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HP OpenVMS CIFS Version 1.2 ECO1: 管理者ガイド

第12章 性能に関する注意事項とトラブルシューティング

 

OpenVMSドキュメント・ライブラリ

目次
まえがき
第1章:HP CIFS Server について
第2章:インストールおよび構成
第3章:導入モデル
第4章:Kerberosのサポート
第5章:LDAP統合のサポート
第6章:ユーザーおよびグループのマッピング
第7章:WINBINDのサポート
第8章:ユーザー,グループおよびアカウントのポリシーと信頼の管理
第9章:共有の管理
第10章:ファイルおよび印刷のセキュリティ
第11章:ツール・リファレンス
第12章:性能に関する考慮と問題解決のテクニック
第13章:SMB.CONF パラメータ
付録A:インストールの実行例
索引
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この章では以下のような項目について説明します。

SAMBA$ROOT: ディレクトリ・ツリーがすでにシステム・ディスクでホスティングされている場合は,2.8 項 「SAMBA$ROOT ディレクトリの移動」 で説明する手順に従ってください。

12.2 ディレクトリの一覧表示性能

ディレクトリの一覧表示性能に最も大きな影響を与えるのは,共有レベルの構成パラメータ vms path names の設定です。このパラメータが有効 (デフォルト) になっている場合,ODS-2 および ODS-5 のどちらのボリュームの場合も,HP CIFS Server はディレクトリの一覧表示で性能が改善されます。HP が推奨する場合を除き,vms path names パラメータは無効にしないでください。

12.3 ディスク・ボリュームのチューニング

  1. 書き込み性能を改善するには,次の方法でボリューム・ハイウォータ・マーキングを無効にします。

    1. ボリュームを初期化する際に /NOHIGHWATER_MARKING 修飾子を指定してください。

    2. すでにボリュームが初期化されている場合は,次のようなコマンドを実行してボリュームにハイウォータ・マーキングを設定します。

      SET VOLUME /NOHIGHWATER_MARKING <volumename>

      この設定はボリュームを再マウントするまで有効にはなりません。

  2. ディスク・クラスタ・サイズを 16 の倍数に設定します。この処理は,ディスクを初期化する際にINITIALIZE コマンドの /CLUSTER_SIZE 修飾子を使用することで実行できます。

  3. SAMBA$ROOT:[BIN]SAMBA$SMBD_STARTUP.COM ファイルに次の行を追加します。

    SET RMS_DEFAULT -/EXTEND_QUANTITY=10240/BLOCK_COUNT=n/BUFFER_COUNT=8

    n には次の値を指定します。

    • EVA の場合は124

    • XP の場合は 96

    • その他のディスクの場合は 127

    注記: EXTEND_QUANTITY の値は 16 ブロックの倍数で指定します。
  4. OSD-2 ではなく ODS-5 ボリュームを使用します。

    ODS-5 ボリューム上の可変長あるいは VFC レコード形式 のファイルのファイル・ヘッダには,HP CIFS Server がファイルのデータ・バイト数を認識するのに使用可能な付加的なファイル長ヒント値が含まれています。

    ファイル長ヒント値が存在しない,あるいは有効でない場合,HP CIFS Server は,Windows クライアント上に表示するサイズを確認するためにファイル全体を読み取る必要があります。

12.4 ファイル長ヒント値のアップデート

可変長レコード・フォーマットのファイルのファイル長ヒント値をアップデートするために,定期的に次のコマンドを実行してください。.

@SAMBA$ROOT:[BIN]SAMBA$UPDATEFILEHINTVALUE.COM

詳細は,11.3 項 「VAR あるいは VFC ファイルのヒント値のアップデート」を参照してください。

12.5 CIFS Server ACE

HP CIFS Server V1.2 以降,HP CIFS Server は,Stream あるいは Stream_LF 以外のレコード・フォーマットのファイルのサイズを,そのファイルに保管されているアプリケーション ACE に保管します。有効なファイル長ヒント値を持つ可変長レコード・フォーマットのファイルの場合を除き,このようなファイルを最初に読み取ったときに,HP CIFS Server はファイルの内容全体を読み取ってファイル・サイズを計算します。計算されたファイル・サイズは HP CIFS Server ACE に保管され,ファイルに適用されます。このファイルが変更されなければ,HP CIFS Server はそのファイル上に存在する HP CIFS Server ACE からファイル・サイズを取得します。これにより性能が改善されます。ファイルが変更されるとファイル・サイズが再度計算され,ACE に保管されます。DELETE_ACE ユーティリティはファイル上の HP CIFS Server ACE を削除できますが,特にその必要がなければ,HP CIFS Server ACE を削除しないことをお勧めします。

