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![]() OpenVMS マニュアル |
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HP OpenVMS
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目次 | 索引 |
ここでは,マルチサイト OpenVMS Cluster 構成について説明します。ここで説明するマルチサイト OpenVMS Cluster 構成では,約 40 km から 200 km という遠距離を隔てて分散したサイトに,複数のノードが配置されています。この構成方法は, OpenVMS バージョン 6.2 から導入されたものです。一般的な構成方法とともに,複数のサイトを接続するための 3 つのテクノロジについて説明します。マルチサイト・クラスタの利点は,他の参考資料からの引用とともに参照先も紹介します。
この付録の内容は,『Multiple-Site VMScluster Systems』追補マニュアルの内容を更新したものです。
![]() | C.1 マルチサイト OpenVMS Cluster システムとは? | ![]() |
マルチサイト OpenVMS Cluster システムは,メンバ・ノードが物理的に分散して配置された OpenVMS Cluster システムです。使用テクノロジにより,接続距離が約 800 km を超える場合があります。
遠距離を隔てて拠点が分散した組織では,マルチサイト OpenVMS Cluster システムを利用すれば,OpenVMS Cluster システムの利点を活かすことができます (たとえば,データをサイト間で共用し,データ・センター・オペレーションは, 1 個所に一元化するなど)。
図 C-1 は,製造拠点をワシントン D.C. に持ち,本社がフィラデルフィアにあるマルチサイト OpenVMS Cluster システムの概念を表しています。この構成におけるサイト間の物理的な距離は約 210 km あります。
図 C-1 フィラデルフィアとワシントン間のサイト間リンク
以下のサイト間リンクのテクノロジは,OpenVMS VAX システムと OpenVMS Alpha システムに認定されています。
高度なパフォーマンスを実現するローカル・エリア・ネットワーク (LAN) テクノロジを ATM,DS3,FDDI,[D]WDM の各インターコネクトと組み合わせれば,ワイド・エリア・ネットワーク (WAN) 通信サービスを OpenVMS Cluster 構成で利用できます。 GIGAswitch クロスバー・スイッチと ATM, DS3,または FDDI インターコネクトで構成した OpenVMS Cluster システムでは,ノード同士が何キロメートルも離れていても使用できます。(2 個所のサイト間の実距離は,サイト間の直線距離ではなく,サイト間のケーブル経路の長さです。) 付録 C.4 節 では,OpenVMS Cluster システムと WAN 通信サービスをさらに詳しく説明します。
![]() | 注意 マルチサイト OpenVMS Cluster でディザスタ・トレランスを利用するには, HP 製のシステム管理,および,ソフトウェア・パッケージである Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMS が必要です。 詳細については,弊社のサービス担当者にお問い合わせください。 |
マルチサイト OpenVMS Cluster システムには,次のような長所があります。
長所 | 説明 |
---|---|
リモート・サテライトとノード | 図 C-2 に示すように,二次サイトにリモート・サイトを少数配置でき,それらを一元管理できるだけでなく,一次サイトのリソースも利用できます。たとえば,サイト固有デバイスに直接関連付けられた倉庫や小規模工場に,本社のデータ・センターをリンクすることができます。あるいは,一次ビジネス・サイトから都市のビジネス街に数個のエンジニアリング・ワークステーションをインストールすることができます。 |
データ・センターの管理強化 | 1 つの管理チームで複数のサイトのデータ・センターにあるノードを管理できます。 |
リソースの物理的な共用 | 大容量のコンピュータ,テープ・ライブラリ,ディスク・アーカイブ,フォトタイプセッタなどのデバイスを,複数のサイトで簡単に共用できます。 |
リモート・アーカイブ | クラスタの任意の場所にあるアーカイバル媒体のバックアップを作成できます。たとえば,一般には,1 個所にディスクやテープを用意してマルチサイト OpenVMS Cluster 内のすべてのサイトのデータをバックアップします。リモート・サイトのデータのバックアップは透過的に処理されます (つまり,リモート・サイトで人が操作する必要はありません)。 |
