thursday, 20-FEB-2000 16:41
Last non-interactive login on Friday, 21-FEB-2000 17:06
|
I64 システム:
Username: SYSTEM
Password:
Welcome to HP OpenVMS Industry Standard I64 Operating System, Version n.n on node x
Last interactive login on Thursday, 20-FEB-2004 16:41
Last non-interactive login on Friday, 21-FEB-2004 17:06
|
複数のコンピュータを管理する場合,システム管理ユーティリティ (SYSMAN) を使用してシステム管理を集中化することができます。
次の表に,SYSMAN の主な機能とその説明のある箇所を示します。
2.3.1 SYSMAN | |
SYSMAN ユーティリティ は,システム管理を集中化することによって,ノードや OpenVMS Cluster の管理を 1 カ所から行うためのプログラムです。
SYSMAN を使用すれば,管理する環境をノード単位,ノードのグループ単位,または OpenVMS Cluster 環境単位に定義できます。
そのため,各ノードにログインして,同じような管理作業を何回も繰り返す必要はありません。
このように定義した管理環境を使って,今までと同じシステム管理を,ユーザのローカル・ノードから行うことができます。
つまり,SYSMAN は,ターゲットとなる環境の中のすべてのノードに対して,管理作業を行います。
SYSMAN を実行するためには,次の条件を満たしていなければなりません。
-
-
125 以下のライト (権利) を持つ別個のアカウント,またはライトの総数が適切な範囲になるように,識別子が削除されているアカウントがある。
125 のライトの中には,プロセスのライト・リストが作成されるとき,ログイン中に許可された次の識別子が少なくとも 3 つ含まれる。
-
-
-
プロセスを操作する環境に応じて,少なくとも 1 つの環境識別子。
環境が遠隔ノードに設定されているときに,125 より多くのライト識別子が割り当てられたアカウントから SYSMAN を実行すると,次のエラー・メッセージが表示されます。
SMI-E-RIGHTSLIM, Rights limit exceeded.
|
このライト識別子の制限には,ユーザ登録レコードに関連付けられたライト識別子の他に,少なくとも次の 3 つの識別子が含まれます。
-
-
-
プロセスが動作している環境に応じて,少なくとも 1 つの環境識別子
SYSMAN を実行するには,次のいずれかが必要です。
-
-
ライト識別子の総数が適切な範囲内になるように,
現在のアカウントから削除した十分な数の識別子
SYSMAN は,今までシステム管理に使用されてきたソフトウェア・ツールの大部分を使用します。
たとえば,MOUNT や INITIALIZE などの大部分の DCL コマンドを処理できます。
また,AUTHORIZE や AUTOGEN などの多くのSYSMAN ユーティリティやコマンド・プロシージャも実行できます。
SYSMAN には,次の作業を行う独自のコマンドもあります。
2.3.2 遠隔ノードから SYSMAN コマンドを実行する | |
SYSMAN コマンドを遠隔ノードで実行するためには,該当するノード上で,SMISERVER プロセスが動作している必要があります。
SMISERVER は,遠隔ノードでの SYSMAN コマンドの実行を管理する独立プロセスです。
OpenVMS Cluster の一部であるノードの場合は,通常 SYS$SYSTEM:STARTUP.COM から SMISERVER プロセスを起動します (このとき,ノードの VAXCLUSTER システム・パラメータ値は 1 以上にします)。
OpenVMS Cluster の一部でないノードから SMISERVER プロセスを起動するには,次のコマンド行をサイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャ SYSTARTUP_VMS.COM に入れておきます。
$ @SYS$SYSTEM:STARTUP SMISERVER
|
SYSTARTUP_VMS.COM については,5.2.7 項 「通常の操作を行うための SYSTARTUP_VMS.COM の変更」 を参照してください。
このコマンドを会話形式で入力した場合,システムをリブートせずに SMISERVER プロセスを再起動できます。
2.3.3 SYSMAN 管理環境 | |
SYSMAN を使用するための第 1 歩は,管理環境を定義することです。
管理環境とは,SYSMAN 以降のコマンドが動作する 1 つまたは複数のノードのことです。
省略時の設定において,管理環境は,ローカル・ノード (SYSMAN を実行したノード) です。
しかし,管理環境を次のいずれかに再定義することによって,ローカル以外のノードでもコマンドを実行することができます。
-
-
ユーザが所属する OpenVMS Cluster の一部ノード -
DECnet を介してアクセス可能な非クラスタ・ノード -
-
他の OpenVMS Cluster の一部ノード -
ここでは,図 2-2 「SYSMAN 管理環境例」 を使って管理環境を説明します。
たとえば,ノード21 を管理環境とすることも,また 図 2-2 「SYSMAN 管理環境例」 の任意の 1 つのノード,ノードのグループあるいは OpenVMS Cluster を管理環境とすることもできます。
ノード21 から SYSMAN を実行した場合,ローカル・ノードはノード21 です。
つまり,SYSMAN を起動したときの管理環境ということになります。
この場合,他のすべてのノードは遠隔ノードです。
2.3.4 SYSMAN 管理環境を定義する | |
管理環境の定義には,SYSMAN の SET ENVIRONMENT コマンドを使用します。
環境を再定義するたびに,SYSMAN は新しいコンテキストを表示します。
SHOW ENVIRONMENT コマンドを使用すると,現在の環境を確認できます。
ローカル・ノード以外のノード,あるいはユーザの OpenVMS Cluster のノードで作業を行う場合,そのユーザの環境は非ローカル環境 であるといいます。
機密保護上の理由から,SYSMAN はこの環境の違いを区別します。
たとえば,別のクラスタなどの非ローカル環境を定義しようとすると,SYSMAN からパスワードの入力が求められます。
これは,他のユーザ名でシステムを管理しようとしたときにも同様です。
SET ENVIRONMENT コマンドに /USERNAME 修飾子を使用することによって,自分のユーザ名を変更することができます。
定義した SYSMAN の管理環境は,環境の定義を変更するか,SYSMAN を終了するまで有効です。
DECnet を介してアクセス可能なノードであれば,どのノードも管理環境として定義することができます。
この場合,SET ENVIRONMENT/NODE コマンドを使用します。
次の例では,図 2-2 「SYSMAN 管理環境例」 の図中で NODE 21 にログインしているものと想定しています。
例-
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/NODE=NODE22
%SYSMAN-I-ENV, current command environment:
Individual nodes: NODE22
Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes
|
この例の SET ENVIRONMENT コマンドは,管理環境として NODE22 を定義しています。
ただし,このコマンドは環境としてクラスタ 1 を設定するわけではありません。
-
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/NODE=(NODE23,NODE24,NODE25)
Remote Password:
%SYSMAN-I-ENV, Current Command Environment:
