HP OpenVMS OpenVMS Cluster 構成ガイド
  
 
 4.8.2 2 ノード OpenVMS Integrity サーバの共有 SCSI 構成   |    |  
  
2 ノードの OpenVMS Integrity クラスタ・システムでの共有 SCSI ストレージのサポートは OpenVMS Version 8.2-1 で導入されてます。これより前のバージョンでは,共有 SCSI ストレージは以前の SCSI ホストベース・アダプタ (HBA) を使用して OpenVMS Alpha システムでのみサポートされていました。
 OpenVMS Integrity クラスタ・システムでの共有 SCSI ストレージには以下の制限事項が適用されます。
 
-  1 つの SCSI バスに接続できる OpenVMS Integrity サーバ・システムは最大 2 つです。
 -  各システムに接続できる共有 SCSI バスは最大 4 つです。
 -  サポートされるシステムは,rx1600 シリーズ,rx2600 シリーズ,および rx4640 システムです。
 -  サポートされる HBA は A7173A HBA のみです。
 -  サポートされる SCSI ストレージは MSA30-MI ストレージ・エンクロージャのみです。
 -  サポートされるディスク・タイプは Ultra320 SCSI ディスクのみです。
  
 
図 4-1 に 2 ノードの共有 SCSI 構成を図示します。ホスト間の OpenVMS クラスタ通信には 2 つめのインターコネクトとして LAN が必要になります (OpenVMS クラスタ通信は System Communications Architecture (SCA) 通信と呼ばれます)。
 この構成には SCSII ID 6 および 7 が必要になります。どちらか一方のシステムでは,出荷時設定のデフォルト ID 7 ではなく, SCSI ID 6 で A7173A アダプタ・ポートに接続されていなければなりません。 SCSI ID の変更には,IPF Offline Diagnostics and Utilities CD に含まれている U320_SCSI pscsi.efi ユーティリティを使用します。変更の手順については,次の URL にある『HP A7173A PCI-X Dual Channel Ultra320 SCSI Host Bus Adapter Installation Guide』を参照してください。
 
 
 
http://docs.hp.com/en/netcom.html 
 
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図 4-1 2 ノードの OpenVMS Integrity クラスタ・システム
  
 
 
 4.8.3 利点 |    |  
  
SCSI インターコネクトには,以下の利点があります。
 
- 最小限のコストによるストレージへの共用直接アクセス 
 SCSI は,業界標準であり,業界内では幅広く使用されているため,リーズナブルな価格で各社の製品を入手できる。
 - スケーラブルな構成により適切な価格で高いパフォーマンスを得ることができる。 
 以下の選択肢があります。
- SCSI インターコネクトの幅 
 Narrow (8 ビット) または Wide (16 ビット)。
 - 通信モード 
 最も一般的で,安価なシングル・エンド・シグナル通知か,高い信号の一貫性と長い SCSI インターコネクトに対応できるディファレンシャル・シグナル通知
 - 信号速度 (Standard,Fast,Ultra モード)
 - SCSI バスを共用するノード (2 ノードまたは 3 ノード)
 - 1 ノードに接続できる共用 SCSI バスの数 (最大 6 本)
 - ストレージのタイプとサイズ (RZnn または HSZnn)
 - コンピュータのタイプとサイズ (AlphaStation または AlphaServer)
  
   
 
 4.8.4 スループット |    |  
  
 
表 4-3 は,SCSI インターコネクトのスループットをまとめたものです。  
 
 
 4.8.5 SCSI インターコネクト距離 |    |  
  
SCSI インターコネクトの最大長は,構成で使用するシグナル通知方法によって決まり,シングル・エンド・シグナル通知の場合はデータ転送速度で決まります。
 SCSI インターコネクト用の電気シグナル通知は,シングル・エンドとディファレンシャルの 2 種類があります。どちらの種類も Standard モード,Fast モード,または Ultra モードで動作します。ディファレンシャル・シグナル通知の場合,最大 SCSI ケーブル長は, Standard モードと Fast モードで同じになります。
 