注記: HP CIFS Server ACE が有効になっている場合,さらに DOS 属性を保管することもできます。

12.6 vms estimate file size パラメータ

特定の OpenVMS ファイル・フォーマットでは,HP CIFS Server は,ファイルのサイズを確認するためにファイルの内容全体を読み取る必要があります。この結果,そのようなファイルが含まれているディレクトリの一覧表示で,期待よりも出力が遅くなる場合があります。以下のファイル・フォーマットを除き,この動作の影響を受けます。

  • Stream あるいは Stream_LF レコード・フォーマットの順編成ファイル (ODS-2 およびODS-5 のどちらのボリュームでも)

  • 固定長レコード・フォーマットで,ファイル・サイズが偶数で,None あるいは Carriage return carriage control のレコード属性の順編成ファイル (ODS-2 および ODS-5 のどちらのボリュームでも)

  • ヘッダに有効なファイル長ヒント値を含む ODS-5 ボリューム上の可変長あるいは VFC レコード・フォーマットの順編成ファイル (印刷属性付きの VFC ファイルを除く)

HP CIFS Server は,計算済のファイル・サイズが保管されたファイル上の APPLICATION ACE を適用するので, この性能の低下は一時的なものになります。それ以降,ファイル・サイズは APPLICATION ACE から取得され,クライアントがファイルを変更すると ACE が更新されます。

ただし,その後にこのファイルが HP CIFS Server 以外の OpenVMS アプリケーションにより変更されると,APPLICATION ACE は無効化され,ファイル・サイズの計算のために HP CIFS Server によるファイル全体の読み取りが再度必要になります。また,そのようなファイルを含むディレクトリの内容が頻繁に変更される場合は,APPLICATION ACE は期待するほどの性能の改善をもたらさない可能性があります。

この問題がいつまでも続く場合は,そのようなファイルのサイズを見積もるための共有を構成すると良いかもしれません。共有パラメータ vms estimate file size の設定が YES でこの機能が有効になっている場合,HP CIFS Server はファイル・ヘッダに含まれている値を使用してこれらのファイルのサイズを見積もり,ディレクトリ一覧表示の性能を大きく改善させます。vms estimate file size 共有パラメータは,個々の共有セクションに含まれるか,あるいは (共有セクションに明示的な vms estimate file size エントリを持たない) すべての共有に適用されるように構成ファイルの [GLOBAL] セクションに置かれます。

クライアントがディレクトリの内容を一覧表示させるときに,そのディレクトリにファイル・サイズの見積もりのために読み取りが必要になるサイズの非常に大きなファイルが 1 つあるいは複数含まれていると,HP CIFS Server がファイル・サイズを確認する間にクライアントがタイムアウトに場合があります。この場合,vms estimate file size を有効にすると,ディレクトリの一覧表示性能を改善させることができます。

警告! ファイル・ヘッダ・データから計算されたサイズは,HP CIFS Server がファイルの内容全体を読み取って計算したサイズよりも常に大きくなります。このため,vms estimate file size パラメータを有効にする場合は,これらのファイルにアクセスするクライアント・アプリケーションが問題なく機能するかどうかを確認するのが良いでしょう。クライアント・アプリケーションが悪影響を受ける場合は,ODS-5 ボリュームへファイルを移動するばど,他の選択肢を検討すべきです。

12.7 vms open file caching パラメータ

HP OpenVMS CIFS V1.2 以降,次のような HP CIFS Server 固有の 2 つの新しい共有構成パラメータが提供されます。

  • vms open file caching

  • vms ofc time interval

vms open file caching 共有パラメータは, HP CIFS Server が提供する Open File Caching (OFC) 機能を制御します。デフォルトでは,この機能は無効です。OFC が有効になっていると,立て続けにオープンとクローズが繰り返されるようなファイルを処理する場合に,HP CIFS の性能が大幅に改善されます。 たとえば,クライアントはログイン・スクリプトなどの DOS バッチ・ファイルをサーバーに保管します。 このファイルにアクセスする最後のクライアントがファイルをクローズした後,ファイルは一定の期間サーバー上でオープンされたままになります。 このキャッシュは,Advanced Server for OpenVMS が使用する OFC に似ています。HP CIFS Server が提供する OFC 機能は,HP CIFS Server 構成ファイルの共有セクションに次のような行を追加することで有効にできます。