Individual nodes: NODE23,NODE24,NODE25
At least one node is not in local cluster
Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes
|
この例の SET ENVIRONMENT コマンドは,2 つの別のクラスタに属している NODE23,NODE24,および NODE25 のノードのグループを,管理環境として定義しています。
-
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER/NODE=NODE24
Remote Password:
%SYSMAN-I-ENV, current command environment:
Clusterwide on remote cluster NODE24
Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes
SYSMAN> DO SHOW TIME
%SYSMAN-I-OUTPUT, command execution on node NODE24
13-AUG-2000 13:07:54
%SYSMAN-I-OUTPUT, command execution on node NODE25
13-AUG-2000 13:10:28
|
この例の SET ENVIRONMENT コマンドは,NODE24 を含むクラスタ,すなわちクラスタ 2 を管理環境として定義しています。
ユーザの OpenVMS Cluster にいるノードを,ある特定のカテゴリに従って編成する場合 (たとえば,CI ベースのノード,C をインストールしたノードなど),SET ENVIRONMENT/NODE コマンドを使って論理名を定義します。
次の手順に従ってください。
-
次のコマンドをシステム起動時に実行する。
SYS$MANAGER:SYLOGICALS.COM ファイルに入れて,
SYSMAN$NODE_TABLE論理名テーブルを作成する。
$ CREATE/NAME_TABLE/PARENT=LNM$SYSTEM_DIRECTORY SYSMAN$NODE_TABLE
|
-
次のようなコマンドを SYS$MANAGER:SYLOGICALS.COM ファイルに入れて,1 つまたは複数の論理名をノードまたはノード・リストとして定義する。
$ DEFINE CI_NODES NODE21,NODE22,NODE23/TABLE=SYSMAN$NODE_TABLE
|
-
DCL レベルからユーザの SYSMAN 環境を設定する場合,ステップ 2 で定義した論理名を使って SYSMAN 環境を設定する。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/NODE=(CI_NODES)
Remote Password:
%SYSMAN-I-ENV, current command environment:
Individual nodes: NODE21,NODE22,NODE23
At least one node is not in the local cluster.
Username SYSTEM will be used on nonlocal nodes.
|
『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』に説明しているように,デュアル・アーキテクチャ OpenVMS Cluster 中の VAX と Alpha ノードの論理名を定義することもできます。
例次の例では,複数の論理名を定義して管理環境を編成しています。
$ CREATE/NAME_TABLE/PARENT=LNM$SYSTEM_DIRECTORY SYSMAN$NODE_TABLE
$ DEFINE CI_NODES SYS2,SYS8/TABLE=SYSMAN$NODE_TABLE
$ DEFINE C NODE21,NODE22,NODE23/TABLE=SYSMAN$NODE_TABLE
$ DEFINE PASCAL NODE23,NODE18,CI_NODES/TABLE=SYSMAN$NODE_TABLE
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/NODE=(C,PASCAL)
Remote Password:
%SYSMAN-I-ENV, current command environment:
Individual nodes: NODE21,NODE22,NODE23,NODE18,SYS2,SYS8
At least one node is not in the local cluster.
Username SYSTEM will be used on nonlocal nodes.
|
2.3.4.3 OpenVMS Cluster 環境を定義する
OpenVMS Cluster を管理環境として定義する場合には,SET ENVIRONMENT/CLUSTER コマンドを使用します。
SYSMAN で定義可能な OpenVMS Cluster 環境は次のいずれかです。 OpenVMS Cluster 環境 | 定義 |
---|
ローカル | SYSMAN を実行した OpenVMS Cluster |
非ローカル | SYSMAN を実行した OpenVMS Cluster 以外の OpenVMS Cluster |
図 2-2 「SYSMAN 管理環境例」 のように NODE21 だけであった管理環境をクラスタ 1 にまで広げる場合,NODE21 から次のコマンドを入力します。
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER
%SYSMAN-I-ENV, Current Command Environment:
Clusterwide on local cluster
Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes
|
図 2-2 「SYSMAN 管理環境例」 の OpenVMS Cluster 環境の場合,SYSMAN はクラスタ 1 のすべてのノード,すなわち,NODE21,NODE22,NODE23 上でコマンドを実行します。
SYSMAN で非ローカルの OpenVMS Cluster を管理する場合,/NODE 修飾子を使ってクラスタを特定します。
OpenVMS Cluster に別名を定義している場合,/NODE 修飾子にはノード名の代わりに,定義した別名を使用することもできます。
/CLUSTER と /NODE を同時に使用した場合,管理環境は,指定したノードが属するクラスタになります。
たとえば,図 2-2 「SYSMAN 管理環境例」 のクラスタ 2 で管理作業を行う場合,SET ENVIRONMENT コマンドに /CLUSTER 修飾子を付けて,さらに /NODE 修飾子にクラスタ 2 内のノードを指定します。
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER/NODE=NODE24
Remote Password:
%SYSMAN-I-ENV, Current Command Environment:
Clusterwide on remote node NODE24
Username ALEXIS will be used on nonlocal nodes
|
SYSMAN を使って Alpha と VAX ノードが混在する OpenVMS Cluster を管理する方法については,『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』を参照してください。
2.3.5 SYSMAN プロファイル | |
SYSMAN が複数の OpenVMS Cluster にまたがって実行された場合,SYSMAN は実行者の権利,特権,省略時の値を含むプロファイルを作成して,ユーザが特権を持つかどうか調べます。
このプロファイルは,SYSMAN の使用中に特権上の問題が起きた場合,SYSMAN がどのようにプロファイルを決定したかを理解する上で役立ちます。
