1.2.3 クラスタリング |
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「クラスタリング機能は15年以上前に登場したとおっしゃってましたね。」
「正確には,1983 年のことになる。当時は,VAXcluster と呼んでいたんだ。」
「 UNIX や Windows のクラスタリングが登場する 10 年以上前なんですね。」
「驚くべきことに,この最初の発表当時に,現在のクラスタリング技術の基本コンセプトが全て提供できていたということだ。特に重要なことは,クラスタ・システムを1つのマシン環境のように見せるシングル・システム・イメージが最初から実現されていたと言うことだ。これは,現在でも,UNIX や Windows のクラスタ・システムでは,ほとんど実現できていない。」
「登場時点で完成されたクラスタ・システムだったわけですね。そして,その後の発展はどうなんでしょうか?」
「クラスタ・システムで一番重要なコンポーネントは,クラスタ・メンバ間を接続するインターコネクトなんだ。発表当初はインターコネクトとして,専用のハードウェアが必要だったんだ。クラスタリング技術を普及させるために,このインターコネクトの選択肢として,より安価で標準的なハードウェアを提供する必要があると考えたんだね。そこで,以降のバージョンでは,イーサネットや FDDI などが順次サポートされていったんだ。」
「OpenVMS は,災害にも対応できるって聞いたんですけど。」
「そう,それもクラスタリングの機能を利用している。対災害性を強調するために,ディザスタトレランスと呼んでいる。ディザスタトレランスというのは,ビル全体や地域全体に被害が及ぶような,火災や地震といった災害に対しても,サービスの継続を保証する技術なんだ。具体的には一種のクラスタ・システムなんだが,クラスタのメンバが,数十キロから数百キロ離れた場所に配置される。」
「それでどちらか一方のメンバが被害を受けても,のこりのメンバがサービスを継続できるんですね。クラスタ・システムでそんなことまで実現できるんですね。」
「もちろん,現在のクラスタ・システムで,ここまでサポートできるのは, OpenVMS だけなんだ。クラスタ・システムの頂点に立っていると言えるだろうね。」
1.2.4 Alpha と 64 ビット・オペレーティング・システム |
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「 Alpha システムはいつ頃から登場したんですか?」
「ようやく僕の時代に入ってきたね。Alpha チップと Alpha システムが発表されたのは,1992 年のことになる。」
「えー,上司からは VAX 世代の Z さんって聞いたんですけど。」
「むむむ,それはさておき,Alpha と聞いて何を思いつくかな?」
「ともかく早いということでしょうか。」
「そうだね,しかしソフトウェアの側から見ると,世界最初の 64 ビット・アドレッシングということが重要なんだ。 1992 年当時では,まだまだ 32 ビット・アドレッシングで十分という意見が多かったが,最近ではデスクトップ PC でも数百MBのメモリが必要になっている。まして,サーバ・システムでは数 GB 単位でメモリを持つことが常識になっている。また,それに対応してアプリケーションの側でも大規模なメモリ空間を利用した高速化が当然のこととして行われている。この大容量の実メモリと大規模なメモリ空間を有効に使い切るためには, 64 ビット・アドレッシングは必須の機能になっている。」
「つまり,Alpha は時代を先取りして,現在の 64 ビット・アドレッシングによる高速サーバ・システムの時代を切り開いたんですね。」
「もちろん,OpenVMS もこの64ビット・アドレッシングにいち早く対応し,その可能性を追求している。
たとえば,大容量の実メモリを利用して,データベースの高速化を図る VLM,Very Large Memory などが既に提供されている。しかし,64 ビットというほとんど無限大のアドレス空間は,まだまだ無限の可能性を秘めていると言えるだろうね。その可能性を極めることが,OpenVMS に課せられた 21 世紀にまたがる課題と言えるだろう。」
「ところで年代記で重要な点にまだ触れていただいていないんですけれど。」
「なんだい?」
「いつ VMS が OpenVMS になったんでしょう?」
「これはうっかりしてた。OpenVMS に正式に名称を変更したのは, 1991 年で Alpha の発表とほぼ同期しているね。OpenVMS は 1 つの企業が設計 / 開発しているオペレーティング・システムだけど,そのインタフェースとしては POSIX や OSF/Motif などオープンな規格が採用されている。オペレーティング・システムとしてのオープン性を強調するネーミングと言えるだろう。」