6.1.1 直接 SCSI から直接 SCSI へのフェールオーバ |
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直接 SCSI から直接 SCSI へのフェールオーバは,マルチポート SCSI デバイスのシステムに使用できます。マルチポート SCSI デバイスの例としては,デュアル HSZ70, HSZ80,HSG80,デュアル MDR,HSV110 があります。マルチポート SCSI デバイスは,同じ物理インターコネクト上の複数のポートで構成できるので,ポートのどれかに障害が発生しても,ホストは別のポートからデバイスにアクセスできます。これを透過的フェールオーバ・モードといい,ディスク・デバイスに対してバージョン 6.2 以降の OpenVMS でサポートしています。
OpenVMS バージョン 7.2 では,新しいフェールオーバ・モードのサポートを導入しました。これは,異なる物理インターコネクト上でマルチポート・ディスク・デバイスをそのポートとともに構成できる機能です。これをマルチバス・フェールオーバ・モードといいます。
HSx フェールオーバ・モードは, HSx コンソール・コマンドで選択します。透過モードとマルチバス・モードの詳細については, 第 6.3 節 を参照してください。
図 6-1 は,マルチバス・フェールオーバの一般的な構成を表しています。
| 注意
複数の直接 SCSI パスをディスク・デバイスに構成できるのは,接続されているノードのすべてにおいてマルチパス・サポートが有効になっており, HSZ/G がマルチバス・フェールオーバ・モードである場合だけです。
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図 6-1 に示す 2 つの論理ディスク・デバイスは, HSx コントローラ・モジュールがシステムに提供する仮想ストレージ・ユニットを表しています。各論理ストレージ・ユニットを, 2 つの HSx コントローラ・モジュールの両方で同時に"オンライン"にすることはできません。複数の論理ユニットがあるとき,異なる HSx コントローラに対してはオンラインにできるので,両方の HSx コントローラを同時にアクティブできます。
透過モードでは,他のコントローラの機能停止を HSx コントローラが検出すると論理ユニットはコントローラを切り替えます。
図 6-1 に示すように,マルチバス・モードでは,以下のイベントが発生すると論理ユニットによってコントローラが切り替えられます。
- 他のコントローラの機能停止を HSx コントローラが検出した。
- 現在のパス上の障害発生を OpenVMS マルチパス・ソフトウェアが検出し,コントローラ切り替えコマンドを発行した。
- コントローラ切り替えコマンドを OpenVMS システム管理者が発行した。
図 6-1 マルチバス・フェールオーバの構成
図 6-1 の以下の点に着目してください。
- ホストに 2 つのアダプタがある。
- 両方のインターコネクトとして,パラレル SCSI (HSZ70 または HSZ80) または Fibre Channel (HSGx または HSVx) のどちらでも使用できるが,組み合わせることはできない。
- マルチバス・フェールオーバ・モードに構成された 2 つの HSx コントローラがストレージ・デバイスのキャビネットに組み込まれている。
マルチバス構成は,透過的フェールオーバに対して以下の利点があります。
- 2 つのホスト・アダプタと 2 つの HSx コントローラ・モジュールの運用により,全体のパフォーマンスが強化される。
- パス上のホスト・アダプタ,インターコネクト,または HSx コントローラ・モジュールに障害が発生してもストレージにアクセスできるため,可用性が高い。
マルチバス・フェールオーバ構成では, SAS およびそのコントローラ (LSI 1068 あるいは LSI 1068e) も使用することができます。
6.1.2 直接 SCSI から MSCP サービス対象へのフェールオーバ (ディスクのみ) |
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OpenVMS では,SCSI バスを共用する複数のホストをサポートしています。この機能を,マルチホスト SCSI OpenVMS Cluster システムといいます。この構成では,SCSI バスは共用ストレージ・インターコネクトです。クラスタ通信は 2 番目のインターコネクト (LAN) を通じて行われます。
図 6-2 に示すように,マルチホスト SCSI OpenVMS Cluster システムのマルチパス・サポートでは,直接関連付けられた SCSI から MSCP のサービス対象である SCSI ストレージへ,フェールオーバが可能です。
図 6-2 1 つのインターコネクトによる直接 SCSI から MSCP のサービス対象構成
この構成では,次の点に着目してください。
- 共用ストレージ・インターコネクトに 2 つのホストが接続されている。
- 2 つのホストは,クラスタ通信用の 2 番目のインターコネクト (LAN) で接続されている。
- ストレージ・デバイスのポートは 1 つでも複数でもよい。
- ストレージまでのノード Edgar の SCSI 接続に障害が発生すると, SCSI ストレージはクラスタ・インターコネクトで接続された残りのホストにより, MSCP サービスの対象になる。
このようなマルチホスト SCSI OpenVMS Cluster システムでのマルチパス・サポートでも,MSCP サービス対象 SCSI ストレージから直接接続された SCSI ストレージへのフェールオーバは有効化されます。たとえば, 図 6-2 の構成では,以下のようなイベントが発生する可能性があります。
- ノード POE はノード EDGAR を MSCP サーバとして使用して,共用ストレージ・インターコネクト上のストレージ・デバイスにアクセスしている。
- ノード EDGAR で,共用ストレージへの直接接続に失敗するか,ノード EDGAR が停止するか,またはノード EDGAR はクラスタ・インターコネクト経由で到達できなくなる。
- ノード POE では,共用ストレージへの直接パスを使用するように切り替えが行われる。
| 注意
本書では,直接 SCSI から MSCP サービス対象パスへのフェールオーバ機能は,直接パスとサービス対象パスとの間のいずれかの方向におけるフェールオーバ機能を意味します。
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直接 SCSI から MSCP サービス対象へのフェールオーバ構成の場合, SAS とそのコントローラ (LSI 1068 あるいは LSI 1068e) も使用できます。
6.1.3 両方の種類のマルチパス・フェールオーバを組み合わせた構成 |
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図 6-3 に示すように,マルチホスト SCSI OpenVMS クラスタ・システムでは,クラスタを両方の種類のマルチパス・フェールオーバ ( 直接 SCSI から直接 SCSI と直接 SCSI から MSCP サービス対象の SCSI) に構成することによりディスク・ストレージの可用性を強化できます。
図 6-3 インターコネクトが 2 つの直接 SCSI から MSCP サービス対象構成
この構成では,次の点に着目してください。
- 両方のノードが両方のストレージ・インターコネクトに直接接続されている。
- 両方のノードがクラスタ通信用の 2 番目のインターコネクトに接続されている。
- 各 HSx ストレージ・コントローラが 1 本のインターコネクトにだけ接続されている。
- 両方の HSx ストレージ・コントローラは同じキャビネットにある。
この構成には,「直接 SCSI フェールオーバ」と「直接から MSCP サービス対象 SCSI へのフェールオーバ」の両方の利点があります。
このタイプの構成では, SAS およびそのコントローラ (LSI 1068 あるいは LSI 1068e) も使用できます。
マルチパス SCSI と FC 構成の要件については, 表 6-1 を参照してください。