プロファイルを決定するとき,SYSMAN は次の 3 つの可能性を調べ,必要な処理を行います。
-
共通の SYSUAF と RIGHTSLIST データベースを持つ OpenVMS Cluster が管理環境である場合,SYSMAN は,ローカル・ノードとターゲット・ノードとの間に管理や特権の矛盾がないか調べる。
矛盾があった場合,SYSMAN は,ローカル・ノード上で有効なプロファイルを,ターゲット・ノード上の SMISERVER プロセスに割り当てる。
-
共通の SYSUAF と RIGHTSLIST データベースを持たない OpenVMS Cluster が管理環境である場合,SYSMAN はターゲット・ノード上の SYUAF を調べ,ユーザが特権を持つかどうかを判断する。
特権を持つ場合,SYSMAN はユーザのプロファイルを,ターゲット・ノード上の SYSUAF からターゲット・ノード上の SMISERVER プロセスにコピーする。
-
管理環境にユーザの非ローカルの OpenVMS Cluster のノードが存在する場合,またはユーザがユーザ名を変更したばかりの場合,SYSMAN はパスワードの入力を求める。
正しいパスワードが入力されると,SYSMAN はターゲット・ノード上の SYSUAF を調べ,ユーザが特権を持つかどうかを判断する。
特権を持つ場合,SYSMAN はユーザのプロファイルを,ターゲット・ノード上の SYSUAF からターゲット・ノード上の SMISERVER プロセスにコピーする。
プロファイルには,ログイン・コマンド・プロシージャで設定されたシンボル名,論理名,あらかじめ定義されたターミナル属性,キー定義は含まれません。
ログイン・コマンド・プロシージャで定義された属性を持つ環境は,SYSMAN を実行したローカル・ノードだけです。
2.3.6 SYSMAN プロファイルを変更する | |
SYSMAN 管理プロファイルを変更する場合には,SYSMAN の SET PROFILE コマンドを実行します。
/PRIVILEGES,/DEFAULT,/VERIFY の修飾子を使用すれば,SMISERVER プロセスの次の属性を変更することができます。
変更したプロファイルの内容は,SET PROFILE コマンドで変更する,
環境を再設定する,または SYSMAN を終了するまで有効です。
SET PROFILE は,現在のローカル・プロセスの属性を一時的に変更するコマンドです。
SYSMAN を終了すると,SYSMAN を起動したときに有効であった値に戻ります。
環境の現特権を一時的に変更したい場合には,
SYSMAN の SET PROFILE/PRIVILEGES コマンドを使用します。
ほとんどのシステム管理コマンドには特別な特権が必要です。
このため,管理環境でコマンドを実行するためには,特権を追加しなければならないことがあります。
通常,システム管理者は,すべてのノードで同じ特権を持ちます。
コマンドの実行に必要な特権がない場合,SYSMAN はそのコマンドを実行できず,エラー・メッセージを返します。
例次の例は SYSPRV をユーザの現在の特権の 1 つとしています。
SYSMAN> SET PROFILE/PRIVILEGES=SYSPRV
SYSMAN> SHOW PROFILE
%SYSMAN-I-DEFDIR, Default directory on node NODE21 -- WORK1:[MAEW]
%SYSMAN-I-DEFPRIV, Process privileges on node NODE21 --
TMPMBX
OPER
NETMBX
SYSPRV
|
2.3.6.2 省略時のデバイスとディレクトリを変更する
管理環境におけるユーザのプロセスおよびすべてのサーバ・プロセスに対する省略時のデバイスとディレクトリの指定を変更する場合には,SET PROFILE/DEFAULT コマンドを使用します。
ほとんどの場合,ユーザの UAF レコードに指定された省略時のデバイスとディレクトリは,そのユーザがファイルやサブディレクトリを作成する第 1 レベルのディレクトリです。
SYSMAN は,この省略時のデバイスとディレクトリを使用して,ファイル指定を解決します。
またセッション中に作成されるどのファイルにも,省略時のデバイス名とディレクトリ名が割り当てられます。
しかしながら,実際の作業中には,SYSMAN プロファイルの省略時のデバイスとディレクトリを変更しなければならないこともあります。
たとえば,いくつかのシステム管理ユーティリティのように,省略時のディレクトリが SYS$SYSTEM でなければならないコマンド・プロシージャがディレクトリにある場合です。
例
次の例では,省略時のデバイスとディレクトリを DMA1:[SMITH.COM] に設定しています。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> SET PROFILE/DEFAULT=DMA1:[SMITH.COM]
|
2.3.7 DCL 検証をオンにする | |
DCL 検証をオンに設定する場合には,SET PROFILE/VERIFY コマンドを使用します。
DCL 検証とは,DCL コマンドを実行しながら,コマンド行とデータ行を表示する機能のことです。
省略時の設定では,SYSMAN の DCL 検証はオフです。 例
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> SET PROFILE/VERIFY
|
2.3.8 SYSMAN から DCL コマンドを実行する | |
SYSMAN で DCL コマンドを実行する場合には,DO コマンドを使用します。
SYSMAN の DO コマンドは,OpenVMS Cluster 環境に含まれるすべてのノード上で,DCL コマンド,コマンド・プロシージャ,SYSMAN コマンドを実行します。
OpenVMS Cluster 環境,または複数のノードから構成される環境でコマンドが入力されると,SYSMAN は,入力されたコマンドを順番に,その管理環境内のすべてのノード上で実行します。
SYSMAN は,コマンドが実行されるごとに各ノード名を表示します。
また,そのコマンドが失敗した場合はエラー・メッセージを表示します。
規定のタイムアウト時間内にノードから応答がなかった場合には,まずメッセージを表示してから,その管理環境内の次のノードに進みます。
タイムアウト時間は,SET TIMEOUT コマンドで指定します。
各 DO コマンドは独立したサブプロセスとして動作するので,次の DO コマンドまで前のプロセス・コンテキストが残されることはありません。
したがって,各 DCL コマンド全体を 1 つのコマンド文字列として表す必要があります。
また,入力を求めるプロシージャを実行することはできません。
OpenVMS Cluster 環境の場合,SYSMAN は DO コマンドを順番に,その OpenVMS Cluster のすべてのノード上で実行します。
あるノードでコマンドの実行が終了するか,タイムアウト時間がくると,SYSMAN は同じコマンドを,その管理環境内の次のノードに送信します。
コマンドの実行が不可能なノードについては,エラー・メッセージが返されます。
OpenVMS Cluster の管理のための DO コマンドを使用する方法についての詳細は,『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』を参照してください。
SYSMAN の DO コマンドについての詳細は,『OpenVMS システム管理 ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』も参照してください。
例次の例では,SYSMAN で INSTALL ユーティリティを起動し,ローカル・ノードからコマンドが入力されたとき,OpenVMS Cluster のすべてのノードでファイルが認識されるようにしています。
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER
SYSMAN> SET PROFILE/PRIVILEGE=CMKRNL
SYSMAN> DO INSTALL ADD/OPEN/SHARED WORK4:[CENTRAL]STATSHR
.
.
.