強化された可用性 | 一般に,マルチサイト OpenVMS Cluster は, LAN OpenVMS Cluster の可用性の利点をすべて備えています。また,マルチサイト OpenVMS Cluster 構成では遠距離にある複数のサイトを接続して,さまざまな方法でシステムやシステム要素の可用性を強化します。
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図 C-2 は,リモート・サイトからアクセスできるサテライトを備えた OpenVMS Cluster システムです。
図 C-2 リモート・サテライトを備えたマルチサイト OpenVMS Cluster 構成
LAN の OpenVMS Cluster システムに適用されるものと同じ構成規則が,ATM,DS3,または FDDI サイト間インターコネクトを組み込んだマルチサイト OpenVMS Cluster 構成に適用されます。一般的な LAN 構成規則については,以下のマニュアルを参照してください。
マルチサイト OpenVMS Cluster に固有の構成ガイドラインもあります。これらのガイドラインについては, 付録 C.4.4 項 を参照してください。
![]() | C.2 Cluster over IP によるマルチサイト OpenVMS Cluster システムの構成 | ![]() |
ノードが複数のサイトあるいは複数の LAN に分散して存在している場合,クラスタ通信に IP を使用するのが好まれます。 Cluster over IP を使用すると,最大 800 km のサイト間距離でサイトを接続することができます。 図 C-3 にストレージの構成に IP インターコネクトを使用したマルチサイト OpenVMS クラスタを示します。
図 C-3 Cluster over IP によるマルチサイト OpenVMS Cluster 構成
ノード East1,East2,West1,および West2 は,同じ LAN でも異なる LAN でも構いません。クラスタ・トラフィックはルータブルです。東のサイトは Cluster over IP を使用して地理的に離れた西のノードと通信します。ノード East1 およびノード West1 は仮想サーキット (VC) を形成します。 VC は,SCS トラフィックのための IP チャネルから構成されます。ただし,東の 2 つのノードはそれら同士のクラスタ通信に LAN を使用します。ノード East1 は LAN チャネルを使用してノード East2 と仮想サーキットを形成します。
![]() | C.3 FDDI によるマルチサイト OpenVMS Cluster システムの構成 | ![]() |
VMS バージョン 5.4-3 以降,FDDI は,2 地点の OpenVMS Cluster サイトを遠距離接続できる最も標準的な方法でした。高速 FDDI 光ファイバ・ケーブルにより,サイト間のケーブル経路の長さが最長で(40 km) 離れたサイト間を接続できます。
サイト間はこれらの FDDI 方式で接続できます。
システム管理のその他の説明については,本書と『OpenVMS Cluster システム』の該当箇所を参照してください。これらのマニュアルの最新バージョンの入手方法については,『HP OpenVMS V8.4 リリース・ノート[翻訳版]』を参照してください。
OpenVMS Cluster システム固有の柔軟性と強化された OpenVMS Cluster LAN プロトコルでは, ATM と DS3 のどちらか一方,またはその両方の通信サービスを利用して,複数の OpenVMS Cluster サイトに接続できます。
![]() | C.4 WAN サービスによるマルチサイト OpenVMS Cluster システムの構成 | ![]() |
ここでは,ATM と DS3 のワイド・エリア・ネットワーク (WAN) サービスの概要と, FDDI インターコネクトを ATM と DS3 のどちらか,または両方の通信サービスにブリッジする方法,そしてこれらのサービスで,マルチサイト OpenVMS Cluster システムを構成する方法を説明します。
ATM サービスと DS3 サービスでは,OpenVMS Cluster システムに構成して WAN 接続ができる長距離のポイント・ツー・ポイント通信が可能です。ATM サービスと DS3 サービスは,たいていの一般通信事業者や他のソースから利用できます。
![]() | 注意 ヨーロッパや一部の国々では DS3 を使用できません。また,ATM は新しい,進展中の標準なので,ATM サービスをすべての個所で利用できるとは限りません。 |
ATM サービスと DS3 サービスは,以下の OpenVMS バージョンで使用できます。
サービス | OpenVMS の認定バージョン |
---|---|
ATM | OpenVMS バージョン 6.2 以降 |
DS3 | OpenVMS バージョン 6.1 以降 |
以下の項では,ATM 通信サービスと DS3 通信サービスを説明し,これらのサービスをマルチサイト OpenVMS Cluster システムに構成する方法を説明します。
C.4.1 ATM 通信サービス |