vms open file caching = yes

ファイルがキャッシュにオープンし続ける期間は,ミリ秒単位で指定される OFC タイムインターバルによって決まります。OFC タイムインターバルを制御する共有パラメータは vms ofc time interval です。このパラメータのデフォルト値は 5000 ミリ秒です。OFC タイムインターバルのデフォルト値は,HP CIFS Server 構成ファイルの共有セクションに次のような行を追加することで変更できます。たとえば,OFC タイムインターバルとして 1000 ミリ秒を指定する場合は,次のように指定します。

vms ofc time interval = 1000

12.8 Microsoft Distributed File System

Microsoft の Distributed File System (MS DFS) を利用していない場合は,SMB.CONF ファイルの [global] セクションに次のパラメータを追加して,HP CIFS Server における DFS サポートを無効にしてください。これにより,ネットワーク・トラフィックと DFS 関係のエラーの発生を低減できます。

host msdfs = no

注記: MS DFS を無効にした後,既に HP CIFS Server との接続を確立していたクライアントを再起動する必要があるかもしれません。

MS DFS を無効にしておくと,存在しない共有パスを使用してアクセスしようとしたときに発生するクライアント・システムのクラッシュ,あるいはアクセス許可がない場合に発生するクライアント・システムのクラッシュを回避することができます。

12.9 クライアント接続数の構成

サーバーが処理可能なクライアント接続の最大数は,サーバーがサポートするプロセスの最大数(プロセス・エントリ・スロット)によって制限されます。この値は次のコマンドで確認できます。

$ SHOW MEMORY/SLOT

Process Entry Slots パラメータ値の変更方法については,『HP OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。

12.10 不要なデータグラム・パケットの無視

HP CIFS Server の SMB.CONF グロ-バル・パラメータ store dgpacketsno (デフォルト) に設定されている場合,NMBD プロセスは不要なデータグラムを無視します。dgpackets = yes を設定すると,NMBD プロセスは不要なデータグラム・パケットを unexpected.tdb ファイルに書き込むためサイズが大きくなり,NMBD による CPU 消費量が増加する原因となります。HP が推奨する場合以外は,このパラメータの値は yes に設定しないでください。

12.11 TDB データベース・ファイルの最適化

HP CIFS Server は,ファイル名にファイル拡張子 .TDB を含むファイルにデータを保管します。これらのファイルは,一般にTDB ファイルと呼ばれています。HP CIFS Server は,RMS インデックス・ファイルを使用して TDB ファイルをエミュレートします。すべての RMS インデックス・ファイルと同様に,これらのデータベース・ファイルは定期的にメンテナンスや最適化を行なうと恩恵があります。FDL を使用して TDB データベースを分析および最適化する方法について,以降の項で説明します。

12.11.1 FDL ファイル名の処理

TDB ファイルを作成する際,HP CIFS Server は以下の順番で最初に見つけた FDL ファイルを使用します。

  1. SAMBA$ROOT:[LIB]<tdb-filename>.FDL

    パラメータには以下の値を指定します。

    <tdb-filename> には TDB ファイルの名前を指定します。

    たとえば,LOCKING.TDB を作成する際, SAMBA$ROOT:[LIB]LOCKING.FDL ファイルが存在する場合は,HP CIFS Server はこの FDL ファイルを使用して新しい LOCKING.TDB を作成します。

  2. SAMBA$ROOT:[LIB]]GENERIC_TDB.FDL

    このファイルは,HP CIFS Server が TDB ファイルを作成する際に TDB 固有の FDL ファイルが無い場合に使用します。

  3. HP CIFS Server が TDB 固有の FDL ファイルも GENERIC_TDB.FDL ファイルも検出しなかった場合,デフォルトの FDL 値を使用します。

    FDL のデフォルト値の詳細ついては,12.11.3 項を参照してくいださい。

12.11.2 最適化された FDL ファイルの作成

TDB ファイルの性能を改善するために,分析,FDL の最適化,新しい TDB ファイルの作成の 3 段階の手順を実行してください。 データ・ファイルが存在する間この操作を定期的に実行することにより,最適に実行されるファイルが得られます。 得られたファイルは,TDB 固有の FDL ファイルあるいは GENERIC_TDB.FDL ファイルとして使用できます。 これにより,最適化された FDL 値を使用してHP CIFS Server が TDB ファイルを作成できます。 最適化された FDL ファイルの生成手順は以下のとおりです。