%SYSMAN-I-OUTPUT, Command execution on node NODE21
%SYSMAN-I-OUTPUT, Command execution on node NODE22
|
2.3.9 SYSMAN コマンド・プロシージャを作成する | |
SYSMAN の @ コマンドは,管理環境内のすべてのノード上で SYSMAN コマンド・プロシージャを実行するコマンドです。
例 OpenVMS Cluster ノードごとに現在の日付とシステム時刻を表示する SYSMAN コマンド・プロシージャを作成し実行する例を,次に示します。
$ CREATE TIME.COM
SET ENVIRONMENT/CLUSTER
CONFIGURATION SHOW TIME Ctrl/Z
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> @TIME
%SYSMAN-I-ENV, Current command environment:
Clusterwide on local cluster
Username SYSTEM will be used on nonlocal nodes
System time on node NODE21: 19-JUN-2000 13:32:19.45
System time on node NODE22: 19-JUN-2000 13:32:27.79
System time on node NODE23: 19-JUN-2000 13:32:58.66
SYSMAN>
|
2.3.10 初期設定ファイルで SYSMAN を設定する | |
起動時に SYSMAN に読み込ませるような,初期設定ファイルも作成できます。
このような初期設定ファイルを使用すると,キーの定義や環境の設定などの作業を行うことができます。
SYSMAN 初期設定ファイルの省略時のファイル指定は SYS$LOGIN:SYSMANINI.INI です。
このファイル指定を変更する場合には,ファイルの格納位置を指すように 論理名 SYSMANINI を定義する必要があります。
キー定義を行う初期設定ファイルの例を次に示します。
$ TYPE SYSMANINI.INI
DEFINE/KEY/TERMINATE KP0 "SET ENVIRONMENT/CLUSTER/NODE=(NODE21,NODE22)"
DEFINE/KEY/TERMINATE KP1 "CONFIGURATION SHOW TIME"
DEFINE/KEY/TERMINATE KP2 "SHOW PROFILE"⋮
|
オペレータ通信マネージャ (OPCOM) は,
システム上で,ユーザとオペレータとが通信するためのツールです。
OPCOM を使用すれば,次のことを行うことができます。
2.4.1 OPCOM の理解 | |
こうした OPCOM の働きを図説すると,図 2-3 「オペレータ通信マネージャ (OPCOM)」 のようになります。
OPCOM のコンポーネントOPCOM が使用するコンポーネントは次のとおりです。
OPCOM の省略時の設定
CPCOM の省略時の設定は次のとおりです。
-
OPCOM がすべてのシステムで省略時の設定で起動される。
-
OpenVMS Cluster 環境のワークステーションを除いて,
省略時の設定によりOPA0 がオペレータ・ターミナルとして有効になり,
OPCOM ログ・メッセージが送信される。
ログ・ファイル SYS$MANAGER:OPERATOR.LOG がオープンされる。
また,すべての OPCOM クラスがオペレータ・ターミナルとログ・ファイルの両方で有効となる。
OPA0: をオペレータ・ターミナルとして使用する場合の制御方法については 2.4.4 項 「オペレータ・ターミナルとしての OPA0: の使用制御」 を参照。
また,オペレータ・ログ・ファイルの省略時の状態の指定方法については,
『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』を参照。
OPCOM の使用条件
OPCOM を使用するためには,次の条件が必要です。
-
REPLY コマンドを実行するためには,OPCOM が動作している必要がある。
また,REPLY コマンドの入力は,オペレータ・ターミナルとして割り当てたターミナル・デバイスから行う必要がある。
-
REPLY コマンドを実行するためには,
少なくとも OPER 特権が必要である。
また,オペレータ・ターミナルに他のプロセスがログインしている場合には SHARE 特権,セキュリティ・クラスを管理するためには SECURITY 特権が必要である。
-
バッチまたはスタートアップ・コマンド・プロシージャ内でオペレータ・ターミナルを指定する場合には,
SYS$COMMAND に有効なターミナル・デバイスを割り当てる必要がある。
2.4.2 オペレータ通信マネージャ (OPCOM) の起動 | |
OPCOM REPLY コマンドを実行するためには,OPCOM プロセスが動作している必要があります。
通常,OPCOM プロセスは,使用不可能になっていない限り,
システムのスタートアップ時に自動的に起動されます。
ソフトウェア上の問題でプロセスが異常終了して OPCOM が自動的に起動しない場合は,
ユーザが OPCOM を会話型で起動する必要があります。
OPCOM を起動するには,システム管理者のアカウント (SYSTEM) から次のコマンドを入力します。
$ @SYS$SYSTEM:STARTUP OPCOM
|
ソフトウェアの問題によって OPCOM が異常終了した場合には,
弊社のサポート担当者にご連絡ください。
その場合,SYS$SYSTEM:OPCOM.DMP という名前のプロセス・ダンプ・ファイルを保存してください (OPCOM が異常終了すると,このファイルが作成されます)。
2.4.3 ユーザへのメッセージの送信 | |
ユーザにメッセージをブロードキャストする場合は,
REPLY コマンドを使用します。
REPLY [/修飾子 ...] ["メッセージ"]
例:
$ REPLY/ALL/BELL "Please log off"
|
REPLY では,次の修飾子を使って OPCOM メッセージを制御することができます。
修飾子 | 説明 |
---|
/ALL | システムまたは VMScluster に接続されているすべてのターミナルにメッセージをブロードキャストする。
ターミナルには電源が入っていて,
ブロードキャスト・メッセージを受信できる状態になっている必要がある。 |
/BELL | メッセージを受信したターミナルのベルを 1 回,2 回,または 3 回鳴らす。
ベルを鳴らす回数は使用された修飾子によって異なる。
/ALL,/TERMINAL,/USERNAME は 1 回,/URGENT は 2 回,
/SHUTDOWN は 3 回である。 |
/NODE=(ノード名 [,...]) | ローカル・ノードだけに,または指定されたクラスタ・ノードだけにメッセージをブロードキャストする。 |
/SHUTDOWN | "SHUTDOWN..." から始まるメッセージを送信する。
/BELL 修飾子も使用した場合は,メッセージを受信したターミナルのベルを 3 回鳴らす。 |
/TERMINAL=(ターミナル名 [,...]) | 指定されたターミナルにメッセージをブロードキャストする。 |
/URGENT | "URGENT..." で始まるメッセージを送信する。
/BELL 修飾子も使用した場合は,メッセージを受信したターミナルのベルを 2 回鳴らす。 |
/USERNAME=(ユーザ名 [,...]) | システム (または OpenVMS Cluster) にログインしているユーザが存在するすべてのターミナル,または指定されたユーザのターミナルにメッセージをブロードキャストする。 |
REPLY コマンドについての詳細は,『OpenVMS DCL ディクショナリ』を参照してください。
例次の例は,ノード WLDWND にログインしているすべてのユーザにメッセージを送信する REPLY コマンドの例です。
メッセージの表示とともに,ターミナルのベルが鳴ります。
$ REPLY/ALL/BELL/NODE=WLDWND "Please log off"
|
次の REPLY コマンドは,ターミナル TTC1 からログインしているユーザにメッセージを送信します。
ここでもメッセージの表示とともに,ターミナルのベルが鳴ります。
$ REPLY/BELL/TERMINAL=TTC1: "Your file has completed printing"
|
2.4.4 オペレータ・ターミナルとしての OPA0: の使用制御 | |
省略時の設定では,クラスタ内のワークステーション (クラスタ内の 1 番目のシステム以外のワークステーション) を除き,OPCOM は OPA0: をオペレータ・ターミナルとして有効にします。
