6.7.12 パフォーマンスについての考慮 |
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MSCP パスが現在のパスでない場合,ディスク・マルチパス・セット内に MSCP サービス対象パスが存在していても,安定した状態の I/O パフォーマンスには大きな影響はありません。
マルチパス・セット内に MSCP サービス対象パスが存在する場合は,特定の異常障害でのマウント検証中に,作業パスの検出に時間がかかる場合があります。直接パスが最初に試行されるため, MSCP パスが存在しても回復時間には影響ありません。
ただし,直接パスから MSCP サービス対象パスへ動的に切り替える機能を使用すると,マルチパス・ディスク・ストレージへの直接パスを使用する特定の MSCP サーバ・システムに対する I/O サービス負荷が大幅に増える可能性があります。サービス対象の I/O は, MSCP サーバのその他のほとんどすべての処理より優先されるため, MSCP サービス対象パスへのフェールオーバは,サーバのキャパシティとサービス対象の I/O 要求の増加率により,その MSCP サーバ上の他のアプリケーションの応答に影響を与える可能性があります。
たとえば,アプリケーションの作業負荷を処理できるだけの十分な CPU および I/O 処理能力がある OpenVMS Cluster 構成において,すべての共用 SCSI ストレージに直接 SCSI パスでアクセスするとします。このような構成の場合は,障害が発生しても,制限された数のデバイスが MSCP サービス対象パスへ強制的に切り替えられるので,機能することができます。しかし,さらに多くの障害が発生すると, MSCP サービス対象パスに対する負荷がクラスタのキャパシティに近づくため,アプリケーションのパフォーマンスが許容できないレベルに低下します。
システム管理者は, MSCP_BUFFER および MSCP_CREDITS システム・パラメータを使用して, MSCP サービスにリソースを割り当てることができます。 MSCP サーバに,すべての受信 I/O 要求を処理するだけのリソースがない場合,この MSCP サーバの MSCP パスに存在するデバイスにアクセスしているシステムのパフォーマンスが低下します。
MONITOR MSCP コマンドを使用すると, MSCP サーバでリソースが不足していないかどうか確認できます。 Buffer Wait Rate が 0 以外の場合は,その MSCP サーバが,リソースの待機中に一部の I/O を停止する必要があったことを示しています。
これらのパラメータには,適切な推奨値はありません。ただし,OpenVMS Alpha バージョン 7.2-1 から, MSCP_BUFFER のデフォルト値が 128 から 1024 に増やされました。
オンライン・ヘルプの SYSGEN ユーティリティに関するトピックで説明しているように, MSCP_BUFFER には,MSCP サーバのローカル・バッファ領域に割り当てるページレットの数を指定します。また,MSCP_CREDITS には, 1 つのクライアント・システムからアクティブにできる未処理の I/O 要求の数を指定します。たとえば,多くのディスクがいくつかの OpenVMS システムにサービスしているシステムの場合は,MSCP_BUFFER の値を 4000 以上に設定し, MSCP_CREDITS の値を 128 以上に設定します。
システム・パラメータの変更については,『OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。
MSCP サービス対象パスへのフェールオーバに依存している構成を, MSCP サービス対象パスに対する負荷レベルを最悪な状態にして,テストすることをお勧めします。複数サイト SAN を使用する複数サイトのディザスタ・トレラント・クラスタを構成している場合は, SAN をパーティション化し,MSCP サービス対象パスを強制的に使用する原因となる障害について検討してください。対称的なデュアル・サイト構成では,MSCP サービス対象パスからアクセスする SAN ストレージの 50 % をキャパシティとして指定することをお勧めします。
構成のキャパシティをテストするには,パスの手動切り替えを使用して, MSCP サービス対象パスを強制的に使用します。
6.7.13 コンソールについての考慮 |
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ここでは,パラレル SCSI マルチパス・ディスク・デバイスとコンソールを併用する方法を説明します。 FC マルチパス・デバイスとコンソールを併用する方法については, 第 7.6 節 を参照してください。
コンソールでは,一般的な,パス依存の SCSI デバイス名を使用します。たとえば,ディスクのデバイス名形式では,DK の後に,ホスト・アダプタを表す文字,SCSI ターゲット ID,LUN を続けます。
つまり,マルチパス・デバイスでは,アクセス時に使用するすべてのホスト・アダプタ名からなる複数の名前が使用されます。以下のコンソール出力例では,デバイス・コマンド,つまりコンソール・デバイス名が左列に表示されています。中央と右の列は,デバイス・タイプ固有のその他情報です。
ここで,たとえばデバイス
dkb100とデバイス
dkc100が同じデバイスまでの 2 本のパスとします。
dkb100は,アダプタ PKB0 を通るパスの名前であり,
dkc100はアダプタ PKC0 を通るパスの名前です。これは中央の列を見ればわかります。ここでは,情報名に HSZ 割り当てクラスが指定されています。 HSZ 割り当てクラスにより,同じ HSZ デバイスまでの"デバイス"がどれかわかります。
| 注意
コンソールでは,コンソール INIT コマンドを発行するまで HSZ 割り当てクラスの値の変更を認識できません。
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