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SONET 物理レイヤ (ATM/SONET) を使用する ATM 通信サービスは,全二重通信を提供します ( 図 C-4 に示すように,双方向にビット・レートを同時に使用できます)。ATM/SONET は,複数の標準ビット・レートと互換性があります。 FDDI の 100 Mb/s ビット・レートには,155 Mb/s 全二重レートの SONET OC-3 サービスが最適です。ATM/SONET OC-3 は,世界で最も普及している標準サービスです。ヨーロッパでは,従来の E3 標準に代わるハイ・パフォーマンス標準サービスとして ATM/SONET があります。
図 C-4 ATM/SONET OC-3 サービス
データを伝送するとき,ATM フレーム (パケット) は ATM サービスによって伝送用の
セルに分割されます。各セルの大きさは 53 バイトであり,内 5 バイトがヘッダ情報用なので,データに使用できるのは 48 バイトです。伝送先で,セルは ATM フレームに組み立てられます。セルの使用により,ATM サプライヤは,複数のデータ・ストリームを異なるビット・レートで効率的に多重化,多重分離できます。このフレーム対セルの変換は,上位レイヤには透過的に処理されます。
C.4.2 DS3 通信サービス (T3 通信サービス) |
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図 C-5 に示すように,DS3 通信サービスは全二重通信を提供します。 DS3 (T3 ともいう) では,45 Mb/s の T3 標準ビット・レートを利用できます。T3 は,北米や他の多くの国々に普及している標準サービスです。
図 C-5 DS3 Service
図 C-6 に示すように,FDDI-to-WAN (たとえば,FDDI-to-ATM と FDDI-to-DS3 のどちらか,または両方) ブリッジは,距離を隔てて配置されたサイトにノードがある OpenVMS Cluster の構成に使用できます。この図では,各サイトの OpenVMS Cluster ノード同士は,2 つのサイトが FDDI で接続されている場合と同様に通信できます。FDDI-to-WAN ブリッジにより,OpenVMS Cluster ソフトウェアにとって ATM と DS3 の存在は透過になります。
図 C-6 DS3 で結合したマルチサイト OpenVMS Cluster 構成
図 C-6 で,FDDI-to-DS3 ブリッジと DS3 は以下のように動作します。
FDDI-to-WAN ブリッジの構築には,GIGAswitch/FDDI システムの使用を推奨します。 GIGAswitch/FDDI は,DEFGT WAN T3/SONET オプション・カードと組み合わせて,マルチサイト OpenVMS Cluster システムにおける ATM 通信サービスと DS3 通信サービスの認定テストに使用していました。
C.4.4 OpenVMS Cluster システムにおける ATM と DS3 の構成ガイドライン |
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マルチサイト OpenVMS Cluster の構成では,サイト間リンクの遅延,帯域幅,可用性,ビット・エラー率の特性がアプリケーションのニーズを満たしているか確認する必要があります。この項では,それらの要件とともに推奨値について説明します。
HP の認定構成として,マルチサイト OpenVMS Cluster は以下の規則に従います。
サイト間リンクの最長経路 | マルチサイト OpenVMS Cluster のメンバ間で,サイト間リンクのケーブル経路の最長距離は 242 km とします。正確な測定距離については,ATM サプライヤか DS3 サプライヤに確認してください。
この距離の許容上限値は, Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMS を利用することにより,引き上げることができます。 Disaster Tolerant Cluster Services for OpenVMSは, OpenVMS ディザスタ・トレラントなクラスタを構成し管理するためのシステム管理機能であり,ソフトウェア・パッケージです。 |
サイト間リンクの最大利用率 | サイト間リンクの任意の 10 秒間の平均利用率は,両方向とも,リンクの帯域幅の 80% を超えないものとします。この利用率を超えると,許容範囲を超えるキュー遅延やパケット・ロスが頻繁に発生する可能性があります。 |
サイト間リンクの仕様 | サイト間リンクは, 表 C-3 で指定した OpenVMS Cluster 要件を満たす必要があります。 |
OpenVMS Cluster LAN 構成規則 | LAN 上の OpenVMS Cluster システムの構成規則を構成に適用します。構成規則の内容については, 付録 C.1.3 項 を参照してください。 |