OPCOM は,システムがグラフィック・デバイスを備えているかテストすることによって,システムがワークステーションかどうかを調べます。
具体的には,次のようにテストします。
F$DEVICE ("*", "WORKSTATION", "DECW_OUTPUT")
|
SYS$MANAGER:SYLOGICALS.COM 内で次の論理名を定義することで,
オペレータ・ターミナルとしての OPA0: の使用を制限できます。
これはノードがワークステーションであったり,OpenVMS Cluster の一部であるかどうかには関係しません。
論理名 | 機能 |
---|
OPC$OPA0_ENABLE
| TRUE または FALSE で定義する。
TRUE の場合は OPA0: がオペレータ・ターミナルとして有効になる。 |
OPC$OPA0_CLASSES
| オペレータ・クラスが OPA0 に対して有効になるように指定する。
論理名は,使用できるクラスの検索リスト,コンマで区切られたリスト,
この 2 つリストの組み合わせのいずれか。
不正なクラスを指定すると,すべてのクラスが有効となり,スタートアップ時に次のようなメッセージが,システムのコンソールに表示され,OPERATOR.LOG ファイルに記録される。
%%%%%%%%%%% OPCOM 18-MAY-2000 13:28:33.12 %%%%%%%%%%%
"BADCLASS" is not a valid class name in OPC$OPA0_CLASSES
|
正しいオペレータ・クラスについては,2.4.5 項 「オペレータ・ターミナルの指定」を参照。 |
論理名は次にシステムをブートするとき有効になります。
2.4.5 オペレータ・ターミナルの指定 | |
通常,OpenVMS Cluster 環境のワークステーションを除くコンソール・ターミナル (デバイス名 OPA0:) は,
自動的にオペレータ・ターミナルになります。
しかし,オペレータ・ターミナルには任意のターミナルを指定することができます。
また,現在のオペレータ・ターミナル機能を無効にすることもできます。
オペレータ・ターミナル機能を有効にする
ターミナルをオペレータ・ターミナルとして指定する場合は,
そのターミナルから REPLY/ENABLE コマンドを入力します。
次に例を示します。
$ REPLY/ENABLE
$
%%%%%%%%%%% OPCOM 13-JUL-2000 11:30:30.56 %%%%%%%%%%%
Operator _BHAK$FTA20: has been enabled, username SYSTEM
|
バッチ・コマンド・プロシージャまたはスタートアップ・コマンド・プロシージャでオペレータ・ターミナルを指定するためには,
SYS$COMMAND に有効なターミナル・デバイスを割り当てる必要があります。
オペレータ・クラス
コンピュータの環境が非常に大規模な場合,オペレータが何人かいて,
担当している作業がそれぞれ異なることがあります。
このような場合には,
オペレータ・ターミナルが受信および応答するメッセージに対して,
クラスを指定することができます。
クラスを指定するためには,オペレータ・ターミナル機能を有効にするときに,
次の形式を使います。
REPLY/ENABLE=(キーワード [,...])
キーワードは,次の表に示すオペレータ・クラスです。 キーワード (オペレータ・クラス) | 説明 |
---|
CARDS | カード・リーダに送信されたメッセージを表示する。 |
CENTRAL | セントラル・システム・オペレータに送信されたメッセージを表示する。 |
CLUSTER | 接続マネージャから送信された,
OpenVMS Cluster の状態の変化に関するメッセージを表示する。 |
DEVICES | ディスクのマウントに関するメッセージを表示する。 |
DISKS | ディスク・ボリュームのマウントとディスマウントに関するメッセージを表示する。 |
LICENSE | ライセンスにあったメッセージを表示する。 |
NETWORK | ネットワークに関するメッセージを表示する。
ネットワーク・メッセージの出力を禁止するためには,
CENTRAL キーワードも指定する必要がある。 |
OPER1 ~ OPER12 | OPER1 から OPER12 の ID で指定したオペレータに送信されたメッセージを表示する。 |
PRINTER | プリント要求に関するメッセージを表示する。 |
SECURITY | 機密保護イベントに関するメッセージを表示する。
SECURITY 特権が必要。 |
TAPES | テープ・ボリュームのマウントとディスマウントに関するメッセージを表示する。 |
例:
$ REPLY/ENABLE=(PRINTER,OPER3)
|
オペレータ・ターミナル機能を無効にする
オペレータ・ターミナルとして指定したターミナルは,
オペレータがログアウトしてもその働きを失いません。
ターミナルを通常のターミナルに戻すためには (つまりオペレータ・ターミナル機能を無効にするためには),
そのターミナルから REPLY/DISABLE コマンドを入力します。
例次の例では,まず,TTA3 をオペレータ・ターミナルに指定しています。
同時に,このターミナルが,プリンタ,磁気テープ,
およびディスク関連のメッセージと,セントラル・オペレータ宛のメッセージを受信できるようにしています。
その後,テープ関連のメッセージを受信する機能が,TTA3 ターミナルから削除されています。
したがって,現在 TTA3 ターミナルで受信または応答できるメッセージは,プリンタおよびディスク関連のメッセージと,
セントラル・オペレータ宛のメッセージだけです。
$ REPLY/ENABLE=(PRINTER,DISKS,TAPES,CENTRAL)
$
%%%%%%%%%%% OPCOM 13-JUL-2000 11:37:09.52 %%%%%%%%%%%
Operator TTA3 has been enabled, username SYSTEM
$
%%%%%%%%%%% OPCOM 13-JUL-2000 11:37:09.53 %%%%%%%%%%%
Operator status for operator TTA3
CENTRAL, PRINTER, DISKS, TAPES
$ REPLY/DISABLE=TAPES
%%%%%%%%%%% OPCOM 13-JUL-2000 11:37:09.53 %%%%%%%%%%%
Operator status for operator TTA3
CENTRAL, PRINTER, DISKS
$ REPLY/DISABLE
%%%%%%%%%%% OPCOM 13-JUL-2000 11:38:50.68 %%%%%%%%%%%
Operator TTA3 has been disabled, username SYSTEM
|
2.4.6 オペレータへの要求の送信 | |
ユーザの環境に,プリンタの用紙を補充したりテープを交換したりするオペレータがいる場合,REQUEST コマンドを使用してオペレータと通信できます。
次の表に,REQUEST コマンドで使用できる修飾子を示します。
修飾子 | 説明 |
---|
/REPLY | 要求を送って,それに対する応答を求める。
このコマンドで送信した要求には,オペレータが応答を送るべき相手ユーザの識別番号が付けられる。
オペレータからの応答があるまで,ユーザはコマンドを入力できない。 |
/TO=((オペレータ)[,...]) | ユーザの環境が非常に大きな場合,複数のオペレータが異なる作業を担当していることがある。
このような環境においては,
/TO 修飾子を使用して,要求の送信先オペレータを指定することができる。
指定できるオプションは,CARDS,CENTRAL,CLUSTER,
DEVICES,DISKS,NETWORK,OPER1 ~ OPER12,PRINTER,SECURITY,
および TAPES である。 |
DCL の MOUNT/ASSIST や BACKUP/ASSIST コマンドも,
オペレータに要求を送信するコマンドです。
詳細は次の項を参照してください。
例あるオペレータが,
PRINTER クラスが有効になっているターミナルを監視していると仮定します。
次の PRINT コマンドで,
特殊なプリント形式 (/FORM=LETTER) で出力するジョブを発行します。
そして,REQUEST コマンドで,オペレータにメッセージを送信します。
オペレータは要求を完了したら応答を送信します。
応答については,2.4.7 項 「オペレータ要求に対する応答」 で説明します。
$ PRINT/COPIES=2/QUEUE=LQ_PRINT REPORT.OUT/FORM=LETTER
Job REPORT (queue LQA1, entry 401) pending
$ REQUEST/REPLY/TO=PRINTER -
_$ "Have queued job 401 as FORM=LETTER; can you print it?"
