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HP OpenVMS V8.4: インストレーション・ガイド第4章 OpenVMS オペレーティング・システムをアップグレードするための準備 |
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目次 この章では,アップグレードを開始する前の準備作業について説明します。また,4.1 項 「アップグレード前の準備作業」 に,この章で説明する作業の実施を確認するためのチェック・リストが示してあります。 システムのアップグレードを実施する前に,表 4-1 「アップグレード前のチェックリスト」 のチェックリストを使用して,必要な作業をすべて確実に実施してください。 表 4-1 アップグレード前のチェックリスト
この章で説明する内容に加え,必要に応じて以下のドキュメントを参照してください。
この節には,アップグレードの成否に関係する重要な情報が記載してあります。 アップグレードを開始する前に,ここに記載してある注意事項および制限事項に目を通してください。 OpenVMS V8.4 へ移行するためのさまざまなアップグレード・パスを,以下に示します。 OpenVMS Integrity V8.4 へ直接アップグレードできるのは,次の各バージョンだけです。
OpenVMS Alpha V8.4 へ直接アップグレードできるのは,次の各バージョンだけです。
Version 7.3-2 より前のバージョンの OpenVMS Alpha を使用している場合は,Version 8.4 に直接アップグレードすることはできません。 Version 8.4 にアップグレードする前に,まず Version 7.3-2 にアップグレードしなければなりません (使用している OpenVMS のバージョンによっては,さらに中間のバージョンにアップグレードする必要があります)。 何度かアップグレードを繰り返す場合は,アップグレード時に問題が発生した場合に対処できるよう,システム・ディスクのバックアップを実施しながら数日かけて行なうことをお勧めします。 たとえば,OpenVMS Alpha Version 7.1 を使用している場合は,まず Version 7.2,7.2-1,または 7.2-2 のいずれかにアップグレードしてから Version 7.3-2 にアップグレードし,その後 Version 8.4 にアップグレードする必要があります。
弊社のソフトウェア・ライセンスを購入すると,その製品の現行バージョンまたは購入時点での過去のバージョンを使用する権利が与えられます。
アップデート・ライセンスが必要な場合は,弊社の営業担当にお問い合わせください。 アップグレード中に,オプションの OpenVMS ネットワーク・ソフトウェア (DECnet または TCP/IP) や DECwindows/Motif GUI をインストールしないように選択すると,それらの製品はアップグレード・プロシージャによって,システム・ディスクから削除されます。 OpenVMS を HP SIM のプロビジョニング機能でインストールすると,TCP/IP Services for OpenVMS は自動的にインストールされます。 システムにインストールされている各種ソフトウェアのバージョンが適切かどうかをチェックする方法と,旧バージョンを手動で削除すべき製品があるかどうかを調べる方法については,4.4 項 「手作業で削除しなければならないソフトウェア」を参照してください。
DECram または TDC V2.0 を現在使用している場合は,アップグレードの前に,これらの製品を手作業で削除しなければなりません。削除しないと,アップグレードが失敗する場合があります。 手作業で削除する必要のあるソフトウェアについてのその他の情報は, 『HP OpenVMS Version 8.4 リリース・ノート』 を参照してください。
DECram for OpenVMS は,OpenVMS V8.2 から OpenVMS オペレーティング・システムに必須のコンポーネントとなりました。 以前にインストールした古いバージョンの DECram for OpenVMS は,OpenVMS Alpha V8.4 へアップグレードする前に手動で削除する必要があります。 アップグレード中に DECram for OpenVMS を自動削除することはできません。 古いバージョンの DECram for OpenVMS がインストールされていると,アップグレードが途中で失敗することがあります。 また,アップグレード自体は完了しても,DECram for OpenVMS がエラーを引き起こす原因になったり,正しく機能しなくなるおそれがあります。 ここでは,オペレーティング・システムから古いバージョンの DECram for OpenVMS を削除する方法について説明します。 アップグレードのためにオペレーティング・システムをシャットダウンする前に,以下の手順で DECram for OpenVMS を削除してください (オペレーティング・システムがすでにシャットダウンされている場合は,リブートしてから以下の手順を実施してください)。
