A.5.1.1 アドオン SCSI アダプタによる基本的なシステムの構築
図 A-4 は,SCSI アダプタと StorageWorks エンクロージャを使用した基本構成の論理図です。この構成は比較的シンプルであるにもかかわらず,内部バス上で非共用ファイル (ページ・ファイルやスワップ・ファイルなど) とともにテープ,フロッピー,CD-ROM,ディスクを使用できるという利点があります。
図 A-5 は,AlphaServer 1000 システムと BA350 エンクロージャを使用した同じタイプの構成です。
BA350 エンクロージャは内部で 0.9 m の SCSI ケーブルを使用します。この構成は,一般に 2 本の 1 m SCSI ケーブルを使用します。(BA353 エンクロージャでも同じ合計ケーブル長で 0.9 m ケーブルを使用します。) 合計長さ 2.9 m のケーブルで Fast SCSI モード操作が可能です。
共用 BA350 ストレージ・エンクロージャは,理論的には単一点障害の要因になり得ますが,この基本システムは非常に信頼性が高い SCSI OpenVMS Cluster 構成です。クォーラム・ディスクが BA350 にある場合, OpenVMS Cluster システムとのアクセスを維持しながら,どちらの AlphaStation システムも単独でシャット・ダウンできます。ただし, AlphaStation システムを物理的に取り外すことはできません。終端がない SCSI バスが生じるからです。
OpenVMS Cluster システムの動作を続行しつつシステムの取り外しができるようにするには, 付録 A.5.1.2 項 にあるように,DWZZx コンバータでシステムを構築します。SCSI インターコネクトに障害が発生しても,データのアクセスを維持したい場合は,以下のどちらかの操作をします。
- もう 1 つの BA350 シェルフとともに冗長 SCSI インターコネクトを追加する。
- データをシャドウイングする。
図 A-4 と,この付録のその他の論理構成図では,必要なネットワーク・インターコネクトが省略されています。
図 A-4 概念図: 基本的な SCSI システム
図 A-5 構成例: AlphaServer 1000,KZPAA アダプタ,BA350 エンクロージャ使用の基本的な SCSI システム
A.5.1.2 エンクロージャを追加または物理的距離を延長したシステム,または,HSZ コントローラ付きのシステム
エンクロージャを追加したり,システム間の物理的な距離を離したい場合,あるいは HSZ コントローラを使用する場合,シングル・エンド・シグナル通知とディファレンシャル・ケーブルの SCSI バスを備えたシステム間に DWZZx コンバータを配置する構成を使用します。
DWZZx コンバータを利用すると,SCSI バスの接続距離の制約が緩和されます。これは DWZZx では,ディファレンシャル・シグナル通知を使用するバスにシングル・エンド・デバイスを接続できるからです。 付録 A.4.3 項 で説明したように,ディファレンシャル・シグナル通知を使用する SCSI バス構成での最大ケーブル長は 25 m です。一方,シングル・エンド構成で Fast モード・データ転送を行うには 3 m が限度です。
DWZZx コンバータは,スタンドアロンのデスクトップ構成要素として,あるいは StorageWorks 互換の構築ブロックとして使用できます。 DWZZx コンバータは,内部 SCSI アダプタやオプションの KZPAA アダプタと併用できます。
HSZ40 は,ディファレンシャル SCSI バスに接続できるハイ・パフォーマンスなディファレンシャル SCSI コントローラであり,最高で 72 個の SCSI デバイスをサポートします。HSZ40 は,ディファレンシャル・コンバータでシングル・エンドになる DWZZx を組み込んだ共用 SCSI バス上に構成できます。HSZ40 コントローラ上に構成したディスク・デバイスは, RAID セットに組み合わせることができ,これによってパフォーマンスと可用性を強化します。
図 A-6 は,潜在的な物理的距離を広げるために (またはエンクロージャや HSZ40 を追加するために) DWZZA を追加した構成の論理図であり, 図 A-7 は,この構成例を具体的に示した図です。
図 A-6 概念図: DWZZAを利用した物理的な距離の延長またはエンクロージャの追加