表 4-4 は,シグナル通知方法のタイプによる SCSI インターコネクト距離の違いをまとめたものです。  
  
表 4-4 最大 SCSI インターコネクト距離
 
| シングル・エンド
 | 
Standard
 | 
6 m
1
 | 
 
| シングル・エンド
 | 
Fast
 | 
3 m
 | 
 
| シングル・エンド
 | 
Ultra
 | 
20.5 m
2
 | 
 
| ディファレンシャル
 | 
Standard または Fast
 | 
25 m
 | 
 
| ディファレンシャル
 | 
Ultra
 | 
25.5 m
3
 | 
 
  
1SCSI 標準では,このインターコネクトに最大長 6 m を指定しています。ただし,データの一貫性を高いレベルで維持するためには,最大長はできれば 4 m までにしてください。
 
2この長さは,デバイスが両端に接続される場合にだけ適用します。デバイスをインターコネクト上に分布する場合は,最低 1 m ずつ離してください。またインターコネクトが 4 m を超えないようにします。
 
3デバイスは 3 つ以上接続できます。
 
 
 
 4.8.6 サポートされているアダプタ,バス・タイプ,コンピュータ |    |  
  
表 4-5 は,SCSI アダプタと,それがサポートする内部バスとコンピュータをまとめたものです。  
 
表 4-5 SCSI アダプタ
 
| 埋め込み (NCR-810 based)/KZPAA
1
 | 
PCI
 | 
システムのオプション仕様を参照してください。
 | 
 
| KZPSA
2
 | 
シングル・ホスト構成で PCI
 | 
KZPSA をサポートするすべての Alpha コンピュータがサポート
3
 | 
 
| KZTSA
2
 | 
TURBOchannel
 | 
DEC 3000
 | 
 
| KZPBA-CB
4
 | 
PCI
 | 
シングル・ホスト構成で KZPBA をサポートするすべての Alpha コンピュータがサポート
3
 | 
 
  
1シングル・エンド。
 
2Fast Wide Differential (FWD)。
 
3各システム別のハードウェア・マニュアルを参照してください。
 
4Ultra Differential。 Ultra シングル・エンド・アダプタ (KZPBA-CA) は,マルチホスト・システムをサポートしません。
 
 
関連項目: 各 OpennVMS Integrity あるいは OpenVMS Alpha システムでサポートされる SCSI アダプタについては,次の OpenVMS の Web サイトを参照してください。
 
 
 
http://www.hp.com/go/openvms 
 
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 左ナビゲーション・パネルから「AlphaSystems」あるいは「Integrity Server」を選択してください。その後,システムを選択し QuickSpecs を選択します。 QuickSpecs には,そのシステムでサポートされるアダプタなど,すべてのオプションが紹介されています。
  
 SAS は,シリアル通信 (一度に 1 ビットずつ) を使用して SCSI ストレージ・デバイスとの間でデータを転送するポイント・ツー・ポイント・アーキテクチャです。 SAS は,SAS デバイスとデイファレンシャル・シグナリング方式を使用して信頼性の高い高速シリアル通信を実現します。
 SAS は,ファイバーチャネルのハイエンド機能 (マルチイニシエータのサポートや全二重通信など) および SATA を利用した物理インタフェース(優れた互換性と投資保護) により,高い性能と信頼性,伝統的な SCSI 技術の使いやすさを兼ね備えています。
 
SAS デバイス
 
 SAS デバイスには,イニシエータ,ターゲット,エクスパンダの 3 つのタイプがあります。イニシエータ・デバイスは HBA あるいはコントローラです。イニシエータは 1 つ以上のターゲット (SAS ハード・ディスク・ドライブ, SATA ハード・ディスク・ドライブ,あるいはSAS テープ・ドライブ) と接続され SAS ドメインを形成します。エクスパンダは,イニシエータに接続されるターゲットの数を増やし,これにより大規模な SAS ドメインを作成するローコスト,ハイスピードのスイッチです。各 SAS デバイスは,ドメイン内で簡単に識別できるように,製造者によって割り当てられたユニークな名前 (SAS アドレス) を持ちます。
 