DS3 インターコネクトの構成時には,『OpenVMS Cluster Software SPD』 (SPD 29.78.nn),および,本書に掲載してあるLAN 接続の OpenVMS Cluster システムの構成ガイドラインに従ってください。各サイトの OpenVMS Cluster メンバには,サテライト,システム,その他 CI や DSSI などのインターコネクトを任意で組み合わせて組み込めます。
この項では,マルチサイト OpenVMS Cluster システムの構成に必要なその他の推奨値を紹介します。
WAN T3/SONET オプション・カード付きの GIGAswitch では,全二重の,155 Mb/s ATM/SONET リンクを利用できます。このリンクの全帯域幅は,すべて WAN オプション・カードに充てられます。ただし,GIGAswitch/FDDI の内部デザインは, FDDI に対する全二重拡張機能を基にしています。したがって,GIGAswitch/FDDI のデザインにより,ATM/SONET リンクのキャパシティは両方向とも 100 Mb/s に制限されます。
WAN T3/SONET オプション・カード付き GIGAswitch には,DS3 リンクで使用できるプロトコル・オプションがあります。DS3 リンクは,全帯域幅が WAN オプション・カードに充てられるクリアなチャンネル・モードで使用してください。DS3 リンクのキャパシティは,選択したプロトコル・オプションによって異なります。プロトコル・オプションについては, 表 C-1 を参照してください。
プロトコル・オプション | リンク・キャパシティ |
---|---|
PLCP 3 無効の ATM 1 AAL-5 2 モード | 39 Mb/s |
PLCP 有効の ATM AAL-5 モード | 33 Mb/s |
HDLC 4 モード (現在は使用可能) | 43 Mb/s |
リンク・キャパシティを最大限にするには,PLCP を無効にしてATM AAL-5 モードを使用するようWAN T3/SONET オプション・カードを構成することをお勧めします。
サイト間帯域幅により,アプリケーション・ロッキング,I/O パフォーマンス (ボリューム・シャドウイングや RAID 設定コピー回数),ロック・マネージャのパフォーマンスが制約されることがあります。
適切な応答時間を達成するには,平均トラフィックがサイト間リンクの両方向とも,任意の 10 秒間にリンクの帯域幅の 60% を超えないよう設定してください。これを超えると,FDDI-to-WAN ブリッジ内の遅延によりアプリケーション・パフォーマンスが悪化します。
リンクの利用状況を計算するときは,OpenVMS Cluster 通信 (ロッキングや I/O) とネットワーク通信 (TCP/IP,LAT,DECnet など) を必ず考慮してください。
サイト間リンクでは,サイト間ケーブル長 100 マイルにつき最高 1 ms の一方向遅延と,両端の FDDI-to-WAN ブリッジにおける遅延を合わせた遅延が生じます。アプリケーション応答時間とスループットに対するサイト間遅延の影響を忘れないでください。
たとえば,サイト間リンクの一方向パス遅延には,以下のような構成要素があります。
ラウンド・トリップ遅延は,以下のように計算します。
WAN ラウンド・トリップ遅延 = 2 x (N マイル x 0.01 ms/マイル + 2 x 0.5 ms/マイル FDDI-WAN ブリッジ)
MSCP サービスによる I/O 書き込み操作には,少なくともラウンド・トリップ・パケット交換が 2 回必要です。
WAN I/O 書き込み遅延 = 2 x WAN ラウンド・トリップ遅延
したがって,100 マイル WAN リンクによる I/O 書き込みは,短い,ローカル FDDI による同じ I/O 書き込みよりも,少なくとも 8 ms 余分にかかります。
同じく,ロック操作では,パケットのラウンド・トリップ交換が必要です。
WAN ロック操作遅延 = WAN ラウンド・トリップ遅延
I/O 操作において,同期のために N 回ロックをすると,WAN による遅延は以下のようになります。
WAN ロックの I/O 操作遅延 = (N x WAN ロック操作遅延) + WAN I/O 遅延
ビット・エラー率 (BER) パラメータは,サイト間リンクにおけるビット・エラーの発生確度を示す重要な尺度です。マルチサイト OpenVMS Cluster を構成するときは,アプリケーション・スループットと応答に対するビット・エラーの影響を考慮する必要があります。サイト間リンク・ビット・エラーが発生すると,パケットが失われたり,アプリケーション I/O 応答時間 ( 付録 C.4.6 項 参照)の遅延後に再送されることがあります。ビット・エラーごとのアプリケーション遅延が, 200 ミリ秒から 300 ミリ秒になると,パケットが失われる可能性があります。
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