%OPCOM-S-OPRNOTIF, operator notified, waiting...10:42:16.10
%OPCOM-S-OPREPLY, AFTER 11:00
19-APR-2000 10:25:32.40, request 3 completed by operator OPA0
|
2.4.7 オペレータ要求に対する応答 | |
オペレータは,REPLY コマンドを使用して,プリンタの用紙の補充や,
テープの交換を依頼したユーザに対して応答することができます。
次の表に,REPLY コマンドで使用できる修飾子を示します。
修飾子 | 説明 |
---|
/ABORT=ID 番号 | ID 番号で指定した要求に対して,その要求がキャンセルされたと通知する。 |
/PENDING=ID 番号 | ID 番号で指定した要求に対して,その要求を完了またはキャンセルするまで,
ユーザはコマンドを入力してはならないと通知する。
このとき,現在のターミナルがオペレータ・ターミナルとして使用できることが前提となる。 |
/STATUS | このコマンドが実行されたターミナルにおいて,有効なクラス名と,
ユーザから発行されたすべての要求を表示する。
このとき,現在のターミナルがオペレータ・ターミナルとして使用できることが前提となる。 |
/TO=ID 番号 | ID 番号で指定した要求に対して,その要求が完了したと通知する。
このとき,現在のターミナルがオペレータ・ターミナルとして使用できることが前提となる。 DCL の MOUNT/ASSIST や BACKUP/ASSIST コマンドも,
オペレータに要求を送信するコマンドである。
詳細は,9.5.3 項 「マウント中のユーザのマウント支援」
および 11.9.1 項 「オペレータ支援の要請」 を参照。 |
磁気テープを扱うオペレータには,
磁気テープ操作専用の修飾子もあります。
詳細は 9.9.2.4 項 「ユーザへのメッセージ返信」 を参照してください。
また,REPLY コマンドとその修飾子についての詳細は,
『OpenVMS DCL ディクショナリ』を参照してください。
例
次の例は,ユーザ ROBINSON が発行した要求番号 5 番に対する REPLY/TO コマンドです。
MOUNT デバイスを DUA4 に切り換えたことをユーザに通知しています。
%%%%%%%%%% OPCOM, 19-APR-2000 10:20:50.39 %%%%%%%%%%%
request 5 from user ROBINSON
Please mount volume GRAPHIC_FILES in device _DUA11:
Shelf 4 - slot B
$ REPLY/TO=5 "SUBSTITUTE DUA4"
|
VAX システムでは,コマンド・プロシージャ SYS$UPDATE:VMSKITBLD.COM を使用すれば,既存のシステム・ディスクのシステム・ファイルを別のディスクにコピーすることができます。
SYS$UPDATE:VMSKITBLD.COM プロジージャに指定できるオプションは次のとおりです。
ディスク | 説明 |
---|
ソース・ディスク | システム・ファイルをコピーする元のディスク。
ソース・ディスクは既存のシステム・ディスクでなくてはならない。 |
ターゲット・ディスク | システム・ファイルを移動する先のディスク。 |
2.5.1 新しいシステム・ディスクの作成 (VAX のみ) | |
新しいシステム・ディスクを作成しなければならないこともあります。
ここでは,既存のシステム・ディスクとして RA81 というディスクが存在すると仮定します。
そして,この RA81 より容量の多い RA90 というディスクを購入し,RA90 のほうをシステム・ディスクとして使用するとします。
このような場合,VMSKITBLD コマンド・プロシージャの BUILD オプションを使用すれば,RA90 に新しいシステム・ディスクを構築できます。
既存のシステム・ディスクがソース・ディスク,新たにシステム・ディスクにするディスクがターゲット・ディスクです。
ターゲット・ディスクのすべての内容を破壊してから,
そこに新しいオペレーティング・システムを構築する場合,
次の手順で BUILD オプションを使用します。
システム・ディスクの作成方法-
ソース・ディスクからオペレーティング・システムを起動していない場合は,
ソース・ディスクからオペレーティング・システムを起動する。
-
SYSTEM アカウントにログインする。
-
ディスクが回転し,オンラインになっていることを確認する。
着脱式のディスクを使用している場合は,忘れずにディスクをドライブに装着する。
-
次のコマンドを入力して VMSKITBLD を起動する。
VMSKITBLD は,オプションの選択を求める。
オプションは 1 つしか選択できない。
* Operation [BUILD,ADD,COPY]?
|
-
BUILD と入力して,Return キーを押す。
VMSKITBLD は,必要な情報の入力を求めるメッセージか,
プロシージャのステータスを報告するメッセージを表示する。
次に,表示されるプロンプトと,それに対する応答を説明する。
-
次のプロンプトに対しては,ソース・ディスク名を入力する。
* Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:):
|
-
次のプロンプトに対しては,ソース・ディスクのトップ・レベルのシステム・ディレクトリを入力する。
* Enter SOURCE disk top level system directory [default = SYS0]:
|
たいていの場合,省略時の値の [SYS0] のままで問題はない。
-
次のプロンプトに対しては,ターゲット・ディスク名を入力する。
* Enter TARGET disk name (ddcu:):
|
-
次のプロンプトに対しては,ターゲット・ディスクのボリューム・ラベルを入力する。
* Enter the TARGET disk's label [default = VAXVMSRL5]:
|
-
次のプロンプトに対しては,トップ・レベルのシステム・ディレクトリを入力する。
* Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]:
|
たいていの場合,省略時の値の [SYS0] のままで問題はない。
-
ターゲット・ディスクを初期化するという警告メッセージが表示される。
ここで,処理を中止するか,そのまま続行するか選択することができる。
The target disk will be initialized.