ディファレンシャル・シグナリング
 
 すべての SAS デバイスはポートと呼ばれる接続ポイントを持っています。各 SAS デバイスのポートには,物理層 (PHY) と呼ばれる 1 つあるいは複数のトランシーバ・メカニズムが置かれています。 2 つのペア線で構成される物理リンクが, 1 つのデバイスのポートにある各 PHY のトランスミッタと別のデバイスのポートにある PHY のレシーバを接続します。 SAS インタフェースは,複数の物理リンクを組み合わせてポートごとに 2x,3x,4x,あるいは 8x の接続を作成し,帯域幅を拡張することができます。 1 つの PHY を持つポートをナロー(narrow) と呼び, 2 から 4 つの PHY を持つポートをワイド (wide) と呼びます。
 SAS はディファレンシャル・シグナリングを使用して物理リンク経由でデータを転送するため,パラレル SCSI を高速で使用した場合に見られる静電容量,インダクタンス,ノイズの影響を低減できます。 SAS 通信は全二重で,各 PHY は2 つのペア線を使って情報を同時に送受信できます。
 
 4.9.1 利点 |    |  
  
SAS を使用したマルチノード・クラスタはクラスタ化された Fibre Channel ローカルループ・トポロジの代わりとして使用できます。拡張性の高い SAS アーキテクチャにより,単一障害点のない高性能で可用性の高いトポロジが可能です。
 SAS ソリューションは,ローコストの大容量記憶装置 (SATA) あるいはミッション・クリティカル・アプリケーションのための高性能および高信頼性 (SAS) の両方に対応し,構成の柔軟性と簡略性を高めることができます。
 
 4.9.2 スループット |    |  
  
SAS は,パラレル SCSI (すなわち 320 Mb/s) よりも速い速度で動作します。 SAS インターコネクトのスループットを 表 4-6 に示します。 SCSI インターコネクトのスループットは 表 4-3 を参照してください。  
   
表 4-6 最大転送速度,単位 MB/秒
 
| SAS 1 (3Gig SAS とも呼ばれる)
 | 
300 MB/s あるいは 3 Gb/s
 | 
 
| SAS 2 (6Gig SAS とも呼ばれる)
 | 
600MB/s あるいは 6Gb/s
 | 
 
 
 
 4.9.3 サポートされるアダプタ,バス,タイプ,コンピュータ |    |  
  
表 4-7 に, SAS アダプタとそれらがサポートする内部バスおよびコンピュータを示します。
 
  
表 4-7 SAS アダプタ
 
| 8p SAS HBA
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PCI-X
 | 
Integrity サーバ rx3600, rx6600 のコア I/O
 | 
 
| HP SC44Ge Host Bus Adapter
 | 
PCIe
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PCIe バックプレーンの Integrity サーバ (rx2660, rx3600, rx6600)
 | 
 
 
  
 
Ethernet (Fast Ethernet,Gigabit Ethernet,および 10 Gigabit Ethernet) は, LAN ベースのインターコネクトです。
 これらのインターコネクトには,以下の機能があります。
 
- OpenVMS Cluster システムとローカル・エリア・ネットワーク (LAN) 内でのシングル・パス接続
 - LAN フェールオーバのサポート
 - 複数のアダプタを使用した複数パスのサポート
 - 長距離インターコネクト 
  表 4-2 に示す,各 LAN タイプに固有の最大長に加え,LAN と WAN インタースイッチ・リンク間のブリッジによって長距離を実現することができます。
 - ノードの物理的な広範囲にわたる展開
 - シングル・インターコネクトでの複数クラスタ (それぞれ最大 96 ノード) のサポート
  
 各 OpenVMS プラットフォーム (Integrity および Alpha) 上で OpenVMS Cluster インターコネクトとしてサポートされている LAN を, 表 4-8 に示します。  
 