TDC V2.0 は OpenVMS Alpha V7.3-2 システムで使用するためにリリースされた製品です。TDC V2.0 がインストールされている場合は,OpenVMS Alpha の最新リリースをインストールする前に,システムから削除してください。 アップグレードするオペレーティング・システムをシャットダウンする前に,以下の手順で TDC V2.0 を削除してください (オペレーティング・システムがシャットダウンされている場合は,リブートしてから以下の手順を実施してください)。
WBEM Providers for OpenVMS を使用しているあるいは構成している場合は,アップグレードの前に次のコマンドを入力して手動で WBEM Providers の構成を解除する必要があります。 $ @SYS$COMMON:[WBEMPROVIDERS]WBEMPROVIDERS$DECO NFIGURE.COM 回避策をとらない限り,OpenVMS 修正キットによって filename.type_OLD の名前でアーカイブされたファイルは,アップグレード中に削除されてしまいます。これらのファイルが削除されるのを回避するには,アップグレードの前にファイル名を変更します。またこれ以外の方法として,6.4.4 項 「アーカイブ・ファイルの保護」で説明してあるように,アップグレード中のプロンプトに順次応答することで,削除を回避することもできます。 この節では,システム・ディスクをアップグレードするための準備について説明します。実施する作業は次のとおりです。
システム・ディスクのディレクトリ構造が変更されていると,アップグレード・プロシージャは正しく動作しません。アップグレードを行う前に,システム・ディスクを標準のディレクトリ構造に戻してください。 OpenVMS のアップグレード・プロシージャは,[VMS$COMMON...] ディレクトリ内に新しいファイルとディレクトリを用意します。特殊な保護やアクセス制御リスト (ACL) がある場合,現在のセキュリティ環境を再確立するためには,その保護や ACL を再度適用する必要があります。セキュア環境の作成と維持についての詳細は,『OpenVMS システム・セキュリティ・ガイド』を参照してください。 アップグレードを成功させる条件の 1 つは,すべてのシステム・ルートにある SYSCOMMON ディレクトリが VMS$COMMON ディレクトリの別名 (またはハード・リンク) になっている,ということです。この条件が満たされているかどうかをチェックするには,アップグレード対象となるシステム・ディスクからブートした後,次の 2 つのコマンドを実行してファイル識別子を表示し,それらがすべて同じであることを確認します。
アップグレードの対象となるシステム・ディスクからブートしなかった場合は,アップグレードの対象となるシステム・ディスクをマウントした後,上記のコマンドでそのデバイス名を指定します。たとえば,アップグレードの対象となるシステム・ディスクを DKA100 にマウントした場合は,次のようなコマンドを実行します。
最初のコマンドからは,1 つのファイルだけがリストに表示されます。2 番目のコマンドからは,そのディスク内にあるシステム・ルートごとに,対応するファイルが 1 つずつ表示されます。表示されたすべてのファイルについて ID が同じであるかどうかをチェックし,その結果に応じて次のように対処します。
ディスク容量とファイル・ヘッダを解放するために,システム・ディスクで重複しているファイルを削除してください。 以下のコマンドを実行することをお勧めします。
次のコマンドを実行して,アプリケーションとシステムのダンプ・ファイルがないかシステム・ディスクを確認してください。
.DMP ファイルが見つかった場合は,適宜判断の上,それらを削除してください。 ANALYZE/DISK_STRUCTURE コマンドを使用してシステム・ディスクの整合性をチェックし,問題があれば修正します (このコマンドについての詳細は,『HP OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル (上巻)』を参照してください)。手順は次のとおりです。
アップグレードにはディスク・スペースが必要ですが,そのブロック数を前もって予測することは簡単ではありません。必要となるブロックの数は,ターゲット・ディスクにある既存ファイルの数と,アップグレード中に選択するコンポーネントの数に左右されます。ここでは,その予測に役立つ情報を示します。
利用可能なスペースがシステム・ディスクにどれだけあるかを確認するには,次のコマンドを実行します。