* Target disk, _DUA0:, ready to be initialized? (Y/N): Y
|
ターゲット・ディスクのすべての内容を破壊してもよければ,
Y を入力して処理を継続する。
ドル記号 ($) プロンプトが表示されると,
システム・ディスクの構築は完了である。
VMSKITBLD は,自動的にターゲット・ディスクをディスマウントする。
この時点でターゲット・ディスクには,
システム・ディスクに必要なすべてのオペレーティング・システム・ファイルが含まれている。
-
新たに作成したディスクは,そのままでは完全なシステム・ディスクではない。
ライト・データベースとネットワーク代理データベースを作成し,
適切なシステム・パラメータを使ってシステムを設定する必要がある (2.5.1.1 項 「システム・ディスクを完成する (VAX のみ)」 参照)。
-
新しいシステム・ディスクを使用する場合は,そのディスクからシステムをリブートする。
例次の例は,VMSKITBLD.COM を使って新しいシステム・ディスクを作成する例です。
この例の VMSKITBLD は,DUA0: ディスクに現在のシステム・ディスクのすべてのファイルをコピーして,
新しいシステムを作成しています。
* Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:): SYS$SYSDEVICE:
* Enter SOURCE disk top level system directory [default = SYS0]:
* Enter TARGET disk name (ddcu:): DUA0:
* Enter the TARGET disk's label [default = VAXVMSRL5]:
* Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]:
The target disk will be initialized.
* Target disk, _DUA0:, ready to be initialized? (Y/N): Y
Target disk, _DUA0:, has been initialized.
%MOUNT-I-MOUNTED, VAXVMSRL5 mounted on _DUA0:
Creating system specific directories ...
Creating cluster common directories ...
Creating SYSGEN files ...
%SYSGEN-I-CREATED, _DUA0:SWAPFILE.SYS;1 created
%SYSGEN-I-CREATED, _DUA0:PAGEFILE.SYS;1 created
%SYSGEN-I-CREATED, _DUA0:SYSDUMP.DMP;1 created
Copying files from source disk ...
Copying DECwindows file from source disk ...
Writing a boot block ...
System disk complete.
$
|
|
2.5.1.1 システム・ディスクを完成する (VAX のみ)
VMSKITBLD の BUILD オプションを使って作成したシステム・ディスクは,
そのままでは完全なシステム・ディスクではありません。
完全なものにするためには,次の手順に従ってください。
-
会話型ブートで,新しいシステム・ディスクをブートする。
会話型ブートについては,使用しているコンピュータ用のインストールおよびアップグレードのためのマニュアルを参照。
-
SYSBOOT> プロンプトに対して USE DEFAULT コマンドを入力して,
システムをブートする。
これによって,すべてのシステム・パラメータに対して省略時の値が使用される。
-
システム上のレイヤード・プロダクトがまだすべてはチューニングされておらず,
このためにシステム起動時にハングが起る可能性のある場合,これらのレイヤード・プロダクトをすべて起動することなくシステムだけを起動することができます。
これには,SYSBOOT> プロンプトに対して SET STARTUP_P1 "MIN" と入力します。
-
CONTINUE コマンドを入力して,ブートを継続する。
-
システムのブートが終了したら,SYSTEM アカウントにログインする。
SYSTEM アカウントのパスワードには,省略時のパスワード MANAGER を使用する。
必ず,このパスワードは変更すること。
-
AUTHORIZE ユーティリティを使用してライト・データベースとネットワーク代理データベースを作成する。
詳細は『OpenVMS システム・セキュリティ・ガイド』を参照。
-
SAVPARAMS フェーズから AUTOGEN を実行して,
システム・パラメータに適切な値を設定する。
このとき,必ず CHECK_FEEDBACK オプションを指定する。
AUTOGEN の実行方法については,
『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』と『OpenVMS システム管理 ユーティリティ・リファレンス・マニュアル(上巻)』
の AUTOGEN ユーティリティの章を参照。
古いシステム・ディスクを使ってリブートする場合は,AUTOGEN を起動するときに終了フェーズとして REBOOT を指定する。
新しいシステム・ディスクを使ってリブートする場合は,
終了フェーズとして SHUTDOWN を指定し,新しいシステム・ディスクを指定してリブートする。
例
SYSBOOT> USE DEFAULT
SYSBOOT> SET STARTUP_P1 "MIN"
SYSBOOT> CONTINUE
⋮
$ SET DEFAULT SYS$COMMON:[SYSEXE]
$ RUN AUTHORIZE
UAF> CREATE/RIGHTS
UAF> CREATE/PROXY
UAF> EXIT
$ @SYS$UPDATE:AUTOGEN SAVPARAMS REBOOT CHECK_FEEDBACK
⋮
|
2.5.2 システム・ファイルの既存のディスクへのコピー (VAX のみ) | |
VMSKITBLD を使用すると,既存ファイルを削除せずに,
オペレーティング・システム・ファイルだけをターゲット・ディスクにコピーすることができます。
たとえば,大量のシステム・ファイルを間違って削除して,
別のシステム・ディスクからそのディスクにシステム・ファイルをコピーする場合に便利です。
この操作を行うためには,オペレーティング・システムが動作し,
かつコピー元にするソース・ディスクがマウントされている必要があります。
VMSKITBLD.COM の COPY オプションを使用した場合,
SYSUAF.DAT やサイト別コマンド・ファイルなど,
ユーザが変更したファイルはコピーされません。
このようなファイルについては,VMSKITBLD は無変更の TEMPLATE バージョンを使用します。
また VMSKITBLD は,システム別ファイルの SWAPFILE.SYS や PAGEFILE.SYS,SYSDUMP.DMP も作成しません。
VMSKITBLD は,ターゲット・ディスク上の元のシステム・ファイルを削除してから,対応する新しいファイルをコピーします。
システム・ファイルのコピー方法-
SYSTEM アカウントにログインする。
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ターゲット・ディスクを適切なドライブに装着する。
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ターゲット・ディスク名を書き留めておく。
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次のコマンドを入力して VMSKITBLD を起動する。
VMSKITBLD は,オプションの選択を求める。
オプションは 1 つしか選択できない。
Operation [BUILD,ADD,COPY]?