  1. データファイルの分析

    ANALYZE/RMS_FILE/FDL コマンドを使用して,データファイルの現在の状態を反映した出力ファイル (analysis-fdl-file) を作成してください。分析 FDL ファイルを作成するためのコマンド構文は次のとおりです。

    ANALYZE/RMS_FILE/FDL/OUTPUT=<analysis-fdl-file> <original-data-file>

    出力ファイル <analysis-fdl-file> には,作成時の属性や,作成後のデータファイルの構造や内容に対する変更を反映した情報など,データファイルに関するすべての情報と統計値が含まれます。

    たとえば,LOCKING.TDB の分析 FDL ファイルを入手するには,次のコマンドを実行します。

    $ ANALYZE/RMS_FILE/FDL/OUTPUT=ANALYSIS_LOCKING.FDL SAMBA$ROOT:[VAR.LOCKS]LOCKING.TDB
    

    これにより,現在の作業ディレクトリに ANALYSIS_LOCKING.FDL が作成されます。

  2. FDL の最適化

    Edit/FDL ユーティリティを使用して,最適化された FDL ファイル (optimized-fdl-file) を作成します。

    FDL ファイルの変更は,端末を使用して対話的に,あるいは Edit/FDL ユーティリティが分析レポートをもとに最適化された値を計算できるようにすることにより非対話的に行なうことができます。

    ファイルを対話的に最適化するには,次のように OPTIMIZE スクリプトを使用します。

    EDIT/FDL/ANALYSIS=<analysis-fdl-file>/SCRIPT=OPTIMIZE/OUTPUT=<optimized-fdl-file> <analysis-fdl-file>

    非対話的にファイルを最適化するには,次のように行ないます。

    EDIT/FDL/ANALYSIS=<analysis-fdl-file>/NOINTERACTIVE /OUTPUT=<optimized-fdl-file> <analysis-fdl-file>

    たとえば,ANALYSIS_LOCKING.FDL を非対話的に使用して最適化された FDL を生成するには,次のようなコマンドを実行します。

    $ EDIT/FDL/ANALYSIS=ANALYSIS_LOCKING.FDL/NOINTERACTIVE /OUTPUT=OPTIMIZED_LOCKING.FDL ANALYSIS_LOCKING.FDL
    

  3. ファイルの変換

    変換とは,最適化された FDL ファイルを元のデータファイルに適用するする処理です。

    次のように Convert ユーティリティを使用します。

    CONVERT/FDL=<optimized-fdl-file> <original-data-file>[<new-data-file>]

    たとえば,最適化された FDL ファイルを使用して新しいバージョンの LOCKING.TDB ファイルを入手するには,次のコマンドを実行します。

    $ CONVERT/FDL=OPTIMIZED_LOCKING.FDL SAMBA$ROOT:[VAR.LOCKS]LOCKING.TDB

  4. 最適化された FDL ファイルの値を確認した後,GENERIC_TDB.FDL あるいは <tdb-datafile-name>.FDL (すなわち LOCKING.TDB) に名前を変更し,SAMBA$ROOT:[LIB] ディレクトリにコピーします。

12.11.3 デフォルトの FDL 値

.TDB ファイルを作成する際, HP CIFS Server は次のデフォルト FDL 値を使用します。

SYSTEM
        SOURCE                  		"OpenVMS"
FILE
        ORGANIZATION            		indexed
        PROTECTION              		(system:RWD, owner:RWD, group:, world:)
        GLOBAL_BUFFER_COUNT     		0
        GLBUFF_CNT_V83          		200
        GLBUFF_FLAGS_V83        	 	none
RECORD
        CARRIAGE_CONTROL        		carriage_return
        FORMAT                  		variable
        SIZE                    		0
AREA 0
        ALLOCATION              		240
        BEST_TRY_CONTIGUOUS     		yes
        BUCKET_SIZE            		4
        EXTENSION               		80

AREA 1
        ALLOCATION              		48
        BEST_TRY_CONTIGUOUS     		yes
        BUCKET_SIZE             		4
        EXTENSION               		48

KEY 0
        CHANGES                 		no
        DATA_AREA               		0
        DATA_FILL               		100
        DATA_KEY_COMPRESSION    		no
        DATA_RECORD_COMPRESSION 		yes
        DUPLICATES              		no
        INDEX_AREA              		1
        INDEX_COMPRESSION       		no
        INDEX_FILL              		100
        LEVEL1_INDEX_AREA       		1
        NAME                    		"TDBHASH.1/16"
        PROLOG                  		3
        SEG0_LENGTH             		16
        SEG0_POSITION           		0
        TYPE                    		string

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