登録ファイルと AGEN$INCLUDE ファイルがシステム・ディスク以外のディスクに置いてあると,アップグレード・プロシージャでは,それらのファイルを見つけることができません。その理由は,アップグレードでは他のディスクがマウントされないからです。また,それらのファイルを指すように設定されていた論理名も,アップグレードの間は,未定義の状態になってしまいます。この項では,登録ファイルと AGEN$INCLUDE ファイルをアップグレード・プロシージャで利用できるようにする方法を説明します。 OpenVMS では,一部のシステム・ファイル (主に登録ファイルなど) をシステム・ディスク以外のディスクへ再配置することができます。そのような再配置を行う場合は,対象となるファイルを他のディスクへコピーするとともに,論理名を定義します (論理名の定義方法は,SYS$MANAGER:SYLOGICALS.TEMPLATE ファイルに記載されています)。論理名は SYS$STARTUP:SYLOGICALS.COM で定義します。 OpenVMS オペレーティング・システムのメディアからブートしたシステムでは,再配置されているファイルを指す論理名が定義されていないので,それらのファイルがあるディスクもマウントされません。そのため,それらのファイルへアクセスできなくなって,アップグレードの結果が正しくなかったり不完全になったりする可能性があります。また,アップグレードがエラーなしで完了しても,本来の場所に存在すべきファイルが存在しないということもありえます。 システムをアップグレードする前に,そのシステムで定義されている論理名をチェックしてください (再配置されていないファイルについては対応する論理名が定義されていない場合もありますが,問題はありません)。表 4-2 「論理名と,登録ファイルの場所および名前との関係」 に,論理ファイル名と,それが指し示す場所およびファイル名との対応関係を示します。指し示す場所やファイル名がこの表と一致していない論理名が見つかった場合は,そのファイルをデフォルトの場所と名前に戻してください。システムがシステム・ディスク以外の場所にあるファイルを参照しないようにするには,関連付けられている論理名を削除するか (DCL の DEASSIGN/SYSTEM/EXEC コマンドを使用),またはオペレーティング・システムをシャットダウンして,オペレーティング・システムのメディアからリブートします。 アップグレードが完了した後でオペレーティング・システムをブートする前に OpenVMS オペレーティング・システムのメニューにある DCL オプション (8) を使用すれば,システム・ディスクへ移動したファイルを,システム・ディスク以外の元の場所に戻すことができます。
表 4-2 論理名と,登録ファイルの場所および名前との関係
追加パラメータの設定が定義されているファイルを AGEN$INCLUDE 機能で SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT にインクルードしている場合は,そのインクルード・ファイルがシステム・ディスクに存在しているかどうかをチェックし,存在していなければ,アップグレードの前に次の手順を実行します。
移動したファイルは,アップグレードが完了した後で元の場所に戻すことができます。元の場所へ戻したら,必ず SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT 内の AGEN$INCLUDE エントリを再設定してください。 システム・パラメータを検証 (および必要に応じて変更) します。 システム・パラメータの検証と変更については,『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』を参照してください。 アップグレードが始まると,AUTOGEN はパラメータの最初の値をデフォルトに基づいて生成します。 しかし GETDATA フェーズに入ると,AUTOGEN はそのパラメータの値を, SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT に格納されているエントリに基づいて変更します。 また,AUTOGEN は AGEN$FEEDBACK.DAT ファイルに格納されているフィードバック情報を分析して,そのデータが正しければ,関連するパラメータの値をそれに応じて調整します (AUTOGEN は,システムが起動されてから 24 時間以上経過していて,フィードバックの日からまだ 30 日経過していなければ,そのデータを正しいと見なします)。 フィードバック・データが最新になるようにするには,4.8 項 「新しい FEEDBACK.DAT ファイルの用意」の手順に従ってください。
アップグレードを以前実施したシステムには,そのときに新しく生成した SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT ファイルが存在します。このファイルにはコメントが含まれています。また,アップグレード中に生成されたエントリが重複している可能性もあります。そのため,同じシステムを再度アップグレードすると,SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT が必要以上に大きくなって,内容も分かりにくくなります。したがって,アップグレードを再実行する場合は,その前に SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT を編集して,内容を整理するようお勧めします。