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COPY と入力して,Return キーを押す。
VMSKITBLD は,必要な情報の入力を求めるメッセージか,
プロシージャのステータスを報告するメッセージを表示する。
次に,表示されるプロンプトと,それに対する応答を説明する。
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次のプロンプトに対しては,ソース・ディスク名を入力する。
* Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:):
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次のプロンプトに対しては,ソース・ディスクのトップ・レベルのシステム・ディレクトリを入力する。
* Enter SOURCE disk top level system directory [default = SYS0]:
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たいていの場合,省略時の値の [SYS0] のままで問題はない。
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次のプロンプトに対しては,ターゲット・ディスク名を入力する。
* Enter TARGET disk name (ddcu:):
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次のプロンプトに対しては,トップ・レベルのシステム・ディレクトリを入力する。
* Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]:
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たいていの場合,省略時の値の [SYS0] のままで問題はない。
ドル記号 ($) が表示されると,ファイルのコピーとシステム・ディスクの作成は完了である。
VMSKITBLD は,自動的にターゲット・ディスクをディスマウントする。
例
* Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:): SYS$SYSDEVICE:
* Enter SOURCE top level system directory [default = SYS0]:
* Enter TARGET disk name (ddcu:): DUA0:
* Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]:
%DCL-I-ALLOC, _DUA0: allocated
%MOUNT-I-MOUNTED, VAXVMSRL5 mounted on _DUA0:
Copying files from source disk ...
Copying DECwindows files from source disk ...
Writing a boot block ...
System disk complete.
$
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2.5.3 代替システム・ルート・ディレクトリの追加 (VAX のみ) | |
VMSKITBLD の ADD オプションは,ターゲット・システム・ディスクに代替システム・ルート・ディレクトリを作成するためのオプションです。
このオプションを使えば,テスト環境を作成することができます。
このテスト環境では,オペレーティング・システムの現行バージョンの影響を与えずにソフトウェアをテストすることができます。
使用中のシステム・ディスクに ADD オプションを使用することはできません。
ADD オプションは,専用のルート・ディレクトリを作成するだけです。
現在の共通ディレクトリは新しいルートにリンクされます。
代替システム・ルート・ディレクトリの追加方法-
SYSTEM アカウントにログインする。
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システム・ディスクの未使用ブロック数を調べ,
SWAPFILE.SYS,PAGEFILE.SYS,SYSDUMP.DMP などの新しいファイルを格納する空き領域が十分にあることを確認する。
これらのファイルの大きさは,使用しているコンピュータの機種によって異なる。
ページ・ファイル,スワップ・ファイル,
ダンプ・ファイルの大きさの算出方法については,
『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』を参照。
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ターゲット・システム・ディスクがディスマウントされていて,オンラインになっていることを確認する。
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次のコマンドを入力して VMSKITBLD を起動する。
VMSKITBLD は,オプションの選択を求める。
オプションは 1 つしか選択できない。
Operation [BUILD,ADD,COPY]?
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ADD と入力して,Return キーを押す。
VMSKITBLD は,処理の完了に必要な情報の入力を求めるメッセージか,
プロシージャのステータスを報告するメッセージを表示する。
次に,表示されるプロンプトと,それに対する応答を説明する。
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次のプロンプトに対しては,SYS$SYSDEVICE と入力して Return を押す。
* Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:):
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次のプロンプトに対しては,Return を押して,省略時の値を選択する。
* Enter SOURCE disk top level system directory [default = SYS0]:
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次のプロンプトに対しては,ターゲット・ディスク名を入力する。
* Enter TARGET disk name (ddcu:):
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次のプロンプトに対しては,
新しいルート・ディレクトリ指定を入力する。
* Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]:
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SYSE と SYSF ディレクトリは指定しないこと。
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SYSE はスタンドアロン BACKUP 用に予約されている。
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ドル記号 ($) プロンプトが表示されると,
新しいシステム・ルート・ディレクトリの作成が完了である。
VMSKITBLD は,自動的にターゲット・ディスクをディスマウントする。
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ターゲット・ディスクをブートし,AUTOGEN を実行することによって,
新しいシステム・ルートを設定する (2.5.3.1 項 「システム・ルートを設定する (VAX のみ)」 参照)。
例次の例は,ターゲット・ディスク SHEMP$DUA5 に SYSA という名の代替システム・ルート・ディレクトリを作成する例です。
* Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:): SYS$SYSDEVICE:
* Enter SOURCE top level system directory [default = SYS0]:
* Enter TARGET disk name (ddcu:): SHEMP$DUA5:
* Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]: SYSA
%DCL-I-ALLOC, _SHEMP$DUA5: allocated
%MOUNT-I-MOUNTED, VAXVMSRL5 mounted on _SHEMP$DUA5:
Creating system specific directories ...
Creating SYSGEN files ...
%SYSGEN-I-CREATED, _SHEMP$DUA5:SWAPFILE.SYS;1 created
%SYSGEN-I-CREATED, _SHEMP$DUA5:PAGEFILE.SYS;1 created
%SYSGEN-I-CREATED, _SHEMP$DUA5:SYSDUMP.DMP;1 created
System disk complete.
$
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2.5.3.1 システム・ルートを設定する (VAX のみ)
システム・ディスクに対する代替システム・ルート・ディレクトリの追加が終了したら,次の段階として,
そのルートに対してシステム・パラメータを設定する必要があります。
次の手順に従ってください。
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システムをシャットダウンし,コンピュータを停止状態にする。
システムのシャットダウンについては,4.8.1 項 「SHUTDOWN.COM による通常のシャットダウン」 を参照。
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会話型ブートを行う。
会話型ブートについては,使用しているコンピュータ用のアップグレードとインストールのためのマニュアルを参照。
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会話型プロンプト SYSBOOT> に対して,次のコマンドを入力する。
SYSBOOT> USE DEFAULT
SYSBOOT> SET STARTUP_P1 "MIN"
SYSBOOT> CONTINUE
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システムのブートが終了してから,SYSTEM アカウントにログインし,
SAVPARAMS フェーズから AUTOGEN を実行して,システム・パラメータに適切な値を設定する。
古いルート・ディレクトリからリブートする場合は,
AUTOGEN を起動するときに終了フェーズとして REBOOT を指定する。
新しいルート・ディレクトリからリブートする場合は,
終了フェーズとして SHUTDOWN を指定し,手動でリブートする。
AUTOGEN についての詳細は,『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』と 『OpenVMS システム管理 ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』の AUTOGEN ユーティリティの章を参照。
例
SYSBOOT> USE DEFAULT
SYSBOOT> SET STARTUP_P1 "MIN"
SYSBOOT> CONTINUE
⋮
$ @SYS$UPDATE:AUTOGEN SAVPARAMS REBOOT CHECK_FEEDBACK
⋮
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