 複数の LAN アダプタについて説明した後に,サポートされている各 LAN インターコネクト,Ethernet に固有の情報を示します。
 
 4.10.1 複数の LAN アダプタ |    |  
  
複数の LAN アダプタがサポートされます。LAN アダプタは,さまざまなタイプの LAN を使用する場合でも,同じ LAN タイプに複数の異なるアダプタ・モデルを使用する場合でも対応することができます。
 複数の LAN アダプタを使用すると,以下のことが実現できます。
 
- 複数の LAN パスに負荷を分散してノード間のスループットを上げることができます。
 - ノード間の LAN 通信の可用性を改善することができます。
  
  
 複数のノード間の LAN パスが利用できる場合,OpenVMS Cluster ソフトウェアは,以下の基準に基づいて,使用するパスのセットを選択します。この基準は厳密な優先順位で評価されます。
 
- パス上でのパケット損失の最新履歴 
 最近,高いレートでパケットを損失しているパスは,損失過多 と呼ばれ,考慮対象から外されます。受け入れ可能な損失履歴を持つチャネルは, タイト と呼ばれ,使用対象としてさらに検討されます。
 -  優先順位 
 管理優先順位値は,個別の LAN パスとローカルの LAN デバイスの両方に割り当てることができます。LAN パスの優先順位値は,これらの優先順位の合計値になります。優先順位値が,タイト・パスの最上位優先順位値以下であるタイト LAN パスのみ使用対象としてさらに検討されます。
 -  最大パケット・サイズ 
 最大パケット・サイズが,すべてのタイト等価優先順位チャネルの中で最も大きいパケット・サイズの最大サイズと同じタイト等価優先順位チャネルは,使用対象としてさらに検討されます。
 -  等価待ち時間 
 前項までの基準を満たした LAN パスは,その待ち時間 (コンピューテッド・ネットワーク遅延) が最速のチャネルの待ち時間と非常に近い場合に使用されます。各 LAN パスの遅延は,そのパスのクラスタ通信トラフィックを使用して測定されます。 LAN パスが前項までの基準を満たさないため,クラスタ通信の使用対象から外された場合,そのパスの遅延は数秒間隔で測定され,遅延,またはパケット・ロスのレートが前項までの基準を満たすまで改善されているか確認されます。
  
 パケット伝送は,上記の基準を満たすローカル・アダプタとリモート・アダプタ間のすべての通信パスにラウンド・ロビン方式で分散されます。
  
LAN は,距離が広い範囲におよぶ場合に適しているため,インターサイト・リンクのスループットを高可用性で強化する場合があります。これを行うためには,それぞれ別のインターサイト LAN リンクに接続されている,複数の LAN アダプタにより重要ノードを構成します。
 インターサイト・リンクの故障は,通常,インターサイト・リンクの機械上の破損が原因です。これは,パスの多様性,つまり,複数のインターサイト・リンクのパスを物理的に分離することで回避できます。パスの多様性を利用すると,インターサイト・リンクに影響を与えるような災害によって構成が影響を受ける可能性は確実に少なくなります。
 
 4.10.2 LAN ベースのクラスタの構成上のガイドライン |    |  
  
以下のガイドラインは,LAN ベースのすべての OpenVMS Cluster システムに適用されます。
 
-  OpenVMS Integrity および OpenVMS Alpha システムは,各アーキテクチャ上でサポートされているさまざまな LAN アダプタを組み合わせて構成できます。サポートされているアダプタについては,最新のソフトウェア仕様書を参照してください。
 - OpenVMS Cluster 通信に使用されるすべての LAN パスは,10 Mb/s 以上のスループットと少ない待ち時間で動作する必要があります。あるタイプの LAN のノードを別のタイプの LAN のノードに接続する場合は,ブリッジまたはスイッチにより変換する必要があります。LAN セグメントをブリッジ接続して,拡張 LAN を作成できます。
 - 複数の,異なる OpenVMS Cluster システムを単一の拡張 LAN に構成できます。 OpenVMS Cluster ソフトウェアは,クラスタ・メンバシップ・チェックを実行して,システムが正しい LAN OpenVMS クラスタに参加することを保証します。
  
 
 
    
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