システムをアップグレードする前に,新しい AGEN$FEEDBACK.DAT ファイルを用意するようお勧めします。このファイルは SYS$SPECIFIC:[SYSEXE] の中,つまり,[SYSx.SYSEXE] (x はルートを表す値で,たとえば SYS0,SYS1 など) にあります。OpenVMS Cluster システムでは,各ノードの SYS$SPECIFIC ディレクトリにこのファイルがあります。アップグレードした後にシステム (またはクラスタ内の各システム) をリブートすると,AUTOGEN が実行されます。AUTOGEN では,新しい AGEN$FEEDBACK.DAT ファイルが存在するとそれを使用し,そのファイル内のデータに基づいて,実際のアプリケーションやワークロードを反映した値をシステム・パラメータに設定します。
システムに AGEN$FEEDBACK.DAT ファイルが存在しない場合は,システムが通常のワークロードで動作しているときにそのファイルを作成するようお勧めします。ただしデータの信頼性を高めるために,このファイルは 24 時間以上動作しているシステムで 30 日以内に作成してください。次のコマンドを実行します。
このコマンドは処理が瞬時に行われるので,システムの性能に影響を与えることはありません。 なお,SYS$SYSTEM:SHUTDOWN.COM プロシージャを実行する際に SAVE_FEEDBACK オプションを指定することもできますが,取得したデータにシステムの通常のワークロードが十分に反映されている保証はありません。
シャドウ・システム・ディスクにアップグレード対象のオペレーティング・システムがあると,そのままではアップグレードできません (アップグレードを試みても失敗します)。アップグレードするには,システム・ディスクのシャドウイングを前もって無効にするとともに,他の前処理も行う必要があります。 シャドウイングを無効にしたターゲット・ディスクは,いくつかの方法で作成できます。ここでは,マルチ・メンバ・シャドウ・セットから既存のシャドウ・システム・ディスクを 1 つ選び,そのディスクのシャドウイングを無効にして,アップグレードのターゲット・ディスクとして使用する方法を説明します。 比較的規模の大きな構成で,しかもそのディスクへ物理的にアクセスできるという環境では,シャドウ・システム・ディスクのコピーを作成して,それをターゲット・ディスクとして使用することもできます。シャドウイングのコマンドまたは BACKUP コマンドを使用してコピーを作成する方法と,ボリューム・シャドウイングを無効にする方法については,『Volume Shadowing for OpenVMS 説明書』を参照してください。 アップグレードを行う場合は,システムがアップグレード対象のディスクからデフォルトでブートするように設定しておく必要があります。 OpenVMS Alpha システムでこの設定を行うには,コンソール・コマンドの SHOW BOOTDEF_DEV と SET BOOTDEF_DEV を使用します (詳細は,付録 A 「OpenVMS Alpha システムのブートとシャットダウン」を参照してください)。 OpenVMS Integrity システムの場合は,OpenVMS Integrity Boot Manager ユーティリティ (SYS$MANAGER:BOOT_OPTIONS.COM) を使用して,マルチ・メンバ・シャドウ・セット内のシャドウ・システム・ディスクを EFI のブート・デバイス・リストとダンプ・デバイス・リストに追加しておくことをお勧めします。またその場合に必ずすべてのメンバを,両方のリストに追加してください。ブート・オプションの設定と,このユーティリティの使用方法についての詳細は,B.5.2 項 「システム・ディスクのブート・オプションの設定」を参照してください。 既存のシャドウ・システム・ディスクを 1 つ選んで,シャドウイングを無効にしたディスクにするには,以下の手順を実行します。
以上の手順が完了すれば,シャドウイングを無効にしたシステム・ディスクが作成されて,アップグレードに使用することができます。 システム・ディスクは必ずバックアップすることを強くお勧めします。また可能な限り,バックアップ・コピーもアップグレードしておくことをお勧めします。バックアップをとっておけば,問題が発生したときにそのバックアップをシステム・ディスクとして使用することで,運用を継続することができます。
システム・ディスクをバックアップするには,以下の手順を実行します。
オペレーティング・システムのメディアを使用しない方法やバックアップ操作などに関する詳しい説明は,付録 F 「システム・ディスクのバックアップとリストア」 を参照してください。Backup ユーティリティについての詳細は,『HP OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル (上巻)』を参照してください。 アップグレード前の作業を次の表に従って続けます。この表は,スタンドアロン環境でアップグレードする場合と,OpenVMS Cluster 環境でアップグレードする場合に分けてその手順を記載してあります。
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